Coolier - 新生・東方創想話

ヴァレンタインは紅く萌えているか

2010/02/14 02:00:51
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今日、2月14日はヴァレンタイン。

いつもは引っ込み思案な女の子が勇気を出して告白する日。

お菓子会社の陰謀とか言う人も居るけど、そんなものは女の子の気持ちが分かってない人が言った戯言に過ぎない。

そんな日に私は

「え、これを私にですか?そんな、頂けません、お嬢様」

「咲夜、いいからもらっておきなさい。これでも私の気持ちがこもってるのよ」

主からチョコを頂いてしまった、ってこれどうすればいいのよ?







ヴァレンタインは紅く萌えているか







とにかくお礼を言って、顔が見られないように時間を止めて。

お嬢様の下へ駆けつけるときと同じくらいの全速力で自室にたどり着き、扉を強引に閉める。

「落ち着け。落ち着くのよ、十六夜咲夜。貴方は従者、瀟洒な従者。こんなところで勘違いをしてはその名を返上することになるわ」

思わず思考が口に出る。どうやら私は相当焦っているらしい。

確かにお嬢様のことは好きだ。大好きだ。それはお嬢様から頂いた私の名に賭けてもいい。

でもそれが恋愛の好きかといわれると、わからない。

あぁっ、どうして私は恋もしないで紅魔館のメイドなんてやっていたのだろう。

仕事だからである。そのことは置いておいて。

お嬢様は私のことをどうお思いになってるのかしら。

お付のメイドだからお嫌いではないと思っていたのだけど。

もしかして二人っきりの時とか、さりげなくアプローチをかけられていたりしたのかしら。

それに気付かないなんてなんて私は鈍感なのだろう。って、まだそうと決まったというわけじゃないでしょう。今からそれを考えるのだから。

思考がループする。何か目の前も少し回ってきたような。

それにしても、お嬢様の態度も不自然だ。

思いを伝えるにしても相応しい場というものがあるのではないだろうか。

もっとこう、ムードがあるようなところで。

そう、ここのテラスで満月の夜とかに。

「私の咲夜、お前は私のものなんだからこれから絶対に離れるんじゃないわよ。ほら、餌をくれてやる」

とか言われちゃったりなんだりしてー、キャー。

待て、私の妄想はどうでもいい。

このチョコがどういう意図で渡されたかだ。

大体お嬢様には巫女が居るじゃない

そうだ、どうして忘れていたのだ。

お嬢様には懸想なさっている女性が居るのだ。

博麗霊夢、お嬢様に勝利し、紅霧異変を解決し、お嬢様の寵愛を一身に受ける……

あら、何処からぱるぱるという声が。

とにかく、霊夢が居る以上本命は私ではないのよね、多分。

私は浮かび上がった疑問を解決すべく、今日のご予定を聞くという名目で再びお嬢様の元へ向かうのだった。







「嫌よ、こんな日に霊夢のところに行くなんて、野暮じゃない。それに私今日は忙しいから館に居ないといけないの」

えぇー!!である。

巫女にチョコを渡さなくていいんですか? それに忙しいって何ですか? 告白の返事待ちですか?

私、追い詰められちゃってますかー!?

ともかく取り繕って、会話を。

「そうでございますね、今日は女の子には特大のイベントですものね」

「? まぁ、幻想郷には女の子が多いわけだし。特別といえば特別な日よね」

「そうですね、私も忙しいのでこれで失礼します」

「あ、咲夜、行っちゃった。どうしたのかしら。妙に焦ってたような」








とにかく告白には返事を返さないと。一緒に何かを贈ったほうがいいのよね。

材料を用意したのはいいけれど。

返事ってキャンディーなのかしら、それともマシュマロ?

どっちが本命?それともホワイトデーに返さないと駄目?

あぁ、全然わからない。こんなに悩んだのは生まれて初めてに違いない。

同年代の子とかが居ればそれとなく聞くことが出来たのに。

どうして私は今までメイドなんてやってたのかしら

だから、それが仕事だからですってば。

よし、わからないと思えば調べましょう

この館には大きな図書館があるのだから。








「あら珍しい。貴方がこの場所に来るなんてね」

「えぇ、パチュリー様。少し調べ物がありまして、許可を頂けますか?」

「いいわ、貴方ならどこぞの白黒みたいに強奪することはなしないでしょうからね。お菓子作りの本ならそっちの3つ奥の棚にあるわ」

時が止まった。

いえ、私が能力を使ったわけではないのですが。

「えぇ!? パチュリー様何を言って。えぇ、えぇぇぇぇ」

「あのね、咲夜。如何に私が世俗に疎いからといって、こんな日に顔赤くして図書館来たら大体の予想はつくわ」

「あの、顔、赤かったって」

「そりゃ、もうりんごのように赤かったわよ」

「……」

「驚いた。まさかそこから更に赤くなるとは私も思わなかった」

とりあえず、時間を止める。無論私の能力で。

落ち着け私の顔、落ち着け、落ち着け、落ち着けぇぇぇ。

こうやって書くと何か変な能力者だけど気にしないことにする。だって能力者だし。

そろそろ落ち着いたかしら。

「パチュリー様。ありがとうございます。本をお借りしますね」

「あら、時間を止めたの?勿体無いわね、可愛かったのに」

「いいえ、パチュリー様やお嬢様の方が可愛いです」

「容姿的なことじゃないのよ、でレミィに渡すものは決まったの?」

「あぁ、そうだ。急いで作らないと、それではこれにて失礼します」

時間を止めて自室に戻る。

「急ぐも何も、咲夜の能力なら一瞬じゃない。何か変な勘違いをしてないといいんだけど。

それにしても渡しそびれちゃったわね。夕食の時とかでいいかしら」







一瞬でマシュマロは作った。気持ちを込めたのに一瞬とは妙な感じがする。

後は返事だけ、これが一番の難問なのだけど。

お嬢様のことが好き、これは絶対。

お嬢様のために命を賭けろと言われれば、賭けられる。これも大丈夫。

お嬢様と私が一緒にピンチになったらば、出来る限り二人で助かるように能力を使って、それが叶わなければお嬢様だけを助けて、私は死ぬと思う。

お嬢様は怒りそうだけど、私はメイドなんだからしょうがない。

なら、お嬢様が私のために永遠に生きてと仰られたら。

……

うん、やっぱり駄目だ。

お嬢様が愛してくれたのはメイドで人間の私だからだと思う。

霊夢と一緒、珍しいからお傍に置いてもらえるだけなのだ。

吸血鬼とかになったらあっさり捨てる、とまではいかないけど興味を持たれなくなりそうでちょっと怖い。

それに

お嬢様が好きと思ってくれた私は人間のままの私なんだから、お嬢様の期待を裏切れない。

どうしてこんなところまでメイドなんだろう。お嬢様もあきれるに違いない。

「答えも出たかしら、さすがに即解雇とはならないと思うけど」

解雇されたら下っ端からやり直すのかしらね、そんなことを呟きながらお嬢様の部屋へ向かうのだった。






トントン

「お嬢様。今お時間ございますでしょうか?」

「あぁ、咲夜ね。ちゃんと時間は空けておいたわ。入ってきなさい」

「失礼します」

「さて……」

「お嬢様、ごめんなさい!」

お嬢様が話し出す前に、割り込むように私は叫んでいた。

「って、何よいきなり」

「私はお嬢様のお気持ちにお応えすることは出来ません」

「ちょっと咲夜。何を言って……」

「お嬢様が好きになってくださったのは人間の私なのですから、私は人間じゃないといけないのです」

「突然なにを言いだすの? いいから少し落ち着いて」

「それにお嬢様。私は霊夢と同じように人間だから価値が出るのですよ。人間でなくなった私に何の価値も……」

ピシッ

空気が凍ったような音がする。何も聞こえないはずなのに。

「咲夜、貴方今なんて言ったかしら」

え? やっぱり怒ってる? 大激怒? 告白を断ったからかしら?

今にも殺されそうな雰囲気なのですが、どうして?

「ですから何の価値も無いと」

「その口を閉じろ、馬鹿」

叩かれた

「霊夢と比較する所もおかしいけどね、咲夜はいったい何を考えてるのよ。

咲夜は、お前は私の付きの、たった一人しか居ないメイドなのよ。

能力とか戦闘とかじゃない、もっと大事なこと。

いつも傍に居てくれることがどれだけうれしいかってことが、何でわからないのよ」

泣いている、あのお嬢様がぼろんぼろん泣いている。

「咲夜が自分のことをどう思っててもしょうがないけど、

私にとって咲夜は霊夢なんかとは比較にならないぐらい大切な存在なの

今日のプレゼントでそれがわかってくれると思ってたのに

そんな風に思われていたなんて主としてすごいショックだわ」

「お嬢様……」

「咲夜、これは罰よ。主を悲しませた罰。

貴方はこれからずっと私に仕えなさい。

勿論貴方がいやになったら無理にとは言わないけど」

「いえ。お嬢様がよろしければ、一生お仕えさせていただきます」

気付くと私も泣いていた。

涙に塗れた抱擁は何かの雰囲気を察したパチュリー様が部屋に入ってくるまで続くのであった。






「えぇ!!ヴァレンタインデーって友愛を確かめるためにお菓子などを皆に与える習慣なんですか!」

結局落ち着いた後改めて様子を聞いてみれば私の盛大な勘違いだった。

お嬢様が私にお菓子を下さったのも日ごろの私への感謝だったらしい。

「で、私は咲夜にお菓子をあげたわけなんだけど、咲夜は私に何かお返しは無いのかしら」

ニヤニヤと笑うパチュリー様。

甘いですね、私の能力をお忘れですか。

「はい、パチュリー様。お返しです。いま、美鈴にも渡してきましたわ」

「チ、その能力本当に便利ね」

「当たり前です、お嬢様のための力ですから」

「でも、さっきの泣いてる咲夜は可愛かったわね」

「お嬢様、それは言わないお約束ですよ」

私はこれからも頑張っていける。

だって愛するお嬢様のためのたった一人のメイドなのだから。





「レミィ、ちょっと惜しかったと思ってる?」

「しょうがないでしょ。咲夜にあそこまで言われちゃね。人間を辞めろなんて、言えるわけ無いじゃない」
見た瞬間にネタがわかるありがちな話ではありますが
この話の主題は咲夜さん可愛いよなので問題ありません。
びく
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コメント



0.740簡易評価
5.100夕凪削除
この咲夜さん可愛いですわぁ。
って思ったので、後書き通り問題は無かった!!
14.50名前が無い程度の能力削除
まぁいい話なんだが
○○なんかよりって言い方が気に入らない
15.80ずわいがに削除
咲夜さんに全然余裕が無いww
いやぁ、でもレミさんもなかなかにアレだぁねぇ、うん。