このお話は作品集82「探し物は何ですか」、作品集84「見つけにくい物ですか」、作品集86「カバンの中も」、作品集88「机の中も」、作品集88「探したけれど見つからないのに」、作品集89「まだまだ探す気ですか」の続編です。予めご了承下さい。
暗く湿った部屋の中。カーテンを開けると、目がくらむほどの光が部屋の中に差し込んできた。
外の明るさが目に痛いが、換気のために窓を開ける。朝なのでまだ肌寒い。最近はあまり温度が上がらないので尚更だ。
しかしそう欠点ばかりでもない。この引き締まった空気は、寝ぼけた頭を目覚めさせるのに丁度良いのだ。冬はつとめて、とはよく言ったものだな。もう冬と言うより春に近いが。
窓から顔を出し空を見上げると、妖精たちが戯れていた。自然の権化たる彼女たちも、この清々しい空気に誘われたのだろうか。日頃見掛けるよりも、多く空を飛んでいるように思えた。
と言うか、実際多いんだろうな。
右を見れば妖精。
左を見れば妖精。
いつもは多くても一日に五、六人程度しか見掛けないのにのに、今は視界に入るだけで二十人はいた。
明らかに異常である。
「……今日も変わらず、か」
二、三日前から、この奇妙な現象は始まっていた。
ふと気付けばそこに妖精がいる。それだけなら不審にも思わないが、一歩外に出ればご覧の有様である。これはどう考えてもおかしかった。
そもそも妖精とは自然の権化である。今僕たちが住んでいるこの幻想郷の自然を擬人化したものに他ならないし、それだけにその絶対数は減りもしなければ増えもしない。時折一回休みにはなるが、死んだり消滅するということもないのだ。だからこそこの異常発生は、尚更異常さを際立たせていた。
となれば、この辺りに何か妖精たちを呼び込むような「何か」が存在しているはずなのだが……差し当たって特に心当たりはない。恐らくは何か、異変の前兆なのだろう。
妖精は悪戯好きだが、それ以上のことは何もしない。それなりの寛容な心で持って受け入れれば、さして問題もないのである。あえて自分から原因を突き止める必要もないだろう。もしこれが異変であるのなら、いずれ霊夢辺りが解決に来るだろうし。
僕は巻き込まれることのないよう用心しながら、日々を安穏に過ごすだけで良いのだ。
そう結論付け、一日を始めるべく僕は店へと続く扉を開けた。
続いて視界に入る惨状に、思わず顔をしかめる。
「やっぱり何も片付いていない、か。そりゃそうだよな」
殆ど手を付けていないのだから当然の光景なのだが、それでも目を背けたくなってしまうのはやはり性分からか。元々掃除や整理整頓なんて得意ではないのだ。ましてや、自分が散らかしたのではないのだから、やりたくないのは尚更である。
――事は数日前。僕の店、ここ香霖堂で起こった大騒動は、大半の商品に一部の壁と引き換えに一応の終結を迎えた。
部屋の中であれだけ暴れれば、そりゃこうもなる、か。もっと早い段階で止めておけばよかった。今更後悔したところで、どうにかなるわけでもないが。
しかし、このまま放置しておくわけにもいかないな。仮にもここは「店」なのだ。こんな足の踏み場もないような有様では、通常営業などできるはずもない。
嫌々ながらも少しずつ、ちまちまと片付けてはいるが、見た目には一向に作業が進んでいるようには見えない。それもやる気減退の一因となっている。やらなければ片付かないのに、やればやるほどやる気がなくなっていく悪循環だ。理解していても手は動かないのが難点だな。
この際、ツケを払わせる代わりにあいつらに任せてみようか、とも思ったが、すぐに思い直した。あの二人はだめだ。片付くどころか逆に散らかすに決まってる。被害を免れた商品ですら、壊されてしまう可能性だって少なくないだろう。
結局僕がやるしかない、のかな。
やれやれ、と僕は溜め息を吐く。しかしまぁ、いずれはやらなければならないことだ。ここは一つ腹をくくって、今日一日かけて終わらせるとしよう。そう決めて、屈んで靴を履こうとした、
その時だった。
「ちゃお、探偵さん」
「……また君か」
不意に背後から掛けられた言葉。しかし僕は微塵も動じず、ゆっくりと振り返り声の主の方を見遣った。
まぁ、わざわざ見ずとも相手が誰かなんて、とっくに予想は付いているのだが。
視線の先には、やはり僕が思った通りの人物。膝を抱えて顎を引き、上目遣いに僕の方を見ていた。
「毎度毎度、よくも飽きずに来るもんだ。これで君がお客さんなら、僕も喜んで迎え入れるんだけどな」
「あらら、手厳しいわね。私がお客さんじゃないなんて、まだ貴方には分からないじゃない」
「店の奥の部屋から入ってくる客なんて、僕は見たことも聞いたこともないけどな」
それもそうね、と彼女は笑う。
淡く緑がかった色の髪が、ふわりと揺れる。鼻先をくすぐる髪の毛からは、花のような石鹸の香りと、女の子らしい甘ったるい香りが混ざった匂いがした。
彼女の名前は古明地こいし。先に起こったいくつかの事件、その内の一つで知り合った妖怪少女だ。
以来、彼女はたまにここに立ち寄るようになった。客でもないし、特に用も無いようだからあまり冷やかしで来て貰いたくはないのだが……邪険に扱っても利はないしな。運が良ければ姉が利用してくれるだろう、程度の淡い希望を持って彼女の相手をしていた。
こいしは無意識を操ることができる。その延長線上で、自分の気配も自由自在にできるらしい。始めはよくそれのせいで驚かされていたっけ。知らない内に、気付いたら目の前にいたりするんだもんな。寿命が縮むかと思った。
それも今では慣れたもので、こうして突然呼び掛けられても動揺することなど殆どない。少しは驚くがそれだけだ。何のリアクションもない僕に、彼女は少し不満そうではあるが。
しかし……どうして家の中にいたんだ? 店先にいるならまだしも、まだ店を開けてもいないのに……大体、僕はさっきまで寝てたんだぞ。起きてすぐこっちに来て、靴を履こうとしたら後ろにいるって……忍び込むにしても、一体いつから?
……考えるだけ無駄か。
「それはそうと……一体何事なの? お店の中、半壊状態じゃない。どうかしたの?」
「ん? あぁ、そうだな……何、ちょっとした騒動が起きてね。話せば長くなるんだけど」
「ならいいわ」
いいのか……。
「まぁそれはそれとして……今日は何の用なんだ? わざわざ開店時間より前に来るってことは、何か用事があってきたんだろ」
「へ?」
僕の質問に、こいしは目を丸くし、首を傾げて言った。
「そぎゃんこといわれてんうちにはわからんけん」
「そんなこと言われても僕には分からないよ」
「へつけだなごといわれでもうちポンデライオンやし」
「余計意味が分からなくなったぞ」
何語だそれは。
会う度に違った種類の異国語で挨拶するとは思っていたが……まさか日常会話でもこのレベルなのか。
難易度高いな。
「まぁ、冗談はこのくらいにしておいて……実はね、今日は遊びに来たわけじゃないの。お仕事の依頼よ」
「仕事? ふむ、引き受けたいのは山々だが……さっきも言っただろ? 今日はまだ改装中だから、店は開けないって」
「お店? ……あぁ、違う違う。私が依頼するのは、探偵さんとしての貴方よ」
「…………」
いや、大体予想はできてたけど。
今や僕と探偵は、切っても切り離せない間柄にある。何しろ僕自身が探偵だという、間違った情報が世間には広まってしまっているのだ。確かにそんな真似事もしたし、否定しきれる話でもない。とりあえず仮、とでも頭につけておけば探偵を名乗れる程度には知られているはずだった。
だが、だからといってわざわざ名乗る必要もない。そもそも僕は探偵などではなく、古道具屋香霖堂の一店主でしかないのだ。それ以上でもそれ以下でも、ましてやそれ以外でもない。もし誰かに職業を尋ねられたりすれば、僕は迷いなくこう答えるだろう。ただの道具屋の店主だ、と。
そういうわけで、今回はひとまず断ることにしよう。
関係ないことに首を突っ込んで痛い目を見たのは何度繰り返したことだろうか。流されるままに身を任せれば痛い目に遭うということは、これまでの経験から必要以上に充分理解してしまった。願わくば、あとは身に降りかかる火の粉を払うことだけに集中していたい。
もう厄介事はこりごりなのである。
「悪いが、断らせて貰うことにするよ。安請け合いして相手をがっかりさせるのも悪いし、何より今日は自分のことに専念しようと決めたばっかりなんだ。そうそう遊んでばかりもいられないんだよ」
「えー。でも絶対後悔すると思うなー」
こいしは唇を尖らせて、ジト目でこちらを見ながら呟くように言う。
思わせぶりではあるが、明らかに子供っぽいすねた挙動。しかしこの感覚は何だろうか。こう、どこか、引っ掛かりを感じるような。
例えるならどこかずれが生じているような、そんな違和感。
不吉な予感、とも言い換えられる。
何となく肌触りの悪い感触に、僕は表情を曇らせながら尋ねた。
「……? どういう意味だ?」
「聞きたいの?」
にやにやとしながら、こいしは問い返してくる。
…………。
まぁいい。話だけでも聞いてやるとするか。
「……分かった。降参だよ。とりあえず何があったのか、それを聞かせてくれ」
「宜しい。最初からそうやって素直にしていれば良かったのよ。……えっとねぇ……」
ふふんと、勝ち誇った表情のこいしが語り始めた、その事件は。
やはり、聞かなければ良かったと僕を後悔させることになったのだった。
◆
寺子屋に来た。
相も変わらず騒がしい様子。どうやら今は休み時間らしい。丁度良いタイミングに来たようだった。
戸に手を掛け、勢いよく開く。中に一歩入ると、寺子屋内はすっかり静まり返っていた。子供たちの誰もが顔だけをこちらに向け、ぽかんと口を開いている。突然の来客に驚いたのだろうか。
しかし子供たちはすぐにぱぁっと顔を輝かせ、けらけらと笑いながら僕たちの方に駆け寄ってきた。
「出た! 探偵のお兄さんだ!」
「探偵の変なお兄さんだ!」
「変人だ!」
「おい」
なんだその三段活用は。
僕は子供たちからそういう風に見られていたのか。
少なからずショックを受け、やはり来ない方が良かったか、などと思ってしまう。来てものの数秒で自らの行動を後悔していると、後ろでパンパンと手を叩く音がした。
「はいはい、傾注傾注! 前座はそこまで、お次は真打ち! キュートでラブリーなアンコンシャスビジター、古明地こいしちゃんのご登場です!」
何を言っているのやら。
後ろを見てみれば、両腕を高く上げ、左足の膝をくいっと前に出したままできりっとした表情をしたこいしがいた。彼女なりの決めポーズらしい。そのままゴールテープでも切りそうな勢いだ。
しかし子供たちの反応は、更に僕の予想を超えていた。
それまで僕に群がっていた彼らはこいしの姿を見つけると、あっという間にそちらの方へ駆け寄り囲んでしまう。
いきなりなんなんだ? 困惑していた僕は、直後の彼らの会話を聞いて、その状況をようやく理解することができた。
「こいしちゃんだ! 久し振り!」
「遊ぼう! 遊ぼう!」
「一緒に授業受けようよ! 先生も大歓迎だって言ってたよ!」
口々に親しそうに話しかける子供たち。こいしは少し困った顔になりながらも、やはり嬉しそうに笑っていた。
よく分からないが、様子を見る限りは互いに知り合いだということか。案外交流関係は広いらしい。まぁ、あの性格ならわりと取っ付きやすい方だしな。今の人間と妖怪との関係を考えれば、別におかしいことでもないだろう。
興奮状態の子供たちを制し、こほん、と咳払いを一つ。そしてにっこりと笑って、こいしは周囲の全員に聞こえる程度の大きな声で言った。
「ぐーてんたーく皆々様。最近は来れなくてごめんね。でも、遊ぶのはもうちょっと後にしてほしいの」
えー、と、子供たちは唇を尖らせる。やはり久し振りに会った友人とすぐに遊べないというのは不満なのだろう。
またがやがやと騒ぎ始めた彼らに、こいしはまたぱんぱん、と手を打ち鳴らす。すると場がすっと静まり、またこいしが小さく口を開いて話し始めた。
「ごめんね、でもちょっとだけだから。覚えてるでしょ? あの例の“飛行物体”。あれのことを、そこにいる探偵さんに教えてあげてほしいんだ」
ぴっとこいしは僕の方を指差す。その先をなぞるように、遅れて子供たちの視線も一斉にこちらを向いた。
何十とこちらを見つめる目、目、目。やはり注目を浴びるというのはなんだか居心地が悪い。しかし逃げるわけにもいかないし、そのまま黙って突っ立っているわけにもいかないので、僕は仕方なしに喋り始めた。
「……そう。そこにいるこいしから聞いたよ。何やら事件が起きているそうじゃないか。ここのところ、最近、ずっと――“よく分からないものが空を飛び続けている”、と」
――こいしから聞いた、事件の詳細。それは、時折空を謎の飛行物体が浮遊している、とのことだった。
それだけなら何ら問題はない。ここは幻想郷、何が起きても不思議ではないからだ。それに空を何かが飛んでいるなんてこと、日常風景であって殊更騒ぎ立てることでもないのだし。
なら、何がおかしいのか。それはその“空飛ぶ未確認物体”が、見る者によって姿を変える、ということだった。
ある者は弾幕を見た。ある者は未確認飛行物体――いわゆるUFO――を見た。またある者は妖怪退治をしている巫女や魔女を目撃し、またある者は――僕が飛んでいるのを見た、のだそうだ。
いずれも同じ時間帯に同じ場所で、同じように空を浮遊しているのを目撃した。しかし、「何が飛んでいたのか」が人によって違う。全員が何かを見ていたのに、その何かが全く異なっていたのだった。
これはおかしい。何がおかしいかと言えば、特に僕が空を飛んでいた、という点だ。僕は飛ばない。飛べない。あんな芸当ができるのは弾幕ごっこなどという酔狂な遊びに興じる者か、羽を持つ妖怪ぐらいのものだ。僕はいずれにも該当しない。空を飛んだ覚えもない。だからはっきりと言えるのだ。それはおかしい、と。
ただ観測者によって姿を変える、というだけなら僕もわざわざ出張ったりはしない。しかし他ならぬ僕本人が関わっているらしいことが分かれば話は別だ。その奇異な事件の原因を究明するべく、僕らはその多数の目撃者が集っている場所――つまりは寺子屋まで足を運んだのだった。
「それを見た者は、できる限り詳しく話をして貰いたい。見た物が何だったのか、どんな印象を受けたか、どこで、いつ、何をしているときにそれを見たのか、何でもいい。とにかく情報を集めたい。どうだろう、協力して貰えるかい?」
ある程度の情報は既に得ているが、それは全てこいしというフィルターに掛けられたものだ。信頼に足るソースとは到底言い難い。できるのであれば、情報源から直接聞き出すのが一番望ましかった。
しかし子供たちはきょとんとして、僕の言葉がまるで伝わっていない様子だった。
はて。
そんなに難しいことを尋ねたつもりはないのだが。
困惑しきった表情の子供たちを前に、けれども僕も困惑して何も言えずにいた。暫くの間沈黙が続き、やがてその空気をうち破るように、勝ち気そうな少年がゆっくりと口を開いた。
「あのさぁ……もしかして知らないの? 見てみなよ、上」
「上?」
言われたままに顔を上に向ける。
目の前に広がるのは、色々な種類の木でつぎはぎされた天井だけだった。
「何も見えないが……上が何か?」
「違うっつーの。外だよ外」
少年の突っ込みに、周囲がどっと笑う。まぁそれもそうか。
しかし、上、だと? それならここに来るまでに気付いているはずだが……気に留めるようなことは何もなかったように思えるが。
まぁ、ここで考えているより実際外へ行った方が早いか。
僕は玄関へと踵を返し、下駄箱から履き物を取り出し履いた。そして閉まっていた出入り口の扉を開き、太陽が燦々と照り輝いている空を仰いだ。
まぶしい。
なんてことは重々承知なので、すぐに手で日除けを作り目を細めよく周囲を見渡す。しかし特別これといった変化はなく、見えるのはやはりいつもと変わらない風景そのものでしかなかった。
「……何もないじゃないか」
僕がそう言うと、後ろからたくさんのブーイングが聞こえた。中でも多いのは、嘘だ、とか本当に見たの、とかそこにいるじゃん、等々。だがそんなことを言われても困る。僕はちゃんと目を見開いて見たし、その上で視界にあるのは平常極まりない日常風景だけなのだ。嘘なんか吐いていない。
だが、「そこにいるじゃん」と言うということは、子供たちには今実際に見えているようである。ふむ……僕には見えなくて子供には見えている。もしかしたら、子供にしか見えないものなのかもしれない。
そう言えば聞いたことがある。大人には見えず、「コロンブス」と呼ばれた探検の専門家ですら見つけることのできない島――「夢の島」と呼ばれているらしい――が、外の世界にはあるのだと。
とは言っても大人には見えないだけであって、子供ならば誰でも見つけられるものなのだそうだ。どういう原理なのかは分からないが、物語や歌の中でも語られているくらいなのだから事実なのだろう。何かの魔法でも掛けられているに違いない。今度魔理沙に聞いてみよう。
とにかく、それと同じことだ。今回の事件も同じような魔法が関わっているのだろう。だから僕には見えず、子供たちには見えているのだ。
「そんなわけないじゃない。私にも見えてるのよ? 見た目はこれでも貴方より年上なんだから。少し考えれば分かりそうなものなのに」
「……君は僕より年上だったのか」
「あれ? 突っ込むとこそこなの?」
こいしは意外そうな声を上げる。
というか突っ込み待ちだったのか。
恐らくは心の声に反応したことについて言って貰いたかったのだろうが、こいしは覚りだ。心の中を読まれたとしても何らおかしいことはない。もし万が一にも彼女が覚りでなかったとしても、姉であるさとりに第三の目を貸して貰えばいいだけの話だし。
手品というものは種を明かせば、何と言うことはないものなのである。
……どうも話が逸れるな。本題に戻ろう。
僕の仮説はどうやら崩れてしまったようだ。こいしにも「それ」が見えている時点で確定である。また振り出しに戻ってしまった。
……そう言えば、こいしには何に見えていたのだろうか。少し気になるな。
「なぁ。君には何に見えていたんだ? 教えてくれよ」
「えっ? ……探偵さん?」
「僕は空を飛ばない」
思わず溜め息を吐いてしまう。
とんでもない返答だった。
しかし僕がそう言ったすぐ後に、寺子屋の中からも「えっ」と驚くような声が複数聞こえた。どうやらこいしと同じように見えていた者が何人かいたらしい。僕を何だと思っているんだ。
「全く……それこそ少し考えれば分かることだろう? 空を飛べる者なんて極僅かだ。おかしいと思えよ」
「うーん……なんか飛べそうだったから、つい」
ごめんなさいと言いつつ、こいしは恥ずかしそうに眉を八の字に曲げて頬をポリポリと掻く。正直まだ言いたいことはあったが、あまり怒っても大人気ないのでやめておいた。
やれやれ、聞いただけ損だったようだ。とりあえず後は生徒たちから話を聞いて、一旦家に戻るとするか――そう考えた時、
閃いた。
――あぁ、そう。そうか。そういうことだったのか。
これなら全て、合理的に説明がつく。
なんだ、こんな簡単なことだったのか。考えれば考える程、自分の間抜けさに呆れ笑えてくる。全く、馬鹿馬鹿しい。
「……どうしたの、探偵さん? いきなり笑い始めて。ちょっと怖いよ」
「いや、……何。この事件のからくりが分かってね。それがちょっと、面白かったんだよ」
「……からくり? 何、もしかして分かっちゃったの!?」
こいしは目を丸くさせ、手を口に当てて驚いている。
しかし、本来ならばもっと早く気付いているべきだったのだ。僕はそれを、もう既に目撃していたのだから。
――子供たちが見た物。
弾幕、UFO、巫女、魔女、僕。
いずれも飛んでいてもおかしくないものだ。
弾幕は当然空を飛ぶ。UFOも然り。巫女や魔女は妖怪退治の最中ならば、専ら空を飛んでいる。
肝心の僕は空を飛ばないが、「観測者が飛ぶと思っている物」に変化するとすれば――そう見えたとしても不思議はあるまい。
そして、今僕が目にしているのは、異常な程数の多い妖精たち。
普通ならこれだけいればおかしいと思うはずの、しかしここ数日同じ風景を見ていたせいで感覚が麻痺していて、特に違和感を感じさせなかった、目の前の光景。
僕を空を仰ぐ。
視界に入るのは、仲間同士で戯れる悪戯好きの自然の化身。
僕が見えないと思っていた「謎の飛行物体」は、その実数日前から僕の前に姿を現していたのだった。
◆
「……おい森近。そろそろ諦めて帰ったらどうだ。お前がいると授業が始まらないんだよ」
「何、気にする必要はない。君は君で勝手にやっていてくれ。こっちもこっちで勝手にやるから」
「だからお前がいると誰も教室に戻らないんだよ! いい加減分かれこのバカ!」
ガン、とくぐもった鈍い音。続いてばたんと何かが倒れる。
恐らく教卓でも蹴っ飛ばしたのだろう。あいつは短気で困る。
さて、と改めて前を向く。ところが妖精はもういない。どうやら先程の衝撃音に驚き、どこかへ逃げてしまったようだった。
「……おい慧音。君のせいで逃げられてしまったじゃないか。どうしてくれる」
「知らない。自分で何とかしろ」
不機嫌な声に後ろを向くと、慧音はすっかりへそを曲げてつんとそっぽを向いてしまっていた。
やれやれ。まるで子供だな。
「大量発生した妖精の謎」を解いたあと、僕は早速空に浮かぶ妖精たちを捕まえようと奔走した。
しかしこれがなかなかに厄介な話で、どんな策を弄しても捕まえることができないのだ。どんな魔法が掛かっているかは知らないが、まるで意思を持っているかのように飛び回り僕の手を上手くかいくぐる。これでもし僕が真相に至っていなかったなら、気紛れな妖精たちの暇潰しに付き合わされているだけと考えてしまっていただろう。
終いには汗だくになって息が切れる始末。夢中になっていたせいで忘れていたが、そもそも僕はそんなに体力がある方ではなかったのだ。それを何も考えずにただ走り回っていたものだから、既に気力は底をついていた。
かと言ってほんの目と鼻の先に真相があるのに、諦めるのも勿体ない。そこで僕はあえて何も手を出さずに傍観し、僕への警戒を解いて隙を見せた瞬間を狙う作戦に変更したのだった。
そんな時だ。寺子屋の教師、半人半獣の識者、僕の数少ない知己の一人上白沢慧音が姿を現したのは。
「うん? 皆外にいると思ったら……何をやっているんだ、森近」
最初こそは、そんな風に友好的に話し掛けてきた。久し振りだなとか、授業に使う資料を忘れて取りに行ってたんだとか、そんな他愛もない世間話。
けれど僕もたった一瞬の隙を見逃したくはないので、ろくにまともな返事もできない。適当な相槌を打っている内に慧音はむっとした表情になり、小屋の中へと入っていってしまった。
そこからがまずかった。
休み時間はとっくに終わり、本来なら授業を始めているべき時間。慧音は外にいる子供たちに招集をかけたのだが、一向に戻る気配がない。それもそのはず、僕の動向を皆固唾を呑んで見守っていたからだった。
僕としても見られているのはそれ程好ましいことではないのだが、いちいち注意している時間が惜しい。だから放置していたのだが、それが余計慧音にとっては腹立たしいことだったようで。
一行目に戻る、というわけである。
……と、まぁ、そんな経緯があったわけだが。
ある程度は僕にも非がある、か。いくら何でも自分本位にし過ぎたのかもしれない。親しき仲にも礼儀あり、とも言うしな。せめて話しかけられている間くらいは、ちゃんと相手をしてやるべきだったか。
子供たちもいつにない慧音の豹変ぶりに、やや怯えている感がある。普段は心優しい里の守護者、弱い者の理解者であり味方である彼女との落差が激しい。
半獣を有している以上普通の人間より気性は荒くて当然なのだが、そこを理性で抑えていたのが慧音なのだ。だから尚更、この怒りっぷりが彼らの目には恐ろしいものに映ったのだろう。
やはり、ここは謝っておくのが得策だろうな。
「……あー、悪い。悪かったよ慧音。話しかけられているというのに相手をしなかった僕が悪かった。謝るよ」
「はん。お前なんか知るか。どっか行け。歴史から消えてしまえ」
「…………」
まさか泣くとは……。
そこまで悪いことしただろうか。
何だかいたたまれない気持ちになってしまう。
やはり元凶は僕なのだし、慰めるべきなのだろうがどんな言葉を掛ければいいのか分からない。どうしようかと悩んでいると、不意にくいくいっと袖が引っ張られる感覚。見ればそこにはこいしがいた。
「帰ろう」
「え? でもまだ何も……」
こいしは無言のまま強引に、僕の袖を更に引っ張る。あまりに強い力にバランスを崩し転びかけると、彼女は中腰の僕の耳元に顔を近付けてそっと呟いた。
「ねぇ探偵さん、あの人は帰って、って言ったんでしょう? なら素直に従いましょうよ。引き際を見誤ってはいけないわ」
「む……ぅ」
全てを断ち切ってしまう意思。彼女の言葉には、そんな冷たく重たい響きがこもっていた。
有無を言わさぬ声の色に、僕はいつの間にか頷かされる。それを確認するとこいしは、力尽くで無理やり僕を里から連れ出したのだった。
帰路道中。
こいしと二人肩を並べ、僕は香霖堂に続く道を黙々と歩いていた。
しかし、慧音でも泣くことがあるんだな。
正直なところ、あいつはもっと図太い性格だと思っていた。半分妖怪の身でありながら人間の里の守護者という重い肩書きを背負い、日常生活においては子供たちに読み書きそろばんを教えている。今でこそ受け入れられてはいるが、初めは強い反発もあっただろう。それでも続けようとするには、余程固い意志がないといけないだろう。僕が気楽に付き合えるのも、あいつが僕という尋常から半分外れた存在を受け入れることのできる深い懐を持っているからだ。でなきゃ出会いすらもしなかっただろう。
それが出来ているというのに、僕に二言三言無視されただけであの怒りようだ。驚いた。なんだかんだ言ってあいつも女なんだよな、ということを改めて認識させられてしまった。
今回の妖精の件にしてもそうだが、思い込みというのは時にかなりの影響を現実に及ぼすものらしい。一般論、固定観念は思考を阻害する。これはそれだからあれなんだ、なんて決め付けてしまってはいけないのかもしれないな。
いや、しかし、慧音が泣くなんてことは全く予想していなかったことなのだが。これに関しては、全く驚かされるばかりである。
「なにそれ。ばっかみたい」
「何がだよ。いきなり君にそんな暴言を投げ掛けられるような覚えはないぞ」
「人の感情の機微なんて、それこそ型に当てはめる方がおかしいのよ。男だから女だから、って、それだって固定観念じゃない。誰が泣こうが怒ろうが、それはいつだって当たり前のこと。生きているんだから、何があったっておかしくはない。だってそれが生きてるってことなんだから」
説教された。
確かに、人間は式神ではない。式神はいくら人間らしくても、その裏には緻密に書き込まれた計算式が存在するはずだ。だから、どんなことが起きても式神は組まれた式以上のことは決して為し得ない。
その点、人間――生物はある程度行動を予測できても、完全に結果を思い描くことなどできない。そこには必ず、不確定な要素が入る。式神でないのだから同じ数を代入したとしても違う数字が出るのは当然のことなのだ。
こいしの言っていることは、つまりはそういうことなんだろう。
「やけに哲学的だな。それが君の座右の銘か?」
「嫌われ者の哲学、ってやつかな。なんてったって覚りですから。予測はできなくても知ることはできるのよ。それこそ、無数の感情をね」
そういえばそうだったっけ。
そう言われれば余計に信憑性が高まる。覚りだからこそ得られた境地、哲学。僕には人の深層心理を知る手段などないから、この点においてはこいしに劣っていると認めざるを得ない。
とても釈然としないが。
「だけどまぁ、謝っただけマシ、かな。及第点ではないけれど」
本当変わったよね、とこいしは呟く。
「以前の探偵さんなら、そんな風に他人を気遣うことが出来たかどうか。それに加えて知り合いだったんでしょう? なら、余計に地が出そうなものだけれど……そういう意味で、根本的に変わったのかもしれないわね」
「おいおい、まるで僕を血の通っていない機械のように言うな。僕だって人を気遣うことくらいするさ。誰かが寝込んだりしたら、それの看病くらいはしてやるよ」
「あら、そうなの? なんかちょっと意外かも」
「おい」
「まぁそれはおいといて、本当変わったと思うよ。特にあの推理。よくあれだけの情報で答え当てられたね、って感心しちゃった」
推理。
推理、か。
それは違うよ。だって僕は探偵じゃない。僕のは推理ではなくただの推論だ。
詭弁に近い種類の、ね。
「まるでどこぞの妖怪ネズミさんみたいだ、ってね。結構影響されてるんじゃない? 久し振りに探偵さんのこと、格好良いって思っちゃったなぁ」
「それはどうも。お世辞なんかいらないよ。大体、証明さえできていないんだ。ただの思い付きでしかないものを披露したくらいで、探偵を名乗るなんておこがましいよ」
探偵に誇りを持っていた彼女に比べれば、僕のそれは取るに足らない屁理屈に過ぎない。
それと同列に並べて語るには、僕はいささか矮小過ぎた。
「はいはい謙遜謙遜。もっと自分に自信を持ってもいいと思うけどなぁ、私は。
でもまぁ、面白かったよ。とっても面白かった。こんなに楽しい時間は久々だったね」
「僕としては災難極まりない時間だったけどな」
「そう言わない。何にせよ、異変はめでたく解決したわけだし。シーフさんやらが出張ってくる前に解決したなんて、結構凄いことなんじゃない?」
「僕が解いたのは謎だけだよ。異変はまだ続いて――」
「そんな功労者の探偵さんに、私からのプレゼントをあげようと思います」
僕の言葉をさえぎって、こいしは笑顔で言う。
プレゼント、ねぇ。どうせろくでもないものなんだろうな。そう考えていた僕は、次の瞬間、驚愕に顔がこわばるのを感じた。
こいしはおもむろに被っていた帽子を取り、はい、とその帽子を差し出す。
何かと思って覗いた僕の目に飛び込んできたものは、すやすやと眠る一人の妖精。
そう、さっきまで僕が必死に捕まえようとしていた妖精が、今そこにいたのであった。
「……どうして、君が?」
追い掛け回すばかりで一向に成果が出ずへろへろになった時に、ダメ元で一度こいしに応援を要請した。
答えはノー。自分の問題は自分で解決しろ。そう言って、にやにやと口元を歪ませながらただ見ているだけだった。
生粋の嗜虐趣味(さでずむ)。古明地こいしとは、そういう奴だったのだ。
だというのに、これは。まるで予想していなかった展開に僕が目を白黒としていると、こいしは不思議そうに答えた。
「んーとね……知らない内に入ってたみたい。私にはこれが探偵さんにしか見えないから、すぐに分かったんだけどね。まぁ何もしないで渡すのも面白くないし、一通り気が済んだら上げようかなぁって」
いや、渡せよ。
そこで終わりだったろうが。慧音を泣かすこともなかっただろうが。僕が疲れることもなかっただろうが。
こいつは何をしたいんだろうな、と思い、またすぐに思い直す。こいつはただ僕を虐めたいだけだ。それを見て楽しんでいるだけなんだ。助けようなんて答え、最初から持ってはいなかったんだ。
やはり生粋の嗜虐趣味である。
無駄骨、とはこういうことをいうのだろう。すっかり脱力した僕は、ありがとう、と一言だけ返して恭しくすぴーすぴーと寝息を立てている妖精を受け取る。
家に帰ったら色々調べてみるとするか。
はぁ。
「いやぁ、それにしても面白かったなぁ! 探偵さんが汗だくになって走り回る様はすっごく滑稽だったよ。本当、今日はここに来て良かったなぁ!」
嬉々として感想を述べるこいし。そこには悪意は感じられない。人を虐めるのを純粋に楽しんでいる辺り、尚更性質が悪かった。
ふと、思う。
こいつ、もしかして。
最初から全部知ってて、僕に話を吹っ掛けてきたんじゃないだろうか。
目的は当然、自分のため。自らの暇を潤し、嗜虐欲望を満たすための行動。
たったそれだけのために、こいつは僕を働かせた。
やりかねないことである。
……考えているだけでも疲れるな。
だめだ、やめよう。そう僕は決め、けらけら笑っているこいしを横目に見つつ家まで戻るのだった。
◆
それが、おおよそ三日ほど前の話か。
あれからも妖精は減ることなく、僕の店の周りを楽しげに飛び続けている。里の方の様子は知らないが、大方同じようなものだろう。結局のところ、異変は解決してはいないのだから。
店の中は今日もぐちゃぐちゃ。寝ている間に妖精が来て片付けしてくれないかと思う。どうしたってそれは有り得ないことだし、妖精ならむしろ逆に散らかしていきそうだからご免被りたいものだが。
理想と現実の乖離は激しい。いつだってどこだって、それは変わらぬ真理なのである。
「……さて、と。今日も始めるとしよう」
右手にはじたばたともがく妖精。勿論こいしから譲って貰ったものだ。机の上に優しく乗せて、また今日も同じような思考を繰り返す。
見た目はあどけない、何の変哲もないただの妖精にしか見えない。髪の毛を引っ張れば痛がるし、遊び道具を与えれば喜んで夢中になる。服を脱がしてみても何も変化は見られない。妖精らしく悪戯もする。どこをとっても、まさしく妖精そのものだった。
ならあいつに担がれただけじゃないか、とも思うのだが、それはない。何故なら僕の能力が、はっきりと示しているからだ。「これは歴とした道具であり、自然そのものである妖精などでは決してない」と。
曰く、用途は「空を飛ぶ」。正式名称「飛倉」。
意味がさっぱりだ。
飛倉、というからには倉なのだろう。つまり倉庫。しかしこれが倉庫とはどう見ても言い難いし、またそもそも倉庫が「飛ぶ」なんていうこと自体がよく分からない。倉庫が飛んだからといってどうなるというのだ。乗るのか。倉庫に。
成程それも有り得そうだと考えたが、この幻想郷において空が飛べたからと言って何か便利になるというわけでもない。狭い世界なのだ。殊人間においては、行動が可能な範囲など極々僅か。わざわざ飛ぶ必要がないのである。
それでも僕の能力を信じ切り、これが純粋に倉であり空を飛ぶとする。ではどうして僕には妖精に、あるいは他者には空を飛びそうなものに見えているのだろうか。倉なら倉のまま、姿など変えずに飛んでいれば良いではないか。どんな利点があるというのだろうか。
「一つには……倉のままの外見では困る、ということか。倉庫ということは何か入っているに違いない。わざわざ隠すというのだから、そう、宝の類が妥当だな。つまり僕のこの手にしている妖精の中には、宝が眠っているということになるわけだ」
口に出して考えを整理してみるものの、全くその先が見えやしない。例えば大きな宝箱だったとして、中に入っていた宝までこうして小さくなってしまうのだろうか。それだと何かしら、掛けた魔法を解除する方法でもあるはずなのだが……聞いたことないな、そんな魔法。
それに隠すのが目的なら、人によって見えてくる形が違うようにする意味はない。複数人に目撃させられれば、人によって違うものが見えることはすぐに判明するだろうし、逆に目立ってしまって何の役にも立たなくなってしまう。隠すどころか目立とうとしているようにしか思えないのだ。
よってこれの本当の使用用途が「財宝隠し」である可能性は低くなった。しかし、かと言って他に案があるわけではない。倉がある時点で金持ちなのは間違いないのだ。それをこれだけの数飛ばすというのであれば、相当の権力者であるに違いない。加えて魔法とも繋がりのある人物。そんな人間あるいは妖怪が、はたしてこの幻想郷にいただろうか。
「……そう言えばいたな、一人」
里の権力者。家に金があり、尚且つ魔法に明るい人物と繋がりがある。
あぁ、確かに一人いた。それも、僕のよく知っている奴だ。
霧雨魔理沙。霧雨道具店の一人娘であり、且つ魔法使いである彼女であれば出来ないこともないだろう。
目的がやや不明瞭であるが、あいつならこの程度の悪戯平気でやりかねない。異変解決にも何度か関与しているようだし、それなら異変を起こすことだって簡単なはずだ。実例なんて、何度も見てきているのだから。
「なぁ、そうだろう。君が犯人、そうじゃないか? 魔理沙」
「はっ。そんな血迷い事を言ってる暇があったらさっさと茶菓子でも出せ。遠路はるばるここまでやってきた客人だ、少しは労えよ」
「そこまで遠くから来てもいない癖に」
憎まれ口を叩きながら、僕は湯呑みを出すために立ち上がる。
カウンターを挟んで向かい側。意地の悪い笑みを浮かべる普通の魔法使いが、妖精を弄って遊んでいた。
「しっかしまさかなぁ。お前が私を出し抜くとは思ってなかったよ。意外だぜ」
「出し抜く……? まさか君、本当に犯人なんじゃ――」
「本当に馬鹿じゃないのかお前? そんなわけないだろ。“出し抜く”っていうのは、私よりも先にこいつを手に入れていたということだ」
そう言って魔理沙は妖精の足をつまんでくるくると回す。
つまり魔理沙もこの妖精を捕まえようとしていたわけか。まぁ、確かにこれだけ長い間妖精が急激に増えているんだ。異変と思わない方がおかしい。その解決に乗り出したということは、恐らく霊夢も動き始めているのだろう。となればもう解決は目前だということか。
異変は全て博麗の巫女の下に集まる。その近くにいれば、自然と情報も早く手に入るだろう。そして異変が起きたと分かればすぐに行動に起こし、解決すれば依頼人から成功報酬を横取りする。毎回そんな感じで異変を聞き付けるのだとか。まさに泥棒。彼女らしいやり口だった。
「だが何なんだろうな、これ。UFOって言うんだっけ? なんでこんな形のものが空を飛んでるんだろうな」
「……君にはUFOに見えているのか」
「あん? そうに決まってんだろ。それともなんだ? お前には他の物に見えているっていうのか?」
「いや。……そうじゃないよ。確かにUFOだ。それに間違いない」
「何を当たり前のことを繰り返して言ってるんだよ……なんか今日おかしいな、お前」
苦い顔を作って魔理沙は僕を睨みつける。
ここで妙な情報を与えたところで、説明するだけ無駄だろう。理解したところで何か利益が得られるわけでもないし、そもそも理解できるとも思えないからだ。無駄だと最初から分かっていることに、無駄に時間を浪費するよりは今はもっと他のことを考えていたかった。
こうして全てのからくりを理解した後でも、飛倉はいたってその真の姿を見せることはない。やはり何かしらの魔法でも掛かっているのだろうか。しかしそれなら魔理沙がすぐに見つけているはずだ。高レベルの隠蔽魔法でも用いられているのなら話は別だが。
考えれば考えるほど分からない。僕の能力を以てしても正体不明。実に興味深くはあるが、さて。
「あぁそうだ。ところで香霖、私の頼んだ例の物は?」
「出来てるよ。ここにある」
そう言って僕は、首から下げた鞄に手を突っ込みごそごそと中を探る。
手にぶつかったそれを取り出し机の上に置く。魔理沙に改良を求められていた道具、八卦炉だった。
「ほほう、どれどれ……見た目は変わってないな。何が変化したんだ?」
「変化というより追加だね。新しく出力系統を増やした。君の『霧雨』の姓にあやかって、五行の水に属した波状のエネルギーを出せるようになったよ」
「成程。つまりどういうことだ?」
「強くなった」
「ひどい説明だな」
何を言っても文句をつけたがるんだな君は、と嫌味を言ってやったが、然程気にしていない様子だった。暖簾に腕押し、糠に釘。霧雨魔理沙はそういう奴だ。もう慣れた。
「まぁいいや。サンキュ。また次も頼むぜ」
「それで、代金は――」
「ツケで」
そう言って魔理沙は懐に八卦炉をしまい込み、どんどん店の玄関へと足を進めて行ってしまう。右手に妖精を持ったまま。
っておい。
「待てよ魔理沙、見せてやるとは言ったがくれてやるとまでは――」
「借りるぜ。死ぬまで」
「流石にそれは出来ない! いいからすぐに返せ、今ならまだ許してやる」
「おいおい香霖、私はこれから異変を解決に行くんだぜ? そのために必要な物なんだよ。お前だって快く協力してくれ」
なに、そうなのか。
そこでぴたりと動きを止めてしまった、それが運の尽きだった。
魔理沙はそれじゃあまたお会いしましょう、と言い残し、扉を開けて香霖堂から出て行ってしまったのだ。
しまった、と思った時にはもう遅い。窓から箒にまたがる彼女の後姿が見える。今から追い掛けたところで追いつけるはずもない。
結局僕は歯噛みしながら、彼女の姿が点となって消えて行くのをただ見ているだけしかできなかったのだった。
◆
数時間後。
からんからんと鐘の音。誰かが店に来たようだ。
今日は来客が多いなと思いつつ、営業スマイルを浮かべて挨拶をする。
「いらっしゃいませ。ここは古道具、屋――」
顔を上げて、相手を見れば。
見慣れた灰色の服を着た、小柄な妖怪少女がそこにいた。
ぶすっと、やけに苛立った表情を作って。
「気持ち悪いな、君の営業スマイルは。まるで似合っていない。張り付けたかのような笑顔はかえって相手の気を悪くさせるんだぞ」
「うるさいな。来て早々口がよく回るじゃないか、ナズーリン」
「お陰様で」
別に久し振り、ではない。
引き受けていた武器の修理が終わってから、一度引き取りに来たからだ。連日のように顔を突き合わせていた頃に比べればずっと頻度は低くなったが、それでも懐かしいと言うには少々期間が短過ぎた。
憎まれ口の鋭さは、以前にも一層増しているようだったが。
「それはそれとして、調子はどうだ? 直した身としては経過も知りたいところなんだが」
「至って良好。素晴らしいね、君の腕前は。今まで何度かこの手の業者に依頼したことはあったが、ここまで私の希望通りにしてくれたところはなかったな」
「そりゃ重畳。褒めて貰えて光栄だよ。……それで、その格好は?」
僕の言葉に対し、ナズーリンは視線を返す。
じろりと睨む眼光は鋭いが、僕は怯まない。聞かれたくない内容だったとしても、それはやはり僕にとって気になることだったからだ。
彼女の服は、ボロボロだった。
そこまでボロボロというわけではない。けれど、明らかに一戦交えた後の様相。それも、敗色濃厚な。
髪はいつも以上にボサボサで、頬はすすけ服もところどころ破けている。開いた穴からは白い下着が見えるところもあって、明らかに遊びの類ではなかった。
「……戦ったな? 巫女か……あるいは」
「魔法使い。先日会った、ね」
魔理沙か。
そう言えば異変解決がどうこうとか言ってたっけ。もしかして、あれは本当のことだったのか。
だとすれば、何故。
「どうして君が襲われた? たまたま出会い頭に弾を撃たれでもしたのか?」
「そんなんじゃないよ。こっちから喧嘩を吹っ掛けて、負けた。それだけの話さ」
「吹っ掛けてって……」
「何、これも仕事の一つだからね。戦略的撤退という奴だ。上手く罠も発動したみたいだし、この程度のダメージは何ともないね」
戦略的撤退、ねぇ。
その割には、目が潤んでいるように見えるが。
まぁ、それには触れないでいておいてやるか。
僕は机に手をついて、ゆっくりと立ち上がる。そして奥の部屋へ戻りつつ、ナズーリンに向けて声を掛けた。
「ちょっと待ってろよ。着替え、用意してやるから」
「いや、それには及ばない。ちゃんと持ってきてるし」
ほら、とナズーリンは尻尾にぶら下げたバスケットから一着の服を取り出す。弾幕勝負にはちゃんと備えているらしかった。
……やけに用意周到な気もするが。
まさかとは思うが、こいつも異変に関わっているのだろうか。
「なぁナズーリン。もしかして君、今回の異変に何か関わりがあるんじゃ――」
「異変? 何のことだい?」
きょとんとした顔でナズーリンは返す。
なんだ、予想は外れか。
まぁ考えてみれば彼女は非力なわけだし、いきなり弾幕勝負を挑まれた際にもこてんぱんにやられない程度の対策は立ててあるのかもしれない。その時のための服の替えを、常時用意している、とか。
普通なら考えられない話だが、ナズーリンならやりかねない、と思える辺りがまた恐ろしい。
ところで、とナズーリンが手招きをする。促された僕は何だろうと思いながら再度カウンターに深く腰掛け、ナズーリンの言葉を待った。
次の瞬間。
僕の目の前に、鈍色に輝く鉄の棒が突き出された。
「香霖堂店主、森近霖之助。君の所持している宝塔を貰い受けにきた。大人しく渡した方が身のためだよ」
冷酷な声の響き。
ナズーリンの目は、笑っていなかった。
◆
緊迫した空気が、続く。
僕は首筋から汗を垂らしながら、ごくりと生唾を飲んだ。
ナズーリンは依然として動かない。鋭い視線には殺気が満ち満ちている。まるで僕が動いたらそのまま殺してやる、という意思を持っているかのようだった。
なんなんだ、この状況は。
さっきまで普通の会話を交わしていて、何の変哲もない日常を過ごしていたはずなのに――いきなり逆転してしまった。
ナズーリンは非力ではあるが、本気を出せばどうかは分からない。魔理沙から逃れ得た辺り戦闘慣れはしているみたいだし、勝ち目なんて万に一つも残っていないように思えた。
さて、どうするか。下手に出ればここでやられる。最善の選択をしなければ――死だ。
ごくりと、また唾を飲み込む。いやしかし、どちらにしても攻撃される可能性だって残っているのだ。そうなるならいっそ、隙を突いて先に動けばあるいは――そんなことを考えていると、不意にすっと、ロッドが引かれた。
そのままナズーリンはだらりと腕を下に垂らし、首を何度も横に振っている。なんだ、なんなんだこれは。いきなり何をしたいんだお前は。頭の中がぐるぐると回り始める。このわけのわからない状況は、僕を惑わすのに充分過ぎた。
すっかり混乱した頃に、はぁ、とナズーリンが息を吐く。
「――って、初めの頃はやろうと思ってたんだけどね。すっかり情が移ってしまったみたいだ。笑えるな」
ははっ、と、乾いた笑いを零すナズーリン。
何が起きているのかは分からない。しかし、とりあえずの危機は去ったことが分かって僕はひとまず安堵の息を吐いた。
「仕方がない、ちゃんと正規の方法で入手するよ。――では改めて。この店にある『宝塔』がほしい。売ってくれないだろうか?」
「そんな物はない」
即答だった。
ほうとう? そんな美味しそうな物、ここにはないぞ。食材を求めているのなら然るべき所へ行って買い求めろ。ここは万屋じゃないんだから。
そういう気持ちを込めて発した言葉だったが、ナズーリンははんと鼻で笑って一蹴する。
「そんな訳があるまい。私の目的は元々あれだったんだ。あれを探していたからこそ、ここに来たわけなんだからな」
「あれを探していた、から……? どういう意味だ?」
「……おっと。少々口を滑らせてしまったようだ。何、気にしなくても良い。いつもと変わらない、情報を集めていたら、たまたまここにあるということが分かったってだけのことさ」
そう言って茶を濁すナズーリン。どうにも首を傾げてしまったが、まぁ語りたくない事柄なのだろう。ならば深く追究することもあるまい。
しかしそう言われても、僕には心当たりがないことも事実だった。そのことを素直に告げると、彼女は呆れた顔をしながら未だ散乱した店内の左隅の方へと真っ直ぐ歩いて行った。
がらん、がらん。ぐしゃぐしゃになったゴミの山(僕にとっては宝の山なのだが)を、足で払うナズーリン。何度か同じ作業を繰り返した後に、あった、としゃがみ込んで何かを手に取った。
そうしてカウンターに持ってきたのは、僕が以前に見た、塔を模した形の謎のオブジェ。あぁ、そう言えばそんなのもあったな、成程確かに宝塔だった、と見ただけで全てを思い出した。
「これが欲しい。売ってくれ」
「……そんな物が? 宝にも見えないが……一体どうしてそんな物を?」
「君は客の事情をいちいち尋ねないと物を売れないのかい? 難儀な商売人だね」
かちんと来た。
しかし平静を装って、ふむ、と考え込むふりをする。どうせこの店には決まった価格なんかない。値段設定なんて僕の一存で決まってしまうのだ。
だが下手に高くし過ぎても、先程のように本当に襲われてしまうかもしれない。ぎりぎりの境界線を見つけて、出来る限りふんだくってやろう。それが僕の仕返しであり、また商売人根性でもあった。
とは言っても、すぐに値段が思いつくわけでもない。さてどうしたものか。腕組みをして考え込んでいると、ナズーリンが苛立った様子でおい、と机をトントンと叩き始めた。
「急いでいるんだ。さっさと値段を言え」
「はぁ? そんなこと急に言われたって……」
「いいから。早く」
急かされるがままに僕はそろばんを取り出す。すぐ決めろと言われても、どうしたものやら……珠を無意味にぱちぱちと上下させて悩んでいると、突然閃いた。
そうだ。どうせ急いでいるんだ。手に入らなければ困るのは向こうの筈。なら、ある程度高くしたところで文句は言えまい。
電撃的な思考でぱちぱちと音を立て、珠を電光石火の如き早業で動かす。値段設定を終えナズーリンにそろばんを差し出すと、彼女の表情が途端に強張ってしまった。
「……くっ……人の弱みに付け込んで……」
「値段はそれで決定だ。上下はしない。買うも買わないも君次第。さぁ、どうする?」
「……かくなる上は」
すっ、とナズーリンは懐からロッドを取り出す。予想していた通りの展開。そこで僕は待ったを掛けた。
「こんなところで揉め事を起こしていたら、それこそ時間をロスしてしまうだろう。素直に払った方がいいと思うんだけどね」
「……確かに道理だな。ぼったくりの癖に言うことだけは理に適っていやがる」
ちっ、と舌打ち。それでもロッドは再び下げられたので、僕は内心ほっとした。
さて、ここからが本番だ。商売は駆け引き。ここで失敗すれば、全てが水の泡となる――!
「何、僕も鬼じゃない。分割払い、という手もあるさ。とりあえず、今の君の手持ちだけでも払って貰えればそれは譲るよ」
「なんだと!? そ、それは本当か!」
助かった、というようにぱぁっと顔を輝かせるナズーリン。嬉々としながら財布を取り出す。余程切羽詰まっていたらしい。しまった、もっと釣り上げれば良かったか。
しかし今更文句を言ったところで始まらない。それにあんな物がこれだけの値段で売れるのであれば万々歳だ。高く望み過ぎてもいけないだろうしな。僕も自分の中で折り合いをつけて、それじゃあ、と一回分の値段を告げた。
瞬間、ナズーリンの顔から血の気がさっと引く。
「……? どうした、急いでるんじゃなかったのか?」
「いや……その、急いではいるけど……」
「ならさっさと払えばいいじゃないか。ほら」
そう言って手を差し出す。しかし、ナズーリンは不自然な笑みを浮かべたまま財布から金を出そうとしない。
……まさか。
「……足りない……?」
「…………」
こくり、と、一回。
どれだけ困窮しているんだこの娘は。
途端にナズーリンはカウンターの裏に回って、僕にすがりついてわめき始める。
「た、頼む! 今、あいにくと手持ちが殆どなくて……ね、ネズミたちの食事代で飛んで行ってしまったんだ! だからお願いだ、もう少しだけ、もう一声だけ!」
「下げない。言ったはずだよ、上下はしないって。だからこれ以上の交渉の余地はない。残念だけれど、この話はここで――」
と言い掛けたところで、はっと気付く。
視線を下に向ければ、顔を真っ赤にさせたナズーリン。今にも泣き出しそうな表情で、僕に懇願し続けていた。
それはまるで、この前の慧音をほうふつとさせるようで――。
こいしの言葉を思い出した。
「……分かった。少し考えてやらんでもない」
「ほ、本当か!? 頼む、何でもする! だから今、この宝塔を私に――」
「あぁ、それは約束しよう。ただし当然条件がある」
僕はそこで言葉を切る。
ごくり、とナズーリンが固唾を呑む音。顔は引き締まって、どんなことでもしようという覚悟が見受けられた。
その顔を見て、やはりこいつに対して僕は甘くなってしまうな、と毎度のことながら改めて思ってしまう。
ふぅ、と一息。そして大きく息を吸って言った。
「一年間、僕の店で働いて貰おう」
◆
「……本当に、いいのか? そんな程度のことで」
「勿論。一度言ったことだ。二度とは変えやしない」
「そうか。……ありがとう、霖之助。感謝するよ」
「いやいや。君のあんな醜態が見れたのなら、それでも安いくらいだしな」
そう言うと途端に、ナズーリンがぷぅっと頬を膨らませる。
「くぅ……いくら焦っていたとはいえ、あんなことまでしてしまうとは……ほとほと自分が恐ろしいよ。全く……とんだ失態だ」
「天狗にでも頼んで写真を撮って貰いたいくらいだったな。それくらい笑えたよ」
「うるさい! 私だって必死だったんだよ! ……いいか、このことは他言無用だ。そうでなきゃ明日の日は拝めないと思え! いいな!」
「はいはい」
くつくつと笑って、僕は彼女を玄関まで見送る。
いやしかし、本当に収穫だったのだ。いつも気取っている彼女が、地面に這いつくばって僕に懇願する光景。案外彼女は他人の嗜虐趣味を刺激する才能があるのかもしれなかった。
それに加えて、一年間雑用を任せることができる。一人で店にいるのもなかなか不便なのだ。住み込みOK、朝昼晩三食付きという緩い条件ではあるが給料はなし。その上で彼女をこき使えるというのはやはり魅力的である。
互いの合意を得た上で、かくして契約は成立したのだった。
「まぁ、帰ってくるのは少し遅くなってしまうかもしれないが……この仕事が終われば一段落つくしな。ちょうど良かったよ、すぐに職が見つけられて」
「職? 探偵業は続けないのか?」
「続けるよ。ただ不安定なところもあってね……兼業でもしないとやっていけないのさ。だから食事つきで住み込みの仕事っていうのは、私にとってはぴったりの条件だったってわけ」
「ふむ……それなら良かった。互いに利害は一致しているわけだからな」
ナズーリンは笑顔でこくりと頷く。
「さて。……おっと、もうちょっと時間が押し気味だ。そろそろ行かなければ。それじゃあな、店主。またいつか近い日に会おう」
「ああ。さっさと終わらせて戻ってこい。……言っておくが、くれぐれも逃げようとか考えたりするなよ? こっちもそれなりに人脈はあるんだからな」
「その心配はいらないさ。このナズーリン、義は通す女だよ。……なんてね。でも、約束は破ったりしない。どれだけ時間がかかろうとも、必ず遂行してみせる。それが私の」
信念だ、と言い残し。
ナズーリンは去って行った。
そう、笑顔で。
でも、何故だろうか。
笑顔だったにもかかわらず、僕には彼女の表情に陰りが見えた気がしたのだ。
その、およそ一ヶ月後。
僕の見たものは、気のせいなんかじゃないことが分かった。
とても面白かったです。ゆっくりでもいいので続き楽しみにしてます!
何でだろう?
けど、このシリーズは好きです。
続き楽しみにしてます。
慧音もナズもかわいいなぁ。
ナズーリンかわいいなぁ
そこまでよ!
あなたのナズー霖が素敵すぎて生きるのが辛い
こいしちゃんが(いい意味で)妙に達観していたのが印象的でした
GJ!!
貴方の書く霖之助は素敵すぎるw
でもナズに嗜虐趣味を刺激される感情は全く理解できません(真顔)
あと、販売延期なんていまさらじゃありませんか
……ネズーミンさん、「ははっ」まずいですよ
続き楽しみにしてます
2人が既に知り合っている状態での宝塔の売買交渉は初めて見ましたが
もし慧音の件がなかったらどうなっていたんだろう
知り合いであるが故に、逆に鬼畜な条件を出す霖之助を想像してしまう
あと、ナズの白い下着に少しハァハァ
早く続きが読みたいですm(__)m
続きがとても楽しみです。
このまま行けば、次作のタイトルは『フフッフ~♪』になるんですか?
終わってないのがさびしいです・・・
ずっと続き待ってます!