Coolier - 新生・東方創想話

野球拳

2010/03/16 04:36:29
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 場所は博麗神社境内。
 今宵も人妖入り混じっての酒宴が催されていた。

「……じゃんけんに負けた事がない?」

 射命丸文は力の抜けた声を発すると怪訝な顔で、自分の隣に座する紅白巫女を見つめた。
 紅白霊夢は手にしたグラスに並々と酒を注ぐと、まるで水でも流し込む様に喉を鳴らして飲み下した。

「えぇ。一度も」

 そう言って、微笑む顔はほんのり桜色。
 その様相は歳に似合わぬ色気も感じるが、酒臭さが全てを台無しにしてしまっている感じが否めない。

「嘘はいけません。それが一体どれだけの確率の上に成り立つのか、貴女分かってます?」

 天狗は酒に強い。文もその例外ではなく、霊夢以上に飲んではいるものの外見からでは全く分からない。勿論、酒の臭いは別として。

「数字なんて知らないわ。じゃんけんはグーチョキパーだけで充分よ」

 そう言ってグラスをもってない方の手でじゃんけんの手を形作る霊夢。

「いくら勘がいいとは言いましても、ねぇ」
「じゃーんけーん」
「「ッポン」」

「あや、負けました」
「だから言ったじゃない。嘘じゃないってー」
「いやいやいやいや、一度勝ったくらいじゃ何の証明にもなりませんよ」
「じゃ、賭けましょうか?」
「へ?」
「だから賭けるのよ。敗者はバツゲーム。そうね、普通にやってもつまらないから、じゃんけんで負けたら敗者は一枚服を脱ぐって事で」
「それって……」
「野球拳。分りやすいでしょ?」
「何てベタな。と言うより、発想がオヤジ臭いです」
「酒の席でそんな野暮な事言わないの。あ、それとも怖い? 大衆の面前で惨めな姿を晒すのが」

 じゃあ仕方ないわねと霊夢はニヤニヤ笑いながら酒を流し込む。
 文も苦笑いの表情のまま盃に口をつけた。
 霊夢が言った様にここは酒の席。どんな話も肴になりさえすればいい。内容の良し悪しは関係ないのだ。
 しかし、場の空気を読まず……「文様を侮辱するな!」と声を荒げる者もいる。

「ん?」
「椛、どうしたんですか? 大きな声を出して」

 突然の闖入者に目を丸くする二人。

「どうしたもこうしたもありませんよ! 人間風情が我等天狗に勝る事などありえません! それな
のにこいつときたら……」

 憎き腋巫女に向けてがるるるるっと犬歯を剥き出しにする白狼天狗。
 彼女の名は犬走椛。

「あやややや、盗み聞きとは感心しませんねぇ」
「それをあんたが言うか」
そう告げた霊夢に、私のは仕事なので良いのですと文は宣う。
そのまま二人でカラカラと笑った。
その間も椛は睨み付けたまま、低く唸っている。
ふと、霊夢の視線が椛に移った。

「それはそれとして、負け犬の分際で言うじゃない下っ端。ならあんたでもいいわよ? ハンデはい
る?」
「私は狼です! ハンデなんて必要ありません!」

 白狼天狗は不幸にも霊夢の安い挑発に食って掛かってしまった。










「弱い犬ほどよく吠える、ってね」

 数分後、椛はショーツ一枚になっていた。

「さぁ、どうするの?」

 霊夢の言葉にぐぬぬと奥歯を噛み締める椛。

「……続けます」
「あら、本当にいいのね?」
「天狗に二言はありません」
「初耳よ、そんな言葉。ま、いいわ。全力で後悔させてあげるから」

 霊夢の舌が下唇をちろりと舐めた。

 馴染みのお囃子が響く。既に宴の参加者全員が観衆となっていた。

『やぁあきゅうぅ~ぅすぅるならぁ~』

『こ~ゆ~ぐあいにしなしゃんせ~』

『アウト!』

『セーフ!』

『よよいの、よい!』

 悩み抜いた末、椛が選んだのはパー。
 対する霊夢は

「……ごめんなさい。私の勝ちよ」

 チョキだった。

「そんな……」

 その場にへたり込む椛。

 笑みを浮かべる霊夢の表情とは対象的に椛の顔が絶望の色に染まる……。
 敗者は衣服を一枚脱がなければならない。しかし、現在の椛が身に付けているものは所謂〝最後の砦〟だった。

(……やるしか、ない)

 下っ端とは言え天狗としてのプライドが椛を突き動かす。
 足に力を入れ、ゆっくりと立ち上がった。
 羞恥心を圧し殺し、ショーツに手を掛ける。

 その場に座する者達の喉がゴクリと鳴った。

 椛が顔を上げ霊夢を睨みつける。その顔には一点の曇りもなかった。

「哨戒天狗が一人、犬走椛の最期を見よっ!」

 そう叫ぶと、椛は目にも止まらぬ速さで下着を脱ぎ去り、地面に叩き付ける。

 威風堂々。

 その漢らしさは見る者を感動させる、筈だった。

『どうしたー、怖じ気付いたのかー?』
『さっさと脱げー』

 しかし、歓声があがってもいい状況で外野からは激しいブーイングが巻き起こる。

「あれ?」

 椛は脱ぎ捨てた筈の下着を着用している自分に疑問符を浮かべる。
 確かに下着は脱ぎ捨てた筈……。
 しかし、穿いてしまっている。下着を二枚重ねて穿く様な特異な習慣もない。

 そこで決定的な違和感に気付く。

 それは下着の放つ香り。

(こ、これは!? この香りは、まさかっ!?)

 椛の忙しなく動く鼻からは赤い滴が一筋。

「……やるじゃない」
「幻想郷最速はただの飾りではありませんよ」

 互いにニヤリと不敵な笑みを浮かべる霊夢と文。

「流石だわ。その子の下着を取りにくれば私に邪魔されるのは明白。ならば、自分の下着を使えばいい。一瞬の判断力と行動力、見事だわ」
「あやややや、見えていましたか。博霊の巫女の名も伊達ではありませんね」
「勿論見えなかったわ。ただの勘よ。……でも、このままだとルール違反よね?」
「仕方がないですね。部下の不始末は上司が請け負いましょう」

 そう言うと文は自分のブラウスに手を掛ける。

 その様子に椛が慌てて止めに入った。

「文様! それでは文様が……」
「椛」
「はい!?」
「この私が負けるとでも思っているのですか?」
「そ、それは……」

 椛は押し黙ってしまう。

「では、質問を変えましょう。椛は、私が信じられませんか?」
「そ、そんな事はありません!」
「ならば見守ってていて下さい」
「……わかり、ました。でも!」

 文の胸元にうずくまり、椛は呟いた。

「無茶は、しないで下さい」
「ありがとう、椛」


「あ、そうそう。その下着、後で返して下さ「嫌です」……」

 文は何も言わずに椛の頭を優しく撫でると、そのまま霊夢の方へと向き直った。

「お待たせしました。さぁ、始めましょうか?」
「待ちくたびれたわ。さっさと掛かって来なさい」

「いざ」

「尋常に」

『勝負っっっ!!!』


 一際大きな歓声が、夜も深い神社の境内を埋め尽くした。










 その晩、仲睦まじく飛ぶ二人の天狗の姿があった。全裸で。
レミ「霊夢! 今度は私と勝負よ!」
霊夢「帰れ」
飛鳥落
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コメント



0.1760簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
結局あややも全部剥かれたのか…
後書きの勝負も気になるものだがw
3.100名前が無い程度の能力削除
あぁ、なんてこと。
現場を写真に納めるはずのカメラマン自身が全裸だなんて。
もちろん、このあとの挑戦者の写真も……ああぁぁ……
13.100ぺ・四潤削除
素晴らしい上司と部下。文ちゃん格好いい!! ……最後の一行を見るまでは。
ていうか服は返してくれないのかww
これほどまでに素晴らしい間接キス(?)を見ただろうか。いやない。
よし、俺も山に行って決闘申し込んでくる。たとえ負けてもスッパの俺を見て恥ずかしがる椛を堪能できるんだぞ!
でもな。文ちゃんにもみっち。みんなでぜんらならはずかしくないさ。
27.80名前が無い程度の能力削除
純粋に(不純)楽しめました! 文がとっても素敵だ!! ただ、自分としては何でもかんでも霊夢最強的な設定はどうも(この霊夢がそうだと言うワケではないのですが)もう少し隙があっても良いかと。
33.90ずわいがに削除
ちくしょうッ、しょっぺぇww
まさか耳かきさん以外の作家さんの作品でこの感覚を味わえるとはwww
36.100名前が無い程度の能力削除
結局負けちゃったんかいwww
この調子で全員剥いちゃう訳ですねwわかりますw
40.90名前がない程度の能力削除
生真面目な椛かわいい!