Coolier - 新生・東方創想話

case:射命丸文

2010/03/09 14:55:54
最終更新
サイズ
17.3KB
ページ数
1
閲覧数
6773
評価数
88/272
POINT
17520
Rate
12.85

分類タグ


 case:火焔猫燐

 ん、あ、なになに? 取材?
 いいよいいよ、じゃんじゃん取材しちゃっていいよ。んふふ、とうとうあたいも注目されるような時代が来たか。
 え、聞きたいのはさとり様について?
 なんだそりゃ、期待損じゃないか。てっきり天狗達の間であたいのことが噂になってるもんだと思ったのに、さとり様かい。まぁ、さとり様は美しいから注目されるのは仕方ないことだけど。
 それで、さとり様の何が知りたいんだい?
 言っておくがスリーサイズとか……過去?
 過去、過去ねえ。そう言われてもあたいやお空は昔の事を気にしない主義だから、とんと覚えてないね。なにしろ昨日の晩ご飯だって曖昧なんだから。
 ただ、今日がどういう日なのかは覚えてるよ。
 そうさ、今日はさとり様とこいし様の誕生日!
 二人とも同じ日が誕生日なんで、用意する料理もいつもの二倍だよ。まぁ、作るのはさとり様なんだけどさ。
 それはいま関係ない? んー、でも覚えてる範囲で言うならば別に取材するほどのことじゃないと思うけどね。
 たまに喧嘩はしてるけどさ、基本的には仲の良い姉妹だし。両親が健在だった頃となれば、あたいは此処に居なかったからね。尋ねられても答えようがないよ。
 そうそう、両親と言えば。昔から習慣なんだってさ、プリン。
 プリンだよ、プリン。毎年、さとり様とこいし様は誕生日の日にプリンを食べるんだと。
 お二人とも大好物だからね、あの吸血鬼が病みつきになるほどのプリンを毎年取り寄せているんだって。
 いやぁ、贅沢な話かもしれないけどあたいも食べてみたいね。
 誕生日におねだりでもしてみようか。
 あ、プリンはどうでもいい。そうかい。










 case:星熊勇儀

 さとりの過去ねぇ……あいつとは古い付き合いだけど、そういや昔のことはあんまり覚えてないな。まぁ、私は過去より未来を見る女だから、仕方ないと言えば仕方ない。
 それより天狗、どうしてそんなに離れてるんだよ。それじゃ声も聞こえないだろう、ほら、もっと近くに来な。
 これから閻魔の所に取材へ行く?
 そりゃ大変だ、閻魔はとにかく頑固だからね。酒の一つでもあおって景気づけせにゃならん。
 お前だって本当はいける口なんだろ?
 さぁ、取り出したるは天界の神水から作ったと言われる大吟醸『天地開闢』。古の神々も舌鼓を打ったとされる名酒中の名酒だ。
 どうだい、これでも逃げるってのか?










 case:四季映姫・ヤマザナドゥ

 私に話があると? とりあえず、もう少し離れて貰えますか。お酒臭い。
 まったく、私に会うというのにお酒を飲んでくるだなんて。あなたも大概良い度胸をしていますね。
 鬼に飲まされた、ですか。それならば仕方ない。
 ですが、時には理不尽な要求にも……なんですか、これは。これを見て欲しいと、そういうわけですか。
 …………なっ!?
 な、なんでこの書類をあなたが持っているんですか!
 是非曲直庁の書類は原則持ち出し厳禁。あなたが持っているはずはない。だというのに、どうして。
 偽造というわけでもないようですね。是非曲直庁の判も押されている。
 しかしこれは、陳情書ですか。
 古明地こいしの地霊殿追放要求? しかも書類を書いたのが古明地さとりとは。
 ……なんとまぁ、中身もトンデモですね。確かに地霊殿は是非曲直庁の管轄。こういった人事願いもいちいちお伺いを立てなければならないのも事実ですが、それにしたってこれはどういう。
 少なくとも私の記憶が正しければ、こういった書類を扱った覚えはありません。ああ、年代がかなり古いのですね。その頃、私はまだ閻魔見習いでしたし。
 これは、ご両親が健在だった頃に提出された書類のようです。
 だからといって、天狗が持っているはずもない。どういうことなのでしょう。
 気付いたら部屋にあったと言われても、俄には信じられませんよ。警備体制に問題でもあったんでしょうか。
 え? 書架を調べたい?
 別に許可などいりません。是非曲直庁はクリーンな組織が信条ですから、機密情報以外は全てオープンにしています。こういった陳情も殆ど書架に保管されており、誰でも見ることが可能ですし。
 あなたがこの陳情書の中身について調べてくれるというのなら、私としても助かります。こちらはどうして書類があなたの元にあったのか、そちらを調べなければなりませんからね。
 まぁ、個人的な意見を言わせて貰うのなら、中身について調べても無駄だとは思いますよ。その陳情は不許可に終わっている。
 是非曲直庁がその必要無しと判断しているのなら、少なくとも古明地こいしが追放されるだけの理由はなかった。だとすれば、誰かが古明地さとりの名前を騙って書類を作成したのかもしれません。
 何故そんなことをしたのかは疑問ですが。
 それでも調べるというのなら、書架には小町がいるはずです。ええ、あまりにもサボタージュが過ぎるので書架の受付をさせています。
 あそこは暇のようで忙しい部署ですから、今頃は彼女も大慌てのはずです。
 これに懲りて仕事熱心になってくれたら良いのですが。
 まったく。










 case:小野塚小町

 ん、おお、なんだい天狗かい。人がせっかく気持ちよく寝てたってたのに、邪魔しないでおくれよ。
 書類? それならそこら中に一杯あるから、好きなものを見ていきな。
 ああ、ただし持ち出し厳禁さね。懐に忍ばせたところで、ここの防犯装置を誤魔化すことはできないよ。
 そうなるとあたいも面倒なことになるから、頼むから大人しく閲覧してってくれ。
 陳情書なら、そこの棚だよ。それじゃあ、あたいは寝るから。
 …………………
 ……………
 ………
 んあ?
 一枚だけ書類が抜けている?
 ああ、そりゃ大変だ。大変だから寝かせとくれよ。あたいは昨日、忙しかったんだ。
 …………………
 ……………
 ………
 あん? 地霊殿への食料配給に関する資料?
 それなら、あっちの棚だ。
 あったかい。そりゃあ良かった。
 そうかいそうかい、誕生日にプリンを。そりゃあ素敵だ。
 なんだって、ある年よりも前になると配給されているプリンが何故か一個になっている。ビックリだね。
 姉妹なのにプリンが一個とは、こいつはミステリだ。
 その年ってのは両親が亡くなった年なのかい。
 いよいよきな臭くなってきたね。
 天狗の活躍を期待してるよ。
 それじゃあ、おやすみ。
 あたいは寝る。










 case:レミリア・スカーレット

 咲夜、文にも紅茶を。
 そうそう、この殻に籠もって手足を引っ込めればもう誰も私を傷つけることはできないって、これは甲羅よ!
 どうかしら、今度の宴会で披露しようと思ってるネタなの。
 駄目? やっぱりね。咲夜にお笑いの才能はなかったようね。
 仕方ない。レミリア弘探検隊でもやろうかしら。
 それで、私の何の用? モケーレムベンベならお風呂で日本酒を飲んでるわよ。
 古明地さとり? ええ、知っているわ。同志ですもの。
 彼女もまたプリン愛好家の一人。誕生日には毎年、同じプリンを注文している猛者よ。
 あそこのプリンは絶品でね、完全予約制なのよ。半年ぐらい前じゃないと予約もできないから、私だって食べられるのは年に一回ぐらい。
 それを姉妹で一つずつ食べているというんだから、羨ましい話よね。うちの妹はそれほどプリンが好きじゃないから、姉妹仲良くというわけにもいかないし。
 こいしもプリン愛好家の一人よ。あそこのプリンは特にお気に入り。
 いつからと言われても、昔から好きだったそうよ。
 もしも一つしか予約がとれなかったら? その場合は注文そのものを取り消すでしょうね。プリン愛好家の姉妹にプリンが一つ。喧嘩にしかならないわ。
 両親が亡くなる前はプリンが一個しか注文されていなかった。なるほど、それは妙な話ね。
 どちらも昔から好きだったようだし、そんな事は有り得ないんだけど。
 覚りという種族も、吸血鬼に似通っている部分があるわ。それはどこだか分かる?
 どちらも至高(思考)を求める種族です、か。ふふふ、なかなかに面白いことを言うわね。
 スーパーレミリアちゃん人形をあげるわ。
 ちなみに正解はどちらも種族としての矜持が高い。ゆえに仲間内には極端に甘い。それこそ種族の名前を汚すような輩でもないかぎり、同族を貶めるようなことはあまりしないのよ。
 特に覚りは他の種族から嫌われているんで、そういった身内意識は強いでしょうね。だからプリン一個なんていう争いの種を放っておくとは思えないんだけど。
 姉妹の仲が悪くて、相手へ見せつける為に頼んでいた。その可能性もあるわね。
 だけど、古明地姉妹に限ればそれは有り得ない。あそこもうちに負けないくらい、仲良し姉妹ですもの。
 え、なに、どうしたのフラン?
 日記に挟んでおいた髪の毛が落ちていた。これは誰かが勝手に日記を覗いた証拠ですって?
 ワタシハ、ナニモ、シラナイワヨ。
 ホント、ホント。










 case:鈴仙・優曇華院・イナバ

 いえ、あの、妹の機嫌を直す薬とかはないんで。師匠もそういう薬は作らないと思いますよって……いないし。
 まったく、あの吸血鬼は相変わらず我が儘ね。それで、あなたはどういう薬が欲しいの?
 薬じゃなくて訊きたいことがあると。まぁ、私が答えられる範囲であれば答えてあげるわよ。
 古明地姉妹の健康診断? ああ、それなら最近はウチがやってるわね。
 勿論、過去のデータも移して貰ったわ。永遠亭も資金難でね、こういう仕事でもやらなくちゃままならないのよ。
 見せてくれって言われても……これは私の一存で決められることじゃないし、一応部外秘だから。
 ……ちょっ、なにそれ! 脅してるつもり!?
 た、確かにちょっと師匠に内緒で実験はしたわよ。失敗もしたし。
 でも被害は出てないわけだから……うう、分かったわ。見せる、見せるわよ。
 そんなもの師匠にばれたら破門かもしれないし。
 その代わり持ち出しは厳禁。そして部外者に話すのも無し。
 間違っても新聞には載せないでよ。私の仕業だと分かったら確実に破門だし。
 はい、これ。こっちが古明地さとりのデータで、こっちがこいしの。
 こいしのだけ薄いのは、最近のしかデータがないからよ。紛失したんじゃなくて、元から健康診断に来てないだけの話。
 閻魔や死神なら問題があったんだろうけど、まぁ下の話だから是非曲直庁もそれほど気にしてなかったんでしょうね。
 そうそう、両親が亡くなってしばらくしてから診断に来るようになったそうよ。
 両親の死因? 事故だって聞いたわ。
 ほら、とっとと見て帰る帰る。師匠に見られたら大変なんだから。
 ええ、そうよ。古明地さとりは至って健康。何度か風邪や流行病に罹ったぐらいで、骨折とかしたことは一度もなし。羨ましい話ね。
 こいしの方も診断を始めてからは健康ね。それまでの事はさすがに分からないわよ。
 虐待の跡?
 うーん、よく分からないけどあったら師匠が何か書いてるんじゃない? 書いてないってことは何も無かったってことよ。
 さぁ、用事が済んだんなら早く帰る!
 それと、さっきの写真はネガごと置いていきなさいよ。










 case:犬走椛

 あれは私が哨戒を終えて温泉へ行こうとしていた時のことでした。山の向こう側から不思議な軌跡を描きながら、オレンジ色の光る物体が……そっちじゃない?
 ええー、ここから盛り上がるところなんですよ。文様、UFO嫌いなんですか?
 そりゃ確かに幻想郷じゃUFOも珍しくはないですよ。でもですね、そこを敢えて記事にするというのが面白いんじゃないですか。逆に意表をつかれた、みたいな。
 はいはい、分かりましたよ。話しますよ。
 文様強引で、あ、いえ、何でもないです。ごめんなさい。
 ええっと、とにかく私は温泉に行こうとしてたんです。そうしたら地霊殿の御一行が先に入っていたようで。
 一緒に入っても良かったんですけど、あそこの烏が酷いんですよ。とにかくもぉ、バインバインで。本当もう、文様とは比べものに……すいません、調子のってました。反省してます。
 ゴホン。それで、ですね。
 比較されるのも嫌でしたし、私は遠くから様子を窺っていたんです。違いますよ、覗きじゃないです。千里眼は使いましたけど、覗きじゃないです。私が覗くのは文様のお風呂だけです!
 …………冗談ですよ。場を和ませる軽い天狗ジョークです。
 後で話がある? そうですか、そうですか……。
 ああ、温泉の話でしたね。とにかくまぁ、私は様子を窺っていたわけです。
 そこで見てしまったんですよ。古明地こいしの傷痕です。
 あれはもう一目で分かりましたね。誰かに殴られたりした痕だと。
 それも最近のものじゃありません。かなりの古傷です。
 それなのに周りの連中は誰も気にしてないんですよ。しかも、同じ温泉に入っていた妖怪達も気にしないなんて。
 ひょっとしたら能力を使っていたのかもしれませんね。無意識を操るやつ。
 そうでなければ、あれだけの傷痕ですから誰か気にするはずです。
 お役に立てましたか?
 ついでに頼みたいことがある?
 本屋で注文ですか。 分かりました。
 すぐに行ってきますよ。
 つきましては、先程の発言を……
 ああ、無理。
 なるほど。










 case:水橋パルスィ

 さとりとの付き合いは古いわ。それこそ、産まれた時から知ってる仲だしね。
 だから古明地の内情にも詳しい。ただ、あなたも気付いているんでしょう。
 あの子の両親が死ぬより前の記憶はないわ。正確には忘れさせられた。
 誰の仕業とは言わないけど、まぁ誰にだって分かるわよね。
 忘却は無意識の領域。だったら、無意識を操るのは誰?
 あなたも気を付けなさい。勘づかれたら記憶を消されるわよ。
 さぁ、どうかしら。さっきも言ったけど、私は昔のことを覚えていない。
 だからこいしが虐待を受けていたのかなんて、答えようがないのよ。
 勿論、それにさとりが関わっていたのかも不明。
 ただ一つ、確実なことがあるわ。
 無意識の奥の最下層。遙か深くまで押し込めてあるけど、橋姫たる私には手に取るように分かる。
 さとりはこいしに怯えているわ。
 何故、とは問う必要もないわよね。
 この世でただ一人、こいしの心だけは読むことができない。それはあの子にとって、筆舌しがたい程の苦痛なのよ。
 だけどそれが表層意識にあったら、とても仲良く付きあうなんて出来ない。
 押し込めたのか、それとも押し込められたのか。それは分からないけど、恐怖が奥深くにあるから笑顔で接していられるのは間違いないわ。
 両親もそれが原因でこいしを虐待していたとしたら、ですって?
 馬鹿も大概にしときなさい。こいしが目を閉じたのは両親が死んでからなのよ。それじゃ辻褄が合わないわ。
 理由があるなら、何かもっと別のものでしょうね。
 へえ、その顔は心当たりがあるって感じね。
 参考までに聞かせて貰える?
 …………………もういいわ。あなた、私の話を全然聞いてないのね。
 妬ましい以前に腹が立つわ。
 これだから天狗は嫌いなのよ。仲間もいっぱいいるし、幸せそうにしちゃってさ。
 ああ本当に妬ましい。










 case:犬走椛

 あの、文様。そういえば何の本を買ってくればいいんですか?
 へえ、そういう本が好きなんですか。
 違う? じゃあ何のために買うんです?
 いいからとっとと行ってこいと。
 むー、相変わらず我が儘ですね。
 分かりましたよ。行けばいいんでしょ!
 いえ、喜んで行かせて貰いますの間違いでした。











 case:河城にとり

 何飲む? コーヒー? キュウリ? ビール?
 あいよ、烏龍茶ね。文は烏龍茶大好きだね。やっぱりあれなの、名前に烏が入ってるから?
 ははは、そうじゃないかとは思ってたよ。はい、烏龍茶。
 私はこれから全自動キュウリ切り機の開発があるから、アルコールは駄目なのだ。私も烏龍茶にしとくよ。
 いや、全自動キュウリ切り機。疲れてる時は家事も面倒じゃん?
 だからさ、自動でキュウリを切ってくれる機械を作ってるのさ。これさえあれば、もうキュウリを切る必要なんてない。
 まぁ、丸かじり派からは邪道だって文句つけられてるんだけどね。そりゃあ、私だって丸かじりは好きだよ。でもね、薄切りにしたキュウリってのにも美学が……
 ああ、ごめんごめん。ついムキになっちゃった。
 それで、何だっけ。
 うん、そうだよ。確かに覚りが胸につけてるやつ。あれを作ってるのは河童だ。
 古明地姉妹のは私が作ったんだよ。いやあ、なかなかの会心作だと思うんだけど。
 あの目玉と紐の溶接が難しくてね、何個もサンプルを作ったもんだ。懐かしい。
 いや、制御装置。さすがの覚りも持てあますらしくて、ああいう制御装置が無ければ能力を上手く使えないんだってさ。
 駄目駄目、能力のない奴は持てないよ。かなり強力な制御が必要だから、普通の奴が付けたら狂って死ぬよ。体験レポートとか絶対にやらない方がいい。
 当然、覚り以外には作らないよ。それに、ここ最近は古明地姉妹以外には作ってないし。
 スペアなんかあるわけないじゃん。
 ああでも、そういえば不思議なことがあったんだよね。
 いやね、さっきも言ったけどあれ作るのって案外難しいんだよ。
 だからさ、何個もサンプルを作ったんだけど、そのうちの一つが無くなってたんだよね。忽然と。
 色? そういえば、あれ何色だったんだろ。
 変だな、自分が作った物なのに。
 デザイン? うーん、それも思い出せない。
 いやだね、歳をとるってのは。
 そうかもね。制御装置はついていないから、普通の奴がつけても問題ない。
 え、これで良かったの?
 まだまだ全然話し足りてないんだけどなあ。
 また暇だったら寄っていってよ。次会った時には絶対に完成させてるからさ。
 全自動キュウリ切り機。










 case:四季映姫・ヤマザナドゥ

 陳情書? あなたは何を言っているんですか?
 そんなものを受け取った覚えはありません。










 case:古明地こいし

 おかえりなさい。
 え? 鍵がかかってただろって?
 あはは、全然気付かなかった。ごめんね。
 えー、ちょっと答え合わせに来ただけだよ。そんな怖い顔しなくてもいいじゃない。
 そうそう、よく分かったね。
 私が産まれた時から無意識を操る事が出来たって。
 勿論、覚りの能力なんて無かったよ。だからお父さんやお母さんも私を酷く嫌っててさ、ああ、その時はお姉ちゃんも。
 辛い日々だったなあ。
 でもね、ある時思ったの。もしかしたら、この能力で記憶を忘れさせることが出来るんじゃないかって。こう意識を無意識に引っ張る感じでやってみたら、どうなのかなあと思ったら出来たの!
 私嬉しくなって、それで家族の過去を消したの。
 でもお父さんもお母さんも覚りとしては優秀で、私の力が効かなかったから。
 ん? 違う違う。事故だよ。
 だって私は何もしてないもん。無意識にやった? さぁ、もしかしたらそうかもしれないね。
 でも、そんな事はどうでもいいよ。それよりもお姉ちゃん!
 お姉ちゃんには能力が効いたし、それに記憶がなくなったお姉ちゃんは私を本当の妹のように扱ってくれた。
 それまでは家畜でも見るような目つきで私を殴っていたのに、一緒にプリンを食べるぐらい仲良しになれたの!
 やっぱりお姉ちゃんはお姉ちゃんだったってこと。
 最近はこの力も上手く使えるようになってきたから、改竄もある程度はできるし。だからとりあえず、私は目を閉じたから心を読めないってことにしたわ。その為に河童の所からもサンプルを盗んできた。
 お風呂に入る時は周りの連中の無意識に潜っているから見えないし、お医者さんの記憶は毎回改竄してある。隠すってのも案外苦労するものなのね。
 でも、みんなもそういう風に思っているわけだし、あなたもそう思った方が良いんじゃない?
 ………………………。
 あはははははは、天狗って凄いのね!
 そんな事まで気付いてたんだ。そうよ、あの陳情書をあなたの部屋に置いたのは私。
 そうやってあなたに色々と調べさせて、誰の記憶や資料を消せばいいのか探っていたの。
 変なの。分かっているなら何か対抗策でも考えれば良かったのに。
 まさか外を囲んでいる天狗達とか、こっそり出していた八雲紫宛ての手紙とか、そういうのが対抗策だとか言わないよね?
 あの犬みたいな天狗にこっそり手紙を渡してたのは危なかったけど。てっきり本が目的だと思ってたから、まさかそれがフェイクだったなんてね。
 でもいずれにしても無意味。
 だって天狗達は追い払って記憶を消したし、手紙だって奪って燃やしちゃった。
 それにあなたは無意識に足を動かせなくなる。
 そして無意識に声を出せなくなる。
 もう何もすることは出来ない。全て忘れるの。
 だから今のうちに言っておくよ。
 私のために、ありがとう。
 じゃあね、ばいばい。




















 case:射命丸文

 あやややや、こいしさん。いつからそこに?
 私の部屋で何をしてるんですか?





 
 しばらくしてから、文の家に一冊の本が届いた。
 文は首を傾げながら、送り主が自分であることに驚いたという。
 本の題名は『みにくいアヒルの子』。
八重結界
http://makiqx.blog53.fc2.com/
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.8940簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
怖……
でも読んでいくうちに引き込まれる……
3.100奇声を発する程度の能力削除
すげえ…
怖かったです…そして、私もどんどん引き込まれていきました。
4.90名前が無い程度の能力削除
好みではないけど凄い。
ベテランだなぁ。
6.100名前が無い程度の能力削除
サイコですね、
ロジカルだし、
すごくよかったです。
7.90ト~ラス削除
そこらのホラー小説より怖かったよ…

でも古明治姉妹は昔から仲良かったと信じたい。
11.100無言坂削除
やばい。怖い。でも理屈抜きに面白い。
やだ…マイリスしちゃう…
20.100名前が無い程度の能力削除
正体不明の鳥肌状態!!(AAry
21.100名前が無い程度の能力削除
怖い。けどこの解釈は面白いな。
22.100夕凪削除
ラストで鳥肌たった。
こいつは明るい内容?に見せて、なんともいえないホラーだZE。
26.100削除
おしいぜ文。後もう少しだったのに。その本を見てもう一度トライしよう。
29.100名前がにゃい程度の能力削除
なにこれこわい

こういう形式大好きだ
30.100名前が無い程度の能力削除
あぁ…怖いな…
37.90名前が無い程度の能力削除
こういう作品さすがに上手いですね。
ごちそうさまです。
38.100名前が無い程度の能力削除
実に素晴らしい・・・!
ホントいいなぁ・・・
42.100名前が無い程度の能力削除
良いね~無意識って怖いよね!
44.100名前が無い程度の能力削除
やっぱりこいしはいいな
とても面白かったです
52.100名前が無い程度の能力削除
さすがです、だが古明地姉妹は昔から仲がよかったと俺は信じている…
57.100名前が無い程度の能力削除
なんともうまい………
悲しいが、こいしはこういう役が似合っちゃうよなぁ……
だから違和感が全くないねぇ。
だがきっと、古明地姉妹は本当は仲がいいんだ……!!
60.90名前が無い程度の能力削除
本来苦手な系統の作品ですが、それでも魅力的な作品でした。
61.100名前が無い程度の能力削除
後書き読んで鳥肌立ったぜ。文はアヒルの子を見て思い出すのか?
64.100名前が無い程度の能力削除
すげえ。うん、すげえ。
66.100名前が無い程度の能力削除
人間にとっても忘却は日々、無意識のうちに行われているけれど、
もしかしたら本当は、誰かの手によって消されているだけだったりして・・・
67.80名前が無い程度の能力削除
私的にはこいしが説明してるのが余分かなと思いました。
68.100名前が無い程度の能力削除
構成も魅せ方も素晴らしい。
69.100名前が無い程度の能力削除
おお、怖い怖い。
71.100名前が無い程度の能力削除
昔見たシックスセンスという映画をなんとなく思い出しました(構成的に)、それを観たときと同じようなゾワっと感を感じたぜ・・・
77.100名前が無い程度の能力削除
ミステリちっくでとても俺好みで面白かった。こういう、主人公が取材をした相手の証言だけで
構成された小説を依然読んだことがありますが、それと同様に楽しませてもらいました。
ラストのオチなんかすごい鳥肌。

ただ一つ言わせて欲しいのは、
あなたにとって、レミリアは一体どういうキャラなんだww
78.100名前が無い程度の能力削除
ショートショート作家の短編を読んでるような気分に
おお堪能堪能
80.100名前が無い程度の能力削除
すごくゾクゾクするんだけど引き込まれた
無意識こわい
81.100名前が無い程度の能力削除
ノリツッコミを会得したか、レミリア。

こいしの思い通りか
82.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしいです。

キャラがみんなイキイキしてました。
85.100賢者になる程度の能力削除
おお…引き込まれる文章ってこう言うことか。

だが俺も古明地姉妹は仲良いと信じてる
86.100名前が無い程度の能力削除
面白かった。
でも忘却前もプリン二個だったんだから多分SMプレイか何かだったんだと脳内補完してる
88.100名前が無い程度の能力削除
 最後から一つ前のこいしの台詞で俺涙目。こいし、文ッ・・・・・・!
 もう、すごいとしか・・・・・・。
92.80名前が無い程度の能力削除
虐待されていたころのこいしたんについてkwsk
99.80名前が無い程度の能力削除
好みではないが面白かった。
ただ、わざとなのは分かっているがオチが読めていては怖さ半減なのと、
個人的な古明地家のキャラとイメージが違うので、10点ずつ引いてこの点で。

貴方のシリアスは久しぶりでした。
100.90名前が無い程度の能力削除
醜いアヒルはこいしのことかな?
ちゃんと作者の狙いを理解して読めてるか分からん
105.100名前が無い程度の能力削除
文すげえな。
107.100神田たつきち削除
 二度目の映姫様の所で背筋がぴりぴりとしました。
 はてさて、羨もうにも既に白鳥が飛び去った後では、確認出来ないので寂しいですね。
109.100名前が無い程度の能力削除
すっげぇ……
110.100名前が無い程度の能力削除
良いね、凄いね。
111.90名前が無い程度の能力削除
周りは知らない方が幸せなのか。
でも(無意識に)知ってほしいから文の元に現れたんだと信じてる。

貴方の紅魔主従が最近漫才しかしてない件について
115.100名前が無い程度の能力削除
ふわぁ……。
100点を入れたい作品だこれは。
118.100名前が無い程度の能力削除
幻想郷の姉妹達が愛しあう様子を見守る会の会員としては好きな展開ではないのですが……
文章が上手い。
ストーリー展開が上手い。
ラストで鳥肌が立った。

でも、すべてを嘘で塗り方めなければ生きられないと思い込んでるこいしに泣けた。
これじゃノーマルエンドだ…ハッピーエンドは遠い。
125.90名前が無い程度の能力削除
異端はどこまでいっても異端。
んなこたぁねーよって言いたいけど、ねえ。
二回目の映姫様の所で一気に恐怖がやってきた。これはいいホラー。
126.90名前が無い程度の能力削除
「みにくいアヒルの子」は文の保険だったのだろうか?
万が一忘れさせられた場合もこれ見て思い出してリトライだ的な

ていうかさりげなく椛自重w
127.100名前が無い程度の能力削除
ぞわりときた
128.100名前が無い程度の能力削除
こえー
129.100名前が無い程度の能力削除
嫌われ者オブ嫌われ者なこいしちゃん
立ち向かわずに逃げ続ける、でも誰かに知ってほしくて、こんなこと仕出かしちゃう
哀れな子ほどに見てて面白い。可愛い。やっぱこいしちゃんはいいね
134.100名前が無い程度の能力削除
後ろにつけられてる感がもうね、ぞくぞくする。

予防線を二重に張るとは……やるな射命丸。
ジャーナリストの執念を見た。いつかはすっぱ抜けると思うぞ、諦めずコンティニューだ。
135.100名前が無い程度の能力削除
こわ…
142.100名前が無い程度の能力削除
なんという・・・純粋に面白い!と言える作品でした。
143.80名前が無い程度の能力削除
誤字「 これは、ご両親が健在だったら頃に提出された書類のようです。」
145.100名前が無い程度の能力削除
これはおもしろい
146.無評価八重結界削除
誤字を修正しました。ご指摘ありがとうございます。
150.100名前が無い程度の能力削除
ゾクリときました。人づてに明かされるあたりが実にナイス。
153.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい
157.100名前が無い程度の能力削除
>>あれは私が哨戒を終えて温泉へ行こうとしていた時のことでした。山の向こう側から不思議な軌跡を描きながら、オレンジ色の光る物体が……
どこのメタギアかとw
158.無評価名前が無い程度の能力削除
射命丸は友愛されました。
162.100m.k削除
恐っ
164.100ずわいがに削除
あとがきで満点にさせられた
165.100名前が無い程度の能力削除
うん。よかった。とてもよかった。
166.100名前が無い程度の能力削除
とても良かったです
こんな感じなのをもっと読みたいなーと思っちゃったり
169.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしいです。

徐々に真相が浮かび上がってきて、違和感と恐怖が織り成す文章構成は最高です。

これ、こいしちゃんとか、別の人の視点から見てみると、また、違った解釈になるかも。
173.100名前が無い程度の能力削除
おお、とても面白かったです。
真相がわかったときのジワリとした恐怖お見事でした。

なにより『みにくいあひるの子』にセンスを感じました。
いやはや、流石です
176.100名前が無い程度の能力削除
怖いけど、すごく悲しいねえ。
誰も本当のことを知らない、知ることができないってのは。
181.40名前が無い程度の能力削除
最後の一文は後書きに書く必要は有るんでしょうか?
本文内で良い気がします。
後、ダレますね。
188.100名前が無い程度の能力削除
久々にゾクッとくる作品に出会いました。
ストーリーの結末が終盤まで読めず、ドキドキしっぱなしでした。
かなり完成度の高いミステリーだと思います。
194.100名前が無い程度の能力削除
「私嬉しくなって、それで家族の過去を消したの。」
そんなこと、嬉しそうに言っちゃいかん。悲しいじゃないか...
199.100名前が無い程度の能力削除
生まれてきてごめんなさい
本当に参った。降参です。うまいなあ。ため息出るなあ。
200.100名前が無い程度の能力削除
面白い!淡々と展開する謎に読む手が止まりませんでした。
201.100名前が無い程度の能力削除
本は保険か
いやぁまいった
203.100名前が無い程度の能力削除
文にこいしを助けてほしい
204.100名前が無い程度の能力削除
なんだこの傑作。
覚りの能力とこいしの無意識を題材にこんなミステリが書けるとは、脱帽です。
真実は暴かれない方がこいしにとってはいいんだろうが、文頑張れ。
206.100名前が無い程度の能力削除
おお。。。 こわいぜ
207.100名前が無い程度の能力削除
記憶と意識の関係をもう少し説明付けないと、こいしの実践した記憶操作に違和感を感じる気がします。
意識を無意識に引っ張り込んでも、それは結局意識した行動が無意識になるだけであって記憶との関連性が無い、あるいは薄いように思うのです。

ただ。。。それは読者側の解釈次第でどうとでもなりますし、ひとまず置いておいて。
そのうえで物凄く引き込まれました。これはもう、小説としての面白さなんだな、と思いました。
久方振りにゾクゾクしました。
210.100名前が無い程度の能力削除
これはすごい…
あややややややは良く頑張った…こいしちゃんも怖いけど悲しいですね
216.100名前が無い程度の能力削除
あやややや…
こわい、けど、それよりも切ないな…
218.100名前が無い程度の能力削除
こいしぃ…
219.100名前が無い程度の能力削除
これはいいホラー
221.100名前が無い程度の能力削除
体温が2度下がった
223.100リペヤー削除
ゾワッとしました。
こいしが恐ろしいのと同時にとても悲しい。
224.100名前が無い程度の能力削除
発想を最大限に活かすための、計算の行き届いた構成
脱帽です。
226.100名前が無い程度の能力削除
感動するくらい良くできていると思います。
227.100名前が無い程度の能力削除
こういう漠然としたホラーは一番怖いなあ。滅茶苦茶不安な気持ちになる。色んな意味で。
228.100名前が無い程度の能力削除
あっ、これはすごい話だ。
236.100名前が無い程度の能力削除
近づいてくにつれてどんどん…
242.100名前が無い程度の能力削除
閻魔の記憶まで改竄するとは
246.100名前が無い程度の能力削除
面白かった
260.無評価名前が無い程度の能力削除
こういうタイプのを読んだのは初めてだった。うーむ。すごい
261.100名前が無い程度の能力削除
こういうタイプのを読んだのは初めてだった。うーむ。すごい