お湯が、流れてこない。
その日、異変が起きたのは朝食の後、温泉の温度調整をお空が始めたときのこと。
地霊の湯というさとりが経営する温泉は元灼熱地獄付近にあるため、お湯につかれないほど熱いのではないか。初めて訪れた人はそんな印象を持っているが、灼熱地獄だったのは昔の話。今は一部を除いて温暖な気候なだけで、源泉の温度も四十℃程度しかない。
露天風呂や内風呂に引き込む最中にもその温度は下がるので、温泉というよりは暖かい水になってしまう。そのため、お空が毎朝五十℃まで上げてからパイプを通して運び出しているのだ。
しかし、そのお湯が今日に限って届かない。
ぽたりっと一滴、お湯を通す竹筒から流れて来ただけ。
仕方なく、さとりは湯船を一緒に掃除をしていたお燐に様子を見てくるようにと指示を出した。朝の準備は忙しいので、少しでも人員を割きたくないのがさとりの本音だが、お湯がこなくては単なるゴツゴツした広い空間でしかない。
「どこかで、お湯を送る竹でも壊れたかねぇ」
お燐は手にしたモップを片付けて、指示どおりお湯の来ない原因を探るために大きく跳ねる。お湯の異常を探るとは言っても、源泉を運ぶ竹筒を辿って奥へ奥へと進んでいきながら、どこまでお湯が来ているかを確認していくだけ。いつもはどこかで竹と竹との接合部が、折れたり外れたりするのを直すだけでいいのだが。
「……妙だねぇ」
いつもよく外れる部分に来ても、異常なし。
半分を過ぎても、もっと先に進んでみても、お湯を運ぶ部分にはなんの故障もない。足場も崩れていない。
それなのにお湯が流れてこない。
これ以上進むと、本当に源泉しかないというのに。
つまり火力調整班のお空しかいないというわけで……
いや、しかし、お空だから不安とか言うわけではない。いつもはしっかり仕事をこなしているから何の問題もないはず。
確かに、いつもより多少湯気が多い気がするけど。
お燐のような火の妖怪じゃないと、肺が焼かれるほど気温が上がっている気がするけれど。
うん、でも……
ちょっと、熱いだけ。
それ以外は異常なんてあるはずが……
「なんだろうね、これ……」
源泉まで行ったお燐は目を疑った。
お湯が流れているのには間違いないのだが。
一緒に溶岩が流れている。
もちろん、お湯が溶岩の流れに触れた瞬間、それが一瞬で蒸発し、スチームとなって空間に満ちる。これが、お湯が流れてこなかった理由。おそらく、人間がここに入ろうものなら一瞬でボイルされてしまうことだろう。湯気で視界を覆われながらも、その先へと異常の中心へと進んでいけば……
「あ、おりぃぃぃん♪」
溶岩が流れ出す場所に、見覚えのあるヤツが。
右手の棒を振って楽しそうに。
火に強いからといって、あまりに余裕過ぎるというかなんというか。
「えぇっとね。ちょっと聞いていい、お空?」
「いいよ~、何々?」
「ここ、いつもよりちょっとだけ、熱いよね?」
いつもは溶岩も流れ出さないし、お湯が全て湯気になって消えたりなんてしない。
普段ならしっかりと調整できているというのに。
だからお空も同じように、この熱を感じていると思って問いかけた。
そんなお燐に対し、お空は左手を口元にあて顔を斜めに傾けていく。
「……いつもより、寒くない?」
「はぁっ!?」
◇ ◇ ◇
馬鹿は風邪を引かない。
そんな言葉が地上にはある。
最近あたいは、それが間違っていることに気が付いた。
本当の馬鹿というヤツは、風邪を引かないんじゃない。
「えーっと、あのぉ……さとり様、わざとじゃなくてですね。なんとなく朝から変だなぁとは思ってたんですけど。目の前の世界がぐるぐるってなるし、まっすぐ立ってるつもりが頭がフラフラするし。体温とか変に上がるし、能力の火力調整きかないし」
「……温泉を台無しにした理由が風邪ですか」
「あ、これが風邪って言うやつなんですね! 勉強になるなぁ」
「お空……」
風邪を、知らないのである。
風邪を知らないから、自分の体が寒気を覚えても周囲が寒いだけと思い込み。
いつもと同じ温度で暖めていても物足りなくなった、その結果が。
『源泉の灼熱地獄化』
さとり様がもし普通の妖怪であるなら、その状況を隠して、風邪が治ってからこっそり直しにいくこともできる。でも心を読めるから隠し事なんて不可能だ。お湯が流れ出ていたところの地形が、お空の手によって変わってしまったことも知られてしまっている。
あたいがなんとかお空に熱を出すのを止めさせたから、アレだけで済んだけれど。もう少し遅かったら新しい異変が起きていたかもしれない。
「ああ、もう、貴方は。どうしてこんなに熱が出るまで放っておいたのですか」
あたいが熱っぽいお空を背負い、最初は彼女の部屋に行く予定だった。
けれど、部屋を開けた瞬間……
「……お空?」
「……お空?」
「えへへっ」
自分の羽で散らかったベッド。
昨日のおやつらしきものの欠片が散らばる床。
そしておやつの横には、親指の爪くらいの埃の塊が……いくつも……
ぱたんっ
「私の部屋にしましょう」
この部屋にいたら間違いなく悪化する。そう確信したさとり様は、ご自分の部屋にお空を運ぶように言って、台所へと走っていった。小さな桶を手に持っていたから、濡れタオルでも準備するつもりなのだろう。
あたいは指示されたとおり、お空をさとり様のベッドに寝かせて。先に持たされた乾いたタオルで顔の汗を拭いとってやる。
「ちょっとくらい部屋掃除しないとダメだよ、あんなの見せたら絶対今度あたいの部屋もチェック入るよ」
「掃除したんだけどなぁ、昨日」
「……どこを?」
「全体的に」
全体的に汚かった記憶しかない。
いや、しかし、綺麗過ぎると落ち着かないと言っていた気もするし。
さとり様のベッドの上で膝を立てたまま行ったり来たり。そうやってお空の羽を整えてから、ゆっくりと毛布と布団を掛けてやる。すると、その温もりがちょうどよかったのか、熱の篭もった息を吐き出しながら瞳を細くしていく。
そんなお空の前髪を撫でながら、騒がしかった朝を思い出していると。
「お燐、お空の様子は?」
さとり様が小さな桶を胸に抱えて入ってくる。
言葉を話さなくても伝わるので、あたいは『熱が酷い』と、お空に知らせないように心で語る。
「そうね、なら。永遠亭に誰か走らせましょうか。お燐はここにいなさいね。あなたが居なくなるとお空が不安になってしまうかもしれないから」
「……あぁ~、私そんな子供じゃないですよ。さとり様」
「そうね。子供じゃないのなら、お注射も我慢できるわね?」
「えぅっ!?」
「苦いお薬も、飲めるわよね?」
「あぅっ!?」
さとり様に対して、下手なことを口走ると墓穴を掘るだけ。
いらないところで意地を張ったせいで、お空は永遠亭の治療から逃れることができなくなってしまった。
ばつが悪そうに掛け布団で鼻まで隠すお空に苦笑いを向けながら、さとり様はベッドのすぐ横まで近づいて。ぎゅっぎゅっと、桶の水につけてあったタオルを絞り。額へと乗せてやる。
「はぁぁぅ……」
心を読まなくてもわかる。
あれは、凄く気持ちいいときに思わず漏れる声だ。熱い額をあの冷たい湿り気が一瞬で包み込み、その後じわじわと熱を奪い取っていく。特にあの最初に額に触れるときの感触を思い出しただけで、少し目頭が熱くなってしまう。誰かに大切にされることの感動を教えてくれた時のことを思い出して。
さとり様の下につくまでは、心細くても一人で我慢し治療してきた。けれど今は違う。さとり様は誰かが具合が悪くなれば、穏やかな笑みを向けながら看病してくれる。あたいやお空だけじゃなく、他の仕事をするペットに対しても。本当は特別じゃないかもしれない。それでも看病されているときだけは――
大事にされているんだ……
安っぽいかもしれないけれど、それだけでささやかな幸せを感じることができた。病気で心細くなったあたいを優しく励ましてくれて。看病されるたびにいつも泣きそうになってしまう。そんなさとり様が大好きで。
「お燐あなたもやって欲しいの?」
「……い、いえ、少し懐かしいと思っていただけですから」
もう、そういうところが嫌い。
勝手に恥ずかしいところを覗き見するんだもの。
だからあたいはひょいっとベッドから飛び退くと、わざと部屋の隅に移動する。小さな反抗の意思表示というわけである。すると、さとり様は私に対して片目を閉じて見せた。おそらく謝罪のつもりなのだろう。
それでもあたいは、腕を組んだままぷいっとそっぽを向いた。
あたいを見るよりも、今はベッドのお空の様子を見て欲しかったから。
「熱いのに、ぶるぶるってなって、でもおでこがすぅってなって気持ちいぃ……」
「お空、気分は平気?」
「平気と言うか、なんかほわほわってなります。ちょっと目の前がぐるぐるって動くときもあるんですけど」
やはり熱のせいで平衡感覚が多少狂っているんだろう。それでも熱以外の症状があまり酷くないのが唯一の救いか。
さとり様は額に乗せたタオルを水につけて新しいものと取り替えると、あたいと同じようにお空の前髪をゆっくりと撫でた。すると、お空はまるでもっともっとと言うように枕から軽く頭を浮かす。
あたいのときは、あんなことしなかったのに……
しかし、そんなお空の願いは叶うことがなかった。さとり様が急にベッドの横から離れてしまったから。名残惜しそうに視線でさとり様の姿を追うけれど、そんなお空に微笑を返し。
「すみません、お空。今日はどうしても外せない用事があるんですよ」
「……はい、わかりました」
「今日はお空の大好きなものを作ることにしますので、それで許してくれると助かります」
「じゃ、じゃあお肉!」
「はい、お肉料理ですね。わかりました」
急な用事というのは、嘘だ。
今日温泉が使えなくなったから予約していたお客様に謝罪をしに行こうとしている。でも、お空にそれを悟られないように隠した。
「では、お燐。今日一日死体運びを休んで、お空についていて上げてください。きっとあなたしかできないことですので」
「はい、お任せください」
さとり様より、あたいの方がお空と付き合いは長い。だからこそ任せられたということもあるだろうが。あれだけさとり様を慕うお空の仕草を見せつけられてから、世話をしてくださいと言われても、何かこう、すっきりしない。
こんなことを思っちゃいけないんだろうけれど。
親友をあっさりと奪われてしまったようで、少しだけ妬ましく思ってしまう。当然、そんな黒い想いもさとり様には筒抜け。だからあたいの中では、ごめんなさいという気持ちと、嫉妬心がぶつかり合ってしまっている。
「あまり気にしなくていいですよ、お燐。私はそういうことに慣れていますから」
「あ、さとり様っ!」
「では、お願いします」
ぱたんっ
静かに入り口が閉じる前、そのさとり様の顔が寂しそうに見えて、あたいは後悔した。信頼して任されたのに、つまらない感情でさとり様を傷つけてしまったことを。そんな暗い感情のまま、あたいはお空の横に移動し、ベッドに腰を下ろした。
そんな落ち込んだ状態で気の利いた話題を出すことなんてできるはずもなく、お空に背を向けたまま尻尾だけをベッドの上で左右に揺らした。少しでもお空の気を紛らわせたかったから。
「おりぃぃん♪ こっち向いて」
そうやって、自分で塞ぎこんでいるあたいの背中から、呑気な声が聞こえて。あたいが振り返ると。
ぷにっ
「にゃぅ!?」
お空が、振り返った瞬間のあたいの鼻を右手の人差し指で突付いて来たのだ。まさか、こんな子供だましのいたずらに引っかかるなんて。
「あははは、『にゃうっ!?』だって♪」
「むー。ろけへ。ゆひ」
「えー? なんて言ってるかわからないなぁ♪」
こっちの気もしらないで、あたいの鼻を押さえ続けてケラケラ笑う。ふん、いいよそっちがその気ならこっちだって考えがあるんだから。
かぷっ
「ひぅ!?」
「ん~にゅふ~、ろ~よ~?」
「あー! ザラザラがいやぁ!」
鼻に当てられっぱなしの指を素早く避けると、今度をそれを甘噛みして返す。そしてざらざらの舌で指先をがりがり擦る。そうやって擦るたびに、お空の汗の味が、うっすらと舌の上に残る。
しょっぱさの中に何故か甘さを感じるような、そんな不思議な……
「おりぃ~~ん! いい加減離してよぉ!」
あたいは、一体何をしているんだろう。
慌てて指を口から離す。
そのせいでお空の指と、あたいの口の間に細い糸が残ってしまい。それを隠すようにあたいは口元を手の甲で隠す。
何で、こんなことをした。
何で、こんなことで胸が高鳴る。
「ほ、ほら、か、風邪のときはね。指先を濡らして、少しでも体温を逃がすのが大事なんだよ! タオルも濡らしてあるだろう?」
「あ、なるほどね、そういうことなのか! じゃあ私も自分で舐めちゃおうかなぁ♪」
「でも自分で舐めるとあんまり効果ないかも……」
「んにゅ? そうなんだ、難しいね」
なんて厳しい言い訳だろう。
すぐ嘘だとわかるようなものを平気で吐いても、お空は目を丸くしてうんうん頷いてくれる。無邪気で、あたいにはない輝きを持っている。そうだお空は友達、こうやって信じあえる間柄こそ、本来あるべき姿なんだ。
それなのにあたいは、そんな大切なものを汚すような。醜い願望を――
「じゃあじゃあ、ここ舐めたりしたら、もっと良くなるの?」
あたいが、そんな欲望を必死で追い払っているというのに。
あんたって子は……
「……ここって?」
「ほらほら、おでこだよ。おでこ♪ タオルに舐めるの効果を足して、すぐ治っちゃうかもよ」
なんでそんな無防備にあたいを近づけるのか。
前髪を退かし、あたいを誘うように。
わかってる、お空にそんなつもりはないのはわかってる。ただ純粋に興味本位なだけなんだ。その行為がどれほど自分を危機に追い込むことなのかをわかっていないから。
そんなお空に対し、これ以上悪乗りなんてできるはずがない。
「あ、あはは、実は私もやったことないんだよ。お空」
「えー。そうなの?」
「うん、だから……やっぱりやめっ」
「じゃあ、やってみようよ!」
「……はぁ!?」
天然ほど怖いものはない。
いったい、なんてことを言うのか。
あんな、指を舐めるということだけでもう、頭に血が上って一瞬訳が判らなくなってしまったというのに。
けれど、お空は笑顔を浮かべたまま、ちょいちょいっと自分の額を指差している。
「……す、少しだけだからね」
それはお空に言ったのか。
それとも欲望に負けた自分に対して言ったのか。
どくんっと大きく高鳴る胸を押さえ、あたいはベッドの上に四つん這いになり、お空の体の上を進む。布団の上からでも形のわかる、あたいよりも大人びた体。布団の上からでもうっすらと形を見て取ることのできる腰のラインと、えと、その、胸の突起物。
そこを通過した後には、汗ばんだ首筋と、柔らかそうな唇。
そして、熱のせいで潤んだ瞳。
数多くの誘惑をかわし。
そっと、あたいはお空のおでこに口を近づけ。
軽く、唇を触れさせた。
汗の香りと、お空の甘い香りがさきほどよりも濃く。あたいの脳を溶かそうとする。しかし特別な反応をしたのは、あたいだけじゃなかった。
「あっ!」
タオルとは違う。
人肌の感触に、お空がぴくりっと熱を帯びた体をくねらせた。
あたいはその反応が嬉しくて、唇をお空の額に触れさせたまま舌を這わせる。ざらりとした、舌がお空のその柔らかな肌を蹂躙していく。
その度に、お空は病に侵された体を弱々しく反応させる。
あたいはそのまま、その手をお空の――
「って、にゃあああああああああ!!」
ばんっ
手をお空の横におもいっきりついて、ベッドから飛び退き。
部屋の床の上でお空に背を向けたまま、綺麗に正座。
脂汗をダラダラと流しながら、ぐっと膝の上で両手を握り締める。
まずいまずい不味い不味い……
何をしようとした。
あたいという愚か者は、なんて非道な手段を選ぼうとした?
お空が好意で、やってみようかといったことに。
欲望の上乗せをしようとしてしまった。
なんとか奇声を上げることで、理性を維持したが……今のでやっぱり嫌われてしまったかな。耳をぺたんっと倒したまま、恐る恐る後ろを振り返ると。
あたいが舐めた額のところを指で押さえ……
にこにこと笑う。お空がいた。
「ん、確かにちょっとだけ、お燐に舐めてもらったところすっとしたかも。
でもお燐、ネズミを見つけたからって急に大声出したりしたらうるさいよ」
「ねずみ?」
「ほら、そこでしゃがんでるってことは。そこにネズミでもいるんでしょう?」
「あ、ああ、うん。大声出したせいで逃がしちゃったけど」
そして、ありがたいことに。
あたいが飛び上がったことを、ネズミ取りだと思ってくれたようだ。
「駄目だなぁ、お燐は。そうやって慌てるから」
「きょ、今日は調子悪いのかもしれないねぇ。あ、そうだお空。頭のタオルをそろそろ新しいものに交換するよ」
「はぁ~い♪」
じゃばじゃばと、冷たい水の中に手を入れて、体の火照りを少しでも静める。これ以上変な行動を取ってお空に迷惑を掛けるわけにはいかないから。しかし、なんでこんなに、可愛く映るのだろう。
病気のときの弱々しくなった家族を守ってあげたい。
そんな感情であればいいのに……
あたいは、それ以上を求めているのかもしれない。
タオルを待つ、お空にまた少しだけドキリとしながらも無事に交換を終え一安心。後は雑談でもして、お医者様が来るのを待つことにしようか。
あたいは再びベッドの上に腰を下ろし、お空の方を見た。
すると――
お空の歯が、カチカチと鳴っていた。
さっきまでにこやかだった表情を消し、布団の中で膝を抱く。
「お燐、寒い……」
まだ体温が上がっているのか。
お空は寒さを訴える。慌てて部屋の中を探すけれど、見つけたのは余った掛け布団一枚だけ。それを上から被せてみても、お空の身体の震えは止まらない。
あれほど笑顔だったお空が、辛いと顔を歪めている。
「お空! 待ってて!」
だからあたいは迷わなかった。
服を床に脱ぎ捨て。
裸同然の姿のまま、布団の中に潜り込み。お空を背中から抱きしめる。少しでも暖かくなるように、自分の身体でお空を救う。
「……ん、それ、あったかい」
「当たり前だよ、あたいは火焔猫。地獄車の妖怪サマだよ? お空を暖めるなんてお手の物さ」
そんなあたいの献身的な行動が効果を得たのか。
お空の震えは収まり、また穏やかな呼吸を繰り返し始める。
よかった、本当に……
「ねえ、お燐」
「なに、お空」
でも、さすがにずっとくっついているわけにも行かないね。またあたいの悪い虫が鳴き始めるかもしれないし。お空も身体を動かしにくいだろうし。
「これも、風邪をよくするための方法なの?」
「あ、ああ、うんっ。一応ね、暖かかったでしょう?」
「うん、暖かい」
そう言いながら、お空は解こうとした私の手を掴み。
優しく抱く。
「別に、風邪をよくするためじゃなくていいから。もう少しだけ……」
「――――――っ!?」
そんな、言葉をつぶやいたときのお空の顔は見えないけれど。
身近に感じる温もりが、彼女の答え。
近くにいて欲しいと願うのが、彼女の結論。
でも、そんな暖かい想いを受けても。
私の悪い病気は顔を出さず。
ただ、いつもより小さく見える背中を、ぎゅっと抱きしめ続けた。
◇ ◇ ◇
次の日――
あたいの看病と永遠亭の薬のおかげで、お空は元気になった。
けれど、こういう話にはオチがつきもので……
風邪がうつってしまったのだ。
あたいに。
じゃなくて、さとり様に。
そのせいで二日続けて温泉は休業。
さとり様はどうしても開けたいと言っていたけれど、さすがに一日は休んで欲しいというあたいを含めたペットたちの声の元。なんとかさとり様の説得に成功した。
けれど――
お空が、看病したいと言い出して――
「さとり様、さとり様。風邪のときは指先を舐めるのがいいらしいですよ!」
「……へぇ~、そうなのお燐」
「え、あ、いや、そ、そうかもしれませんねぇ」
「さとり様、次はですね。おでこにチュってさせてください!」
「なるほどね、それも治療の一環ということね」
「あは……あはははは」
「ほら、さとり様。布団の中で抱き合うのって、暖かくていいでしょう?」
「大胆なことをしたものねぇ……ねえ、お燐」
「ははっ ははははっ……」
「誰か、消して! 昨日のお空の記憶を消してぇぇぇぇぇえええええ!」
しばらくの間、お燐はそのネタで弄られ続けたのだという。
ってなんかピンチの時のカ○ジみたいだなコレw
あと多分誤字かな?
>しばらくの間、お燐はそのネタでれ続けたのだという。
ネタでれ続けた?
『ざらざらの下で』
→『ざらざらの舌で』?
誤字というか、ネズミを発見したって件でお燐のことをお空って言ってましたよ
おりんくう! おりんくう!
「今日温泉が仕えなくなったから」でした。使えなく
お空無垢すぎる!
おりんくうたまんねぇ
お燐ちゃんに人(猫)肌で暖めて貰いたいので、ちょっくら風邪引いて来る。
純粋なお空かわゆすなぁ。
こいしちゃんもさとり様を看病してあげて。
あまーい
ごっつぁんです
わきゃぁぁぁああああ
無垢なお空も可愛いですが、純情なおりんも可愛いです。たまりませんなぁ
これは良いおりんくう
かわいすぎて死んでしまうわ
おりんくうマジたまんねすッ
お燐が晒されてるww
個人的には100点数だけどね。