~~第1回 幻想郷 言葉弾幕トーナメント開催のお知らせ~~
寒気はまだまだ退きませんが、いかがお過ごしでしょうか。
皆様のご協力のおかげで、この幻想郷においてスペルカードを用いた弾幕ごっこという戦闘手法は広く浸透し、人間と妖怪達が平和に共存できる世界を維持することが出来ております。
しかし、果たして弾幕ごっことはスペルカードを用いている時、弾を出し合っている時だけを指すのでしょうか、私は違うと考えております。スペルカードを宣言し弾を出し合う前の言葉のやり取りもまた、弾幕ごっこに含まれているのではないでしょうか。弾幕の美しさを競い合うのは当たり前、これからの時代、その前に行われる言葉のやり取りの美しさも競い合う時代が来るのです。それを踏まえ、今回のコンテストを企画させていただきました。言葉弾幕とはどのようなものなのか、ルールはどのようなものであるのかなどの詳細は、以下をご覧ください。
・ 日時 ○月×日
・ 場所 博麗神社特設ステージ
・ 参加費 なし(ただし、霊夢に怒られたくなければお賽銭を用意すること)
・ 参加資格 参加自由。ただし、勢力を持っている者は1勢力につき1人まで
(同じ勢力内での八百長を防止するため。)
ルール
・ お互い交互に言葉だけを使って争う。ターン制で、最大で5回ずつの計10回。
・ 弾幕、直接攻撃は一切禁止。使用した時点で失格となる。
・ 相手が手を出す、泣く、極度に怒る、逃げ出す、などの行為をした時点でKO勝ちが決まる。お互い5ターン終了した時点で決まらなかった場合は審査員の判定に委ねられる。
・ ただ強い言葉で罵ればいいというものではない。私達は少女であるということを忘れずに、エレガントな言葉弾幕を展開するべし。判定でもそこが重要視される。
皆様のご参加、お待ちしております。
言葉弾幕トーナメント開催委員会
……というチラシが、射命丸文によってあらゆる場所へと配布された。冥界、永遠亭、彼岸、妖怪の山、人間の里。更には地底から新しく出来た命連寺、そして妖精達の住処にまで、幻想郷のありとあらゆる場所へこのチラシが広まった。ちなみに博麗神社にも当然配布されたが、霊夢は勝手に『博麗神社特設ステージ』などというものが作られることに大変憤慨したという。幻想郷では場所を使用するのに許可など必要ないのである。
そしてもちろん、この場所にも配布された。
「言葉弾幕……コンテスト?そんなものが開催されるの?」
レミリアは咲夜から渡されたチラシを見て、キョトンとした顔で尋ねた。今は紅魔館定例会議。紅魔館の主要メンバーが集まり今後の方針、運営方法、予算、今日の晩ごはんなどを話し合い、最終的にレミリアからの承諾を得るための会議である。参加者はレミリア、咲夜、美鈴、パチュリー、小悪魔、そして最近になって参加することが許されたフランドールの6人。会議と言っても議論になることはほとんどなく、せいぜい夕食にピーマンが入った料理を出すことに賛成派と反対派に分かれ多数決に発展する程度のものである。
(ちなみに、反対派はレミリア1人。特別ルール『レミリアは二票分』を適用しても5対2でピーマンの肉詰めが採決された。)
その会議で、咲夜がレミリアに提出したのがこの「言葉弾幕コンテスト」のチラシである。
「はい、あの烏天狗が幻想郷中に配っているようです。」
「ふーん……言葉弾幕って何かしら?このチラシだけじゃよくわからないわ。」
「ありていに言えば口喧嘩みたいなものね、きっと。」
レミリアの疑問に、横からパチュリーが答える。
「ふうん、つまり相手を言葉で罵ればいいってことか。」
「そういう単純なものでもないでしょう、言葉の美しさを競うのだから。むしろ皮肉の言い合いと表現したほうがいいかもしれないわね。私達が日頃よくやってるアレよ。」
「ああ、弾幕ごっこの前にやるアレな。」
ここ幻想郷で広く浸透している弾幕ごっこ。この弾幕ごっこをスタートする前にはお互いに言葉で牽制し合うのが普通になっていて、それは皮肉であったり挑発であったりする場合が多い。そうすることでこれから始まる弾幕ごっこへのモチベーションを上げるのだ。もちろん、そのやり取りで関係が悪化することはなく、皆弾幕ごっこのための言葉遊びと認識して楽しんでいる。レミリア自身も過去始めて霊夢と戦った時にはそのようなやり取りをした。『こんなにも月が紅いから本気で殺すわよ。』というセリフはレミリア自身東方projectの一番の名セリフだと思っている。(フランドールに同意を求めたら「そんなこと言ってたの?プッ。」と鼻で笑われて泣きそうになったのは内緒だ。)
そして今回の企画は、その弾幕ごっこの前哨戦である言葉遊びをメインに据えて争うというものなのである。
「どうするんですかお嬢様。紅魔館もこれに出場しますか?」
チラシをまじまじと眺めながら美鈴はレミリアに決断を求めた。レミリアの答えは最初から決まっている。
「当然、出場よ。言葉のレベルでも紅魔館は他を圧倒することを、幻想郷中に知らしめるチャンスだわ!」
レミリアは拳を振り上げたからかに宣言し、それに拍手と「おお~!さすがお嬢様!」という歓声がわきおこる。と言っても歓声をあげたのは咲夜だけであるし、拍手をしたのも美鈴と小悪魔だけであるのでまばらではあるのだが、大事なのは雰囲気である。
「とすると、まず決めなくちゃいけないのは出場者だよね。」
「そうですね~、『1勢力につき1人』という縛りがありますし、誰が適任でしょうか?」
フランドールが提議をし小悪魔が続く。この大会において同じ勢力内での二人以上の参加は認められていない。これは仮に同じ勢力同士の人物が争った場合に勝敗を示し合わすことを防ぐ意味もあれば、大会とは言え仲間を言葉で攻撃することを良しとしない者のための配慮でもある。
「ま、当然、このわた……」
レミリアが自分を自推しようとした。しかし、他の面々はレミリアそっちのけで議論を始める。
「う~ん、やっぱりパチュリー様ですかね?こういう勝負に強いのは。」
「でも私は喘息持ちだから、長期戦は持たないわ。妹様はどうかしら、最近めきめきとボキャブラリーを増やしているし、何より相手に与えるプレッシャーは段違いだわ。」
「私はまだ外の人との会話に慣れてないから……打たれ強さで言うなら、美鈴じゃない?何言われても平気そう。」
「でも肝心の攻めが出来ないですよ。咲夜さんならどちらもこなせるのでは?」
「多くしゃべるのは苦手よ、向いてないわ。この中で一番口がまわるのは小悪魔じゃないかしら。」
「私みたいな小物が出てもビビッて終わりですよ。大物相手にいつもの調子を出す自信はありませんねぇ。やっぱり……。」
やいのやいの。
誰を出すべきなのかで議論が白熱しているが、なかなか決まらないようだ。
ただの弾幕ごっこの大会であればレミリアかフランドールで即決であろうが、言葉の勝負となると話は違う。例えばスペルカードを持たない小悪魔であっても、口さえ回れば優勝できる可能性があるのだ。
ちなみに、この議論の中でレミリアの名前は一度も出てこなかった。
「ちょ、ちょっとちょっと!待ちなさいよあなた達!!」
レミリアは慌てて議論している5人の中に割って入る。
「何?お姉様。お姉様なら誰がいいと思う?」
「『いいと思う?』じゃないわよ!そもそも議論する必要なんてないわ。」
「へえ、じゃあレミィは誰を推薦するの?」
「決まってるじゃない!」
レミリアは親指で、自分自信を力強く指差した。
「紅魔館の代表なら、この私以外ありえないでしょ!!」
決まった、とレミリアは感じていた。しかし、他5人からは「ええ~?」という驚きの視線が向けられている。あの咲夜までも。
「え?何その反応。私じゃダメなの?」
反応の理由を問われ、咲夜と美鈴と小悪魔は申し訳なさそうに、パチュリーはいつも通りに、フランドールは面白そうにそれぞれ口を開く。
「だって、お嬢様はだいぶ短気ですし……」
「口より先に手が出るタイプですよね。」
「それでいて打たれ弱いですし。」
「すぐ泣くし。」
「なんていうか、一番この大会に向いてない人材だと思うよ。びっくりするぐらい。」
上から順に、咲夜、美鈴、小悪魔、パチュリー、フランドールである。確かにレミリア自身も心当たりはあるものの、ここまで鮮やかな五連コンボを決められると心も折れるというもの。
「ば、ば、バカな何を言っているのかしら!私は言葉も達者でしてよ!」
「もう動揺してどもってるし、言葉使いおかしいし。」
「涙目になってるわね。」
「な、なってへんわ!!」
動揺しまくりのレミリアを弄ぶフランドールとパチュリー。この光景は今この場所だけではなく紅魔館の日常においてしょっちゅう見られる光景である。最近では二人でいかにレミリアをいぢめるかこっそり話し合っているとかいないとか。ひどい妹と親友である。
しかし、レミリアは引くことは無かった。それには、ちゃんとした理由がある。
「で、でも!私はこの館の主なのよ!部下に紅魔館の名を背負わせて、私は後ろで観戦するなんて、出来るわけないじゃない!」
代表で出るということは、紅魔館の名を背負うことと同義である。この紅魔館という名は、他の面々が思っているよりもずっと重いものであるとレミリアは思っている。確かに遊びの大会と言ってしまえばそれまでだが、それでも初戦敗退などしたら「紅魔館は口下手揃い」といった不名誉な批評が舞うことだって考えられる。そんなプレッシャーを、部下や親友や愛する妹に背負わせたくない。そういったものを全て背負うのが、主である自分の役目であると考えているのだ。
そのレミリアの言葉に、咲夜や美鈴や小悪魔だけではなく、フランドールやパチュリーも少なからず心を動かされた。そして咲夜が口を開く。
「……では代表はお嬢様ということで。皆さん、いいですね?」
周りを見渡す咲夜。皆一様に頷き、否定の言葉を出す者はいなかった。
ほっと一息つこうとするレミリア。
「た・だ・し!!」
しかし、咲夜はそれを許さないかのように声のトーンをあげて言葉を続けた。
思わずビクッとなるレミリア。
「無礼を承知で申し上げますが、お嬢様はお世辞にも口が上手いとは言えません。このままでは確実に初戦で敗退してしまうでしょう。ですので、これから私達でお嬢様の特訓を行いたいと思います、覚悟は、いいですか?」
「え、ええ。どんと来いよ!」
覚悟なんてまったく出来ていなかったが、頷かないといけない空気だったのでおとなしく頷いた。
「じゃあまずは、ルールをしっかり把握すること、そして現状でのお嬢様の実力を測る意味で、模擬戦をやってみたいと思います。相手は誰がいいでしょうか?」
「え?そうね、じゃあ……」
どうせだったら勝てそうな人を選ぼうと、レミリアは周りを見渡した。
(う~ん、フランには勝てる気がしないし、パチェも無理ね。咲夜や美鈴は何言ってもさらりとかわされちゃいそうだし、小悪魔あたりなら、なんとか……)
ターゲットを小悪魔に絞って指名しようとした。しかし、
「はいはーい!私やるー!!」
フランドールの元気な声にその思惑は遮られた。
「では妹様でいいですね?審判は私がやります。」
「よーし、お姉様覚悟してねー!」
レミリアはフランドールの目を見た。めちゃくちゃ輝いている。
あれは姉を鍛えてあげるために自ら犠牲になる心優しき妹の目……などではなく、いい機会だから思いっきり姉をいぢめようというサディスティックな心に満ちた悪魔の目である。
(ああ、フラン、あなたのゆがんだ愛が重いわ!)
心の中で嘆きつつ、レミリア達は場所を移動した。
紅魔館ロビー。普段ならば客人を出迎えたりパーティーを楽しむ場所であるが、今回は特別にプロレスのようなリングが用意されていた。この上でマイクを握り相手に言葉で攻撃をした後、そのマイクを床に叩きつける。そこまで含めて1ターンが終了するのである。
「え?ていうか何このプロレスのマイクパフォーマンス。そういうノリなの?」
「そういうノリです。」
「あと何時の間にこんなもの用意したの?私こんなリング始めて見るわよ?」
「こんなこともあろうかと!!」
「……もういいわ。」
レミリアはツッコミをすることを諦めた。状況をすばやく受け入れることがスムーズな話の展開へと繋がるのである。ご都合主義と言ってはいけない。
「おねーさまー!早く上がってきなよー!」
フランドールは既にリングに上がりマイクを握っている。
相変わらずサディスティックな目がキラキラとしている。一体何を言われたものかわからないが、紅魔館の代表となる以上負けるわけにはいかない。レミリアもマイクを握ってリングにあがる。ちなみに、幻想郷のマイクはレミリアやフランドールのような力の強い者が握ったり投げ飛ばしたりしても壊れないように出来ている。幻想郷仕様なのだ。
「いくわよ、フラン。姉の力を見せてあげる。」
「あはは、楽しみだなー!」
そして、姉妹対決の火蓋が切って落とされた。
――模擬戦 レミリア・スカーレット VS フランドール・スカーレット
START!!
厳正なるスカーレットジャンケンの結果、レミリアが先攻に決まった。ちなみにスカーレットジャンケンというのは通常のジャンケンと異なり手が七通り存在する優雅さをウリにしたジャンケンであるが、その詳細はこの戦いにおいて無関係であるので省略させていただく。
『フラン、あなたこの前冷蔵庫のプリン食べたでしょう!何考えてるの!!』
――バシーン!!
レミリアがマイクを叩きつける。そのマイクを拾い、今度はフランドールがそのマイクを拾って反撃に出る。
『お姉様、館の主たるものがプリンごときで騒いでどうするの?ほっぺにプリンの食べカスついた主なんて恥ずかしくてしょうがないわ。』
――バシーン!!
投げつけられたマイクを再び拾うレミリア。勝負はこれの繰り返しである。お互い5回の計10回行われ、そこで勝敗が決まる。もちろん、その間に極度に怒ったり泣いたり相手に物理的攻撃をしかけたり弾幕を展開したらその時点で失格となるのだ。
そして、二人の勝負は続く。
『プ、プリンと主は関係ないでしょう!主はプリンを食べちゃいけないっていうの!?』
――バシーン!!
『あのねえ、別にプリン食べるなって言ってるわけじゃないの。プリンごときでムキになるなって言ってるんだよ。恥ずかしい。』
――バシーン!!
『で、でもあなたがプリンを食べたってことは事実じゃない!!』
――バシーン!!
『うん、食べたよ、それで?優しくてカリスマに溢れるお姉様なら優しく許してくれるよね?お、ね、え、さ、ま?』
――バシーン!!
『うー、うー、うううう!!』
レミリアはとうとうマイクを放棄して座りこんで頭を抱えてしまった。しゃがみガードである。
――カンカンカン!!
そしてゴングが鳴り響く。勝敗は決まった。フランドールのKO勝ちである。
「ふう……まあ初戦にしてはなかなかだったんじゃないかしら。」
何故か満足げに言うレミリア。しかしもちろん、こんな不甲斐ない試合を他の面々が許すはずもない。
「うわぁ……予想以上に弱いですね。」
咲夜の一言。いつも慕ってくれているメイドからのキツい言葉に、思わずハートがブレイクしてしまいそうになる。
「お姉様、あれじゃあダメだよ、自分から攻めるネタを出したのに、それで攻撃されて降伏したら。」
フランドールからもダメ出しの声。予想より早くレミリアが降伏してしまったためフランドールとしては不完全燃焼のようだ。
「だ、大丈夫ですって!これから特訓すれば強くなります!」
「そうそう、レミリア様は出来る子です!!」
必死にフォローに走る美鈴と小悪魔、しかし今はその言葉すらレミリアにはダメージとなる。小悪魔なんて完全に子供をあやすような目つきで見ている。
「まあ、これからしごくから問題ないわ。レミィ、あなたはまだ強くなれる。」
「ほ、本当に?」
「ええ。大事なのは戦略。弾幕ごっこと同じなのよ。だから、これから私達があなたに言葉での戦い方を伝授するわ。咲夜。」
「はい。」
パチュリーが咲夜に目配せすると、咲夜は大きな紙を広げた。そこには、これからのスケジュールが書かれていた。
『レミリアお嬢様、言葉弾幕強化メニュー』
1:00~ 小悪魔
2:00~ パチュリー
3:00~ フランドール
4:00~ 咲夜
5:00~ 美鈴
6:00~ 総合練習・総まとめ
「これは?」
「見た通りよ、あなたの強化メニュー。これからあなたには6時間、びっしり特訓を受けてもらうわ。」
「げぇ!?ろ、ろくじかん!?」
「当然よ、あなたまさか本番でしゃがみガードを炸裂させる気じゃないでしょうね?」
「そ、そんなわけないじゃない。」
「でも、このままだとまた炸裂するわ。だからこのメニューに耐えてもらうの。1人につき一時間、その間に私達はそれぞれが考える言葉弾幕の攻略法についてレッスンする。そして全て終わった後、最後に総まとめをして終了よ。これが終わった後なら、あなたは妹様にも勝てるようになっているかも。」
その言葉にピクリと反応するレミリア。
「……本当に強くなれるのかしら?」
「ええ、きっと。」
「……わかったわ。」
レミリアは、覚悟を決めた。そして、拳を強く握り締め宣言する。
「私はこれから特訓する!この大会で優勝するために!皆、私のために力を貸してくれ!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
1:00~ 小悪魔
まず始めに図書館へとやってきたレミリア。始めの2時間の特訓はここで行われる。
始めの一時間は小悪魔、そして後半の一時間はパチュリーからのレッスンを受ける。
テーブルに向かい合うように座るレミリアと小悪魔。そして小悪魔が口を開いた。
「えっと……まずはすいません、私なんかが偉そうにレッスンだなんて。」
「気にするな、私が頼んでやってもらっているんだ。お前は確かに力の弱い名無しの悪魔だが、私の大事な紅魔館の一員でもあるんだ、あまり自分を卑下するな。」
「ありがとうございます。そう言って頂けると嬉しいです。」
「それで?お前はどんなことを教えてくれるんだ?この……言葉弾幕について。」
「はい、私なりに考えるこの戦いでのテクニックを。」
「ほう……?」
レミリアの目がキラリと光る。テクニック、そういう響きにレミリアは弱かった。
「私はあまり他人に強く言えるタイプではないですから、教えられるのは相手の口撃の防御方です。いつもパチュリー様にいろいろと言われている私ですが、どうやって耐えているのか。その方法は!」
「その方法は!」
「ズバリ、『ヘコヘコしながら受け流す』!!」
「おお~!!」
思わずノリで拍手するレミリア。小悪魔も少し得意げだ。
今の言葉をパチュリーが聞いていたらどんなお仕置きがあるかわかったものではない。
「物事を穏便にすますためには謝っちゃうのが一番なんですよ、私のような力の弱い者なら特にね。相手が怒ってもさっと受け流してヘコヘコする、これ悪魔流処世術。」
「ふむ、しかし今回の大会で謝ってしまっては負けるんじゃないか?」
「はい、だから謝るのは心の中だけにしましょう。無理に全部言い返そうとすると、テンパってしまうんですよ、先ほどのお嬢様のように。」
「た、たしかに……」
「受け流すということ、謝るということ、普段お嬢様が行わないことだからこそ、私が教えるべきだと思いました。さあ、残り時間、一緒にヘコヘコ体操です!」
「ええ!?」
「さあ、身体を45度曲げて、とりあえずすいませんと謝る運動~!」
それから残りの時間、ひたすらレミリアと小悪魔は「すいません、すいません」と烈火のごとく謝りまくった。レミリアはこんなんで言葉弾幕が上手くなるのかと疑問に感じたが、とにかく今はひたすらに言われたことをやるべきだと考えていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2:00~ パチュリー
すいません運動から開放されたレミリアは、そのままパチュリーの元へと向かった。
ここから一時間はパチュリーのレッスンが始まる。
「……つまり、大事なのはボキャブラリー。言葉の多さよ。」
「多さ?」
「口喧嘩が弱い者は決まってボキャブラリーも貧困なの。逆に言えばボキャブラリーが豊富ならば何を言われても瞬時に返せるわ。」
「ほうほう、なるへそなるへそ。」
「また決着がつかなかくて判定に委ねられた時も、より多くの言葉を使っていたものが有利になるはず。ただ少ない言葉を叫んでいた者よりもね。」
「つまり、難しそうな言葉をそれっぽく言っておけば勝てるんだな!?」
「……まあ、ありていに言えばそういうこと。ということで、残りの時間はこの本を読みなさい。」
パチュリーは机の上に、分厚い本をドン!と5冊ほど置いた。全てが本とは思えないほどの厚みを持っていて、これで人を殴れば立派な凶器となりえる代物である。
「これは?」
「辞書。数多くの単語が記載されているわ。これを全部読んで、頭に叩き込みなさい。」
「うげええええ!?」
「じゃ、頑張ってね、私も本を読んでるから、うるさくしたらロイヤルフレアよ。」
「ちょっと、自分が楽したいだけじゃないのか!?手抜きレッスン反対!!」
ブーブーと文句を言ったが、既にパチュリーは読書モードに入ってしまって反応しなかった。仕方がないので、うーうーと唸りながらレミリアは残りの時間必死で辞書達と格闘した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3:00~ フランドール
辞書との格闘から開放されたレミリアは、フラフラになりながらもフランドールのいる地下室へとやってきた。まだ半分も終わっていないのに、既にだいぶ疲れを感じている。
図書館でのすいません体操→辞書のコンボはなかなかに強力であった。
「あ、いらっしゃいお姉様、お元気?」
「元気じゃないわね……だいぶキツかったわ。優しいフランならきっとレッスンも優しいわよね?」
「うん、私は優しいからお姉様のことを思ってビシバシ行くからね!」
ああ、分かっていたけどやっぱり、とレミリアは心の中で涙した。
「私が教えるのは、口下手なお姉様でもいかに相手の心をエグるか、の方法よ。」
「く、く、口下手ちゃうわ!……でも教えてちょうだい。」
「素直なお姉様も素敵よ。その方法はね……威圧。」
「威圧?」
「そう、ちょっと私の顔を見ててね?」
フランドールはそう言うと俯いた。レミリアは言われた通りにフランドールの顔を見つめる。そしてフランドールは顔をあげた。その表情は目を大きく見開き怒りの表情を見せ、普段の愛くるしい顔とは別物のように恐ろしい表情であった。そして極めつけの一言。
「ああ゛!?」
「ヒィッ!!」
あまりの恐ろしさに、再びしゃがみガード体制に入ってしまったレミリア。
そこから復帰するのに2分ほどかかった。
「……どう、わかった?つまりこういうこと。」
「……と~ってもよくわかったわ。私もそれをしろってことね?」
「そうそう、とにかくペースを握ったもん勝ちなんだから、これをしながら相手を口撃すればよっぽど鋼の心臓じゃない限りこっちのもんだよ。」
「なるほど……頭いいわね、フラン。」
「じゃあ、残りの時間は私と睨めっこね。」
「ええ!?」
結局その後、ひたすらにフランドールとのにらめっこが始まった。笑ったら負けよなんて生易しいものではなく、泣いたら負けよ、逃げたら負けよのレベルである。事実レミリアはフランドールの睨みに何度も泣き、何度も逃げ出したくなった。それでも、最後の方はフランドールと互角にやりあえるまで成長していたのである。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4:00~ 咲夜
「ではここからは、不肖、この私めがレッスンを努めさせて頂きます。」
咲夜が一礼する。レミリアはようやくほっと一息ついていた。この咲夜なら、すいません運動や辞書地獄、睨めっこ地獄といったひどい目にはあわされずに済むであろう。
「それで、咲夜はどんなことを教えてくれるの?」
「はい、私が考えるこの大会の必勝法、それは……相手の弱点を攻めることです。」
「なるほど、基本ね。」
「基本ではありますが、一番効果的でもあるのです。誰にだって触れられたら弱い部分、怒る部分は持っているもの。そこを的確に突くことが出来れば、一発KOも可能です。」
「うんうん、まったくその通りだわ。」
咲夜の言葉に感心しながら、まともなレッスン内容に安堵していた。このまま時が過ぎてくれれば、ようやく疲れずに終わるレッスンとなりそうだ。
「では、さっそく実践してみましょう。」
しかし穏やかな時間は、この咲夜の一言で終わりを告げる。
「じ、じっせん?」
「ええ、この私、十六夜咲夜の弱点を突いてみてください。」
弱点、と言われてレミリアは3秒でどこを突くべきか分かった。咲夜の弱点と言えば胸、これはもう信頼と実績を得た確かなものである。しかし、同時に恐れもある。本当にこの弱点を突いていいのだろうかと。このネタのお決まりは言った瞬間にナイフがサクッと刺さるという流れ。しかし、言えと言われたからには言うしかない。それに、まさか咲夜も自分にナイフを投げるなんてことはないと信じて。
「咲夜の貧乳!まな板!のーおっぱい!!」
――サクッ、サクサクッ!
非常に綺麗な音と共に、レミリアの頭にナイフが3本刺さった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
5:00~ 美鈴
ようやく咲夜から開放されたレミリアは、紅魔館の門前へとやってきた。
最後のレッスンがあるがその前に、ひたすらに美鈴に愚痴をこぼしまくる。
「もー咲夜ったら、あの後も計5本もナイフを投げたのよ、この私に!」
「あはは、まあそれだけお嬢様が的確に弱点を突いたってことですよ。」
「それ以前もひどいもんよ!ひたすら謝る練習したり辞書読まされたり睨めっこで泣かされたり!こんなんで本当に強くなれるのかしら?」
「いや、でも皆さん的確なレッスンをしてると思いますよ?お嬢様は自覚してないだけで、確実に言葉弾幕の腕は上がっているはずです。……さて!そろそろ始めますか!」
よっこいしょと立ちあがる美鈴。レミリアは思わず身構える。
「やっぱりやるの?あなたはどんなひどい仕打ちを私にするのかしら?」
「あはは、大丈夫ですよ、私のはたいして辛くないです。」
「咲夜もそう言っていたのよ、もう誰も信じられないわ。」
「ん~、本当なのになあ。むしろ楽しいものですよ?私が教える必勝法は……『妄想』です。」
「妄想?」
レミリアは思わず聞き返した。これだけ聞けば、まるで言葉弾幕とは関係のないように思える。
「ええ、例えば何かキツいことを言われたとしましょう。妹様に『ノーカリスマ!』といわれるとか。」
「ひぃ!」
「ですが、ここで考えてみてください。もし妹様がピエロの格好をしていたとしたら……?」
「……あれ、不思議とキツくないわ。むしろ面白い!」
「こういうことです。キツいことを言われている時に、相手を妄想で面白い姿に変えてしまう。そうすると面白さが先にきて、ダメージを少なくすることが出来ます。」
この方法は、美鈴が咲夜に怒られているときにいつもやっている手法であった。
咲夜が真面目に門番をしろと怒鳴る傍ら、美鈴は頭の中で咲夜にいろんなコスプレをさせて遊んでいるのだ、まったく真面目に門番をする気がないのである。
「じゃあ残りの時間はこれを練習しましょう!」
「それでいいの?なんか楽しそうだけど。」
「だから言ったじゃないですか、楽しいレッスンだって。じゃあ、ネタは誰にします?」
「咲夜でいきましょう。じゃあ私からね、えっと……チャイナ服の咲夜!」
「あはは!じゃあ……マフィア姿の咲夜さん!」
「ブフフッ!!それじゃあね……ナマケモノ咲夜!」
「ひーひー、くるしー!それじゃあ……」
この遊びは非常に盛り上がり、時間が経つのを忘れてしまった。
そして時間終了を告げに来た咲夜によって美鈴がナイフマンに変身するまで続いた。レミリアにもちょっと刺さった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
……そして、6時間が経過した。
「はぁ、はぁ……」
「うう、お姉様強いよー。」
最後に行われたレミリアVSフランドールの言葉弾幕ごっこ、そこでは先ほどとは見違えるぐらいの成長を見せたレミリアがフランドールと互角の戦いを繰り広げ、最後の判定にまでもつれこんだ。そこで、見事判定勝利を勝ち取ったのだ。
「おめでとうございます。お嬢様。」
「ええ、やったわ咲夜。」
「ですが気を抜かないでください。本番はあくまで、大会の日……」
「分かっているわ。もう、しゃがみガードなんか絶対にしない。私は、この大会で優勝してみせる、紅魔館の威信のために!!」
力強く宣言するレミリア。その瞳に先ほどまでの不安な表情はもうない。
皆も、成長したレミリアを信頼していた。必ず優勝してくれると。
トーナメントは翌日。博麗神社にて行われる。
後編に続く。
寒気はまだまだ退きませんが、いかがお過ごしでしょうか。
皆様のご協力のおかげで、この幻想郷においてスペルカードを用いた弾幕ごっこという戦闘手法は広く浸透し、人間と妖怪達が平和に共存できる世界を維持することが出来ております。
しかし、果たして弾幕ごっことはスペルカードを用いている時、弾を出し合っている時だけを指すのでしょうか、私は違うと考えております。スペルカードを宣言し弾を出し合う前の言葉のやり取りもまた、弾幕ごっこに含まれているのではないでしょうか。弾幕の美しさを競い合うのは当たり前、これからの時代、その前に行われる言葉のやり取りの美しさも競い合う時代が来るのです。それを踏まえ、今回のコンテストを企画させていただきました。言葉弾幕とはどのようなものなのか、ルールはどのようなものであるのかなどの詳細は、以下をご覧ください。
・ 日時 ○月×日
・ 場所 博麗神社特設ステージ
・ 参加費 なし(ただし、霊夢に怒られたくなければお賽銭を用意すること)
・ 参加資格 参加自由。ただし、勢力を持っている者は1勢力につき1人まで
(同じ勢力内での八百長を防止するため。)
ルール
・ お互い交互に言葉だけを使って争う。ターン制で、最大で5回ずつの計10回。
・ 弾幕、直接攻撃は一切禁止。使用した時点で失格となる。
・ 相手が手を出す、泣く、極度に怒る、逃げ出す、などの行為をした時点でKO勝ちが決まる。お互い5ターン終了した時点で決まらなかった場合は審査員の判定に委ねられる。
・ ただ強い言葉で罵ればいいというものではない。私達は少女であるということを忘れずに、エレガントな言葉弾幕を展開するべし。判定でもそこが重要視される。
皆様のご参加、お待ちしております。
言葉弾幕トーナメント開催委員会
……というチラシが、射命丸文によってあらゆる場所へと配布された。冥界、永遠亭、彼岸、妖怪の山、人間の里。更には地底から新しく出来た命連寺、そして妖精達の住処にまで、幻想郷のありとあらゆる場所へこのチラシが広まった。ちなみに博麗神社にも当然配布されたが、霊夢は勝手に『博麗神社特設ステージ』などというものが作られることに大変憤慨したという。幻想郷では場所を使用するのに許可など必要ないのである。
そしてもちろん、この場所にも配布された。
「言葉弾幕……コンテスト?そんなものが開催されるの?」
レミリアは咲夜から渡されたチラシを見て、キョトンとした顔で尋ねた。今は紅魔館定例会議。紅魔館の主要メンバーが集まり今後の方針、運営方法、予算、今日の晩ごはんなどを話し合い、最終的にレミリアからの承諾を得るための会議である。参加者はレミリア、咲夜、美鈴、パチュリー、小悪魔、そして最近になって参加することが許されたフランドールの6人。会議と言っても議論になることはほとんどなく、せいぜい夕食にピーマンが入った料理を出すことに賛成派と反対派に分かれ多数決に発展する程度のものである。
(ちなみに、反対派はレミリア1人。特別ルール『レミリアは二票分』を適用しても5対2でピーマンの肉詰めが採決された。)
その会議で、咲夜がレミリアに提出したのがこの「言葉弾幕コンテスト」のチラシである。
「はい、あの烏天狗が幻想郷中に配っているようです。」
「ふーん……言葉弾幕って何かしら?このチラシだけじゃよくわからないわ。」
「ありていに言えば口喧嘩みたいなものね、きっと。」
レミリアの疑問に、横からパチュリーが答える。
「ふうん、つまり相手を言葉で罵ればいいってことか。」
「そういう単純なものでもないでしょう、言葉の美しさを競うのだから。むしろ皮肉の言い合いと表現したほうがいいかもしれないわね。私達が日頃よくやってるアレよ。」
「ああ、弾幕ごっこの前にやるアレな。」
ここ幻想郷で広く浸透している弾幕ごっこ。この弾幕ごっこをスタートする前にはお互いに言葉で牽制し合うのが普通になっていて、それは皮肉であったり挑発であったりする場合が多い。そうすることでこれから始まる弾幕ごっこへのモチベーションを上げるのだ。もちろん、そのやり取りで関係が悪化することはなく、皆弾幕ごっこのための言葉遊びと認識して楽しんでいる。レミリア自身も過去始めて霊夢と戦った時にはそのようなやり取りをした。『こんなにも月が紅いから本気で殺すわよ。』というセリフはレミリア自身東方projectの一番の名セリフだと思っている。(フランドールに同意を求めたら「そんなこと言ってたの?プッ。」と鼻で笑われて泣きそうになったのは内緒だ。)
そして今回の企画は、その弾幕ごっこの前哨戦である言葉遊びをメインに据えて争うというものなのである。
「どうするんですかお嬢様。紅魔館もこれに出場しますか?」
チラシをまじまじと眺めながら美鈴はレミリアに決断を求めた。レミリアの答えは最初から決まっている。
「当然、出場よ。言葉のレベルでも紅魔館は他を圧倒することを、幻想郷中に知らしめるチャンスだわ!」
レミリアは拳を振り上げたからかに宣言し、それに拍手と「おお~!さすがお嬢様!」という歓声がわきおこる。と言っても歓声をあげたのは咲夜だけであるし、拍手をしたのも美鈴と小悪魔だけであるのでまばらではあるのだが、大事なのは雰囲気である。
「とすると、まず決めなくちゃいけないのは出場者だよね。」
「そうですね~、『1勢力につき1人』という縛りがありますし、誰が適任でしょうか?」
フランドールが提議をし小悪魔が続く。この大会において同じ勢力内での二人以上の参加は認められていない。これは仮に同じ勢力同士の人物が争った場合に勝敗を示し合わすことを防ぐ意味もあれば、大会とは言え仲間を言葉で攻撃することを良しとしない者のための配慮でもある。
「ま、当然、このわた……」
レミリアが自分を自推しようとした。しかし、他の面々はレミリアそっちのけで議論を始める。
「う~ん、やっぱりパチュリー様ですかね?こういう勝負に強いのは。」
「でも私は喘息持ちだから、長期戦は持たないわ。妹様はどうかしら、最近めきめきとボキャブラリーを増やしているし、何より相手に与えるプレッシャーは段違いだわ。」
「私はまだ外の人との会話に慣れてないから……打たれ強さで言うなら、美鈴じゃない?何言われても平気そう。」
「でも肝心の攻めが出来ないですよ。咲夜さんならどちらもこなせるのでは?」
「多くしゃべるのは苦手よ、向いてないわ。この中で一番口がまわるのは小悪魔じゃないかしら。」
「私みたいな小物が出てもビビッて終わりですよ。大物相手にいつもの調子を出す自信はありませんねぇ。やっぱり……。」
やいのやいの。
誰を出すべきなのかで議論が白熱しているが、なかなか決まらないようだ。
ただの弾幕ごっこの大会であればレミリアかフランドールで即決であろうが、言葉の勝負となると話は違う。例えばスペルカードを持たない小悪魔であっても、口さえ回れば優勝できる可能性があるのだ。
ちなみに、この議論の中でレミリアの名前は一度も出てこなかった。
「ちょ、ちょっとちょっと!待ちなさいよあなた達!!」
レミリアは慌てて議論している5人の中に割って入る。
「何?お姉様。お姉様なら誰がいいと思う?」
「『いいと思う?』じゃないわよ!そもそも議論する必要なんてないわ。」
「へえ、じゃあレミィは誰を推薦するの?」
「決まってるじゃない!」
レミリアは親指で、自分自信を力強く指差した。
「紅魔館の代表なら、この私以外ありえないでしょ!!」
決まった、とレミリアは感じていた。しかし、他5人からは「ええ~?」という驚きの視線が向けられている。あの咲夜までも。
「え?何その反応。私じゃダメなの?」
反応の理由を問われ、咲夜と美鈴と小悪魔は申し訳なさそうに、パチュリーはいつも通りに、フランドールは面白そうにそれぞれ口を開く。
「だって、お嬢様はだいぶ短気ですし……」
「口より先に手が出るタイプですよね。」
「それでいて打たれ弱いですし。」
「すぐ泣くし。」
「なんていうか、一番この大会に向いてない人材だと思うよ。びっくりするぐらい。」
上から順に、咲夜、美鈴、小悪魔、パチュリー、フランドールである。確かにレミリア自身も心当たりはあるものの、ここまで鮮やかな五連コンボを決められると心も折れるというもの。
「ば、ば、バカな何を言っているのかしら!私は言葉も達者でしてよ!」
「もう動揺してどもってるし、言葉使いおかしいし。」
「涙目になってるわね。」
「な、なってへんわ!!」
動揺しまくりのレミリアを弄ぶフランドールとパチュリー。この光景は今この場所だけではなく紅魔館の日常においてしょっちゅう見られる光景である。最近では二人でいかにレミリアをいぢめるかこっそり話し合っているとかいないとか。ひどい妹と親友である。
しかし、レミリアは引くことは無かった。それには、ちゃんとした理由がある。
「で、でも!私はこの館の主なのよ!部下に紅魔館の名を背負わせて、私は後ろで観戦するなんて、出来るわけないじゃない!」
代表で出るということは、紅魔館の名を背負うことと同義である。この紅魔館という名は、他の面々が思っているよりもずっと重いものであるとレミリアは思っている。確かに遊びの大会と言ってしまえばそれまでだが、それでも初戦敗退などしたら「紅魔館は口下手揃い」といった不名誉な批評が舞うことだって考えられる。そんなプレッシャーを、部下や親友や愛する妹に背負わせたくない。そういったものを全て背負うのが、主である自分の役目であると考えているのだ。
そのレミリアの言葉に、咲夜や美鈴や小悪魔だけではなく、フランドールやパチュリーも少なからず心を動かされた。そして咲夜が口を開く。
「……では代表はお嬢様ということで。皆さん、いいですね?」
周りを見渡す咲夜。皆一様に頷き、否定の言葉を出す者はいなかった。
ほっと一息つこうとするレミリア。
「た・だ・し!!」
しかし、咲夜はそれを許さないかのように声のトーンをあげて言葉を続けた。
思わずビクッとなるレミリア。
「無礼を承知で申し上げますが、お嬢様はお世辞にも口が上手いとは言えません。このままでは確実に初戦で敗退してしまうでしょう。ですので、これから私達でお嬢様の特訓を行いたいと思います、覚悟は、いいですか?」
「え、ええ。どんと来いよ!」
覚悟なんてまったく出来ていなかったが、頷かないといけない空気だったのでおとなしく頷いた。
「じゃあまずは、ルールをしっかり把握すること、そして現状でのお嬢様の実力を測る意味で、模擬戦をやってみたいと思います。相手は誰がいいでしょうか?」
「え?そうね、じゃあ……」
どうせだったら勝てそうな人を選ぼうと、レミリアは周りを見渡した。
(う~ん、フランには勝てる気がしないし、パチェも無理ね。咲夜や美鈴は何言ってもさらりとかわされちゃいそうだし、小悪魔あたりなら、なんとか……)
ターゲットを小悪魔に絞って指名しようとした。しかし、
「はいはーい!私やるー!!」
フランドールの元気な声にその思惑は遮られた。
「では妹様でいいですね?審判は私がやります。」
「よーし、お姉様覚悟してねー!」
レミリアはフランドールの目を見た。めちゃくちゃ輝いている。
あれは姉を鍛えてあげるために自ら犠牲になる心優しき妹の目……などではなく、いい機会だから思いっきり姉をいぢめようというサディスティックな心に満ちた悪魔の目である。
(ああ、フラン、あなたのゆがんだ愛が重いわ!)
心の中で嘆きつつ、レミリア達は場所を移動した。
紅魔館ロビー。普段ならば客人を出迎えたりパーティーを楽しむ場所であるが、今回は特別にプロレスのようなリングが用意されていた。この上でマイクを握り相手に言葉で攻撃をした後、そのマイクを床に叩きつける。そこまで含めて1ターンが終了するのである。
「え?ていうか何このプロレスのマイクパフォーマンス。そういうノリなの?」
「そういうノリです。」
「あと何時の間にこんなもの用意したの?私こんなリング始めて見るわよ?」
「こんなこともあろうかと!!」
「……もういいわ。」
レミリアはツッコミをすることを諦めた。状況をすばやく受け入れることがスムーズな話の展開へと繋がるのである。ご都合主義と言ってはいけない。
「おねーさまー!早く上がってきなよー!」
フランドールは既にリングに上がりマイクを握っている。
相変わらずサディスティックな目がキラキラとしている。一体何を言われたものかわからないが、紅魔館の代表となる以上負けるわけにはいかない。レミリアもマイクを握ってリングにあがる。ちなみに、幻想郷のマイクはレミリアやフランドールのような力の強い者が握ったり投げ飛ばしたりしても壊れないように出来ている。幻想郷仕様なのだ。
「いくわよ、フラン。姉の力を見せてあげる。」
「あはは、楽しみだなー!」
そして、姉妹対決の火蓋が切って落とされた。
――模擬戦 レミリア・スカーレット VS フランドール・スカーレット
START!!
厳正なるスカーレットジャンケンの結果、レミリアが先攻に決まった。ちなみにスカーレットジャンケンというのは通常のジャンケンと異なり手が七通り存在する優雅さをウリにしたジャンケンであるが、その詳細はこの戦いにおいて無関係であるので省略させていただく。
『フラン、あなたこの前冷蔵庫のプリン食べたでしょう!何考えてるの!!』
――バシーン!!
レミリアがマイクを叩きつける。そのマイクを拾い、今度はフランドールがそのマイクを拾って反撃に出る。
『お姉様、館の主たるものがプリンごときで騒いでどうするの?ほっぺにプリンの食べカスついた主なんて恥ずかしくてしょうがないわ。』
――バシーン!!
投げつけられたマイクを再び拾うレミリア。勝負はこれの繰り返しである。お互い5回の計10回行われ、そこで勝敗が決まる。もちろん、その間に極度に怒ったり泣いたり相手に物理的攻撃をしかけたり弾幕を展開したらその時点で失格となるのだ。
そして、二人の勝負は続く。
『プ、プリンと主は関係ないでしょう!主はプリンを食べちゃいけないっていうの!?』
――バシーン!!
『あのねえ、別にプリン食べるなって言ってるわけじゃないの。プリンごときでムキになるなって言ってるんだよ。恥ずかしい。』
――バシーン!!
『で、でもあなたがプリンを食べたってことは事実じゃない!!』
――バシーン!!
『うん、食べたよ、それで?優しくてカリスマに溢れるお姉様なら優しく許してくれるよね?お、ね、え、さ、ま?』
――バシーン!!
『うー、うー、うううう!!』
レミリアはとうとうマイクを放棄して座りこんで頭を抱えてしまった。しゃがみガードである。
――カンカンカン!!
そしてゴングが鳴り響く。勝敗は決まった。フランドールのKO勝ちである。
「ふう……まあ初戦にしてはなかなかだったんじゃないかしら。」
何故か満足げに言うレミリア。しかしもちろん、こんな不甲斐ない試合を他の面々が許すはずもない。
「うわぁ……予想以上に弱いですね。」
咲夜の一言。いつも慕ってくれているメイドからのキツい言葉に、思わずハートがブレイクしてしまいそうになる。
「お姉様、あれじゃあダメだよ、自分から攻めるネタを出したのに、それで攻撃されて降伏したら。」
フランドールからもダメ出しの声。予想より早くレミリアが降伏してしまったためフランドールとしては不完全燃焼のようだ。
「だ、大丈夫ですって!これから特訓すれば強くなります!」
「そうそう、レミリア様は出来る子です!!」
必死にフォローに走る美鈴と小悪魔、しかし今はその言葉すらレミリアにはダメージとなる。小悪魔なんて完全に子供をあやすような目つきで見ている。
「まあ、これからしごくから問題ないわ。レミィ、あなたはまだ強くなれる。」
「ほ、本当に?」
「ええ。大事なのは戦略。弾幕ごっこと同じなのよ。だから、これから私達があなたに言葉での戦い方を伝授するわ。咲夜。」
「はい。」
パチュリーが咲夜に目配せすると、咲夜は大きな紙を広げた。そこには、これからのスケジュールが書かれていた。
『レミリアお嬢様、言葉弾幕強化メニュー』
1:00~ 小悪魔
2:00~ パチュリー
3:00~ フランドール
4:00~ 咲夜
5:00~ 美鈴
6:00~ 総合練習・総まとめ
「これは?」
「見た通りよ、あなたの強化メニュー。これからあなたには6時間、びっしり特訓を受けてもらうわ。」
「げぇ!?ろ、ろくじかん!?」
「当然よ、あなたまさか本番でしゃがみガードを炸裂させる気じゃないでしょうね?」
「そ、そんなわけないじゃない。」
「でも、このままだとまた炸裂するわ。だからこのメニューに耐えてもらうの。1人につき一時間、その間に私達はそれぞれが考える言葉弾幕の攻略法についてレッスンする。そして全て終わった後、最後に総まとめをして終了よ。これが終わった後なら、あなたは妹様にも勝てるようになっているかも。」
その言葉にピクリと反応するレミリア。
「……本当に強くなれるのかしら?」
「ええ、きっと。」
「……わかったわ。」
レミリアは、覚悟を決めた。そして、拳を強く握り締め宣言する。
「私はこれから特訓する!この大会で優勝するために!皆、私のために力を貸してくれ!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~
1:00~ 小悪魔
まず始めに図書館へとやってきたレミリア。始めの2時間の特訓はここで行われる。
始めの一時間は小悪魔、そして後半の一時間はパチュリーからのレッスンを受ける。
テーブルに向かい合うように座るレミリアと小悪魔。そして小悪魔が口を開いた。
「えっと……まずはすいません、私なんかが偉そうにレッスンだなんて。」
「気にするな、私が頼んでやってもらっているんだ。お前は確かに力の弱い名無しの悪魔だが、私の大事な紅魔館の一員でもあるんだ、あまり自分を卑下するな。」
「ありがとうございます。そう言って頂けると嬉しいです。」
「それで?お前はどんなことを教えてくれるんだ?この……言葉弾幕について。」
「はい、私なりに考えるこの戦いでのテクニックを。」
「ほう……?」
レミリアの目がキラリと光る。テクニック、そういう響きにレミリアは弱かった。
「私はあまり他人に強く言えるタイプではないですから、教えられるのは相手の口撃の防御方です。いつもパチュリー様にいろいろと言われている私ですが、どうやって耐えているのか。その方法は!」
「その方法は!」
「ズバリ、『ヘコヘコしながら受け流す』!!」
「おお~!!」
思わずノリで拍手するレミリア。小悪魔も少し得意げだ。
今の言葉をパチュリーが聞いていたらどんなお仕置きがあるかわかったものではない。
「物事を穏便にすますためには謝っちゃうのが一番なんですよ、私のような力の弱い者なら特にね。相手が怒ってもさっと受け流してヘコヘコする、これ悪魔流処世術。」
「ふむ、しかし今回の大会で謝ってしまっては負けるんじゃないか?」
「はい、だから謝るのは心の中だけにしましょう。無理に全部言い返そうとすると、テンパってしまうんですよ、先ほどのお嬢様のように。」
「た、たしかに……」
「受け流すということ、謝るということ、普段お嬢様が行わないことだからこそ、私が教えるべきだと思いました。さあ、残り時間、一緒にヘコヘコ体操です!」
「ええ!?」
「さあ、身体を45度曲げて、とりあえずすいませんと謝る運動~!」
それから残りの時間、ひたすらレミリアと小悪魔は「すいません、すいません」と烈火のごとく謝りまくった。レミリアはこんなんで言葉弾幕が上手くなるのかと疑問に感じたが、とにかく今はひたすらに言われたことをやるべきだと考えていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2:00~ パチュリー
すいません運動から開放されたレミリアは、そのままパチュリーの元へと向かった。
ここから一時間はパチュリーのレッスンが始まる。
「……つまり、大事なのはボキャブラリー。言葉の多さよ。」
「多さ?」
「口喧嘩が弱い者は決まってボキャブラリーも貧困なの。逆に言えばボキャブラリーが豊富ならば何を言われても瞬時に返せるわ。」
「ほうほう、なるへそなるへそ。」
「また決着がつかなかくて判定に委ねられた時も、より多くの言葉を使っていたものが有利になるはず。ただ少ない言葉を叫んでいた者よりもね。」
「つまり、難しそうな言葉をそれっぽく言っておけば勝てるんだな!?」
「……まあ、ありていに言えばそういうこと。ということで、残りの時間はこの本を読みなさい。」
パチュリーは机の上に、分厚い本をドン!と5冊ほど置いた。全てが本とは思えないほどの厚みを持っていて、これで人を殴れば立派な凶器となりえる代物である。
「これは?」
「辞書。数多くの単語が記載されているわ。これを全部読んで、頭に叩き込みなさい。」
「うげええええ!?」
「じゃ、頑張ってね、私も本を読んでるから、うるさくしたらロイヤルフレアよ。」
「ちょっと、自分が楽したいだけじゃないのか!?手抜きレッスン反対!!」
ブーブーと文句を言ったが、既にパチュリーは読書モードに入ってしまって反応しなかった。仕方がないので、うーうーと唸りながらレミリアは残りの時間必死で辞書達と格闘した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3:00~ フランドール
辞書との格闘から開放されたレミリアは、フラフラになりながらもフランドールのいる地下室へとやってきた。まだ半分も終わっていないのに、既にだいぶ疲れを感じている。
図書館でのすいません体操→辞書のコンボはなかなかに強力であった。
「あ、いらっしゃいお姉様、お元気?」
「元気じゃないわね……だいぶキツかったわ。優しいフランならきっとレッスンも優しいわよね?」
「うん、私は優しいからお姉様のことを思ってビシバシ行くからね!」
ああ、分かっていたけどやっぱり、とレミリアは心の中で涙した。
「私が教えるのは、口下手なお姉様でもいかに相手の心をエグるか、の方法よ。」
「く、く、口下手ちゃうわ!……でも教えてちょうだい。」
「素直なお姉様も素敵よ。その方法はね……威圧。」
「威圧?」
「そう、ちょっと私の顔を見ててね?」
フランドールはそう言うと俯いた。レミリアは言われた通りにフランドールの顔を見つめる。そしてフランドールは顔をあげた。その表情は目を大きく見開き怒りの表情を見せ、普段の愛くるしい顔とは別物のように恐ろしい表情であった。そして極めつけの一言。
「ああ゛!?」
「ヒィッ!!」
あまりの恐ろしさに、再びしゃがみガード体制に入ってしまったレミリア。
そこから復帰するのに2分ほどかかった。
「……どう、わかった?つまりこういうこと。」
「……と~ってもよくわかったわ。私もそれをしろってことね?」
「そうそう、とにかくペースを握ったもん勝ちなんだから、これをしながら相手を口撃すればよっぽど鋼の心臓じゃない限りこっちのもんだよ。」
「なるほど……頭いいわね、フラン。」
「じゃあ、残りの時間は私と睨めっこね。」
「ええ!?」
結局その後、ひたすらにフランドールとのにらめっこが始まった。笑ったら負けよなんて生易しいものではなく、泣いたら負けよ、逃げたら負けよのレベルである。事実レミリアはフランドールの睨みに何度も泣き、何度も逃げ出したくなった。それでも、最後の方はフランドールと互角にやりあえるまで成長していたのである。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4:00~ 咲夜
「ではここからは、不肖、この私めがレッスンを努めさせて頂きます。」
咲夜が一礼する。レミリアはようやくほっと一息ついていた。この咲夜なら、すいません運動や辞書地獄、睨めっこ地獄といったひどい目にはあわされずに済むであろう。
「それで、咲夜はどんなことを教えてくれるの?」
「はい、私が考えるこの大会の必勝法、それは……相手の弱点を攻めることです。」
「なるほど、基本ね。」
「基本ではありますが、一番効果的でもあるのです。誰にだって触れられたら弱い部分、怒る部分は持っているもの。そこを的確に突くことが出来れば、一発KOも可能です。」
「うんうん、まったくその通りだわ。」
咲夜の言葉に感心しながら、まともなレッスン内容に安堵していた。このまま時が過ぎてくれれば、ようやく疲れずに終わるレッスンとなりそうだ。
「では、さっそく実践してみましょう。」
しかし穏やかな時間は、この咲夜の一言で終わりを告げる。
「じ、じっせん?」
「ええ、この私、十六夜咲夜の弱点を突いてみてください。」
弱点、と言われてレミリアは3秒でどこを突くべきか分かった。咲夜の弱点と言えば胸、これはもう信頼と実績を得た確かなものである。しかし、同時に恐れもある。本当にこの弱点を突いていいのだろうかと。このネタのお決まりは言った瞬間にナイフがサクッと刺さるという流れ。しかし、言えと言われたからには言うしかない。それに、まさか咲夜も自分にナイフを投げるなんてことはないと信じて。
「咲夜の貧乳!まな板!のーおっぱい!!」
――サクッ、サクサクッ!
非常に綺麗な音と共に、レミリアの頭にナイフが3本刺さった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
5:00~ 美鈴
ようやく咲夜から開放されたレミリアは、紅魔館の門前へとやってきた。
最後のレッスンがあるがその前に、ひたすらに美鈴に愚痴をこぼしまくる。
「もー咲夜ったら、あの後も計5本もナイフを投げたのよ、この私に!」
「あはは、まあそれだけお嬢様が的確に弱点を突いたってことですよ。」
「それ以前もひどいもんよ!ひたすら謝る練習したり辞書読まされたり睨めっこで泣かされたり!こんなんで本当に強くなれるのかしら?」
「いや、でも皆さん的確なレッスンをしてると思いますよ?お嬢様は自覚してないだけで、確実に言葉弾幕の腕は上がっているはずです。……さて!そろそろ始めますか!」
よっこいしょと立ちあがる美鈴。レミリアは思わず身構える。
「やっぱりやるの?あなたはどんなひどい仕打ちを私にするのかしら?」
「あはは、大丈夫ですよ、私のはたいして辛くないです。」
「咲夜もそう言っていたのよ、もう誰も信じられないわ。」
「ん~、本当なのになあ。むしろ楽しいものですよ?私が教える必勝法は……『妄想』です。」
「妄想?」
レミリアは思わず聞き返した。これだけ聞けば、まるで言葉弾幕とは関係のないように思える。
「ええ、例えば何かキツいことを言われたとしましょう。妹様に『ノーカリスマ!』といわれるとか。」
「ひぃ!」
「ですが、ここで考えてみてください。もし妹様がピエロの格好をしていたとしたら……?」
「……あれ、不思議とキツくないわ。むしろ面白い!」
「こういうことです。キツいことを言われている時に、相手を妄想で面白い姿に変えてしまう。そうすると面白さが先にきて、ダメージを少なくすることが出来ます。」
この方法は、美鈴が咲夜に怒られているときにいつもやっている手法であった。
咲夜が真面目に門番をしろと怒鳴る傍ら、美鈴は頭の中で咲夜にいろんなコスプレをさせて遊んでいるのだ、まったく真面目に門番をする気がないのである。
「じゃあ残りの時間はこれを練習しましょう!」
「それでいいの?なんか楽しそうだけど。」
「だから言ったじゃないですか、楽しいレッスンだって。じゃあ、ネタは誰にします?」
「咲夜でいきましょう。じゃあ私からね、えっと……チャイナ服の咲夜!」
「あはは!じゃあ……マフィア姿の咲夜さん!」
「ブフフッ!!それじゃあね……ナマケモノ咲夜!」
「ひーひー、くるしー!それじゃあ……」
この遊びは非常に盛り上がり、時間が経つのを忘れてしまった。
そして時間終了を告げに来た咲夜によって美鈴がナイフマンに変身するまで続いた。レミリアにもちょっと刺さった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
……そして、6時間が経過した。
「はぁ、はぁ……」
「うう、お姉様強いよー。」
最後に行われたレミリアVSフランドールの言葉弾幕ごっこ、そこでは先ほどとは見違えるぐらいの成長を見せたレミリアがフランドールと互角の戦いを繰り広げ、最後の判定にまでもつれこんだ。そこで、見事判定勝利を勝ち取ったのだ。
「おめでとうございます。お嬢様。」
「ええ、やったわ咲夜。」
「ですが気を抜かないでください。本番はあくまで、大会の日……」
「分かっているわ。もう、しゃがみガードなんか絶対にしない。私は、この大会で優勝してみせる、紅魔館の威信のために!!」
力強く宣言するレミリア。その瞳に先ほどまでの不安な表情はもうない。
皆も、成長したレミリアを信頼していた。必ず優勝してくれると。
トーナメントは翌日。博麗神社にて行われる。
後編に続く。
トーナメントにめっちゃ期待!
お嬢様はみんなにいじられてこそのお嬢様だと思います。
楽しみにまってます!
後編に期待してます
後編が凄く楽しみです!
かもしれないw
いぢめられるお嬢様は愛苦しい。
続き楽しみにしています。
がんばってください!
妙なところでチームワークのいい紅魔館は大好きだ。
咲夜さん出場しなくてよかったなwwwww誰と当たっても一回戦敗退だwwww
能力ありなら鈴仙とかさとりん無双
それはともかく、弾幕前の会話を素材にするという発想が面白いですね。
後編楽しみにしています
後編期待
後編楽しみにして待ってます
関係ないけど、レミリアの決め台詞もいいですが、幽々子の台詞も結構好きだったりします。
やはり、紅魔郷と妖々夢は最高だ。
後編に期待。
ものすごく欲しいぞ
果たしてどうなることやら楽しみです。
勿論、輝夜の特訓をw
ともかく、続きに期待。
後篇に期待w
後半のカリスマに期待
お嬢様最初こんなに弱いのに、少し特訓した程度で本選で勝ち抜けるんだろうかw
続きが気になるぜ。