※ この作品は作品集102、「第一回幻想郷言葉弾幕トーナメント 前編」の続きとなっております。未読の方はこちらからどうぞ。
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そして、いよいよ本番の日。レミリア達は意気込んで博麗神社へと乗りこんだ。
そこは、既に参加者達で溢れかえっていた。永遠亭や地霊殿といった紅魔館と匹敵する影響力を持った勢力から、信仰勢力の命蓮寺の面々に妖精達まで集っている。
「へえ、凄いわね。幻想郷の勢力がほとんど集まっているんじゃない?」
「きっと強敵ばかりですよ、気を引き締めてくださいね。」
「分かっているわ。」
表情を引き締めるレミリア。まずは各チームに用意された控え室での待機となる。それなりの広さがあるので、10人ぐらいまでなら普通に入れるであろう。狭い博麗神社に何故これだけの広さの部屋を用意できたのか、それは主催者である八雲紫のスキマによるものである。予選トーナメントは同時進行で行うので、スキマを通じて別の場所にあるリングへと招待されることになっている。この控え室にはモニターが用意されていてこの場所で試合を観戦することが出来る。しかし、仲間達がリングへ応援に行くことは出来ない。行くことが出来るのは、実際に試合をする者のみである。
「あっ、見てください!」
小悪魔がモニターを指差す。そこには、組み合わせが発表されていた。
予選
・ブロック内で総あたり戦。上位2者が決勝トーナメントへ進出する。
Aブロック
チルノ(無所属)
レミリア・スカーレット(紅魔館)
古明地さとり(地霊殿)
ナズーリン(命蓮寺)
Bブロック
八意永琳(永遠亭)
東風谷早苗(守矢神社)
風見幽香(無所属)
霧雨魔理沙(無所属)
決勝トーナメント
準決勝第1戦 Aブロック1位 VS Bブロック2位
準決勝第2戦 Aブロック2位 VS Bブロック1位
決勝戦 第1戦勝者 VS 第2戦勝者
「……合計8人か。結構多いわね。」
「私達がいるのはAブロック。相手はさとり、ナズーリン、それに……チルノォ!?」
不自然。あまりに不自然な名前が同じブロック内に居た。次の瞬間、控え室は笑い声に包まれる。
「あははは、チルノにこの大会は無理でしょー!」
「ふっ、こんなバカは敵ではないな!」
「お嬢様、チルノちゃん泣かせたらダメですからね!」
つかの間ではあるが緊張がほぐれた。しかし、笑いながらもチルノの心配をしていた美鈴が突如表情を鋭くする。
「美鈴、どうしたの?」
フランドールが尋ねるが、美鈴はただ目配せをして、人差し指を口に当てて静まるように指示した。そして、部屋の隅を指差す。そこには、白い霧が広がっていた。
「……誰ですか?姿を現してください。」
美鈴がそう告げると、白い霧は徐々に薄くなっていった。そこに現れたのは……1人の妖精であった。緑の髪にフランドールと同じようなサイドテール。そう、彼女は……
「たしか……チルノの傍にいつもいる……」
「大妖精です、お邪魔しています。」
「大ちゃん、どうしたの?チルノちゃんが本当に出るの?大丈夫?」
大妖精と名無し仲間として親交のある小悪魔が尋ねる。すると大妖精は、ふふ、ふふふふと不気味に笑い出した。
「ふふふ……みなさん、予想通りチルノちゃんを侮っているようなので、忠告しに来たんですよ……」
「なん……だと?」
大妖精の言葉にバトルマンガっぽく返事をするレミリア。更に大妖精は続ける。
「チルノちゃんは特訓をしました……そう、言葉でも「さいきょー」になるために……
せいぜい油断しているといいですよ……?優勝はチルノちゃんのものですからね。」
「ほう……こんな大会のために特訓か?ご苦労なことだ。」
いやアンタもしてたやん、というツッコミを他の5人は必死で抑えた。
カリスマっぽく余裕ぶりたいお年ごろなのである。
「それだけチルノちゃんは本気なんです……。せいぜい、しゃがみガードの練習をしててくださいね?」
「面白い……受けてたとうじゃないか。」
「では、本選で……」
そう言い残すと再び大妖精は霧に包まれた。そのまま消える……ということまではまだ出来ないようで霧に包まれたまま普通にドアから出ていった。
挑発されたものの、カリスマ風なやり取りを満喫できたのでレミリアは割と満足げだった。
「しかし、大妖精の言うことが本当ならば、油断は出来ませんね。」
「ええ。今回は、パチュリーの教えてくれた戦法で行こうと思うわ。」
「チルノ相手にはそれがいいでしょう。」
――カンカンカン!!
ゴングが鳴った。試合開始の合図である。会場へと繋がるスキマが出現し、モニターにはこれから行われる試合会場の様子が映し出された。
「じゃあ、行ってくるわ。」
「お嬢様、ご武運を……!」
レミリアは、スキマの中へと入っていった。
パチュリーから受けたレッスンを思い出しながら。
(今の私はボキャブラリーに満ち溢れている!大丈夫、大丈夫……)
内心は緊張しているが、第一印象は大事だ、出来るだけカリスマ的余裕に満ち溢れているように歩く。そして、スキマの出口へと近づいた。1歩外へと踏み出すと……
『おお~っと、赤コーナーから、レミリア・スカーレットの登場です!!』
アナウンスと共に、大きな歓声が湧いた。思わず驚く。
(え?え?何この歓声!?)
観客席をよく見ると、ほとんどが人間である。多くの人間がこのバトルを観戦しようとこの場所までやってきたのだ。お賽銭も増えて、霊夢はほくほくである。
何故こんなに人間が集まったのかには理由がある。普段彼らは力の強い妖怪達に憧れているが、本陣へと乗りこむわけにもいかず、また弾幕ごっこを観戦することも流れ弾に当たる危険を考えると普通の人間には難しい。そこに舞い込んできたのが今回の企画。言葉弾幕であればただの言葉のやり取りであるから被害を受ける可能性は少ない上に、すぐ近くで憧れのアイドル、またはヒーローとも言うべき存在を見ることが出来るのだ。その結果、これだけ多くの人間達が集まったのである。
(よ、余計に緊張しちゃうじゃないの!)
ガチガチになりかけているレミリア。一方反対側からはチルノが現れた。その様子を見ているといつも通りで、緊張などはしている様子はない。こういうことを気にしない奴はうらやましいなとレミリアは思った。
『みなさん、お静かに!』
再びどこからかアナウンスがかかった。周りを見渡すとその発生源を見つけることが出来た。リングのすぐ傍、それでいて観客席の前という場所に、見慣れた顔がいた。そこのネームプレートには『実況 射命丸文』と書かれている。どうやらこの天狗がいつものように大会の進行役のようである。
『では両者、準備はよろしいですか?』
文が二人に問い掛ける。チルノとレミリアは自信満々に頷いた。
『それでは……Aブロック第一戦 レミリア・スカーレットVSチルノ、始めっ!』
――1回戦 レミリア・スカーレット VS チルノ
START!!
まずはレミリアがマイクを取った。とりあえず最初は様子見である。軽くジャブを入れる。
『おはよう氷の妖精さん、あなた来るところ間違っているんじゃないかしら?あなたにこの高度な遊びは不可能だわ。大妖精が何か言っていたけど、泣く前に帰った方がいいわよ?』
――バシーン!!
マイクを叩きつけるレミリア。しかしチルノは不敵な表情を崩すことはなかった。いつもならここでムキーっとなるような妖精であったはずなのに。
そしてチルノは、マイクを手にとった。レミリアは身構える。いったいどんな口撃がやってくるのか……
『レミリアのバーカ!うんこ!ちんこ!やーいやーい!!』
――バシーン!!
――ステーン!!
上はチルノがマイクを叩きつけた音、下はレミリアが盛大にズッこけた音である。
結局いつものチルノであった。このボキャブラリーの無さ、小学生のような口撃、美しさの欠片もない。うんことかちんことか女の子が言ってはいけません!
体勢を立て直すレミリア。しかしそのおかげで緊張もほぐれたようだ。思いつく限りのボキャブラリーを使って、チルノを口撃する。
『まったくほんと、あなたはインサイダー的な粉飾決算ね。あなたの顔を見てるとほんとうにフロイトの精神分析を思い出すわ。あなたみたいなのを何て言うか知ってる?塵も積もれば大和撫子って言うのよ!!』
――バシーン!!
決まった、とレミリアは思った。あまりに高度なボキャブラリーによる口撃、流石に気の毒すぎたかなとチルノを心配する。しかし、周りの観客は
?????
全員が全員、クエスチョンマークを浮かべていた。まったく意味がわからない、といった表情で。実際、レミリアが辞書を適当に眺めて覚えていた単語を並べただけなので意味なんてものは存在しないのだ。当然パチュリーが本当に言いたかったものとはかけ離れているので、控え室ではパチュリーの盛大なため息が響いていたのだが、レミリアが知る由はない。
『う、うぐぅぅ~……』
しかしチルノには大きな効果があったようだ。意味を理解しようと頭をフル回転させた結果、脳がショートしてしまったらしい。目をまわしてそのまま倒れてしまった。
『しょ、勝負あり!レミリア・スカーレットの勝利です!!』
会場に響き渡るアナウンス。勝ち誇った顔をしてマイクを掲げるレミリア。一方の客は、今だ戸惑いを隠せずにどよめいていた……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「一体なんなのよ、アレは。」
初陣で勝利を収め意気揚々と控え室へと帰ってきたレミリアを待ち構えていたのは、賞賛の言葉ではなく「しら~っ」とした冷たい視線であった。そして、パチュリーがその絶対零度の視線を向けたままレミリアに問い掛けた。
「え?私パチェの戦法で見事勝利を収めたわけだけど、何か問題でも?」
「大有りよ!私の言ったことが何一つ出来てないじゃないの。相手がチルノだったから良かったものの、それ以外だったら確実に負けてたわよ!」
「ちゃんと難しい言葉を並び立ててやったんだけどなあ。」
「意味をちゃんと分かってないとしょうがないわよ。辞書、読んでなかったの?」
「もちろん!しっかりと流し読みしてたぞ!」
自身満々に胸を張るレミリアに対し、パチュリーはがっくりと肩を落とす。やはり手抜きしないで自分でしっかりと教えるべきだったのだろうかと後悔するが、今更であった。
「まあまあ、勝利したからよいではありませんか。それより次ですよ、次!」
美鈴がパチュリーをなだめながら場を仕切り直す。ここらへんの調整の上手さは流石『気を使う程度の能力』といったところである。美鈴の言葉を受け、咲夜が大会のタイムスケジュール帳を見ながら続ける。
「今やっているのはBブロックの第一試合、風見幽香VS霧雨魔理沙ですね。これが終わった後再びお嬢様の出番です。今度の相手は……」
「……ナズーリン。命蓮寺のネズミか。」
ナズーリン、新興勢力である命蓮寺に住むネズミの妖怪であり、寅丸星の部下でもある。単純な力で言えば命蓮寺の中では一番弱いであろう。しかしそれ以外の部分、逃げ足の速さや処世術、要領の良さなどは命蓮寺だけでなく幻想郷においてもトップクラス。当然、口もよく回る。命蓮寺勢が彼女を代表に選んだことも納得の人選であると言えよう。
「ウワサでしか聞いたことないけど、だいぶズル賢いネズミらしいじゃないの。」
「はい。はっきり言って、この大会においてはかなりの強敵です。先ほどのチルノ戦の時のように簡単にことが運ぶことはないでしょう。」
「なるほど……みんな、コイツにはどんな攻め方をすべきだと思う?意見を聞かせてくれ。」
レミリアが周りを見渡す。悩む面々、その中でパチュリーがゆっくりと口を開いた。
「……このナズーリンという妖怪が、どのような妖怪であるのか。あなたにあって、ナズーリンに無いものは何か。それを考えれば、自ずとあなたがとるべき戦法が見えてくるはずよ。」
「ナズーリンが、どのような妖怪か……?」
レミリアはナズーリンに関する情報を頭の中で整理していく。ズル賢い、力は弱い、逃げ足が速い、そして口がよく回る……
そこまで考えて、レミリア自身も見つけ出した。ナズーリンにどのように攻めるべきかの答えを。
――カンカンカン!
コングが鳴り響いた。風見幽香が勝ったようだ。そして控え室のドアに再びリングへと繋がるスキマが広がった。
「ヒントをありがとうパチェ。見つかったわ、あのネズミに勝つ方法が。」
「本当に大丈夫なのお姉様?チルノの時みたいになるのはやめてよ?」
「大丈夫、今回は自信あるわ、まあ見ていて頂戴。」
レミリアはそう言い残して、スキマの中へと入っていった。
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リングの上にて、レミリアとナズーリンが対峙していた。
実際に対面するのはこれが初めてである。背格好は二人とも同じくらい、若干レミリアの方が背が高い。お互いに口を開かず、相手の表情を伺っている。
『さあ、Aブロック第2戦!これが初顔合わせとなる二人がどういう戦いを見せるのか、見物です!!それでは、始めっ!!』
――2回戦 レミリア・スカーレット VS ナズーリン
START!!
まずはレミリアがマイクを手にとった。相手をまっすぐに見据えながら、口撃を開始する。
『あなたがナズーリンね?ウワサは聞いているわ。なんでも弱いくせに口だけは達者な生意気なネズミさんみたいで。家に帰ってチーズでもかじっていたほうがいいんじゃないかしら?』
――バシーン!!
『ご忠告どうも、レミリア・スカーレット。しかし君の外見を見ているととてもカリスマ溢れる館の主には見えないな。私も君のウワサは聞いていてね、メイド長がいないとなにも出来ないワガママ幼女だと。一度見せておくれよ、その『れみ☆りあ☆うー☆』とやらをさ!』
――バシーン!!
お互いの口撃が終わり、レミリアは余裕のある表情を保ちつつも内心は打ち負けないように必死であった。ウワサ通りとてもよく口が回る、まともに相手をしていたら正直勝てる見込みは薄いであろう。
そこでレミリアは作戦を開始する。いったん俯き、表情を作る。目を大きく見開き血走らせ、力の限りのオーラを出してナズーリンを睨みつける。フランドールから教わった「威圧戦法」である。そしてそのまま、マイクを拾い口撃をする。
『ふ、ふふ、言ってくれるじゃないのネズミさん。安心しなさい、この大会では弾幕はご法度だから。だけども、帰り道は気をつけた方がいいわよ?』
――バシーン!!
表情はそのままナズーリンを睨み続けて、先ほどよりも強くマイクを叩きつける。フランドールとの睨めっこ特訓のおかげで、この威圧をレミリアは完全にモノにしていた。
ナズーリンにこの戦法を採用したのには理由がある。ナズーリンという妖怪の特徴、よく回る口、要領のよさ、逃げ足の早さ。これらを総合して考えると、ナズーリンの隠された本性が明らかになる。
「う、うあああ……」
臆病なのだ。自分の力の弱さを知っていて臆病だからこそ、ひたすらに危機を回避しようとする。現に、既にレミリアの威圧に負けてマイクを拾うことすらせずにガタガタと震えている。
「うわあああん!!」
そしてそのままリングから飛び出しスキマの中へと逃げてしまった。
それと同時にコングが鳴り響く。
『決まりましたっ!レミリア・スカーレット選手、KO勝ちです!』
多いに湧く観客たち。今度は先ほどのような戸惑ったどよめきではなく、正真正銘の歓声である。レミリアはそれに手を振って答えながら、気分良くスキマの中へと入っていった。
ちなみに反対側のスキマからは、聖の胸に顔をうずめて泣きじゃくるナズーリンの声が漏れていたとかいないとか……
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スキマから帰ってきたレミリアを、今度は5人の拍手が出迎えた。
「お嬢様!かっこ良かったです!」
小悪魔が興奮した面持ちで手を握ってきた。レミリアは余裕のある表情でそれに答える。
他の面々も先ほどとは打って変わって皆レミリアを褒め称える。
「お姉様!かんっぺきな威圧だったよ!」
「ふふ、ありがとうフラン。あなたとの睨めっこで20回ぐらい泣かされた甲斐があったわ。」
「ベストな選択と言えるわね。彼女は1ボスであなたはラスボス、持っている力が違う。そのギャップを生かすには妹様の戦略が一番効果的だった。」
「うふふ、そんなに誉めても本は買ってあげないわよ!」
祝勝ムード、しかし美鈴だけは1人相手のことを心配していた。
ナズーリンにこのまま紅魔館に苦手意識を持ってもらっては困る、行動範囲の広い彼女はある意味命蓮寺の顔とも言えるのだ。今度レミリアを連れて命蓮寺を訪れ誤解を解く必要があると考えていた。できるだけ新しい勢力とも友好関係を作っておきたい。
そんな美鈴の心配をよそに、咲夜がスケジュール帳を手にしながら次の対戦相手を告げる。
「ここから3試合は間が開きます。そしてその後はAブロックでの最後の戦い……古明地さとりです。」
古明地さとり。その名が出た瞬間、控え室が緊迫した空気につつまれた。
間違いなくこのAブロック最大の敵であり、優勝筆頭候補でもある。
「恐らく、心を読むことで相手のトラウマをえぐり、的確に弱点を攻めてくるでしょうね。
更に相手が自分に何を言ってくるのかも事前に予測することが出来る。攻めも防御も完璧。……手ごわい相手ね。」
「で、でももう2勝してるんですから、2位以上は決まったようなものじゃないですか!
ここで負けても、決勝トーナメントで勝てば……」
パチュリーの言葉に弱気な態度を見せる小悪魔、それをレミリアは一蹴する。
「何弱気なこと言ってるの!私は2位通過で決勝トーナメントなんて認めないわ!全部勝って1位通過でトーナメントに行くわよ!」
力強く宣言するレミリア。そう、2位通過など彼女のプライドが許さないのだ。
「だとすれば、対策は必須だよね。心を読む相手に、どう戦えばいいんだろう……?」
「地霊殿の主だから、ナズーリンに使った戦法は通用しないでしょうし。」
「きっと打たれ強さも相当なものよ。覚り妖怪という種族を考えればね。」
ひたすらに悩む面々。レミリアは今まで受けてきたレッスンを思い返してきた。
誰の方法が一番有効であるか……攻めを重視するか、守りを重視するか。
そしてレミリアは、一つの結論を導き出した。皆と一緒に悩んでいる美鈴の傍に歩み寄り、声をかける。
「う~んう~ん……あ、お嬢様、なんでしょう?」
「おい、美鈴。アレをやるぞ。」
それを聞いて一瞬キョトンとした顔をする美鈴。しかしすぐに意図を察したのか、にんまりと笑ってレミリアに頷いた。
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試合の時間となり、レミリアとさとりがお互いに向かい合う。さとりはいつものジト目でにんまりと笑うさとりスマイルを浮かべ、余裕があることをアピールしている。
しかしレミリアは、そんなさとりの表情など見てはいなかった。
『ある意味、これほど似ている二人はなかなかいないでしょう!妹持ち!カリスマ!そしてロリ!勢力のトップ同士が争うこのバトル、注目です!ともに2勝している者同士、ここでの勝者がAブロックトップです!では……始めっ!』
――3回戦 レミリア・スカーレット VS 古明地 さとり
START!!
『ふふ、よくこの場にあがってこれましたね吸血鬼さん。これからあなたのトラウマを深くえぐってあげるので、覚悟してくださいね?』
――バシーン!!
始めにマイクを取り、レミリアを挑発するさとり。
しかし、レミリアは別のことを考えていた。
~~少女妄想中~~
ツインテールになったさとり
水色のジャケットを着て、リュックを背負っている。
そしてスパナを片手に、爽やかな笑顔でこう言うのだ。
「地底にもこれから、科学の時代が来ますよ!!」
~~想起「古明地にとり」~~
「ブフッ!」
『おーっと、さとり選手の挑発を聞いてレミリア選手が吹き出した!これはどういうことか!余裕の現れなのかー!』
文が騒ぎ立てるがなんてことはない、レミリアは面白いことを妄想してダメージを和らげるという、美鈴直伝の『妄想戦法』をとっているだけなのだ。
そしてレミリアはマイクを取る。
『お前にスパナは絶望的に似合わないから、やめておけ!』
――バシーン!!
観客席は再びクエスチョンマークに包まれる。どよめきの中、さとりが再びマイクを握った。
『知っていますよ、あなた睨めっこで妹さんに20回も泣かされたそうですね!同じ姉として、そんな妹にナメられまくっているあなたを見るのは忍びないです!』
――バシーン!!
的確にレミリアの痛いところを突くさとり。しかしレミリアの耳にはまったく届いていない、既に妄想モードに入っているからだ。
~~少女妄想中~
はーい、二人組つくってー
せんせー!さとりちゃんが1人余ってしまいましたー
よーしじゃあ先生と組もうかー。大丈夫イヤらしいことなんて考えてないからグヘヘヘ
~~想起「古明地ひとり」~~
レミリアはさとりに、憐れみの目を向けながらマイクを手に取る。
『辛いわよね、ぼっちにその言葉は鬼門よね、大丈夫、私が友達になってあげるから!』
――バシーン!!
観客席は更に混乱し、どよめきが大きくなる。しかしさとりはヘコたれずにマイクを手にする。
『知っていますよ、あなたが100歳までおねしょをしていたことも!私だって50で克服したのに、恥ずかしくないんですか?』
――バシーン!!
普段ならばこんなことを言われると慌てふためきテンパるレミリアであるが、妄想モードに入りこんでしまっているレミリアはこれぐらいでは動じない。
~~少女妄想中~~
「よーし古明地~。πは数字で言うといくつだ?」
「はい、3です!」
~~想起「古明地ゆとり」~~
『円周率を「ほぼ3」で習ったお前にそんなことは言われたくないね!』
――バシーン!!
え?まじ?さとり様ってゆとり世代?それとも地底は教育が遅れてる?とざわめく観客。
しかしさとりはまだまだめげずに、マイクを手に取る。
『毎日メイド長にお着替えを手伝ってもらっているそうですね!主たるものそんなことも自分で出来ないで恥ずかしくないんですか?私は自分でペットの料理まで作りますよ!!』
――バシーン!!
マイクを叩きつけるさとり。不思議とその顔にはイラ立ちがみえる。しかしレミリアは気にしない、再び妄想を開始する。
~~少女妄想中~~
「おりんりん、ゲットです!!」
~~想起「古明地さとし」~~
「ブホホホッ!!」
再び盛大に吹き出すレミリア。妄想の中でさとりは赤い服に赤いキャップ帽子を被り、モンスターボールをかかげていた。脳内では音楽も流れ始める。あ~♪あこがれの~♪地霊殿マスターに~♪
「ひー、ひー、くるしー!」
笑いながらもマイクを手に取ろうとするレミリア。しかし……
「いい加減にしてください!!!」
さとりの怒鳴り声がそれを遮る。その顔は怒りで真っ赤に染まっていた。
そう、今までのレミリアの妄想は、全てさとりには筒抜けだったのだ。
さとりは息を荒くしながら更に怒鳴り続ける。
「黙って読んでいればさっきから失礼なことばかり考えて!!勝手に私の名前で遊ばないでください!!なにが古明地さとしですか!ペットマスターですって!?やかましいわ!!今までいろんな人の心を読んできましたがここまで失礼なことを考えられたのは始めてですよ!それに……」
――カンカンカン!!
決着のゴングが鳴り響く。さとりの怒りゲージが規定値を超えたので、レミリアの勝利が決まったのだ。
「え?え?……か、勝ったわ!!」
その結果にレミリア自身も戸惑っていたが、慌ててマイクを掲げて勝利のポーズをとった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「上手いわね、そういう手があったなんて。」
控え室に帰ってきたレミリアを出迎えたのは皆の拍手と、パチュリーの感嘆の言葉であった。
「あなたのとった方法は本来防御のための手段で、自分に対するダメージを軽減するに過ぎない。だけど相手が心を読む妖怪ならば話は別。妄想がそのまま相手へと伝わるから、言葉と心の両方で攻撃が可能。そこまでは私も考えつかなかったわ、流石よレミィ。」
パチュリーにベタ誉めされて気分はいいが、正直レミリアはそこまで考えていたワケではなかった。ただ単に『古明地さとり』という名前がいじりやすくて面白そうだったから美鈴の妄想戦法を選んだだけなのだ。
「ま、私ほどの言葉弾幕の使い手とあればこれぐらい当然よね。」
もちろん、それを言うとカッコ悪いので始めから考えていたフリをする。
「なんにせよこれでAブロック1位通過確定です!」
「やったー!」
「おめでとうございますお嬢様!」
咲夜の言葉に喜ぶ面々。2位通過と1位通過ではかなり違う。
決勝トーナメントで2位通過であればBブロックの1位と当たるのに対し、1位通過であれば2位と当たるのだ。もし仮にBブロックの1位と2位がさとりとチルノぐらい実力が離れていたとしたら、決勝へどちらの方が進みやすいかは言うまでもない。
「あ、そうだBブロックはどんな感じなの?咲夜。」
レミリアが思い出したように咲夜に尋ねる。咲夜は手帳を手に結果を確認しながら伝えた。
「Bブロックでは既に風見幽香が3連勝で1位通過を確定させていますね。」
「なるほど……やはりアイツか。」
風見優香、通称アルティメットサディスティッククリーチャー。ドSの権現だるこの妖怪は言葉だけでも相手の心を折る天才的な攻撃をしてきたのだろう。
「そして霧雨魔理沙が3連敗で敗退確定です。」
「まああの白黒は結構打たれ弱いからな。」
「お姉様も似たようなもんだったけどね。」
「何か言った?フラン。」
「べつにー。」
そっぽを向くフランドール。咲夜は続ける。
「そして八意永琳と東風谷早苗が1勝1敗同士。ここでの勝者がBブロックの2位通過となり、お嬢様の対戦相手となります。」
「まあ永琳でしょうね。東風谷早苗があの月の頭脳に勝てるとは思えない。」
「観戦しに行きますか?別ブロックの勝負ですから私達も観客として行くことが出来ますよ。」
美鈴がレミリアに提案する。レミリアは少し考え、ドアへと足を進めた。
「敵を知ることも大事だからね、みんな、行くわよ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「むきぃぃ!!」
――カンカンカン!!
レミリア達が観客席に到着したとき、丁度決着がついたようだ。
結果は……
『八意永琳選手の怒りゲージが規定値を超えました!よってこの勝負、東風谷早苗選手の勝利!!』
「なんだと!?」
レミリアはその結果に驚いた。他の紅魔館の面々も同じである。あの永琳が早苗に負けるなんて、それもあんなに取り乱すとは。いつも冷静な永琳しか知らないレミリア達にとって、地団太を踏みながら怒りをあらわにする永琳はまるで別の生物に思える。
「あ、レミリアさん、見にきてくれたんですか?」
早苗が、レミリアに声をかけてきた。レミリアは警戒しながら反応する。
「ああ、私はAブロック1位通過だからな。お前が私の対戦相手になるわけだ。」
「そんな、レミリアさんとですか?どうしましょう!」
困った風な言葉を言っているが、その瞳の奥にある自信をレミリアは見逃さなかった。
一見するとただの平凡な小娘に見えるが、一体どのような力を秘めているのであろうか?
「では、また決勝トーナメントで会いましょう。」
そう言うと早苗はスキマの中へと戻っていった。
レミリアはリングに目をやる。そこにはまだ永琳が茫然自失と座りこんでいた。レミリアは永琳へと駆け寄る。
「永琳、お前ほどの奴がどうしたんだ、早苗ってのは、そんなに強いのか?」
「あの子は……強い。それも……普通の強さじゃないわ。」
「普通の……強さじゃない?」
「一言で言うなら……人の神経を逆撫でする、天才……」
「え、永琳!永琳!!」
その言葉を最後に、永琳は意識を失った。別に身体的にダメージを負っているわけではないのだが、早苗からの口撃、そして自分が予選敗退したという事実にプライドが打ち負けた故の精神的ダメージによるものだ。通称「プライド崩壊ショック」。同じようにプライドが高いレミリアだからこそ、この永琳がどういう状態にあるのか痛いほど理解できた。
「永琳……お前の仇はかならず取る。待っていろ、東風谷早苗!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
控え室に戻るレミリア達。まさかの永琳の敗北、そして早苗の勝利は少なからず全員に衝撃を与えていた。もうまもなくレミリアVS早苗の試合が始まってしまう。対策を練っている時間は無い。
そこでレミリアは、一番信頼している従者を頼ることにした。
「……咲夜。」
「なんでしょう、お嬢様。」
「私は今回、お前が教えてくれた戦法を使うつもりでいる。」
「相手の弱点を突く戦略ですか……何か知っているのですか?東風谷早苗の弱点を。」
「……そこでお前に頼みがあるんだ。」
「なんなりと。」
「今から守矢神社に忍びこんで、あの緑巫女の弱点を見つけ出してきてほしいんだ。
無茶な話だとは分かっている、しかし、これが可能なのは時間を止められるお前しかいないんだ、頼む。」
レミリアは咲夜に頭を下げようとする。しかし、それを咲夜に止められた。
「お止めください、私はお嬢様の命令ならば例え火の中水の中あの子のドロワーズの中でございます。」
「最後が気になるがまあいいや。頼んだぞ、咲夜。」
「はい。」
その返事を最後に、咲夜は控え室から姿を消した。時間を止めて守矢神社へと向かっているのだろう。パチュリーが不安げにレミリアに尋ねる。
「大丈夫なの?もう間も無く始まる。いくら咲夜が時間を操れるからって限度がある。この試合が終わるまでに戻ってこれるか、それ以前に弱点なんてあるのか……」
「心配するな、全部で10ターン、それまで耐えればいいんだ。それまでにきっとあいつは戻ってくる。きっと、な。」
――カンカンカン!
呼び出しのゴングと共にスキマが出現した。不安げな面々をよそに、レミリアはリングに続くスキマへと歩いていく。
「じゃあ、行ってくる。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
二つのスキマからレミリア・スカーレットと東風谷早苗がゆっくりと姿を現す。観客のボルテージは更に盛り上がる。
『さあ!この言葉弾幕トーナメントもいよいよ終盤!ある意味この組み合わせは予想外の組み合わせではないでしょうか!古明地さとりやナズーリンといった強豪達を倒して1位通過となったレミリア・スカーレット!八意永琳を怒らせるほどの隠された実力の持ち主、東風谷早苗!注目の1戦です!では……始めっ!!』
――準決勝 レミリア・スカーレット VS 東風谷 早苗
START!!
『ふふ、見ていたわよ東風谷早苗。あの八意永琳をあそこまで怒らせるとは、只者じゃないな。お前はいったいどんな方法で私を楽しませてくれるのかしら?』
――バシーン!!
まずはレミリアが軽くジャブを入れる。この台詞には相手に対する挑発という意味ももちろんあるものの、それよりもまず相手がどういった戦法を取るのかを見たいという意図がある。なにせ相手は2位通過といえどあの八意永琳を破った相手、下手したら古明地さとり以上に強敵である可能性も考えられる。
そして早苗がマイクを手にとった。レミリアは警戒する。
しかし、早苗の戦法はレミリアの予想を大きく上回るものであった。
『えー、あのババアなんて大した敵じゃなかったっていうかー、ちょー楽勝って感じ?私的にはもっと魂アゲしたいなー』
――バシーン!!
その早苗のマイクパフォーマンスを見て、永琳が破れた理由、そして早苗の戦法が瞬時に理解できた。女子高生的なしゃべり、通称ギャル語。堅物が多いこの幻想郷において、こういったチャラチャラしたしゃべり方はそれだけで相手をイラつかせるものだ。外の世界で現役女子高生だった早苗にしかとれない戦法であろう。
内心戦慄しつつ、レミリアはマイクを手に取った。とにかく咲夜が弱点を持って戻ってきてくれることを信じて、それまで頑張ってこの口撃に耐えなければならない。
『ふ、永琳と私を一緒にしてもらっては困る。しかしなんだそのしゃべり方は。頭の悪さがにじみ出ているぞ、悪いことは言わないから止めなさい。』
――バシーン!!
『はぁ?これが最先端のしゃべり方だし。みんなしゃべり方が古いんだよねー、仮にも女の子が「だぞ」とか言っちゃって、ちょーウケルんですけどー!!』
――バシーン!!
『私は紅魔館の主だ、こういう口調でないと周りからなめられてしまう。ただ巫女をやっていればいいお前とは環境が違うんだ!』
――バシーン!!
『レミちゃんみたいな幼女が偉ぶってもわらけるだけだしー。ていうか何?レミちゃん心はおばさんなの?500ぐらいいってるってウワサー、ちょーウケるー!』
――バシーン!!
『おばさんって言うな!だいたい、お前のそのしゃべり方、現在進行形でファンが減りつづけていると思うぞ!』
――バシーン!!
『レミちゃんマジGKY~!これからはこれが幻想郷の常識になるよかーん!』
――バシーン!!
(おほほほほほ、殴りてぇー!!)
レミリアは内心の攻撃衝動を抑えるのに必死であった。この人を小馬鹿にした態度、意味不明な言葉を乱発する言動、まさに永琳が言っていた通り『人の神経を逆撫でさせる天才』なのだろう。言っていることはまったく中身がないのに、ここまでの攻撃力をもっているとは!ある意味、古明地さとり以上の強敵である。
(……ん?)
と、そこでレミリアは気がついた。ポケットの中からカサリという音がしたのを。普段レミリアはポケットの中に何も入れてない。ということは……咲夜が何かを入れたのだ!
ポケットの中を確認すると、1枚の紙が入っていた。そこには明確に、早苗の『弱点』が書かれていたのだ。
(これだ……これなら一発KO間違い無し!よくやったわ、咲夜!)
内心で咲夜に感謝しつつ、自信満々にマイクを手に取り早苗に向き合う。
そして、この『弱点』を使って早苗の心をへし折る言葉で口撃した。
『女子高生時代は家で同人誌を描いていたくせに、ギャルぶってるんじゃない!シブヤではなくアキハバラにばかり行っていたくせに何がGKYだ、笑わせるな!早くその同人誌の続きを描いたらどうだ?「聖天使★サナエル」!!』
――バシーン!!
そのレミリアの言葉に会場はどよめいた。
え?早苗さんってギャルじゃなかったの?
え?早苗さんって実は……だったの?
え?ただ単にさっきまでのは無理してただけ?
そして早苗は、得意げだった顔が一瞬で崩れ、顔面蒼白になり冷や汗タラタラ、そして絶叫した。
「な、なぜそのことをおおおおおおおおお!!!!」
そのまま早苗は、泡を吹いて倒れてしまった。そしてコングが鳴り響き、レミリア・スカーレットの決勝戦進出が決定する。レミリアは咲夜に内心感謝しつつ、決めセリフをはいてスキマの中へと戻っていった。
「ふっ、こんな相手、私にとってはPKって感じー!」
ちなみに、レミリアは意味が分からず適当な言葉を言ったが、PKとはギャル語で「パンツ食い込んでる」の略らしい。なんて単語だ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
リングから帰ってきたレミリアを出迎えたのは、決勝戦進出を喜ぶ仲間達、そして今回最大の功労者である咲夜の姿だった。レミリアは咲夜に駆け寄り、苦労をねぎらう。
「ありがとう咲夜、あなたがいなかったら今回はヤバかったわね。」
「遅くなって申し訳ありません、よくぞ耐えてくれました。」
「どうして分かったの?早苗のアレが演技で本当はオタク女子だったってこと。」
「はい、『聖天使★サナエルのひ・み・つ(はぁと)』という日誌を見つけたからですわ。」
その名前を聞いて「うわぁ…」となる一同。早苗の名誉のためにフォローしておくと、もちろん現在ではそんな痛々しい日記はつけていない。むしろ早苗自身が黒歴史を隠すために押し入れの奥に封印しておいたのだ。問題なのはそれを引っ張りだしてきた咲夜である。
オタクの部屋を漁るという行為はやってはいけないことだ、仮に机の引き出しの中にぎっしり詰まった同人誌の山が他人に見つかった時は、エロ本よりも気まずい思いをすることになるだろう。これは決して誰かの体験談ではない。
「さて、残すは決勝だけだな。」
「えーっと、決勝の相手はさとりさんか幽香さんですね。今きっと試合中……」
――カンカンカン!!
美鈴の言葉を遮るように、コングが鳴り響いた。モニターを見ると、幽香が勝利していることが分かる。
「早っ!あのさとりをあんなに早くKOするなんて……」
「流石、USCの名は伊達じゃないわね。いける?レミィ。」
心配するフランドールとパチュリー。しかしレミリアは開き直っていた。
幽香が手ごわいのは分かっていたこと。もはや余計な小細工は必要ない、当たってぶつかるだけである。
「大丈夫さ、行ってくるよ。」
手を振りながらスキマへと入るレミリア。他の五人は、それを精一杯の声援で見送った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『さあ、いよいよ最終戦です!ここまで言葉の力で勝ちぬいてきた猛者二人!一体どんな戦いを見せてくれるのでしょうか!まずは赤コーナー!まさかの決勝進出!巧みな戦略で勝ちあがってきた永遠に幼き紅い月……レミリア・スカーレット!!』
アナウンスと同時にスキマからレミリアが現れる。もはやフランドールに泣かされてしゃがみガードをしていた頃のへたれみりあでは無い、カリスマ溢れる、紅魔館の主がそこにいた。
『そして青コーナー!知る人ぞ知るアルティメットサディスティッククリーチャー!この大会で何人もの心を折って泣かせてきた!フラワーマスター……風見幽香!!』
そして幽香もリングへと上がってくる。その顔は早速笑みに満ちており、これからが楽しみでしょうがないといった顔だ。しかしレミリアは、それを前にしても緊張することはなく、平常心を保っていた。
(さ~てどうしようかな、まったく対策を考えてない。まあ、とりあえずまだ使ってない小悪魔戦法でやってみるかな。)
小悪魔から教わった戦法……何を言われても心の中でヘコヘコしながら受け流す。
この方法なら相手からのダメージをかなり減らすことが可能だという。
『それでは第一回幻想郷言葉弾幕コンテスト……最終戦!始めっ!』
――決勝戦 レミリア・スカーレット VS 風見 幽香
START!!
幽香が笑顔を浮かべたままマイクを握った。そして、レミリアを睨みつけながら口を開く。
これだけでかなりのプレッシャーである。ナズーリンであればそのまま気絶してしまいそうなくらいのものだ。
『ふふ、あなたの館って、無能な奴ばかり集まってるわねぇ。』
ピクリ、とレミリアが反応する。怒りを覚えるがすぐに頭を振り小悪魔戦法に切りかえる。
(まったくその通り!みんなだらしないのよ!)
『門番は弱いくせにヘラヘラ笑ってるザル門番だし』
(ほんとほんと!もっと真面目にやんなさいよね。)
『メイド長はメイド長でただの人間。たいしたことはないわ。』
(まったくよ!胸のことを言うとすぐ怒るしね!)
『パチュリーだっけ?あんな本読んでるだけの穀潰し、どうして居るのかわからないわ。』
(パチェも少しは館のために働けってんだ!)
『その下についてるなんだっけ?名前も覚えてないわ、あんなザコ。』
(小悪魔か……ほんと、あいつは力が弱すぎるわね。スペルカードぐらい覚えなさいよ。)
『そして最悪なのが妹!あんな気が狂ってるヤツ、永遠に封印しておくべきだわ!』
(まったくだ!そうすれば私もいじめられないで済むし!)
紅魔館の面々を貶しつづける幽香。レミリアは小悪魔戦法にのっとり、それに心の中でヘコヘコと同意していく。
『とにかく、あなたの館ってほんと最低の人材しかいないわね!』
――バシーン!
最後にそう締めて、マイクを床に叩きつけた。
レミリアはまだ小悪魔戦法を続けようとする。
(まったく、そのとおり!みんなダメダメすぎるのよ!)
しかし……
(……なんて。)
それは、レミリアには無理なことであった。
(思ってるわけないでしょうが!)
レミリアはマイクを拾い、幽香に向き合う。
『幽香、私があなたに言いたいことは一つ。たった一つよ。』
レミリアはつかつかと歩き出し、幽香の目の前で立ち止まる。
そして、幽香に最後の言葉を投げかけた。
『優勝、おめでとう。』
――ドゴォ!!
次の瞬間、幽香は吹き飛んでいた。至近距離からの吸血鬼の力での全力パンチ。流石の幽香も、まさかこの大会で全力のパンチが飛んでくるとは思っていなかったのか、防御することもままならず素直に攻撃を食らってしまった。
そしてレミリアは幽香を見下ろし、更に続ける。
『私のことは何を言われようとも構わん。だが、私は仲間達を愛している。その仲間達をバカにされ、拳の一つも出せないのだったら……』
――バシーン!!
レミリアはマイクを思いっきり叩きつけた。そしてマイク越しではなく、自分の口だけで想いをぶつける。
「負けたほうがマシだ!!」
次の瞬間、会場はこの日一番の歓声に包まれた。それが勝者である幽香に向けられたものか、それともレミリアに向けられたものであるかは定かではない。しかしこの瞬間、会場が一番に盛り上がったということは紛れもない事実である。
その歓声を背に、レミリアは自分の控え室へと続くスキマへと帰っていった。
敗北したが、不思議と悔しさはなかった。自分のした行動に、後悔を感じていなかったから。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ごめん、負けちゃったよ。」
控え室に戻るなりレミリアは仲間達に謝罪した。あれだけ鍛えてもらったのに自ら優勝を手放してしまった、という思いがあったからだ。
しかし、仲間達にレミリアを責める者はいなかった。
「いえ、お嬢様の行動は正しかったと思っております。」
咲夜が居住まいを正して礼をすると
「お嬢様、私、ずっと付いていきますからね!」
美鈴は感動の涙を流しながら叫び、
「こんな私のために怒ってくれるなんて……ありがとうございます。」
小悪魔は深々とレミリアにお辞儀をして、
「……まあこの方がレミィらしいわね。私は責めないわ。」
パチュリーは照れ隠しなのか本で顔を隠したまま優しく労う。
「お姉様がやらなかったら私が乱入してぶっとばしてたよ!さすがお姉様!」
そしてフランドールが物騒なことを言いながらも、笑顔全開でレミリアを誉めた。
負けたのにも関わらず穏やかな空間となった控え室、そして笑顔の紅魔館の仲間達。この光景を見て、レミリアは自分の行動が間違ってなかったと改めて思う。あのままヘコヘコしつづけた場合、勝利してもきっとこんな和やかにはならなかっただろう。
「あ、あの~……」
そんな中、ドアから申し訳なさそうに顔を出す者が居た。リグル・ナイトバグ。蛍の妖怪である。機嫌のいいレミリアはリグルに部屋の中に入るように促し、話を聞く。
「珍しい顔ね。あなたも来ていたの?」
「は、はい。幽香さんのセコンドとして。特にやることは無かったですけど。」
「勝ち続けてたもんね。それで?」
「はい、幽香さん優勝したのに嬉しそうじゃなくて。なんだかレミリアさんに言ったことを気にしてるらしいんです。だからここに連れてきたんですよ……ほら幽香さん!」
リグルが手を引っぱると、幽香がもじもじしながら入ってきた。先ほどまでの傲慢な態度とは一転して、なにやらオドオドしてるように見える。
「べっ、べつに気にしてるとかそういうんじゃないわ!」
「仲間を貶したことを謝りたい……と言いたいようです。」
「ただ勝者として、敗北者の顔を見て笑ってやろうと思ってね!」
「勝負のために弱点をついただけで、本当にそう思ってたわけじゃない……と言いたいようです。」
「はっ、せいぜい負け犬らしく這いつくばっていればいいわ!」
「だから今日言ったことを本気にしないでね……?と言いたいそうです。」
「とてもそうは見えないけど。」
「幽香さんツンデレですから。」
幽香の言葉をリグルが翻訳していく。リグルの言葉が嘘か真かを判断する術はないが、わざわざこちらの控え室までやってきたことを考えればリグルの言葉の方が幽香の本心なのであろう、とレミリアは判断した。
「といってもねぇ、別に私は殴った時点でスッキリしたし……みんなは?」
レミリアは仲間達を見渡す。しかし全員首を横に振った。『気にしていない』という意思表示だ。レミリアが代表して殴ってくれたこと、そして今の幽香の態度を見て毒気を抜かれてしまったのだ。
このまま許そうと思ったレミリア、しかしここで、一つ妙案を思いつく。
「じゃあこうしようか。お前、まだ不完全燃焼じゃない?」
「……どういうこと?」
幽香がレミリアに尋ねる。レミリアはニヤリと得意げに笑った。
「私もまだ不完全燃焼なんだ。何せ今日はいろんなことを言われて、いろいろ溜まってるんだ。そろそろ派手に身体を動かしたい気分だ、お前もそうじゃないか?」
その言葉で幽香もレミリアの真意を察したらしく、いつもの調子に戻りニヤリと笑った。
「あら、言葉じゃ勝てないからこっちで、ってこと?こっちも私は負けないわよ。」
「ふふ、言ってろ。私の力を見せてやる。」
そして二人は、お互いにスキマへと入りリングへと上る。既に観客がいなくなったので、周りを心配することもない。全力で遊ぶことが出来る。
「さあ、始めるわよ!!」
「全力の、弾幕ごっこだ!!」
弾幕ごっこを始めた二人。その表情はお互いにとても生き生きしている。特にレミリアは、今日の中で一番楽しそうな顔をしている。
「いいなー、私も混ざりたい。」
「ダメですよ妹様。今日はお嬢様に譲りましょう。」
「うー、まあ頑張ったもんね、今日は。」
その戦いを控え室で眺める紅魔館の面子+リグル。フランドールは指を加えてうらやましそうに見ている。そして、咲夜は楽しそうなレミリアを見て思う。
(やはりお嬢様には、言葉弾幕は似合いませんね。)
何故なら、レミリアの出す本物の弾幕は、あんなにも美しいのだから。
了
http://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1267436099&log=102
そして、いよいよ本番の日。レミリア達は意気込んで博麗神社へと乗りこんだ。
そこは、既に参加者達で溢れかえっていた。永遠亭や地霊殿といった紅魔館と匹敵する影響力を持った勢力から、信仰勢力の命蓮寺の面々に妖精達まで集っている。
「へえ、凄いわね。幻想郷の勢力がほとんど集まっているんじゃない?」
「きっと強敵ばかりですよ、気を引き締めてくださいね。」
「分かっているわ。」
表情を引き締めるレミリア。まずは各チームに用意された控え室での待機となる。それなりの広さがあるので、10人ぐらいまでなら普通に入れるであろう。狭い博麗神社に何故これだけの広さの部屋を用意できたのか、それは主催者である八雲紫のスキマによるものである。予選トーナメントは同時進行で行うので、スキマを通じて別の場所にあるリングへと招待されることになっている。この控え室にはモニターが用意されていてこの場所で試合を観戦することが出来る。しかし、仲間達がリングへ応援に行くことは出来ない。行くことが出来るのは、実際に試合をする者のみである。
「あっ、見てください!」
小悪魔がモニターを指差す。そこには、組み合わせが発表されていた。
予選
・ブロック内で総あたり戦。上位2者が決勝トーナメントへ進出する。
Aブロック
チルノ(無所属)
レミリア・スカーレット(紅魔館)
古明地さとり(地霊殿)
ナズーリン(命蓮寺)
Bブロック
八意永琳(永遠亭)
東風谷早苗(守矢神社)
風見幽香(無所属)
霧雨魔理沙(無所属)
決勝トーナメント
準決勝第1戦 Aブロック1位 VS Bブロック2位
準決勝第2戦 Aブロック2位 VS Bブロック1位
決勝戦 第1戦勝者 VS 第2戦勝者
「……合計8人か。結構多いわね。」
「私達がいるのはAブロック。相手はさとり、ナズーリン、それに……チルノォ!?」
不自然。あまりに不自然な名前が同じブロック内に居た。次の瞬間、控え室は笑い声に包まれる。
「あははは、チルノにこの大会は無理でしょー!」
「ふっ、こんなバカは敵ではないな!」
「お嬢様、チルノちゃん泣かせたらダメですからね!」
つかの間ではあるが緊張がほぐれた。しかし、笑いながらもチルノの心配をしていた美鈴が突如表情を鋭くする。
「美鈴、どうしたの?」
フランドールが尋ねるが、美鈴はただ目配せをして、人差し指を口に当てて静まるように指示した。そして、部屋の隅を指差す。そこには、白い霧が広がっていた。
「……誰ですか?姿を現してください。」
美鈴がそう告げると、白い霧は徐々に薄くなっていった。そこに現れたのは……1人の妖精であった。緑の髪にフランドールと同じようなサイドテール。そう、彼女は……
「たしか……チルノの傍にいつもいる……」
「大妖精です、お邪魔しています。」
「大ちゃん、どうしたの?チルノちゃんが本当に出るの?大丈夫?」
大妖精と名無し仲間として親交のある小悪魔が尋ねる。すると大妖精は、ふふ、ふふふふと不気味に笑い出した。
「ふふふ……みなさん、予想通りチルノちゃんを侮っているようなので、忠告しに来たんですよ……」
「なん……だと?」
大妖精の言葉にバトルマンガっぽく返事をするレミリア。更に大妖精は続ける。
「チルノちゃんは特訓をしました……そう、言葉でも「さいきょー」になるために……
せいぜい油断しているといいですよ……?優勝はチルノちゃんのものですからね。」
「ほう……こんな大会のために特訓か?ご苦労なことだ。」
いやアンタもしてたやん、というツッコミを他の5人は必死で抑えた。
カリスマっぽく余裕ぶりたいお年ごろなのである。
「それだけチルノちゃんは本気なんです……。せいぜい、しゃがみガードの練習をしててくださいね?」
「面白い……受けてたとうじゃないか。」
「では、本選で……」
そう言い残すと再び大妖精は霧に包まれた。そのまま消える……ということまではまだ出来ないようで霧に包まれたまま普通にドアから出ていった。
挑発されたものの、カリスマ風なやり取りを満喫できたのでレミリアは割と満足げだった。
「しかし、大妖精の言うことが本当ならば、油断は出来ませんね。」
「ええ。今回は、パチュリーの教えてくれた戦法で行こうと思うわ。」
「チルノ相手にはそれがいいでしょう。」
――カンカンカン!!
ゴングが鳴った。試合開始の合図である。会場へと繋がるスキマが出現し、モニターにはこれから行われる試合会場の様子が映し出された。
「じゃあ、行ってくるわ。」
「お嬢様、ご武運を……!」
レミリアは、スキマの中へと入っていった。
パチュリーから受けたレッスンを思い出しながら。
(今の私はボキャブラリーに満ち溢れている!大丈夫、大丈夫……)
内心は緊張しているが、第一印象は大事だ、出来るだけカリスマ的余裕に満ち溢れているように歩く。そして、スキマの出口へと近づいた。1歩外へと踏み出すと……
『おお~っと、赤コーナーから、レミリア・スカーレットの登場です!!』
アナウンスと共に、大きな歓声が湧いた。思わず驚く。
(え?え?何この歓声!?)
観客席をよく見ると、ほとんどが人間である。多くの人間がこのバトルを観戦しようとこの場所までやってきたのだ。お賽銭も増えて、霊夢はほくほくである。
何故こんなに人間が集まったのかには理由がある。普段彼らは力の強い妖怪達に憧れているが、本陣へと乗りこむわけにもいかず、また弾幕ごっこを観戦することも流れ弾に当たる危険を考えると普通の人間には難しい。そこに舞い込んできたのが今回の企画。言葉弾幕であればただの言葉のやり取りであるから被害を受ける可能性は少ない上に、すぐ近くで憧れのアイドル、またはヒーローとも言うべき存在を見ることが出来るのだ。その結果、これだけ多くの人間達が集まったのである。
(よ、余計に緊張しちゃうじゃないの!)
ガチガチになりかけているレミリア。一方反対側からはチルノが現れた。その様子を見ているといつも通りで、緊張などはしている様子はない。こういうことを気にしない奴はうらやましいなとレミリアは思った。
『みなさん、お静かに!』
再びどこからかアナウンスがかかった。周りを見渡すとその発生源を見つけることが出来た。リングのすぐ傍、それでいて観客席の前という場所に、見慣れた顔がいた。そこのネームプレートには『実況 射命丸文』と書かれている。どうやらこの天狗がいつものように大会の進行役のようである。
『では両者、準備はよろしいですか?』
文が二人に問い掛ける。チルノとレミリアは自信満々に頷いた。
『それでは……Aブロック第一戦 レミリア・スカーレットVSチルノ、始めっ!』
――1回戦 レミリア・スカーレット VS チルノ
START!!
まずはレミリアがマイクを取った。とりあえず最初は様子見である。軽くジャブを入れる。
『おはよう氷の妖精さん、あなた来るところ間違っているんじゃないかしら?あなたにこの高度な遊びは不可能だわ。大妖精が何か言っていたけど、泣く前に帰った方がいいわよ?』
――バシーン!!
マイクを叩きつけるレミリア。しかしチルノは不敵な表情を崩すことはなかった。いつもならここでムキーっとなるような妖精であったはずなのに。
そしてチルノは、マイクを手にとった。レミリアは身構える。いったいどんな口撃がやってくるのか……
『レミリアのバーカ!うんこ!ちんこ!やーいやーい!!』
――バシーン!!
――ステーン!!
上はチルノがマイクを叩きつけた音、下はレミリアが盛大にズッこけた音である。
結局いつものチルノであった。このボキャブラリーの無さ、小学生のような口撃、美しさの欠片もない。うんことかちんことか女の子が言ってはいけません!
体勢を立て直すレミリア。しかしそのおかげで緊張もほぐれたようだ。思いつく限りのボキャブラリーを使って、チルノを口撃する。
『まったくほんと、あなたはインサイダー的な粉飾決算ね。あなたの顔を見てるとほんとうにフロイトの精神分析を思い出すわ。あなたみたいなのを何て言うか知ってる?塵も積もれば大和撫子って言うのよ!!』
――バシーン!!
決まった、とレミリアは思った。あまりに高度なボキャブラリーによる口撃、流石に気の毒すぎたかなとチルノを心配する。しかし、周りの観客は
?????
全員が全員、クエスチョンマークを浮かべていた。まったく意味がわからない、といった表情で。実際、レミリアが辞書を適当に眺めて覚えていた単語を並べただけなので意味なんてものは存在しないのだ。当然パチュリーが本当に言いたかったものとはかけ離れているので、控え室ではパチュリーの盛大なため息が響いていたのだが、レミリアが知る由はない。
『う、うぐぅぅ~……』
しかしチルノには大きな効果があったようだ。意味を理解しようと頭をフル回転させた結果、脳がショートしてしまったらしい。目をまわしてそのまま倒れてしまった。
『しょ、勝負あり!レミリア・スカーレットの勝利です!!』
会場に響き渡るアナウンス。勝ち誇った顔をしてマイクを掲げるレミリア。一方の客は、今だ戸惑いを隠せずにどよめいていた……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「一体なんなのよ、アレは。」
初陣で勝利を収め意気揚々と控え室へと帰ってきたレミリアを待ち構えていたのは、賞賛の言葉ではなく「しら~っ」とした冷たい視線であった。そして、パチュリーがその絶対零度の視線を向けたままレミリアに問い掛けた。
「え?私パチェの戦法で見事勝利を収めたわけだけど、何か問題でも?」
「大有りよ!私の言ったことが何一つ出来てないじゃないの。相手がチルノだったから良かったものの、それ以外だったら確実に負けてたわよ!」
「ちゃんと難しい言葉を並び立ててやったんだけどなあ。」
「意味をちゃんと分かってないとしょうがないわよ。辞書、読んでなかったの?」
「もちろん!しっかりと流し読みしてたぞ!」
自身満々に胸を張るレミリアに対し、パチュリーはがっくりと肩を落とす。やはり手抜きしないで自分でしっかりと教えるべきだったのだろうかと後悔するが、今更であった。
「まあまあ、勝利したからよいではありませんか。それより次ですよ、次!」
美鈴がパチュリーをなだめながら場を仕切り直す。ここらへんの調整の上手さは流石『気を使う程度の能力』といったところである。美鈴の言葉を受け、咲夜が大会のタイムスケジュール帳を見ながら続ける。
「今やっているのはBブロックの第一試合、風見幽香VS霧雨魔理沙ですね。これが終わった後再びお嬢様の出番です。今度の相手は……」
「……ナズーリン。命蓮寺のネズミか。」
ナズーリン、新興勢力である命蓮寺に住むネズミの妖怪であり、寅丸星の部下でもある。単純な力で言えば命蓮寺の中では一番弱いであろう。しかしそれ以外の部分、逃げ足の速さや処世術、要領の良さなどは命蓮寺だけでなく幻想郷においてもトップクラス。当然、口もよく回る。命蓮寺勢が彼女を代表に選んだことも納得の人選であると言えよう。
「ウワサでしか聞いたことないけど、だいぶズル賢いネズミらしいじゃないの。」
「はい。はっきり言って、この大会においてはかなりの強敵です。先ほどのチルノ戦の時のように簡単にことが運ぶことはないでしょう。」
「なるほど……みんな、コイツにはどんな攻め方をすべきだと思う?意見を聞かせてくれ。」
レミリアが周りを見渡す。悩む面々、その中でパチュリーがゆっくりと口を開いた。
「……このナズーリンという妖怪が、どのような妖怪であるのか。あなたにあって、ナズーリンに無いものは何か。それを考えれば、自ずとあなたがとるべき戦法が見えてくるはずよ。」
「ナズーリンが、どのような妖怪か……?」
レミリアはナズーリンに関する情報を頭の中で整理していく。ズル賢い、力は弱い、逃げ足が速い、そして口がよく回る……
そこまで考えて、レミリア自身も見つけ出した。ナズーリンにどのように攻めるべきかの答えを。
――カンカンカン!
コングが鳴り響いた。風見幽香が勝ったようだ。そして控え室のドアに再びリングへと繋がるスキマが広がった。
「ヒントをありがとうパチェ。見つかったわ、あのネズミに勝つ方法が。」
「本当に大丈夫なのお姉様?チルノの時みたいになるのはやめてよ?」
「大丈夫、今回は自信あるわ、まあ見ていて頂戴。」
レミリアはそう言い残して、スキマの中へと入っていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
リングの上にて、レミリアとナズーリンが対峙していた。
実際に対面するのはこれが初めてである。背格好は二人とも同じくらい、若干レミリアの方が背が高い。お互いに口を開かず、相手の表情を伺っている。
『さあ、Aブロック第2戦!これが初顔合わせとなる二人がどういう戦いを見せるのか、見物です!!それでは、始めっ!!』
――2回戦 レミリア・スカーレット VS ナズーリン
START!!
まずはレミリアがマイクを手にとった。相手をまっすぐに見据えながら、口撃を開始する。
『あなたがナズーリンね?ウワサは聞いているわ。なんでも弱いくせに口だけは達者な生意気なネズミさんみたいで。家に帰ってチーズでもかじっていたほうがいいんじゃないかしら?』
――バシーン!!
『ご忠告どうも、レミリア・スカーレット。しかし君の外見を見ているととてもカリスマ溢れる館の主には見えないな。私も君のウワサは聞いていてね、メイド長がいないとなにも出来ないワガママ幼女だと。一度見せておくれよ、その『れみ☆りあ☆うー☆』とやらをさ!』
――バシーン!!
お互いの口撃が終わり、レミリアは余裕のある表情を保ちつつも内心は打ち負けないように必死であった。ウワサ通りとてもよく口が回る、まともに相手をしていたら正直勝てる見込みは薄いであろう。
そこでレミリアは作戦を開始する。いったん俯き、表情を作る。目を大きく見開き血走らせ、力の限りのオーラを出してナズーリンを睨みつける。フランドールから教わった「威圧戦法」である。そしてそのまま、マイクを拾い口撃をする。
『ふ、ふふ、言ってくれるじゃないのネズミさん。安心しなさい、この大会では弾幕はご法度だから。だけども、帰り道は気をつけた方がいいわよ?』
――バシーン!!
表情はそのままナズーリンを睨み続けて、先ほどよりも強くマイクを叩きつける。フランドールとの睨めっこ特訓のおかげで、この威圧をレミリアは完全にモノにしていた。
ナズーリンにこの戦法を採用したのには理由がある。ナズーリンという妖怪の特徴、よく回る口、要領のよさ、逃げ足の早さ。これらを総合して考えると、ナズーリンの隠された本性が明らかになる。
「う、うあああ……」
臆病なのだ。自分の力の弱さを知っていて臆病だからこそ、ひたすらに危機を回避しようとする。現に、既にレミリアの威圧に負けてマイクを拾うことすらせずにガタガタと震えている。
「うわあああん!!」
そしてそのままリングから飛び出しスキマの中へと逃げてしまった。
それと同時にコングが鳴り響く。
『決まりましたっ!レミリア・スカーレット選手、KO勝ちです!』
多いに湧く観客たち。今度は先ほどのような戸惑ったどよめきではなく、正真正銘の歓声である。レミリアはそれに手を振って答えながら、気分良くスキマの中へと入っていった。
ちなみに反対側のスキマからは、聖の胸に顔をうずめて泣きじゃくるナズーリンの声が漏れていたとかいないとか……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
スキマから帰ってきたレミリアを、今度は5人の拍手が出迎えた。
「お嬢様!かっこ良かったです!」
小悪魔が興奮した面持ちで手を握ってきた。レミリアは余裕のある表情でそれに答える。
他の面々も先ほどとは打って変わって皆レミリアを褒め称える。
「お姉様!かんっぺきな威圧だったよ!」
「ふふ、ありがとうフラン。あなたとの睨めっこで20回ぐらい泣かされた甲斐があったわ。」
「ベストな選択と言えるわね。彼女は1ボスであなたはラスボス、持っている力が違う。そのギャップを生かすには妹様の戦略が一番効果的だった。」
「うふふ、そんなに誉めても本は買ってあげないわよ!」
祝勝ムード、しかし美鈴だけは1人相手のことを心配していた。
ナズーリンにこのまま紅魔館に苦手意識を持ってもらっては困る、行動範囲の広い彼女はある意味命蓮寺の顔とも言えるのだ。今度レミリアを連れて命蓮寺を訪れ誤解を解く必要があると考えていた。できるだけ新しい勢力とも友好関係を作っておきたい。
そんな美鈴の心配をよそに、咲夜がスケジュール帳を手にしながら次の対戦相手を告げる。
「ここから3試合は間が開きます。そしてその後はAブロックでの最後の戦い……古明地さとりです。」
古明地さとり。その名が出た瞬間、控え室が緊迫した空気につつまれた。
間違いなくこのAブロック最大の敵であり、優勝筆頭候補でもある。
「恐らく、心を読むことで相手のトラウマをえぐり、的確に弱点を攻めてくるでしょうね。
更に相手が自分に何を言ってくるのかも事前に予測することが出来る。攻めも防御も完璧。……手ごわい相手ね。」
「で、でももう2勝してるんですから、2位以上は決まったようなものじゃないですか!
ここで負けても、決勝トーナメントで勝てば……」
パチュリーの言葉に弱気な態度を見せる小悪魔、それをレミリアは一蹴する。
「何弱気なこと言ってるの!私は2位通過で決勝トーナメントなんて認めないわ!全部勝って1位通過でトーナメントに行くわよ!」
力強く宣言するレミリア。そう、2位通過など彼女のプライドが許さないのだ。
「だとすれば、対策は必須だよね。心を読む相手に、どう戦えばいいんだろう……?」
「地霊殿の主だから、ナズーリンに使った戦法は通用しないでしょうし。」
「きっと打たれ強さも相当なものよ。覚り妖怪という種族を考えればね。」
ひたすらに悩む面々。レミリアは今まで受けてきたレッスンを思い返してきた。
誰の方法が一番有効であるか……攻めを重視するか、守りを重視するか。
そしてレミリアは、一つの結論を導き出した。皆と一緒に悩んでいる美鈴の傍に歩み寄り、声をかける。
「う~んう~ん……あ、お嬢様、なんでしょう?」
「おい、美鈴。アレをやるぞ。」
それを聞いて一瞬キョトンとした顔をする美鈴。しかしすぐに意図を察したのか、にんまりと笑ってレミリアに頷いた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
試合の時間となり、レミリアとさとりがお互いに向かい合う。さとりはいつものジト目でにんまりと笑うさとりスマイルを浮かべ、余裕があることをアピールしている。
しかしレミリアは、そんなさとりの表情など見てはいなかった。
『ある意味、これほど似ている二人はなかなかいないでしょう!妹持ち!カリスマ!そしてロリ!勢力のトップ同士が争うこのバトル、注目です!ともに2勝している者同士、ここでの勝者がAブロックトップです!では……始めっ!』
――3回戦 レミリア・スカーレット VS 古明地 さとり
START!!
『ふふ、よくこの場にあがってこれましたね吸血鬼さん。これからあなたのトラウマを深くえぐってあげるので、覚悟してくださいね?』
――バシーン!!
始めにマイクを取り、レミリアを挑発するさとり。
しかし、レミリアは別のことを考えていた。
~~少女妄想中~~
ツインテールになったさとり
水色のジャケットを着て、リュックを背負っている。
そしてスパナを片手に、爽やかな笑顔でこう言うのだ。
「地底にもこれから、科学の時代が来ますよ!!」
~~想起「古明地にとり」~~
「ブフッ!」
『おーっと、さとり選手の挑発を聞いてレミリア選手が吹き出した!これはどういうことか!余裕の現れなのかー!』
文が騒ぎ立てるがなんてことはない、レミリアは面白いことを妄想してダメージを和らげるという、美鈴直伝の『妄想戦法』をとっているだけなのだ。
そしてレミリアはマイクを取る。
『お前にスパナは絶望的に似合わないから、やめておけ!』
――バシーン!!
観客席は再びクエスチョンマークに包まれる。どよめきの中、さとりが再びマイクを握った。
『知っていますよ、あなた睨めっこで妹さんに20回も泣かされたそうですね!同じ姉として、そんな妹にナメられまくっているあなたを見るのは忍びないです!』
――バシーン!!
的確にレミリアの痛いところを突くさとり。しかしレミリアの耳にはまったく届いていない、既に妄想モードに入っているからだ。
~~少女妄想中~
はーい、二人組つくってー
せんせー!さとりちゃんが1人余ってしまいましたー
よーしじゃあ先生と組もうかー。大丈夫イヤらしいことなんて考えてないからグヘヘヘ
~~想起「古明地ひとり」~~
レミリアはさとりに、憐れみの目を向けながらマイクを手に取る。
『辛いわよね、ぼっちにその言葉は鬼門よね、大丈夫、私が友達になってあげるから!』
――バシーン!!
観客席は更に混乱し、どよめきが大きくなる。しかしさとりはヘコたれずにマイクを手にする。
『知っていますよ、あなたが100歳までおねしょをしていたことも!私だって50で克服したのに、恥ずかしくないんですか?』
――バシーン!!
普段ならばこんなことを言われると慌てふためきテンパるレミリアであるが、妄想モードに入りこんでしまっているレミリアはこれぐらいでは動じない。
~~少女妄想中~~
「よーし古明地~。πは数字で言うといくつだ?」
「はい、3です!」
~~想起「古明地ゆとり」~~
『円周率を「ほぼ3」で習ったお前にそんなことは言われたくないね!』
――バシーン!!
え?まじ?さとり様ってゆとり世代?それとも地底は教育が遅れてる?とざわめく観客。
しかしさとりはまだまだめげずに、マイクを手に取る。
『毎日メイド長にお着替えを手伝ってもらっているそうですね!主たるものそんなことも自分で出来ないで恥ずかしくないんですか?私は自分でペットの料理まで作りますよ!!』
――バシーン!!
マイクを叩きつけるさとり。不思議とその顔にはイラ立ちがみえる。しかしレミリアは気にしない、再び妄想を開始する。
~~少女妄想中~~
「おりんりん、ゲットです!!」
~~想起「古明地さとし」~~
「ブホホホッ!!」
再び盛大に吹き出すレミリア。妄想の中でさとりは赤い服に赤いキャップ帽子を被り、モンスターボールをかかげていた。脳内では音楽も流れ始める。あ~♪あこがれの~♪地霊殿マスターに~♪
「ひー、ひー、くるしー!」
笑いながらもマイクを手に取ろうとするレミリア。しかし……
「いい加減にしてください!!!」
さとりの怒鳴り声がそれを遮る。その顔は怒りで真っ赤に染まっていた。
そう、今までのレミリアの妄想は、全てさとりには筒抜けだったのだ。
さとりは息を荒くしながら更に怒鳴り続ける。
「黙って読んでいればさっきから失礼なことばかり考えて!!勝手に私の名前で遊ばないでください!!なにが古明地さとしですか!ペットマスターですって!?やかましいわ!!今までいろんな人の心を読んできましたがここまで失礼なことを考えられたのは始めてですよ!それに……」
――カンカンカン!!
決着のゴングが鳴り響く。さとりの怒りゲージが規定値を超えたので、レミリアの勝利が決まったのだ。
「え?え?……か、勝ったわ!!」
その結果にレミリア自身も戸惑っていたが、慌ててマイクを掲げて勝利のポーズをとった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「上手いわね、そういう手があったなんて。」
控え室に帰ってきたレミリアを出迎えたのは皆の拍手と、パチュリーの感嘆の言葉であった。
「あなたのとった方法は本来防御のための手段で、自分に対するダメージを軽減するに過ぎない。だけど相手が心を読む妖怪ならば話は別。妄想がそのまま相手へと伝わるから、言葉と心の両方で攻撃が可能。そこまでは私も考えつかなかったわ、流石よレミィ。」
パチュリーにベタ誉めされて気分はいいが、正直レミリアはそこまで考えていたワケではなかった。ただ単に『古明地さとり』という名前がいじりやすくて面白そうだったから美鈴の妄想戦法を選んだだけなのだ。
「ま、私ほどの言葉弾幕の使い手とあればこれぐらい当然よね。」
もちろん、それを言うとカッコ悪いので始めから考えていたフリをする。
「なんにせよこれでAブロック1位通過確定です!」
「やったー!」
「おめでとうございますお嬢様!」
咲夜の言葉に喜ぶ面々。2位通過と1位通過ではかなり違う。
決勝トーナメントで2位通過であればBブロックの1位と当たるのに対し、1位通過であれば2位と当たるのだ。もし仮にBブロックの1位と2位がさとりとチルノぐらい実力が離れていたとしたら、決勝へどちらの方が進みやすいかは言うまでもない。
「あ、そうだBブロックはどんな感じなの?咲夜。」
レミリアが思い出したように咲夜に尋ねる。咲夜は手帳を手に結果を確認しながら伝えた。
「Bブロックでは既に風見幽香が3連勝で1位通過を確定させていますね。」
「なるほど……やはりアイツか。」
風見優香、通称アルティメットサディスティッククリーチャー。ドSの権現だるこの妖怪は言葉だけでも相手の心を折る天才的な攻撃をしてきたのだろう。
「そして霧雨魔理沙が3連敗で敗退確定です。」
「まああの白黒は結構打たれ弱いからな。」
「お姉様も似たようなもんだったけどね。」
「何か言った?フラン。」
「べつにー。」
そっぽを向くフランドール。咲夜は続ける。
「そして八意永琳と東風谷早苗が1勝1敗同士。ここでの勝者がBブロックの2位通過となり、お嬢様の対戦相手となります。」
「まあ永琳でしょうね。東風谷早苗があの月の頭脳に勝てるとは思えない。」
「観戦しに行きますか?別ブロックの勝負ですから私達も観客として行くことが出来ますよ。」
美鈴がレミリアに提案する。レミリアは少し考え、ドアへと足を進めた。
「敵を知ることも大事だからね、みんな、行くわよ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「むきぃぃ!!」
――カンカンカン!!
レミリア達が観客席に到着したとき、丁度決着がついたようだ。
結果は……
『八意永琳選手の怒りゲージが規定値を超えました!よってこの勝負、東風谷早苗選手の勝利!!』
「なんだと!?」
レミリアはその結果に驚いた。他の紅魔館の面々も同じである。あの永琳が早苗に負けるなんて、それもあんなに取り乱すとは。いつも冷静な永琳しか知らないレミリア達にとって、地団太を踏みながら怒りをあらわにする永琳はまるで別の生物に思える。
「あ、レミリアさん、見にきてくれたんですか?」
早苗が、レミリアに声をかけてきた。レミリアは警戒しながら反応する。
「ああ、私はAブロック1位通過だからな。お前が私の対戦相手になるわけだ。」
「そんな、レミリアさんとですか?どうしましょう!」
困った風な言葉を言っているが、その瞳の奥にある自信をレミリアは見逃さなかった。
一見するとただの平凡な小娘に見えるが、一体どのような力を秘めているのであろうか?
「では、また決勝トーナメントで会いましょう。」
そう言うと早苗はスキマの中へと戻っていった。
レミリアはリングに目をやる。そこにはまだ永琳が茫然自失と座りこんでいた。レミリアは永琳へと駆け寄る。
「永琳、お前ほどの奴がどうしたんだ、早苗ってのは、そんなに強いのか?」
「あの子は……強い。それも……普通の強さじゃないわ。」
「普通の……強さじゃない?」
「一言で言うなら……人の神経を逆撫でする、天才……」
「え、永琳!永琳!!」
その言葉を最後に、永琳は意識を失った。別に身体的にダメージを負っているわけではないのだが、早苗からの口撃、そして自分が予選敗退したという事実にプライドが打ち負けた故の精神的ダメージによるものだ。通称「プライド崩壊ショック」。同じようにプライドが高いレミリアだからこそ、この永琳がどういう状態にあるのか痛いほど理解できた。
「永琳……お前の仇はかならず取る。待っていろ、東風谷早苗!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
控え室に戻るレミリア達。まさかの永琳の敗北、そして早苗の勝利は少なからず全員に衝撃を与えていた。もうまもなくレミリアVS早苗の試合が始まってしまう。対策を練っている時間は無い。
そこでレミリアは、一番信頼している従者を頼ることにした。
「……咲夜。」
「なんでしょう、お嬢様。」
「私は今回、お前が教えてくれた戦法を使うつもりでいる。」
「相手の弱点を突く戦略ですか……何か知っているのですか?東風谷早苗の弱点を。」
「……そこでお前に頼みがあるんだ。」
「なんなりと。」
「今から守矢神社に忍びこんで、あの緑巫女の弱点を見つけ出してきてほしいんだ。
無茶な話だとは分かっている、しかし、これが可能なのは時間を止められるお前しかいないんだ、頼む。」
レミリアは咲夜に頭を下げようとする。しかし、それを咲夜に止められた。
「お止めください、私はお嬢様の命令ならば例え火の中水の中あの子のドロワーズの中でございます。」
「最後が気になるがまあいいや。頼んだぞ、咲夜。」
「はい。」
その返事を最後に、咲夜は控え室から姿を消した。時間を止めて守矢神社へと向かっているのだろう。パチュリーが不安げにレミリアに尋ねる。
「大丈夫なの?もう間も無く始まる。いくら咲夜が時間を操れるからって限度がある。この試合が終わるまでに戻ってこれるか、それ以前に弱点なんてあるのか……」
「心配するな、全部で10ターン、それまで耐えればいいんだ。それまでにきっとあいつは戻ってくる。きっと、な。」
――カンカンカン!
呼び出しのゴングと共にスキマが出現した。不安げな面々をよそに、レミリアはリングに続くスキマへと歩いていく。
「じゃあ、行ってくる。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
二つのスキマからレミリア・スカーレットと東風谷早苗がゆっくりと姿を現す。観客のボルテージは更に盛り上がる。
『さあ!この言葉弾幕トーナメントもいよいよ終盤!ある意味この組み合わせは予想外の組み合わせではないでしょうか!古明地さとりやナズーリンといった強豪達を倒して1位通過となったレミリア・スカーレット!八意永琳を怒らせるほどの隠された実力の持ち主、東風谷早苗!注目の1戦です!では……始めっ!!』
――準決勝 レミリア・スカーレット VS 東風谷 早苗
START!!
『ふふ、見ていたわよ東風谷早苗。あの八意永琳をあそこまで怒らせるとは、只者じゃないな。お前はいったいどんな方法で私を楽しませてくれるのかしら?』
――バシーン!!
まずはレミリアが軽くジャブを入れる。この台詞には相手に対する挑発という意味ももちろんあるものの、それよりもまず相手がどういった戦法を取るのかを見たいという意図がある。なにせ相手は2位通過といえどあの八意永琳を破った相手、下手したら古明地さとり以上に強敵である可能性も考えられる。
そして早苗がマイクを手にとった。レミリアは警戒する。
しかし、早苗の戦法はレミリアの予想を大きく上回るものであった。
『えー、あのババアなんて大した敵じゃなかったっていうかー、ちょー楽勝って感じ?私的にはもっと魂アゲしたいなー』
――バシーン!!
その早苗のマイクパフォーマンスを見て、永琳が破れた理由、そして早苗の戦法が瞬時に理解できた。女子高生的なしゃべり、通称ギャル語。堅物が多いこの幻想郷において、こういったチャラチャラしたしゃべり方はそれだけで相手をイラつかせるものだ。外の世界で現役女子高生だった早苗にしかとれない戦法であろう。
内心戦慄しつつ、レミリアはマイクを手に取った。とにかく咲夜が弱点を持って戻ってきてくれることを信じて、それまで頑張ってこの口撃に耐えなければならない。
『ふ、永琳と私を一緒にしてもらっては困る。しかしなんだそのしゃべり方は。頭の悪さがにじみ出ているぞ、悪いことは言わないから止めなさい。』
――バシーン!!
『はぁ?これが最先端のしゃべり方だし。みんなしゃべり方が古いんだよねー、仮にも女の子が「だぞ」とか言っちゃって、ちょーウケルんですけどー!!』
――バシーン!!
『私は紅魔館の主だ、こういう口調でないと周りからなめられてしまう。ただ巫女をやっていればいいお前とは環境が違うんだ!』
――バシーン!!
『レミちゃんみたいな幼女が偉ぶってもわらけるだけだしー。ていうか何?レミちゃん心はおばさんなの?500ぐらいいってるってウワサー、ちょーウケるー!』
――バシーン!!
『おばさんって言うな!だいたい、お前のそのしゃべり方、現在進行形でファンが減りつづけていると思うぞ!』
――バシーン!!
『レミちゃんマジGKY~!これからはこれが幻想郷の常識になるよかーん!』
――バシーン!!
(おほほほほほ、殴りてぇー!!)
レミリアは内心の攻撃衝動を抑えるのに必死であった。この人を小馬鹿にした態度、意味不明な言葉を乱発する言動、まさに永琳が言っていた通り『人の神経を逆撫でさせる天才』なのだろう。言っていることはまったく中身がないのに、ここまでの攻撃力をもっているとは!ある意味、古明地さとり以上の強敵である。
(……ん?)
と、そこでレミリアは気がついた。ポケットの中からカサリという音がしたのを。普段レミリアはポケットの中に何も入れてない。ということは……咲夜が何かを入れたのだ!
ポケットの中を確認すると、1枚の紙が入っていた。そこには明確に、早苗の『弱点』が書かれていたのだ。
(これだ……これなら一発KO間違い無し!よくやったわ、咲夜!)
内心で咲夜に感謝しつつ、自信満々にマイクを手に取り早苗に向き合う。
そして、この『弱点』を使って早苗の心をへし折る言葉で口撃した。
『女子高生時代は家で同人誌を描いていたくせに、ギャルぶってるんじゃない!シブヤではなくアキハバラにばかり行っていたくせに何がGKYだ、笑わせるな!早くその同人誌の続きを描いたらどうだ?「聖天使★サナエル」!!』
――バシーン!!
そのレミリアの言葉に会場はどよめいた。
え?早苗さんってギャルじゃなかったの?
え?早苗さんって実は……だったの?
え?ただ単にさっきまでのは無理してただけ?
そして早苗は、得意げだった顔が一瞬で崩れ、顔面蒼白になり冷や汗タラタラ、そして絶叫した。
「な、なぜそのことをおおおおおおおおお!!!!」
そのまま早苗は、泡を吹いて倒れてしまった。そしてコングが鳴り響き、レミリア・スカーレットの決勝戦進出が決定する。レミリアは咲夜に内心感謝しつつ、決めセリフをはいてスキマの中へと戻っていった。
「ふっ、こんな相手、私にとってはPKって感じー!」
ちなみに、レミリアは意味が分からず適当な言葉を言ったが、PKとはギャル語で「パンツ食い込んでる」の略らしい。なんて単語だ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
リングから帰ってきたレミリアを出迎えたのは、決勝戦進出を喜ぶ仲間達、そして今回最大の功労者である咲夜の姿だった。レミリアは咲夜に駆け寄り、苦労をねぎらう。
「ありがとう咲夜、あなたがいなかったら今回はヤバかったわね。」
「遅くなって申し訳ありません、よくぞ耐えてくれました。」
「どうして分かったの?早苗のアレが演技で本当はオタク女子だったってこと。」
「はい、『聖天使★サナエルのひ・み・つ(はぁと)』という日誌を見つけたからですわ。」
その名前を聞いて「うわぁ…」となる一同。早苗の名誉のためにフォローしておくと、もちろん現在ではそんな痛々しい日記はつけていない。むしろ早苗自身が黒歴史を隠すために押し入れの奥に封印しておいたのだ。問題なのはそれを引っ張りだしてきた咲夜である。
オタクの部屋を漁るという行為はやってはいけないことだ、仮に机の引き出しの中にぎっしり詰まった同人誌の山が他人に見つかった時は、エロ本よりも気まずい思いをすることになるだろう。これは決して誰かの体験談ではない。
「さて、残すは決勝だけだな。」
「えーっと、決勝の相手はさとりさんか幽香さんですね。今きっと試合中……」
――カンカンカン!!
美鈴の言葉を遮るように、コングが鳴り響いた。モニターを見ると、幽香が勝利していることが分かる。
「早っ!あのさとりをあんなに早くKOするなんて……」
「流石、USCの名は伊達じゃないわね。いける?レミィ。」
心配するフランドールとパチュリー。しかしレミリアは開き直っていた。
幽香が手ごわいのは分かっていたこと。もはや余計な小細工は必要ない、当たってぶつかるだけである。
「大丈夫さ、行ってくるよ。」
手を振りながらスキマへと入るレミリア。他の五人は、それを精一杯の声援で見送った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『さあ、いよいよ最終戦です!ここまで言葉の力で勝ちぬいてきた猛者二人!一体どんな戦いを見せてくれるのでしょうか!まずは赤コーナー!まさかの決勝進出!巧みな戦略で勝ちあがってきた永遠に幼き紅い月……レミリア・スカーレット!!』
アナウンスと同時にスキマからレミリアが現れる。もはやフランドールに泣かされてしゃがみガードをしていた頃のへたれみりあでは無い、カリスマ溢れる、紅魔館の主がそこにいた。
『そして青コーナー!知る人ぞ知るアルティメットサディスティッククリーチャー!この大会で何人もの心を折って泣かせてきた!フラワーマスター……風見幽香!!』
そして幽香もリングへと上がってくる。その顔は早速笑みに満ちており、これからが楽しみでしょうがないといった顔だ。しかしレミリアは、それを前にしても緊張することはなく、平常心を保っていた。
(さ~てどうしようかな、まったく対策を考えてない。まあ、とりあえずまだ使ってない小悪魔戦法でやってみるかな。)
小悪魔から教わった戦法……何を言われても心の中でヘコヘコしながら受け流す。
この方法なら相手からのダメージをかなり減らすことが可能だという。
『それでは第一回幻想郷言葉弾幕コンテスト……最終戦!始めっ!』
――決勝戦 レミリア・スカーレット VS 風見 幽香
START!!
幽香が笑顔を浮かべたままマイクを握った。そして、レミリアを睨みつけながら口を開く。
これだけでかなりのプレッシャーである。ナズーリンであればそのまま気絶してしまいそうなくらいのものだ。
『ふふ、あなたの館って、無能な奴ばかり集まってるわねぇ。』
ピクリ、とレミリアが反応する。怒りを覚えるがすぐに頭を振り小悪魔戦法に切りかえる。
(まったくその通り!みんなだらしないのよ!)
『門番は弱いくせにヘラヘラ笑ってるザル門番だし』
(ほんとほんと!もっと真面目にやんなさいよね。)
『メイド長はメイド長でただの人間。たいしたことはないわ。』
(まったくよ!胸のことを言うとすぐ怒るしね!)
『パチュリーだっけ?あんな本読んでるだけの穀潰し、どうして居るのかわからないわ。』
(パチェも少しは館のために働けってんだ!)
『その下についてるなんだっけ?名前も覚えてないわ、あんなザコ。』
(小悪魔か……ほんと、あいつは力が弱すぎるわね。スペルカードぐらい覚えなさいよ。)
『そして最悪なのが妹!あんな気が狂ってるヤツ、永遠に封印しておくべきだわ!』
(まったくだ!そうすれば私もいじめられないで済むし!)
紅魔館の面々を貶しつづける幽香。レミリアは小悪魔戦法にのっとり、それに心の中でヘコヘコと同意していく。
『とにかく、あなたの館ってほんと最低の人材しかいないわね!』
――バシーン!
最後にそう締めて、マイクを床に叩きつけた。
レミリアはまだ小悪魔戦法を続けようとする。
(まったく、そのとおり!みんなダメダメすぎるのよ!)
しかし……
(……なんて。)
それは、レミリアには無理なことであった。
(思ってるわけないでしょうが!)
レミリアはマイクを拾い、幽香に向き合う。
『幽香、私があなたに言いたいことは一つ。たった一つよ。』
レミリアはつかつかと歩き出し、幽香の目の前で立ち止まる。
そして、幽香に最後の言葉を投げかけた。
『優勝、おめでとう。』
――ドゴォ!!
次の瞬間、幽香は吹き飛んでいた。至近距離からの吸血鬼の力での全力パンチ。流石の幽香も、まさかこの大会で全力のパンチが飛んでくるとは思っていなかったのか、防御することもままならず素直に攻撃を食らってしまった。
そしてレミリアは幽香を見下ろし、更に続ける。
『私のことは何を言われようとも構わん。だが、私は仲間達を愛している。その仲間達をバカにされ、拳の一つも出せないのだったら……』
――バシーン!!
レミリアはマイクを思いっきり叩きつけた。そしてマイク越しではなく、自分の口だけで想いをぶつける。
「負けたほうがマシだ!!」
次の瞬間、会場はこの日一番の歓声に包まれた。それが勝者である幽香に向けられたものか、それともレミリアに向けられたものであるかは定かではない。しかしこの瞬間、会場が一番に盛り上がったということは紛れもない事実である。
その歓声を背に、レミリアは自分の控え室へと続くスキマへと帰っていった。
敗北したが、不思議と悔しさはなかった。自分のした行動に、後悔を感じていなかったから。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ごめん、負けちゃったよ。」
控え室に戻るなりレミリアは仲間達に謝罪した。あれだけ鍛えてもらったのに自ら優勝を手放してしまった、という思いがあったからだ。
しかし、仲間達にレミリアを責める者はいなかった。
「いえ、お嬢様の行動は正しかったと思っております。」
咲夜が居住まいを正して礼をすると
「お嬢様、私、ずっと付いていきますからね!」
美鈴は感動の涙を流しながら叫び、
「こんな私のために怒ってくれるなんて……ありがとうございます。」
小悪魔は深々とレミリアにお辞儀をして、
「……まあこの方がレミィらしいわね。私は責めないわ。」
パチュリーは照れ隠しなのか本で顔を隠したまま優しく労う。
「お姉様がやらなかったら私が乱入してぶっとばしてたよ!さすがお姉様!」
そしてフランドールが物騒なことを言いながらも、笑顔全開でレミリアを誉めた。
負けたのにも関わらず穏やかな空間となった控え室、そして笑顔の紅魔館の仲間達。この光景を見て、レミリアは自分の行動が間違ってなかったと改めて思う。あのままヘコヘコしつづけた場合、勝利してもきっとこんな和やかにはならなかっただろう。
「あ、あの~……」
そんな中、ドアから申し訳なさそうに顔を出す者が居た。リグル・ナイトバグ。蛍の妖怪である。機嫌のいいレミリアはリグルに部屋の中に入るように促し、話を聞く。
「珍しい顔ね。あなたも来ていたの?」
「は、はい。幽香さんのセコンドとして。特にやることは無かったですけど。」
「勝ち続けてたもんね。それで?」
「はい、幽香さん優勝したのに嬉しそうじゃなくて。なんだかレミリアさんに言ったことを気にしてるらしいんです。だからここに連れてきたんですよ……ほら幽香さん!」
リグルが手を引っぱると、幽香がもじもじしながら入ってきた。先ほどまでの傲慢な態度とは一転して、なにやらオドオドしてるように見える。
「べっ、べつに気にしてるとかそういうんじゃないわ!」
「仲間を貶したことを謝りたい……と言いたいようです。」
「ただ勝者として、敗北者の顔を見て笑ってやろうと思ってね!」
「勝負のために弱点をついただけで、本当にそう思ってたわけじゃない……と言いたいようです。」
「はっ、せいぜい負け犬らしく這いつくばっていればいいわ!」
「だから今日言ったことを本気にしないでね……?と言いたいそうです。」
「とてもそうは見えないけど。」
「幽香さんツンデレですから。」
幽香の言葉をリグルが翻訳していく。リグルの言葉が嘘か真かを判断する術はないが、わざわざこちらの控え室までやってきたことを考えればリグルの言葉の方が幽香の本心なのであろう、とレミリアは判断した。
「といってもねぇ、別に私は殴った時点でスッキリしたし……みんなは?」
レミリアは仲間達を見渡す。しかし全員首を横に振った。『気にしていない』という意思表示だ。レミリアが代表して殴ってくれたこと、そして今の幽香の態度を見て毒気を抜かれてしまったのだ。
このまま許そうと思ったレミリア、しかしここで、一つ妙案を思いつく。
「じゃあこうしようか。お前、まだ不完全燃焼じゃない?」
「……どういうこと?」
幽香がレミリアに尋ねる。レミリアはニヤリと得意げに笑った。
「私もまだ不完全燃焼なんだ。何せ今日はいろんなことを言われて、いろいろ溜まってるんだ。そろそろ派手に身体を動かしたい気分だ、お前もそうじゃないか?」
その言葉で幽香もレミリアの真意を察したらしく、いつもの調子に戻りニヤリと笑った。
「あら、言葉じゃ勝てないからこっちで、ってこと?こっちも私は負けないわよ。」
「ふふ、言ってろ。私の力を見せてやる。」
そして二人は、お互いにスキマへと入りリングへと上る。既に観客がいなくなったので、周りを心配することもない。全力で遊ぶことが出来る。
「さあ、始めるわよ!!」
「全力の、弾幕ごっこだ!!」
弾幕ごっこを始めた二人。その表情はお互いにとても生き生きしている。特にレミリアは、今日の中で一番楽しそうな顔をしている。
「いいなー、私も混ざりたい。」
「ダメですよ妹様。今日はお嬢様に譲りましょう。」
「うー、まあ頑張ったもんね、今日は。」
その戦いを控え室で眺める紅魔館の面子+リグル。フランドールは指を加えてうらやましそうに見ている。そして、咲夜は楽しそうなレミリアを見て思う。
(やはりお嬢様には、言葉弾幕は似合いませんね。)
何故なら、レミリアの出す本物の弾幕は、あんなにも美しいのだから。
了
このネタだけでSS一本書けるぞwwww
全部の戦いに見所があり、素晴らしいSSだったと思います。
それはさておき、言葉を使った戦いということで難しい題材でしたが、
若干見せ場が少ないキャラがいつつも、各々が個性を発揮していて楽しませてもらいました。
あとお嬢様がカッコ良すぎて鼻血でた。
ゆうかりんのツンデレは予想できたけどリグルの通訳w
早苗さんのギャル語はネタで良かった
他もうまく前編の特訓を生かした展開、そして決勝戦でのカリスマっぷり。
良くできたSSだったと思います。あ、でもひとつだけツッコミを
>これは決して誰かの体験談ではない。
ダウトー!!
すげえwwwネタと思われてた各人の戦略がちゃんと全部生きてたし。最後もきちんと締めてくれた。
早苗さんにマジイラッときたwww俺と対戦して10ラウンドまで行ったら蹴りが出ちまいそうだww
ナズーリンが可愛ええ……帰った後皆に慰められる様子を想像したらニヤニヤが止まらない。
リグルが素敵過ぎるwwゆうかりんに殴られないところを見るとあれで合ってるんだww
見所溢れる素晴らしいSSでした。
ただ一つ残念だったことは全試合が見たかったことです。お願いですから番外編で他の試合書いてくれませんか?
ところで俺の想像してたラストは決勝戦ドローになってPK合戦に突入することでした。
バトル物天下一武道界的な王道展開に少年マンガっぽい〆は最高に気持ちいい。
伏線はきっちり回収、幅のある試合展開、格好いい主人公と、文句のつけようもない出来。
あっという間に最後まで読んでしまいました。
キャラも魅力的で、臆病なナズやいろいろ残念な早苗さん、デレるとかわいい幽香
そしてなにより、仲間思いなお嬢様がとてもかっこよかったです
次回作も是非とも期待させていただきます
確かに前編のフラグはきっちり回収してる気がするけど、肩透かしにあった気分です
最後もいい話に落としたような感じだけど、結局それがやりたかったかと正直萎えた
とりあえず早苗戦は反則負けじゃないのか、ルール的に考えて
前編の時は先が楽しみだったのでこの点数で
『優勝、おめでとう。』の台詞は、マジで鳥肌が立ちました
信仰勢力→あながち間違いじゃない
自身満々
歓喜客
逆撫でさせる→逆撫でする
永遠に幼き紅い月→永遠に紅い幼き月だった気が(どっちでもいいのかも知れない)
お嬢様マジカリスマパネエって感じ?
っていうか古明地さとしwwwww
めっちゃウケるんですけどwwwww
マジ100点じゃ全然足りないしwwwww
なんちゃってw面白かったです!!!
オチもこれ以上ないって感じにまとまってましたし良い作品を有難う。
さとり戦がベストバウトだな、これはw
ただ、早苗さんの黒歴史が悲しすぎる…
幽香さん,ナーズリンかわいい!
とっても,あったかい気持ちになれました.
ありがとうございます.
面白かったです!
やっぱりおぜうさまは、やれば出来る子だったんだ。
素敵なおぜうさまでした。
レミリアかっけぇ!!
もちろん、余裕で100点ぶっこみましょう。
だが、言っておきます。
この100点は早苗さんのものだ!!
レミリアに久々にカリスマが感じられたw
さすがは「おぜう」と言いざるを得ない。
ここでリアルに飲んでいたお茶をふいてしまいました!!
沢山ちりばめられたギャグもよかったですが、
トーナメントの構成もすごく上手いと思いました。
この手の話は途中でダレることが多いですが、
すらすら読めて、とても面白かったです。
やっぱりお嬢様はこうでなきゃ
漢前なお嬢様に惚れたぜ。
おぜうがかっこよすぎて涙出たw
「ああ、どうせまたクールぶってるヘタレなキャラ付けされて泣き出したりするんだろうな」と読めてかなりゲンナリしてしまったのですが
それ以外は非常に面白かったです
ところで、さとり様が50までお寝しょとは。…ふぅ
余計な描写が無い分テンポは良くてよかった
だがもっと他の試合も見たかった!のも事実。これは困る。
ギャルぶってるオタクな早苗がかわいい。かわいすぎる。
ベストバウトはさとり戦一択かwレミリア様妄想力がすごすぎます
「亡き王女のためのセプテット」が流れる中での、全身の毛が逆立つようなシーンと弾幕...
それにまた会えた。ありがとう!!
誤字報告「フランドールは指を加えて」
全体的にコメディに仕上げつつも、キャラを貶めない形で最後まで持っていったのは素晴らしいです。が、
正直それゆえに後篇の展開がおおよそ読めてしまったというのが非常に残念です・・・・
さとりんと早苗さんが可愛かった分を加点して、70点で。
こういうハートフルな物を読みたかった!!
幻想郷らしいお話でした。面白かったです。
是非、他の人達の言葉弾幕をみてみたいですね。
幽香に泣かされた魔理沙かわいい
紅魔館万歳!
全部テレビからの受け売りの癖に少々スパイスを利かせて面白くして居るのは虫酸が走るね。
面白いじゃないかコンチクショー!
完全に没頭しちまった
…早苗さん戦にどうしても納得がいかなかったので75点といいたいけどないのでこの点数で。
しかし… ゆうかりん、通訳いないと会話できないのかぃw