Coolier - 新生・東方創想話

私、咲夜は紅魔館のために何が出来るのでしょうか

2010/02/14 13:38:47
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※この物語は作品集100の「 パチュリー様が友人のために苦しみを背負われました 」の設定を使っております。こちらから見て頂いても大丈夫だとは思いますが、そちらも見て頂けると話としては多少納得できるかと思います。







ごきげんよう、私の名前は十六夜咲夜。ここ紅魔館当主であられるレミリア・スカーレットお嬢様に仕える者でございます。
仕えると言っても私はこの館のメイド長。お嬢様ご自身だけではなく紅魔館管理全般を請け負っておりますため、館の清掃から他のメイドの管理、果てはお嬢様との毎晩の御奉仕から何までこなさせて頂いております。
ですが、メイド長になったことは私の努力の結晶の生み出した結果だと思っております。そんな欠点の「欠」が全く見られないパーフェクト超人かつスタイルもボン、キュ、ボンな私が紅魔館の誰よりも優れているとは言いませんが、少なくとも人間の身としてはそれなりに優れているとは思います。
なので、私自身に欠点があるわけが無いのです。あったとしたら今すぐ前言を撤回――巨乳であることは撤回しません――して、欠点を補うべく血を吐く思いで努力するでしょう。
ですがそれも私に欠点があった場合のこと。紅魔館の名声を無くすような者がいれば考えるよりも前にナイフを投げます。ええ、門番もその一人です。
ですが……非常に申し訳にくいのですが、それも私より上の立ち位置にいる方々となってはさすがにナイフを投げるわけにはいきません。むしろ私の首が飛んでしまいます。物理的に。

まあ、分かりやすく申し上げますと……その原因が全てお嬢様にあるということです。

勿論、全てなどと言うことは誇張しすぎかもしれません。確かに知能の低い妖精メイドも多くいるのでそちらも関係してくるかもしれませんが……あくまで紅魔館の名声は当主の振舞い、その側近に目が向けられるものです。
考えたくはなかったのですが、当主に問題があると考えるしかありませんでした。お嬢様の妹であるフランドール・スカーレット様は長い間地下に幽閉されていたくらいですし、大図書館にいるパチュリー・ノーレッジ様はお客様も自らご対応されてますし、むしろ評判を上げて下さっています。
ですが、問題はレミリアお嬢様です。
お嬢様はあろうことか、パチュリー様の友人たるお方の前で「ねーねー、咲夜―。バレンタインでしょ! 食べたいチョコー!」と言いながら傷みにこらえた戦闘兵のようにその場でのたうち回ったのです。
お客様は当然唖然とされておりました。パチュリー様はお腹を押さえてひたすらに肩を揺るわせ、私は見えない涙を流しながら頭を垂れていたと思います。
そのまま駄々こねてるだけなら良かったのですが、あろうことか「あら、お客様? 私はこの館の当主、レミリアよ。どうぞ気兼ねなく、自分の家のようにくつろいでくれて構わないわ。あ、今日はハンバーグ食べたい」と仰ったのです。時間を消す能力があったなら私は都合の良いように無かったことにしていましたが……それも無理な願望です。
余談ですが、これはあくまで一例です。これ以上に考え直して欲しいことが沢山あったのですが、最も名前に泥を塗った行為がこれだったと思います。
なので私はお嬢様の……いえ、紅魔館のために何か出来ることはないかと考えたのでございます。
正直に言いますと、これは既に過去の話となってしまうのですが……紅魔館の神様、パチュリー様によってお嬢様はご自身が当主であるために勉強をされると思いなおして下さったのです。
そのパチュリー様は友人への思い――愛と言っても違いないかもしれません――によってその身を犠牲にして、現在は大図書館で毎日愉快な悲鳴を漏らして苦しそうに暮らしております。そう、彼女は自らの身を犠牲にしてまでお嬢様のために――ここ紅魔館のために全力を尽くして下さったのです。
なので、今度は私がお嬢様のためにこの身を捧げましょう。この身を剣とし、盾と誓った日とは違います。私が――お嬢様のためだけではなく、紅魔館を明るく照らすための太陽となりましょう。太陽の光あってこそ、月は輝くのです。

――これは、メイド長が紅魔館のために当主を正しい方向へと導くお話――――。



―◆―



「では次はこの問題です。お嬢様、解答をお願いします」
「ええ」

ここは紅魔館にあります学習室。私がまだメイドというものをよく理解していないときは、パチュリー様によく本を借りてここでお勉強したものです。
ですが、今勉強が必要なのはあくまでお嬢様。ここには必要な書物も多少なりに揃っていますし最適な場所だと判断したので、そのためにこの部屋を開放して清掃し、すぐにでも使えるようにしたのです。
そして、現在この部屋にいるのは私とお嬢様、そして妹様の3人でございます。
パチュリー様もご同行を申し出られたのですが、あそこまで苦しんでおられる手前……強制的ではありましたが“条件”を理由に休むようにとお部屋へ戻っていただきました。お嬢様への厚い友情に思わず涙が滲みましたが、さすがにパチュリー様がまた苦しんでしまうことに抵抗があったのも事実です。
ちなみに条件と言うのは、原理はよく分かりませんが「音声の転移装置」だそうです。私が今つけているピアスより、私の聞いている言葉が全てパチュリー様の元へと届くようです。魔法って怖い。
さて、話が脱線しましたが現在はお嬢様のための勉強時間。妹様も勉強出来て一石二鳥……咲夜、心を鬼にして頑張ります。

「月が赤いからに決まっているわ」
「……は?」
「そう! 月が赤い日があるから温暖化は進んでいるのよ。ホント、私のカリスマに世界がひれ伏しているわ」

――もう帰りたい。
素直にそう思ってしまう自分が本当にみじめです。ああ、私の決意はこのようなことで揺らいでしまうほどに簡単なものだったのでしょうか?
これではパチュリー様に顔向けできません。ここは一つ、今まで訂正しなかった自分が悪いと認めて正しい答えをしっかりと丁寧に――――。

「お姉様?」
「あら、フラン。どうしたの?」

と、思っていたらその横からお嬢様へと話しかけるは妹様。
ああ、妹様にまで変な知恵が入ってしまっては紅魔館はもう終わりです。さすがに姉妹揃って同じような知識になってしまっては、後から手がつけれなくなってしまいます。
これ以上、妹様がお嬢様の調子を上げて私にも手がつけられなくなったらそれこを完全なる終わりを意味します。そのことを察した私は、はっきりと言おうとしました。いえ、言わなければいけないのです。

「お嬢様、その解答は――」
「お姉様ったら、頭に蛆虫が湧いてるとしか思えませんわ」
「なっ……!」

さすがに驚きました。お嬢様も私も。
正直に言いますと、先日のことがあったため妹様がお嬢様を見下すことも考えてはいたのです。
ですが、そこはさすがに姉妹。先日とは違って一緒に頑張ろうというお互いの気持ちの一致でここにいるはずです。なので、程よい刺激をお互い与えてくれれば良い環境で勉学に励めると思ったのです。

「大体お姉様。もういろいろと面倒だから簡単に言うけど、温室効果ガスによって温暖化が大きな問題になっているのよ。温室効果ガスってのは二酸化炭素とか炭素、メタンとかのことね。要は赤外線を吸収しやすい性質を持っているの。分かる? 太陽の可視光のエネルギーが地表を温めてそこから反射される赤外線を吸収するから余計に暖かくなるの。これが温室効果。だから温室効果ガスが増えれば増えるとドどんどん暖かくなるってこと。常識でしょ?」
「あぁ……!」
「…………」

説教する妹。悶える姉。帰りたそうなメイド長。
今この部屋にいるのは簡単に言えばこのような状況です。正直妹様に勉強を教えてたのってパチュリー様なわけですから、正直お嬢様じゃどんなにがんばったところで追いつけるわけがないと思ってしまいます。
しかし、ここでめげては何も生まれません。私は尚も傷む心を隠しながら授業を続行します。

「お嬢様。今妹様が言った内容を自分なりにでも良いので言ってください」
「はうあ!?」
「え、聞いてなかったのお姉様?」
「ぐぬぬぬぬ……!」

お願いしますお嬢様。これも咲夜の愛の鞭なのです。どうかおわかり下さい!
ですけどそこは紅魔館当主、簡単な妹様の挑発を堪えて自分なりに解釈し始めました。おっと、終わったようです。

「温暖化とは……!」
「(頑張って下さい!)」
「温暖化とは! ロリメイドやロリ幼女が汗まみれなむさい男共の熱をその身に受け、尚も笑顔で周りに振舞うことで余計に全体の温度の上昇につながる。しかし、これはあくまで純粋なロリでないと意味がない。しかし最近ではこのようなコスプレイヤーの増殖によって世界全体がこのような場面に直面している! だからこそ、今はどんどん熱が帯びているのよ」

――すげえ。
正直、もう私にはどうしようもないです。まだ授業開始から数分しかたっていないというのに、両眼に熱いものが込み上げてきました。
どんなに辛くても、どんなに苦しくても。私は紅魔館のメイド長として、絶対に弱みは見せないと誓いました。それが主を裏切る――恩人を裏切るということに等しいと思っていたからです。

ですが、もう耐えられそうにありません。
私は今まで何のためにこんなに突っ張っていたのでしょうか?
何のための努力をしたのでしょうか?
そもそも、紅魔館ためでは無かったのでしょうか?
お嬢様のためではなかったのでしょうか?

気付けば私はパチュリー様のもとにいました。しかし、彼女は今必死にお腹を抱えて苦しそうに悶えています。よく見れば彼女の両眼には溢れんばかりの涙。きっと私が不甲斐ないことに彼女もまた悲しんでおられるのでしょう。
前は笑っているように見えたその行動も、どうしてか友人の幼さを嘆く悲しみに明け暮れた姿に見えてしまうのです。

「さ、さく、ププッ」
「パチュリー様」

私はとうとう我慢できなくなってしまいました。
今まで誰にも見せた事のない涙。過去苦しんで一人で流した時以来に流した涙は、初めて見せる涙となりました。

「さ、クフッ、や?」
「パチュリー様、申し訳ありません。私、十六夜咲夜はお嬢様のために何も出来ませんでした。大切な主人だと言い聞かせても、どれだけ私の恩人だと頭の中で繰り返しても……結局私は何に頑張っていたのでしょうか? お嬢様のためだと言いながらも何も出来ていない。所詮、私は口だけの人間でした。ですが……それでも私はお嬢様のために頑張りたい! 何かをしてあげたい! 恩に報いるとかじゃなくて純粋に、私自身がそう思っているんです!」
「…………」
「パチュリー様……教えてください。どうしたら私は、彼女のために」
「咲夜」
「……っ!」

涙のせいか良く前が見えません。ですがしかし、彼女は私の頭を今撫でてくれているのだと分かりました。
弱さを晒し、みっともないことこの上ない私に大丈夫だと言い聞かせるように、ゆっくりと優しく頭を撫でてくれています。
ずっと私よりも苦しいでしょうに……そんなことどうでもいいと思っているかのように、私の気分が落ち着くまで。パチュリー様は時折肩を震わせながらもそれでも撫で続けてくれていました。
そして私にとって数分にも思える時間、私は彼女に自らの頭を差し出していました。しかし、その間もつかの間のこと。

「…………」

気分が落ち着いてきたころにはその手は私の頭を離れて、先ほどのように必死に自らのお腹を押さえています。
パチュリー様……貴女は本当に、私の神様です。

「さ、くや」
「はい」
「いいかし、フフッ、ら? ククッ、おまじ、ブッ、ないを、おし、え、て、クハァ、あげ、る」
「おまじない?」

そしてパチュリー様は一呼吸おいて、私にこう言ってくださったのです―――。



―◆―



「あら、咲夜。遅かったじゃない」

私は今、パチュリー様の、クッ、助言を頂いてここにいます。
正直私にはまだ半信半疑ですし、アハハ、もしかしたらお嬢様を裏切ってしまうかもしれません。
ですが、クフゥ、この衝動……プッ、これはきっと精神的に辛いものがあり、クフゥ、ます。
しかし、ここで引いては、ブフ、私が何故ここに来たのか、ハァハァ、やばい、おなかいたいおなかいたい。
ですが、これもお嬢様の、フフッ、ためだとパチュリー様は言っていました。クフフゥ。
あーとりあえずぱちゅりーさまのことをしんじてここははらをくくるしかないとおもいます。あとはいもうとさまにまかせてわたしもおじょうさまのためにちろうとおもいますていうかもうだめげんかい。

「咲夜?」
「いもうと、クフ、さま」
「?」
「どうか、プフッ、あとのことはおねがい、します」
「咲夜? どうしたの貴女?」
「おじぇ、うさま」
「誰がおぜうさまよ」

ああ、やばいですいまのは、もうわたしもげんかいのようです。ぱちゅりーさま……いまわたしも、そちらへいきます。

「咲夜、ねえ咲夜ったら。汗凄いわよ? 全身舐めてあげましょうか?」

――もう追いうちをかけないでください。

うすれゆくけしきのなか、わたしはおなかをおさえながらこうおもうのです。


『咲夜……貴女、美鈴がダルマの様な顔をした時爆笑してたじゃない? それと同じ。レミィがいってる内容がチルノ辺りと被って見えたらもう笑いの渦から逃げられないわ。私の場合だけど』


――ああ、よく分かりました。

――チルノというか、美鈴のダルマ顔が太陽光を吸収していることが温暖化の原因とか考えた時点で私は負けました。



――この紅魔館に幸あらんことを――――。



『正直もうお嬢様、貴女に勉強を教えるのは無理そうです。妹様お願いします。さようなら』




――紅魔館、笑死2名。
美鈴「咲夜さん……」

咲夜「アハハハハハ! やばい、だるまむり、ちょ、はなれて」

美鈴「すごい、腹筋が…………」

咲夜「ちょ、ちかづか、ないで、だるまが、ふっきんもえ、ブフゥッ!」

美鈴「さ、咲夜さん!?」






前作に引き続ききっとシリアスです。私はそう思っています

ごめんなさい。


※2010/02/16
たくさんのコメント有難うございます。
前作に引き続き読んでくださった方も多いようで感激しています、今後ともよろしくお願いします。
ぜくたん
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コメント



0.1210簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
相変わらずパチュリー様は素晴らしいお方でした、いろいろと
3.100名前が無い程度の能力削除
今回のおぜう様は間違ってない。
5.100名前が無い程度の能力削除
とりあえず、美鈴がハチマキまいて踊ってるのまでは想像できた
6.80名前が無い程度の能力削除
温暖化の答えは、おぜう様の回答でも間違いではないなw
その辺の皮肉が利いてて面白かったわ。
9.100名前が無い程度の能力削除
皆様素晴らしいお方達です
11.100名前が無い程度の能力削除
ちょっと失礼……(トイレに向かう)………ぜくたんさんまたやりやがった!!!!!!!!!!!!………失礼しました

今回はシリアスと理解した上で読んだんですがやはり涙を止めることが出来ませんでした……笑い涙ですけど

今回は咲夜につられました
13.100名前が無い程度の能力削除
おぜうの理論はあってるはず
15.100ぺ・四潤削除
もうふらんちゃんが当主でいいとおもうよ。
温暖化は大体あってるけど、「自然エネルギーを使わない自己動力を使用した自家発電による排熱量及び息が荒くなることに伴う二酸化炭素の排出量増加が原因」ということが足りてなかったかな。
18.100名前が無い程度の能力削除
前回同様パッチェさんが友人思いすぎて泣いた
23.70名前が無い程度の能力削除
パッチェさんに続き犠牲者が増えたw
そうか、新しい解釈だ・・・・・・>温暖化
24.100名前が無い程度の能力削除
そろそろフランも姉を見下せなくなると思うの
あまりにあんまりすぎて直視できなくなりパッチェさん達と合流するしないよ
31.無評価名前が無い程度の能力削除
グッドカオス

でも、二酸化炭素が温暖化の原因っていうのはあくまでも仮説なんだよね。温室効果ガスではあるんだけど、なんの根拠もなければ仮説自体矛盾してもいると知っておいてほしい。詳しくはググってくれ。
ヤバい、マジレスしてしまった。
33.100名前が無い程度の能力削除
笑魔館はじまったなw
あれだな。背伸びしようとするから、お嬢様もチルノと同レベルに見えるようになるんだなw
逆に無知の知が理解できれば、これほど怖いモノもいないかもね。
⑨<アタイは知らないわ。でもあれでしょ。分からないこと言って、分かった振りしてるだけでしょ?
35.80ずわいがに削除
レミさんの温暖化理論は学会に発表するべき

まった誘い笑いかwww真面目にやれよwwww
41.100名前が無い程度の能力削除
う、移ったー!?(ガビーン