「ねぇレミィ」
「んー?」
紅魔館の優雅なティータイム。
洗練された意匠のテーブルにつき、手塩にかけたメイドが淹れた最高の紅茶を楽しむひと時。
そんなゴージャスな時間に私の相手をしているのは、我が友人、パチェだ。
「尻切れトンボって要するに痔よね」
「ぶふぅッ」
あまりに斜め上の発言によって、私の唇は紅茶を噴出した。優雅に。
噴出された紅き液体はアレやコレやの物理法則に従いつつ優雅に運動し、パチェへと襲い掛かったのだが、そこは七曜を操る魔女である。優雅に回避してみせた。紅茶とて水だから七曜でどうにかできるらしい。
いずれにせよ、台無しだ。
「いやいや紅茶飛ばしてる場合じゃないわレミィ。これは重大な問題だわ。切れ痔は意外と大変なことなのよ。痛いのよ」
矢継ぎ早に言葉を飛ばすパチェ。
なんだって優雅なティータイムにクリニックだの切れ痔だのの話をしなければならないのだろう。下品極まりない。
その前に、この魔女は普段からそんなこと考えてたのか。神妙な面で。
「私に訊かれても困る。というか、それこそ消極的に本で調べればなんとでもなるんじゃないの? 図書館で」
「あそこには、口碑伝承の類は無いわ。紙媒体オンリーだもの。――第一、そんな馬鹿なことを書き留める輩がいると思う?」
自分で訊いておいて馬鹿呼ばわりは無いだろう。
いや、突っ込むべきところはそこじゃないんだろうけど。
「クリニックに行くべきなのよ。クリニックに」
「痔は前提?」
パチェは呆れた顔になった。それは私の仕事だ。
「レミィ、あのね。尻が切れてる原因としてそれ以外に何があげられるの」
「え? あー……」
まさかそんな事を訊かれるとは思ってもみなかった。
頭を回して考える(といっても脳なんてないんだけど)。
「刃物を持った男に襲われたとか」
「トンボの尻だけ斬るって凄いマニアックだと思わない?」
「あう」
それもそうだ。出来ればそんなマニアックな辻斬りには襲われたくない。
しかも尻だけ斬るのだから熟練の技術だ。他の事にその情熱を向ければいいものを。
……頭に浮かんだ妖夢という単語を私はすぐに叩き潰した。まさかね?
「まあうん、百歩くらい譲って痔だとして。トンボがクリニックに行ける? 相手されるわけがない」
基本的に、クリニックなんてものは人間のためにあるものだ。トンボなど門前払いを食らうのは目に見えている。
というか、トンボの痔なんてどう治せと。
「幻想郷は全てを受け入れるって管理者が言ってるのよ、あるんでしょ多分」
「んー、そういえば、妖怪も受け入れるクリニックが人里にあるとは聞いたことがあるけど。トンボはどうだか」
「それだわッ」
パチェが急に身を乗り出してきた。
目を輝かせている。そんなにトンボの謎が気になるか。
「レミィ、それ、詳しく教えてくれる?」
「ん。えぇと――」
後日。
「ただいま」
「パチェ? 出かけてたの?」
意外で珍しいことだ。パチェは紅魔館でも有数の引きこもりなのに。
雨を降らすのはやめてほしい。
「まぁね、ほら、例のクリニックよ」
私が教えたクリニックのことだろう。
といっても、私は詳しい場所を忘れてて、結局咲夜に訊いたのだけれど。
「で、どうだった?」
「んー……経過観察が必要らしいわ。また来いって」
なんとも歯切れの悪い答えだった。
経過観察、ね。トンボが来たかどうかなんて、院長なり何なりに訊けば一発で分かるだろうに。それとも、患者のことは話したりしないものなのだろうか。
あるいはアレか、面と向かって「トンボが痔の治療に来ましたか?」とか訊いたんだろうか、この魔女。心の病気でも抱えてると思われたのだろうか。
「経過観察ねぇ。ま、どうにかなったら教えてちょうだいな」
「え、ええ……」
?
妙に歯切れが悪い。どうしたのだか。
あと、その手提げ袋は何だろう。私が教えたクリニックの名前が書かれた袋。
「んー?」
紅魔館の優雅なティータイム。
洗練された意匠のテーブルにつき、手塩にかけたメイドが淹れた最高の紅茶を楽しむひと時。
そんなゴージャスな時間に私の相手をしているのは、我が友人、パチェだ。
「尻切れトンボって要するに痔よね」
「ぶふぅッ」
あまりに斜め上の発言によって、私の唇は紅茶を噴出した。優雅に。
噴出された紅き液体はアレやコレやの物理法則に従いつつ優雅に運動し、パチェへと襲い掛かったのだが、そこは七曜を操る魔女である。優雅に回避してみせた。紅茶とて水だから七曜でどうにかできるらしい。
いずれにせよ、台無しだ。
「いやいや紅茶飛ばしてる場合じゃないわレミィ。これは重大な問題だわ。切れ痔は意外と大変なことなのよ。痛いのよ」
矢継ぎ早に言葉を飛ばすパチェ。
なんだって優雅なティータイムにクリニックだの切れ痔だのの話をしなければならないのだろう。下品極まりない。
その前に、この魔女は普段からそんなこと考えてたのか。神妙な面で。
「私に訊かれても困る。というか、それこそ消極的に本で調べればなんとでもなるんじゃないの? 図書館で」
「あそこには、口碑伝承の類は無いわ。紙媒体オンリーだもの。――第一、そんな馬鹿なことを書き留める輩がいると思う?」
自分で訊いておいて馬鹿呼ばわりは無いだろう。
いや、突っ込むべきところはそこじゃないんだろうけど。
「クリニックに行くべきなのよ。クリニックに」
「痔は前提?」
パチェは呆れた顔になった。それは私の仕事だ。
「レミィ、あのね。尻が切れてる原因としてそれ以外に何があげられるの」
「え? あー……」
まさかそんな事を訊かれるとは思ってもみなかった。
頭を回して考える(といっても脳なんてないんだけど)。
「刃物を持った男に襲われたとか」
「トンボの尻だけ斬るって凄いマニアックだと思わない?」
「あう」
それもそうだ。出来ればそんなマニアックな辻斬りには襲われたくない。
しかも尻だけ斬るのだから熟練の技術だ。他の事にその情熱を向ければいいものを。
……頭に浮かんだ妖夢という単語を私はすぐに叩き潰した。まさかね?
「まあうん、百歩くらい譲って痔だとして。トンボがクリニックに行ける? 相手されるわけがない」
基本的に、クリニックなんてものは人間のためにあるものだ。トンボなど門前払いを食らうのは目に見えている。
というか、トンボの痔なんてどう治せと。
「幻想郷は全てを受け入れるって管理者が言ってるのよ、あるんでしょ多分」
「んー、そういえば、妖怪も受け入れるクリニックが人里にあるとは聞いたことがあるけど。トンボはどうだか」
「それだわッ」
パチェが急に身を乗り出してきた。
目を輝かせている。そんなにトンボの謎が気になるか。
「レミィ、それ、詳しく教えてくれる?」
「ん。えぇと――」
後日。
「ただいま」
「パチェ? 出かけてたの?」
意外で珍しいことだ。パチェは紅魔館でも有数の引きこもりなのに。
雨を降らすのはやめてほしい。
「まぁね、ほら、例のクリニックよ」
私が教えたクリニックのことだろう。
といっても、私は詳しい場所を忘れてて、結局咲夜に訊いたのだけれど。
「で、どうだった?」
「んー……経過観察が必要らしいわ。また来いって」
なんとも歯切れの悪い答えだった。
経過観察、ね。トンボが来たかどうかなんて、院長なり何なりに訊けば一発で分かるだろうに。それとも、患者のことは話したりしないものなのだろうか。
あるいはアレか、面と向かって「トンボが痔の治療に来ましたか?」とか訊いたんだろうか、この魔女。心の病気でも抱えてると思われたのだろうか。
「経過観察ねぇ。ま、どうにかなったら教えてちょうだいな」
「え、ええ……」
?
妙に歯切れが悪い。どうしたのだか。
あと、その手提げ袋は何だろう。私が教えたクリニックの名前が書かれた袋。
パチュリーさんってばかーわいぃ。素人ですけど診察したいです。
ところでいつもの長いタイトルではないのになんだろう、この吸引力。
尻切れトンボって改めて考えると凄くシュールな言葉ですよね。
ノロウイルス直撃でこの5日間で300回ほど吹きまくった俺に対する当てつけかww
ウォシュレット最弱でも決死の覚悟でボタン押すんだよ!!
袋に書かれていたクリニック名は「孔間観」でしょうか。
パソコンの前で座りっぱなしになってる諸君はよく分かると思うけど。
経験あるのかなと思ったら現在進行形かw
でもあれも流水みたいなもんだから
ひょっとしてお嬢様と妹様は使えないのかな?
御尻の物語はこれにて痔・エンド。お後がよろしいようで……。
いや、痔なんだからよろしくないか。失礼しました。^^;
タイトルで某氏を思い出した。