あるステージを終えたプリズムリバー三姉妹は自分たちの家に帰り、茶の間にておしゃべりをしていた。
「今日のステージも成功してよかったわね~」
「ええ、そうね」
「そうそう、とっても楽しかったしね」
今日のおしゃべりの題材はステージの感想。
ステージでの緊張感から解き放たれ、いつもより口数が多い三人だったが、ある一言によりその夜がいつもより長くなることをまだ誰も知らなかった。
「そう言えばメルラン、あなた本番の前やけに準備が遅くなかった?」
と切り出してきたのはプリズムリバー三姉妹の長女”ルナサ・プリズムリバー”だった。
「ああ、本番の前にチューニング管が固まってて…それで遅れちゃったの~」
とのほほんと答えたのはプリズムリバー三姉妹の次女”メルラン・プリズムリバー”
「またぁ?もう、メル姉はちゃんと楽器の手入れをしてるの?」
と呆れたような声を出しているのはプリズムリバー三姉妹の三女”リリカ・プリズムリバー”
三人はそれぞれ”バイオリン””トランペット””キーボード”を担当している。
「まったく、ちゃんと手入れしときなさい」
「ごめんね~今度ちゃんと手入れしとくから」
と謝ってはいるがルナサとリリカは知っている…
彼女がそう言ってちゃんとしてないことがほとんどだということを…
「ダメよ。今からしなさい」
「え~…そういうルナサ姉さんはちゃんとしてるの~?」
とメルランは逃げるようにルナサに話を振ってきた。
「当然よ、私は三か月に一回は本格的な手入れをしているわ」
「…リリカは~?」
「私、キーボードだし」
まるで道連れを探すようなメルランを見たルナサは助け船を出してやった。
「…そう言えば私も、もうすぐ手入れする時期ね」
「でしょ~?一緒にやりましょうよ~」
「まったく…良いわよ。一緒にやりましょ、リリカもね」
「え?!私は良いでしょ!?それに眠いし…」
まさかここで振られると思っていなかったリリカは突然の姉の一言に驚いた。
「ダメよ。あなたまだあの連符のフレーズをごまかしてるでしょ?」
「う…明日でいいじゃん、明日!今日はもう寝ようよ~」
「思い立ったら吉日って言うでしょ~?一緒に頑張りましょ~」
そう言うメルランの顔にはどこか邪を感じるリリカだった。
「あそこはあまり目立たないけど…とっても大事なフレーズよ。頑張りなさい」
「う~…わかったよ~」
と言うことで…
”楽器手入れ&フレーズマスターin深夜のプリズムリバー家”が開催された。
「ちょっと…メルラン…あなたいつから楽器手入れしてないの?」
「え?う~ん…半年以上前…かな?」
ちょっとはにかみながら言うメルランだった。
メルランのトランペットはチューニング管だけでなく他の管もピクリとも動かず、二人がかりでどうにか抜くことが出来た。
「はあ…それってもしかしなくても私がしなさいって言ったときじゃ…」
「そうだったかしら~」
まったく悪びれるそぶりを見せないメルランにため息をつくしかないルナサだった。
「まったく…楽器の手入れは奏者としてのたしなみでしょう?…あ、リリカ、今のとこ間違えたでしょ」
「う…何でわかったの…?」
「私が曲を全て把握していないと思っているの?」
そう、ルナサはプリズムリバー三姉妹が演奏する曲のスコアは全て把握しているので、誰か一音でも間違っていてもルナサには誰が間違えたのか分ってしまうのだった。
「あなた昔から連符だけは苦手なんだから」
「だ、だって指が追いつかないんだもん。それに二人に隠れててばれないかなって」
「はあ…曲を完全に演奏してあげないと曲にも作曲者にも失礼よ。マスターするまでは今日は寝させないわよ?」
「えー!!!???」
姉の厳しい一言に絶望するリリカだった。
「もう…って、メルラン!グリスを塗るのは管の汚れを拭いてからっていつも言ってるでしょ!?」
「そう言えばそうだったわね~」
メルランは手に持っていたスライドグリスを一旦置きメッシュを手にとって拭き始めた。
「…そう言えばその楽器にしてからどれくらい経つ?」
「そうね~二、三年かしら」
「管の中も掃除しないとね…それに、そろそろタンポも変えないとね…明日香霖堂に行くわよ。私のマツヤニも切れていたからちょうどいいし」
彼女たちが使っている楽器の部品や手入れ道具は全て香霖堂で買っている。
この辺だとあそこでしか物は揃わないからだ。それでも運が悪いと置いていないのだが…
「良いわね~私も新しいオイルが欲しかったし。あと、ラッカーも切れてたわ
「へえ、オイルはちゃんと塗っているのね」
「ええ、だって塗らないとピストンが動かなくなるから~」
つまりは楽器は吹ければ後はどうでもいいらしい…メルランのそういうところを知っているルナサはため息しか出なかった。
だが、メルランが楽器を演奏するのは大好きだということも知っている。
「ルナ姉~ちょっと聞いてくれる?」
「良いわよ。弾いてみなさい」
「よ~し…」
少女演奏中…
「どうかな?今の結構うまくできたと思うんだけど!」
「…まだね。まだ音に振り回されている感じがするわ」
「え!?…じゃ、じゃあ」
「頑張りなさい」
「そ、そんなぁ~~~~」
と死刑宣告を受けた様な声で嘆くリリカだったが、気を取り直したらしくまた練習を始めた。
いつもばれないような所をごまかしているリリカをもちろんルナサは知っている。
だが、リリカは一度指摘された箇所はどんなことがあっても完璧になるまで練習をやめないことも知っている。
結局のところ二人は演奏することが大好きなんだ。
メルランの華々しいトランペットの音。
リリカの全体を包み込むキーボードの音。
そして自分…
この三人が揃わないと”プリズムリバー三姉妹”の音は作れない…いや…四人…かな?
改めてそれを感じたルナサは、ちょっと嬉しくなった。
「ルナサ姉さん~手入れ終わったわ~」
「出来た…やっと…出来たーーー!!!!!」
「ふふ、それじゃ今日はもう寝ましょうか」
もう時計は午前の2時を回っていた。
三姉妹は明日の話をしながら寝室に移動した。
「明日は香霖堂に行くから早く起きなさいよ」
「分かったわ~」
「…起きれるかなぁ」
自力で起きれないリリカは明日の心配をしていた。
「大丈夫よ~もし起きてなかったらリリカの耳元で吹いてあげるわ~」
「分かった、自分で起きる」
「あら~」
「もう寝るわよ~」
ルナサ達は部屋の電気を消し、同じベッドに入った。
リリカはよっぽど眠かったのかベッドに入って数秒で寝てしまった。
なぜか寝れないルナサが目をつむって寝ようとしていると…
「姉さん…?」
「ん?」
メルランが話しかけてきた。
ルナサがメルランの方を向くとすぐ近くにメルランの顔があった。やはり姉妹だからか似ているなとどうでもいいことを思うルナサにメルランはこう言った。
「ごめんね…」
「メルラン…」
「今度からはもっと早くから姉さんに頼ることにするわ」
と子供っぽく笑うメルランにルナサはちょっと呆れてしまった。
「自分でしなさい」
「ふふ、嘘よ。お休み~」
「もう…お休み」
いつもより暖かい布団の中ルナサは眠りに着いた。
パ―――――――――――――ン!!!!!!!!!!!!!!!
「うわあ!!!???」
ルナサは突然の大きな音に飛び起きた。
「ふふ、おはよう」
「メ、メルラン…」
そこには着替えが終わり片手にトランペットを持つ妹がいた。
「言ったでしょう、寝坊したら耳元で吹くって」
「…」
「ルナ姉が寝坊するなんて珍しいね~」
と楽しそうに笑っているリリカが耳を塞ぎながらしゃべりかけてきた。こちらもすでに着替えが終わっていた。
「まったく誰の所為だと」
「ほらほら早く着替えて!朝ごはん出来てるよ」
「…分かったから先に行ってなさい」
「「は~い」」
同じような声で返事をした妹二人は寝室から出て行った。
また一日が始まる…目覚めは最悪だったが…
今日はどこで演奏しようかしら
そう思うルナサの顔はとても幸せそうだった。
「今日のステージも成功してよかったわね~」
「ええ、そうね」
「そうそう、とっても楽しかったしね」
今日のおしゃべりの題材はステージの感想。
ステージでの緊張感から解き放たれ、いつもより口数が多い三人だったが、ある一言によりその夜がいつもより長くなることをまだ誰も知らなかった。
「そう言えばメルラン、あなた本番の前やけに準備が遅くなかった?」
と切り出してきたのはプリズムリバー三姉妹の長女”ルナサ・プリズムリバー”だった。
「ああ、本番の前にチューニング管が固まってて…それで遅れちゃったの~」
とのほほんと答えたのはプリズムリバー三姉妹の次女”メルラン・プリズムリバー”
「またぁ?もう、メル姉はちゃんと楽器の手入れをしてるの?」
と呆れたような声を出しているのはプリズムリバー三姉妹の三女”リリカ・プリズムリバー”
三人はそれぞれ”バイオリン””トランペット””キーボード”を担当している。
「まったく、ちゃんと手入れしときなさい」
「ごめんね~今度ちゃんと手入れしとくから」
と謝ってはいるがルナサとリリカは知っている…
彼女がそう言ってちゃんとしてないことがほとんどだということを…
「ダメよ。今からしなさい」
「え~…そういうルナサ姉さんはちゃんとしてるの~?」
とメルランは逃げるようにルナサに話を振ってきた。
「当然よ、私は三か月に一回は本格的な手入れをしているわ」
「…リリカは~?」
「私、キーボードだし」
まるで道連れを探すようなメルランを見たルナサは助け船を出してやった。
「…そう言えば私も、もうすぐ手入れする時期ね」
「でしょ~?一緒にやりましょうよ~」
「まったく…良いわよ。一緒にやりましょ、リリカもね」
「え?!私は良いでしょ!?それに眠いし…」
まさかここで振られると思っていなかったリリカは突然の姉の一言に驚いた。
「ダメよ。あなたまだあの連符のフレーズをごまかしてるでしょ?」
「う…明日でいいじゃん、明日!今日はもう寝ようよ~」
「思い立ったら吉日って言うでしょ~?一緒に頑張りましょ~」
そう言うメルランの顔にはどこか邪を感じるリリカだった。
「あそこはあまり目立たないけど…とっても大事なフレーズよ。頑張りなさい」
「う~…わかったよ~」
と言うことで…
”楽器手入れ&フレーズマスターin深夜のプリズムリバー家”が開催された。
「ちょっと…メルラン…あなたいつから楽器手入れしてないの?」
「え?う~ん…半年以上前…かな?」
ちょっとはにかみながら言うメルランだった。
メルランのトランペットはチューニング管だけでなく他の管もピクリとも動かず、二人がかりでどうにか抜くことが出来た。
「はあ…それってもしかしなくても私がしなさいって言ったときじゃ…」
「そうだったかしら~」
まったく悪びれるそぶりを見せないメルランにため息をつくしかないルナサだった。
「まったく…楽器の手入れは奏者としてのたしなみでしょう?…あ、リリカ、今のとこ間違えたでしょ」
「う…何でわかったの…?」
「私が曲を全て把握していないと思っているの?」
そう、ルナサはプリズムリバー三姉妹が演奏する曲のスコアは全て把握しているので、誰か一音でも間違っていてもルナサには誰が間違えたのか分ってしまうのだった。
「あなた昔から連符だけは苦手なんだから」
「だ、だって指が追いつかないんだもん。それに二人に隠れててばれないかなって」
「はあ…曲を完全に演奏してあげないと曲にも作曲者にも失礼よ。マスターするまでは今日は寝させないわよ?」
「えー!!!???」
姉の厳しい一言に絶望するリリカだった。
「もう…って、メルラン!グリスを塗るのは管の汚れを拭いてからっていつも言ってるでしょ!?」
「そう言えばそうだったわね~」
メルランは手に持っていたスライドグリスを一旦置きメッシュを手にとって拭き始めた。
「…そう言えばその楽器にしてからどれくらい経つ?」
「そうね~二、三年かしら」
「管の中も掃除しないとね…それに、そろそろタンポも変えないとね…明日香霖堂に行くわよ。私のマツヤニも切れていたからちょうどいいし」
彼女たちが使っている楽器の部品や手入れ道具は全て香霖堂で買っている。
この辺だとあそこでしか物は揃わないからだ。それでも運が悪いと置いていないのだが…
「良いわね~私も新しいオイルが欲しかったし。あと、ラッカーも切れてたわ
「へえ、オイルはちゃんと塗っているのね」
「ええ、だって塗らないとピストンが動かなくなるから~」
つまりは楽器は吹ければ後はどうでもいいらしい…メルランのそういうところを知っているルナサはため息しか出なかった。
だが、メルランが楽器を演奏するのは大好きだということも知っている。
「ルナ姉~ちょっと聞いてくれる?」
「良いわよ。弾いてみなさい」
「よ~し…」
少女演奏中…
「どうかな?今の結構うまくできたと思うんだけど!」
「…まだね。まだ音に振り回されている感じがするわ」
「え!?…じゃ、じゃあ」
「頑張りなさい」
「そ、そんなぁ~~~~」
と死刑宣告を受けた様な声で嘆くリリカだったが、気を取り直したらしくまた練習を始めた。
いつもばれないような所をごまかしているリリカをもちろんルナサは知っている。
だが、リリカは一度指摘された箇所はどんなことがあっても完璧になるまで練習をやめないことも知っている。
結局のところ二人は演奏することが大好きなんだ。
メルランの華々しいトランペットの音。
リリカの全体を包み込むキーボードの音。
そして自分…
この三人が揃わないと”プリズムリバー三姉妹”の音は作れない…いや…四人…かな?
改めてそれを感じたルナサは、ちょっと嬉しくなった。
「ルナサ姉さん~手入れ終わったわ~」
「出来た…やっと…出来たーーー!!!!!」
「ふふ、それじゃ今日はもう寝ましょうか」
もう時計は午前の2時を回っていた。
三姉妹は明日の話をしながら寝室に移動した。
「明日は香霖堂に行くから早く起きなさいよ」
「分かったわ~」
「…起きれるかなぁ」
自力で起きれないリリカは明日の心配をしていた。
「大丈夫よ~もし起きてなかったらリリカの耳元で吹いてあげるわ~」
「分かった、自分で起きる」
「あら~」
「もう寝るわよ~」
ルナサ達は部屋の電気を消し、同じベッドに入った。
リリカはよっぽど眠かったのかベッドに入って数秒で寝てしまった。
なぜか寝れないルナサが目をつむって寝ようとしていると…
「姉さん…?」
「ん?」
メルランが話しかけてきた。
ルナサがメルランの方を向くとすぐ近くにメルランの顔があった。やはり姉妹だからか似ているなとどうでもいいことを思うルナサにメルランはこう言った。
「ごめんね…」
「メルラン…」
「今度からはもっと早くから姉さんに頼ることにするわ」
と子供っぽく笑うメルランにルナサはちょっと呆れてしまった。
「自分でしなさい」
「ふふ、嘘よ。お休み~」
「もう…お休み」
いつもより暖かい布団の中ルナサは眠りに着いた。
パ―――――――――――――ン!!!!!!!!!!!!!!!
「うわあ!!!???」
ルナサは突然の大きな音に飛び起きた。
「ふふ、おはよう」
「メ、メルラン…」
そこには着替えが終わり片手にトランペットを持つ妹がいた。
「言ったでしょう、寝坊したら耳元で吹くって」
「…」
「ルナ姉が寝坊するなんて珍しいね~」
と楽しそうに笑っているリリカが耳を塞ぎながらしゃべりかけてきた。こちらもすでに着替えが終わっていた。
「まったく誰の所為だと」
「ほらほら早く着替えて!朝ごはん出来てるよ」
「…分かったから先に行ってなさい」
「「は~い」」
同じような声で返事をした妹二人は寝室から出て行った。
また一日が始まる…目覚めは最悪だったが…
今日はどこで演奏しようかしら
そう思うルナサの顔はとても幸せそうだった。
リリカも生意気でカワイイな~。
でも、やっぱりルナサが好きだw
ルナサは俺たちの大事な存在
異論は認めない
なるほど…みんな楽器の手入れはしてるんですね
てっきり楽器は飾りかと…(げふんげふん)
それぞれキャラもしっかりとたっていてすばらしい作品だと思いました
……実際メルランはチューニングを気にせず吹きちらかしそうだなぁ。
楽器は手入れを怠るとすぐに機嫌悪くなるからね
ほっこりしますね。個人的にはメルランが好き。