Coolier - 新生・東方創想話

博麗霊夢によろしく 遠回しな伝言と里帰り、あと雪解け 前半

2010/03/25 18:03:27
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遠い未来の幻想郷を想像して描いたいくつかのシリーズのものです。
霊夢たちの子孫、つまりオリキャラが多いうえ、節操無く小ネタを入れてあるのでご注意ください。

作品集51『博麗霊夢によろしく 魔法使いの黒ミサ』であったある方のご感想
『...でもそうなると、誰があの亡霊の姫の世話してるんだろうか?』
を読んで、『そういえばどうなんだろう』と思って書きました。





冬が終わろうとしていました。
私は社務を早めに切り上げ、パトロールと称して実は空の散歩を楽しんでいます。
上空はまだ肌寒かったけれど、地面を見下ろせば、雪解け水に潤う大地が緑の絨毯を紡いでいるのが見えます。

「夏には向日葵の花でいっぱいになるだろうな、その前に桜、つまり宴会だね」

小川沿いの桜の木も、それに負けじとつぼみをふくらませ、開花の時を待っています。
眼下のむせかえるような命の躍動。
幻想郷は今年も、何百回、あるいは何千、何万、何億回目かの春を迎えようとしているのでしょう。
ただ、ある一か所だけが冬のままでした。



春、ところにより冬



「何かしら」 

里のある一点だけが、深い雪に覆われているのが見えました。
目を凝らしてみると、その場所だけ空から雪が降り、とある一軒家に降り積もっています。
分厚い雪の層が屋根にのしかかり、ギシギシときしむ音が今にも聞こえてきそうです。
家の住人らしき人物が一人、屋根に上がり雪下ろしをしています。大変そう。

「あれは……真琴の実家じゃない」

真琴が私に気づくと、彼は手を振って呼びました。

「ミカ、手伝え」
「真琴―これってもしかして異変なの」彼の命令口調をスルーして尋ねました。
「もしかしなくてもそうだよ、なんでここだけ冬なんだよー」

真琴が叫んでスコップを放り投げました。こりゃ相当イラついてるな。
とりあえず何が起こったのか聞いてみます。

「ねえ真琴、落ち着いて、真理歌ちゃんやお母さんは?」 

真琴の家族の姿が見当たりません。
首に巻いた手拭いで額を拭くと、これまでのいきさつを話してくれました。

「今朝久々に実家に帰ってみたら、
真理歌が、昨日から母さんが帰ってこないって言うんだ。
それで朝になってもやっぱり帰ってこないらしくて、
真理歌が探すって言って飛んで行ったんだよ。
僕もすぐ後を追おうとしたら、見ての通り、
このままじゃ家がつぶれて帰るところがなくなっちゃう」

真琴はスコップを再び手に取り、箒で宙に浮かんで屋根に上り、雪おろしの続きを始めました。
玄関のドアが本当にギシギシ言っている。大丈夫かな。

「だからミカ、真理歌はミカのこと気に入ってるようだし、
真理歌についてやって欲しい。僕もこれが終わったらすぐ行くよ」
「うん、わかった。それで、どこへいったか見当はつくかしら?」
「たぶん、白玉楼。母さんが昔働いていた冥界だよ。真理歌が言うには、
ここにだけ降った雪を見て、母さんが『ユユコサマが呼んでる』
とつぶやいていたらしい。それで出掛けてくると言って出たっきりなんだよ」
「ありがと、雪おろし、気をつけてね」

大昔、白玉楼絡みの異変が起きた時も、春なのに寒い時期が続いたと言います。
今回とは少し違いますが、真琴のお母さんの事を考えると、やはり今回も冥界が関与しているのは間違い無さそうです。
私はふわりと浮かび、巫女服の袖と裾をひらめかせ、白玉楼を目指します。
具体的な方向は主人公だから祖先譲りの勘で何とかなる、かな?
しばらく飛んでいるうちに、目当ての影が見えました。
お母さんとおそろいの服、白のブラウスに緑色のスカート、
同じ緑の上着を着た少女が、やはり空を飛んでいます。
真琴の妹の真理歌ちゃんです。黒いリボンもそっくり。

「ああ、ミカさん、会えて良かった」

真理歌ちゃんは空中で私に軽く抱きついてきました。
ほのかな温もりと花の香りが気持ちいい。
彼女の頭を撫でてやります。妹みたいで可愛いな。

「お兄さんに聞いたよ、白玉楼に行くんだよね、私も付き合うよ」
「ありがとう、ミカさんがいれば100人力ですよ」
「ところで、その服、よそいきなの?」 
普段彼女は真琴と(というより祖先の魔理沙さんと)似たような色調の黒白の服を着ています。
「ええ、デートとか、ここ一番の時に着ようと思って。着て来て正解ですね」
「お兄さんもそのうち来るわ、急ぎましょう」

急に冷たい風が私たちを冷やかすように吹き付けました。
ただの突風かと思ったけれど、かすかな霊気を感じます。

「ああ、遊んであげてる暇はないんだけどなあ」

私はスペルカードを取り出し。真理歌ちゃんもビームタケミツのスイッチをオンにします。
臨戦態勢です。



卒業試験



雪下ろしを魔法使い仲間の朝倉や、里の人に手伝ってもらえる事になったので、
安心して二人を追おうとしたら、何の因果だろう、
最近知り合った永遠亭の犬耳執事、優夜さんがやって来て協力すると言い出した。

「そりゃあありがたいけど、何で貴方が?」
「姫様のご命令で、冥界への門が開いたそうなので、修行を兼ねてそれを調査して来いと言われました。
それで、私ひとりでも充分だったのですが、あなたもそこへ用があるそうなので、協力したほうが早いと思いましたので。
いやいや、一人だと不安だとかそういうことではありませんが、もしもの事があったりしたら何ですし……」

そういう優夜さんの尻尾はだらりと垂れさがり、目はせわしなくあちこちを向いている。
初めての大役を仰せつかった不安と、協力を求めることへの恥ずかしさが同居しているのだろう。素直じゃないな。

「わかったよ、こっちも僕一人で行動して遭難したら大変だから、念には念を入れて、妖怪のあなたにも来てくれると心強いな」こう言えば体面も傷つかないだろう。
「真琴、本当ですか。では早速参りましょう」

優夜さんの表情が明るくなり、尻尾がぱたぱたと動く。憎めないひとだなあ。
それに正直言って、僕は弾幕にはあまり自信はない。だから僕にとってもこの助っ人はありがたいのだ。

「それで、冥界の門へはどう行けば?」
「たぶん、このはた迷惑な雪をたどって飛んでいけば何とかなると思うよ。行こう」

僕は箒にまたがり、雪の降る大本を目指して飛び上る。

「朝倉、あと頼んだぞ」

屋根に上り、スコップに魔力をこめている最中の朝倉がこっちを見てうなずいた。

「任せとけ」そして再び視線をスコップに戻し、屋根の雪へ突き刺す。
「おりゃあ」掛け声で象ぐらいもある雪の塊が一気に吹き飛んだ。

あれ、優夜さんがいつまでたってもついてこない、見ると困った顔で地上をウロウロしているではないか。

「ひょっとして……飛べない?」

彼は首を縦に振った。
近頃は自身の魔力で飛ぶのにすっかり慣れ、非常用の反重力装置は携帯していなかった。
仕方がないので、箒の後ろに優夜さんを乗せていくことにする。

「ありがとうございます、ず、随分高く飛ぶんですね」

高所恐怖症らしく、僕の背中にぴったりとしがみついている。

「ちょっと、くっつかれていると飛びにくいよ」
「でも、こうしてると温かいでしょう」

男二人で一本の箒にまたがるのはなんだか絵にならないなと思うが、確かに寒い空でも背中が暖かい。懐かれたのだろうか。
そう考えていると、突然優夜さんが犬耳をぴんと伸ばし、前方のある一点を凝視した。

「真琴、何か来ます」

僕も何かの気配を感じ、進行方向はそのままで箒を左に滑らせる。
一粒の魔力弾がその場を通り過ぎて行った。

「てえぃ」

優夜さんの投げた小型の投げナイフが、弾を撃った主に命中し小さく爆発して消えた。
人形みたいだった、まさか。

「上手くなったわね、褒めてあげるから、今日のところはお家に帰りなさい」

アリスさんだった。人形たちを従え、魔道書を持ち、行く手をふさぐように浮かんでいる。

「アリスさん! 今は急いでるんです、そこをどいて下さい」
「真琴、あの人は?」優夜さんが耳打ちする。
「僕の魔法の師匠」 小声で答える。

「真琴君、白玉楼を目指しているのね、でもここから先は、まだあなたには危険すぎるわ。
すぐ帰りなさい」
「でも、母が急にいなくなって、ミカと真理歌も追っているんです。僕も行かなけりゃならないんです」

しばらくアリスさんと押し問答になった末、アリスさんがこう切り出した。

「じゃあ、弾幕ごっこで私に勝ったら行ってもいいわ、
ただし、負けたら今日の昼食をそこの執事さんと一緒に作って頂戴」
「わかりました、全力を出します」
「僕もお相手します。」

僕は片手でスペルカード、優夜さんは投げナイフを指の間にはさむ。

「全力は出さないけど、これに負けるようなら、先へ進んだところで違う意味で冥界行きよ。
来なさい。少年魔砲使い&ワンちゃん」
「アリスさん、行かせてもらいます」
「ひさびさに野生の血が騒ぎそうですね」



業を断ち切れ



弾幕ごっこを挑んできたチルノちゃん、
軽く遊んであげようと思ったら意外と強くなっていた。

「あっはっはっは。巫女だからって負けないよ」
「う~ん、本気で封印しちゃおうかなあ」

冷気がきつくなってきた。

「はーるでーすかー? もしかして速すぎましたか」

たまたま周囲を飛んでいたリリーホワイトが自信をなくしていた。

私の近くに飛んできた氷玉を、真理歌ちゃんが両手で構えたビームタケミツではじく。
はじかれた氷玉がチルノちゃんに当たった。

「いで」
「ごめん、でもチャンス」

真理歌ちゃんの周りに浮かんでいる、かすかに見える霊魂が霊力の玉を撃つ。
チルノちゃんの冷気の結界が薄くなっていく。


「ねえ、悪いけど私たち急いでるの」
「くそ~こうなったら、レティ!」

急に強い北風が吹き、私たちを吹き飛ばそうとする、
冬の妖怪まで呼ばれたらちょっと事だな。
そうだ、いいこと思いついた。小声で真理歌ちゃんに話しかけます。

「しっかり手を握ってて、逃げるよ」
「えっ、まだ負けてないよ」

私は彼女の手をとり、わざと北風に吹き飛ばされるふりを演じることにします。
真理歌ちゃんは意外と軽い。何分の一か幽霊でできているからかな。

「うわああああああ、吹き飛ばされる~」棒読みで叫びます。
「どうだ思い知ったか、やっぱりこの時代でもあたいったら最強ね」
「まだよ、博麗はこれくらいでへこたれない」

北風に吹き飛ばされるままではなく、時折風に逆らうような仕草もしつつ、
少しずつ方向を修正して、冥界の方向へ向かいます。
チルノちゃんは気付いてないようです。

(ミカさん、もうちょっとであの子に勝てそうだったのに)
(白玉楼に行くのが目的でしょ、だからいいの)

雪が吹いてくる方向を目指し、だいぶ高いところまで上昇すると、不思議な感覚のする空間が現れました。
左右に何本もの巨大な柱が浮かび、一直線の道を作っています。
その先には巨大な紫色の魔法陣が浮かび、雪はそこからやって来るようです。
神秘的な光景。
私たちが死ぬ時もこんな場所に行けるのでしょうか。

「ミカさん待って、気配がする」 

真理歌ちゃんが指差した方に目を向けると、羽の生えた女の子らしき人影が。

「もしかして、この門の番人かしら」
「ミカさん、なんとなくだけど、冥界サイドの人じゃなくて、ここへの訪問者みたい」
「とすると、あの子も異変解決のためにここへ来たか……」
「あるいは、ガチで天に召された子かも、年は私たちぐらい、可哀想に」

その子がこちらに近づいてきて、よく通る声で叫びました。

「まだ死んでなーい」

「あっ、ミスチーさん、とうとう食べられちゃったの」
「んなわけないわよ、あんたに用があるの、今日こそ清算してもらうわよ」

ミスティア=ローレライは私を指差して言いました。

「ミカさん!」 真理歌ちゃんが私をかばうように前に進み出ます。
「ごめん、真理歌ちゃんは先へ行ってて頂戴、これは私と彼女の問題よ」
「でも……」
「あの子は異変解決の邪魔をしに来たわけじゃないわ、大丈夫、すぐ追いつくから」
「そっちの奴には用はないわ、どこへでも行ってしまいなさい」
「さあ、早くお母さんの所へ行ってあげて。ここで、断ち切らなければならないの」

真理歌ちゃんは迷っていましたが、やがて心を決めて言いました。

「……わかりました、絶対、追いついてきて下さいよ、死んだら許さないから」
「うん、終わったら一緒に宴会しましょ」
「じゃあ、待ってます」

言い終えて真理歌ちゃんはミスチーの横を通り過ぎ、冥界の白玉楼へ続く門へ入って行きました。

「さあ、弾幕勝負と行こうか?」
「ちがう、屋台のツケを払えっての!」
「ぐっ、やっぱその事だったか、一体いつまで引っ張るつもりなのよ、そのネタ」
「あんたが払うまでに決まってるでしょ」


「ミカさ~ん」真理歌ちゃんが呆れ顔で戻ってきました。
「そんな事でもめてたんですか、あなた方は?」
「こっちは死活問題なのよ」
「こうなったら私が払いますよ、夜雀さん、いくらなの?」

金額を聞いて、彼女はさらに呆れ顔になりました。

「えっ、ミカさん。言っちゃあ何だけど、それすら払えないんですか、
里を守護する巫女やってるのに?」
「真理歌ちゃんこそ、そんなにお小遣い貰ってたの?」
「これくらい普通ですよ、もっと稼いでるかと思ってた」
「でも、お弁当も、ルーミアへのおやつもお母さんが作ってくれるし、妖怪や妖精を追い払うとみんなお茶とお菓子をくれるし、不自由はないよ」

彼女にツケを立て替えてもらいます。我ながら情けない。
ミスチーはお金を受け取ると、急いで地上を目指し飛んで行きました。
寒かったというよりも、やる事を終えたら一刻も早くここを離れたいというような感じでした。
なにかのトラウマ?

「ありがと、助かったよ。でも真理歌ちゃんには情けない所見せちゃったなあ」
「でも、そんなイノセントなミカさんが好き」

気を取り直して、結界に向かいます。

「確か、大昔の異変で、霊夢さんもここを通ったんだよね」
「そして、行った先で真理歌ちゃんのお母さんとバトルした」

私にとっては遠い祖先の話なのに、真理歌ちゃんにとってはお母さんの話です。
彼女はお母さんに似て、真琴は違うようだけど、寿命に違いはあるのかな?
霊夢さんはどんな思いでここを通りぬけ、
そして、真理歌ちゃんのお母さんはどんな思いで対峙したのでしょうか?



転んでもただでは……



結論から言うと、アリスさんに負けた。
優夜さんの弾幕は多彩で力強く、弾幕が得意ではない僕をフォローしてくれた。
そして僕は、飛べない彼の代わりに(自分で言うのも何だけど)空中を自在に動き回り弾幕をかわし続けた。飛ぶのには自信がある。
しかし、アリスさんが最後に宣言したスペルカードをあともう少しで避けきれるかというところで被弾してしまい、そのまま魔法の森まで人形たちに連行され、
アリスさんの家で昼食の支度をする羽目になっちゃった。

「ごめん、あの死角の弾に気づいていれば、今頃二人に追いつけたのに」

キッチンで野菜を切りながら優夜さんに謝る。

「真琴、気を落とさないでください。
あの方は負けたら昼食の準備をしろとだけとおっしゃった。
つまり、作ったらまた行ってもいいという事ですよ」
「でも、昼食にしてはやけに量が多すぎるなあ」

僕はテーブルに置かれた料理のリストをもう一度見た。アリスさんが指定した料理とその量。作り方、材料を買うお店の指定まで書かれている。その傍らにはお金を入れた巾着も置いてあり、材料がなければ買って作れと言う事だ。
アリスさんは隣の部屋で人形作りをしており、
いつまでかかってもいいから、必ず作りなさいと言った。

「確かアリスさんは食べなくても生きていけるらしい、
楽しみで食事を摂る事もあるらしいけれど、
この量はアリスさんと僕ら、3人でも食べきれないよ。
材料を買って作るのも時間がかかり過ぎるし。
その間にもしミカと真理歌が危ない目にあっていたら……」

僕は包丁をまな板に置き、優夜さんに向き直って言った。

「優夜さん、やっぱ行こう。二人が心配だし、ご飯は後で作ればいい、
アリスさんは時間がかかってもいいと言った」

だが優夜さんは僕の腕をつかみ、真剣な口調で反対した。

「真琴、あの人の、アリスさんの思いを無駄にするんですか?」
「どういう事だい?」
「食べなくても生きていける方が、なんでこんな量の食事を作らせるのか、
それは真琴を足止めしたいからですよ。つまり、君の事を心配してるんです。
危ない目に遭ってほしくないんですよ」
「でも、アリスさんが僕らにとって危険だと思う異変に、真理歌とミカが
行ってるんだよ、見捨てていけないよ」

僕は帽子をかぶり、箒を手に持ってキッチンの窓を開けようとした。
開かない。鍵がかかっている。少し頭がカッとなる。

「一人でも行くよ、優夜さん、今までありがとう。料理は帰ったら必ず作るとアリスさんに伝えといて」

鍵を乱暴にはずして右足を桟にかけようとするのを、優夜さんに止められた。

「真琴、君一人で行くなんてずるいですよ。私は飛べないんですよ」
「優夜さんの力なら、徒歩でも魔法の森を抜けて永遠亭まで帰れるよ」
「そういう意味じゃありません。そこまで言うのなら、一緒に行きましょう」
「それじゃあ……」
「私もこの異変の調査を命じられていますし、何より、
中途半端で仕事を放り出したら執事の沽券に関わりますしね」軽くウインクした。

僕はうなずくと、ポケットから先祖伝来の八卦炉を取り出して、箒についたホルダーに取り付けた。
後ろに優夜さんをまたがらせ、箒を浮遊させると、開けた窓から飛び出す。

「だいぶ遅れちゃってるはずだから、ちょっと飛ばすよ、つかまっていて」

八卦炉に魔力を注ぎ込み、後方へ一気に噴出させる。
外界のロケットのような加速度で森を抜けだすと、
アリスさんの家が見る見るうちに小さくなり、
やがて自分の里が見えた。雪はやんでいたが、二人と母さんの安否はまだ分からない。
自分を勇気づけようと歌を歌う。

♪~~♪~~♪

「真琴、ちょっ、速すぎ」

♪~~♪~~♪

「スピード出すぎですよ」

♪~~♪~~♪

「だめだ、この人自分の世界に入っちゃってる。
出しゃばるオリキャラは嫌われるって、作者も先例を知らないわけじゃないでしょう」

遊んでいるレティ様とチルノさんを横目に通り過ぎ、冥界の雰囲気がする方向を目指してひたすら上昇する。
いつの間にか全身を包む不思議な感覚に気がつくと、左右に並ぶ無数の柱が宙に浮かび、通り道を作っていた。
とうとう顕界と冥界を繋ぐ門にたどり着いたのだ。

「あっ、リアル犬肉発見」 女の子の声が一面に響いた。

優夜さんは一瞬体が震え、せわしなく耳を前後左右に動かし、周囲を警戒している。

「おや、人間のお客さんとは珍しいわね、新曲を聞いていきませんか」 
黒い服の暗そうな目の女性が言う。
「御用とお急ぎでないお方は聞いて躁状態になっていってよ」
白い服のやたら明るそうな女性が言った
「お代はそこの犬肉だよ~」
やんちゃな感じの赤い服の女の子が笑った。背は三人のなかで一番低い。
噂に聞く騒霊3姉妹だ。

「真琴、さっさと突破しましょう」 優夜さんは少し震えているようだ。
「そうだね、3人も相手したらやばい」

3姉妹が音楽を奏で始めた。
不思議な音色が僕らの心をかき乱す。
聞いているだけで心が沈んで、何もかもがどうでも良くなってしまう気がした。
かと思えば、自分が天下を取れそうだと思えるほど、気が大きくなったりする。
感情の振幅が納まったかと思うと、また鬱と躁の感情の波が交互にやって来る。
箒がふらつき、優夜さんが落ちそうになった。

「真琴、音を聞いちゃいけない」

奇術『エターナルミーク』

優夜さんが必死でナイフをまき散らす。だが3姉妹はゆらゆらと動いてかわし、楽曲は乱れない。

「音を乱すには、音しかない」

僕は耳栓をはめると、小さな鉢に入った護身用マンドラゴラを帽子から取り出し、投げつけた。
パチュリーさんの所で栽培されていたヤツだ。
遠心力で根っこが鉢から抜け、日の光にさらされた人型の部分がすさまじい金切り声尾を上げる。
3姉妹もあっけにとられて演奏をやめ、叫びながら落下していくマンドラゴラを見つめていた。
そのすきに箒をダッシュさせ、結界突入に成功。
ミカと真理歌は無事だろうか。振り向くと、優夜さんが頭を片手で押えてうずくまっていた。
すっかり忘れてた。

「ま、真琴、そういう事なら先に言って下さい、死ぬかと思った」
「ごめん、言う暇がなかったから、人間より耳が敏感なんですね」
「ん? なんか猫の鳴き声が聞こえたような」

大きな音を聞いた後遺症かもしれない、あるいは重度の猫好きだからそう聞こえたのだろうか。
いや、今はまず二人を追いかけ、母さんに会うのが先決だ。
僕らは不安を押し隠し、目の前にある石段を一直線に駆け上がっていった。
生意気に続きます。
とらねこ
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コメント



0.420簡易評価
2.無評価名前が無い程度の能力削除
まずタグをどうにかしなさい。ここまであからさまに自虐をやられると不愉快だから
3.無評価名前が無い程度の能力削除
なんだこれ?
7.70コメントする程度の能力(ぇ削除
密かに気に入ってるこのシリーズ
いいぞもっとやれ
12.80不動遊星削除
 読ませて頂きました。素敵なお話をありがとうございます。面白いお話だと思いますが、ちょっと古い感が否めないですね。長い事続いてるからかも知れないけれど、全体的に色褪せた作品になっている気がします。生意気でも構わないですが、そこをちょっとだけ気を付けてくれるとありがたいかな。では。
13.無評価名前が無い程度の能力削除
フリーレスその1さん
 失礼しました。卑屈すぎてかえって不愉快な印象を出してしまいました。申し訳ありません。

フリーレスその2さん
 すみません、作品集27,30,51,91,96に投稿したオリキャラ主人公の物語です。

コメントする程度の能力(ぇさん
 ありがとうございます。後半はほとんど出来上がってます。ただ小ネタが暴走気味なので怒られるかもしれませんが、少なくともストーリーの収拾はつきました。

不動遊星さん
 高評価に感謝します。最近は新人の方の活躍が目覚ましいですね。前より作品集が埋まるペースが速まってるいるように感じます。私はつい型に安住してしまいがちなので、新しい感性にも触れるようにしたいと思います。
17.80あえて名無し削除
自分のレスが新作の題材の元になる…何かクスグッタイ気分です
私自身はこのシリーズが好きです、頑張って下さい