「あら、ようこそ」
咲夜はいい時に来た、と思いながら鈴仙を迎える。
「こんにちは、暇だったのでつい来ちゃいました」
えへへ、と笑う鈴仙。
「とりあえず上がって。おいしい紅茶を手に入れたから一緒に飲みましょう」
そういって咲夜は鈴仙を紅魔館2階にあるテラスへと案内する。
ここからは庭が一望でき、お茶を飲むのにはもってこいな場所だ。
「私は紅茶を入れてくるからくつろいでてね」
微笑みながら台所へ紅茶を淹れに行く。
「そうだ、ついでにお菓子も持って行こうかな」
咲夜は台所の戸棚を探してみるが、残念なことにお菓子は一つも見つからなかった。
「うーん、どうしようかしら…
そうだ、この際自分で作ってしまおう。
手作りのお菓子のほうがおいしいし、彼女も喜んでくれるだろうしね」
咲夜は早速時間を止めてお菓子を作り始めた。
「お待たせしちゃったかしら?」
「いえいえ、ぜんぜん待っていませんよ」
鈴仙は笑顔で彼女を迎える。
「紅茶とクッキーです。召し上がれ」
クッキーは出来上がったばかりなのでまだ暖かい。
「わ! これ咲夜さんが自分で…?」
「ええ、そうよ。さ、冷めないうちにどうぞ」
「それじゃあ、お言葉に甘えて…」
鈴仙はクッキーを一枚つまみあげて口へ持っていく。
「どうかしら? お口に合えばいいんですけど…」
「最高ですよ! やっぱり咲夜さんは料理がお上手ですね」
「あら、それはお世辞かしら?」
「いえ、お世辞じゃないですよ!」
紅茶を飲みながら笑う咲夜に大真面目に鈴仙は答える。
「ふふふ、ありがとうございます」
「お茶もいただきますね」
そう断ってから鈴仙はカップに口をつけた。
「こちらもクッキーに負けず劣らずおいしいですよ」
「よかった。実はそれ、私が特別に調合した紅茶なのよ」
「え? そうなんですか」
「お嬢様は私の作る紅茶が苦手みたいですけど」
「そうですか。私はこの味結構好きなんだけどなぁ…」
「まあ、人には好き嫌いというものがありますから」
確かに、と鈴仙は笑いながらまた口をつける。
二人は夕方になるまで談笑をした。
お互いの主人のこと、最近あったこと…
紅茶とクッキーが無くなっても二人は話し続けた。
「あら、もうこんな時間ね」
「本当だ」
日は落ち始め、山の向こう側は赤くなっていた。
「それじゃあ、私は帰りますね。
咲夜さんはレミリアさんやフランさんのお世話があるでしょうし…」
そう言って帰ろうとする鈴仙を咲夜は止めた。
「今日、お嬢様たちは霊夢の家に泊まるといって出て行ったからいないわ。
妖精メイドも今日は休みだからいない。
だから…今日は泊まっていって?
…それとも、私と一緒にいるのは嫌かしら?」
「とんでもない。それでは今日はお世話になります」
鈴仙は笑顔でそう答えながら頭を下げた。
「そういえば、紅魔館の食事って和食が少ないんじゃないですか?」
「全く出さないことは無いけど…どちらかというと少ないわね」
「でしたら、お昼のお礼に私がおいしいご飯を作りますよ。」
鈴仙は胸を張って答えるが、咲夜は断る。
「いえいえ、私に食事を作らせてください。料理は私の仕事ですし」
「いえいえ、仕事ばかりで疲れているでしょう?
だから咲夜さんはゆっくり休んでいてください」
「いえいえ、鈴仙さんこそお疲れでしょうから…」
お互いに一歩も譲らない。
このままこの口論がずっと続くかと思われたとき…
「だったら一緒に作りましょうか、咲夜さん」
「え…」
「このまま言い争っていても無意味ですしね。」
「…わかりました。それでは一緒に作りましょう」
咲夜は鈴仙の意見を聞き入れて、一緒に台所へと立つ。
「今日はご飯と味噌汁とお魚にしましょうか」
咲夜はものすごい質素だな…と思ったが、その考えはすぐに消える。
好きな人である鈴仙と一緒に食事を作る。
そのことが彼女の心の大部分を占めていたからだ。
「咲夜さんはお魚を焼いてください。私は味噌汁を作るので」
そう指示しながら鈴仙は自分の作業を始める。
「わかりました。魚を焼けばいいんですね?」
咲夜も鈴仙と同じように自分の作業を始める。
もとより料理の得意な二人が協力しているので料理はすぐに出来上がった。
「料理はできましたし、あとは運ぶだけですね」
「そうね。でもどこで食べようかしら…」
咲夜は食べる場所を考える。
紅魔館の食堂はかなり広いため二人で食事をするのには広すぎる。
他に考え付くのは…
「そうだ!」
鈴仙がいきなり声を上げた。
「咲夜さんの部屋はどうです?」
「なっ! だ、駄目よ! 私の部屋は…その、散らかってるから…」
「私は散らかってても構いませんよ。姫様の部屋もかなり散らかってますし」
「あなたが良くても…その、私が…」
真っ赤になって咲夜は下を向いた。
「す、すいません…それじゃあ、他のところに…」
慌てて謝る鈴仙。しかし、咲夜は下を向いたまま小さくこう答えた。
「…別に構わないわ」
「え?」
「鈴仙さんとなら…構いません…」
「あ、はい…わかりました…」
鈴仙も真っ赤になって言葉を返す。
「そ、それじゃあ、咲夜さんの部屋に行きましょうか」
「うわぁ…ものすごく綺麗な部屋じゃないですか」
咲夜の部屋は綺麗に掃除してあり、ほこり一つ無い部屋だった。
おまけに部屋の中のものもきちんと整頓されている。
「私の部屋なんかよりずっと綺麗ですよ」
「そ、そう? それより、料理が冷めてしまうわ。早くいただきましょう」
咲夜は部屋の中にあるテーブルに二人分の料理を載せる。
「そうですね。いただきましょうか」
二人は料理に手をつけた。
味噌汁も魚もとてもおいしい。
「魚もいい感じに焼けてますね。とってもおいしいです」
「魚は焼くだけですから…それよりも鈴仙さんの味噌汁の方がおいしいですよ」
「いえいえ、私の味噌汁なんか足元にも及びませんよ。
この魚には咲夜さんの愛が詰まってますからね。その分、魚の方がおいしいです」
さらりとそう言い放つ鈴仙に、咲夜は真っ赤になって反論した。
「は、恥ずかしいですよ!」
「いいじゃないですか、ここには二人しかいませんし。」
そう言いながら鈴仙はふふふ、と笑った。
「もう! 鈴仙さんったら!」
まだ赤くなったままの咲夜は照れ隠しに味噌汁を一気に飲み干した。
「さて、食事も終わりましたし…少し早いけど寝ますか?」
「そうですね。あ、部屋は好きなところをお使いください。」
「それじゃあ、この部屋で寝ます!」
「…はい?」
鈴仙は間違いなくこの部屋といった。
今いる部屋は咲夜の部屋である。
つまり鈴仙が使いたい部屋というのは…
「わ、私の部屋ですか?」
「ええ。そうです」
「でもベッドは一つしかありませんし…」
そう言ったところで咲夜は気づいた。
も、もしかしてこの人は…
「一緒のベッドで、寝てもいいですか?」
そこで咲夜は倒れそうになった。
興奮しすぎて頭がくらくらする。
咲夜は何とか落ち着こうとするが、まだ心の中は乱れたままだ。
「そ、そんな! 私みたいな人と一緒のベッドで寝るなんて…!」
「嫌なら構わないんですが…」
「い、いえ! ぜんぜん大丈夫よ!」
「私の無茶を聞いてくださってすみません」
ぺこり、と頭を下げる鈴仙。
「と、とりあえず寝ましょうか」
咲夜は恥ずかしさとともに鈴仙と一緒に寝れる喜びを感じていた。
二人ともパジャマに着替え、布団へともぐる。
ちなみに鈴仙のパジャマは咲夜から借りたものである。
「おやすみなさい、咲夜さん」
「おやすみなさい、鈴仙さん」
咲夜は目をつぶるが、なかなか眠れない。
同じ布団の中に鈴仙がいるせいだろう。
それでも咲夜は何とか寝ようとするが、眠れそうな気配は無い。
そうこうしているうちに1時間余りが経過した。
「はぁ…今日は眠れそうに無いわね…」
そう小さく呟くと隣から声がした。
「咲夜さん、まだ起きてますか…?」
「鈴仙さんも眠れないの?」
「ええ。だって隣に咲夜さんがいるんですから」
「実は私もあなたが隣にいるから眠れないのよ」
そういってお互いに小さく笑う。
「一つ聞いていいですか?」
鈴仙が質問をする。
「何かしら?」
「私のこと…好き、ですか?」
咲夜は先ほどとは違い、落ち着いた声で「ええ、好きよ」と答えた。
「そう…ですか。実は私も咲夜さんのことが…」
「あら、だったらこれで恋人同士ね」
咲夜が冗談っぽく言った。
「ええ、そうですね」
鈴仙も笑って返す。
「咲夜さん、もうちょっと近寄ってもいいですか?」
「ええ、いいわよ。くっついた方が暖かいしね」
お互いの体が少しだけ当たる。
「あ、咲夜さんの体、冷たいじゃないですか」
「そうかしら? 鈴仙さんのほうこそ冷たいわよ?」
「だったらもうちょっと近寄りましょうか」
「あ、ちょっと…」
二人の体は完全に密着した。
「…これはさすがにくっつきすぎじゃないかしら?」
「大丈夫です、これならとっても暖かいですよ」
「…そうね。この状態なら暖かくて、すぐ寝れそうよ」
鈴仙が言ったとおりに体がすぐに暖かくなる。
「それじゃ、そろそろ寝ましょうか」
「ええ、おやすみなさい、咲夜さん…」
「おやすみなさい、鈴仙さん…」
二人は改めてお休みを言って目をつぶる。
今度はすぐに睡魔がやってきて二人は眠りに落ちていった。
目を覚ますと咲夜の目の前に鈴仙の顔があった。
鈴仙はまだ眠っているようで、軽く寝息を立てている。
咲夜は起き上がって、鈴仙の頭をなでた。
「…おはよう、鈴仙」
独り言のようにそう呟くとベッドから降りてパジャマからメイド服に着替えて、台所へ向かう。
少し遅れて鈴仙も起きた。
「ん…もう朝?」
隣を見ると咲夜の姿が無い。
「咲夜…さん…?」
寝惚け眼をこすりながら起き上がる。
「起きた?」
咲夜が手に小さなお盆をもって部屋に入ってきた。
「咲夜さん…これは?」
「朝食よ。さ、冷めないうちに」
お盆の上には目玉焼き、ベーコン、ソーセージの皿と紅茶のポットが乗っている。
咲夜は紅茶を二人分ついで、鈴仙に手渡した。
「あ、ありがとうございます」
紅茶を一口飲むと体が温まっていくのがわかった。
次に料理の方に手をつける。
「どれもおいしいです。あ、咲夜さん。私が食べさせてあげますよ」
「ひ、一人で食べれるからいいわよ」
「いえ、私がしたいだけですから。さ、あーんしてください」
咲夜は少し戸惑ったが、素直に従うことにした。
「…しょうがないですねぇ。あーん…」
「はい、よくできました」
「な、なんか馬鹿にされた気が…」
「冗談ですよ。それじゃあ、今度は咲夜さんが…」
こうして二人は仲良く朝食を取った。
朝食が終わってから、鈴仙は紅魔館を後にした。
鈴仙が帰ってからしばらくして、レミリアとフランが帰宅する。
「お帰りなさいませ、お嬢様、妹様」
「ただいま!」
フランは挨拶をするとさっさと中に入っていってしまった。
「ただいま、咲夜。私がいない間になんかあった?」
「いいえ、何も…」
「本当に~?」
レミリアはニヤニヤしながら言った。
「ええ、本当です」
「実はさっき永遠亭のウサギに会ったんだけどねぇ…
私がいない間に面白いことになったみたいじゃない?」
咲夜の耳元でレミリアはこう言ってやる。
「なっ! その話忘れてください!」
「嫌よ。くっくっく、これは面白いことを聞いたわ」
「お嬢様~!」
咲夜は逃げるレミリアを追いかけ始める。
そしてしばらくの間、紅魔館ではこのことが話のネタになり咲夜は苦労する羽目になった。
しかし咲夜は満足していた。
一日だけでも愛する鈴仙と一緒に過ごすことができたから。
鈴仙も帰り道に同じことを考えていた。
咲夜と一緒に過ごすことができたから満足だ、と。
咲夜はいい時に来た、と思いながら鈴仙を迎える。
「こんにちは、暇だったのでつい来ちゃいました」
えへへ、と笑う鈴仙。
「とりあえず上がって。おいしい紅茶を手に入れたから一緒に飲みましょう」
そういって咲夜は鈴仙を紅魔館2階にあるテラスへと案内する。
ここからは庭が一望でき、お茶を飲むのにはもってこいな場所だ。
「私は紅茶を入れてくるからくつろいでてね」
微笑みながら台所へ紅茶を淹れに行く。
「そうだ、ついでにお菓子も持って行こうかな」
咲夜は台所の戸棚を探してみるが、残念なことにお菓子は一つも見つからなかった。
「うーん、どうしようかしら…
そうだ、この際自分で作ってしまおう。
手作りのお菓子のほうがおいしいし、彼女も喜んでくれるだろうしね」
咲夜は早速時間を止めてお菓子を作り始めた。
「お待たせしちゃったかしら?」
「いえいえ、ぜんぜん待っていませんよ」
鈴仙は笑顔で彼女を迎える。
「紅茶とクッキーです。召し上がれ」
クッキーは出来上がったばかりなのでまだ暖かい。
「わ! これ咲夜さんが自分で…?」
「ええ、そうよ。さ、冷めないうちにどうぞ」
「それじゃあ、お言葉に甘えて…」
鈴仙はクッキーを一枚つまみあげて口へ持っていく。
「どうかしら? お口に合えばいいんですけど…」
「最高ですよ! やっぱり咲夜さんは料理がお上手ですね」
「あら、それはお世辞かしら?」
「いえ、お世辞じゃないですよ!」
紅茶を飲みながら笑う咲夜に大真面目に鈴仙は答える。
「ふふふ、ありがとうございます」
「お茶もいただきますね」
そう断ってから鈴仙はカップに口をつけた。
「こちらもクッキーに負けず劣らずおいしいですよ」
「よかった。実はそれ、私が特別に調合した紅茶なのよ」
「え? そうなんですか」
「お嬢様は私の作る紅茶が苦手みたいですけど」
「そうですか。私はこの味結構好きなんだけどなぁ…」
「まあ、人には好き嫌いというものがありますから」
確かに、と鈴仙は笑いながらまた口をつける。
二人は夕方になるまで談笑をした。
お互いの主人のこと、最近あったこと…
紅茶とクッキーが無くなっても二人は話し続けた。
「あら、もうこんな時間ね」
「本当だ」
日は落ち始め、山の向こう側は赤くなっていた。
「それじゃあ、私は帰りますね。
咲夜さんはレミリアさんやフランさんのお世話があるでしょうし…」
そう言って帰ろうとする鈴仙を咲夜は止めた。
「今日、お嬢様たちは霊夢の家に泊まるといって出て行ったからいないわ。
妖精メイドも今日は休みだからいない。
だから…今日は泊まっていって?
…それとも、私と一緒にいるのは嫌かしら?」
「とんでもない。それでは今日はお世話になります」
鈴仙は笑顔でそう答えながら頭を下げた。
「そういえば、紅魔館の食事って和食が少ないんじゃないですか?」
「全く出さないことは無いけど…どちらかというと少ないわね」
「でしたら、お昼のお礼に私がおいしいご飯を作りますよ。」
鈴仙は胸を張って答えるが、咲夜は断る。
「いえいえ、私に食事を作らせてください。料理は私の仕事ですし」
「いえいえ、仕事ばかりで疲れているでしょう?
だから咲夜さんはゆっくり休んでいてください」
「いえいえ、鈴仙さんこそお疲れでしょうから…」
お互いに一歩も譲らない。
このままこの口論がずっと続くかと思われたとき…
「だったら一緒に作りましょうか、咲夜さん」
「え…」
「このまま言い争っていても無意味ですしね。」
「…わかりました。それでは一緒に作りましょう」
咲夜は鈴仙の意見を聞き入れて、一緒に台所へと立つ。
「今日はご飯と味噌汁とお魚にしましょうか」
咲夜はものすごい質素だな…と思ったが、その考えはすぐに消える。
好きな人である鈴仙と一緒に食事を作る。
そのことが彼女の心の大部分を占めていたからだ。
「咲夜さんはお魚を焼いてください。私は味噌汁を作るので」
そう指示しながら鈴仙は自分の作業を始める。
「わかりました。魚を焼けばいいんですね?」
咲夜も鈴仙と同じように自分の作業を始める。
もとより料理の得意な二人が協力しているので料理はすぐに出来上がった。
「料理はできましたし、あとは運ぶだけですね」
「そうね。でもどこで食べようかしら…」
咲夜は食べる場所を考える。
紅魔館の食堂はかなり広いため二人で食事をするのには広すぎる。
他に考え付くのは…
「そうだ!」
鈴仙がいきなり声を上げた。
「咲夜さんの部屋はどうです?」
「なっ! だ、駄目よ! 私の部屋は…その、散らかってるから…」
「私は散らかってても構いませんよ。姫様の部屋もかなり散らかってますし」
「あなたが良くても…その、私が…」
真っ赤になって咲夜は下を向いた。
「す、すいません…それじゃあ、他のところに…」
慌てて謝る鈴仙。しかし、咲夜は下を向いたまま小さくこう答えた。
「…別に構わないわ」
「え?」
「鈴仙さんとなら…構いません…」
「あ、はい…わかりました…」
鈴仙も真っ赤になって言葉を返す。
「そ、それじゃあ、咲夜さんの部屋に行きましょうか」
「うわぁ…ものすごく綺麗な部屋じゃないですか」
咲夜の部屋は綺麗に掃除してあり、ほこり一つ無い部屋だった。
おまけに部屋の中のものもきちんと整頓されている。
「私の部屋なんかよりずっと綺麗ですよ」
「そ、そう? それより、料理が冷めてしまうわ。早くいただきましょう」
咲夜は部屋の中にあるテーブルに二人分の料理を載せる。
「そうですね。いただきましょうか」
二人は料理に手をつけた。
味噌汁も魚もとてもおいしい。
「魚もいい感じに焼けてますね。とってもおいしいです」
「魚は焼くだけですから…それよりも鈴仙さんの味噌汁の方がおいしいですよ」
「いえいえ、私の味噌汁なんか足元にも及びませんよ。
この魚には咲夜さんの愛が詰まってますからね。その分、魚の方がおいしいです」
さらりとそう言い放つ鈴仙に、咲夜は真っ赤になって反論した。
「は、恥ずかしいですよ!」
「いいじゃないですか、ここには二人しかいませんし。」
そう言いながら鈴仙はふふふ、と笑った。
「もう! 鈴仙さんったら!」
まだ赤くなったままの咲夜は照れ隠しに味噌汁を一気に飲み干した。
「さて、食事も終わりましたし…少し早いけど寝ますか?」
「そうですね。あ、部屋は好きなところをお使いください。」
「それじゃあ、この部屋で寝ます!」
「…はい?」
鈴仙は間違いなくこの部屋といった。
今いる部屋は咲夜の部屋である。
つまり鈴仙が使いたい部屋というのは…
「わ、私の部屋ですか?」
「ええ。そうです」
「でもベッドは一つしかありませんし…」
そう言ったところで咲夜は気づいた。
も、もしかしてこの人は…
「一緒のベッドで、寝てもいいですか?」
そこで咲夜は倒れそうになった。
興奮しすぎて頭がくらくらする。
咲夜は何とか落ち着こうとするが、まだ心の中は乱れたままだ。
「そ、そんな! 私みたいな人と一緒のベッドで寝るなんて…!」
「嫌なら構わないんですが…」
「い、いえ! ぜんぜん大丈夫よ!」
「私の無茶を聞いてくださってすみません」
ぺこり、と頭を下げる鈴仙。
「と、とりあえず寝ましょうか」
咲夜は恥ずかしさとともに鈴仙と一緒に寝れる喜びを感じていた。
二人ともパジャマに着替え、布団へともぐる。
ちなみに鈴仙のパジャマは咲夜から借りたものである。
「おやすみなさい、咲夜さん」
「おやすみなさい、鈴仙さん」
咲夜は目をつぶるが、なかなか眠れない。
同じ布団の中に鈴仙がいるせいだろう。
それでも咲夜は何とか寝ようとするが、眠れそうな気配は無い。
そうこうしているうちに1時間余りが経過した。
「はぁ…今日は眠れそうに無いわね…」
そう小さく呟くと隣から声がした。
「咲夜さん、まだ起きてますか…?」
「鈴仙さんも眠れないの?」
「ええ。だって隣に咲夜さんがいるんですから」
「実は私もあなたが隣にいるから眠れないのよ」
そういってお互いに小さく笑う。
「一つ聞いていいですか?」
鈴仙が質問をする。
「何かしら?」
「私のこと…好き、ですか?」
咲夜は先ほどとは違い、落ち着いた声で「ええ、好きよ」と答えた。
「そう…ですか。実は私も咲夜さんのことが…」
「あら、だったらこれで恋人同士ね」
咲夜が冗談っぽく言った。
「ええ、そうですね」
鈴仙も笑って返す。
「咲夜さん、もうちょっと近寄ってもいいですか?」
「ええ、いいわよ。くっついた方が暖かいしね」
お互いの体が少しだけ当たる。
「あ、咲夜さんの体、冷たいじゃないですか」
「そうかしら? 鈴仙さんのほうこそ冷たいわよ?」
「だったらもうちょっと近寄りましょうか」
「あ、ちょっと…」
二人の体は完全に密着した。
「…これはさすがにくっつきすぎじゃないかしら?」
「大丈夫です、これならとっても暖かいですよ」
「…そうね。この状態なら暖かくて、すぐ寝れそうよ」
鈴仙が言ったとおりに体がすぐに暖かくなる。
「それじゃ、そろそろ寝ましょうか」
「ええ、おやすみなさい、咲夜さん…」
「おやすみなさい、鈴仙さん…」
二人は改めてお休みを言って目をつぶる。
今度はすぐに睡魔がやってきて二人は眠りに落ちていった。
目を覚ますと咲夜の目の前に鈴仙の顔があった。
鈴仙はまだ眠っているようで、軽く寝息を立てている。
咲夜は起き上がって、鈴仙の頭をなでた。
「…おはよう、鈴仙」
独り言のようにそう呟くとベッドから降りてパジャマからメイド服に着替えて、台所へ向かう。
少し遅れて鈴仙も起きた。
「ん…もう朝?」
隣を見ると咲夜の姿が無い。
「咲夜…さん…?」
寝惚け眼をこすりながら起き上がる。
「起きた?」
咲夜が手に小さなお盆をもって部屋に入ってきた。
「咲夜さん…これは?」
「朝食よ。さ、冷めないうちに」
お盆の上には目玉焼き、ベーコン、ソーセージの皿と紅茶のポットが乗っている。
咲夜は紅茶を二人分ついで、鈴仙に手渡した。
「あ、ありがとうございます」
紅茶を一口飲むと体が温まっていくのがわかった。
次に料理の方に手をつける。
「どれもおいしいです。あ、咲夜さん。私が食べさせてあげますよ」
「ひ、一人で食べれるからいいわよ」
「いえ、私がしたいだけですから。さ、あーんしてください」
咲夜は少し戸惑ったが、素直に従うことにした。
「…しょうがないですねぇ。あーん…」
「はい、よくできました」
「な、なんか馬鹿にされた気が…」
「冗談ですよ。それじゃあ、今度は咲夜さんが…」
こうして二人は仲良く朝食を取った。
朝食が終わってから、鈴仙は紅魔館を後にした。
鈴仙が帰ってからしばらくして、レミリアとフランが帰宅する。
「お帰りなさいませ、お嬢様、妹様」
「ただいま!」
フランは挨拶をするとさっさと中に入っていってしまった。
「ただいま、咲夜。私がいない間になんかあった?」
「いいえ、何も…」
「本当に~?」
レミリアはニヤニヤしながら言った。
「ええ、本当です」
「実はさっき永遠亭のウサギに会ったんだけどねぇ…
私がいない間に面白いことになったみたいじゃない?」
咲夜の耳元でレミリアはこう言ってやる。
「なっ! その話忘れてください!」
「嫌よ。くっくっく、これは面白いことを聞いたわ」
「お嬢様~!」
咲夜は逃げるレミリアを追いかけ始める。
そしてしばらくの間、紅魔館ではこのことが話のネタになり咲夜は苦労する羽目になった。
しかし咲夜は満足していた。
一日だけでも愛する鈴仙と一緒に過ごすことができたから。
鈴仙も帰り道に同じことを考えていた。
咲夜と一緒に過ごすことができたから満足だ、と。
ありがとうございます!
これからも新しいカップリングを考えていく・・・かもしれません^^;
次は藍パルなど如何でしょう?
藍パルですか・・・難しそうですね^^;
今は鈴仙×妖夢といった苦労人(?)ペアを考えています
ぞくぞくしちゃいますねぇv
咲×鈴もいいなぁ、と最近思いますね^^
童貞パワーは凄いですね(笑)
この作者は眼鏡でピザのキモオタじゃねwwwwwwww