※ このSSは、『フランお母さまの悲喜交々』の続編にあたる作品です。
前作が既読であることを前提にして、このSSは書かれております。
また、このSSは以下の要素を含みます。
オリキャラ・百合(ただし、今回は恋愛要素少なめです)・これはひどい
以上です。
以上の要素が苦手である、嫌悪感を感じるという方、
無在の作品に嫌悪感を感じるという方は、お手数ですが、
プラウザのバックで戻られるようにお願いいたします。
以上のことをご了承のうえ、作品をお楽しみください。
「――ねえ、お母さま、訊きたいことがあるんだけどいい?」
マリアがショートケーキを食べながら、レミリアに質問した。ほっぺたに白いクリームをつけたマリアの顔を見て、レミリアは微笑んだ。
「あら、何かしら、マリア?」
フランも同じように、マリアの口周りの白い化粧を見て、微笑を浮かべていた。「マリア様、ほっぺたにクリームがついていますわ」と咲夜が苦笑しながら、マリアの口元を拭う。咲夜にクリームをとってもらったマリアは70年とちょっと前の母親達に話しかけた。
「うん、ちょっと難しい質問なのかもしれないけど……」
「あら、難しい質問なんてないわ。何でもお母さまに聞きなさい」
そう言いながら、レミリアは紅茶をすすった。よく言うわ、とパチュリーが肩をすくめる。フランも苦笑して姉の自信満々な笑顔を見ながら、カップを口に運んでいた。
「じゃあ、大丈夫かな」と母親の言葉を聞き、マリアは吸血鬼特有の紅色の目に期待の光をこめる。そして、白い頬を希望に紅潮させて、興奮した声で母達に尋ねた。
「 赤ちゃんってどうやってできるの!? 」
姉妹兼夫婦(未来)の吸血鬼少女の二人は、口から勢いよく紅茶を噴出させた。
「わわっ!? ちょっと、お母さまたち、汚いよ~」
70年後からやってきた娘の慌てた声を聞きながら、紅魔館の主君である姉妹、レミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットは気管に入った紅茶を吐き出そうと、げほげほ咳き込んでいた。姉の背を、人間の瀟洒なメイド長である十六夜咲夜が、妹の背を、赤髪の門番長である紅美鈴がさすっていた。
「げほっ、ごほっ……いきなり何を訊くのかしら、マリア?」
ようやく息が落ち着いたレミリアは涙目で、未来の娘のほうを見やった。すると、今のレミリアやフランよりもさらに幼い容姿の吸血鬼の少女は、眉をハの字にして反論した。
「『いきなり』じゃないよ。ちゃんと最初に『訊いてもいい?』って尋ねたじゃない」
「……ああ、そうだったわね」
レミリアが気まずげにうなずくと、「そうだよ」と女の子はうなずいた。少女の首の動きに合わせて、母親譲りの蒼がかった銀髪のツインテールがふさりと爽やかな音を立てた。
少女の名は、マリア・スカーレットという。
偉大なる紅魔館の主君、レミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットの間に生まれた運命と破壊の仔。
歳が上の母親からその蒼く滑らかな銀髪と翼の漆黒を、下の母親から翼の異形と大いなる力を受け継いだ、吸血鬼の少女だった。
まあ、実際は決して大仰なものではなく――
マリアはショートケーキを美味しそうに頬張っていた。咲夜特製の甘いケーキを口に運びながら、どちらかというと垂れ目がちな穏やかそうな目元を、幸せそうに緩ませる――そんな人畜無害な女の子だった。
いつもどおりの平和な紅魔館の朝。
レミリアが妹のドロワーズを被り、フランがドロワーズデビルと化した姉を追いかけるにはまだ早い時間帯に、マリアはだいたい70年先の未来から現れた。今回はバッドレディスクランブルごっこをして、レミリアに突っ込むというようなこともなく、食堂に紅魔館のトップたちが集まっているとき、突然生じた空間の裂け目から歩いてやってきたのだった。
前回、紅魔館の屋上から、未来の八雲紫に連れて帰ってもらったときから、約一ヵ月後のことだ。
そして、マリアもまた未来に帰ったときから一ヵ月後のマリアであるらしい。今回のマリアも70年後のマリアだった。
もっとも、その一月前と後ではかなり違うのであるが。
今日のマリアは先月お邪魔したときのお礼を言いに来たのだという。姉妹も従者達も、この未来から再びやってきた少女を温かく歓迎した。
マリアはそのまま紅魔館の皆と朝食をともにし、第2遊戯室で弾幕ごっこをしてこの時代の母親達と遊び、その後のお風呂で上の母親と下の母親の激しい攻防を見、今、こうしてお昼ご飯前のお茶を飲んでいるところであった。
そんなときにマリアは疑問を口にしたのだった。
『赤ちゃんってどうやってできるの!?』、と。
「どうやってってねぇ……」
レミリアは淹れなおしてもらった紅茶を口に運びながら、うめくように言った。レミリアはぎこちなくマリアに笑いかける。
「えっと、マリアは未来のお母さまたちには尋ねなかったの?」
不思議な気持ちになりながら、レミリアは尋ねた。何か問題をただ先延ばしにしている感じがする。それこそ70年後の自分の首を絞めているようなものなのだから。まあ、70年も先の自分なんて別人も同然だろう。未来の自分に対して少し罪悪感を感じながらも、レミリアは未来の娘にそう尋ねた。
すると、マリアは頬を膨らませて言った。
「訊いたよ。でも、お母さまたちは決まってこう言うの。『マリアにはちょっと早すぎるわ』って」
うん、まあそうだろう、とレミリアはうなずいた。自分達よりもさらに年下に見えるこのマリアでは明らかに早すぎる気がした。まあ、マリアは実年齢15歳だから、人間の少年少女ならとっくに知っていてもおかしくはないのだが、吸血鬼にとって15歳はかなり幼い年齢である。マリアの精神年齢は人間に換算して、7、8歳くらいなものだろう。いくら何でもまだ早すぎる気がする。
だが、マリアは納得がいかないと眉をしかめていた。
「でも、気になるもの。ことりちゃんに訊いても、知らないって言うし。ほかの友達に聞いても、わからないって言うし」
『ことりちゃん』とは、マリアの友達だろう。一番先に名前が出てきたことから、かなり親しい友達だということがわかった。ほかにも友達がいるということから、マリアが多くの友達に囲まれているだろうことが想像できた。未来の母親であるレミリアとフランは嬉しい気持ちになって、自然と頬を緩ませるのだった。
マリアは口を尖らせながら続けた。
「慧音先生や妹紅先生に訊いても、『お母さんたちに訊きなさい』って言って、教えてくれないんだよ」
どうやら、マリアを教えている教師は寺子屋の先生をしていた上白沢慧音や、竹林の案内人であった藤原妹紅らしい。どのようないきさつがあったかは知らないが、寺子屋は70年後の未来では、『学校』という教育機関になっているという。そこでは人間の子供だけではなく、妖怪の子供も彼女らの授業を受けているそうだ。人間と妖怪が同じ場所で勉学に励むなど聞いたこともなかった。まあ、その学校が始まってからまだ十年も経っていないとマリアは言っていたから、実験的な意味合いもあるのだろう。マリアの様子からすると、なかなか上手くいっているようだった。それにしても、あのワーハクタクと蓬莱人も、親に仕事をおしつけるとはいい度胸だ。最近は、性教育の重要性が叫ばれている時代なのに。まあ、無理だとは思うけどさ、とレミリアとフランは二人に同情のため息をつくことしかできなかった。
「というわけで、お母さまたちに訊くしかないんだよ。ねえ、赤ちゃんってどうやって生まれるの?」
そう言って、マリアは二人の母親に真剣な眼差しを向けた。それは『スカーレットデビル』の娘にふさわしい、強い意志のこもった瞳だった。こんなことで、そんな威圧感発揮しないでいいよ……と姉妹兼母親(未来)の二人はげんなりしながら、どうやって答えるべきかと必死で考えていた。
悩める姉妹は目でコンタクトをとり合った。フランの目が、マリアに無理に嘘を教えるのは気が引けるよ、と言っていた。レミリアも目を伏せて、それに頷く。間違った知識を娘に植え付けるのは、やはり問題じゃないかと思っていた。だからといって、正しい知識を教えるのも早すぎる。まあ、教えたところでちゃんと理解できるか、というと、理解できないような気もするのだが。しかし、その知識はマリアにきっとそこそこの興味を持たせることだろう。それで早すぎる興味をもたれてもねえ……と、目だけでレミリアは妹に問いかける。フランも、そうだね……親の勝手かもしれないけど、やっぱり早すぎるんじゃないかなあ……と目配せで答えた。もうこれは、あれしかないわね、とレミリアがフランに鋭い視線を送った。それにゆっくりとフランは瞼を閉じて見せる。その瞬きには、皆には申し訳ないけど、ね……という意味が込められていた。
「ねえ、咲夜、」
レミリアは傍らのメイド長に呼びかける。ぴくり、と咲夜の眉が跳ね上がる。突然、レミリアに呼びかけられて、咲夜は驚いたようだった。むしろ、このシチュエーションにおいて、この程度のリアクションで済ませることができたのはさすが瀟洒なメイド長だというところだった。
レミリアは若干口をひきつらせ、瀟洒なメイド長に悪いと思いながら、尋ねた。
「咲夜は、子供ってどうやってできる、と思う?」
咲夜が一瞬、沈黙した。咲夜の澄んだ湖のような蒼い目が、レミリアの紅い目に向けられていた。そこで私に振るんですか、お嬢様――ええ、悪いけど、適当にごまかしてちょうだい、と主従は目だけでコミュニケーションをとる。咲夜は目だけで、はあ、とため息をついた。……わかりました、努力してみます、と咲夜は目を光らせた。ごめん、咲夜、とレミリアは目礼する。
これが姉妹の選んだ解決法だった。
とにかく、皆にいろいろ意見を聞いて、はぐらかしてしまおう、と。
親としては何とも情けなかったが、これが姉妹にとって現在考えられる最高の案だった。
一秒未満のアイコンタクトの後、咲夜が話し始めた。
「そうですね……子供はキャベツ畑で拾うことができる、と聞いております」
ベタな作り話だった。
「他にも、コウノトリが運んでくることもあるそうです」
これまたベタベタな嘘だったが、マリアは訝しがることもなく、むむぅ、とうなった。
「赤ちゃんの作り方って、いくつかあるの?」
「あるのかもしれません。本当を言うと、咲夜にもよくわからないのです。私は子供をつくったことがありませんから」
「うーん、そうだよね。咲夜さまの子供に、私会ったことないもんね……」
マリアがそう言って、眉をハの字にする。ちなみにマリアは咲夜のことを『さま』付けで呼んでいた(どうやらマリアの時代では咲夜は神様になっているらしい)。おお、もしかしたら、このまま信じてくれるかもしれない、と姉妹は思っていた。咲夜はさらにマリアを納得させるように言う。
「生まれてくる子供も様々なのですから、生まれ方もそれぞれでいいのではないでしょうか?」
咲夜の言葉はそこそこ説得力があるように思えた。言われてみれば、どうして子供の生まれ方が一つしかないのかは疑問である。まして、子供は一人一人姿かたちが異なっているのに、どうして、同じ生まれ方でなければならないのか、と問われれば、はっきりとした答えはなかなか言えないのだった。
咲夜の言葉に、マリアはうーんと難しそうな顔をしていた。どうやら、マリアは咲夜の言っていることを信じているらしい。ちょっと意外だったが、けっこう簡単にマリアを誤魔化すことができるかもしれなかった。まあ、逆にあまりにも素直すぎて心配になることがないでもなかったが、とりあえず、この場は収めることができるかもしれなかった。
だが、やはり、マリアはこの程度では終わらせてくれなかった。
「じゃあ、私はどうやって生まれてきたんだろう?」
マリアは首を捻りながら言った。
「私はキャベツ畑で拾われたのかな? それともコウノトリさんが運んできてくれたのかなあ?」
咲夜は「さあ、どちらでしょうね……」と曖昧な笑みを浮かべた。瀟洒なメイド長も、さすがにこれには答えられないようだ。そこで、今まで聞き手にばかり回っていた美鈴が言った。
「橋の下から拾ってくるというのもありますしね」
ちょ、おま……と、美鈴とマリア、それから小悪魔(今まで存在が目立ってなかっただけで、彼女もこの場にいた)以外の全員が思う。よりによって、そんなこと教えるな、と。だが、マリアはこの言葉に予想外の反応を見せた。マリアは怒ったような顔をしていた。
「あー、それ知ってるよ。何年か前に、レミリアお母さまにそう言われていじめられたことあるもん」
とたんに全員の視線がレミリアに集中した。レミリアは思わず顔をそむける。特にフランの呆れたような視線が痛い。マリアはぷんぷん怒りながら言った。
「レミリアお母さまに、『あなたは橋の下に捨てられていて拾ってきた子なの。実はマリアは私たちの本当の子供じゃないのよ』って言われて、私泣かされたんだもん。そのあと、フランお母さまがレミリアお母さまを怒ってくれたからいいけど」
「悲しかったんだからね」と、マリアは唇を尖らせた。「お姉さま……」と、フランがため息をつく。レミリアも、現在そして過去にマリアをいじめたことがあるわけではないのだが、ああ、自分だったらやりかねないな、と頷いていた。そして、たぶん未来で間違いなくやるんだろう。こんな可愛い娘、からかわないほうがおかしいとレミリアは思っていた。「……お母さま、反省してないでしょ」と、マリアがむーっとした顔で指摘した。どうやらにやけていたらしい。レミリアは「ごめんなさい」と頭を下げた。
「ああ、話がずれちゃったや。で、咲夜さま。私はどうやって生まれてきたんだろう?」
再び、マリアが咲夜に尋ねる。咲夜は相変わらず「さあ、どうでしょうね」と曖昧に微笑んでいた。「むむむ……」とマリアが首をひねる。このままマリアが諦めてくれればなあ、とレミリアとフランは願っていた。しかし、マリアは姉妹にとって都合の悪いことを思い出してしまった。
「そうだ。私の妹が今、フランお母さまのお腹のなかにいるんだった」
「というか、私もフランお母さまのお腹のなかから生まれてきたんだった」とマリアが言う。今から70年後、どうやら、フランは姉妹の第2子を身籠っているらしい。そのことを聞いて、フランの顔が少し赤くなった。
「ということは、キャベツ畑で拾われた後とか、コウノトリさんが運んできた後、私はフランお母さまのお腹のなかに入れられたのかなあ」
マリアが首をかしげる。「それって、なんか二度手間じゃない?」と怪訝な顔をする。咲夜も困ったように微笑んで首をかしげた。……いいかげん、論理的に無理が出てきたようだ。いや、ここからも、展開しだいによっては矛盾なく論を組み立てることができるかもしれないが、マリアを納得させるには難しいように思えた。
――第二陣を送り込むしかなさそうね。
レミリアがパチュリーに目を向ける。予想していたのか、レミリアが振り返った瞬間に、親友の魔女は紫水晶の瞳で紅玉の視線を受け止めていた。……私にマリアを誤魔化せるような説明をしろ、と? と、パチュリーが細めた目で静かに問いかける。レミリアが目だけで、ぺこりぺこりと頭を下げた。パチェだったら、なんとかしてくれるでしょ? と、紅い瞳が訴えていた。まったく、自分の子供のことなんだから、自分で解決しなさいよ……と、パチュリーは視線だけで毒づいていたが、本当は世話焼きな彼女は、仕方ないわね……と、納得したような瞳の色を見せた。
「……マリア」
膝の上で開いていた本をテーブルに置き、パチュリーがマリアに話しかける。少し威厳のこもった声だった。
「うん? パチュリーおばさま?」
「私も、子供のつくりかたを思い出したわ」
「え、本当!?」
マリアが期待するような声を上げる。知識人のパチュリーの言葉だ。マリアも信じやすいだろう。聞いているレミリアたちにしても、パチュリーがどんな論を繰り出してくるのか楽しみだった。
パチュリーがテーブル上に肘をつき、手を組む。七曜の魔女らしいアカデミックな雰囲気を醸し出しながら、パチュリーは厳かな声で話し始めた。
「おしべとめしべって、知ってるかしら?」
……先生、そこから説明始めるんですか? 七曜の魔女は生物学の初歩中の初歩から、話し始めていた。大人たちは拍子抜けし、ちょっと不安になっていたが、とりあえずパチュリーを信じて見守ることにした。一方、純真無垢で素直なマリアはパチュリーの言葉にうなずいていた。
「うん。知ってるよ。花のおしべとめしべのことだよね。おしべから花粉が出て、めしべにくっつくことを受粉って言って、受粉することで、種ができるんだよね」
「そう。その通りよ。じゃあ、どうして、受粉することで、花に種が生るのかわかるかしら?」
「えっと、それはうーんと……」
マリアが首をかしげて考え込む。そこから先はわからないらしい。パチュリーは静かな声で続けた。
「花粉がめしべの柱頭で発芽して花粉管が伸び、二つの精細胞が花粉管を通って、めしべの胚珠内の卵細胞・胚乳細胞と結合すると、種ができるようになるのよ」
パチュリーの説明にマリアがぽかんと頭の上に大きなハテナマークを浮かべる。正直、レミリアたちにもよく理解できてなかった。フランと美鈴がかろうじてわかるといったところだった。だが、パチュリーは滔々と話を進める。
「まあ、細かく言うとそうなるわね。でも、重要なのは細々としたことじゃなくて、その細かい所作が何のために行われているか、よ。マリアはそれが何を意味してるかわかるかしら?」
「……かふんかん? せいさいぼう? けつごう? ……うにゅー」
マリアが頭から煙を吹いていた。無理にパチュリーの説明について考えようとした結果、オーバーヒートしたらしい。目をぱちくりさせるマリアに、パチュリーは構わず話しかけた。
「身体の設計図を持ち寄って、新しい身体を作るための新しい設計図を作ってるのよ」
「せっけいず……?」
「ええ。おしべの花粉で半分、めしべで半分、設計図を出し合って、新しい個体の設計図を作っているの」
パチュリーは遺伝子の話をしているのだろう。遺伝子とは身体の設計図である。有性生殖による、二つの個体の設計図を混ぜ合わせて新しい特徴をもった個体を生みだすシステムは、進化学上、とても大切なことだった。
「いわゆる、X染色体とか、Y染色体とかの話だよね……」
マリアがパチュリーに言った。染色体のことを知っていて、どうしてマリアは子供の作り方を知らないのか、とレミリアたちは疑問に思った。マリアの知識はとても偏っているようだった。それは、自分で本を読んで調べているせいなのかもしれない。個々の知識は記憶できるのだが、体系的に知識を身につけることまでには、まだマリアは幼すぎるのかもしれなかった。パチュリーはマリアの言葉にうなずいて続けた。
「ええ。X染色体、Y染色体は性染色体ね。これ以外にも染色体は存在するわ。ちなみに人間は、性染色体を含めて23対の染色体があるそうね」
「23対……46個だね」
「そう。染色体の数は生物によって異なるけど、植物も当然、種によって決まった数の染色体をもっているわ。その数のうち、半分を花粉が、もう半分をめしべがもっていて、半分ずつを合わせて、新しい個体を作りだすわけね」
「へー」
マリアが感心していた。うむ。流れは姉妹にとって都合のいい方向に進んでいた。そして、パチュリーの言っていることは間違った知識ではなく、極めて正しい知識だった。パチュリーの説明は続く。
「この仕組みは妖怪――生殖が可能な妖怪にとっても変わらないわ。男性がもっている染色体と女性がもっている染色体を半分ずつ、合体させることで新しい妖怪が誕生するわけ」
「マリアもそうやって生まれたのよ」とパチュリーがしめた。マリアは納得したような笑顔を浮かべていた。
「じゃあ、私もレミリアお母さまの設計図の半分と、フランお母さまの設計図の半分が合わさってできたんだね」
「そうよ。マリアは二人に似ているでしょ。それはマリアが二人の設計図を基にしてできている――マリアの親がレミィと妹様である証拠なのよ」
パチュリーが答えると、うんうんとマリアは嬉しそうにうなずいていた。どうやら、マリアは満足したらしい。さすがパチュリーだった。ここまで綺麗にまとめてしまうとは。それも重要なところに一切触れることなく。あくまで概念的な説明に終始し、具体的にどうやって『合体』させるかについて、マリアに関心をもたせなかった。パチュリーがレミリアとフランに視線を投げる。子供なんてこんなものよ――と、紫色の瞳が妖しく光っていた。パチュリーが余裕たっぷりに湯気の立っている紅茶をすする。その様はまさにデキる女以外の何でもなかった。その格好いい感じが、少し悔しかった。
まあ、とにかく、マリアの難題は解決したようだった。姉妹は咲夜に言って、紅茶のお代わりをもらう。二人は一息ついて、新しく淹れられた紅茶を口に運んだ。
「あ、思い出しました」
――そこで、小悪魔が言った。
小悪魔の言葉に、マリアと本人以外の全員に緊張が走った。小悪魔は真剣な顔をしていた。
小悪魔は発言こそしなかったが、今までずっと、レミリアたち6人といっしょに居間にいた。パチュリーが発言し始めたあたりで、小悪魔はうんうん何かを考えるように唸っていたのだった。
「え、何を思い出したの、小悪魔?」
マリアが小悪魔に尋ねる。小悪魔は少し興奮した顔で口を開く。
――既視感。
二人以外の全員は既視感を感じていた。いや、これは既視感というレベルではない。一か月前とほとんど同じ状況が今まさに展開されているのだった。レミリア、フラン、咲夜、美鈴、パチュリーが嫌な予感に震える中で小悪魔は言った。
「確か、『せっくす』すれば、子供ができるはずです!」
グングニル級の破壊力をもつ小悪魔の発言を耳から頭にぶち込まれて、姉妹が再び飲みかけのお茶を噴き出した。先ほどよりも酷いむせ具合。ごほごほと姉妹は地獄のような苦しみを味わっていた。従者二人が主人二人を構い、親友一人が自らの使い魔が放った言葉に唖然としている間に、マリアと小悪魔はどんどん話を進めていった。
「『せっくす』!?」
「はい! 確か、『せっくす』すれば赤ちゃんができるってどこかの本に書いてあった気がしました!」
「『せっくす』って何!?」
「あ、もしかしたら、カタカナだったかもしれません!」
「『セックス』!?」
「でも、『せっくす』のほうが可愛い気がするので、ひらがなのほうがいいと思います!」
「で、『せっくす』ってどうやるの!?」
「ごめんなさい! そこまではわかりません! でも、皆さんに訊けば……ふぇぇええええええええっ! ぱひゅりーひゃま、いたいれふっ! いたいれふよぉっ!」
ぎゅぃいいいいいっ! と、パチュリーが小悪魔の頬をあらん限りの力でつねっていた。キレたパチュリーの凄絶な表情。他人様が上手くまとめたのに、何してくれてんのよアンタはァ……! と紫水晶の瞳がマグマのごとく憤怒に燃えていた。涙目の小悪魔がろれつの回らない口調で、パチュリーにやめてほしいと一生懸命訴えていたが、ここまで怒っているパチュリーが聞き入れるわけもない。天然の小悪魔のことだから、悪意など欠片もあろうはずはないことはわかっているが、今回ばかりは七曜の魔女も止まらなかった。マリアもパチュリーの怒り具合に少し引いていた。だが、マリアの興味はすぐに別のことに移った。ようやく息の落ち着いてきた親二人に、マリアは純粋そのものの顔で尋ねた。
「ねえ、お母さまたち、『せっくす』ってどうやるの!?」
……状況は最悪だった。戦況は最初と比べて明らかに悪化していた。『赤ちゃんはどうすればできるのか』なら、まだいい。パチュリーがやったようにいくらでも誤魔化しは利くからだ。だが、この質問は凶悪だった。というか、マリアが『せっくす』という単語を知ってしまったのが、もう手遅れのようにしか感じられなかった。確かに今の状況でも誤魔化すことはできる。だが、それはマリアに致命的な誤知識を植え付けることを避けられない。赤ちゃんのできかたに関する知識の誤りならまだ可愛いものだが、『せっくす』の仕方となると――
レミリアがフランとのアイコンタクトを図る。どうしようか……と姉は妹にげんなりとした視線を送っていた。フランはとても悩んだ目をしていた。マリアにそれを教えるのはまだ早い気がする。マリアの精神年齢を考えると、やはり考えてしまうところがあった。せめて、精神年齢的にあと2、3歳は欲しい。だから、まだ本当のことは言わない方がいいと思うな、とフランはレミリアに返答した。でも、嘘をつく、ってのもねえ……とレミリアが再びフランに視線を送る。うん……単語を知っちゃったから、マリアも未来に帰ったら自分で調べちゃうかもしれないしね……それを考えると、ね……と、フランの目が気弱な色を浮かべていた。ほんの少しの思考の後、フランがレミリアに真剣な眼差しを送った。小悪魔の言ったことは置いておいて、赤ちゃんの作り方はこうだよって、ちゃんと私たちから説明した方がいいかもしれない、と。詳しいところはともかく、赤ちゃんは好き合ってるお父さんとお母さんが結婚すれば自然と生まれてくるものなんだよ、って教えてあげるべきかもしれない。レミリアもまたうなずく。皆に任せず、最初から私たちがちゃんと教えるべきだったわね。親として情けなかったわ……と、レミリアの紅い瞳が悔やんでいた。それからレミリアがマリアのほうを向いた。まあ、その前に……と、レミリアは、マリアに一つ質問することに決める。
レミリアは期待に顔を輝かせているマリアに尋ねた。
「ねえ、マリアはどうして、そんなに赤ちゃんがどうやってできるかについて、知りたいの?」
母の問いに、マリアは目をしばたかせる。純粋無垢な幼子は正直に答えた。
「だって、知らないんだもの。知らないことはやっぱり知りたいよ」
娘の言葉にレミリアはうなずく。フランも優しげな微笑をマリアに向けていた。子供というのはそういうものだ。『知らない』ということだけで、それを知りたいと思うのは子供にとって当然のことなのだ。何かを知る――成長する、ということが、子供の存在理由なのだから。レミリアもフランも、好奇心こそが子供の強い原動力であることを知っていた。
そして、マリアはさらに言葉を続けた。マリアは子供ながらに真剣な目をしていた。
「それに、私もどうやってお母さまたちから生まれてきたか、知りたいもん」
レミリアとフランは、マリアの真面目な視線を正面から受け止める。二人はマリアの紅い瞳の向こう側を見ようと、わが子に真っ直ぐな視線を注いでいた。マリアの生まれもった境遇を――決して、すべてが幸福で満ちているわけではない生まれを想いながら、母親たちは何を言うべきか考える。今回の質問はきっとマリアにとって決して小さな問題ではないのだろう。このことを確かめることは、きっとマリアにとって大切な何かを証明することなのだと思った。レミリアとフランはマリアにいいかげんなことを教えようとしていたことを恥じる。100パーセント、正しい解答でなくとも、マリアにとって真実になる答えだったのならば、それが正解だったのだ。
レミリアはマリアに言葉を伝えるために口を開いた。
「マリアに赤ちゃんがどうやって生まれてくるのか、教えてあげるわ」
マリアは母の優しげな微笑を見つめていた。
「子供っていうのはね、結婚してお互いのことが好きな夫婦が、子供が欲しいと思ったときに――心からその子に会いたいって思ったときにできるものなのよ」
マリアは黙って、レミリアの言葉に耳を傾けていた。
「マリアも、私とフランがあなたに会いたいって思ったから生まれてきたんだわ」
「そうよね、フラン」と、上の母親が下の母親に問いかける。フランもまた、レミリアの言葉に優しげに微笑んでうなずく。フランはマリアの気持ちを考えながらうなずく。自分のことのように――否、自分のことだからこそ、フランは愛娘のために言った。
「マリアは私たちに望まれたから、生まれてきたんだよ」
そう言って、フランはマリアの幸福を肯定した。
しばらく沈黙が続いた。やがて、マリアが椅子からちょこんと降りた。そして、そのまま、とてとてとレミリアのところまでやってくる。マリアはぴょんっと、レミリアに飛びついた。レミリアは腕を広げて、自分より少しだけ小さなマリアの身体をしっかりと受けとめた。マリアが小さくて赤いほっぺをレミリアの胸にこすりつける。皆が見ている前でも、マリアは遠慮なく母親に甘えていた。
マリアは満足したようだった。詳しい仕組みを教えられなくても、具体的にどうやって子供が生まれてくるのかを知らなくても、マリアは納得したようだった。子供は母親に教えられた真実を受け入れることができた。
しばらく、そのままマリアは、皆の温かい視線を受けながら、レミリアに抱っこされていた。レミリアがマリアのさらさらとした髪を撫でながら言う。
「……マリア、わかったかしら?」
「うん、わかったよ、お母さま」
マリアは微笑んでうなずく。それは本当に嬉しそうな笑顔だった。娘の笑顔を見て、レミリアたちの心も温かくなる。どこまでも穏やかな時間のなかで、マリアは母に抱きついたまま、無垢な目をして尋ねた。
「で、『せっくす』って何?」
娘の質問に、一瞬で時間が凍りつく。皆も微笑んだまま表情が固まっていた。不思議そうにマリアがレミリアの腕のなかで首をかしげた。
「赤ちゃんのできかたはわかったけど、『せっくす』が何かはまだわかってないよ」
「あの……そのね、マリア……」
「『せっくす』についてもちゃんと教えてほしいな」
マリアはそう言って、母に期待するような目を向けた。
……やはり、忘れてくれなかったか。まあ、そう簡単にいく話ではないとは考えていたが。レミリアはぎぎぎ、と首を動かして、パートナーを見た。フランはもう諦め顔をしていた。まあ、さわりでもいいから、教えてあげてもいいんじゃないかな? と、目が言っていた。一通り、説明すれば理解しなくても、満足してくれるかもしれないし……と、姉に返答する。それしかないかしらね、とレミリアも眉をしかめた。実地的に『せっくす』がどういう意味をもっているか、マリアにわかるとは思えないしね……と、レミリアは自分で自分を納得させていた。レミリアはマリアに、できるだけぼかして、『せっくす』についてマリアに説明することを決めた。
と、そこで、姉妹は第三者の視線を感じた。
美鈴だった。
美鈴は姉妹に、私が何とかしましょうか、という視線を投げかけていた。
美鈴が? と、レミリアは胡散臭いとでも言うかのように目を細める。先ほども「橋の下から拾ってくる」とか言いだした前科がある。そうでなくとも、レミリアは、元教育係の、この紅髪の門番長にいろいろ吹き込まれてきた思い出があった。しかし、美鈴はなおもアイコンタクトを送ってきた。要は性行為云々のことをマリア様に伝えなければいいわけですよね、と主に問いかける。しぶしぶ、レミリアは美鈴のメッセージにうなずく。フランは、そんなことできるの? と不安げな目をしていた。美鈴の翡翠色の目は自信満々に、任せてくださいと、強い意志をもって輝いていた。レミリアはしばし沈思黙考する。そして、フランに再び眼差しを向けた。それは確認の意志を表していた。フランはレミリアの決定に従うと目線だけで返答した。レミリアは長い付き合いの門番長の少女に、命令した――マリアに説明しろ、と。忠実なる臣下は主君に目礼を返し、主君の娘へと向かった。
「マリア様、」
美鈴がマリアに呼びかける。美鈴の声はいつもののんびりとした声色ではなく、日本刀の刃のような厳かさを響かせていた。その声に、びくりとマリアが反応した。美鈴はマリアを真っ直ぐに見て言った。
「美鈴が、『せっくす』について、ご説明しましょう」
「本当?」とマリアが、嬉しそうな声を上げる。だが、一方、美鈴は落ち着いた声で続けるのだった。
「ただし、これから私が話すことは秘密とされていることなのです。それゆえ、他言してはなりませんよ? レミリアお嬢様たちがマリア様に教えようとしなかったのもそのためです。無闇矢鱈と誰かに話していいことではないからです」
美鈴の威圧感にマリアがごくりと唾を呑む。レミリアは、腕のなかの娘が緊張するのを感じていた。……何を始めるのだろう、この万年昼寝門番は? レミリアは、いや、レミリアだけでなく、フランも咲夜もパチュリーも、嫌な予感を感じざるを得なかった。
「それでも、マリア様は知りたいですか?」
美鈴が翡翠色の瞳が、どこまでも透き通った光を放つ。それは相手に覚悟を求める眼差しだった。永く紅魔館の門を守ってきた少女は、十五年という短い時間だけを生きた少女に、強い意志を求めていた。
マリアはしばらくためらっていたようだが、
ぎゅっと、母の服を握る力を強めながらも、
美鈴の言葉にうなずいた。
紅魔館の主君の娘は、覚悟を決めてうなずいた。
……いや、そんな大げさなことじゃないだろ? と、当事者二人と小悪魔(小悪魔はこの雰囲気にのみ込まれ、はらはらした様子で二人の様子を見守っていた)を除く大人たちは心のなかで呟かざるを得なかった。止めようにもマリアの真剣さを見ると、なかなか言い出せない。しばらく様子を見る、という選択肢を選ばざるを得なかった。
マリアがうなずくと、美鈴は微笑んだ。覚悟を決めたマリアに、美鈴は包み込むような優しい微笑を浮かべた。大人たちの心情を知ってか知らないでか、美鈴は「わかりました」と、マリアの覚悟を受け入れ、話し始めた。
「『せっくす』とは……」
美鈴は深緑の瞳に真剣な色を混ぜ込み、マリアを見つめた。
「ある妖怪を召喚する儀式なのです」
「……ある、妖怪を……召喚する儀式?」
大人たちが全員、はあ? という顔をする横で、マリアはまた唾を飲み込む。美鈴は真面目な顔のままうなずいた。
「その、ある妖怪って何?」
マリアはおずおずと美鈴に質問する。美鈴はマリアの言葉の一つ一つに頷きながら答えた。
「恐ろしい力をもった妖怪です。多くの生物の誕生を司っている、神霊とも呼ぶべき妖怪です」
美鈴は、その『妖怪』の名前を語った。
「その妖怪は……名前を 『開いちゃうおじさん』 と言います」
「……『開いちゃうおじさん』」
マリアが『妖怪』の名前を噛みしめるように呟く。「はい、『開いちゃうおじさん』です」と美鈴は再度、マリアの言葉に首を縦に振った。
レミリアたちは、愕然としていた。あまりのアホさ加減に、『開いた』口がふさがらなかった。子供の躾けには迷信や妖怪の話が使われることがよくある。『雷様におへそをとられる』とか、『夜中に口笛を吹くと蛇が出る』などの伝承である。そもそも、妖怪の存在意義とはそれなのである。人間の高慢な振る舞いを諌める――それこそが、古来から妖怪に求められていたことだった。だが、『開いちゃうおじさん』なんて妖怪、聞いたことがなかった。もちろん、美鈴の創作なのだから、そんな妖怪存在するはずはないがない。しかし、もうちょっと何とかできなかったのか、と思う。もう少し、信憑性のある妖怪を考えられなかったのか、と。名前の響きだけで、なんか嫌な感じの生き物だなあという雰囲気がする。『開いちゃうおじさん』という架空の妖怪は、言葉にできない怪しさ(妖しさではなく)を放っていた。
美鈴は、その『開いちゃうおじさん』という妖怪の説明を続けた。
「『開いちゃうおじさん』は、結婚した夫婦が『せっくす』という儀式を行うことによって、呼び出される妖怪です。召喚した夫婦にしか見ることができないそうで、姿形も口承でしか伝わっていません」
「……どんな姿をしてるの?」
「二足歩行をする、人くらいの大きさの動物だそうです。何の動物かはよくわかっていません。個体によって異なるとも聞いています。ただ、すべての『開いちゃうおじさん』に共通していることは、キノコ型の帽子を被っていることだそうです」
「きのこの帽子を指して、『まつたけ』と言うと喜び、『えのき』というと怒りだすそうですね」と、美鈴がどうしようもない情報を付け加える。ふんふんとマリアは興味深そうに美鈴の話を聞いていた。一方、レミリアたちは頭を抱え始めた。美鈴に説明を頼んだことを後悔し始めていた。マリアが美鈴に質問する。
「『開いちゃうおじさん』は具体的に、何を開いちゃうの?」
「それはよくわかりません。詳しく知ってしまったものは、『開いちゃうおじさん』に連れていかれて、どこかにしまわれてしまうそうです」
……ああ、やっぱり、しまわれるんだ、とレミリアたちはどうでもいいことを考えていた。
「ただ、何かを『くぱぁ』と開くのだ――と聞いております」
「『くぱぁ』?」
「はい。『くぱぁ』です。」
「『くぱぁ』!」
「そうです! 『くぱぁ』です!」
「フランお母さまのときも『くぱぁ』ってなったの!?」
「そうですね。きっとフランお嬢様のときも『くぱぁ』ってなりましたね」
……『くぱぁ』、『くぱぁ』って連呼してんじゃないわよ……二回言いましたってレベルですまないわよ、どんだけ大事なことなのよ……と、レミリアは心のなかで頭を抱えていた。フランは両手で顔を覆ってうつむいていることしかできなかった。「恥ずかしいよ……死んじゃいそうなくらい恥ずかしいよ……」と、頭から湯気が出そうなほど、フランの顔は真っ赤だった。こうして、心ない大人によって子供は誤った知識を植え付けられていくんだろうな、と咲夜やパチュリーは考えていた。
「さて、ここからが大事なところなのですが、」
と、美鈴が改めて真面目な表情に戻り、マリアを見つめる。門番長の真っ直ぐな視線を受けて、マリアもまた表情を硬くする。
「ただ、『開いちゃうおじさん』は開くだけではないのです。そこから先が大切なのです」
「……開くだけじゃない?」
「はい。『くぱぁ』と開いたあと、彼らは『くぱぁ』したところに、こう呼びかけるのです」
美鈴は少し歌うような拍子で言った。
「『この世に生まれてきたい子はおらんかな~』、『生まれてきたい子がいるところはどんどん開いちゃおうねぇ~』――そう言いながら、『開いちゃうおじさん』は、『くぱぁ』、『くぱぁ』と開いていくわけです」
「その言葉に、はい、と答えると、その子供はこの世に生まれてくることができるのです」と美鈴は表情を緩めながら言う。マリアは目を瞬かせていた。美鈴の言葉を頭のなかで咀嚼しているようだった。やがて、マリアが不思議そうに答える。
「私が、『開いちゃうおじさん』の質問に、はい、って言ったから、私は生まれてきたの?」
「そういうことです」
美鈴が深くうなずく。だが、マリアはなおも疑問そうに尋ねる。
「でも、私は『開いちゃうおじさん』のことを知らなかったし、はい、って答えたことも覚えてないよ?」
「そうです。生まれてくるとき、誰も『開いちゃうおじさん』に尋ねられたことを覚えていません。みんな生まれてくるときに忘れてしまうのです」
美鈴がまたマリアの言葉にうなずいた。だが、美鈴は強い声で続ける。
「ですが、それでも『約束』は成立しているのです」
「『約束』?」
「はい。この世に生まれてきたい、という言葉を肯定した、という約束です」
そこで、美鈴は少し怖い顔をした。
「『開いちゃうおじさん』は、その約束が守られているかどうか、確認しにくることがあるのです」
美鈴の顔と言葉に、マリアは身体をこわばらせる。美鈴は畳みかけるように少女に言った。
「『開いちゃうおじさん』はときどき訪ねてきて、『生まれてきてよかったかな~?』と質問することがあるのです」
美鈴の翡翠色の目がマリアを見つめていた。
「その質問に、はい、と答えられないと――どこか遠いところに連れて行かれてしまうそうです」
「……どこか、遠いところ?」
マリアがレミリアの服をぎゅっと握った。幼子は母を頼るように抱きついていた。
「……それって、どんなところ?」
「さあ……私は行ったことがないからわかりません。寒いところでしょうか、暗いところでしょうか。狭いところかもしれません……それはともかく、たぶん、お父さんやお母さんと二度と会えることがないほど、遠い場所なのでしょうね……」
美鈴が寒々とした口調で言うと、マリアは不安げにレミリアの顔を振り返った。そして、フランにも視線を送る。マリアは怯えた声で美鈴に答えた。
「うう……嫌だよう。お母さまたちに会えなくなるのは嫌だよう……」
ぎゅうっとレミリアに抱きつくマリア。どうやら、マリアは本気で怖がっているらしい。レミリアは仕方なく、娘の頭を撫でてやった。美鈴は、だが、安心させるように微笑む。
「はい。ですから、『開いちゃうおじさん』の問いかけに、イエスと答えられればいいのです」
「そうだよね……もし、訊かれても、はい、って答えればいいんだよね」
「ですが、気を付けてください。『開いちゃうおじさん』は人の心を読むことができます。仮に、嘘で、はい、と答えたとしても、『開いちゃうおじさん』は簡単に見破ってしまいます」
「ひぅぅう……」とマリアがかすれた声を出す。マリアはごしごしと額を、母の胸に押しつけた。
「これはずいぶん怖がっていらっしゃいますね」と、美鈴は苦笑するが、さらに美鈴はマリアに尋ねた。
「どうして、マリア様はそんなに怖がられるのですか?」
マリアがレミリアの胸から顔を上げる。マリアは眉をハの字にして答えた。
「だって、怖いよ……レミリアお母さまやフランお母さまたちのいないところに連れて行かれるんでしょ? お母さまたちだけじゃなくて、美鈴も咲夜さまも、パチュリーおば様も小悪魔もいないんでしょ? そんなところに行きたくないもん……」
拗ねるように言うマリアに、美鈴はおかしそうに笑う。
「だから、どうして、連れて行かれると思われるのですか?」
美鈴は優しい翡翠色の目で、マリアを見ていた。マリアはきょとんとして美鈴を見上げていた。
「よくお考えください。『開いちゃうおじさん』は、マリア様に難しいことを尋ねていますか?」
美鈴が笑う。少女の笑みではなく、長い時間を生きてきたお婆さんのような温かい笑顔を浮かべていた。
美鈴の微笑を見ながら、マリアは考える。
紅い瞳にさまざまな景色を浮かび上がらせながら、マリアは想いを膨らませていく。
素直に子供で――でも、とても大人なところのあるマリアは、心を広げてゆく。
そして、幼子は、
自分を抱っこしてくれている母を見、
自分を見守ってくれている母を見、
自分の世話をしてくれているメイド長を見、
自分にいろいろなことを教えてくれる魔女とそのおっちょこちょいな使い魔を見、
自分に今、まさに答えを求めている門番長を見て――決めた。
マリアは、はっきりとした声で言った。
娘はほがらかに笑って言った。
「うん。大丈夫だよ」
何の曇りもない笑みを浮かべて、マリアは言う。
「私はちゃんと、『開いちゃうおじさん』に『生まれてきてよかったです』って言えるよ」
マリアは、みんなに向かって微笑んだ。
それは、見ているものさえ微笑ませてしまうような明るい笑顔だった。
「あ、そうだ」と、マリアが何かに気付く。
「私のところに来るってことは、みんなのところにも来るってことだよね?」
マリアが振り返る。娘は抱っこしてもらっている母の顔を見て、問うた。
「お母さまは、はい、って言えるよね?」
レミリアは、マリアの光る紅い瞳を、きょとんとした顔で見返す。
「ちゃんと、『開いちゃうおじさん』の質問に、はい、って答えられるよね……?」
マリアは不安げな目で、母を見ていた。レミリアは一瞬考えただけで――不敵な笑みを浮かべて、娘に答えた。
「当たりまえよ、マリア。このレミリア・スカーレットが否定するわけないじゃない」
レミリアはマリアの頭を両腕でかき抱くように撫でて、言った。
「私は生きていて、とても幸せよ」
レミリアの言葉に、マリアは嬉しそうに――心底、嬉しそうに微笑む。
それから、マリアはみんなを見渡した。
みんなはすぐに、マリアの行動の意味に気づく。
咲夜も、美鈴も、パチュリーも、小悪魔も、マリアを安心させるように頷いた。
そして――
マリアは、もう一人の母に尋ねる。
この世で自分に一番近しく、自分のことをわかってくれるだろう母に。
フランとマリアの視線が絡み合う。
幼子の眼差しは眩しいほどに強かった。
わすかに目を細め。
一瞬だけ――
一瞬だけ、フランは間を置き、
娘の問いに答えた。
「うん。私も答えられるよ、マリア」
フランは、優しげに微笑む。
「私も生まれてきて、幸せだよ」
マリアの顔がぱっと明るくなる。何一つ疑うことなく、マリアは母の言葉を受け入れていた。
「じゃあ、大丈夫だね」
マリアは安心したように言う。
「みんな、どこにも行かないね」
そう言って笑うマリアは、とても幸せそうだった。
マリアはその後、お昼ご飯を食べ、ゆっくりとお昼寝をし、母たちとチェスなどをして午後のお茶を楽しみ、夕ご飯を食べて、未来へと帰った。今日は泊まりではないらしい。お泊まりはまた今度の機会にね、とマリアは楽しみにするように言っていた。
行きがそうであったように、帰りも八雲紫は現れなかった。マリアが来た時と同じように、居間に70年後の世界に通じる空間の裂け目ができただけだった。あのスキマ妖怪には考えにくいことだったが、気を遣ってくれたのかもしれない。前回は家族水入らずでゆっくりするという状況ではなかった。だから、今回はレミリアたち家族に気を配って、姿を見せないようにしているのかもしれなかった。
マリアはずっと笑顔だった。最後までマリアは楽しそうに笑って、自分の時代に帰っていった。
マリアが現在と70年後の境界を越えていき、その境界が消滅したのを見送ると、レミリアは苦笑してため息をついた。
「やれやれ……大変だったわね……」
その言葉に、居間にいる全員がうなずく。思わぬハプニングに、みんなくたくただった。でも、そうして苦笑する大人たちの笑顔には、疲れただけではない、温かいところがあった。やがて、解散の時間となる。咲夜は今日の仕事の残りに、美鈴は門番のローテーションに、パチュリーは実験のため書斎に、小悪魔はパチュリーの手伝いに、各々が自分の場所に向かっていった。そうして、居間には姉妹だけが残された。
「――お疲れ様、フラン」
レミリアは、ぽん、とソファに座っているフランの肩に手を置く。
ぼうっとしていたフランは姉に肩を叩かれ、びくっと身体を震わせた。
「今日はいろいろ頑張ったわね」
レミリアがフランに労いの言葉をかけながら、フランの横に座る。『頑張った』という言葉に、フランは姉が知っていることに気づいた。今、レミリアはきっと、フランが何を考えているのかを知っているのだった。フランは何も答えることができず、ただ、こくり、と姉の言葉にうなずいた。
「――子供は残酷ね」
レミリアが言う。レミリアはわが子のことながら、そう評した。
「『生まれてきてよかった』――この言葉を強要することほど、残酷なことはないと本当に思うわ」
「美鈴も何てこと教えてんだか」とレミリアは肩をすくめる。フランは目を細めて、将来の伴侶の言葉を聞いていた。やがて、フランはぽつりと言った。
「……マリアはすごいね」
フランは心の底からそう言っていた。ただ純粋に、マリアはすごい、と思っていた。
「たとえ子供でも、たとえ十五年しか生きていなくても、生まれてきてよかった、って言えることはすごいことだと思うよ」
フランは少し寂しそうに微笑んでいた。
「私はなかなか言えないな……」
レミリアは黙って、フランの悲しげな微笑を眺めていた。なんとなく沈んだ気持ちで姉妹は向かい合っていた。
そうしていると、ふと、レミリアは思い出した。
あまりのアホな内容に、遠く昔に忘れていた話を、レミリアは思い出していた。
「……あー、そういえば、あいつ、昔、あんなこと言ってたわねえ。今頃になって思い出したわ……」
レミリアが額に手を置いてうめく。つか、こんなアホな話、誰が覚えているものか。きょとんとするフランにレミリアは苦笑して話し始めた。
「美鈴の奴、昔、私にも言ってたわ……『開いちゃうおじさん』の話」
フランが目を丸くする。レミリアはくくく、と声を出して笑っていた。不思議と愉快な気分だった。レミリアは500年ほど昔のこと――まだ、自分が発展途上の吸血鬼であり、教育係だった美鈴にいろいろと教えられていたころのことを思い出していた。
「さすがに、私はマリアほど純粋じゃなかったけどね。でも、そこそこ怖かったわ。やっぱり、子供にとって親から引き離されるのは怖いのね。だけど、私は少しヒネてたからねえ。『生まれてきてよかった』なんてこと、恥ずかしくて言えなかったわ」
そのときのことを想像して、フランは微笑んだ。この姉のことだからそうだったろう。レミリアは子供のときから、へそ曲がりのイメージだった。レミリアもまた笑いながら言う。
「で、そのあと、美鈴といろいろ言い合ってね。私は怖いのを我慢して、うん、とは意地でも言ってやらなかったわ。すると、美鈴は――悔しいけど、美鈴は私のことを全部見透かしてたのよね。あとで不安になるだろう私のためにこう言ってくれたわ」
レミリアは、美鈴の口調を真似しながら言う。
「『わかりました。では、『開いちゃうおじさん』に連れて行かれそうになったときの対処法を教えて差し上げましょう。それは、待ってくれ、とお願いすることです』」
フランは目を少しだけ大きく見開いて、レミリアを見る。レミリアは続けて美鈴の口調を真似ながら言う。
「『今後、必ず言えるようになりますから、私にもう少し時間をください。そうお願いするのです。決して、諦める、の類の言葉を言ってはなりませんよ。その言葉だけは、本当に言ってはなりません』」
レミリアは美鈴の言葉を言い終わる。「ほんと、あの門番は憎たらしいったらないわね」と楽しそうに呟いた。そして、黙って聞いていたフランに話しかけた。
「そういうわけだから――どうも、美鈴によると『開いちゃうおじさん』は待ってくれるらしいわよ」
レミリアはフランに優しげに微笑む。
「たぶん、フランも待ってくれるわ」
レミリアはフランに真っ直ぐな視線を注ぐ。
「だから、きっと、焦ることはないわ」
フランはじっとレミリアを見つめる。レミリアもまたフランを見返していた。
やがて、フランがふっと笑った。そして、ソファから、立ちあがって、ぐーっと伸びをする。
「――じゃあ、私も待っててもらおうかな。だから――」
フランはマリアにそっくりな笑顔を浮かべて言った。
「マリアが生まれてくるまでに、うん、と言えるように頑張らないとね」
未来の母は誇るように言う。
「マリアに負けないように、私も楽しく生きないと」
フランの言葉に、レミリアも笑う。レミリアもまたソファから立ちあがった。もう暗い気持ちは一つもなかった。レミリアは楽しい気分でフランに提案する。
「じゃあ、これから、寝るまでにちょっと運動しない?」
「運動? 弾幕ごっことか?」
「『ドロワおにごっこ』とか、どう?」
「……それ、いつもやってるじゃない。しかも私、鬼役ばっかりやらされてるよ……」
「嫌だったら、ベッドの上の運動でもいいけど?」
「……この期におよんで、それはないよ……」
「もう。フランはぐずぐずしてるわねえ。じゃあ、『ドロワおに』で決定。早速、開始よ。まずはフランのドロワの確保ね!」
「あっ、ちょっと! ……待て! この変態お姉さま!」
レミリアが居間から駆け出す。それを追って、フランも居間から飛び出した。
紅魔館に姉妹の楽しそうな声が響いていた。
未来に帰った娘はメイド長たちの出迎えを受けた。
居間には、メイド長と門番長がいた。珍しく、魔女とその使い魔もそこでお茶を飲んでいた。
みんなが娘に過去の旅はどうだったかと尋ねる。
娘は嬉しそうに、『赤ちゃんのでき方』を教えてもらった、と答えた。すると、大人たちは楽しそうに笑うのだった。大人たちが笑うので、娘も楽しく笑った。
娘は母たちはどこにいるかと尋ねた。門番長は、さあ、どこでしょう、もしかしたら、『開いちゃうおじさん』に連れて行かれたのかもしれませんね、と答えた。その言葉に娘は不安になる。だが、すぐにその不安は消えた。門番長がそう言ってから一分もしないうちに、二人の母親が居間にやってきたからだった。もうっ、と怒る娘に、門番長はすいませんと笑いながら謝っていた。
――どうしたの、マリア? 何を怒っているの?
蒼い髪の母が、おもしろそうに娘に問う。娘は、過去の母親たちにしてもらった話をした。すると、母は楽しそうに笑った。
――まあ。それは勉強してきたわね、マリア。また、マリアは一つ賢くなったのね。
そう言って、蒼髪の母は娘を抱き上げた。娘は母のふくよかで温かい胸に抱きしめられて目を細める。
マリアは胸がぽかぽかとする気持ちを感じながら、母に問う。
――ねえ、レミリアお母さまは、生まれてきてよかった、って思ってる?
その言葉を聞いて、母たちが微笑む。まるで、娘がそう尋ねるのを知っていたかのようだった。
――もちろんよ。
蒼髪の母親はうなずくと、娘をもう一人の母親に渡した。お腹の膨らんだ金髪の母は娘を丁寧に受け取った。
娘と母の目が合う。
娘は母に問うた。
――フランお母さまは、生まれてきてよかった、って思ってる?
母は微笑んだ。娘をぎゅっと抱きしめて、満月のように優しく笑った。
――うん、思ってるよ。
心の真ん中から、母は言った。
――こんな可愛い子に会えたんだもの。幸せじゃないはずがないよ。
母の目はどこまでも透き通った紅色をしていた。
娘は母の豊かな胸に顔を埋める。母の温かさに抱かれて、娘は幸せな気持ちになった。
優しい世界のなかで娘は微笑みながら、母たちの笑顔に囲まれていた。
,
創想話でここまで「せっくす」とか「くぱぁ」とかって連呼する作品を見たのは初めてです。
でも終わってみればすごくいい話。不思議。
美鈴スゲー。上手いごまかし方、というかいい話ですね「開いちゃうおじさん」きっとどこかにいると思います
美鈴、ナイスな解答だなぁ…よし、参考にしよう。
もっと無在作品をみたいなぁ(チラッチラッ
ことり=さとり+こいしなのかが気になって眠れない。
マリアの発言に紅茶を噴き出す二人や皆とアイコンタクトをしたり、小悪魔の爆弾投下、美鈴の誤魔化し方にニヤけたり、
現在の二人の会話や未来での親子の会話や雰囲気など面白いお話でした。
流石に創想話でそんな言葉を連発してはいけません!
だがしかし大好きだっ!
マリア、大好きです。超高度なアイコンタクトが可能なこの家族が大好きです。
毎度毎度貴方の作品には泣かされてしまいます。今回もでした。
温かい話をありがとうございます。
マリアかわいいよマリア
性教育は本当に難しいですね。
ことりってこいしとさとり様の娘?
気になるんだぜー。
教育係美鈴さんもかつて苦労したんですね。そしていまはレミリアさんにフランと続き、きっといつかは…
紅魔家のみんなに、幸あれ!
マリアもいいけど、しっかりお母さんしようと努力してるレミフラがいい!
ことり→蟲鳥→リグルとミスチーの娘である説に1票
最後のフランちゃんの言葉に感動!よかった!
そうか……精神的に成長していったからフランちゃんは将来
豊かな胸に……少し残念だw
久しぶりに、イチャイチャしてるあなたのレミフラもみたいなぁ…(チラッチラッ
紅魔館には愛があるっ!
(アイコンタクトを変換して愛コンタクトになったからそんなことを思ったわけでは決してない)
ひどい話だ、と思いましたが、なんだかんだで暖かい話でした。
みんないいこだなー
ちょっと質問があります。あなたの作品は全部繋がってるんでしょうか?
だとしたらここで書くのもあれなんですけど、某サイトの方の作品も繋がってるんですか?
だったらあっちに違和感があるんですけど...それともあれは少し違うものと考えてもいいんでしょうか?
場違いな質問ですいません!
性行為の説明については直接的な表現の方が逆にエロくないっすよね?ww
無在さんの「これはひどいのに最後は何故か良い話。不思議。」の上手さは異常。
これはひどい状態だけど、読了後の不思議なポカポカ感。つまりはいい話。
今作の「開いちゃうおじさん話」導入時における、マリアへの同様のシチュエーションとのギャップに腹筋崩壊しました
しかし当方の勝手な推測ですが、ギャグ・シリアス混淆する」無在さんの描く作品の世界観は
全て同一設定の元のモノだと思っていいのでしょうか?…いずれにしろ素敵です
ちなみに自分にとって”いざって時のイケめーりん”は東方二次最愛キャラです
素晴らしい作品をありがとうございました