Coolier - 新生・東方創想話

料理はどこにいった?

2010/03/15 00:48:35
最終更新
サイズ
3.8KB
ページ数
1
閲覧数
971
評価数
4/27
POINT
1240
Rate
9.04

分類タグ


割れそうなほど薄い命が今日も運ばれていく。


扉を空けると涼やかな鈴の音が鳴り響いた。

「こんにちは、珍しいものは入荷しましたか?」

「おや、今日は一人かい?」

「お嬢様は良い子だから寝てるんですよ」

咲夜はそう言いながら店内を見渡した。
珍しい物を集めるのが趣味な咲夜はたびたび香霖堂に赴く。
外の世界の物、魔法の道具、雑貨等。
幅広く扱っているのは幻想郷では此処しか無い。

「そうだなぁ。外の世界から流れてきた変わった食器と台車があるよ」

店主はそう言うと、店の一角示した。
皿には口を大きく開けている鬼が描かれていた。
台車は燃えている鬼が彫ってあった。

「皿の用途は手間を省く。台車の用途は物の温度を保持する。
 どうだい、メイドの君にはピッタリの品物だと思うけど。
 ただしワンセットじゃないと効果が発揮されないみたいんだ」

「手間を省くとは一体なんですか?」

「文字通り、試してみれば分かるよ」

「そうですね」

咲夜は軽く思案している様子だった。そして頷いた。
こうして何の問題も無く商談は成立した。


紅魔館に帰った後、咲夜は早速料理を始めた。
香ばしい匂いが立ちこめた。
咲夜は完成した料理を皿に盛ろうとした。
すると皿に描かれている鬼が手を伸ばし料理を盛りつけた。

「なるほど。手間を省く程度の能力ね」

咲夜は皿を台車に乗せ、廊下に出た。
カツカツと固い靴の音が響く。
カラカラと鳴る台車を押して行くメイド。
メイドは笑みを堪えながら誰も居ない紅の廊下を歩いている。

「今日はいい料理ができました」

楽しそうに独り言を言うメイドは大きな扉の前で止まった。
重々しい音共に扉が開かれた。

「お嬢様、お食事が用意出来ましたよ。
 今日のは自信作です」

レミリアは不思議そうな顔した。台車に乗った空の皿を指さす。

「ちょっと、咲夜。私は仙人じゃないのよ。霞でも食べろって?」

咲夜はきょとんとした。

「おかしいですね。神隠しでしょうか?」

「隙間がこんなショボイ悪戯するかしら?まあ、良いわ作り直して頂戴」

「直ぐに作り直して来ますわ」

咲夜の姿が消えた。残ったのは料理を載せていた皿と銀の台車。
そして、機嫌が悪そうなレミリアだけだ。
ちらっと悪趣味な皿と台車を見て顔を歪めた。

「しかし、どういうセンスしてんだアイツは」

咲夜が再び現れた。
手に持つお盆には美味しそうな料理が乗っていた。

「お待たせいたしました」
   
今度の料理は消えずにテーブル上に乗った。

「待ちくたびれたよ。それじゃ、頂きます」

レミリアは美味しそうに食べている。
咲夜は嬉しそうにそれを眺めた。

「それにしても、先程のは何だったんでしょうか?」

「さあね、どうしても気になるんだったら知識人にでも聞けば良い」

そう言ったきり、レミリアは食事に戻った。
咲夜は腑に落ちなそうだ。


「ということがあったんですよ」

咲夜は昨日のことを掻い摘んで本に埋れた知識人に説明した。

「ふーん。不思議ね。でも大した害は無いんでしょ?ほっとけばいいのよ」
 
パチュリーは本から顔を上げずに気の無い返事を返した。
咲夜はコーヒーを入れながら、頭を傾げた。
あれは一体なんだったんだろうかと。
あの時、確かに皿に料理を載せ台車に置いた。
そして、料理が無くなったのは通路もしくは部屋の中でだ。
咲夜に疑問が降ってわいた。咲夜は時を止め走った。
パチュリーはコーヒーを飲んだ。

「咲夜、コーヒーお代わり」

パチュリーの声は虚しく響き渡った。

咲夜は昨日と同じ行動をした。咲夜は理解した。昨日何が起こったのかを。



「お嬢様、見てください。新しい手品です」

いきなり現れて、手品を見ろという従者をレミリアは怪訝そうな目つきで眺めた。
しかも、やたら楽しそうだ。
昨日、咲夜が買ったセンスの悪い皿と台車があった
咲夜はそれに出来立ての料理を乗せた。
そして、白い布で覆った。

「ワン・ツー・スリー。はい、なんと料理が消えてしまいました!!」

「それって、時を止めただけじゃないの」

「いいえ、違うんですよ。お嬢様」

やけに楽しそうな様子で喋る従者。

「種はですね。こうすれば」

咲夜は皿の上にパンくずを落とした。
すると、皿の鬼の口がパンくずを飲み込んだ。
呆気に取られるレミリア。

「なんと、生きてるお皿だったんです。」



「どう美鈴、すごいでしょ?芸の肥やしが増えたわ」

「時を止めれば出来るじゃないですか。
 つか、その皿なんなんですか?」

「食べる手間も洗う手間も要らない魔法のお皿よ。いい買い物したわ」
割れそうなほど薄い命が今日も運ばれていく。このフレーズは作者スレの住人さんから御借りしました。
ありがとうございました。
ちなみにどこぞのおばあさんをモデルに書いてます。不思議なアイテムを売るおばあさんを。
970さん誤字報告ありがとうございます
とても暇な人
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.880簡易評価
2.80名前が無い程度の能力削除
霖之助が週刊ストーリーランドのお婆ちゃんに見えたw
という訳で欲をいえばもうオチにもう一捻り欲しかった
14.100970なんですが削除
おおお、使っていただいてありがとうございます。
しかも面白いっていう……なるほどなあ

あ、誤字報告も一緒に
>そういった言ったきり、レミリアは食事に戻った。
23.80ずわいがに削除
まず皿として役に立たないッスww
24.100名前を名乗る必要が無い程度の能力削除
これは懐かしいストーリーランド