これはさとりんが苦い物を食べられるようになる話より こいしがキッチンから出て行って、フランとぬえが二人きりになったときの話です。
完全に番外的作品なので前作を見なくても多分問題はないです。
キッチンは爆発した。
フランを爆心地として恐るべき大爆発が起こり、周りの調理器具や材料やぬえは全て爆風と共に吹っ飛んでいった。
煙が辺りを包み込み、ケホケホと咳き込む声が聞こえる。床や壁も吹き飛び大量の瓦礫の山が出来上がった。
ちなみにフランとぬえはとてもとても丈夫なのでケガとかは一切ありません、ご安心ください。
「ぬえ。ちょっとぬえ、どういう事よこれは」
爆発したフランは、吹っ飛んだぬえの心配をする事は無く、この状況の説明を求めた。額にはピクピクと怒りのマークが浮き出ている。
当人のぬえはフランの前で、でんぐり返しのような格好になって伸びていた。目はグルグルに回っていて、自力では起きる気配がない。
「ちょっとぬえ、起きなさい」
伸びたぬえを起すべく、フランはベチベチとぬえの頬を往復ビンタする。
しばらくすると、ぬえは唸り声を上げながら眼を開き、フランの方を凝視する。そしてキョロキョロと辺りを見渡した。
「ヌエッ? ここはどこ? 私は正体不明?」
「まだ寝ぼけているようねぬえ……」
ここは地霊殿のキッチン、この二人はバレンタインのチョコを作りに来たのだが……。
「なんでチョコが爆発するのよぬえ!」
「あー! 思い出した。なんでフランは私のチョコをつまみ食いしたんだよぉ」
こいしが居なくなり、もう二人のチョコも完成したところで、フランがぬえのチョコをつまみ食いした。
そして、フランがぬえのチョコを噛んだ瞬間、眩い光が辺りを照らし、辺りは廃墟となった。
「なんなのよあのチョコ?」
「ぬえ特製パイナップルチョコレート。おいしかった?」
「ええ、爆発的な味がしたわ」
悪びれないぬえに、フランも悪態を付きながら溜息をつく。
「それで? なんで爆弾なんてチョコに仕込んだのよ……」
「つい照れ隠しから……」
そう言うと、ぬえはフランから目線を外し、頬を染めながら恥ずかしそうに指をツンツンする。
フランは呆れて開いた口が塞がらない。
「照れ隠しで爆破される方は、堪ったものじゃないわね」
「なんだよー、そういうフランだってチョコに何か仕込んでたじゃないかー」
「私の方は可愛いイタズラよ。食べた瞬間魔力が膨張し、小規模な爆発が起こる魔法をかけただけよ」
フランも悪びれる事は無く、誇らしげな顔でキッパリと言う。
ぬえも呆れて、乾いた笑いしか出なかった。どっちもどっちである。
「しかし、どうするのよこれ。ひどい有様よ」
綺麗だった白いタイルは黒焦げになり、台所用品は粉々に吹き飛び、材料は飛び散り無残な有様、後に残ったのは瓦礫の山であった。もうチョコを作るどころではない。
「大丈夫だってフラン。こんな事もあろうかと思って、ちゃんと策はあるんだから」
そう言うとぬえはパチンと指を鳴した。すると、扉の向こうから、どこからともなくぬえの使い魔であるUFOがふわふわと飛んで来た。ぬえがどや顔をしてる中、フランはわけがわからないと言った顔でそのUFOを唖然と眺める。
そして、そのUFOがぬえの目の前まで来ると、中から二つのチョコが出てきた。それをぬえがキャッチする。フランは目を丸くして、その謎の光景を無言で凝視する。
「どうフラン? キッチンが爆発すると予想して、予め私が作っておいた手作りチョコを避難させてたんだよ。頭いいでしょ私!」
「そう……、とりあえずいろいろ言いたい事はあるけど」
嬉しそうに笑うぬえを見て、フランは決心した。その時のフランの表情は、怒るでも無く笑うでも無く、とても清清しい、無我の境地にも似た表情だった。
「貴方を爆破すればいいのね!」
フランが意気揚々とぬえに襲い掛かろうとすると、ぬえは苦笑い気味にそのチョコをフランに差し出した。そのぬえの行動に、フランの動きはピタッと止まる。
「ほら、これを代わりにレミリアに渡しなよ。フランが作ったって言えばバレないって。結構味には自信があるから喜んでくれると思うよ。私だって、フランのチョコを爆破しちゃって、これでも悪いと思ってるんだから」
ぬえはちょっと照れながら、自分の手作りチョコをフランに渡した。そのチョコは赤い紙で包まれており、形は綺麗な真四角だった。
フランがきょとんとしながらそれを受け取ると。ぬえはちょっと嬉しそうに、少し恥ずかしそうに佇んでいた。
「これを私が作ったと言って、お姉さまに渡せと?」
「う、うん……」
ぬえは俯いたまま呟いた。ぬえは、他にも何かを言いたそうだった。何かをフランに言いたかったけど、途中で迷って、やっぱりやめたようだった。
それを見たフランは、ぬえは本当に自分勝手な奴だ、自分勝手で我侭で不器用な奴だ、そう思った。
「はぁー、まったく。本当に面倒な奴ね貴方は」
溜息をつき、フランはぬえの差し出したチョコの包みを開け、一口食べた。
ぬえのチョコは、甘かった。雑そうな性格のぬえに似合わず、繊細な甘さのチョコだった。
「ちょちょっとフラン、駄目じゃないそれ食べたら。レミリアに渡す分が無くなっちゃうよ? もう一つの方はあげないからね」
慌てて止めようとするぬえだが、フランはお構い無しにチョコを食べ続けた。
「そうね。もう一つのほうは、こいしちゃんにしっかり渡しなさいよ」
ギクッとしてぬえはまた俯いた。額に汗が流れる。
フランはそんなぬえを見て、くすりと微笑みながら、チョコを最後まで食べた。
「美味しかったわよぬえ」
「本当に?」
フランの素直な感想に、ぬえが喜びながら顔を上げる。
それを見てフランはまたおかしそうに笑う。馬鹿にするような笑いでは無く、本当におかしそうに。
「今度からあんな面倒な事しないで普通に渡しなさいよ」
「えーと、うん……」
ぬえは恥ずかしそうに俯いた。素直に渡すのが恥ずかしいから、あんな大掛かりな事するなんて不器用にも、自分勝手にもほどがある。だけど、恥ずかしながらも、チョコが渡せて嬉しそうにするぬえをフランは憎む事は出来なかった。
渡して貰った事に、フランも嬉しかったから。
「それに、考えている事はみんな同じみたいだしね」
「え?」
フランがおかしそうに笑うと、ドアの向こうからフランの分身が、瓦礫の上を歩き辛そうにしながら入ってきた。
見るも無残なキッチンを見てフランの分身は、やっぱりこうなるのか、とおかしそうに笑った。
こんな事もあろうかと、フランが予め作ったチョコを持ちながら……。
UFOが一つUHOになっているのは誤字ではありませんね?w
そいやぁ、ムラサキさんの三人娘と他のExキャラの絡み、あんま見ないっすね。
もこたんとかケロちゃんとの絡みも希望してみたり!
爆発が思いのほか強すぎてさとりんたちまでアフロになってたりとかwww
こいしちゃんだけは無意識に爆発を避けてそうですが。
あと、「ヌエッ?」が可愛いww
「UHO」ウホッwwwwwww
毎日のように三人娘が見られて幸せです。
なんだよこのセリフww
いやぁ、しかしぬえならず、フランまでもしっかり保険をかけてるとは、あなどれませんねぇ。
……じゃなくて、なんで爆発すること前提なん!?