八坂神奈子の一週間はオンバシラ占いから始まる。
――御柱占い。
それは守矢神社最大にして最強の神事。
なにしろ神様みずからがおこなうのであるからそりゃもう最強じゃ無いわけがない。
「ふんっ!!」
神奈子の気合いとともに極太の御柱が遥か天空へと放り投げられ、
その後、落下してきた御柱の刺さり具合や角度で占いをするのである。
これのせいで、毎週妖怪の山は震度3クラスで揺れるのだからその最強具合がわかるだろう。
「そ……そんな馬鹿な……」
その日の占いの結果は神奈子を驚愕させるに十分な内容だった。
神奈子の背筋に冷たいものが一筋流れる。
こんな事はここ数百年一度も無かった。
『今週のラッキーカラーは赤』
それが今週の占いの結果であった。
「というわけで、博麗さんちの霊夢さんには今週一週間は守矢神社の巫女さんをしてもらいます」
「どうも、博麗霊夢です」
簡単な説明のみで突然妖怪の山まで拉致されてきた霊夢だったが、意外なことにすんなり了解した。
(ここのところ妖怪退治の仕事が全然無くって、米の備蓄が切れてたのよね……)
早い話がタダ飯目当てである。
ちなみに米以外の食材もほとんど何もないのは言うまでもなかった。
「悪いけど早苗は代わりに一週間だけ博麗神社に住んでおくれ。こっちは諏訪子もいるし私達だけで大丈夫だから」
「はい。それでは行ってまいります」
簡単に纏めた身の回りの物だけを持って早苗は山を下りていった。
「あ、もしお賽銭入ってたら早苗が貰っちゃってもいいからねー(笑)」
と霊夢が早苗の背中に声をかける。
(まあここ数年そんなもの見たことないんだけどね……)
かくして一週間の巫女トレード生活が始まった。
守矢神社での生活で最初に待っていたのは宴会であった。
博麗の巫女がやってきたということで盛大な歓迎の宴が催されたのだ。
しかし、この宴会で霊夢はいきなりカルチャーショックを受けることになる。
神社に集まってきた妖怪の山に住む面々は、皆とても行儀がよかった。
飲んで、騒いで、歌って、吐いてといった博麗神社の宴会とは根本的に何かが違う。
盛り上がるべくして盛り上がり、だが羽目を外しすぎるものなど一人もいなく、
当然、酔って神社を破壊するような奴もいない。
楽しんだ後はみんなで仲良く御片付け。
作業を分担してワイワイと皆でやる後始末は、それ自体が宴会の延長のようでとても楽しいものだった。
「れいむ~、そこのお皿流しまで持ってきて~。諏訪子はテーブルの上拭いてちょうだい。
あ、悪いね椛、そこの射命丸持って帰ってくれるかい?」
霊夢一人に後始末を押し付けていつの間にか誰もいなくなる博麗神社とは大違いである。
宴会の後、すっかり日も暮れて皆が帰ったあとは入浴タイム。
「三人一緒に入るの? ここんち仲いいわね~」
「うちのお風呂は広いからね。霊夢も背中の流しっこしようよ」
諏訪子に袖を引っ張られて霊夢が案内された浴室は、言うだけあってとても広くて立派だった。
ライオンの口からお湯なんか出ちゃっている。
これなら三人どころか十人は入れそうね……。
自分の所とのあまりの格差に霊夢はもう驚きっぱなしである。
「それにしても……」
一足先に服を脱いだ神奈子が霊夢をマジマジと見つめる。
主に胸のあたりを。
「あんた貧層だねぇ。どれ、私が揉んで大きくしてやろうか?」
ワキワキと指の運動を始める。
「余計なお世話よ。あんたみたいにでかけりゃ良いってもんじゃないわ」
「ふ……いいのかいそんな事言って……守矢の風祝の胸は代々私が大きくしてきたんだよ」
ぷるんっ! と大きな胸を張る神奈子。
「ゴッドハンドカナの名は伊達じゃない!」
強引に霊夢に飛びかかる神奈子。
「ちょっ……ぁっ……そこはっ…………ちが……う……」
(どっちかっていうとゴッドフィンガーだね)
一人湯船で観戦しながら諏訪子はそう思った。
そして就寝。
奥の間に布団と枕が三組並んでいる。
「ホント仲いいのね、この一家……」
俗に言う川の字で寝るという奴だ。
左に神奈子。右に諏訪子。
どうやらいつもは早苗が真ん中で寝ているらしい。
「おやすみ……」
どうせ寝る前にもひと騒ぎ起こるのだろうと思っていた霊夢の予想はあっさりとハズレ、
二人の神様はやたら寝つきが良く、あっという間に寝てしまった。
(やっと静かになったわね)
霊夢は瞼を閉じて慌ただしかった今日一日を振り返った。
お客ということで神奈子と諏訪子なりにいろいろと気を使ってくれたのだろうが、
普段神社に一人で住んでいる霊夢にしてみれば、ここの暮らしはいささか賑やかすぎる。
この賑やかな生活が一週間続くのだ。
(でも…………たまには悪くないのかもね……)
寝相が悪くてお腹を出して寝ている諏訪子に布団を掛けなおしてやる。
明日は早く起きて神社の庭掃除でもしよう。
柄にもなくそんなことを思う霊夢だった。
「ぅぅ……んっ……」
神奈子がゴロンと寝返りをうった。
そして霊夢の後頭部に何か柔らかい物が押し付けられる。
――ふにっ。
「……」
――ふににっ。
(この感触……)
あまり知られてはいないが博麗霊夢は自分の胸には無頓着な割に、
他人のおっぱいには一家言ある人物であった。
特におっぱい枕に関しては幻想郷一の通を自称している。
博麗神社の宴会の時に、相手が酔い潰れて寝ている所を見計らっては、
幻想郷の名だたる胸の持ち主を枕として試してみるのが霊夢のひそかな楽しみだった。
永琳、美鈴、慧音、小町、勇儀、幽々子、藍、紫。
いずれも中々の胸の持ち主であり、それぞれ特色のあるおっぱいだったが、
神奈子のものはそれら全てのおっぱいと互角かそれ以上であった。
(まさに神のおっぱい! いや……そのまんまだけど……)
しばらく霊夢がその余韻を楽しんでいたときだった。
「ぁ~ぅ~……んにゅっ……」
今度は反対側から諏訪子が寝返りを打つ。
ぴとっ。
きゅっ。
すりすり。
コロコロと転がってきた諏訪子。
霊夢の胸のあたりにすっぽりと収まり、寝ぼけているのか抱きついてくる。
(うわぁ、これは……なんというか……ぷにぷにしてる……)
思わず霊夢も諏訪子の身体を包むように腕をまわしてしまう。
パジャマ越しの諏訪子の体温がとても心地良く感じられた。
後頭部に神奈子のふかふかおっぱい枕。
前には諏訪子ふにふに抱き枕。
(楽園は……ここにあった……)
フカフカとフニフニに挟まれて、霊夢はとても幸せな眠りに就いた。
一方、博麗神社。
時間は少し遡る。
博麗神社に着いた東風谷早苗は、食糧が全くない事に気がついた。
米も野菜もきれいに何もない。
あるのは酒と塩くらいだった。
「霊夢さんたら……きれいに片づけちゃって、几帳面な人ですねぇ」
仕方が無いので早苗は人里に買い物に行くことにした。
村人A「おい、聞いたか!」
村人B「ああ、もちろんさ。あの早苗さんが博麗神社に一週間滞在するらしいな」
噂は天狗の新聞より早く広まった。
早苗は人里ではちょっとしたアイドルである。
二人の神に仕える巫女でありながら自らも現人神と呼ばれるその神秘性。
幻想郷の常識にはまだ疎いが外界の知識は豊富という不思議なキャラクター。
そしてなにより、霊夢より少しだけ胸が大きかった。
普段は妖怪の山の上に住み、たまに里に来た時にしか会えないというレアさも人気の所以である。
村人A「妖怪の山は俺達じゃとても行くことはできない。だが博麗神社ならば……」
村人B「あのあたりに出る妖怪なら大人数で賑やかに行けば出てこねえ。熊とおんなじだ」
村人A「よし同士にも声を掛けよう。俺はちょっと銀行行ってお賽銭おろしてくる!」
村人B「ならば俺はウチの畑で採れた新鮮な野菜を持って行くぜ!」
早苗が居る一週間の間、博麗神社は連日多くの人で賑わったという。
次の日。
神奈子と諏訪子が目を覚ますと、なぜか霊夢が台所で半泣きだった。
「ど、どうしたの霊夢!」
「あの変な箱が……ピーって鳴ったから開けてみたら……ご……ご飯がっ」
霊夢が指さしたのは何の変哲もない鈍い銀色をした電子炊飯器だった。
守矢神社が外の世界にあったときから使っているものだ。
「ああ、昨日タイマーセットしといたんだ。最近やっと電気が来てね、
向こうで使ってた家電が動くようになったから楽でいいさね」
最近は間欠泉地下センターの完成によって幻想郷にも一部電気が通るようになっていた。
だが、電化製品自体があまり存在しない幻想郷では、
実際に電気を引いて使用しているのはここ守矢神社と河童の工房くらいである。
(それにしても……なんで泣いてるの?)
二人は知らなかった。
彼女が白いご飯を見るのが実に数カ月ぶりだということに。
加えて、昨晩の二人の神による一晩じっくりかけた癒し系サンドイッチ攻撃によって、
霊夢のちょっとすさんだ精神はすっかり浄化され、非常に繊細な状態になっていた。
「ほかほかっ!……ご飯がっ……ぅっ……ほかほかなのっ……」
「あらあら霊夢ったら、そんなことで泣くんじゃないよ。いっぱい食べていいんだからね」
「うんっ……ありがと……」
ズズズッと霊夢が鼻をすする。
「おかずは昨日の宴会の残り物だけどねっ」
諏訪子がラップに包んだ昨日の残り物を電子レンジの中に入れる。
ピーッ!!
「ひぃぃっ! おかずがっ……冷えたおかずがっ!!」
腰を抜かさんばかりに驚く霊夢。
なんだか霊夢のことが不憫に思えてきた神奈子と諏訪子は、
『今夜はスキヤキにしよう!』と共に心に誓うのであった。
そして一週間が過ぎ……。
「いやぁー帰りたくないのぉ!!カナちゃんちの子になるのぉぉぉぉぉぉ……」
霊夢の精神はすっかり幼児退行を起こしていた。
「ちょっと……これどうしてくれるのよ!」
暇つぶしに様子を見に来た八雲紫は変わり果てた霊夢を見て呆然とするしかなかった。
「いやぁ、ちょっとばかし甘やかしすぎちゃった」
申し訳なさそうに頭を掻く神奈子と諏訪子。
日に日に精神が子供っぽくなっていく霊夢を見て二人は眠っていた母性本能を刺激されまくり、
それはもう際限なく霊夢を甘やかした。
その結果がこれである。
「とにかく霊夢は連れて帰るから。もう二度と巫女を交換するのは禁止だからね」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ」
ダダをこねる霊夢をスキマに放りこむ紫。
「まったくもう……」
「紫は霊夢に厳しすぎるんじゃないの? その反動もあると思うけどなぁ」
「……霊夢がちゃんと元に戻ったら善処するわ」
そういって紫もその場から消えうせる。
反論しないところを見ると少しは思い当たる節があるのかもしれないと神奈子は思った。
「神奈子さまぁ~。諏訪子さまぁ~!」
神社に向かって誰かが飛んでくる。
紫とほぼ入れ違いで本来のこの神社の巫女である早苗が戻ってきたのだった。
なぜか、出かけたときの数倍の荷物を抱えている。
「ただいま戻りました」
「あ~お帰り早苗。すごい荷物だね……」
「ええ、里の人たちがなんか毎日色々持ってきてくれて……お賽銭もほらこんなにいっぱい」
抱えた包みの一つを早苗が地面に下ろすとジャラジャラと重そうな音がした。
「こんなに悪いとは思ったんですけど……貰っちゃってもいいって言ってたから全部持ってきちゃいました」
そのほかにもお菓子の包みやら新鮮な野菜やらを次々と取り出してみせる。
「こんなに色々貰えるなんて博麗神社って思ったより信仰がすごいんですねぇ。うちも負けてられません」
とても楽しそうに言う早苗とは逆に、神奈子と諏訪子は複雑な表情で顔を見合わせた。
(ねえ神奈子。この野菜少し霊夢のところに持って行ってあげようか……)
(……やめとこう、これ以上何かすると紫に怒られる……)
その後の霊夢がどうなったかというと……。
――ダンダンダン!
「アリス! いるんでしょ開けてよ! ご飯だけ、ご飯食べるだけだから!!」
霊夢は夕食時になると知人の家に押しかけるようになっていた。
そしてそのまま強引に一晩泊まっていくのだが、最近はもうすっかり手口が有名になってしまい、
みな食事時は居留守を使うようになっている。
扉の内側では、アリスが扉の鍵を強引に破られないように魔法まで使って抑えていた。
(ごめんね霊夢……かわいそうだけど紫からあなたの治療のために甘やかさないでっていわれてるのよ……)
守矢神社から帰ってきてからもう一週間。
いまのところ霊夢があまり回復しているようには見えない。
「開けてよぉ……ぬくもりが……ぬくもりがほしいのぉ!!」
今日も幻想郷の何処かで霊夢の絶叫がこだまする。
――御柱占い。
それは守矢神社最大にして最強の神事。
なにしろ神様みずからがおこなうのであるからそりゃもう最強じゃ無いわけがない。
「ふんっ!!」
神奈子の気合いとともに極太の御柱が遥か天空へと放り投げられ、
その後、落下してきた御柱の刺さり具合や角度で占いをするのである。
これのせいで、毎週妖怪の山は震度3クラスで揺れるのだからその最強具合がわかるだろう。
「そ……そんな馬鹿な……」
その日の占いの結果は神奈子を驚愕させるに十分な内容だった。
神奈子の背筋に冷たいものが一筋流れる。
こんな事はここ数百年一度も無かった。
『今週のラッキーカラーは赤』
それが今週の占いの結果であった。
「というわけで、博麗さんちの霊夢さんには今週一週間は守矢神社の巫女さんをしてもらいます」
「どうも、博麗霊夢です」
簡単な説明のみで突然妖怪の山まで拉致されてきた霊夢だったが、意外なことにすんなり了解した。
(ここのところ妖怪退治の仕事が全然無くって、米の備蓄が切れてたのよね……)
早い話がタダ飯目当てである。
ちなみに米以外の食材もほとんど何もないのは言うまでもなかった。
「悪いけど早苗は代わりに一週間だけ博麗神社に住んでおくれ。こっちは諏訪子もいるし私達だけで大丈夫だから」
「はい。それでは行ってまいります」
簡単に纏めた身の回りの物だけを持って早苗は山を下りていった。
「あ、もしお賽銭入ってたら早苗が貰っちゃってもいいからねー(笑)」
と霊夢が早苗の背中に声をかける。
(まあここ数年そんなもの見たことないんだけどね……)
かくして一週間の巫女トレード生活が始まった。
守矢神社での生活で最初に待っていたのは宴会であった。
博麗の巫女がやってきたということで盛大な歓迎の宴が催されたのだ。
しかし、この宴会で霊夢はいきなりカルチャーショックを受けることになる。
神社に集まってきた妖怪の山に住む面々は、皆とても行儀がよかった。
飲んで、騒いで、歌って、吐いてといった博麗神社の宴会とは根本的に何かが違う。
盛り上がるべくして盛り上がり、だが羽目を外しすぎるものなど一人もいなく、
当然、酔って神社を破壊するような奴もいない。
楽しんだ後はみんなで仲良く御片付け。
作業を分担してワイワイと皆でやる後始末は、それ自体が宴会の延長のようでとても楽しいものだった。
「れいむ~、そこのお皿流しまで持ってきて~。諏訪子はテーブルの上拭いてちょうだい。
あ、悪いね椛、そこの射命丸持って帰ってくれるかい?」
霊夢一人に後始末を押し付けていつの間にか誰もいなくなる博麗神社とは大違いである。
宴会の後、すっかり日も暮れて皆が帰ったあとは入浴タイム。
「三人一緒に入るの? ここんち仲いいわね~」
「うちのお風呂は広いからね。霊夢も背中の流しっこしようよ」
諏訪子に袖を引っ張られて霊夢が案内された浴室は、言うだけあってとても広くて立派だった。
ライオンの口からお湯なんか出ちゃっている。
これなら三人どころか十人は入れそうね……。
自分の所とのあまりの格差に霊夢はもう驚きっぱなしである。
「それにしても……」
一足先に服を脱いだ神奈子が霊夢をマジマジと見つめる。
主に胸のあたりを。
「あんた貧層だねぇ。どれ、私が揉んで大きくしてやろうか?」
ワキワキと指の運動を始める。
「余計なお世話よ。あんたみたいにでかけりゃ良いってもんじゃないわ」
「ふ……いいのかいそんな事言って……守矢の風祝の胸は代々私が大きくしてきたんだよ」
ぷるんっ! と大きな胸を張る神奈子。
「ゴッドハンドカナの名は伊達じゃない!」
強引に霊夢に飛びかかる神奈子。
「ちょっ……ぁっ……そこはっ…………ちが……う……」
(どっちかっていうとゴッドフィンガーだね)
一人湯船で観戦しながら諏訪子はそう思った。
そして就寝。
奥の間に布団と枕が三組並んでいる。
「ホント仲いいのね、この一家……」
俗に言う川の字で寝るという奴だ。
左に神奈子。右に諏訪子。
どうやらいつもは早苗が真ん中で寝ているらしい。
「おやすみ……」
どうせ寝る前にもひと騒ぎ起こるのだろうと思っていた霊夢の予想はあっさりとハズレ、
二人の神様はやたら寝つきが良く、あっという間に寝てしまった。
(やっと静かになったわね)
霊夢は瞼を閉じて慌ただしかった今日一日を振り返った。
お客ということで神奈子と諏訪子なりにいろいろと気を使ってくれたのだろうが、
普段神社に一人で住んでいる霊夢にしてみれば、ここの暮らしはいささか賑やかすぎる。
この賑やかな生活が一週間続くのだ。
(でも…………たまには悪くないのかもね……)
寝相が悪くてお腹を出して寝ている諏訪子に布団を掛けなおしてやる。
明日は早く起きて神社の庭掃除でもしよう。
柄にもなくそんなことを思う霊夢だった。
「ぅぅ……んっ……」
神奈子がゴロンと寝返りをうった。
そして霊夢の後頭部に何か柔らかい物が押し付けられる。
――ふにっ。
「……」
――ふににっ。
(この感触……)
あまり知られてはいないが博麗霊夢は自分の胸には無頓着な割に、
他人のおっぱいには一家言ある人物であった。
特におっぱい枕に関しては幻想郷一の通を自称している。
博麗神社の宴会の時に、相手が酔い潰れて寝ている所を見計らっては、
幻想郷の名だたる胸の持ち主を枕として試してみるのが霊夢のひそかな楽しみだった。
永琳、美鈴、慧音、小町、勇儀、幽々子、藍、紫。
いずれも中々の胸の持ち主であり、それぞれ特色のあるおっぱいだったが、
神奈子のものはそれら全てのおっぱいと互角かそれ以上であった。
(まさに神のおっぱい! いや……そのまんまだけど……)
しばらく霊夢がその余韻を楽しんでいたときだった。
「ぁ~ぅ~……んにゅっ……」
今度は反対側から諏訪子が寝返りを打つ。
ぴとっ。
きゅっ。
すりすり。
コロコロと転がってきた諏訪子。
霊夢の胸のあたりにすっぽりと収まり、寝ぼけているのか抱きついてくる。
(うわぁ、これは……なんというか……ぷにぷにしてる……)
思わず霊夢も諏訪子の身体を包むように腕をまわしてしまう。
パジャマ越しの諏訪子の体温がとても心地良く感じられた。
後頭部に神奈子のふかふかおっぱい枕。
前には諏訪子ふにふに抱き枕。
(楽園は……ここにあった……)
フカフカとフニフニに挟まれて、霊夢はとても幸せな眠りに就いた。
一方、博麗神社。
時間は少し遡る。
博麗神社に着いた東風谷早苗は、食糧が全くない事に気がついた。
米も野菜もきれいに何もない。
あるのは酒と塩くらいだった。
「霊夢さんたら……きれいに片づけちゃって、几帳面な人ですねぇ」
仕方が無いので早苗は人里に買い物に行くことにした。
村人A「おい、聞いたか!」
村人B「ああ、もちろんさ。あの早苗さんが博麗神社に一週間滞在するらしいな」
噂は天狗の新聞より早く広まった。
早苗は人里ではちょっとしたアイドルである。
二人の神に仕える巫女でありながら自らも現人神と呼ばれるその神秘性。
幻想郷の常識にはまだ疎いが外界の知識は豊富という不思議なキャラクター。
そしてなにより、霊夢より少しだけ胸が大きかった。
普段は妖怪の山の上に住み、たまに里に来た時にしか会えないというレアさも人気の所以である。
村人A「妖怪の山は俺達じゃとても行くことはできない。だが博麗神社ならば……」
村人B「あのあたりに出る妖怪なら大人数で賑やかに行けば出てこねえ。熊とおんなじだ」
村人A「よし同士にも声を掛けよう。俺はちょっと銀行行ってお賽銭おろしてくる!」
村人B「ならば俺はウチの畑で採れた新鮮な野菜を持って行くぜ!」
早苗が居る一週間の間、博麗神社は連日多くの人で賑わったという。
次の日。
神奈子と諏訪子が目を覚ますと、なぜか霊夢が台所で半泣きだった。
「ど、どうしたの霊夢!」
「あの変な箱が……ピーって鳴ったから開けてみたら……ご……ご飯がっ」
霊夢が指さしたのは何の変哲もない鈍い銀色をした電子炊飯器だった。
守矢神社が外の世界にあったときから使っているものだ。
「ああ、昨日タイマーセットしといたんだ。最近やっと電気が来てね、
向こうで使ってた家電が動くようになったから楽でいいさね」
最近は間欠泉地下センターの完成によって幻想郷にも一部電気が通るようになっていた。
だが、電化製品自体があまり存在しない幻想郷では、
実際に電気を引いて使用しているのはここ守矢神社と河童の工房くらいである。
(それにしても……なんで泣いてるの?)
二人は知らなかった。
彼女が白いご飯を見るのが実に数カ月ぶりだということに。
加えて、昨晩の二人の神による一晩じっくりかけた癒し系サンドイッチ攻撃によって、
霊夢のちょっとすさんだ精神はすっかり浄化され、非常に繊細な状態になっていた。
「ほかほかっ!……ご飯がっ……ぅっ……ほかほかなのっ……」
「あらあら霊夢ったら、そんなことで泣くんじゃないよ。いっぱい食べていいんだからね」
「うんっ……ありがと……」
ズズズッと霊夢が鼻をすする。
「おかずは昨日の宴会の残り物だけどねっ」
諏訪子がラップに包んだ昨日の残り物を電子レンジの中に入れる。
ピーッ!!
「ひぃぃっ! おかずがっ……冷えたおかずがっ!!」
腰を抜かさんばかりに驚く霊夢。
なんだか霊夢のことが不憫に思えてきた神奈子と諏訪子は、
『今夜はスキヤキにしよう!』と共に心に誓うのであった。
そして一週間が過ぎ……。
「いやぁー帰りたくないのぉ!!カナちゃんちの子になるのぉぉぉぉぉぉ……」
霊夢の精神はすっかり幼児退行を起こしていた。
「ちょっと……これどうしてくれるのよ!」
暇つぶしに様子を見に来た八雲紫は変わり果てた霊夢を見て呆然とするしかなかった。
「いやぁ、ちょっとばかし甘やかしすぎちゃった」
申し訳なさそうに頭を掻く神奈子と諏訪子。
日に日に精神が子供っぽくなっていく霊夢を見て二人は眠っていた母性本能を刺激されまくり、
それはもう際限なく霊夢を甘やかした。
その結果がこれである。
「とにかく霊夢は連れて帰るから。もう二度と巫女を交換するのは禁止だからね」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ」
ダダをこねる霊夢をスキマに放りこむ紫。
「まったくもう……」
「紫は霊夢に厳しすぎるんじゃないの? その反動もあると思うけどなぁ」
「……霊夢がちゃんと元に戻ったら善処するわ」
そういって紫もその場から消えうせる。
反論しないところを見ると少しは思い当たる節があるのかもしれないと神奈子は思った。
「神奈子さまぁ~。諏訪子さまぁ~!」
神社に向かって誰かが飛んでくる。
紫とほぼ入れ違いで本来のこの神社の巫女である早苗が戻ってきたのだった。
なぜか、出かけたときの数倍の荷物を抱えている。
「ただいま戻りました」
「あ~お帰り早苗。すごい荷物だね……」
「ええ、里の人たちがなんか毎日色々持ってきてくれて……お賽銭もほらこんなにいっぱい」
抱えた包みの一つを早苗が地面に下ろすとジャラジャラと重そうな音がした。
「こんなに悪いとは思ったんですけど……貰っちゃってもいいって言ってたから全部持ってきちゃいました」
そのほかにもお菓子の包みやら新鮮な野菜やらを次々と取り出してみせる。
「こんなに色々貰えるなんて博麗神社って思ったより信仰がすごいんですねぇ。うちも負けてられません」
とても楽しそうに言う早苗とは逆に、神奈子と諏訪子は複雑な表情で顔を見合わせた。
(ねえ神奈子。この野菜少し霊夢のところに持って行ってあげようか……)
(……やめとこう、これ以上何かすると紫に怒られる……)
その後の霊夢がどうなったかというと……。
――ダンダンダン!
「アリス! いるんでしょ開けてよ! ご飯だけ、ご飯食べるだけだから!!」
霊夢は夕食時になると知人の家に押しかけるようになっていた。
そしてそのまま強引に一晩泊まっていくのだが、最近はもうすっかり手口が有名になってしまい、
みな食事時は居留守を使うようになっている。
扉の内側では、アリスが扉の鍵を強引に破られないように魔法まで使って抑えていた。
(ごめんね霊夢……かわいそうだけど紫からあなたの治療のために甘やかさないでっていわれてるのよ……)
守矢神社から帰ってきてからもう一週間。
いまのところ霊夢があまり回復しているようには見えない。
「開けてよぉ……ぬくもりが……ぬくもりがほしいのぉ!!」
今日も幻想郷の何処かで霊夢の絶叫がこだまする。
ここで盛大に吹いた
さなぱいゆぎぱいえーりんぱい!!
パチェぱいらんぱいひじりぱい!!!
うどんぱいにおくうぱい!
ちゅうかなぱいぱいめーりんぱい!
公式巨乳だこまちぱい~!!
…さて、寝るか。
これはもうあれよ反則よよーじたいこうとか実にけしからんまったくもって。
守矢神社の子になっちゃっていいんじゃないかむしろそうすべき守矢霊夢になるべき。
博麗神社も早苗さんなら信仰いっぱいだし一切合財丸く収まるじゃないか。
故に、霊夢ちゃんかーわーいーいー!!
カナちゃんちの子になるのとかなんか子供のころ思い出しますね。
しかし霊夢が、霊夢がぁ!
なんという恐ろしさ
そしてこんなあまあまな環境にいながら結構しっかりしてる早苗さんは中々にすごいな
普通なら霊夢のように堕落してしまうだろうに
しかし、この後アリスがあまりにしつこい霊夢にしょうがないなとご飯を作ってあげる姿しか想像できなかったな
そして紫からこっ酷く叱られるアリス…
ああ……霊夢。自ら微かな可能性をも否定してしまって……不憫な。
霊夢はこれから俺が養ってあげるよ……
理想的睡眠スタイルだ。藍様のパイ×もふにも匹敵する力を持っていることだろう。
しかしだ霊夢、食材か手土産ぐらいは持ってけ?
見習いたい…!
やはり胸なのか。胸の大きさの差なのか。
こうですね、分かります! 紫は可愛い! これ絶対不変の真理!
>64
けんちゃぁぁぁぁん
霊夢の気持ちもわかるよスゴクw
霊夢に温もりを与えるのは誰だろうか。
バカモンっ!!幽香様が抜けてるではないですかっ!!wwwww
たまにはヘタレる霊夢もいいね。
早苗さんが幸せそうで僕は凄く満足です。
予想以上にポイント伸びてたのでビビってますw
>100
幽香様はこのメンバーに比べると若干控え目なおっぱいであってほしい。
美乳ですよ美乳。
それにしてもなんという俺ホイホイ。この短さで100点つけるなんてホント久しぶり。まずありえない。
あなたもなかなかのモリヤーですね。
宴会ならいいだろ!?紫さんよお!
>幽香様はこのメンバーに比べると若干控え目なおっぱいであってほしい。
>美乳ですよ美乳。
えーwwwwww D89が控えめですかwwwww
うちの倉の米(飼料用に残していたやつ)持って行ってやろうwww
そしてこれからも。
そういう立場なのか役目なのかはわかりませんが。
ぬくもりを求める彼女が切ないですね。
一回知ってしまっただけになおさら。
はい、どう見てもフラグです。本当にありがとう御座いました。
紫の胸、紫様は私の嫁です。
口がつる程にニヤニヤさせていただきましたww
乳ネタは苦手だが村人発言を高評価。
……まああってもいいんじゃないかとw
求聞史紀にも外から来た人間がそのまま里に住み着く事があるってありますし、
そういう人が今まで幻想郷になかった新商売始めたりするかもw
なにげに宴会の後片付けをきちんとする風神録メンバーに萌えた。みんないいこだなw
なんという現金な人たちw つか母性愛をそそられるほど荒んでたのか。
霊夢、これあげるから強く生きるんだよ つ⑩
>あ、悪いね椛、そこの射命丸持って帰ってくれるかい?」
椛によるお持ち帰りですねわかります。
おっぱい
あげればいいさ
皆魅力的に描写されてるなあ
特に守矢で癒されいむ