ぶふっ!
博麗霊夢は茶を吹いた。
不幸中の幸いは、部屋の中ではなく日当たりのいい縁側に座っていたことか。
おかげ様でコタツ布団や畳を汚さなくて済んだのだから。
「な、ななな、今、なんて言ったっ!」
部屋が大惨事にはならなかったが。
霊夢の顔色が大惨事。
思いもよらない台詞に、さっきまで白かった肌が一気に茹蛸のようになってしまったのだから。しかし、その原因を作った張本人は霊夢の横に腰掛けて、何事もなかったかのように顔を覗き込んでいる。
「え? 霊夢さんのお腹の中には、紫様の子供がいるんですよね?」
げほっごほっ!
さっきとまったく同じ声質。
そして同じ言葉を、あどけない笑顔から繰り出す。
大人っぽい妖怪から言われれば、まだ軽くいなすこともできるのだが。何せ横にいるのは八雲藍の式、黒猫の妖獣『橙』である。頭から湯気が出そうなくらい沸騰した思考の中で、橙をじっと観察してみても、くりくりっとした瞳で見返してくるだけ。冗談とか悪気とか。そういうものを感じない。
今日もいい天気ですね。
とでも言うように、いきなり口を開いたと思ったら『お腹に赤ちゃん発言』。
それで大人しく茶を飲んでいろと言う方が無理な話だ。
もちろん、橙が言う結果をもたらすような行為なんて、身に覚えがない。
いきなり敬語で話しかけてきたから変だなとは感じていたが、まさかこれほどの爆弾を抱えているとは博麗霊夢の目をもってしても見抜けなかった。
「……あんたの保護者はどこよ?」
「え? 藍様は紫様を冬眠から起こして、体を綺麗にしているところでしたから」
つまり、一人で来た、ということなのだろう。ただしあの過保護な藍のことだ。
「大方、紫と藍も後でくるんでしょう?」
「はい、しばらく手を離せないから、退屈なら先に行ってなさいって言われました」
つまり、この状況の中、二人でいるしかないということ。
最初の発言のせいで、片方の居心地が妙に悪くなってしまっているのに。
「橙、ちょっと聞くんだけど。あなた、その、えぇっと」
「はい?」
無垢な瞳、元気一杯の笑顔。
こんな状況でどう質問しろというのか。
あなた子供の作り方しってるの?
なんて言えるはずがない。一緒に廊下に腰を下ろしているだけで、霊夢の羞恥心がどんどん上乗せされていく。もしかしてこれは紫が考えた新手の拷問か、などと疑いたくなってくる。
「……こ、ここ、ここここ」
「わかりました! にわとりっ!」
妬ましい。
この純粋な思考が妬ましい。
もう、頭の中でいろいろ想像しながら顔を真っ赤にしているのが馬鹿らしくなるほど。橙は瞳を輝かせて声を張り上げる。
「あー、うん、あのね。声真似とかじゃないのよ」
「そうだったんですか、てっきりそういう遊びかなって」
尻尾で廊下をリズム良く、とんとんっと叩き。胸の前で手をもじもじさせている様子からして、きっと霊夢と何かをして遊びたいに違いない。だからさっきも、霊夢が『こども』という単語を詰まらせただけなのに、モノマネだと勘違いした。
しかもそれが違うと否定されて、寂しそうに耳をぺたんっと傾けるのだから、火を見るより明らかである。ぶらぶらと寂しそうに俯きながら足を振る様子など、罪悪感に苛まれてしまうくらい。
なんだか空気が重くなったせいで余計に話し掛け辛くなってしまった。
「お茶、飲む?」
「猫舌なので……ごめんなさい……」
博麗神社秘奥義『お茶で話題変更』が種族特性であっさりと受け流された。
後に残るのは、霊夢がお茶を啜る物悲しげな音と、余計に気まずくなった空気だけ。
なんとかこの空気から逃げ出すためには、橙の気を紛らわせるしかない。
「あ、そうだ。あやとりっ! あやとりでもして遊びましょうか!」
「興奮すると爪が出るから……やりたくないです……藍様にも怒られたし……」
――そうきたかっ!!
どうしてこうも極所的に相手の心を抉ってしまうのか。
なんという巫女の直感の無駄遣い。
さっきまで笑顔だったのに、なんだか背中に影を背負った状態で肩を落とし、背中を丸めてしまう。しかしあやとり、という室内でできる遊びで何かを思い出したのか。倒れていた橙の耳が、ぴくっと跳ね上がる。
「この前、藍様に教えてもらったのですが。あの二つの玉でぽんぽんってするのがやりたいです」
そう言いながら、両手を体の前で順序良く揺らす。
玉が二つと、この仕草から判断してまず間違いなく『お手玉』に違いない。確かに橙を見ていると、動きのある遊びの方が好みのように思える。
「お手玉のことね、ちょっと待ってなさい。確か、居間のタンスの上に」
あまり使わない雑貨はほとんどそこに置いてあるので、きっとあるはず。
橙の期待の眼差しを受けながら、足を振り。勢いをつけて立ち上がったところでっ
「あ゛っ!?」
霊夢は濁った呻き声をあげていた。
急に体を動かしたから、節々が痛くなったとかそんなことではなく。あることを思い出したから。
それは、十日ほど前のこと。
人里で比較的親しくしている万屋の長男が結婚したと聞き、お祝いに赤飯でも炊こうと思って蒸し器や布巾を準備していたときのこと、小豆が無い事に気が付いた。
なので、仕方なく祝儀だけ持っていこうとしたところで。
視界に、お手玉が映った。
そうだ、お手玉の中身は……小豆。
なら使えるんじゃない?
そんな軽い気持ちでお手玉を壊し、ちょっぴり罰当たりな赤飯を作ったのだった。あのときは美味しいと喜んでもらえたから、お腹に入ってしまえば同じだし良いよね、と。結果よければ全て善しとした霊夢であったが。
こんな落とし穴に派生するとは、誰が予想できよう。
まさか、これはお手玉の呪いか。
「あの、霊夢さん?」
「えっと、ごめんね。人里の子供に貸してたの忘れてた。だから今持ってないのよ」
まさか食べた、なんて説明をできるはずがない。
ひょんなことから紫の耳に入ろうものなら。
『あらあら、信仰のない神社は貧乏暇ありですわね』
なんて嫌味を言われるに違いないから。
それをわかっているからこそ、霊夢は無難な嘘で誤魔化すしかなかった。けれど――
「貸しちゃったんなら、仕方ないですよね……」
一度期待をさせてから叩き落すという、今の場面では最悪な選択肢を取ってしまったことに違いはない。空気はどんどん重く、そして会話のない時間が長くなる。
こうなれば早く保護者の登場を願うしかない。
それまでなんとか間をもたせれば、と、なんとか気合を入れなおして。縁側から空中へと飛び上がる。そして不思議そうに見上げる橙を、お払い棒で指した。
「どうする? 暇なら弾幕勝負でもやってみる。スペルカードは3枚。相手に一回でも当てたほうが勝ちってことで」
「あ、弾幕ですか! 是非やりましょう!」
霊夢は心の中で喜びに打ち震える。
やっと、成功した。
泥沼状態から抜け出す手ごたえを感じ、心の中で腕を掲げた。
だが――
空中に飛び上がろうとした橙が、急にまた表情を暗くし、力なく尻尾を垂らした。
「でも、紫様のお子様を身篭っている霊夢さんに、乱暴なことをするなんて――」
「……うわぁ」
振り出しに戻る。
しかも、闇属性付きで。
ただ先ほどの無邪気な、キラキラした瞳を向けられている状況とは違い。まだ今の状況の方が尋ねやすいのは確かである。
霊夢は、ふぅっと気を吐いてから橙のところまで高度を下げ、片目を閉じながら頭を撫でてやった。
「あのねぇ、最初から言いたかったんだけど。私、子供なんていないし」
「えぇっ!? そ、それは嘘ですよ! 紫様だけじゃなく、藍様だって言ってましたし!」
後者の名前が出た瞬間、霊夢の眉が小さく跳ね上がった。
こうも真剣に言い返すところを見れば橙は何かを聞いて、誤解している可能性が高い。その場合、紫一人が言っただけならからかったとも受け取れる。
しかし藍が加わってくるとなると話は別だ。
橙を異常なほど大事にする藍は、まず間違ったことは教えない。昔の名残で少々ずれたことを言う時もあるが、それはほんの些細なもの。言葉遣いや作法だって、大事にしているからこそ甘やかすだけでなく、しっかり教育しているのだから。
「藍が言った、か。その内容は覚えてる?」
「ええ、藍様のお言葉はしっかり胸に刻み込まれていますから! ばっちりですっ!」
藍の話題でこれだけ元気を取り戻すのなら、もっと早く振るべきだったか。
霊夢は少しだけ笑顔を取り戻した橙の頭から手を離すと、腰に手を当てて橙の言葉の続きを待つ。そんな霊夢に、橙は、えっへん、と胸を張りつつ。
「えぇっと、ですね。口づけすると子供ができるんですよっ!」
綺麗に言い切った。
聞き間違いなどありえないくらいに。
「……あの九尾め」
明るくなった橙とは対照的に、霊夢は手を額に当ててかぶりを振る。
藍がそれを告げた場面が、容易に想像できてしまったから。
不意に『子供はどうやってできるんですか?』と橙に尋ねられて、霊夢と同じようにしどろもどろになり、最終的に御伽噺のような結論で逃げたのだろう。キャベツ畑から生まれてくるとか。コウノトリが運んでくると説明しなかっただけ努力はしたようだ。
それに困惑したのであれば人間味があって、好感が持てる。
というわけで、仕方なく霊夢は八雲家の性教育に介入することにした。
「あのね、口付けだけじゃ子供はできないのよ」
「えっ!? で、でも……」
しかし、藍を信じる橙に言い聞かせるには時間がかかるだろう。大好きな主の言葉はどうしても疑うことはできないはず。さて、どうやって言葉を続けようか。
霊夢が顎に手を当てて悩み、やはり動物や植物に例えるべきかと結論に至り始めたところで。
くいっくぃっと橙に裾を引っ張られる。
「でも、やっぱり藍様は言ってました」
「はいはい、わかったから。そのとき藍は慌ててたりしなかった?」
「いえ、普段と変わらない様子でしたよ」
さすが狐の妖怪、相手を化かすことなら右に出るものはいないということか。内心の動揺を隠し、平然と対応して見せるとは。
「えっと、ですね。私が、口と口をくっつけるのは挨拶みたいなものですか? って尋ねたら、いつものようにお優しい口調で。
『いいかい、橙。相手に口付けを許すということは、動物的には挨拶程度の意味しかない。けれどもっと深く。唇を噛み合わせるような、情熱的な口付けを求めた場合は少しだけ意味合いが違うんだよ。理性と本能を併せ持つ私たちのような妖獣、そして人間なら特にね。その濃厚な粘膜の交換ができるということは、その先の行為に及べるという信号でもある。狂わせ、迷わせる妖獣として生まれたなら、その匂いを明確に嗅ぎ取り、異性ならず同性の姿をした者すら手玉に取ることを覚えたほうが良いね。もうそこまで出来れば私たちが主役である宵闇の刻に、一晩の相手を見つけて弄ぼうが、真剣に子孫を残そうが思うがままというところだよ』と、おっしゃられて。
ああ、口付けすると子供を残すことになるんだなって、わかったんですっ!」
「……綺麗に大事な部分をくりぬいたわね」
どうやら、藍の教育は少々対象年齢が高かったようだ。まったく普段はまともに見えるのに、こういう方面の知識が豊富すぎる。しかもその話題が出たきっかけが、接吻だとは誰が思うだろう。
「えっと、あの。どうかしました?」
「ええ、前提と結論だけをくっつけて、過程をすっぽかしたら大変なことになるんだなと実感してるだけよ。とりあえず、私に言ったことを藍にも言ってみなさい。今度こそ驚くから」
「……? はい、とりあえずやってみます」
とりあえず原因がわかったので一安心。
もう一杯だけお茶を飲み、一息ついてから暇つぶしの弾幕遊びでもしようかともう一度縁側に腰掛けたところで。一枚のスペルカードが袖から零れ落ちた。
「あ、落ちましたよ」
「んっありがと」
霊夢が屈むよりも早く、着地した橙がそれを拾い。自分の服でごしごしと汚れを落としてから霊夢に手渡してくる。そんな愛くるしい仕草を見たせいか、霊夢の頬は自然に緩んでしまっていた。頬を少しだけ朱色に染めながら、片手でお茶を口へ運び。何気なくそのスペルカードを目の前に持ってきたとき、カードに書かれた『結界』という単語で、あることに気が付いた。
赤ちゃん発言のおかげで、霞んでしまった事実を。
「ねぇ、橙? 口付けと赤ちゃんの件はわかったから。それがどこで紫の子供に繋がるのよ」
「え、だって。紫様、冬眠前におっしゃってましたし。藍様に向かって」
「まさか、私との間に子供がいるなんて、ことを?」
ずずっと、心を落ち着かせるためにお茶を含み。
橙の反応を待っていると。
素直に、コクっと頭を上下させた。
「はい、おっしゃってましたよ。『ふふ、その理屈だと私と霊夢の間には、一年のうちに250人ほど生まれそうね。当然私が父親役で』って」
ぶふっっっ!!
「に、にひゃくごじゅうっ!?」
1年の周期とか。
人間の寿命とか。
自然界の摂理とか。
いろんなことを置いてけぼりにして、示された数字に。霊夢は再びお茶を噴出すこととなってしまった。
「おウチにはその子供たちがいないので、神社かお腹の中にいるのかなと、250人」
「だからいないって。むしろお腹に入ってたら異変どころじゃないでしょう?」
「あ、そうか。てへへっ……」
「おどけても駄目よ、まったくもう」
またお茶を半分ほど駄目にしてしまった霊夢は、肩を落としながら深いため息をつく。紫に振り回されるのならまだしも、まさか橙にここまで引っ掻き回されるとは思ってみもなかったから。しかも最後に250人なんて悪い冗談にも程がある。
それでは、まるで霊夢が。
霊夢が?
紫と?
――あれ?
「……ねえ、橙? 紫って何ヶ月くらい冬眠する?」
「そうですね、たぶん3ヶ月か4ヶ月ほど」
「なるほどねぇ、3ヶ月か4ヶ月ねぇ、へぇぇぇ……」
それから霊夢はそれ以上何も橙から聞こうとせず。
遅れてやってきた紫と藍、そして橙を居間に招き入れ、久しぶりの会話を楽しんだのだった。
◇ ◇ ◇
「さあ、今宵はどんな可愛らしい寝顔をしているのかしら……」
草木も眠る丑三つ時。
神社のとある一室に、すっと。
何の前触れもなく隙間が開いた。
音もなく、ほんの一瞬のうちに。
それはまるで意志をもっているかのように、部屋の中を移動し。一人の少女のちょうど真上で動きを止める。
「すぅ……すぅ……」
規則正しい呼吸を繰り返し、布団の中で幸せそうに眠る少女はまだ気が付いていない。
手を伸ばせば届きそうな位置に、得体の知れない空間が姿を見せていることに。
「あらあら、まぁまぁ」
昼間、久しぶりの客人をもてなして疲れたせいか。
奇妙なスキマの中で大人びた女性の声がしても、少女は身動き一つしなかった。どうやら熟睡しているようである。
それでも慎重に、ゆっくりと。
少女を起こさないよう、細心の注意を払いながら隙間が開かれていき。
頬をわずかに紅潮させた紫が、上半身だけを隙間から躍らせる。
その際に長い髪がぱさり、と眠る少女――『霊夢』の掛け布団と擦れてしまった。
「うぅ……」
その音で気づかれてしまったかと肝を冷やすが、どうやら何かを食べている夢を見ているようで、口をもごもごさせているだけだった。
しかし少しだけ頭や肩を動かしたせいか。
先ほどまで掛け布団で隠れていた首筋があらわになり。
肌襦袢から覗く、白い肌が。
紫を誘っているようにも見えた。
故に紫は躊躇することなく。
柔らかく、はりのある唇へと顔を近づけていく。
ゆっくりと。
唇の距離が縮まっていくのすら楽しんでいるかのように。
そして、ついに二つの柔らかな感触が重な――
「二重結界――」
ぴたり、と。
隙間から出した上半身を前につんのめらせるという不自然な体勢で。
紫の動きが止まる。
自分が求めていた唇が目の前にあるのに、いくら力を入れても動かない。無理やり動かそうとすると、紫の腹部に妙な違和感が生まれた。
「一応、軽めに抑えて顔だけは動かせるようにしたけど。無理すると痛いわよ?」
「……あら? 霊夢、奇遇ね」
「奇遇の意味を100回辞書で調べてきなさい」
そんな紫をジト目で見つめながら、霊夢はごそごそと布団から這い出す。肌が透けてしまいそうなほど薄い寝間着姿だが、まったくそれを気にすることなく。枕元に置いてあったお払い棒を手に取ると。
ぺしっ
「あいたっ」
「夜這いによる、少女の唇窃盗犯を確保」
「あら、冤罪ですわ。散歩していたらついつい迷い込んでしまっただけですもの」
「迷い込んだヤツが、どうしてあんなに慎重に私に近づいてきたのかしら?」
「記憶にございません」
現場を抑えられたのに、自白しない。そんな犯人の目をじっと見ながら、霊夢は顔を同じ高さにするために畳の上で膝を突き。
細めた視線の、無言の圧力で責め続けた。
すると――
強がりで。
傲慢で。
我侭な。
そんな紫が、参ったというように視線を反らして。
「――っ!?」
それを待っていたかのように。
綺麗で。
魅力的なその唇を。
無言のまま奪う。
わずかな、ただ重ねるような口付け。
それでも紫の瞳を見開かせるのに十分な衝撃だった。
「こうやって、私の唇を夜な夜な奪っていったんでしょう? 助平な大妖怪さん?」
「……証拠は、あるのかしら?」
「橙が言っていたのよ、紫が私に250人子供を作ったって。250と言う数字は、冬眠していない日数と大体同じだから。ほとんど毎日夜這いに来て、口付けだけして帰っていたんじゃないかと思ったのよ。初日から当たりが来るとは思わなかったけど」
「あら、不用意な発言をするべきではなかったわね。あの子は嘘を吐かないもの」
見つめ合う視線の中、くすくすという小さな笑い声が重なる。
長い冬眠という時間を経ても、二人の想いは変わらず。
春の息吹が大地の雪を消していくように。
互いの呼吸が。
互いの緊張を解していく。
そんな中、急に霊夢が恥ずかしそうに指で頬を掻く。
「一応、初めてだったんだけどなぁ」
「なんのことかしら?」
「私が、自分から口付けしたのって。普通、もう少し感動してもいいんじゃない?」
「あら、そう思う? それなら私の胸に手を触れさせて御覧なさい」
言われるがままに霊夢が、豊満な胸の谷間へと手を潜り込ませると。
まるで警鐘を打つような速度で、彼女の胸が鳴り響いていた。
「へぇ、妖怪にもあるのね、心臓って」
「……そちらこそ、こういう場ではもう少し気の利いた言葉を選ぶべきだと思いますわ」
「そうね……無駄に手が熱くなってきた」
「選んでその発言だとするなら、絶望的ね。雰囲気の欠片も楽しめな――」
また不機嫌そうに霊夢から目を反らそうとしたら。
また不意打ちで霊夢が紫の唇を塞いだ。
戸惑いを込めた視線を霊夢に向け、今度は啄ばみ返そうと唇を動かすが。
その頃にはもう。
愛しい感触が消えてしまう。
「……卑怯者」
「私の唇をこっそり奪っていった罰よ」
恨みがましい視線を向けても。
悪戯好きの小悪魔のような笑みを浮かべた霊夢がいるだけ。そんな彼女が再び紫へとにじり寄ったかと思うと。
「あ、こら、ちょっと待ちなさっ――」
動きを封じられたままの紫の下半身を無理やり隙間から引きずり出し、さっきまで霊夢が寝ていた布団の上に仰向けに転がした。
大の字に転がされても、まったく抵抗のできない四肢。
そんな紫の豊満な体の上を、四つん這いの霊夢が覆い被さる。
「霊夢? あ、あの、できれば、その、お腹のお札を取って貰えないかしら? 冬眠から目覚めたばかりであまり無理できないというか、ね?」
「……紫」
相手に主導権を握られる。
そんな経験のあまりない紫は、なんとか今の状況を打破しようと甘い声を上げて霊夢へと懇願するが。その顔を見下ろす霊夢の瞳孔が、なんだか少しずつ開いているようで――
「ごめん、紫」
「え?」
「私―― こういうの好きかも」
「ちょっとっ! 霊夢っ! 霊――」
◇ ◇ ◇
その日の朝。
橙は、廊下を軽いステップでトントンっと走り。
紫の部屋の前で急停止。
久しぶりに一緒にご飯を食べられるのが嬉しくて、その入り口を一気に開いた。
すーっ
「ゆ~か~り~さ~ま~♪ 朝ご飯ができましたよっ! 一緒に食べま――」
ぱたんっ!
「おや? どうしたんだい、橙? そんなところで青い顔をして」
「え、えと、藍様? 部屋を開けたら、ゆ、紫様が……」
「紫様がどうかしたのかい?」
「霊夢さんの名前を呼びながら、くねくねしてました……」
「ああ、なるほどね」
ふふっと、小さな笑い声を漏らし。
藍はその場で立ち竦んでいた橙を抱え、肩車する。
「今度は紫様に250人の子供ができたそうだよ、橙。たった一日でね」
「……はぃ?」
首を傾げる橙の重さを感じながら、藍は鼻歌を鳴らしたのだった。
どこかで春を告げる妖精の声を聞きながら。
さて、紫様は霊夢に何をされてしまったのでしょうか?w
ふきましたww
にわとりに「どういうこと!?」と突っ込みたくなった俺は一回死んできます
キスシーンが上手いし美味しすぎるだろ……霊ゆかって素晴らしいな
pysさん素晴らしいお話をありがとう
1000人の子供期待しています
500納得です。
まぁなんだ。俺が言うことはただ一つ
ゆかれいむちゅっちゅ
ごちそうさまです
ゆかれいむちゅっちゅ
このふたりはもう結婚しちゃえばいいと思うよ
油断してたところにこの濃さはヤバい!
橙かわいいよ!!
橙とあやとりやお手玉したくなりましたよ
ストレートですなww