これは「雛の神様トレーニング-1日目- 」の続きとなっております。
なので前作と流し程度で読んでおくと話がつながると思います。
~あらすじ~
雛への信仰心が薄くなり、雛はお腹が空きました。
信仰心を求めて、困ったときの博麗神社に行くと、一枚の広告を渡されました。
--------------------------------------------------------------------
関係者各位
守矢神社 規格部
部長 東風谷 早苗
幻想郷トライアスロン大会について
拝啓、エアコンが無くて熱い夏、皆様どうお過ごしでしょうか?
今回、守矢神社の信仰増加計画の為、幻想郷トライアスロンを開催する
ことを決定しました(やったね神奈子ちゃん信仰が増えるよ!)
つきましては参加者を募集しております。ちなみに優勝者には素敵なプレ
ゼント(下記参照)もあるので、是非ご参加下さいませ。
------------------------ 記 -------------------------
開催日時:次のミスティアさんの排卵日(いつかは本人に聞いてね♪)
開催場所:紅魔館周辺
集合場所:博麗神社(別にいいですよね霊夢さん?)
競技内容:水泳
― 紅魔館前の湖10週
:飛行
― 紅魔館~博麗神社5往復
:マラソン
― 博麗神社に置いてある札に書いてあるものを持って
守矢神社まで走る(能力使用不可)
優勝商品:大人気の秘訣! 私の頭につけているケロちゃんヘアピン
(これさえあればみんな貴方にときめきメ○リアル4♪)
(だけど幼馴染には注意ですよ!)
以上
--------------------------------------------------------------------
ケロちゃんヘアピンを求めていざトレーニング開始です♪
「ミスティアさんが卵を生めないという事で、トライアスロンは中止となりました」
今朝、文々。新聞に付いてきた広告に書いてあった。
ちなみに新聞には雛の水着姿と封印後の姿が載っているらしいが、雛はまだ確認をしていない。
唯一分かるのは、朝起きたらいつもの空腹感が無かった事くらいである。
「おなかは膨れたけれど、なにかしらこのやるせない気持ち。昨日の苦労って一体……」
「排卵日がないなら、無理にでも生ませればいいのにね?」
雛の言葉を無視して、霊夢は鳥の卵を手の中で遊んでいた。
今朝、朱鷺子と名乗るものから霊夢が貰ったらしい。
その様子は……とても言葉に出来ない。
「例えば、この卵を入れて擬似的に……」
「それやろうとしたら、卵が入らないくらいに狭くて……」
「あら早苗いたの?」
「さっきから居ますよー。霊夢さんひどいです」
雛が妖怪の山でひどい目にあってから一日がたっていた。
そして、今日はマラソンの練習の予定がったのだが……
新聞を見た霊夢は、首根っこを掴んで早苗をさらってきたのだ。
「ところで霊夢さん。お賽銭箱の上に正座はどうみても拷問だと思いますよ?」
「それでケロっとしてるあんたが怖いわ」
「慣れてますから。家でのお仕置きはいつもこれだったなぁ……これをしてほしくて何回も悪戯したっけ」
「外の世界では、拷問をほしがるのがナウいわけ?」
「風祝りとしてのたしなみです。お嫁さん修行みたいな?」
「幻想郷の巫女って変なのしかいないのかしらね。霊夢に、貴女は早苗だっけ?」
今、博麗神社には3人の少女が居た。
一人は楽園の巫女である博麗 霊夢。私の脳内が楽園なのだと、この前カミングアウトしていた。
もう一人は、厄神である鍵山 雛。影が薄くて信仰が集まらないと、おなかをすかせていた可哀想な子である。現在絶賛虚乳中。
そして最後が、現人神である東風谷 早苗だ。現在雛を膝の上に乗せて、お賽銭箱の上に正座している。
賽銭箱との接点が紫がかっているが、早苗曰くご褒美だとか。
雛としては頭の上の早苗の荒い息が怖いので、早く退きたいのだが、
生憎早苗に抱きしめられ、胸で頭をがっちり固定されている為、それは叶わなかった。
「実はトライアスロンの参加者って、雛さんと咲夜さんと魔理沙さんと霊夢さんだけだったんですけどね」
「私以外、人気者とか何それ嫌がらせなの? この人たちにはヘアピンいらないじゃない?」
「別に私は参加しなくても良かったんだけどね。雛が負けたときの保険よ保険」
たしかに、霊夢にはケロちゃんヘアピンは必要ないだろう。
私は私。今が楽しければいいのよ、という霊夢のスタンスが人気を集めているからだ。
咲夜や魔理沙も、見た目もさることながら、その個性で人気があると雛は思っている。
自分には無いものだと、少し悲しくなった。
「あ、言い忘れてましたが、私のヘアピンに人気UPの効果はありませんよ? いうなればエク○カリパーですから」
「特訓とか、最初から意味の無い事だったのね……」
「たとえ本当に人気UPアイテムがあったとしても、私には必要ないですしね!」
「じゃぁどうやってこの短期間で信仰心を集められたのか、伝授願えないからしら?」
雛が上を向くと、脂汗がデンジャーゾーンな早苗の顔が見えた。
膝がぷるぷる震えている所をみると、そうとう痛いらしい。
早苗も笑顔で雛を見下ろた。すると汗がポタポタと、雛の顔面を直撃した。
「常識に囚われないといいんですよ」
「人の顔に汗をかけるとか、たしかに常識に囚われてないわね……というかお腹が膨れたって事は、私が水着きることって常識ではありえない事なのね」
「規格外の可愛さではあったわね。胸とか胸とかもうスクミズ万歳!!」
「霊夢さん落ち着いて下さい! それでは第二弾としてブルマーの時耐えられませんよ?」
「ぶるまー? あぁ今日着る服って霊夢が言ってたわね」
「裾はブルマーの中に入れるのがジャスティスよ」
「霊夢さんそれは違うと、打ち合わせのときに何回も言ってるじゃないですか。前かがみになったとき、裾から見えるチラリズムがたまらないんです!」
「甘いわ早苗。裾をちゃんと入れていたはずなのに、マット運動で服が捲れあがった時の、何が起こったのかわからない少女の表情がたまらないんじゃない!」
「やめて下さい、私のトラウマを掘り起こすのは! 霊夢さんもノーブラ逆立ち服捲れの経験すればいいんです!」
「とりあえず……霊夢も早苗が、私で遊んでたってことでいいのかしら?」
「失礼ね」
「違いますよ!」
「「今も絶賛遊び中よ(です)!!」」
雛はこの時理解した。
神の経験が長くて逆に気付かなかったのかもしれない。
神ってただの種族なんだわ。人間や妖怪と一緒なのね。
つまりは、最初から、きっと私が一昨日に博麗神社に来る前から、
私は遊ばれていたのだ。
「あはは……私は自分の事も分かっていなかったのね。それは影も薄くなるし信仰心も集まらないわ」
「あら、一日でそこまで成長するなんて、やっぱり私のスパルタ修行は間違っていなかったのよ!」
「最初に水泳を選んだのは私ですよ! 私の選択は間違っていなかった!」
「私は貴方たちに関わったことが間違いだったわ……」
黒いオーラを身に纏い、雛は自嘲気味に笑っていた。
霊夢にとって、私は友達でもなかったの。
ただのおもちゃ。着せ替え人形。
私雛ちゃん、今貴女の後ろにいるの。
「何よ急に落ち込んで。ちゃんと自分の事分かったんでしょ? もっと喜びなさいよ」
「そーですよー。ご自分の価値に気が付いたなら、もっとそれらしい格好をしましょう!」
「玩具らしい格好って何かしら。魔法の糸でも関節につけたらいいのかしら。ねぇ教えて頂戴?」
黒い暗い。厄が自分の中に溜まっていく。
それを雛は感じていた。
もっと敬われていると思っていた。
もっと愛されていると思っていた。
なのに実際は……
「玩具? 魔法の糸? あぁアリスに服を仕立ててもらいたいって事ね」
「確かにアリスさんなら、雛さんの魅力を十二分に引き出せると思います!」
「私人形に改造されちゃうのかしら。それもいいわね、だって私玩具だし」
「? もしかして雛なにか勘違いしてない?」
何を勘違いしているというのだ。
いや勘違いしていた。
「私、自分の事を神様だと思っていたわ。実際は玩具なのに。おもちゃなのに……うぅ」
早苗の膝の上で、すすり泣く雛。
小さな手が、きゅっと自分の服を握っている。
「やっぱり勘違いしてるわね」
「ま、まさかこっち方面の魅力まで完備していたなんて! 霊夢さん、これは想像以上ですよ!?」
「落ち着きなさい早苗。そのまま雛を離さないでね」
霊夢は徐にしゃがみこみ、雛を見上げるように目線を合わせた。
そして、指で涙を拭うように雛の頬に手をあて、優しく言った。
「雛……可愛いわ。とても魅力的よ」
「!!」
「そしてごめんね。私達も少し調子に乗っていた部分があったわ」
「れ、れい……む?」
真剣な霊夢の視線と、謝罪の言葉。
それに雛は戸惑った。
頭は整頓できていないが、頬に当たっている手の温もりで、不思議と落ち着けている。
「実は前々から、雛への信仰心が薄れていると、神奈子様と諏訪子様がおっしゃっていたのですよ」
「それを私も聞いてね。確認しに行ったら案の定、黒いオーラで包まれて表情も暗くて、姿の確認も難しかったわ」
それは多分にとりに、かげ薄いと言われた直後じゃないだろうか。
その時雛は厄も流さず、失意のどん底にいた。
「そこで私は考えたのよ。どうすれば雛への信仰心を取り戻せるか」
「その方法が、トライアスロンというどっきり企画ですね」
「そして結果が、この新聞よ。雛、あんた新聞読んでみた?」
「いいえ、恥ずかしくて読んでないわ」
「はいこれ。さすが文ね。良く撮れてるわ」
雛は霊夢から渡された新聞を見て、驚いた。
さぞ怖い形相をして、まぬけな顔をしているに違いない。
そう思っていたからだ。
でも其処に写っていたのは……
「雛さん綺麗ですよね。普段は可愛い寄りなのに」
「知ってた? あんた笑うとすごい美人なのよ?」
満面の笑みで、霊夢に叫んでいる姿だった。
「えっと……あぅ~」
「せっかく美人なんだから、服も雛の魅力を引き出せるものにしようと、水着とか体操服とか色々調達したのよ?」
「霖之助さんも協力的でとても助かりましたよね」
「なんであんなの持っていたかは、気になるところだけど」
二人が笑う中、雛は上目遣いで霊夢を見る。
そして小さな声を絞りだした。
「全部、演技だったの?」
「演技というよりも、雛さん専用の魅力値UPトレーニング(どっきり編)です!」
「川であんたが何か叫ぶたび笑顔になるから、こっちは始終どきどきしっぱなしだったわよ。誤魔化す為におっぱいとか叫ばされたしね」
「あれは霊夢さんの本音ですよね?」
「ええぃうっさい! その乳揉ませなさい!」
「きゃぁぁ雛さん助けてくださいー♪」
雛の頭を固定している柔らかな弾力が、霊夢の手によって左右から押し付けられる。
「あ、あはは、あははははは!」
「雛が壊れた!?」
「なぁんだ。結局自分自身で信仰をなくしていたのね」
「そーですよー。自分で自分を信じられないのに、他の人が信じられるわけ無いじゃないですか」
「あんたは決して影が薄いなんてこと無いわ。自分に自信を持ちなさい」
雛は早苗の腕からするりとぬけると、その場でくるくると回り始めた。
それは数日までの厄を集める動作とは違い、本当に楽しそうに舞っている。
つい見惚れてしまうような舞だった。
「こんなに楽しく回ったのは何年ぶりかしら?」
「あんたの場合、厄集めを作業化したのがいけなかったようね」
「自分を光らせないで、周りに厄を集めたら、そこにあるのはただの闇って事ですね」
「でも闇の中に光があれば、それはただの光よりも綺麗に見えるのよ」
そう、実際に今も厄が雛の周りを覆っていた。
自分自身の厄、それを回転することで巻き取ったのだが、雛自信は神々しく、
まるで星々のように輝いていた。
「雛さんアイドルみたいですねー。さすがベテラン神様です」
「神様はアイドルではないのだけれど」
「え!? そーなんですか!?」
早苗が本気でショックを受けていた。
実は「現人神」や「風祝り」はアイドル名と思っていたというのは此処だけの話である。
「ま、よかったじゃない。これでもうかげ薄いとか言われないでしょ?」
「変わりに里の人の視線が……ね」
「久々にあびるスポットライトは眩しいとか、羨ましいですよ!」
「よく分からない比喩だけど……さてそんなことよりも早苗?」
「……とても嫌な予感しかしないのだけれど?」
雛の呟きも無視し、早苗は袖から一着の服を取り出す。
そしてババーンと大空に見せるように、大きく広げた。
「はい! 体操服の胸にはちゃんと「6-1 ひな」って書いてますよ!」
「やっぱり貴女達、絶対私で遊んでいるでしょう!?」
可愛いものには服を着せろ、とは霊夢の弁。
他には何を着せましょうか、と早苗が呟けば、
黒のゴスロリがいいと、烏天狗が通りすがりにメモを置いていく。
日常に新しい項目が追加された日。
幻想郷がいつもより少しだけ騒がしかった日。
一枚の、紙が空を舞って消えていった。
「大・成・功・!!」
なので前作と流し程度で読んでおくと話がつながると思います。
~あらすじ~
雛への信仰心が薄くなり、雛はお腹が空きました。
信仰心を求めて、困ったときの博麗神社に行くと、一枚の広告を渡されました。
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関係者各位
守矢神社 規格部
部長 東風谷 早苗
幻想郷トライアスロン大会について
拝啓、エアコンが無くて熱い夏、皆様どうお過ごしでしょうか?
今回、守矢神社の信仰増加計画の為、幻想郷トライアスロンを開催する
ことを決定しました(やったね神奈子ちゃん信仰が増えるよ!)
つきましては参加者を募集しております。ちなみに優勝者には素敵なプレ
ゼント(下記参照)もあるので、是非ご参加下さいませ。
------------------------ 記 -------------------------
開催日時:次のミスティアさんの排卵日(いつかは本人に聞いてね♪)
開催場所:紅魔館周辺
集合場所:博麗神社(別にいいですよね霊夢さん?)
競技内容:水泳
― 紅魔館前の湖10週
:飛行
― 紅魔館~博麗神社5往復
:マラソン
― 博麗神社に置いてある札に書いてあるものを持って
守矢神社まで走る(能力使用不可)
優勝商品:大人気の秘訣! 私の頭につけているケロちゃんヘアピン
(これさえあればみんな貴方にときめきメ○リアル4♪)
(だけど幼馴染には注意ですよ!)
以上
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ケロちゃんヘアピンを求めていざトレーニング開始です♪
「ミスティアさんが卵を生めないという事で、トライアスロンは中止となりました」
今朝、文々。新聞に付いてきた広告に書いてあった。
ちなみに新聞には雛の水着姿と封印後の姿が載っているらしいが、雛はまだ確認をしていない。
唯一分かるのは、朝起きたらいつもの空腹感が無かった事くらいである。
「おなかは膨れたけれど、なにかしらこのやるせない気持ち。昨日の苦労って一体……」
「排卵日がないなら、無理にでも生ませればいいのにね?」
雛の言葉を無視して、霊夢は鳥の卵を手の中で遊んでいた。
今朝、朱鷺子と名乗るものから霊夢が貰ったらしい。
その様子は……とても言葉に出来ない。
「例えば、この卵を入れて擬似的に……」
「それやろうとしたら、卵が入らないくらいに狭くて……」
「あら早苗いたの?」
「さっきから居ますよー。霊夢さんひどいです」
雛が妖怪の山でひどい目にあってから一日がたっていた。
そして、今日はマラソンの練習の予定がったのだが……
新聞を見た霊夢は、首根っこを掴んで早苗をさらってきたのだ。
「ところで霊夢さん。お賽銭箱の上に正座はどうみても拷問だと思いますよ?」
「それでケロっとしてるあんたが怖いわ」
「慣れてますから。家でのお仕置きはいつもこれだったなぁ……これをしてほしくて何回も悪戯したっけ」
「外の世界では、拷問をほしがるのがナウいわけ?」
「風祝りとしてのたしなみです。お嫁さん修行みたいな?」
「幻想郷の巫女って変なのしかいないのかしらね。霊夢に、貴女は早苗だっけ?」
今、博麗神社には3人の少女が居た。
一人は楽園の巫女である博麗 霊夢。私の脳内が楽園なのだと、この前カミングアウトしていた。
もう一人は、厄神である鍵山 雛。影が薄くて信仰が集まらないと、おなかをすかせていた可哀想な子である。現在絶賛虚乳中。
そして最後が、現人神である東風谷 早苗だ。現在雛を膝の上に乗せて、お賽銭箱の上に正座している。
賽銭箱との接点が紫がかっているが、早苗曰くご褒美だとか。
雛としては頭の上の早苗の荒い息が怖いので、早く退きたいのだが、
生憎早苗に抱きしめられ、胸で頭をがっちり固定されている為、それは叶わなかった。
「実はトライアスロンの参加者って、雛さんと咲夜さんと魔理沙さんと霊夢さんだけだったんですけどね」
「私以外、人気者とか何それ嫌がらせなの? この人たちにはヘアピンいらないじゃない?」
「別に私は参加しなくても良かったんだけどね。雛が負けたときの保険よ保険」
たしかに、霊夢にはケロちゃんヘアピンは必要ないだろう。
私は私。今が楽しければいいのよ、という霊夢のスタンスが人気を集めているからだ。
咲夜や魔理沙も、見た目もさることながら、その個性で人気があると雛は思っている。
自分には無いものだと、少し悲しくなった。
「あ、言い忘れてましたが、私のヘアピンに人気UPの効果はありませんよ? いうなればエク○カリパーですから」
「特訓とか、最初から意味の無い事だったのね……」
「たとえ本当に人気UPアイテムがあったとしても、私には必要ないですしね!」
「じゃぁどうやってこの短期間で信仰心を集められたのか、伝授願えないからしら?」
雛が上を向くと、脂汗がデンジャーゾーンな早苗の顔が見えた。
膝がぷるぷる震えている所をみると、そうとう痛いらしい。
早苗も笑顔で雛を見下ろた。すると汗がポタポタと、雛の顔面を直撃した。
「常識に囚われないといいんですよ」
「人の顔に汗をかけるとか、たしかに常識に囚われてないわね……というかお腹が膨れたって事は、私が水着きることって常識ではありえない事なのね」
「規格外の可愛さではあったわね。胸とか胸とかもうスクミズ万歳!!」
「霊夢さん落ち着いて下さい! それでは第二弾としてブルマーの時耐えられませんよ?」
「ぶるまー? あぁ今日着る服って霊夢が言ってたわね」
「裾はブルマーの中に入れるのがジャスティスよ」
「霊夢さんそれは違うと、打ち合わせのときに何回も言ってるじゃないですか。前かがみになったとき、裾から見えるチラリズムがたまらないんです!」
「甘いわ早苗。裾をちゃんと入れていたはずなのに、マット運動で服が捲れあがった時の、何が起こったのかわからない少女の表情がたまらないんじゃない!」
「やめて下さい、私のトラウマを掘り起こすのは! 霊夢さんもノーブラ逆立ち服捲れの経験すればいいんです!」
「とりあえず……霊夢も早苗が、私で遊んでたってことでいいのかしら?」
「失礼ね」
「違いますよ!」
「「今も絶賛遊び中よ(です)!!」」
雛はこの時理解した。
神の経験が長くて逆に気付かなかったのかもしれない。
神ってただの種族なんだわ。人間や妖怪と一緒なのね。
つまりは、最初から、きっと私が一昨日に博麗神社に来る前から、
私は遊ばれていたのだ。
「あはは……私は自分の事も分かっていなかったのね。それは影も薄くなるし信仰心も集まらないわ」
「あら、一日でそこまで成長するなんて、やっぱり私のスパルタ修行は間違っていなかったのよ!」
「最初に水泳を選んだのは私ですよ! 私の選択は間違っていなかった!」
「私は貴方たちに関わったことが間違いだったわ……」
黒いオーラを身に纏い、雛は自嘲気味に笑っていた。
霊夢にとって、私は友達でもなかったの。
ただのおもちゃ。着せ替え人形。
私雛ちゃん、今貴女の後ろにいるの。
「何よ急に落ち込んで。ちゃんと自分の事分かったんでしょ? もっと喜びなさいよ」
「そーですよー。ご自分の価値に気が付いたなら、もっとそれらしい格好をしましょう!」
「玩具らしい格好って何かしら。魔法の糸でも関節につけたらいいのかしら。ねぇ教えて頂戴?」
黒い暗い。厄が自分の中に溜まっていく。
それを雛は感じていた。
もっと敬われていると思っていた。
もっと愛されていると思っていた。
なのに実際は……
「玩具? 魔法の糸? あぁアリスに服を仕立ててもらいたいって事ね」
「確かにアリスさんなら、雛さんの魅力を十二分に引き出せると思います!」
「私人形に改造されちゃうのかしら。それもいいわね、だって私玩具だし」
「? もしかして雛なにか勘違いしてない?」
何を勘違いしているというのだ。
いや勘違いしていた。
「私、自分の事を神様だと思っていたわ。実際は玩具なのに。おもちゃなのに……うぅ」
早苗の膝の上で、すすり泣く雛。
小さな手が、きゅっと自分の服を握っている。
「やっぱり勘違いしてるわね」
「ま、まさかこっち方面の魅力まで完備していたなんて! 霊夢さん、これは想像以上ですよ!?」
「落ち着きなさい早苗。そのまま雛を離さないでね」
霊夢は徐にしゃがみこみ、雛を見上げるように目線を合わせた。
そして、指で涙を拭うように雛の頬に手をあて、優しく言った。
「雛……可愛いわ。とても魅力的よ」
「!!」
「そしてごめんね。私達も少し調子に乗っていた部分があったわ」
「れ、れい……む?」
真剣な霊夢の視線と、謝罪の言葉。
それに雛は戸惑った。
頭は整頓できていないが、頬に当たっている手の温もりで、不思議と落ち着けている。
「実は前々から、雛への信仰心が薄れていると、神奈子様と諏訪子様がおっしゃっていたのですよ」
「それを私も聞いてね。確認しに行ったら案の定、黒いオーラで包まれて表情も暗くて、姿の確認も難しかったわ」
それは多分にとりに、かげ薄いと言われた直後じゃないだろうか。
その時雛は厄も流さず、失意のどん底にいた。
「そこで私は考えたのよ。どうすれば雛への信仰心を取り戻せるか」
「その方法が、トライアスロンというどっきり企画ですね」
「そして結果が、この新聞よ。雛、あんた新聞読んでみた?」
「いいえ、恥ずかしくて読んでないわ」
「はいこれ。さすが文ね。良く撮れてるわ」
雛は霊夢から渡された新聞を見て、驚いた。
さぞ怖い形相をして、まぬけな顔をしているに違いない。
そう思っていたからだ。
でも其処に写っていたのは……
「雛さん綺麗ですよね。普段は可愛い寄りなのに」
「知ってた? あんた笑うとすごい美人なのよ?」
満面の笑みで、霊夢に叫んでいる姿だった。
「えっと……あぅ~」
「せっかく美人なんだから、服も雛の魅力を引き出せるものにしようと、水着とか体操服とか色々調達したのよ?」
「霖之助さんも協力的でとても助かりましたよね」
「なんであんなの持っていたかは、気になるところだけど」
二人が笑う中、雛は上目遣いで霊夢を見る。
そして小さな声を絞りだした。
「全部、演技だったの?」
「演技というよりも、雛さん専用の魅力値UPトレーニング(どっきり編)です!」
「川であんたが何か叫ぶたび笑顔になるから、こっちは始終どきどきしっぱなしだったわよ。誤魔化す為におっぱいとか叫ばされたしね」
「あれは霊夢さんの本音ですよね?」
「ええぃうっさい! その乳揉ませなさい!」
「きゃぁぁ雛さん助けてくださいー♪」
雛の頭を固定している柔らかな弾力が、霊夢の手によって左右から押し付けられる。
「あ、あはは、あははははは!」
「雛が壊れた!?」
「なぁんだ。結局自分自身で信仰をなくしていたのね」
「そーですよー。自分で自分を信じられないのに、他の人が信じられるわけ無いじゃないですか」
「あんたは決して影が薄いなんてこと無いわ。自分に自信を持ちなさい」
雛は早苗の腕からするりとぬけると、その場でくるくると回り始めた。
それは数日までの厄を集める動作とは違い、本当に楽しそうに舞っている。
つい見惚れてしまうような舞だった。
「こんなに楽しく回ったのは何年ぶりかしら?」
「あんたの場合、厄集めを作業化したのがいけなかったようね」
「自分を光らせないで、周りに厄を集めたら、そこにあるのはただの闇って事ですね」
「でも闇の中に光があれば、それはただの光よりも綺麗に見えるのよ」
そう、実際に今も厄が雛の周りを覆っていた。
自分自身の厄、それを回転することで巻き取ったのだが、雛自信は神々しく、
まるで星々のように輝いていた。
「雛さんアイドルみたいですねー。さすがベテラン神様です」
「神様はアイドルではないのだけれど」
「え!? そーなんですか!?」
早苗が本気でショックを受けていた。
実は「現人神」や「風祝り」はアイドル名と思っていたというのは此処だけの話である。
「ま、よかったじゃない。これでもうかげ薄いとか言われないでしょ?」
「変わりに里の人の視線が……ね」
「久々にあびるスポットライトは眩しいとか、羨ましいですよ!」
「よく分からない比喩だけど……さてそんなことよりも早苗?」
「……とても嫌な予感しかしないのだけれど?」
雛の呟きも無視し、早苗は袖から一着の服を取り出す。
そしてババーンと大空に見せるように、大きく広げた。
「はい! 体操服の胸にはちゃんと「6-1 ひな」って書いてますよ!」
「やっぱり貴女達、絶対私で遊んでいるでしょう!?」
可愛いものには服を着せろ、とは霊夢の弁。
他には何を着せましょうか、と早苗が呟けば、
黒のゴスロリがいいと、烏天狗が通りすがりにメモを置いていく。
日常に新しい項目が追加された日。
幻想郷がいつもより少しだけ騒がしかった日。
一枚の、紙が空を舞って消えていった。
「大・成・功・!!」
雛様、ご無事でなによりです、先日酷い目にあっていらしたので、もうお目にかかれないかと心配しておりました!
それはそれとして、ミスティアが狭い件について話し合いたいものですw