Coolier - 新生・東方創想話

我ら、紅魔館FC! 第二節

2010/03/13 22:38:35
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 ※このお話は『我ら、紅魔館FC! 第一節』の続きになります。
  このお話を読む前に上記のお話を読んでいただいた方が、
  より楽しんでいただけると思います。
 






 Ⅰ
 






 「んっ――、うぅ~ん」
 自室の天蓋付きのベットの中でレミリアは大きく伸びをして目を覚ました。
 
 紫がサッカー大会開催の発言をした宴会から一週間近く経っていたが、今の所何の音沙汰もなく、幻想郷はいつも通りゆっくりとまるで春の惰眠を貪っているかの様に過ぎている。

 「ふぅ」
 レミリアは小さく息を吐くと、部屋の中心に歩み寄り自身のお気に入りの揺り椅子の座席に置いてある一冊の本を手に取る。



 『誰でもわかる!サッカー入門☆』



 親友であるパチュリーから(無理矢理?)貸し出された本である。
 ここ一週間は特にやる事も無かったので、この本も何回も読み直してしまう程読んでしまった。
 お陰で自分の『サッカー』に対しての勘違いと、知識は身に付いたが――。

 しかし、おおよその事柄は知識で知っているのと実際にやってみるのとでは随分と勝手が違うものである。
 なのでレミリアとしては一日千秋の思いで紫のサッカー大会の告知を待っていたのだが、
 中々こないので少々肩透かしを喰らった気持ちだった。

 「う~、さて今日は何の練習をして暇を潰そうかしら……。PKの練習は――、
 フランと一緒にこの前やったし……」

 ちなみに妹のフランドールと一緒にやったPK練習は66665対66665まで競り合ったのち、
 お互いがヒートアップし吸血鬼である全身体能力をフルに使用し始め、紅魔館が半壊した処で咲夜とパチュリーからストップが掛かりノー・コンテストとなった。
 
 「まぁ、朝食でも摂りながら考えるとしましょう」
 レミリアはそう独りごちて自室を出る。
 




 「おはよう。今日もいい夜ね」

 「おはようございますわ、お嬢様。お食事になさいますか?」
 食堂に咲夜の姿を見つけ、レミリアは話しかける。

 「ええ、そうして頂戴」
 「畏まりましたわ」
 咲夜がそう応えるやいなや、レミリアの鼻孔にほのかに芳しい香りが漂い始める。

 レミリアが視線をテーブルに移すと、すでにモーニングセットがレミリアの着席を待ちわびていた。

 レミリアが朝食に手を付け始め、後に食後の紅茶を嗜んでいるとその頃合を見計らっていたのか、
 咲夜は一枚の新聞をそっと主人に差し出した――。
 
 「ん? これは?」

 「おそらくお嬢様が待ち侘びているものですわ」
 咲夜はそう言って微笑む。

 レミリアはそれを聞くやいなや、食い入る様に新聞を読む。




 「……、クククッ。ついにこの時が来たのね!」
 暫し無言の後、レミリアは口を開いた。

 「咲夜――」
 「はい」

 「すぐに全員を応接間に呼びなさい! 紅魔館会義を始めるわよ!」
 






 Ⅱ
  






 ――紅魔館応接間、長い長方形のテーブルの上座にレミリアが陣取り、その周りをフランドール、パチュリー、咲夜、美鈴、小悪魔と紅魔館の主要メンツが囲んでいる。
 
 レミリアは全員の顔を一瞥すると、

 「ついに来たわ。これがサッカー大会の概要と規定よ。」
 先程、自身が読んだばかりの新聞をテーブルの中央に滑らせる。

 そしてテーブルの中央に流された一枚の新聞紙に、今応接間に集まっている全ての視線が注がれる。
 その新聞紙に書かれている『サッカー大会』の概要・規定はおおまかに抜粋すると以下のものである。





 『幻想郷サッカー大会』 

 
 ・概要

 
 1、本大会は幻想郷で結成されたサッカーチームによるサッカー大会である。サッカーをしたい者であれば人妖問わず、サッカーチームを作り参加可能である。
 2、本大会の試合概要は総当りのリーグ戦とワンマッチの決勝トーナメントの二種類で優勝を競う。
 2-1、総当りのリーグ戦は応募されたチームを甲・乙の二グループに分け、各グループの上位二チームが決勝トーナメントへ出場する。
 2-2、リーグ戦は勝ち点方式とする。勝ち=3点、引き分け=1点、負け=0点。


 ・規定


 (一)、人妖の身体能力差について
 ・ 妖怪側は人間の身体能力と同等近くまで制限がかけられる。
 (二)、個別の特殊能力について
 ・ サッカーの試合が成り立たなくなる様な能力、またはサッカーの享を著しく削ぐ様な能力はこれを禁止する。
 ・ 上記以外の能力の使用にあたっては、サッカーの試合を壊さない程度であれば本人の個性としてこれを認める。
   但し、能力の使用はその時の状況をよく鑑みて行うこと。
 (三)、選手間の移籍について
 ・ 各チームは大会期間中、最大三人まで選手の移籍を行える。 


 ◎優勝商品……、幻想郷No.1チームの称号
    副賞……、今大会協賛の提供品の中から欲しいもの一つ





 「――ふむ。これを読む限りではリーグ戦で二位以内に入るのが、当面の目標になりそうですね」
 新聞を読み終えた美鈴が感想を漏らす。

 「やっぱり身体能力に制限をかけてきたわね。各々の能力については――、これを見る限り咲夜の『時止め』や紫の『スキマ』なんかは禁止対象みたいね」
 「それ以外の、サッカーの試合を壊さない程度の能力は空気を読んで使用してもよい……、ですか。  中々にやっかいですね」
 パチュリーと咲夜は能力の使用について話し合っている。

 「私は魔理沙と一緒にチームを組みたいなぁ。ねぇ、お姉さま、魔理沙をチームに誘ってもいい?」
 「その話は少し待ってなさい。さぁ、皆大会の内容は分かったかしら?」
 レミリアが全員にそう話を振る。すると全員が肯定の意を表した。
 レミリアはそれを見て話を切り出す。

 「もう分かっていると思うが、今この場にいる面子は『幻想郷サッカー大会』に参加する。
 当然、我が紅魔館の代表としてだ。勿論、狙うは優勝だ!」

 「えっ! パチュリーも参加するの!?」
 レミリアの言葉にフランドールが驚く。

 「あ~、パチュリーはあれだ。――うん、そうチームの監督よ。監督」
 「むきゅ!? ちょっと、裏方で参加するとは言ったけど監督って裏方なの?」
 「大丈夫よ、サッカーの試合なんてこの私がちょちょいと華麗に点取って終了よ! 
 パチェは座っていつもの様に本を読んでればいいわ」
 レミリアが自信たっぷりに豪語する。

 「……そんなに上手く行くかしら」
 レミリアとは対照的にパチュリーは大きく溜息を漏らす。

 「そうしますとここにいる面子だけで5人。残りの面子はどうなされますか?」
 咲夜がレミリアに問う。

 「魔理沙をチームに入れよう!」
 「はいはい。今度来た時に誘ってみなさいな。で、残りの面子の事だけど、
 残りは妖精メイド達に参加者を募ってみるわ。紅魔館のチームなんだし、出来るだけ紅魔館の人材で
チームを作りたいのよ」
 ここぞとばかりに魔理沙を推すフランドールを宥め、レミリアは咲夜に答える。

 「成る程。内勤メイドに声を掛けておきますわ」
 「私も部下を誘ってみますね」
 「よろしくね、咲夜と美鈴」
 
 「――で、ここには『参加するチームはチーム名、選手名、背番号を記入し人里の当所まで届け出る事』って書いてあるけれど」
 パチュリーは新聞紙の一部分と付属の記入用紙を交互に指差す。
 「この新しく結成されるチームの名前はもう決めてあるの? レミィ」
 
 「名前か……、そうねぇ――」
 レミリアは指を軽く顎に当て、暫し黙考すると

 「『エターナルレッドザスカーレッツ』、これでいいんじゃない」
 レミリアは会心の出来だと言わんばかりにニヤリと笑う――。
 




 「無いわね」
 
 「無いですわね」

 「うわっ、ダサっ!」

 「レッドとスカーレットっていう同じ様な単語が二つ続いてるのがちょっと……」

 「エターナルレッドザスカーレッツ(笑)」





 提案してわずか2秒足らずで全員に却下される。

 



 「ち、ちょっと! 却下するのあまりにも早くない!? そ、それじゃああなた達は
 これよりいい名前を提案出来るのかしらっ!」

 レミリアは周りの華麗なる否定の連携プレーに若干の戸惑いと悔しさを滲ませながら、
 なおも強気にそう言い放つ。



 「では、『十六夜フラワリングナイツ』なんてどうでしょうか」
 「それ紅魔館全然関係無いじゃない。あとそれ自分の名前でしょうが」
 咲夜が早速チーム名を提案するが、先程のお返し! とばかりにレミリアが瞬速で却下する。
 
 「『紅蹴球団』なんてどうですか」
 「う~ん、悪くはないんだけど平凡だなぁ」
 美鈴も続けて提案するも、レミリアの反応は今一つである。
 
 「はいは~い。私は『魔理沙と愉快な紅魔館チーム』がいい!」 
 「はいはい、却下却下。ていうかフランはどんだけ魔理沙が好きなのよ!」
 「む~」  
 レミリアに提案を却下されてフランドールは少々むくれてしまう。
 
 「『紅い悪魔』が率いるチームなんですから――、
 『マンチェス○ー・ユナイテッド』なんて格好イイんじゃないですか?」 
 「ん~、すっごく素敵な名前だと思うんだけど、何故だかその名前は採用しちゃいけない気が
 するのよ。私の運命がそう囁いてるわ」
 小悪魔の提案に、レミリアはそう答える。
 


 その他にもいくつか提案が出るものの、レミリアの心の琴線に触れる様な名前は無く、
 「何よ、全然駄目じゃない。やっぱり『エターナルレッドザスカーレッツ』で決定ね!」
 レミリアがそう断言するが、

 「え~、それヤダ! ダサいから!」 
 フランドールが駄々を捏ねる。
  
 「な、何よぅ! 言わせておけば散々に言ってくれちゃって! ――もう頭に来たわっ!」 
 
 今日、自身のネーミングセンスを周りに散々に却下され(主にフランドールに)、
 元々大して大きくも無い堪忍袋の緒が切れたレミリアはついにフランドールに向けて弾幕を放つ。
 しかし、怒りのあまりに狙いがぶれたのか弾幕はフランドールの真横を掠めて壁に着弾してしまう。


 「きゃっ! ――何よ、殺ろう(弾幕勝負)ってのさ!?」
 フランドールがギョロリとレミリアの方を見やる。

 「うっ、う~。私はお姉さまなんだから、フランは少しくらい遠慮してくれてもいいじゃない!」
 「それとこれとは関係無いじゃない!」
 「何よ!」
 「何さ!」

 二人はそう言うと同時に相手に向けて弾幕を放つ。


 「「お嬢様! 妹様!」」

 すぐさま咲夜と美鈴が二人の喧嘩の仲裁に入るが、応接間は先程のスカーレット姉妹の弾幕により
 ボロボロに成り果ててしまう。





 『ドッカァァァアアン!!!!!』

 『ガッシャァァアアン!!!!!』





 弾幕の応酬で空気が震え、応接間の壁やら天井やら調度品の破片が飛び交う中で、

 



 「チーム名は――、『紅魔館FC』っと――」
 パチュリーはまたも大きく溜息を付き、サラサラと記入用紙に書き込むのであった――。







 Ⅲ








 「はぁ……」
 
 
 大きく溜息を付きながら、多々良小傘は上空を行く当ても無くフラフラと漂っていた。
 
 「誰も驚いてくれない……。私、妖怪の才能無いのかしら……」
 小傘は人々に驚いてもらうために、一直線にぶつかってみたり、コンニャクを使ってみたり、
 妖怪古典を勉強したり色々と試してみたもののまったく成果が出ず、自信を失いかかっていた。

 「いやっ、ここで挫けちゃ駄目だわさ! ――とにかく、誰か一人でも驚かす事に成功しさえすれば!」
 小傘はネガティブになりそうな気持ちを奮い立たせる。

 「ん~、どこかに驚き易そうな人はいないものか――」
 小傘はキョロキョロと周りを見渡す。
 そうすると、大きな紅い洋館の門付近に立っている一人の人物を発見する。

 「おっ、丁度いいところに人物をはっけーん! 驚いてくれるかしら?」
 そう言ってその人物の背後に廻り、少しの間人物観察をし始める。

 (ん~、後ろからパッとみる限り温和そうな感じだし大丈夫だよね! 
 ……でも同時に何となく何かの達人の様なオーラを醸し出しているような……。
 ううん、気のせいよ!気のせい。……よぅ~し、いくわよっ!)

 「うらめしやぁ~」
 小傘はそう言って、背後からその人物の肩を掴む――、





 「ほいちょあぁぁあああああ!」





 「え!? ち、ちょっ――」
 いきなり驚かそうとした人物に腕を掴まれ、

 「う~ら~め~し~やぁぁあああぁぁ~!?」
 よく分からない掛け声を上げながら子傘は勢い良く前方に投げ飛ばされる。
 
 「うぎゃん! うぅ~ん……」
 投げ飛ばされて地面に腰を強かに打ちつけてしまい、小傘はそこでノビてしまう。




 「――はっ!? アイヤ! 大丈夫ですか!?」
 いつも通りのシエスタから目が覚めた美鈴が小傘に駆け寄る――。

 「ごめんなさい、つい条件反射で投げ飛ばしてしまいました。って、
 ありゃりゃ、ノビちゃってますねぇ~」
 






 Ⅳ







 「うっ、うぅん……」




 「あら、気がついたのかしら」
 小傘が気絶から目を覚ますと、咲夜が声をかける。

 「ここは……?」
 「心配しなくてもここは紅魔館っていうお屋敷の中よ。あなたはうちの門前で倒れていたのでしょう?」
 「えっと、そうだ。たしかこのお屋敷の門付近にいた人を驚かそうとして……」
 小傘はそう言って、ゆっくりと記憶を取り戻す。

 「うちの門番が迷惑をかけたわね。彼女に代わって私の方から謝るわ、ごめんなさいね」
 咲夜は紅茶を淹れながら先の出来事を詫びる。
 「はい、これ。気持ちが落ち着くわよ」
 「あ、どうも……」
 咲夜から淹れたての紅茶を受け取り、小傘は紅茶の香りを楽しみながら口をつける。

 「それで、あなたはうちの近くで一体何をしていたの?」
 咲夜は小傘が紅茶を十分堪能するのを見計らって、口を開く。

 「あ~、それはさっきも少し話したと思うけど、門付近にいた人を驚かせようと思って……」
 「驚かせる……ねぇ」
 「暇だし、驚かせる事が私のライフワークザマスよ!
 それで幻想郷中をあっちこっち飛び廻っていたんだけど」
 
 「ザマスって……。そのキャラ――、まぁいいわ。でも幻想郷中を飛び廻っていたなら、
 今の幻想郷のブームで暇くらい潰せそうなものだけど」
 「ブーム……って? 何だわさ?」
 小傘はそう言って首を傾げる。

 「知らなかったの? 今、幻想郷はちょっとしたサッカーブームが起きてるわ。
 近々開かれる『幻想郷サッカー大会』、あなたも小耳にくらい挟んでいるでしょう?」
 「うんにゃ、全然知らなかったわさ」
 咲夜がそう説明するが、小傘は知らないと首を横に振る。

 「そんな人もいるのねぇ。まぁ、あなたも暇なんだったらどこかのサッカーチームに入れてもらえば?」
 咲夜はそう言って紅茶の御代わりを小傘のティーカップに注ぐ。

 「うぅ~ん、サッカー……かぁ。野球なら知ってるんだけどサッカーは全然知らないのよねぇ」
 小傘は腕を組んで唸り始める。





 「咲夜ぁ~。これからパチュリーと一緒にサッカー大会に向けて二人で秘密会義するから、大図書館にお菓子と紅茶を届けて頂戴!」



 丁度その時、どこからともなく紅魔館の主の声が聞こえてくる。


 咲夜は畏まりましたと返事を返すと、小傘の方に振り返る。小傘はまだう~んと唸っていた。

 (さぁ、大図書館にお菓子と紅茶を配膳しないと。――そうだ、この子も一緒に連れて行こうかしら。
 確か、大図書館にサッカーの本があったはず……)





 この咲夜の気まぐれな親切心により、小傘の運命は思いもよらぬ展開を迎える事になる――。





 「ああ、来た来た。咲夜、ここよ! ――うん、こいつは?」
 咲夜の姿を見つけたレミリアはそう声を上げ、次いで小傘を視界に捉えて問う。



 「お客人ですわ。なんでもサッカーの事を知りたいそうなので、ここに連れて参りました」



 「――ふぅん」
 咲夜の応えにレミリアは興味深そうに小傘を見つめる。
 あるいは、同じサッカー初心者としての親近感がそうさせるのか――。

 「ここはサッカー教室じゃあないのだけれど……」
 パチュリーは咲夜の対応に少々呆れ、やれやれと肩をくすませる。
 「まぁまぁ、別に構わないじゃないか。で、おまえはこれが何かくらいは知っているんだろう?」
 レミリアはそう言って、小傘の方にサッカーボールを転がす。

 「馬鹿にしないでよ! これくらい知ってるわさ!」
 転がってきたボールを足で難なく止め、馬鹿にされたと小傘は憤慨する。

 「……。――レミィ、咲夜、あの子からボールを奪いなさい。勿論、二人ががりで、よ」
 小傘の一連のボール捌きを見ていたパチュリーは不意にレミリアと咲夜に命令する。

 「ち、ちょっと、どうしちゃったのよ。いきなり」
 レミリアがパチュリーに問いかけるが、

 「いいから。……あなたもいいわね? ルールは簡単よ、今からそこの二人がボールを奪いに来るからあなたはそれを何とかしてかわしなさい。ちなみに手を使っては駄目よ」
 パチュリーはレミリアを無視して小傘に話しかける。

 「んもぅ、何なのよ。一体!」
 レミリアはそうボヤくとチラッと咲夜に視線を向ける。
 そして咲夜からの返しの視線を確認すると、



 「そういう訳だから悪く思わないでよね!」
 レミリアはそう言い放ち、咲夜と同時に小傘のボールを奪取しに飛び掛る――。

 「えっ!? うわっ、と」
 小傘は一瞬何が何だか分からないという様な表情をしていたが、レミリアと咲夜が二人がかりでボールを奪いにきたので慌ててボールをキープし始める。



 「えっ! ちょっと、何よこいつ! ボールが……取れないっ!? ――ちっ、咲夜! 
 前後で挟み込むわよっ!」


 楽勝と思っていた事に思いのほか手こずり、思わず咲夜に指示を出してしまうレミリア。
 その光景を見ながらパチュリーは小傘の動きを観察する。



 (やはり足でのボール捌きが格段に上手い。……いいえ、それだけではなく手や腕の使い方も抜群に上手いわね。これは予想以上だわ――) 



 パチュリーが小傘をじっくりと観察している間に咲夜が振り切られ、
 いつの間にか勝負の行方はレミリアと小傘の一対一へと移行していた。





 レミリアと小傘が正面で対峙し、レミリアはボールを奪取する隙を、小傘はレミリアを抜く隙を
お互いが探りあう――。




 そんな緊迫した時間に止めを刺したのはレミリアであった。
 「そこよっ!」
 掛け声とともに自身の足を小傘の利き足にあるボールへと伸ばす――。
 




 ――ふわっ。





 レミリアが足を伸ばしたのと同時に小傘は利き足でボールを掬い上げ、
 それと同じくして自身もレミリアをかわす――。



 「んなっ!?」
 レミリアが声を上げるのと同時に小傘もボールを自身の利き足で止め、

 「あぁ~、怖かったぁ~。――でも、何だか面白かったかも!」
 そう笑顔で応える。







 『うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!』







 一体何処から聞きつけたのか、レミリアと小傘の一対一を固唾を飲んで見守っていた小悪魔や、
 美鈴を含む妖精メイド達ギャラリーが先程の勝負に対して大歓声を上げる。



 「こいつら、いつの間に……」
 レミリアは集まっていた観衆に一瞬目を丸くしたが、すぐに仕方の無い奴らだと苦笑し始める。



 「ベリィ・グッドよ! あなた、凄いじゃないの。驚いたわ!」
 パチュリーがそう言って、小傘に賛辞の言葉を送る。

 「驚いた……? この私に驚いてくれたの!?」
 小傘はそう言って喜び、歓喜のあまりに無邪気に飛び跳ねて喜ぶ。

 「えぇ、とっても驚いたわ」
 小傘の事情を知らないパチュリーは、小傘のあまりの喜び様に首を少し傾げながら重ねてそう言った。

 「ひょっとして、もしもこのまま『サッカー』をし続けたら、皆もっと驚いてくれるかな?」
 「……? よく話が飲み込めないけれど、今日のプレーを皆にみせたらきっと驚くんじゃないかしら」
 「本当に!? じゃあ、わちきサッカーやるだわさ!」
 小傘は満面の笑みでパチュリーに応える。

 「そう、――レミィ」
 パチュリーはそう言ってレミリアを見やる。

 「分かっているよ。この私を抜かしたんだ、合格さ!」
 レミリアも微笑んでそう応える。

 それを聞いてパチュリーは、思いがけない所で逸材が手に入ったわねと満足そうな顔をして小傘に言った。





 「ようこそ、『紅魔館FC』へ――!」
 
皆様、こんにちは、こんばんは。ビバです。
タイトル通り第二話となります。やっと物語が少しずつ動き始めました。
今回のお話は、サッカー大会の説明と紅魔館FCの新たなる仲間が
メインテーマになります。皆様に上手く伝わっているかいささか不安ですが、
どうか長い目で見ていただけると嬉しいです。
あ、ちなみにリーグ戦は重要な試合しか書きません。長くなっちゃいますし……。
自分の作品以外にもサッカーネタが増えるといいなぁ~


※誤字を修正いたしました。
 たくさんのコメントありがとうございます。励みになります!
 これからもよろしくお願いいたします。
ビバ
[email protected]
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コメント



0.560簡易評価
1.80ずわいがに削除
よくぞ続けて下さいました!展開もなかなかに面白くなってきましたね!

小傘はキャラを無理し過ぎてて吹きましたが、これをダークホース的な役にしたのは良いですね。
これは期待出来そうです、え~と、なんでしたっけ、チーム名?
あ、そうそう……エターナルレッドザスカーレッツ(笑)
3.100万年平社員にご注意を削除
いいですね。他の勢力の話も見てみたいですね。
ああでもシリーズタイトルの都合でむりなのかな。
6.80煉獄削除
そろそろ試合が始まったりとかするのでしょうか?
どんな展開になっていくのかが楽しみですね。

人物の名前の誤字を報告です。
小傘が『子傘」になっていたり、小悪魔が『子悪魔』になっている箇所がいくつかありましたよ。
8.90名前が無い程度の能力削除
どこに属しているかを表す『紅魔館』
紅魔館を象徴する二人を表す『スカーレット』で、
チーム名『紅魔スカーレッツ』なんてどうでしょうか?
とりあえずポジションがハッキリしているのは、
『GK:紅美鈴』
でしょう。異論は認めない!
9.80名前が無い程度の能力削除
>フランドールと一緒にやったPK練習は66665対66665まで競り合った
いったい何日かかったんだw

初戦はドコが相手になるんだろ。
続き待ってるよ。
13.70名前が無い程度の能力削除
PKにマンチェス○ー。
なるほど、ジョージ・○ストの幻想入りフラグですね、わかります。

まあ冗談はさておき。
サッカーを文章にするのはなかなか難しいことだと思いますが、ぜひ完結まで頑張ってほしいと思います。