「どうぞ」
紅魔館のメイド長こと十六夜咲夜は、主に恥をかかせないよう、瀟洒な態度で客人である聖白蓮に紅茶を差し出した。
「ありがとうございます」
聖は、テーブルに置かれたソーサーからカップを手に取り、紅茶を口に運ぶ。
「美味しいわ」
そう言いながら、聖は咲夜へ笑みを返した。
「レミリアお嬢様は、もう少ししたら来られるとおもいますので少々お待ちください」
「分りました。急いでいるわけではないので、ゆっくり待たせてもらいますわ」
咲夜はそれだけ伝えると、レミリアの席の横に立つ。
食堂ではなく客室なのだが、レミリアが座る席は決まっていたのだ。
この部屋にしても例外はない。
「……」
「……」
室内は静寂に包まれ、聖がソーサーにカップを置くときだけ音が響く。
「……」
「……」
「ここはいいお屋敷ですね」
「そうですか?」
「はい、このお屋敷には優しさが溢れているようです」
聖は素直に思ったことを言ったのだが、咲夜はそれを聞いて不思議そうな顔をしていた。
「ようこそ我が紅魔館へ」
言いながら、紅魔館の主レミリアが現れると、自分の席へと向かう。
咲夜が椅子を引き、そこへレミリアが座った。
「そにしても、わざわざ挨拶に来るなんて気が利くわね」
「……」
「どうしたの?」
「いえ、ずいぶん可愛らしい主だと思いまして」
「なっ?!」
威厳をこめカリスマモードのレミリアだったが、聖の言葉でそのカリスマは崩れ落ちた。
椅子から立ち上がり、テーブルに手を付くと頬を真っ赤に染めていく。
「お嬢様、落ち着いてください」
瀟洒に、主を落ち着かせ椅子に座るよう促す従者だったが、聖は見逃していなかった。
カリスマモードが崩れ落ちたときに、瀟洒な従者は消え、顔をだらしなくにやけさせているただのメイド長が居たことを。
「わ、分っているわ」
どもりながらも、落ち着きを取り戻したレミリアは椅子に座りなおす。
「それにしても、可愛らしいとは言ってくれるわね」
再びカリスマモードで、聖のほうへと向きやる。
一度カリスマモードが崩れたくらいで、そのまま崩れたままでいるのはレミリアのプライドが許さなかった。
「やっぱり可愛らしいですね」
「?!」
カリスマブレイク再び。
同時に、瀟洒ブレイクも再びである。
聖は嬉しかった。
目の前にいるのは、妖怪の類と人。
その相容れない二種の生き物が、まるでその垣根を気にしていないように同じフレームに納まっていたことが。
「仲がいいんですね」
「はい、もちろんです」
「な、いきなり何を?!」
聖の言葉に咲夜は肯定したが、レミリアはただうろたえるばかり。
その様子を見ていた聖は何かを感じた。
咲夜に対するレミリアの反応、まるであれは。
「なるほど、紅魔館の主レミリアさん」
「何よ!」
レミリアは声を荒げるが、聖は臆することなく続ける。
「あなたとは、きっちりはっきりお話をするべきですね。二人きりで」
「二人……きり?」
聖の声に反応したのは咲夜。
瀟洒なメイド長はいずこか、ぴきぴきと額に縦筋を浮かべながら、咲夜は聖を睨んでいた。
だが、これにも聖は臆することはなかった。
「はい、二人きりです。ですので咲夜さんは下がってもらっていいでしょうか」
瞬間、時が止まった。
聖の周囲180度に、咲夜のナイフが展開される。
このナイフの毒牙に掛かったものは数知れず。
聖もまた、その毒牙に掛かろうとしていた。
だが、再び時が動き出したとき、咲夜は予想外のものを見た。
聖の周りに展開されているもの、それが咲夜のナイフをすべてはじく。
『聖尼公のエア巻物』
そこにあるように見せかけるもの。
巻物は本来存在しない。
しかし見るものが存在を認めたとき、その巻物は存在しうるものへと変化する。
咲夜は突然現れたその巻物を認識してしまっていた。
だからナイフははじかれたのだ。
敗北。
公式的なスペルカード戦ではなかったが、咲夜は大きな敗北感を味わった。
がくりとうな垂れる咲夜に聖が近寄り、耳元でぽそりと何かを呟く。
とたん、咲夜はがばりと立ち上がり、レミリアの席の横へと戻る。
にやけ顔になりそうで、それを慢している咲夜をみて、聖はにこりと微笑んだ。
「レミリアさん、咲夜さんを下がらせてもらっていいですか?」
「ええ、いいわ。咲夜下がりなさい」
「分りました」
瀟洒に、レミリアの席から離れ部屋から出る咲夜。
その顔はなんとも形容しがたいほどに緩んでいた。
「さて、二人きりになれましたね」
「何が狙いだ」
「あなたはもう少し、咲夜さんに愛を向けるべきす」
「何?!」
「愛です」
レミリアは、聖の言っている意味が分らなかった。
レミリアはレミリアなりに、咲夜へは愛を向けていると思っていたからだ。
主として、つかえるものに愛を向けるのは当然。
だが、レミリアがそのことを聖に伝えると、
「それは違います」
と一笑にふされた。
「レミリアさん、確かにそういう愛も必要ですが、もっと違う愛もあるでしょう」
「何を言ってるか分らないわね」
「たった一言でいいんです。気持ちなんて自然と伝わりますよ」
聖にそういわれるが、レミリアにはどうしていいか分らなかった。
今更、どうやって違う愛を向ければいいのか分らなかったのだ。
掛ける言葉など思いつきもしなかった。
そんなレミリアに見かねたのか、聖はやさしく微笑み助言を一つした。
「咲夜、お客様が帰るわよ。外まで送ってあげなさい」
挨拶を無事終えた聖がレミリアとともに、部屋からでてくる。
心なしか、レミリアの頬には赤みがさしていた。
「分りました。では行きましょうか聖さん」
咲夜はそういいながら、聖のところへ行こうとしたが、
「ちょっと待ちなさい」
そこにレミリアがとことこと寄ってくる。
「どうかしましたか、お嬢様」
それを見た咲夜は立ち止まり、主が何を求めているのか聞く。
もじもじと、何かを言いたそうにしているレミリア。
しかしレミリアは何も言わない。
聖を待たせるわけにも行かず、咲夜は聖の方へ視線を向けるが、聖はただにこりと笑ってその様子をみているだけだった。
「咲夜」
意を決したのか、レミリアが言葉を放つ。
「なんでしょうかお嬢様」
「愛してるわ」
「お嬢様……」
レミリアの言葉に、咲夜は満面の笑みを返しながら
「私もですよ」
そう言った。
聖もまた微笑みを浮かべながら、その様子をただただ見守っていた。
紅魔館のメイド長こと十六夜咲夜は、主に恥をかかせないよう、瀟洒な態度で客人である聖白蓮に紅茶を差し出した。
「ありがとうございます」
聖は、テーブルに置かれたソーサーからカップを手に取り、紅茶を口に運ぶ。
「美味しいわ」
そう言いながら、聖は咲夜へ笑みを返した。
「レミリアお嬢様は、もう少ししたら来られるとおもいますので少々お待ちください」
「分りました。急いでいるわけではないので、ゆっくり待たせてもらいますわ」
咲夜はそれだけ伝えると、レミリアの席の横に立つ。
食堂ではなく客室なのだが、レミリアが座る席は決まっていたのだ。
この部屋にしても例外はない。
「……」
「……」
室内は静寂に包まれ、聖がソーサーにカップを置くときだけ音が響く。
「……」
「……」
「ここはいいお屋敷ですね」
「そうですか?」
「はい、このお屋敷には優しさが溢れているようです」
聖は素直に思ったことを言ったのだが、咲夜はそれを聞いて不思議そうな顔をしていた。
「ようこそ我が紅魔館へ」
言いながら、紅魔館の主レミリアが現れると、自分の席へと向かう。
咲夜が椅子を引き、そこへレミリアが座った。
「そにしても、わざわざ挨拶に来るなんて気が利くわね」
「……」
「どうしたの?」
「いえ、ずいぶん可愛らしい主だと思いまして」
「なっ?!」
威厳をこめカリスマモードのレミリアだったが、聖の言葉でそのカリスマは崩れ落ちた。
椅子から立ち上がり、テーブルに手を付くと頬を真っ赤に染めていく。
「お嬢様、落ち着いてください」
瀟洒に、主を落ち着かせ椅子に座るよう促す従者だったが、聖は見逃していなかった。
カリスマモードが崩れ落ちたときに、瀟洒な従者は消え、顔をだらしなくにやけさせているただのメイド長が居たことを。
「わ、分っているわ」
どもりながらも、落ち着きを取り戻したレミリアは椅子に座りなおす。
「それにしても、可愛らしいとは言ってくれるわね」
再びカリスマモードで、聖のほうへと向きやる。
一度カリスマモードが崩れたくらいで、そのまま崩れたままでいるのはレミリアのプライドが許さなかった。
「やっぱり可愛らしいですね」
「?!」
カリスマブレイク再び。
同時に、瀟洒ブレイクも再びである。
聖は嬉しかった。
目の前にいるのは、妖怪の類と人。
その相容れない二種の生き物が、まるでその垣根を気にしていないように同じフレームに納まっていたことが。
「仲がいいんですね」
「はい、もちろんです」
「な、いきなり何を?!」
聖の言葉に咲夜は肯定したが、レミリアはただうろたえるばかり。
その様子を見ていた聖は何かを感じた。
咲夜に対するレミリアの反応、まるであれは。
「なるほど、紅魔館の主レミリアさん」
「何よ!」
レミリアは声を荒げるが、聖は臆することなく続ける。
「あなたとは、きっちりはっきりお話をするべきですね。二人きりで」
「二人……きり?」
聖の声に反応したのは咲夜。
瀟洒なメイド長はいずこか、ぴきぴきと額に縦筋を浮かべながら、咲夜は聖を睨んでいた。
だが、これにも聖は臆することはなかった。
「はい、二人きりです。ですので咲夜さんは下がってもらっていいでしょうか」
瞬間、時が止まった。
聖の周囲180度に、咲夜のナイフが展開される。
このナイフの毒牙に掛かったものは数知れず。
聖もまた、その毒牙に掛かろうとしていた。
だが、再び時が動き出したとき、咲夜は予想外のものを見た。
聖の周りに展開されているもの、それが咲夜のナイフをすべてはじく。
『聖尼公のエア巻物』
そこにあるように見せかけるもの。
巻物は本来存在しない。
しかし見るものが存在を認めたとき、その巻物は存在しうるものへと変化する。
咲夜は突然現れたその巻物を認識してしまっていた。
だからナイフははじかれたのだ。
敗北。
公式的なスペルカード戦ではなかったが、咲夜は大きな敗北感を味わった。
がくりとうな垂れる咲夜に聖が近寄り、耳元でぽそりと何かを呟く。
とたん、咲夜はがばりと立ち上がり、レミリアの席の横へと戻る。
にやけ顔になりそうで、それを慢している咲夜をみて、聖はにこりと微笑んだ。
「レミリアさん、咲夜さんを下がらせてもらっていいですか?」
「ええ、いいわ。咲夜下がりなさい」
「分りました」
瀟洒に、レミリアの席から離れ部屋から出る咲夜。
その顔はなんとも形容しがたいほどに緩んでいた。
「さて、二人きりになれましたね」
「何が狙いだ」
「あなたはもう少し、咲夜さんに愛を向けるべきす」
「何?!」
「愛です」
レミリアは、聖の言っている意味が分らなかった。
レミリアはレミリアなりに、咲夜へは愛を向けていると思っていたからだ。
主として、つかえるものに愛を向けるのは当然。
だが、レミリアがそのことを聖に伝えると、
「それは違います」
と一笑にふされた。
「レミリアさん、確かにそういう愛も必要ですが、もっと違う愛もあるでしょう」
「何を言ってるか分らないわね」
「たった一言でいいんです。気持ちなんて自然と伝わりますよ」
聖にそういわれるが、レミリアにはどうしていいか分らなかった。
今更、どうやって違う愛を向ければいいのか分らなかったのだ。
掛ける言葉など思いつきもしなかった。
そんなレミリアに見かねたのか、聖はやさしく微笑み助言を一つした。
「咲夜、お客様が帰るわよ。外まで送ってあげなさい」
挨拶を無事終えた聖がレミリアとともに、部屋からでてくる。
心なしか、レミリアの頬には赤みがさしていた。
「分りました。では行きましょうか聖さん」
咲夜はそういいながら、聖のところへ行こうとしたが、
「ちょっと待ちなさい」
そこにレミリアがとことこと寄ってくる。
「どうかしましたか、お嬢様」
それを見た咲夜は立ち止まり、主が何を求めているのか聞く。
もじもじと、何かを言いたそうにしているレミリア。
しかしレミリアは何も言わない。
聖を待たせるわけにも行かず、咲夜は聖の方へ視線を向けるが、聖はただにこりと笑ってその様子をみているだけだった。
「咲夜」
意を決したのか、レミリアが言葉を放つ。
「なんでしょうかお嬢様」
「愛してるわ」
「お嬢様……」
レミリアの言葉に、咲夜は満面の笑みを返しながら
「私もですよ」
そう言った。
聖もまた微笑みを浮かべながら、その様子をただただ見守っていた。
で、聖も帰って誰かに愛を伝えるのですね?
しょうちゃんに1票w
レミさん可愛ええわぁ
…なんだろう、レミリアと咲夜がかぁいくてかぁいくて、
どっちもほしい