・この作品は『かみさまっ!! ~草薙乃剣編~』の続編です。始めにそちらをご覧になってから読まれる事を推奨します。
前回の復習のあらすじ……てるよがスッポンポン。大国主の『影』。
諏訪子(オセロット)「神奈子(スネーク)ッ!! まだだ! まだ終わってなーいッ!!」
* * *
―――月。綿月亭。
モニター越しでの討論は続いていた。
『私は今、地上に住んでいるのだが、幾つか見つけた事があってな』
「見つけた事ですか?」
覆面師匠、もとい、Ms,エイリアンは豊姫と依姫に告げた。
『月は小さい』
「はあ……」
衆知の事。
『面積では無い。社会的にも、器的にもだ』
「……聞き捨てなりませんね。八ご、ゲフンゲフン、Ms,エイリアンは月が弱いと」
『それは、今後のお前達次第だろう。
あと、依姫。貴女は人の名前覚えられないの? 莫迦なの?』
「……ッ」
「依姫。抑えなさい。彼女なりのジョークよ」
コレが輝夜だったらモニターぶった切ってたのに……依姫はなんとか、堪えた。
『時に、依姫』
「……はい」
『オマエは昔、師匠に言われたとおり、神降ろしの修行をしたか?』
「如何いう意味です?」
『言葉の通り』
何が言いたいのだ。
「多分、しましたよ」
『そうか……まあ、おいおい分かる。では豊姫』
「はい」
『師匠が言っていた〈外交〉、しようとしたか?』
「……」
『だろうな。実の所、お前は無駄にプライドが高い』
「しかし!」
「御姉様。如何いう事です?」
『おや、豊姫。お前、妹に教えてないのか?』
「……」
「御姉様?」
豊姫は急に黙りこくった。
Ms,エイリアンはそれなら自分からと、依姫に教えようとした。しかし……
「私がっ……教えます」
『ほう。立ち会いしよう』
「御姉様……」
豊姫はテーブルから文を出し、それを依姫に渡した。
「これは?」
「嘗て、八意様が提案なさった……『外神の計』よ」
「外、神?」
豊姫は呟くように話した。
「須佐オジ様が……習合をなさったのは誰でも知ってる事。でもね、月夜見王はそれを良しとはしなかった」
「……まあ、そこまでは私も知っています」
『月夜見は神道こそが唯の一と、いや……神道以外の教えを〈禁忌〉として、月で謳っているはずだな?』
「え、ええ。誰も触れない話題です」
『阿呆が……だから何時まで経っても王の器では無いのだ』
「なんと……」
王にまで立て付くのか、彼女は。
『そしてその様子だと、依姫。お前、師匠の言伝理解していなかったな?』
「そ、そんな! 私は天津も国津も、三貴柱をも降ろせるように」
『ボケナス』
「なっ!」
呆れたように溜息を付くMs。
『いいか? お前らは純血派か?』
「……いいえ」
『しかし、やっている事は純血派と一緒だ。何故言われた通り、外と通じない?!』
「……」
モニター前の覆面は溜息をつき、口調を変え、優しく告げた。
『いいかしら。何も穢れ共と付き合えと言ってるんじゃない。外の神と付き合いを持てと言っているのよ。
私の……いえ。貴女達の師匠の言うとおりにしておけば間違いないから』
姉妹は俯いた。モニター越しの彼女も、既に『役』など忘れ、混同してきていた。
「私の言う通りにしていれば間違いない」か……そういえば口癖だったな。
『ん? ……丁度良い。大蛇の退治が終わった』
「大国主が?」
依姫の問いに、Msは首を横に振った。
「先の、青年ですね」
今度は、まるで動かない。暫し、俯いた後、告げた。
『私は中立。どっちに付くわけでもない。あくまで姫の味方』
「「……」」
『ただ、勘違いしないで。
貴女達を捨てて、姫を選んだとかそういうのじゃないの……可愛い教え子だもの。捨てる訳ないじゃない』
姉妹は確かに負い目を感じていた。
八意様は綿月姉妹を捨て、蓬莱山の姫君を選んだのだ。巷ではそう言う、莫迦共もいた。
『何時か、貴方達が私の眼鏡に適う時が来るとしたら、きっと相見えるわ』
「はい……」
『よし。まあ、私は中立だから見せる所は見せる。
今から起る事、特に依姫。よく見ておきなさい。私が貴女にさせたかった事よ』
「ほう」
モニターが戦場に戻る。其処にはもう八岐大蛇の姿は無かった。
代わりに、あの洩矢諏訪子と……前に出会った、博麗の巫女がいた。
「あの巫女……」
「御姉様?」
「前に会った時と、違う?」
何か違和感。
『よく気付いたわ』
「『宙』に浮いているのですね」
「『宙』に、ですか?」
『しかし、あの子のレベルではまだ、曲神(諏訪子)と対等ってとこかしら。
まあ、もっとも幻想郷は彼女のホームグランドだからってのもあるんだけどね』
依姫は首を傾げた。
「アレを見せたかったのですか?」
『今から起る事よ。早とちりしない』
「は、はい。すいません」
どうも、この人には頭が上がらない。姉妹は黙ってモニターを見ることにした。
* * *
―――幻想郷。
目に見えるほどの霊力を身に纏い、霊夢は諏訪子と同じ高さへ上がった。
諏訪子は唇の血を拭い、キッと霊夢を睨みつけた。
「『夢想天生』か……だが今の貴様では、所詮それで神と対等だろう」
「だーれーがー、これで終わりなんて言った?」
「何?」
瞬時、霊夢は諸手を合わせ、目を閉じた。
「今の今まで、私が霊力を溜めていただけだと思う?」
「なん、だと」
「問い一。私と早苗は最近何の修行をしていた?」
「……真逆(まさか)!」
諏訪子が慌てて鉄の輪を具現させる。
「問い二。幻想郷には今、どれほどの神格を持った奴らがいるか」
「おいおいおいおい! 冗談じゃない!」
投擲。しかし、霊気(オーラ)と夢想天生によって弾かれる。
「問い三。私は……アンタを如何するって言った?」
「くっ! フザケルナアァ!!」
神速突進。
「はい。時間切れ……いくわよ!」
霊夢は目を見開いた。
「降神……―――『白面金毛・千年狐狸神』―――!」
* * *
―――ピチュリーンッ!!
『うおっ!?』
「『藍』! 強制的に式が剥がれる?!」
「おいおい……マジかよ」
* * *
霊夢のその身に目立った変化は見られない。
しかし……その霊力、いや妖力と言い変えるべきか、兎角内なる力が跳ね上がっていた。
「待て。待て待て待て! そいつは、神じゃ無かろう!」
「なーに言ってんの。『封神』に関わってた経験有り。このぐらい知ってるでしょ?」
『……ノーコメントで』
降ろされた『藍』は、恥ずかしそうに黙り込んだ。
「さあ! 歯ァ食い縛っときなさいよ!」
「黙れ!」
諏訪子は有らん限りの鉄の輪と弾幕を放った。
しかし霊夢はそれに全く動じず、御幣を口元に近づける。そして―――
「宝貝『五火七禽扇(ごかしちきんおう)』」
―――御幣を振った。
すると、弾幕は消え去り、鉄の輪も全て灰と化す。
余波はそれに止まらない。諏訪子にぶち当たり、更には辺り一面の山肌を削った。
「ありゃ……手加減難しい」
『霊夢。悪いこと言わない。碌に修行もして無い巫女が、私を使おうなどと思うな。
ましてや、宝貝なんて……紫様でも扱えんのだぞ』
大陸きっての化け物の宝貝を使おうなんて、草薙乃剣で須佐乃皇を使役するような大事だ。
霊夢の身が持つわけが無い。
「あ、そ。じゃあ……解!」
『うおおぉっ!!』
あっさり『藍』の降神を解く霊夢。
『藍』は元居た紫達の下へ戻り、人型となった。裸で。
「くっそ……嘗めた真似してくれる」
「私だって、アンタの強さは買ってるつもりよ。おいそれと策無しに突っ込むつもりは無いわ」
衝撃波により切り籾にされた諏訪子は今の攻撃だけで大ダメージ。右腕が引き千切れそうだった。
少々回復に時間が欲しかった。
「物量ではどうしようもあるまい!」
諏訪子は再びミシャグジを具現した。
霊夢の四方八方から赤口白蛇達が襲いかかる。
「ああ、ヤダヤダ……発狂してるわね。だったら、同じくらい発狂した弾幕喰らわせてあげる!
降神……―――『魔界神』―――!」
* * *
―――ピチュリーンッ!!
「それじゃ、行ってきまーす」
「夕飯までには帰って来て下さいね」
「はいはーい。さあ、久しぶりの弾幕! 張り切っていくわよー!」
* * *
爆散。
爆散。
爆散。
「な、なんだこれは……こんなの……」
「まあ、魔界に行ったこと無い日本の神(アンタ)じゃ仕方ないわね」
『あらあら霊夢。弱いモノ虐めはダメよ?』
「いーの。アイツは私より強いから」
霊夢は無駄に長い時間、前線に出なかったわけではない。
兎角、数少ない『本格』の知り合いの神々に交信し続けていた。
特に真っ先に思い付き、尚且つ最も友好的な神は彼女―――魔界神・神綺だった。
『魅魔(祟り神)は見つかったの?』
「……知るか。応答無しよ。何処ほっつき歩いてんだか。それよりもっと発狂できないの?」
『もう。人をキチガイ見たいに……そんなに発狂目的なら。幻月ちゃんか夢月ちゃんでも見つけなさい! プンプン!』
「お前ら、いい加減に……」
諏訪子の頭に血が上る。
しかし、気付く。なんだ、アイツも必死じゃないか。見ろ、あの脂汗。魔界神なんて途轍もない化け物召喚するからだ。
持久戦に持ち込めば此方が有利!
「誰が休ませるって言った?」
「な、に? お、オオオオオオオォ!!」
次いで嵐の様な弾幕。カーブし、スライスするレーザー。しかもその一つ一つがトンデモ無い魔力。
「ハアハア……まだまだ!」
『霊夢。そろそろ解除しなさい。元々私は外の神。神道の貴女にはキツい筈よ』
「……クッ。忠告どうも―――解」
嵐が止む。
霊夢の息は荒く、諏訪子の身体はボロボロだった。
「痛ッ!! クッソォ!」
「ハアハア……そろそろ、封神でもしてやろうかしら」
「嘗めるな! お前こそ、虫の息じゃないか!」
互いに擦り減っている。霊夢は精神を、諏訪子は神体をだ。
しかし、霊夢は歯を食いしばり、再び降神を行おうと手を合わせた。
「させるものかよ!」
「チッ。近接……じゃあ……
降神……―――『毘沙門天遼』―――!」
* * *
―――ピチュリーンッ!!
「ッ! なんだ?!」
「……御主人様。いってらっしゃいませ」
「え、ナズーウウウゥ……―――」
「星、が。飛んでっちゃった……」
* * *
カキンッ……
鉄の輪が何かに弾かれる音がした。
「おいおい、今度はなんだ?」
諏訪子が凝視する。
槍だ。
「アンタは降神し易かったわね」
『あ、え……そういうことか。はぁ……半神前って言いたいのかい』
毘沙門天……に遥か及ばないから毘沙門天『遼』―――寅丸星。
「はんっ! 半神前が土着頂点の私に勝てるとでも?」
「そこは私のセンスでカバーよ!」
『……勝手にしてくれ』
「それに……諏訪子。アンタこの槍、何か知ってる?」
槍をグルグル回す霊夢。星は落とさないでくれよとアタフタしていた。
「宝貝『火尖鎗(かせんそう)』ってね」
「なんだと?!」
『ああ、だから傷でもつけたらナタク太子様に殺されるから!』
ナタク(変換できない)太子。
毘沙門天は大陸の武将、李武靖と同一視されている。
しかも、仙道三児の父親である彼はレプリカとして幾つかの宝貝を持っていた。
……何故か、このナタクには嘗められているようだが。
「さっきの本物(五火七禽扇)とは違ってレプリカ。使いやすいわ」
『だから太子様から頂いたモノを、ああ! 先っぽに指紋付けないで!』
諏訪子は思った。
完璧、嘗められていると。
(宝貝レプリカを扱えるからって、一神前気取り? はっ! 笑わせるな)
「こちとら幾星霜ステゴロで戦してきてるのよ。獲物を扱った事もないガキに負ける訳ないじゃない!」
「……ふん。行くわよ、トラ!」
『寅丸だって!』
霊夢は突っ込んだ。
しかし、雑。所詮はガキの見栄と言う事か。
諏訪子は槍先をグレイズし、横っ面へとフックをかまそうと―――
「ていっ!」
「ぬっ! 槍は、フェイクか!」
―――己の側面をクロスガードした。
霊夢は突きと見せかけ、槍持つ手を支点に踵へ体重を乗せていた。そして、後ろ回し延髄蹴り。
流石に痺れる。
霊夢は止まらない。
「神技『天覇風神脚』!」
「下、か、ら! グギギっ!」
連続の昇龍脚。諏訪子は花火が如く、打ち上げられた。
「ふっ! 火尖鎗っ!」
「かはっ……」
怯んだ隙を見て、諏訪子の脇腹を一閃。深く深く、突き刺さった。
「獲物の使い方は知らないけど、『足技』なら、陰陽玉(ボール)蹴ってる頃から知ってるわ!」
『もう……槍が刃毀(こぼ)れを』
「こ、んの……嘗めるなと、言ってるだろ!」
『「キャア!」』
刃の先が刺さっている状態から、諸手を振り上げる。そしてそこから、鉄の輪付きの両手ハンマー。
伊達に軍神とやりあって無い曲神の莫迦力。霊夢は地面まで吹っ飛ばされた。
「ったく……おふざけに付き合ってるほど暇じゃないんだ」
痛てと腹を押さえながら、ごちる諏訪子。
そして目標を神奈子へと……
「まだ……終わって無いわ」
「……寝てればいいモノの」
どうやら星の降神は解けてしまったようだ。霊夢は千鳥足で歩を進め、諏訪子を睨みつけた。
「よくやるよ、人間風情が」
「はっ! やっぱり、祟り神って奴らは……莫迦ばっかね……」
「お前のとこの悪霊と一緒にするなよ。見た事無いが……屑だったんだろうな、相当」
「……あんたよか、腐って無いわよ。アイツは」
諏訪子は鼻で笑った。
よくもまあ、骨の二三は逝ってるだろうに……仕方ない。
「寝てろ」
神社二つ程の鉄塊を具現させ、それを、霊夢に投げつけた。
「グレイズ不可能だ。まあ、運が良けりゃ、死なないわ」
迫る鉄塊。
霊夢は目を瞑り一言、『ごめん』と呟いた。そして―――
「降神……―――『 』―――……」
―――神の名を告げた。
* * *
―――ピチュリーンッ!!
「ッ!! 霊夢! 止めろオオオオッ!!」
「お、お姉―!?」
「美鈴! ―夜を―――」
「間―合いま―――」
「え?」
* * *
諏訪子は再度、神奈子の下へ飛んだ。このボロボロの身体では勝つ事は、まず不可能だ。
しかし、せめて……せめて一発。アイツを殴ってやらにゃあ腹の虫が収まらない。
「待ってろ……莫迦女郎……」
しかし、目の前に、在り得ないモノを見た。目を擦る。
やはり見える。
「博、麗……どうやって」
「……」
霊夢は黙していた。
『え? え? な、何が起こってるの……守矢の神? 霊夢?』
「ゴメン……咲夜。レミリア……永琳……」
「お、お前……吸血鬼条約の……特秘を、破ったな」
『え? え?』
霊夢は―――十六夜咲夜、その『人』を、降ろしていた。
「時を、止めたか」
「……夢符『退魔符乱舞』」
「チィ! 貴様! タダじゃ済まないぞ!」
「アンタだって……背に腹は代えられない状況でしょ!」
「ナントっ!」
上に避ける。しかし、既に上に符が。
右に避ける。しかし、右に符が。
斜めに避ける。やっぱり、斜めに符が。
この場で、咲夜ただ『一人』が取り残されていた。
『何が起きたの?』
未だに、事を把握していない。
霊夢は説明してない。否、説明するつもりはまるで無い。
彼女には、夢でも見ていたかのように帰って貰う手筈。
『ね、ねぇ、霊夢』
「黙ってなさい!」
『……』
針を、鉄の輪でガードしようと試みる諏訪子。
しかし全方位のドリルの様な符を全てカバーすることは、勿論、不可能だった。
「がひっ!」
諏訪子の肩口を符が抉り取る。堪らず、高度を落とし、地面へ降りた。
「もう、いいわね……解」
『ちょ! 霊夢、、待ちなさ―――』
何も知らないまま、咲夜は戻っていった。霊夢は再度、心の中で二つの顔に謝った。
「……さて、次で、ラストね」
「博麗、カフッ……お前……」
「私は、私なりに、ケジメを付けるわ」
近くの木に身を任せる諏訪子。限界だった。
同じく、地上に降りてすぐ、最寄りの岩に身を預けた霊夢。骨と臓腑が幾許か、逝っているのだろう。
「ハアハア……初めは、楽しいもんかと、思ったけど……やっぱシンドイ。神降ろし(コレ)」
「阿呆。私と、弾幕無しで、対等に戦ってる時点で……気付け」
「ははは……」
何処かハイになってしまって、霊夢自身、今何を言っているのかはっきりしなかった。
兎角、最後に、『アイツ』を降ろして、殴る。
ただそれだけが、頭に廻った。
「ラストワードね……降、神……」
「……来い!」
* * *
紫達は半壊した守矢の社で、二人の戦いを眺めていた。
「ボロボロね」
妹紅が呟いた。
「誰が?」
輝夜が問う。
「皆さ。人も、神も……社もね」
苦笑し、自分の社を指差す神奈子。
「それにしても、あの紅白巫女。出鱈目だな」
建見名方がぼやいた。
「そう、育てましたから」
紫がダルそうに、微笑んだ。
「まったく、道教の私を使おうなんて……あと魔界神?! 規格外なモノを」
大国主から上着を貰い、それを羽織った藍が呆れて言った。
「しかし、月の連中が嫌いなタイプだ。斬新なセンス。基督や大陸の神を苦手とする奴らには効果覿面」
サングラスを拭きながら、大国主が凝視した。
「しかし、巫女にも限界があるのでは?」
てゐが大国主に心配そうに問うた。
「ダイジョブさ」
一同、声の主、霖之助を見遣る。
「彼女は『博麗』さん。何時だって……負けはしないよ」
まるで、彼らしからぬ、英雄に憧れる子供の様な答えだった。
しかし、まあ、なんとも、そればかりは納得せざるを得なかった。
* * *
「行くわよ、諏訪子!」
『行きます、諏訪子様!』
諏訪子は目を瞑った。
ああ、畜生。結局、私一人の空回りだったってか。嫌になるね。
「……ああ、ヤルか」
のっそり立ち上がり、1,5人と半神を見る。
霊夢が最後に降ろしたのは現人神―――東風谷早苗だった。
諏訪子は鉄の輪を……具現せず、霊夢に向かって駆け出した。
「オオオオォ!」
「フンッ!」
上段蹴りのクロス。
「クワっ!」
「チィ!」
肘打ちに対する蹴上げ。
「「シッ!!」」
鳩尾狙いの突きに対する手刀。右肩狙いの踵落とし。肋狙いの回し蹴り。丹田狙いの貫き手。左膝狙いの震脚。頭突き。
頭突き。
頭突き。
頭突き……
「「ハアアアァ!!」」
頭突き。
一人と一柱は仰け反り、片膝をついた。
「ハアハア……マジ、痛い」
「早苗を降ろしといて……肉弾戦とは、如何なモノかと」
「莫迦、ね。『早苗』で殴るからこそ、意味があるんでしょうに」
『……諏訪子様』
「ああ、いい。早苗。何も言わんでくれ。今回の件は全部私が悪い」
ヨロリと立ち上がる諏訪子。片眼は目蓋が腫れて見えていない。
「私は、ね……私利私欲で。我儘で。勝手に。神奈子とウマが合って無かっただけなんだよ」
『諏訪子様』
「月の連中にも、迷惑かけたなぁ……許せっつって許してくれないだろうけど」
『諏訪子様……』
「ああ、くそぅ……前が見えない」
『諏訪子様ァッ!!』
全てが、止まる。
『なんで、何も言ってくれないんです!』
「……」
『家族でしょう?!』
「家族だから……言えない事もあるんだ」
「下んない、わね」
『霊夢さん!?』
半分気を失いかけていた霊夢が、ゆっくり立ち上がる。
無理も無い。夢想天生に神降ろしのダブル掛けだ。折れた奥歯をプっと吐き出し、言い放った。
「ねちっこいのは、好きじゃないの……もっと、シンプルに、ね」
『霊夢さん! もう無理です! 身体が動きません! 倒れていいですから!!』
「莫迦ねぇ……根性よ。根性!」
「博麗……」
コイツも……氷精に似てる。流石、幻想郷生まれ、だ。
「泣いてるの? 早苗」
『いいです……もういいですから!』
「ハハハ。変な顔……待ってなさい。今、終わらせてあげるから」
「博麗、お前……霊力回路がジャンクに……」
「バーカ。それくらい、自己管理できるわよ……まあ、当分、神降ろしはできなさそうだけどね。弾幕ごっこも厳しいかな?
魔理沙怒るかな……ハハハ」
何故、そこまで……
「簡単よ……友達だから、ね。早苗も……『諏訪子(アンタ)』も」
「『……』」
「解決してあげたくなっちゃうのよね……ほら、異変解決のプロだし、さ。
私、意外とお節介焼きで……あれ? あはは、ゴメン。なんか痛覚が狂ちゃって、饒舌になってるかも」
諏訪子は気付いた。
前が見えないのは、目の腫れの所為では無いと。目の前の、純粋過ぎて、氷精と同じくらい眩しい、お節介巫女の所為だと。
拳を握る。
「……行くぞ。博麗」
「へっ。行くわよ、諏訪子」
諏訪子は踏み込み、アッパー。霊夢は単純なストレート。
アッパーは霊夢の顎にクリティカルし、ストレートは……空を切った。
『霊夢さんっ!!』
「……へっ」
霊夢はニヤリと口元を緩めた。諏訪子がそれに気付いた時には、遅かった。
既に放たれた腕輪(アミュレット)はホーミングして、諏訪子の顔面にぶち当たった。
両者、WKO。
早苗の泣き声だけがその場に響いた。
伏線増やした分だけの作品が楽しみです←プレッシャーという名の期待
…早苗さんの思いと叫びは彼女をどう変えるのか…?次回も期待!
しかし、霊夢の戦い方が某電車のライダーに似ているのは気のせいだろうか…
ボルテージ上がりますね
次回待ってます
次はなにが出てくるのか、読んでいてワクワクします。
東風谷では?
・読む程度様> カリスマというより『愛』なんでしょうね。霊夢は偶に熱い位が恰好良いと思うよ。
因みに、このプレッシャー、絶対忘れんぞ!
・6番様> ア○ゾン出てきたのに、声が残念だったとかにならなくて良かったですw
あ、早苗さん2位おめでとう!
・12番様> 燃える乙女っていいですよね。霊夢の性格上、どの○マジンにも当て嵌まんない気はしますが、無理やり当て嵌めちまったZE☆
・13番様> 絵は描けるんだがデジタル塗りができません。ラフ画提供したら誰か描いてくれませんかねぇ……
・15番様> オ、オ、オ、オ、私もです!
・16番様> トンデモですけどねw 次は纏めなのでどうなるか、お楽しみに。
・18番様> ホントすいませんでしたアァッ!! おかげで訂正できました。助かったです!
後、漢字の方ですが、直接unicodeが書けるかわかりませんが、wikipedia の記事曰く哪吒太子だそうです。
霖之助の台詞の
>「彼女は『博麗』さん。何時だって……負けはしないよ」
ですが、「ん」は何かテンポが悪い気がしたのですが、意図した表現でしょうか。
だいぶ拡張された東方の世界ですが、私は大好きです。応援してます。
霖之助さんの『博麗さん』は仕様です。理由は、まあ彼が数少ない『博麗神社』の信拝者だからです。
拡張世界が膨張しかけてますねwww 頑張ります!