「……小傘さん、どうしたんですかそれ」
「えっと、……拾った?」
なんで疑問系なんですかとつっこむことはせず、代わりに疲れたようなため息をひとつこぼす。
場所は守矢神社の縁側。一通り境内の掃除を終え、早苗がいつものように小休止をしていたところに彼女が現れたのである。
多々良小傘の両腕と傘の上に、まぁ居るわ居るわ子猫の山。
見れども見れども、猫ネコ猫ネコお燐猫ネコ猫ネコ橙ネコ猫ネコ猫ネコ猫ネコ猫ドラ○もん猫ネコこいし。
軽く頭痛を覚えそうな風祝に向かって手を伸ばし、にゃーにゃー鳴く子猫の集団。
その中に埋もれているように見えないこともない小傘の姿はなかなかにシュールだった。
「大方、雨に濡れていた子猫を住処に連れ帰ってたらいつの間にか大変な数になっていたとかそんな感じですか?」
「す、すごい!! 早苗ってもしかしてSぱぁ!!?」
「……なんか言い方にものすごく悪意を感じるんですが?」
ジトリと睨みつけてやれば、あわてた様子でぶんぶんと首を横に振る小傘。
あらヤダ可愛いなどと非常にアレな感想をナチュラルに抱きつつ、風祝がその絶大な隙を逃すわけもなく。
「もらったぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ほわぁぁぁぁ!!?」
鴉天狗もびっくりな素早さで、半ばアッパーのような掬い上げを持ってスカートをめくった。
この風祝、体は女子であるが心はガキ大将、悪く言えばおっさんである。スカートめくり千人抜きの偉業は未だ早苗の母校(高)に語り継がれる生きた都市伝説である。
さてはて、当然のごとく跳ね上がるスカート。自然と視界に入る小傘の健康的な太もも。そして―――
「にゃん」
鉄のガードナー子猫(♀)である。どっとはらい。
ばさりと、スカートが音を立てて元の位置に戻る。
小傘が顔を真っ赤にしてあうあうと口を動かしており、いつもならそこを早苗がからかうのだが、その早苗は先ほどの光景が信じられずにごしごしと目をこすった。
子猫、そう子猫。本来誰もが身につける下着のあるべき場所に、その存在を隠すかのように子猫が張り付いていたのである。
馬鹿な、ありえない。そんなものはペンギンが空を飛ぶぐらいありえない、と風祝はもう一回同じ要領でめくってみた。わりとナチュラルに。
「にゃん」
そして猫である。黒猫である。目が真っ赤な黒猫(♀)である。
ばさりとスカートが戻り、もはやかんっぺきに涙目になった小傘に気付くこともなく、早苗は微動だにせず硬直中。
なんということだろうか。スカートの中に子猫とは、なんという非常識。つまりそれは幻想以外の何物でもない。
しかし、だがしかし、ここは幻想郷。ありとあらゆるものを受け入れる幻想郷。常識など微塵も役に立たない幻想郷である。
そう、スカートの中に子猫。つまりそんなものは非常識であり幻想だが、この世界はそれが許容されるということ。
無論、そんなわきゃねぇのであるが、風祝の中でそれが真実になってしまった瞬間だった。
そっか、そうなのか。幻想なら仕方ないですね。と、どこか納得したのか凄まじいほどに晴れやかな笑顔を浮かべた早苗は、お茶を一気に飲み干し。
「まずはその幻想をぶち殺す!!」
「うひゃえぇ!!?」
小傘の悲鳴も何のその、残念ながらこの風祝、非常に諦めが悪かった。
本日三回目の蛮行。めくりあがった先に現れたのは、憎き敵である鉄のガードナー子猫(♀)の姿。
「もらいましたよぉぉぉぉ!!」
「何がぁぁぁ!!?」
そして子猫を引っぺがそうと問答無用で右手をつっこむ風祝。そして至極全うなツッコミを入れる真っ赤な顔の小傘。
右手には猫特有の確かな感触。スカートが降りて姿が見えなくなったが、ここまでくれば最早関係などあるはずも無い。
クックックッと妖しい笑みを浮かべた早苗が、今まさに子猫を引きずり出そうとした瞬間。
「……」
「……あ」
その人物と、ばっちりと目線があってしまったのである。
早苗とも面識のあるその人物は、白狼天狗の犬走椛。
セクハラしてきた先輩である射命丸文の首をがっちりホールドして登場した彼女の目は、これ以上に無いくらい冷め切っていた。
重苦しい沈黙もなんのその、椛の目は思いっきり汚物を見るかのような非常にアレな視線である。
まぁ、それも仕方が無いのだろう。傍目から見たら早苗が小傘のスカートの中に手を突っ込んでいるようにしか見えないのである。
文が首からかけていた写真機を引っつかみ、暴れる彼女の首をへし折って黙らせて、流れるような動作でシャッターを切る白狼天狗。
パシャリとシャッターが切られ、フラッシュに目を瞬いた早苗は、今の自分たちの状態を思い出して―――当然のことながら血の気が引いた。自業自得だが。
流れる滝はナイアガラのごとく、ダバダバと流れ落ちる冷や汗はとどまることを知らず、そんな風祝を見て椛はこれ見よがしにため息をついて見せた。
「……早苗は文さんとは違うと思ってました」
「いや、こ、これは違っ!!」
「あぁ言わなくていいですよ、好きなよーに生きたらいいんじゃないですかねクソが」
「わかって無いですよね!!? ナチュラルに毒吐きましたもん今!!? その蔑む様な目が痛いんですけど!!」
「用事がありましたがお楽しみ中みたいなんで、私はコレで」
「まって帰らんといて!!? せめてそのネガだけはぁぁぁぁぁぁ!!!?」
そして聞く耳持たずに走り去っていく白狼天狗。天狗だけあってそのスピードは随一で早苗が追いつけるはずもなく。
伸ばした手を空を切り、早苗の視界には先輩の足を持って引きずりながら地をかけていく白狼天狗の後姿。
自業自得とはいえ、あんまりな勘違いに早苗は真っ白になって縁側に腰掛け―――燃え尽きた。明日のサナエ状態である。
小傘は赤面したまま未だ硬直し、代わりにとにゃーにゃー子猫たちが鳴くばかり。
春先だというのに、冷たいと感じる風が二人を包みこんだ。そんな光景を視界に納め、今先ほど帰宅した八坂神奈子は空を仰いだ。
一体、早苗はどこで育て方を間違ったのだろうと後悔する神の瞳には、うっすらと涙がにじんでいたという。
ちなみに、諏訪子は隣で煎餅を頬張っていた。
▼
後日、そのときの写真が文々。新聞に掲載された。
その時の皆の反応はタダひとつ。
『まあ、いつものことよね』
別の意味で風祝が涙した瞬間だった。
「えっと、……拾った?」
なんで疑問系なんですかとつっこむことはせず、代わりに疲れたようなため息をひとつこぼす。
場所は守矢神社の縁側。一通り境内の掃除を終え、早苗がいつものように小休止をしていたところに彼女が現れたのである。
多々良小傘の両腕と傘の上に、まぁ居るわ居るわ子猫の山。
見れども見れども、猫ネコ猫ネコお燐猫ネコ猫ネコ橙ネコ猫ネコ猫ネコ猫ネコ猫ドラ○もん猫ネコこいし。
軽く頭痛を覚えそうな風祝に向かって手を伸ばし、にゃーにゃー鳴く子猫の集団。
その中に埋もれているように見えないこともない小傘の姿はなかなかにシュールだった。
「大方、雨に濡れていた子猫を住処に連れ帰ってたらいつの間にか大変な数になっていたとかそんな感じですか?」
「す、すごい!! 早苗ってもしかしてSぱぁ!!?」
「……なんか言い方にものすごく悪意を感じるんですが?」
ジトリと睨みつけてやれば、あわてた様子でぶんぶんと首を横に振る小傘。
あらヤダ可愛いなどと非常にアレな感想をナチュラルに抱きつつ、風祝がその絶大な隙を逃すわけもなく。
「もらったぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ほわぁぁぁぁ!!?」
鴉天狗もびっくりな素早さで、半ばアッパーのような掬い上げを持ってスカートをめくった。
この風祝、体は女子であるが心はガキ大将、悪く言えばおっさんである。スカートめくり千人抜きの偉業は未だ早苗の母校(高)に語り継がれる生きた都市伝説である。
さてはて、当然のごとく跳ね上がるスカート。自然と視界に入る小傘の健康的な太もも。そして―――
「にゃん」
鉄のガードナー子猫(♀)である。どっとはらい。
ばさりと、スカートが音を立てて元の位置に戻る。
小傘が顔を真っ赤にしてあうあうと口を動かしており、いつもならそこを早苗がからかうのだが、その早苗は先ほどの光景が信じられずにごしごしと目をこすった。
子猫、そう子猫。本来誰もが身につける下着のあるべき場所に、その存在を隠すかのように子猫が張り付いていたのである。
馬鹿な、ありえない。そんなものはペンギンが空を飛ぶぐらいありえない、と風祝はもう一回同じ要領でめくってみた。わりとナチュラルに。
「にゃん」
そして猫である。黒猫である。目が真っ赤な黒猫(♀)である。
ばさりとスカートが戻り、もはやかんっぺきに涙目になった小傘に気付くこともなく、早苗は微動だにせず硬直中。
なんということだろうか。スカートの中に子猫とは、なんという非常識。つまりそれは幻想以外の何物でもない。
しかし、だがしかし、ここは幻想郷。ありとあらゆるものを受け入れる幻想郷。常識など微塵も役に立たない幻想郷である。
そう、スカートの中に子猫。つまりそんなものは非常識であり幻想だが、この世界はそれが許容されるということ。
無論、そんなわきゃねぇのであるが、風祝の中でそれが真実になってしまった瞬間だった。
そっか、そうなのか。幻想なら仕方ないですね。と、どこか納得したのか凄まじいほどに晴れやかな笑顔を浮かべた早苗は、お茶を一気に飲み干し。
「まずはその幻想をぶち殺す!!」
「うひゃえぇ!!?」
小傘の悲鳴も何のその、残念ながらこの風祝、非常に諦めが悪かった。
本日三回目の蛮行。めくりあがった先に現れたのは、憎き敵である鉄のガードナー子猫(♀)の姿。
「もらいましたよぉぉぉぉ!!」
「何がぁぁぁ!!?」
そして子猫を引っぺがそうと問答無用で右手をつっこむ風祝。そして至極全うなツッコミを入れる真っ赤な顔の小傘。
右手には猫特有の確かな感触。スカートが降りて姿が見えなくなったが、ここまでくれば最早関係などあるはずも無い。
クックックッと妖しい笑みを浮かべた早苗が、今まさに子猫を引きずり出そうとした瞬間。
「……」
「……あ」
その人物と、ばっちりと目線があってしまったのである。
早苗とも面識のあるその人物は、白狼天狗の犬走椛。
セクハラしてきた先輩である射命丸文の首をがっちりホールドして登場した彼女の目は、これ以上に無いくらい冷め切っていた。
重苦しい沈黙もなんのその、椛の目は思いっきり汚物を見るかのような非常にアレな視線である。
まぁ、それも仕方が無いのだろう。傍目から見たら早苗が小傘のスカートの中に手を突っ込んでいるようにしか見えないのである。
文が首からかけていた写真機を引っつかみ、暴れる彼女の首をへし折って黙らせて、流れるような動作でシャッターを切る白狼天狗。
パシャリとシャッターが切られ、フラッシュに目を瞬いた早苗は、今の自分たちの状態を思い出して―――当然のことながら血の気が引いた。自業自得だが。
流れる滝はナイアガラのごとく、ダバダバと流れ落ちる冷や汗はとどまることを知らず、そんな風祝を見て椛はこれ見よがしにため息をついて見せた。
「……早苗は文さんとは違うと思ってました」
「いや、こ、これは違っ!!」
「あぁ言わなくていいですよ、好きなよーに生きたらいいんじゃないですかねクソが」
「わかって無いですよね!!? ナチュラルに毒吐きましたもん今!!? その蔑む様な目が痛いんですけど!!」
「用事がありましたがお楽しみ中みたいなんで、私はコレで」
「まって帰らんといて!!? せめてそのネガだけはぁぁぁぁぁぁ!!!?」
そして聞く耳持たずに走り去っていく白狼天狗。天狗だけあってそのスピードは随一で早苗が追いつけるはずもなく。
伸ばした手を空を切り、早苗の視界には先輩の足を持って引きずりながら地をかけていく白狼天狗の後姿。
自業自得とはいえ、あんまりな勘違いに早苗は真っ白になって縁側に腰掛け―――燃え尽きた。明日のサナエ状態である。
小傘は赤面したまま未だ硬直し、代わりにとにゃーにゃー子猫たちが鳴くばかり。
春先だというのに、冷たいと感じる風が二人を包みこんだ。そんな光景を視界に納め、今先ほど帰宅した八坂神奈子は空を仰いだ。
一体、早苗はどこで育て方を間違ったのだろうと後悔する神の瞳には、うっすらと涙がにじんでいたという。
ちなみに、諏訪子は隣で煎餅を頬張っていた。
▼
後日、そのときの写真が文々。新聞に掲載された。
その時の皆の反応はタダひとつ。
『まあ、いつものことよね』
別の意味で風祝が涙した瞬間だった。
えーとつまり、ネコが離れたらすなわち小傘はのーp……
皆の衆マタタビありったけ持って来いぃぃぃ!
みごとなまでに……道に迷って遭難した挙げ句、うっかりマヨイガに辿り着いた気分。
じゃあトチ狂いついでに月並みなダジャレをば。にゃんだコレは……にゃんにゃんだよコレはっ!!
あれ?またもやナチュラルにこいしが紛れてるwww
これは無意識のなせる業なのかwww
なんだこれwwwww
だってこれが幻想郷の普通でしょう?なんつてww