昔々、幻想郷に、八雲紫という妖怪がいました。今も生きています。
この八雲紫、たいそうグータラなくせに、とんでもなく強くて頭も回る大妖怪でした。
その式の名前は八雲藍といいました。狐です。
といっても、そんじょそこらの狐ではありません。大妖怪の式になるだけあって、尻尾が九本もありました。
さて、紫は暇でした。することがありません。
何せとんでもなく長い時間を生きてきているので、大概のことはし終えてます。
三月にもなって未だに出しっぱなしのコタツに潜りながら、紫は考えました。何をして暇を潰そうか?
そこで藍の尻尾です。美しい毛並みの九尾。
紫は、昼寝しすぎて重くなってきた頭で、ぼんやりと考えました。
バナナ混ぜてもばれやしないわよねぇ、と。
ぶっ飛んだ思考でした。
しかし、トンデモハップンな発想に至っても仕方がありません。なにせ春でした。暖かくなってきたころでした。しかも昼寝した頭は鈍りまくりです。
とにもかくにも、そういうことを考えた紫は、さっそく行動に移しました。
太くて硬くてたくましいバナナを、隙間から取り出します。何故そんなものが隙間のなかにあるのでしょう。謎ですね。
そして紫は起き上がります。持てる技術のすべてを尽くし、コソコソと藍に忍び寄りました。
藍は気付きません。
彼女だって相当な実力、滅多に不覚はとりません。しかし何せ相手は主人です。ケタが違いました。
さらに言えば、まさか主人がそんな馬鹿なことをするとは全く予期していなかったのです。藍は主人と違って常識人でした。
さて、紫、藍に気付かれずに真後ろにつけました。
後は尻尾にバナナを混ぜるだけなのですが、これは簡単なことではありません。
安定させるためには、お尻(尻尾の生えてる辺り)にバナナをくっつけないといけません。
しかし、なんと言ってもバナナです。普通なら無理です。
ですが、そこは境界に潜む妖怪こと八雲紫。バナナと皮膚の境界を操り、見事バナナをくっつけました。
ただあいにく、離れてから見ると、バナナが尻尾に埋もれてしまって分かりません。小さすぎたのです。他の尻尾が立派すぎました。
つまらないわ、と紫はため息をつき、またコタツに潜りました。そしてバナナのことを忘れてしまいました。
つまらないことを、いつまでも覚えておくほど、紫の脳みそは広くないのでした。
八雲紫は涙に暮れていました。
というのも、彼女の式である八雲藍が、ここ数ヶ月で急に衰弱したからです。
藍は、今や自力では歩けないほどに弱ってしまったのです。
さらに悪いことには、原因がまったく不明でした。紫が手を尽くしても、まったく分からなかったのです。
悪化に悪化を重ねた藍は、もはや死を目前としていました。
「紫様紫様、そんなに泣かないでください」
寝たきりになって、それでも藍は紫を慰めました。
いまわの際だというのに見せるその思いやりに、また紫は涙しました。
藍自身は弱っていても、九本の尻尾は立派な輝きを放っています。だから藍は仰向けではなく、横になって寝ていました。
せめて毛づくろいしてやろうと、紫は尻尾の側に回りこみました。
立派な、ふさふさとした毛並みです。紫は櫛を手にとって、優しく梳かしていきます。その間も、涙はとめどなく溢れていました。
ふと、妙な感触が手に伝わりました。紫は怪訝に思いました。
バナナでした。
紫はそれのことを完璧に忘れていました。
先っちょが皮膚と癒着したそれは、立派に成長し、今や十本目の尾と呼んでもいいくらいの輝きを放っています。
どう考えても成長しすぎで、明らかに藍の養分を吸っていました。見るからに衰弱の原因です。
紫の涙腺が閉じました。その代わり汗腺が緩みます。冷や汗がドバドバと流れ出ました。
「藍、ごめんなさい」
「いえ、紫様が私のために尽くしてくれたことは身にしみております。私こそ、出来の悪い式でした、申し訳ありません」
その心遣いは紫にとって非常にありがたいのですが、この状況では、かえって胸に痛いものでした。紫の冷や汗もそれに比例してナイアガラです。
ええいままよ、と思った紫は、バナナと皮膚の境界をいじって、二つを離しました。
「あぁ……なんだか気分がよくなってきました、お迎えですね……」
そして藍は目を閉じました。穏やかな寝息が聞こえます。
気分がよくなるのは確かだろうけど、多分お迎えじゃないわソレ。
そう思いながら紫は、藍の尻から離れた馬鹿でかいバナナを抱えて、眠った藍を尻目に部屋を抜け出しました。
向かった先は台所です。
捨てるには、バナナは大きすぎました。
なにせ紫の身長と同じくらいあります。生ごみで出すために、切り分ける必要がありました。
紫の手には、斧が握られています。包丁では刃渡りが足りませんでした。
紫に斧の心得はありませんが、それでもバナナを叩き切るぐらいなら出来ます。
紫はその武器を振り上げ、まるで人間のようなサイズのお化けバナナのど真ん中に、渾身の力で振り下ろしました。
バナナは何の抵抗も無く切れました。ですが、そこから奇妙なことが起こりました。
なんと、バナナの中から妖怪が飛び出したのです。そしてその妖怪は叫びます。
「分からなかったら人にきく!」
これも御仏の導きと考えた紫は、バナナから飛び出たその二尾の黒猫を橙と名づけ、回復した藍とともに仲良く暮らしました土佐。
めでたしめでたし。
どんな気持ちだったんでしょうかね。
相変わらず非凡なセンスを……
その一言に尽きる。
が、それが良いッ!!
持ってけ……。
てっきりバナナを食べる展開かと思ったらまさかの橙!
ニヤニヤが止まらないぜ。
にしても、それはそれは残酷な話ですわーw
橙と藍が口をきかなくなるのも致し方ないかと。
もう俺の負けでいいから勘弁してくれwww
じつに胡散臭い話だ。冗談だよね紫さん?
それでも言わなければいけない気がしました。では、言います
そんなバナナ
宇宙から毒電波でも受信してんのか
あ、バナナかw
しかしどうやったらそんな、こたつから起き上がったばかりの思考みたいなのが書けるんだ?
……あっ、そうか。そのとき思いついたのか。
存分に笑わせてもらい、楽しませてもらいました!
違和感が仕事しないので責任取ってくださいwwww
どんな作りしてたらこんな発想出てくるんだ……