自室で寝ていた美鈴は、真夜中にふと目が覚めた。
真夜中であるというのに、何者かがノックもなく室内に入ってきたからだ。
普通なら身を起してそれが何者なのか確認し、場合によってはそのまま排除するだろう。
しかし、美鈴はその侵入者が誰なのか確認しようとはせず、再び寝に入ろうとする。
こんな「おいた」をする人物は、美鈴が知る限りでは紅魔館内に一人しかいないからだ。
そして今後の展開の予想も出来ている。あとはなるようになるだけなのだ。
美鈴の目が覚めてしまっている事に気が付いていないのだろう。
その侵入者はいそいそと美鈴の布団の中へと、わざわざ足元の方から潜り込みはじめる。
――おや?
はなから美鈴の戦術予想は外れる事になった。
いつもの彼女ならさも当たり前の様にがばっと布団をめくり、ずばっと中に入ってくる。
だが今晩は何を考えてか、わざわざ足元の方からゆっくりじっくり侵攻して来ている。
しかも彼女の大好きな添い寝になる様にではなく、覆い被さる様にしての上陸作戦である。
戦術を変えたのだろうか。
侵入者は自分の頭が美鈴の胸元に達するとそれ以上は進出して来なくなり、しばらくして
そのまま安らかな寝息を立てはじめた。いつもなら突然現れては布団を剥いで、隣に横たわり
仔犬みたいにじゃれついて来るのに、今晩は何もしないで大人しく寝はじめている。
どうやら本当に戦術を変えたらしいが、いつも彼女がする不意打ち+強襲作戦比べれば、
今晩のような大人しい浸透作戦は、その攻略対象の美鈴としても少しだけありがたかった。
美鈴は彼女との添い寝もじゃれ合いも好きなのだが、じゃれ合いだけはもう少しムードを
考えて欲しいのだ。そういう意味では今晩は少し物足りない気がしないこともない。
その物足りなさを補うために、美鈴はそっと胸元で眠る彼女の身体を抱き締める。
彼女の身体は失礼ながらも美鈴の想像以上に軽く、また華奢に感じられた。
日頃の激務のためなのか、もともとそういう体質なのかは分からないが、
彼女は良くいえばスレンダーで、悪くいえば肉付きがあまりよくなかった。
美鈴としてはもっと食べて肉付きを良くしてくれた方が健康的でいいのだが、
一緒に食事をする時も彼女は自分の量の半分も食べない。その事が気になって
そんな量でよく足りますねと偶に彼女に聞くが、貴方が食べ過ぎなのよと言うだけで
まともに取り合おうとしてくれない。もしかしたら皮肉に思われているのかもしれない。
そのため美鈴は一度だけ健康にいいとされる食べ物を集めて、見様見真似の栄養剤を調合し、
彼女に飲んでもらおうとしたのだが、なにこれ?凄くクサイの一言で断られてしまった事さえある。
彼女は特別身体が弱かったり、病弱だったりするわけではないが、初めて会った時には
主人から、この子は人間だからあっけなく死ぬ。だから大切に扱うのよと厳命されているし、
個人的にも彼女には出来ることならずっと健康でいて欲しいと美鈴は願っている。
――ずっと元気でいて欲しいなぁ
と胸元の彼女に思い――願いを馳せていると、しだいに美鈴は眠りへと落ちていった。
紅魔館の二階にあるテラスでレミリアは紅茶を飲んでいた。
時刻は正午にかかる頃で、春の暖かく優しい日の光が世界を満たしている。
吸血鬼であるレミリアにとって日光は天敵なのだが、その暖かさと優しさだけは
どうしても嫌いになりきれず、時折日陰からとはいえ堪能したくなる時がある。
文字どおり敵ながら天晴れというやつである。
「庭園が綺麗ですね」
傍らに控えている咲夜が呟く。
「そうね、見事なものだわ」
眼下に広がる庭園にレミリアは目を奪われる。
その庭園は門番をしている美鈴が半分趣味で管理しているもので、いつも四季折々の花が
咲き誇っており、レミリアはもちろんのこと他の従者たちや、数少ない来訪者の目を
楽しませてくれている。半分は趣味だけあって花の植え方は洗練されておらず乱雑さもあるが、
何かしらのテーマは存在するのだろう。無秩序の中にも秩序が垣間見られた。
レミリアが紅魔館の中核――心臓だとすれば、この庭園は顔と呼べるのかもしれない。
「……あの子が門番を解雇になったら、うち専属の庭師として雇う事にするよ」
「それはいいお考えですわ、お嬢様」
咲夜は冗談だと捉えているようだが、レミリアとしては割と本気で門番から庭師への
配置換えを考えていた。今以上に美しい庭園を見てみたいからである。
半分はただの趣味だというのに、これほどのものなのだ。本職の庭師に任命すれば
それはもう素晴らしいの一言に尽きる代物にまでに、この庭園を昇華させることだろう。
そう思いながらレミリアが紅茶で唇を濡らしていると、傍らの咲夜がぼそっと話した。
「そう言えば、朝から美鈴の姿を見かけませんね……」
咲夜はまるで独り言のように呟いたが、明らかにレミリアへの質問だった。
そもそも、さきほど庭園を話題にしたのもこの質問への布石だったに違いない。
レミリアからすればもっと直接的に問いかけてきても構わないというのに、
傍らに控える従者は遠慮して遠まわしな言葉しか口にしない。
その姿を見てレミリアは悪魔らしく少しからかってやろうと思い、
ほんの少しの間、冗談の内容を思案した。
そこでレミリアは、咲夜と美鈴が何故か自分には大っぴらにしようとしない
二人の仲に関係する冗談を思い立ったので、それを採用して紅茶を片手に
庭園の方を眺めたまま咲夜の独り言に応えた。
「美鈴は人間の里の方に嫁にいかせたわ」
「………」
「あの子も身を固めるべきだと思ったの。美鈴からは何も聞いてなかったの?」
レミリアは冗談を言い終わり、紅茶を飲もうとカップを口に近づける。しかしすでに
飲みほしてしまっていたらしく、唇を濡らしてくれるものは何も無かった。
レミリアがカタンとカップをソーサーに戻す。
本来なら音を立てるのはマナー違反だが、これは従者に紅茶のおかわりを注がせるための
合図として、いつの頃からか紅魔館内では不文律化している行為である。
しかし、新しい紅茶が注がれる気配は一向にない。どうしたのかしら?と
レミリアが傍らに目を向けると、生気が抜け人形みたいに立ち尽くす咲夜の姿があった。
その目はどこか遠くを見ているようで焦点が合っていなく、心ここにあらずといった様子だ。
レミリアが視線を向けてからワンテンポ遅れて咲夜は反応をしめした。すみませんと
消えてしまいそうな声で一言だけの謝罪をした後、いつもの様子で空いたカップに新しい紅茶を
ゆっくりと注ぎはじめた。
――まいったわね
カップを満たしていく紅茶を見つめながらレミリアは後悔をする。
軽い冗談のつもりで口にした自分の言葉を、咲夜が真に受けてしまったからだ。
はやく冗談だと伝えたいのだが、変なプライドが邪魔をしてなかなか口が動かない。
「美鈴は……どこに嫁ぎに行ったのです?」
咲夜が感情を押し殺し、落ち着きを装った声音で呟いた。
もはや冗談ではすまされない雰囲気が場を支配しはじめている。
「知りたいの……?」
「はい、お祝いを届けたいので……よろしければ是非」
「えっと、今年新しく人間の里で開店した甘味処よ」
「あそこですか、前に……美鈴が話していました」
レミリアはてきとうな事を言っていれば、咲夜も怪しんで勘付くだろうと思い、
口からでまかせの架空の店を美鈴に嫁ぎ先としたが、運の悪い事に実在していたらしく
さらなる泥沼へと自ら足を踏み入れる事になってしまった。
場の空気に耐えられなくなりレミリアは、入れられたばかりの紅茶を
一気に飲み干し席を立とうとする。
「……そろそろフランのところへ行くわ、片付けをお願い」
「かしこまりました。ところで……」
そそくさと逃げるようにしてテラスから去ろうとするレミリアに咲夜は問いかけた。
「ところで……美鈴は幸せそうでしかたか?」
「……ええ、幸せそうだったわ」
「それは……よかったです」
最後に、にっこりと笑った咲夜の顔をレミリアは直視出来なかった。
レミリアはフランドールのところではなく、図書館に来ていた。
さきほど起こした問題を解決するための助言を、親友のパチュリーから貰うためだ。
パチュリーはレミリアの顔を見た瞬間にまたかといった表情をしたが、
気前よくレミリアの話しを片手に本を持ったまま黙って聞いてくれた。
「素直に謝りなさい」
「それが出来ないからここに来ているの」
どこまでも強情な親友の態度にパチュリーはため息をつく。
どうせ黙っていてもすぐにバレてしまうのだから、おとなしく素直に謝った方が
あと腐れもなく一番いいと主張しても目の前の親友は首を縦に振らないからだ。
「レミィも二人の関係は知っているのでしょ?」
「そりゃ二人の飼い主だもの。把握はしているわ」
誇らしげに胸を張っている親友を見て再びパチュリーはため息をつく。
紅魔館の二匹の犬の間柄は意外と周囲に広まっており、博麗神社の宴会に参加する者で
知らない者は一人としていないくらいである。それだと言うのに二人は主人である
レミリアには変に気を使われたくないらしく、どこか隠しているふしがあった。
そのためレミリアも見て見ぬふりをしているのだが、気になるものは気になるので
パチュリーや他の妖精メイドたちの噂話を通じて色々な情報を手にしている。
「そんな態度だから、二人から秘密にされるのよ」
「うっ……あれは恥ずかしがっているだけよ」
決して自分の非を認めようとしない親友を見てパチュリーは三度目のため息をつく。
このまま話しを続けても仕方がないのでパチュリーは話題を少し変えてみることにした。
「……それにしてもよくあの二人の事を認めたわね」
「うんなにが?」
「レミィの事だから、あの二人の間柄を認めないと思っていたのよ」
「あぁ、そのこと……」
興味なさげに机に突っ伏した親友を後目にパチュリーは言葉を続ける。
「咲夜はあなたのお気に入りの従者で、美鈴は美鈴で元あなたのお守役でしょ?
――聞くところによると昨晩は美鈴が恋しくなって一緒に寝ていたらしいわね。
その独占欲が無駄に強い我儘大王のレミィがどうして二人の仲を認めたのか不思議なのよ」
「それは私にだってよく分からないわ。ただ何となく面白そうだから認めているの」
レミリアはそこまで言うと顔を上げ、恥ずかしそうに目を逸らして話しはじめた。
「最初はパチェの言うとおり、何か手を打とうとしたわ。だって二人とも私の大切な
犬だし、勝手にどこかに行かれては困るもの。だけどあの二人が幸せそうにしているのを
見ていたら気が変わった。それに私の手元から離れていく様子も運命もなかったしね」
「運命まで見たの?さすが我儘大魔王レミィね」
「だって二人とも私にとっては家族みたいなものなのよ?いなくなるなんて嫌よ」
そこまで言い終わると恥ずかしさが頂点に達したのだろう、レミリアは再び机に伏せてしまう。
パチュリーは顔を見せてくれない親友の柔らかい頬を、つんつんしながら声をかける。
「ではその大切な家族に意味不明な嘘をついたのは誰?」
「うっ……」
「分かったでしょ、早く謝りに行きなさいな……って遅かったみたいね」
「へっ?」
「美鈴が帰って来たのよ」
「ただいま戻りました~」
紅魔館の広いエントランスに明るく朗らかな声が響く。
その声の主である美鈴は肩に担いだいくつもの背嚢をどっさと床に置いた。
中には各種日用品をはじめ茶葉や古書などがごったがえしになって入っている。
朝からレミリアの指示で人間の里まで臨時の買い出しに行っていたのだ。
今朝の事を思い出し美鈴は一人苦笑をする。
美鈴はいつもの時間に目を覚ますと、胸元にいる彼女はまだぐーすかと寝ていた。
そこで美鈴は揺り起こすがてら、ここぞとばかりに彼女に奇襲攻撃をしかけることにした。
具体的に言えば布団越しに彼女をぎゅっと抱き締めた後に、普段なら絶対に言わないような
歯の浮いた言葉を彼女の耳元で執拗に連呼するなど、美鈴はやりたい放題にじゃれついたのだ。
しかしこの奇襲攻撃は胸元にいる彼女が咲夜だという事を前提にした作戦であって、
胸元の彼女が第三者であるという可能性を全くもって考慮したものではなかった。
そのつけは身体で支払う事になった。美鈴は突然のぐーパンチをもらう事になったのだ。
そして華麗なぐーパンチを決められ、ベッドからすっとんだ美鈴が見たものは、恥ずかしさの
あまり真赤な顔をしてこちらを睨んでいる主人――レミリアの姿だった。
遥か昔、美鈴はレミリアともよく一緒に寝ていたが、レミリアが正式に紅魔館の
当主になってからは一度も一緒に寝ていないので美鈴はただ驚くだけでなく、嬉しくもあった。
「お……お嬢様?!なんでここに……?」
「久しぶりに一緒に寝て欲し……やったというのに、いきなり何するのよ?」
「いや、だって私はてっきり……」
一緒に寝ていたのは咲夜さんかと、とまでは美鈴は言葉を続けなかった。
レミリアにはもう咲夜との関係を知られているだろうが、あえて話す必要もないからだ。
「てっきりなに?」
「いやなんでも、粗相をすみません……」
「……それより美鈴、今から里まで買い出しにいってもらう」
「買い出しですか、分かりました」
美鈴は買い出しの命令を喜んで受ける。
買い出しで購入する物品の数はかなり多いため、一つ一つが小銭程度の
値引きであっても、気が付けばそれなりの金額になっていることがあり、
そのお店から値引いてもらった分だけ、こっそりと買い食いが出来るからだ。
もちろんこれは従者たちの秘密の楽しみで主人であるレミリアや紅魔館の
家計簿をつけている咲夜には知られてはいけないものである。
さて今日は何を食べようかと美鈴が人間の里の食べ物屋に思いを馳せていると、
「あぁ、それと一応言っとくわ」
「?」
「買い食いするのは結構だけど、余ったお金でするのよ?」
「……はい」
「あと、お土産もよろしくね」
どうやらレミリアは買い食いを黙認してくれているらしかった。
今朝の事を美鈴が思い出していると、屋敷の奥から咲夜がやって来た。
その両手には見慣れない何かを持っている。
「……美鈴。こんなところで、なに一人でニヤついているの?」
「ニヤニヤなんてしていませんよ。咲夜さんこそ何ですかそれは?」
美鈴は咲夜が大切そうに両手で抱えているものに指を向ける。
「これ?お祝いよ」
「お祝いですか……?」
咲夜が持っているものは綺麗な用紙で丁寧に包装された箱だった。
咲夜はお祝いだと言うが、美鈴には誰へ贈るものなのか見当がつかない。
「そう、お祝いよ。ところでそれが貴方の荷物なの?」
「はい、そうです。思った以上に多くてびっくりしました」
つい先程に美鈴が床に置いた背嚢の群れを咲夜はしげしげと見つめる。
「中にはなにが入っているの?」
「お嬢様の紅茶にパチュリー様の古書、あとは日用品類が沢山です」
美鈴の言葉を聞いて咲夜は少しだけ考え込んだ後に口を開いた。
「……その中にこれも追加してくれる?」
「いいですよ」
そう言って美鈴は咲夜からお祝いの品を受け取った。おそらくはレミリア宛てに
届けられたものなのだろう。なんだかずっしりとして見た目以上に重かった。
美鈴としては最初から、レミリアの元へ買い出しの完了の報告と、お土産を
届けに行くつもりだったので、美鈴は咲夜の頼みを聞くことにしたのだ。
「本当は直接届けた方がいいのだろうけど、ここで貴方に渡しても大丈夫よね?」
「はい、咲夜さんはお忙しい立場なんですから仕方がありませんよ」
「そう言ってもらえると嬉しいわ、あとね、美鈴……」
「なんですか?」
「これからも時々、貴方のところへ行ってもいい……?」
「今更なに言っているんですか、毎日来て下さっても大丈夫ですよ」
「でも、それでは迷惑にならない?」
この言葉に美鈴は表情には出さなかったが驚愕した。
どうやらレミリアではない本物の咲夜は、本当に戦術を変えたらしかった。
普段の咲夜は、なんの前触れもなく美鈴の部屋に来てはやりたい放題していたのが、
今日の咲夜はしおらしくなって、じゃれつく事のお願いをした上に遠慮までしている。
もはや目の前の咲夜が本物かどうかを疑うレベルでの戦術変換であった。
「考え過ぎですよ。本当の事言うと毎日ってのは少し困りますけどね」
「それは分かっているわ、週に一回くらいでいいかしら?」
「それだけでいいのですか?私は一日おきでも大丈夫ですよ」
「貴方は大丈夫でも、家の人に迷惑が掛ってしまうわ」
「家の人……?」
「貴方の……主人のことよ」
「私の主人……レミリア様ですか?」
「貴方の新しい主人のことよ……」
それだけ言い残し咲夜は美鈴の視界から消えてしまった。
時間を止めて移動したのだろう、それは一瞬の事で美鈴は何の反応も出来なかった。
ただ咲夜のいた場所にはいくつかの水滴が落ちていて、床を濡らしていた。
「紅美鈴、買い出しを完了しました」
「うん、ご苦労」
目の前で仰々しく敬礼をする美鈴をレミリアは短い言葉でねぎらった。
それは美鈴を軽んじているわけでも、頼んだお土産が早く欲しいからでもない、
美鈴が事態をどこまで把握しているか聞きたいからだ。
「ところで美鈴。もう咲夜には会った?」
「はい、帰ってすぐにエントランスで会いました」
どうやら美鈴は咲夜には会ったものの事態には、まだ気が付いていないみたいだった。
これが幸運なのか不運なのかレミリアには分からなかったが、とりあえず美鈴に
簡単な事情を話すことにした。
「……というわけなの」
「どうしてまたそんなわけの分からない事をしたんですか?!」
「うっ……だって、あんた達二人が私を除け者にするから……」
美鈴が怒ったのを見てレミリアは本音をぽろりと落としてしまう。
慌てて弁解しようとしたものの、美鈴は頭を抱えて呆れてしまっている。
「そんな理由ですか……?」
「……悪かったとは思っている」
「はぁ……分かりました。咲夜さんには私から説明しておきます」
「そうしてくれると助かるわ」
「でもこれっきりにして下さいよ?」
そう言って美鈴は綺麗な箱を置いて咲夜を探しに行ってしまった。
レミリアはその箱が頼んでおいたお土産だと思い、さっそく開けてみる事にした。
持った感じだとかなり重く、お酒か何かと期待しながら包装を破って蓋を開け
中身を確認したところ、その箱の中には何故かぎっしりと大量の調理器具、
主にナイフが所狭しに並べられていた。そしてその中央には一通の手紙がある。
レミリアは大量のナイフも気になったが、それよりもその手紙の方が気になり
手に取って書かれている文字を読んでみたところ
『美鈴のことをよろしくお願いします』
と短い一文があるだけで他にはなにも記されていなかった。
美鈴が咲夜を探しだすのに時間はそうかからなかった。
咲夜は厨房で夕飯の仕込みちょうど終えたところらしく、
美鈴は背後からゆっくり咲夜に近づきそのまま抱き締めた。
「……私の相手なんかしていていいの?」
「咲夜さん以外にこんな事はしませんよ」
暗く沈んだ声の咲夜と対して、あくまで美鈴は明るい声だ。
「嘘を言わないで、だって貴方は……」
咲夜を抱き締める美鈴の腕に冷たいものが降ってきて、
それと同時に咲夜の身体が小刻みに震えはじめる。
美鈴は咲夜の身体を抱き締める力を少し強くした。
咲夜の体温が直に美鈴の身体まで伝わって来る。
腕に落ちたものと違い、それはとても暖かかった。
「私はどこにも行きませんよ?ずっとここにいます」
「でもお嬢様は、貴方が里の方に行くって……」
嗚咽を堪えた声で咲夜が呟いた。
それに美鈴は柔らかな声で応える。
「それはお嬢様の悪ふざけです」
「本当に……?」
そう言って咲夜は美鈴の腕の中で身体を反転させて、美鈴の顔を覗き込もうとする。
美鈴は咲夜の動きに合わせて抱き締める腕の力を一度緩め、抱き締め方も変えた。
そうして二人はお互いに向き合っての抱擁をしているかたちとなった。
「私が咲夜さんに嘘をついた事ありますか?」
「多分あるけど……全部忘れちゃった」
「それなら一度もないのと同じですね」
「……うん、美鈴は私に嘘をつかないわ」
「なら私の言葉を信じてくれますか?」
「……信じるから、本当にどこにも行かないでね?」
「約束します。私は咲夜さんの側に、ずっといると」
「うんずっと側にいて欲しい」
咲夜の声はすでに普段のものに戻り、身体の震えも止まっていた。
そのかわりに咲夜は胸元で組んでいた自分の腕を美鈴の背中へとまわして、
そのまま背中の方から美鈴の肩をつかみ、引くように体重をかけて背伸びをした。
逆に美鈴は咲夜に体重をかけられて前屈みになってしまう。
そしてそのまま―――
そうだと色々妄想できて楽しいからですが・・・。
先代位から支えてそう
あとおぜうがさりげにかわいいw
うわっ 2828がとまらねぇ
そのとき厨房に電流走る…っ!!
ざわ…
ざわ…
いいぞもっとやれ
お幸せに!
まあつまり美鈴が大好きだ!
私も美鈴は最古参の存在だと思います。そうだと良いな。
色々楽しめて良いですよね。
性格的にも能力的にも
落ち着いててしっかりしててとても好みのめーさくでした