" />守矢さん家の早苗さん 作者: わおん
Coolier - 新生・東方創想話

守矢さん家の早苗さん

2010/02/11 15:55:28
最終更新
サイズ
9.43KB
ページ数
1
閲覧数
1860
評価数
22/101
POINT
5870
Rate
11.56

分類タグ


 ~氷精の場合~

ある夏の日のことでした。
いつものように箒でせっせと境内を掃除しておりますとなにやら視線を感じます。
そちらの方へ目をやると木の陰から誰かが覗いているではありませんか。
青い髪に氷の羽。ははあこれはいつぞやの氷精でしょう。
何の用かと声をかけましたところ、

「ここに蛙の親玉がいるだろ!」

とのこと。
はて、家に蛙なんていたかしら。
しばらく思案しておりますとふと私の尊敬しております神の一人が思い浮かびました。
なるほど諏訪子様のことか。
ただの氷精が諏訪子様程のお方に何の用かしら。
お参りしていきたいと言うのなら大歓迎なのだけれど。

「あたいはさいきょうだから蛙の親玉なんて氷漬けよ!」

なんと物騒な。
そんなことより今日は暑いですね。
かき氷食べませんか?

「食べる!!」

じゃあ氷お願いしますね。
流石氷精、氷の扱いならお手の物といったところでしょうか。
あっという間に拳大の氷を作ってしまいました。

「これ、どうするの?」

かき氷器を使って砕くんです。
と、私が奥よりかばさんのかき氷器を持ってくると途端に目を輝かせました。
氷を設置してがりがり、とハンドルを回し始めるとその輝きはさらに増してきました。
やりますか?と問うと

「やる!!やる!!」

よっぽどやりたかったようです。
妖精の類はみな子どもっぽいとは聞きましたが子どもそのものではありませんか。
夢中になってハンドルを回す姿は何やら楽しそうで、少しだけ羨ましくなりました。
ほんの数分でふたり分のかき氷が出来上がりました。
シロップはストロベリー味をご所望のようで、頂上が赤く染まった氷山を見ていたく気に入った様子。
美味しそうにかき氷を頬張る彼女を見てふと思いつきました。
ぽんぽんと膝を叩くと何の躊躇も無く私の膝の上へ。
素直なのかしら、それとも単純なのかしら。
私もこのくらい頭を空っぽにして過ごしたいなあ。
彼女の体はほんのり冷たく涼にはちょうどよい、大変心地よいものでした。
かき氷を食べ終わると彼女は満足したらしく

「またね!」

と手を振りながら湖の方へ飛んでいきました。
私も手を振り替えしつつ境内の掃除に戻りました。
それ以来彼女はちょくちょくこちらに来てはかき氷を食べていきます。季節問わず。
飽きないのかなと不思議に思いつつ、私は彼女にシロップの種類を聞きます。

彼女が好きなのはストロベリー味。

彼女の居場所は私の膝の上。









 ~烏の場合~

日も沈みかけ、そろそろ夕飯の支度をしようかと縁側から腰を上げた時のことです。
かぁ、と烏の鳴き声が聞こえてきました。
それ自体は何ら変わったことではございませんが距離が近すぎます。
何だろうと顔を上げると派手な羽音を立てて少し大きめの烏が私の頭の上にとまりました。
少々びっくりしてしまいましたが敵意はないようです。落ち着いて様子を見ます。
緑のリボンが目に入りました。飼われているのかしら。
それで思い出しました。
この烏は確か諏訪子様から融合炉を任された娘のはず。
融合炉に何かあったのでしょうか。

「?」

烏は首を捻るばかりです。
どうやらここに来る途中で目的を忘れてしまったようです。流石鳥頭。
ま、後で諏訪子様に報告しておけばいいか。
その旨を伝えると烏はもう一鳴きして帰っていきました。
翌日の同じ時間。
またやってきました。
やはり私の頭の上にとまり何かを伝えたい様子。
内容を問うと

「?」

また首を捻ります。
この様子だと昨日もここに来たことも忘れてそうです。
本当は何も用なんてないんじゃないのかしら。

「?」

それはもういいですから。
一応諏訪子様に報告しておきましょう。万が一ということもあります。
帰っていく烏を眺め、どうせ明日もまた来るだろうとぼんやり考えました。

同じことが一週間ほど続いたころでしょうか。
同時刻。人間の里。
私がお夕飯の買い物をしておりましたところ急に頭上に重みが。
嫌な予感がしつつ目線を上に向けると緑のリボンが視界に入ってきました。
先程まで談笑を交わしていた八百屋の主人も目を丸くしております。
何故神社ではなく私のところへ。

「?」

予想できた反応で一安心です。
おそらく生活のリズムとして定着してしまったのでしょう。
融合炉に何か異変が!→とりあえず私の頭の上に
といった感じで。
なんと単純な。アルゴリズムもびっくりです。
しかし最初も次の時も特に融合炉に異変は無かったとのこと。
もしかして報告しようとしたことのみ覚えているのでは。
毎回「昨日何か報告することがあったはず!」と献身的にこちらに通って。
お馬鹿な話です。
あまりにもお馬鹿な話なので買い物の後ゆで卵を作ってあげました。
結局里の人達から奇異の目で見られてしまいましたが私はこの頭上の重みを疎ましくは思いません。
少々頭の抜けた娘のほうが可愛く感じるものです。
どうせ用向きを聞いたところでまた同じ仕草を繰り返すのでしょう。

彼女の目的は忘れてしまった報告。

彼女の居場所は私の頭の上。









 ~猫の場合~

つい先日の出来事。境内の掃除も一通り終わりいつものように縁側に腰を下ろそうとすると

「にゃあ」

先客が。
黒猫です。尻尾が二つです。お腹が赤いです。
不吉すぎる。何か私の身に起こるのでしょうか。
しばらく逡巡しておりますとばさばさ、といつものように烏が飛んできました。
私の頭の上で一休みすると縁側の猫に気づいたようです。
烏が一鳴きすると猫もそれに応えるように一鳴き。
どうやら知り合いのようです。
私の頭の上から飛び立つとそのまま猫の横につきました。
訂正。知り合いではなく友達のようです。
そういうことならおもてなししないわけにはいきません。
丁度昨日の豚汁の残りがありましたので、ご飯によそって猫まんまにしてあげました。
あれ、食べてくれませんね。
警戒してるのでしょうか。それとも残り物じゃ不満だと言うことでしょうか。
贅沢者め。
さっきからずっと鼻を近づけては臭いを嗅いでいます。毒なんか入っていませんよ?
そう伝えると恐る恐るですが一口ぱくり、と食べてくれました。
お気に召してくれたようです。
そのまま勢い良く食べ続け、あっという間に器は空になってしまいました。
お腹空いてたのかな。
烏もずるいと言わんばかりの目でこちらを見ていたのでいつものようにゆで卵を持ってきてあげました。
二匹とも食事を終えると満足したようでお互いに寄り添って寝てしまいました。
猫と烏の組み合わせと言うのは何とも奇妙に見えますが幸せそうなので気にしないでおきましょう。
日も暮れてきたのでお夕飯の支度をしようと一旦神社の中へ戻りました。
本当は私もあそこに混じってお昼寝をしたかったのですけれど、しかたありません。
今日は何にしようかしら、魚かな。なんてことを考えながらふと縁側に目をやるともう二匹の姿はありませんでした。
おそらく帰ったのでしょう。
一抹の寂しさを感じながら支度に戻りました。明日も来てくれるかな。
次の日、また境内の掃除をしておりますと後ろから

「にゃあ」

との鳴き声。
また来てくれました。今度はあちらから近づいてきました。
何か口にくわえてるようです。
よくよく見てみると死んでしまった鼠が。思わず仰け反ってしまいましたがすぐに冷静さを取り戻します。
お礼でしょうか。お気持ちはありがたいのですが私は鼠を食さないのです。
私がお断りすると少し残念そうな様子で縁側のほうへ歩いていきました。
悪いことしたかな。でも鼠はなあ。
しかしすぐに機嫌が直ったようで先程の鼠を引きずりながら楽しそうに走りまわっております。
何が楽しいんだろう。
そんなに何か運ぶのが楽しいのなら家のものもどこか持っていってくれないかな。生ごみとか。

「うにゃあ」

やってくれますか?
なかなか働き者の猫さんですねえ。どこぞの神様も見習ってほしいものです。
じゃあこれを裏のゴミ捨て場までお願いできます?後で畑の肥料にしますので。

「任せてよおねえさん」

三つ編みの少女が答えます。流石にあのままだと運ぶのは無理か。
彼女が片付けに行ってくれている間に私は猫まんまを用意しましょう。
正当な労働には正当な報酬を。雇用関係の基本です。
あの娘と私は友達ですけれど。

「にゃあ」

終わったみたいですね。これどうぞ。
丁度烏もやってきたので予め用意しておいたゆで卵をあげました。
私も何か食べよっと。お煎餅が残っていたはずです。
これからは3人揃ったらおやつの時間にしようかな。そんなことを考えました。

彼女の仕事はお片づけ。

彼女の居場所は私の足元。








 ~私の場合~

流れる風は暖かくて、春の到来を感じる頃。
今日は珍しく一人です。誰もここを訪ねては来ません。
とても静かに感じますが、むしろここ最近が騒がしすぎたのです。
神奈子様も諏訪子様も普段はお姿をお見せにはなりません。神様ですから。
ですのでここにいるのは私だけ。何をしても私だけ。
清々しいような、そうでないような。透明な気分というのはこういうことを指すのでしょうか。
こんなに雄大な自然の中で自分を認識してくれるものは何もない。
何だか私はここに存在してないんじゃないのだろうか、そんな感覚を覚えました。
風に擦れる葉の音だけが私の耳を刺激します。
ふと目を閉じると段々自分が薄くなって薄くなって──

「早苗」

はっと目を開けるといつの間にか神奈子様が私の前に立っていました。
どうかなされましたか?

「そろそろ日も落ちる。中へ入りなさい」

言われて辺りを見渡すともう空は赤く染まっていました。
どうやらだいぶ長い間ぼうっとしてしまっていたようです。
しかし神奈子様がそれだけを伝えに現れるとは考えられません。
用向きを尋ねようと空から視線を戻すと、神奈子様はもうそこにはいませんでした。
少しだけ違和感を覚えたまま神社へ向かうと、今度は後ろから声をかけられました。

「早苗はさ」

諏訪子様。二人とも今日はどうなさったのですか?
私の疑問もどこ吹く風といった様子で諏訪子様は私の顔をじっと見つめたままです。
本当に何なのだろう。
どうにもできないまましばらくそのままでいると不意に諏訪子様が口を開きました。

「ここが好き?」

ここ、というのは何を指すのでしょう。
幻想郷という意味であれば答えは決まっています。
好きです。幻想郷も、守矢の神社も、私が今いる場所も、全て。
でも、何故今その質問を?

「早苗が好きだと言うのなら、きっとそこは早苗の居場所になるから」

どうにも言葉の真意を図りかねていると諏訪子様はにっこりと笑って、
そして姿を消してしまわれました。

気がつくと私は縁側に座っていてうつらうつらと船を漕いでいる最中でした。
いつから寝てたんだろう。

膝の上の氷精が不思議そうな目でこちらを見ています。
私が何でもないの、と笑みを返すとまたかき氷を食べる作業に戻りました。

烏は上手にバランスを取りながら私の頭上でかぁ、と一鳴き。
もう報告することすら忘れてしまった様子。

猫が足元で大きく欠伸をすると気持ちよさそうに背を伸ばしました。
お仕事はありませんからもう少し寝ててもいいですよ?
すると彼女はじっと私の顔を見つめ、それから瞼を閉じました。

どうやら烏も、氷精も暖かな陽気につられて眠ってしまったようです。
私ももう一眠りしようかな。たまにはこんな日があってもいいと思ったり。




だって私はここが好きで。




ここが私の居場所だから。
ポエマーな早苗さん。
ところでぽえぽえという表現を考えた人は天才だと思うんですけどいかがでしょうか。
どうでもいいか。
わおん
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.3740点簡易評価
3.100点名前が無い程度の能力 削除
ぽえぽえ
5.90点名前が無い程度の能力 削除
なんかぽわぽわしててすごくいい
7.100点名前が無い程度の能力 削除
良いね!!
11.100点名前が無い程度の能力 削除
GJ!!
12.100点名前が無い程度の能力 削除
ぽえぽえ
13.90点夕凪 削除
ぽえぽえ~、はっ?!
なんというぽえぽえしたお話。
こっちまでぽえぽえするお話でした。
ぽえぽえ。
15.80点名前が無い程度の能力 削除
強くなったな早苗さん。
27.100点名前が無い程度の能力 削除
ぽえぽえ
30.100点名前が無い程度の能力 削除
いいなあぽえぽえ…
34.100点名前が無い程度の能力 削除
特に何も起こらない素晴らしき日々。ぽえぽえ。
37.100点名前が無い程度の能力 削除
ぽえぽえ、ぽわぽわ…両方とも想像しがいのある表現ですなぁ。そして…お空…バ○もそこまで来るとお兄さんちょっと悲しいよ…でも笑ったけどw
42.100点名前が無い程度の能力 削除
ぽえ~ん・・・・・・
ハッこれはどせいさんだ!
47.100点名前が無い程度の能力 削除
まさにさなえ時空
52.100点名前が無い程度の能力 削除
ぴえぴえ
ハッ!これはムッシュピエールだ
53.100点名前が無い程度の能力 削除
そんなぽえぽえ早苗さんが大好きです
54.90点名前が無い程度の能力 削除
早苗さんの素晴らしさで地球がやばい
55.100点謳魚 削除
ぽけぽけ……はっ、これは『まもって〇護月〇』でした。

チーちゃんもお燐ちゃんもお空ちゃんも可愛いよ。
67.100点名前が無い程度の能力 削除
実にぽえぽえです。
68.90点名前が無い程度の能力 削除
こういう読んでてほわっとするのは好きです
みんなかわいいなぁ
69.90点ずわいがに 削除
グッド!ありきたりな賛辞で申し訳ありませんが、非常にぽわやんぱわやんしました。
74.100点名前が無い程度の能力 削除
癒された
101.100点名前が無い程度の能力 削除
良いぽえぽえだ