「魔理沙―、俺のお茶とってくれないかしら?」
「はいよ霊夢」
太陽が昇るお昼時。博麗神社の縁側で、私と霊夢でゆったりとお茶を飲む。
弾幕ゴッコも楽しいけどたまにはほのぼのとするのもいいものだ。人間、たまには休憩が大切だからな。
「それでさぁ、聞いてよ魔理沙。命蓮寺って言う厄介なお寺が出来た所為で俺の神社にまったく賽銭が入らなくなっちゃったのよ」
「何言ってんだよ霊夢。命蓮寺が出来なくても霊夢の神社には元々賽銭なんて無いじゃないか」
「うるさい!」
霊夢の愚痴に笑いながら答えると、霊夢が膨れっ面で怒り出す。霊夢は相変わらず変わらないなぁ。
「まったく、なんで俺の神社にはお賽銭がないのかしら」
ただ何か違和感を感じる。なんかとてつもない違和感が。いつもの腋巫女服にいつもの髪型、外見はどこも変わらないけど、何かこいつは私の知ってる霊夢じゃないという、凄まじい違和感が。
「ちょっと魔理沙! 俺の話を聞いてるの?」
「ああ、すまんな霊夢」
なんだろうなぁ、怒りっぽいところもいつもの霊夢だよなぁ。
「まったく、もう少し俺の大切さをみんなわかっても良いんじゃないかしら。人類の宝よ俺は。俺がいなくなったらみんな困るのよ」
「なあ霊夢、ちょっと聞いていいかな?」
「なによ?」
「なんで「俺」なの?」
そうだ、ここに違和感があるんだ。霊夢はいつも自分の事を「私」って言ってるのに、というかこの幻想郷で「俺」って言う奴にあった事が無い。
しかし、私の質問に霊夢はきょとんとした顔を見せる。そんな変な事いったかな私?
「何言ってるのよ魔理沙、俺はいつも俺って言ってるじゃない」
「本当に?」
「うん」
霊夢は当然のような顔で答える。そうだっけ? 霊夢はいつも「俺」って言ってたっけ?
「私が間違ってたのか……?」
「そうよ魔理沙。貴方だっていつも「俺」って言ってるじゃないの。「俺」って言いなさいよまったく。違和感しか感じないわ」
あれ? そうだっけ? え? 私っていつも「俺」って言ってたっけ? いやいや騙されるな私、そんなわけないじゃないか。
「そうかわかった! 霊夢の冗談なんだろ? いやーまったくやられたよ」
笑って霊夢の背中を叩く。「やっぱりバレちゃうよねこんな冗談。てへ♪」って霊夢にも笑って返して欲しかったが、私の予想を軽く裏切り霊夢はまた怒ったような顔をする。
「何言ってるのよ魔理沙。そっちこそ冗談でしょ。この幻想郷で「私」なんて使ってる奴一人もいないわよ」
え? え? ええ? いやいやそんな馬鹿な話があるわけがない。だって、
「私は「私」って使ってるぜ?」
「だからそれが冗談なんでしょ? ほら、早くあなたも「俺」って言いなさいよ。俺を混乱させようったってそうはいかないんだからね!」
混乱してるのはこっちなんだが……。どうやら霊夢はこの冗談をやめる気がないらしい。賽銭が入らなくなってとうとうヤケになったのかな?
やれやれ仕方ない、もっとまともな奴を連れてきて霊夢を落ち着かせよう。
「ちょっと待ってろ霊夢。「私」を使ってるのが私だけじゃない事を証明するから」
そう言って私は箒に乗り、博麗神社を後にした。とりあえずアリスの所にでも行こうか。一応あいつは頭が良いからな。そんなくだらない冗談しないだろう―――。
▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼
「ちょっと私の話を聞いてくれよアリスー」
アリスの家に着いた私はさっそく霊夢の事を話す事にした。見てろよ霊夢、私を馬鹿にした事を一生後悔させてやる。
「魔理沙が俺に泣きついてくるなんて珍しいわね。いいわよ、なんでも俺に話して見なさい」
だけど後悔したのは私だった。アリス、お前もか。
「ん、やっぱりいい。パチュリーの所行く……」
「あ、ちょっと待ちなさいよ魔理沙! 何しに俺の所に来たのよー! あと、なんで「私」なんて使ってるのよ魔理沙―!」
まさかアリスまで私をからかうなんて予想外だ―――。
▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼
「あら? 何しに来たのかしら魔理沙?」
紅魔館に付いた私はさっそくパチュリーのいる図書館へと向かった。そこには丁度いい具合にレミリア、咲夜、フラン、美鈴の4人も揃っていた。
こいつらは霊夢やアリスなんかと違ってくだらない冗談なんかしないに決まってる。
「それが聞いてくれよみんなー、霊夢とアリスがおかしくなっちゃったんだよー」
「だからって俺のところに来られてもねぇ」
ちょっと、パチュリー待ってくれ。
「俺の霊夢がおかしくなったってどいうい事よ魔理沙?」
現在進行形でレミリアもおかしくなったぜ。
「安心してくださいお嬢様、俺が付いているんですから霊夢なんて居なくても平気ですわ」
全然平気じゃないぞ咲夜。
「そんな事より俺と弾幕ゴッコしようよ魔理沙!」
「私」って言ってくれたらいくらでもやってやるよフラン。
「俺も手合わせ願いたいんですが魔理沙。漫画で見た通背拳って技を試してみたくなって」
だから「私」って言えばいくらでもやってやるぜ美鈴……。
「やっぱり永遠亭に行くぜ……」
こんな奴らじゃもう話しにならない。それでも永琳なら、永琳ならきっとなんとかしてくれるはず。
疑問そうな顔をするこいつらを無視して、私は紅魔館を後にする―――。
▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼
「はぁーまったく嫌になるよ」
紅魔館の門の所で思いっきり溜息を付く。いったいどうしたんだみんな、エイプリルフールにはまだ早いぜ?
「どうしたの魔理沙? なんか悩み事でもあるの?」
「ん? なんだチルノか」
悩んで落ち込んでいる私が気になったのか、チルノが近寄ってきた。チルノに相談してもしょうがないよなぁ……。
いや待てよ、もしかしてチルノなら「あたい」って言ってくれるかも知れない。とにかく今は「俺」以外の言葉が聞きたい。もう「俺」なんて聞きたくない。頼むよチルノ、お前を信じるからな。
「それがさぁ、聞いてくれよチルノ」
「最強の俺になんでも相談しなよ魔理沙!」
チルノをマスタースパークで吹き飛ばした私は永遠亭へ向かった―――。
▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼
永遠亭に来る途中、竹やぶで会った妹紅が「道案内なら俺にまかせろー」と言ってきたので、ついダブルスパークで吹き飛ばしてしまったが問題なく永琳の元へ辿りつく事が出来た。
一緒にいた慧音が「俺の妹紅に何をする!」って怒ってたから一緒に吹っ飛ばしたけど何も問題はなかったぜ。
永琳の所に来たが、当然私の頭を診察してもらうわけではない。私は正常だ、おかしくなるわけがない。おかしいのはあいつらだ。絶対にあいつらだ。
ここに来たのは永琳なら頭はおかしくなってないという信頼と、あいつらの頭を治す薬を貰うためだ。他人の頭を心配するなんて、なんて私は優しいんだと自分を褒めてあげたい所だぜ。
「永琳の頭はおかしくなってないって信じて相談なんだが。私の周りのやつ等が変なんだ!」
真剣な顔で私は永琳に尋ねる。するときょとんとした顔でうどんげ、輝夜、永琳、てゐが答える。
「俺の師匠の頭がおかしくなってるわけないじゃないですか。むしろおかしいのは魔理沙よ」
「俺の従者の永琳がおかしくなってるわけないでしょ。むしろおかしいのは貴方ね」
「そうよ失礼ね魔理沙、天才の俺の頭がおかしくなってるわけないじゃない。貴方がおかしいのよ」
「どう考えても魔理沙がおかしいね。「私」ってなにかの冗談? あまり面白くないよ」
駄目だ、パッパラパーだった。永琳もその弟子も輝夜もてゐも―――。
▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼
永遠亭をファイナルスパークで消し飛ばした私は守矢神社へ行くことにした。早苗はなんだかんだで暴走するけど、頭の悪い奴じゃないし、あそこの神はなんだかんだで優秀だ。
だからこそ、あいつらみたいに頭がおかしくはなる事はないに違いない。絶対にない! というかそうであってくれ。もう私の頭は本当におかしくなりそうだぜ……。
いやもしかして「私」がおかしいのか? 「俺」が正しいのか? いやそんなはずは無い。ついさっきまでみんな「私」だったんだ。大丈夫、「私」はおかしくない、「私」はおかしくない、「私」はおかしくない……?
「早苗! 神奈子! 諏訪子! 頼む、私にはもうお前達だけがもう頼りなんだ!」
半泣きになりながら早苗達の元へ駆け寄ると、彼女達は優しく私を迎えてくれた。
よかった、やっぱりここに頼ってよかったんだ。あんな怪しい奴らに助けを求めるのが間違いだったんだ。
「嬉しいですよ魔理沙さん。やっと俺達、守矢神社を信仰する気になったんですね!」
「ところで魔理沙? なんで「私」なんて使ってるんだい?」
「駄目だよ神奈子、魔理沙の趣味にケチ付けたら悪いよ。「私」って使う女の子もいるんだから。俺は使わないけど」
「それもそうか諏訪子。ごめんな魔理沙、俺の発言は忘れてくれ」
「忘れられるわけないだろうがぁぁあああ!!!!!」
▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼
無我夢中で叫んだ私はその後何をやったか覚えていない。守矢神社が吹き飛んでたけど多分私のせいじゃない。「ファイナルマスタースパーク」とか思いっきり叫んだ気がするけど絶対私の所為じゃない。
悪いのはむしろあいつらだ。あいつらの頭が悪いんだ。私は絶対に悪くないぜ。私は正常だぜ。
霊夢やあいつらがおかしくなって、私だけが正常なんだ。「私」だけが正常なんだ!
「本当にそうなのかな?」
大丈夫大丈夫大丈夫、落ち着け私。あいつらが異常なんだ「私」が正常なんだ。
騙されるな私! 「俺」になんか騙されちゃ駄目だ「私」! あいつらに騙されちゃ駄目だ!
しかし困った、これでもう頼れるところが無くなった。
「しょうがない、幻想郷はなんだかんだで広いんだ。一人くらい頭が正常な奴がいるだろう」
本当にいるのかな? もしかしたらこの幻想郷の中で異常なのは私だけなんじゃないのかな?
私一人の「私」が異常で本当はあいつらの「俺」が正しいのかな?
いやいやしっかりしろ私。「私」が正しいんだ、「俺」が間違ってるんだ。大丈夫、誰かひとりくらいは正常な奴がいる。
そしたらそいつと対策を練ろう。どうしてこの幻想郷が「俺」で満ち溢れてしまったのかを。
「大丈夫、くよくよするなんて私らしくないぜ」
とりあえず誰でもいいから探そう。どこかに居るはずだ「私」が。この広い幻想郷の中から「私」を探そう。
信じてるぜ幻想郷の仲間達、誰か一人くらい正常な奴は居るって、信じてるよ……。
「魔理沙さん何かネタになる事はないですか? 俺の新聞の記事にしたいんですよね」
「「「俺達の演奏を聞いていってよ魔理沙!」」」
「あら、魔理沙どうしたのかしら? 俺のひまわりでも見に来たのかしら?」
「俺になにかようなのかー?」
「なんだか知らないけど俺がくろまくよー」
「魔理沙ー、ちょっと俺の屋台に寄っていかない?」
「俺の人形解放を手伝ってくれるのね魔理沙!」
「俺は蛍だってば!」
「何か困った事でもあったの魔理沙? 困ったときは斬ればわかるって俺の師匠が言ってたわよ」
「あら魔理沙、冥界になんの用かしら? 俺はいまからご飯だから邪魔をしないで欲しいわ」
「俺が嘘を付いてる? 鬼の俺が嘘を付くわけがない!」
「貴方厄いわねぇ、俺が厄を払ってあげようかしら?」
「「「何か俺達に用ですか魔理沙さん?」」」
「どうしたんだ魔理沙そんなに慌てて? また俺の店から何か商品を貰っていくきか?」
「おー盟友丁度よかった。ちょっと俺の試作品の実験に付き合ってよ」
「地底に遊びに来たのかい? 俺と一緒に遊びましょうよ」
「妬ましいわね貴方、何か俺に楽しい事を提供しなさい!」
「なんだか暴れまわってるようだな魔理沙。暴れる奴には暴れて迎えるのが礼儀。ちょっと俺に付き合え魔理沙!」
「さとりは俺なんて言わないよな、って思ってますね魔理沙さん。俺の第三の目には全てお見通しですよ!」
「お姉さんの死体は俺がいただくよ!」
「俺と一緒にフュージョンしましょ?」
「姉よりも優れた豊穣の神の俺に何か用魔理沙?」
「妹よりも優れた紅葉の神の俺に何か用魔理沙?」
「10分遅刻よ蓮子、いつまで俺を待たせるのかしら?」
「何か俺によう魔理沙? 紫さまの場所なら俺は知らないよ?」
「これで魔理沙もおしまいじゃあ!」
「また俺の橙をイジめたな魔理沙!」
「メリーの時計が狂ってるのよ。俺はちゃんと時刻ピッタリに来たよ」
「また来たの? 俺にまたこんぺいとうでも食べさせに来てくれたの?」
「俺はここにいるよ~」
「豊姫様、侵入者がまた来たんですが俺が対処しますか?」
「あら? 俺の所の桃でも食べに来たのかしら?」
「ナズーリンを知らないか魔理沙? 俺の宝塔がまた無くなってしまったから探して貰いたいのよね」
「あー魔理沙久しぶり♪ 久しぶりに俺と恋焦がれるような弾幕をやろうよ♪」
「ぬえがどこに言ったか知らない魔理沙? 俺に仕事を押し付けてどっか言っちゃったのよねあいつ」
「どうしたんだい魔理沙? 俺は今ダウジング中なんだから邪魔をしないでくれよ」
「なんと、俺の頭がおかしいと申すか」
「どうしたんですか魔理沙さん? 空気が読める俺になんでも相談してください」
「天界に来るなんて珍しいわね、そんなに俺に会いたかったのかしら?」
「あんたが彼岸に来るなんて珍しいな。悪いけど俺はこう見えても忙しいんだよね」
「貴方は少し落ち着きが足りない。ちょっと俺の説教に付き合いなさい」
「俺の姐さんに何か用ですか魔理沙?」
「魔理沙さん、とうとう妖怪退治をやめる気になったんですね。俺は本当に嬉しいですよ」
「俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺庵俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺」
駄目だおかしい奴しか居なかった……。見事に「俺」しかいなかった……。幻想郷が「俺」の言葉で満ち溢れてしまった……。
とりあえず全員ドラゴンメテオで吹き飛ばしたからまだ冷静を保てるが、これ以上「俺」って言葉を聞いたら私の頭がおかしくなりそうだ……
もしかしておかしかったのは私の方なのか? いやそんなはずは無い、私はおかしくない。おかしいのはこの幻想郷だ!
そうだ「私」はおかしくない、「私」正常だ。「俺」が間違ってるんだ。「俺」が異常なんだ。落ち着け、これは孔明の罠だ。
例え「私」が私一人になっても私は「俺」と戦い続けるぜ。負けるもんか、絶対に負けるもんか。「俺」なんかに絶対に負けるもんか!
騙されるもんか騙されるもんか! あいつらが全員おかしいんだ、私だけが正しいんだ。騙されちゃ駄目私! 騙されちゃ駄目だ「私」!
これはもう過去最大の異変だ。幻想郷最大のピンチだ。「俺」が幻想郷を滅ぼす異変だ! このまま放っておけば「俺」で幻想郷が崩壊する……。
というよりもう私が崩壊する。異変だって? そうだ異変だ、これは絶対に異変だ! なんでそれを考えなかったんだ私は! これは異変なんだ!
よかった、私はおかしくなかったんだ。やっぱりおかしかったはこの幻想郷だったんだ! 「私」が正しかったんだ!
「そうだな。これはもう異変だよな。犯人は……。奴しかいないよなぁやっぱり」
こういう時に犯人として表れるのは幻想郷中の変人を集めても奴しかいない。
「紫―! さっさと出てこい!」
あいつはきっと慌てる私を見てスキマの中でクスクスと笑っているに決まってる。早く出て来い紫、さっさとこの異変を終わらせてやる。
もう私は駄目だ、これ以上「俺」に会ったら倒れてしまいそうだ。だから頼む紫、もうこの異変を終わらせてくれ。
「紫ー! 頼むから早く出て来きてくれー!」
声の限界に挑戦するくらい叫ぶ。下手すると幻想郷から月の都にまで届くんじゃないかこの声は?
「何よ魔理沙? 人が気持ちよく眠ってるときに大きい声で呼ばないでよ」
そーらスキマから出てきた。やっぱり紫が犯人だな! 欠伸までして眠そうな演技をしたってこっちには全てお見通しなんだぜ。
あーよかった。これで「俺」とはもうおさらばだ。
「紫、お前のやった事は全てわかってるんだ。今すぐ謝るならブレイジングスターでお前の顔面に突撃するくらいで許してやるぜ」
このヘンテコな異変をさっさとなんとかしないと私の中の「俺」がゲシュタルト崩壊する。
「あれま、バレちゃったかしらやっぱり」
ははっ、ほらやっぱり紫だ。こういう変な異変はこいつの所為にすればだいたい合ってるんだ。バレないわけがないじゃないか。
やっぱりコレは異変だったんだ。私は「私」は正常だったんだ。よかった、周りが「俺」が異常なだけだったんだ。私は正常だったんだ!
はははっ、勝ったんだ! 私は「俺」に勝ったんだ! 「俺」が負けたんだ! 私の勝ちだ紫!
「うふふふ、さあ早くこの異変をなんとかしないさい。うふふふふふふふ、私が正常だったんだってみんなに伝えなさい。うふ、うふふふふふ」
「しかし魔理沙も過激ねぇ。お饅頭を盗み食いしたくらいでそんな怒らないでよ」
「は? お饅頭? なにそれ?」
「違うの? 俺が魔理沙の家の饅頭を食べた事を怒ってるのかと思ったんだけど」
俺が魔理沙の家の饅頭を食べた? なにそれ? 俺が魔理沙の家の饅頭? なにそれ? 俺が魔理沙の家? なにそれ? 俺が魔理沙? なにそれ? 俺? 俺? 「俺」……?
なにそれ?
「俺俺俺俺俺ってそんなに「俺」が好きかお前らはー!!!!」
「ちょちょちょっと魔理沙何よ? いきなり意味不明なんだけど? 俺の服掴まないでよ魔理沙」
また「俺」か! もういやだ、もう沢山だ。私にも我慢の限界ってものがあるんだ。もうこんな異常な世界は嫌だ!
何が「俺」だ! 少女のお前らが「俺」なんて使うな! 早く私を「私」の世界に帰してくれ! 「俺」の世界から開放してくれ!
「饅頭なんかどうでもいいんだよ紫! この異変はお前の仕業なんだろ? 頼むからもう元に戻してくれ!」
「異変って何よ魔理沙? それになんで涙目になってるのよ貴方? 何か困った事があるなら俺が相談に乗ってあげるから」
紫が犯人じゃない? 異変じゃない? ははっ、そんなわけないじゃないか? じゃあ「私」が異常だったって事か?
はははっ、そんなわけないじゃないか! 黙されないぜ私は、異常なのは「俺」だ。私は異常じゃない正常なんだ。
だってそうだろ? お前達が正常なら、この幻想郷で異常なのは私だけって事じゃないか? そんなわけないだろ?
これは異変なんだ! 「私」が消える異変なんだ! 「私」は私は正しいんだ! うふふ、騙されないからねみんな?
うふふふ、私は負けないからね? うふふふ、私は正常なんだからね? うふふふ、大丈夫だからね? 正常だからね!
「みんなで私の事を虐めてるんだろ? もう私の負でいいから、早くなんとかしてくれ紫……」
「俺が貴方の事を虐めるわけないじゃないのよ。本当にどうしたの魔理沙? 顔面グショグショよ?」
これは異変じゃない? 私一人だけが「私」? 幻想郷は「俺」? 「私」だけが異常? 私だけが異常?
騙されない騙されない騙されない! 私が異常なんじゃない! お前達が異常なんだ! これは異変なんだ!
そうだよな紫? これは異変なんだよな? 「俺」の異変なんだよな? みんながおかしくなる異変なんだよな?
みんなが「俺」でも、「私」だけは正常なんだよな? この世界で一人になっても私だけは正常なんだよな?
私がおかしくなる異変じゃないよな紫? 私は正常なんだよな紫? 「私」は正常なんだよな……?
お前達が異常なんだ! この幻想郷の中で異常なのは「俺」だ! 私は正常だ「私」は正常だ私は正常だ正常だ正常だ!
「私は正常なんだ! 紫そうだよな? 「私」は正常だよな? そうだと言ってくれよ紫!」
「ちょっと魔理沙本当になんで怯えた顔で泣いてるの? 悩みがあるなら俺がなんとかしてあげるから」
「黙れ黙れ黙れ黙れ! 俺がこの幻想郷の中で異常なんだ!」
あれ? 俺が異常なんだっけ? 私は正常なんじゃなかったっけ? 「俺」が私で間違ってたんだっけ? 私が「私」で間違ってたんだっけ?
私って異常なんだっけ? 俺が正常なんだっけ? 私は異常なんだっけ? 異常ってなんだっけ? 「俺」が正常なんだっけ?
この幻想郷の中で異常なのは「俺」だっけ? それとも俺だっけ? 私は異常なんだっけ? 「私」って異常だったんだっけ?
紫は正常なんだっけ? 霊夢は異常なんだっけ? あいつらは正常なんだっけ? 私が異常なんだっけ? 俺が異常なんだっけ? 誰が異常なんだっけ?
これってみんながおかしくなる異変なんだっけ? 私がおかしくなる異変なんだっけ? 「私」がおかしくなる異変なんだっけ? 私が異変なんだっけ?
あれ? あれ? あれ? 私は「俺」だっけ? あれ? あれ? 「俺」って私だっけ? 私って俺だっけ? あれ? 俺が「俺」だっけ?
あれ?あれ?あれ?あれ? 私ってなんだっけ? あいつらは俺だっけ? 私が「俺」だっけ? 私が俺だっけ? あれ? 俺が異常なんだっけ?
あれ?あれ?あれ?あれ? オレ……?
「はいよ霊夢」
太陽が昇るお昼時。博麗神社の縁側で、私と霊夢でゆったりとお茶を飲む。
弾幕ゴッコも楽しいけどたまにはほのぼのとするのもいいものだ。人間、たまには休憩が大切だからな。
「それでさぁ、聞いてよ魔理沙。命蓮寺って言う厄介なお寺が出来た所為で俺の神社にまったく賽銭が入らなくなっちゃったのよ」
「何言ってんだよ霊夢。命蓮寺が出来なくても霊夢の神社には元々賽銭なんて無いじゃないか」
「うるさい!」
霊夢の愚痴に笑いながら答えると、霊夢が膨れっ面で怒り出す。霊夢は相変わらず変わらないなぁ。
「まったく、なんで俺の神社にはお賽銭がないのかしら」
ただ何か違和感を感じる。なんかとてつもない違和感が。いつもの腋巫女服にいつもの髪型、外見はどこも変わらないけど、何かこいつは私の知ってる霊夢じゃないという、凄まじい違和感が。
「ちょっと魔理沙! 俺の話を聞いてるの?」
「ああ、すまんな霊夢」
なんだろうなぁ、怒りっぽいところもいつもの霊夢だよなぁ。
「まったく、もう少し俺の大切さをみんなわかっても良いんじゃないかしら。人類の宝よ俺は。俺がいなくなったらみんな困るのよ」
「なあ霊夢、ちょっと聞いていいかな?」
「なによ?」
「なんで「俺」なの?」
そうだ、ここに違和感があるんだ。霊夢はいつも自分の事を「私」って言ってるのに、というかこの幻想郷で「俺」って言う奴にあった事が無い。
しかし、私の質問に霊夢はきょとんとした顔を見せる。そんな変な事いったかな私?
「何言ってるのよ魔理沙、俺はいつも俺って言ってるじゃない」
「本当に?」
「うん」
霊夢は当然のような顔で答える。そうだっけ? 霊夢はいつも「俺」って言ってたっけ?
「私が間違ってたのか……?」
「そうよ魔理沙。貴方だっていつも「俺」って言ってるじゃないの。「俺」って言いなさいよまったく。違和感しか感じないわ」
あれ? そうだっけ? え? 私っていつも「俺」って言ってたっけ? いやいや騙されるな私、そんなわけないじゃないか。
「そうかわかった! 霊夢の冗談なんだろ? いやーまったくやられたよ」
笑って霊夢の背中を叩く。「やっぱりバレちゃうよねこんな冗談。てへ♪」って霊夢にも笑って返して欲しかったが、私の予想を軽く裏切り霊夢はまた怒ったような顔をする。
「何言ってるのよ魔理沙。そっちこそ冗談でしょ。この幻想郷で「私」なんて使ってる奴一人もいないわよ」
え? え? ええ? いやいやそんな馬鹿な話があるわけがない。だって、
「私は「私」って使ってるぜ?」
「だからそれが冗談なんでしょ? ほら、早くあなたも「俺」って言いなさいよ。俺を混乱させようったってそうはいかないんだからね!」
混乱してるのはこっちなんだが……。どうやら霊夢はこの冗談をやめる気がないらしい。賽銭が入らなくなってとうとうヤケになったのかな?
やれやれ仕方ない、もっとまともな奴を連れてきて霊夢を落ち着かせよう。
「ちょっと待ってろ霊夢。「私」を使ってるのが私だけじゃない事を証明するから」
そう言って私は箒に乗り、博麗神社を後にした。とりあえずアリスの所にでも行こうか。一応あいつは頭が良いからな。そんなくだらない冗談しないだろう―――。
▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼
「ちょっと私の話を聞いてくれよアリスー」
アリスの家に着いた私はさっそく霊夢の事を話す事にした。見てろよ霊夢、私を馬鹿にした事を一生後悔させてやる。
「魔理沙が俺に泣きついてくるなんて珍しいわね。いいわよ、なんでも俺に話して見なさい」
だけど後悔したのは私だった。アリス、お前もか。
「ん、やっぱりいい。パチュリーの所行く……」
「あ、ちょっと待ちなさいよ魔理沙! 何しに俺の所に来たのよー! あと、なんで「私」なんて使ってるのよ魔理沙―!」
まさかアリスまで私をからかうなんて予想外だ―――。
▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼
「あら? 何しに来たのかしら魔理沙?」
紅魔館に付いた私はさっそくパチュリーのいる図書館へと向かった。そこには丁度いい具合にレミリア、咲夜、フラン、美鈴の4人も揃っていた。
こいつらは霊夢やアリスなんかと違ってくだらない冗談なんかしないに決まってる。
「それが聞いてくれよみんなー、霊夢とアリスがおかしくなっちゃったんだよー」
「だからって俺のところに来られてもねぇ」
ちょっと、パチュリー待ってくれ。
「俺の霊夢がおかしくなったってどいうい事よ魔理沙?」
現在進行形でレミリアもおかしくなったぜ。
「安心してくださいお嬢様、俺が付いているんですから霊夢なんて居なくても平気ですわ」
全然平気じゃないぞ咲夜。
「そんな事より俺と弾幕ゴッコしようよ魔理沙!」
「私」って言ってくれたらいくらでもやってやるよフラン。
「俺も手合わせ願いたいんですが魔理沙。漫画で見た通背拳って技を試してみたくなって」
だから「私」って言えばいくらでもやってやるぜ美鈴……。
「やっぱり永遠亭に行くぜ……」
こんな奴らじゃもう話しにならない。それでも永琳なら、永琳ならきっとなんとかしてくれるはず。
疑問そうな顔をするこいつらを無視して、私は紅魔館を後にする―――。
▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼
「はぁーまったく嫌になるよ」
紅魔館の門の所で思いっきり溜息を付く。いったいどうしたんだみんな、エイプリルフールにはまだ早いぜ?
「どうしたの魔理沙? なんか悩み事でもあるの?」
「ん? なんだチルノか」
悩んで落ち込んでいる私が気になったのか、チルノが近寄ってきた。チルノに相談してもしょうがないよなぁ……。
いや待てよ、もしかしてチルノなら「あたい」って言ってくれるかも知れない。とにかく今は「俺」以外の言葉が聞きたい。もう「俺」なんて聞きたくない。頼むよチルノ、お前を信じるからな。
「それがさぁ、聞いてくれよチルノ」
「最強の俺になんでも相談しなよ魔理沙!」
チルノをマスタースパークで吹き飛ばした私は永遠亭へ向かった―――。
▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼
永遠亭に来る途中、竹やぶで会った妹紅が「道案内なら俺にまかせろー」と言ってきたので、ついダブルスパークで吹き飛ばしてしまったが問題なく永琳の元へ辿りつく事が出来た。
一緒にいた慧音が「俺の妹紅に何をする!」って怒ってたから一緒に吹っ飛ばしたけど何も問題はなかったぜ。
永琳の所に来たが、当然私の頭を診察してもらうわけではない。私は正常だ、おかしくなるわけがない。おかしいのはあいつらだ。絶対にあいつらだ。
ここに来たのは永琳なら頭はおかしくなってないという信頼と、あいつらの頭を治す薬を貰うためだ。他人の頭を心配するなんて、なんて私は優しいんだと自分を褒めてあげたい所だぜ。
「永琳の頭はおかしくなってないって信じて相談なんだが。私の周りのやつ等が変なんだ!」
真剣な顔で私は永琳に尋ねる。するときょとんとした顔でうどんげ、輝夜、永琳、てゐが答える。
「俺の師匠の頭がおかしくなってるわけないじゃないですか。むしろおかしいのは魔理沙よ」
「俺の従者の永琳がおかしくなってるわけないでしょ。むしろおかしいのは貴方ね」
「そうよ失礼ね魔理沙、天才の俺の頭がおかしくなってるわけないじゃない。貴方がおかしいのよ」
「どう考えても魔理沙がおかしいね。「私」ってなにかの冗談? あまり面白くないよ」
駄目だ、パッパラパーだった。永琳もその弟子も輝夜もてゐも―――。
▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼
永遠亭をファイナルスパークで消し飛ばした私は守矢神社へ行くことにした。早苗はなんだかんだで暴走するけど、頭の悪い奴じゃないし、あそこの神はなんだかんだで優秀だ。
だからこそ、あいつらみたいに頭がおかしくはなる事はないに違いない。絶対にない! というかそうであってくれ。もう私の頭は本当におかしくなりそうだぜ……。
いやもしかして「私」がおかしいのか? 「俺」が正しいのか? いやそんなはずは無い。ついさっきまでみんな「私」だったんだ。大丈夫、「私」はおかしくない、「私」はおかしくない、「私」はおかしくない……?
「早苗! 神奈子! 諏訪子! 頼む、私にはもうお前達だけがもう頼りなんだ!」
半泣きになりながら早苗達の元へ駆け寄ると、彼女達は優しく私を迎えてくれた。
よかった、やっぱりここに頼ってよかったんだ。あんな怪しい奴らに助けを求めるのが間違いだったんだ。
「嬉しいですよ魔理沙さん。やっと俺達、守矢神社を信仰する気になったんですね!」
「ところで魔理沙? なんで「私」なんて使ってるんだい?」
「駄目だよ神奈子、魔理沙の趣味にケチ付けたら悪いよ。「私」って使う女の子もいるんだから。俺は使わないけど」
「それもそうか諏訪子。ごめんな魔理沙、俺の発言は忘れてくれ」
「忘れられるわけないだろうがぁぁあああ!!!!!」
▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▼ ▲ ▲ ▼ ▲ ▼
無我夢中で叫んだ私はその後何をやったか覚えていない。守矢神社が吹き飛んでたけど多分私のせいじゃない。「ファイナルマスタースパーク」とか思いっきり叫んだ気がするけど絶対私の所為じゃない。
悪いのはむしろあいつらだ。あいつらの頭が悪いんだ。私は絶対に悪くないぜ。私は正常だぜ。
霊夢やあいつらがおかしくなって、私だけが正常なんだ。「私」だけが正常なんだ!
「本当にそうなのかな?」
大丈夫大丈夫大丈夫、落ち着け私。あいつらが異常なんだ「私」が正常なんだ。
騙されるな私! 「俺」になんか騙されちゃ駄目だ「私」! あいつらに騙されちゃ駄目だ!
しかし困った、これでもう頼れるところが無くなった。
「しょうがない、幻想郷はなんだかんだで広いんだ。一人くらい頭が正常な奴がいるだろう」
本当にいるのかな? もしかしたらこの幻想郷の中で異常なのは私だけなんじゃないのかな?
私一人の「私」が異常で本当はあいつらの「俺」が正しいのかな?
いやいやしっかりしろ私。「私」が正しいんだ、「俺」が間違ってるんだ。大丈夫、誰かひとりくらいは正常な奴がいる。
そしたらそいつと対策を練ろう。どうしてこの幻想郷が「俺」で満ち溢れてしまったのかを。
「大丈夫、くよくよするなんて私らしくないぜ」
とりあえず誰でもいいから探そう。どこかに居るはずだ「私」が。この広い幻想郷の中から「私」を探そう。
信じてるぜ幻想郷の仲間達、誰か一人くらい正常な奴は居るって、信じてるよ……。
「魔理沙さん何かネタになる事はないですか? 俺の新聞の記事にしたいんですよね」
「「「俺達の演奏を聞いていってよ魔理沙!」」」
「あら、魔理沙どうしたのかしら? 俺のひまわりでも見に来たのかしら?」
「俺になにかようなのかー?」
「なんだか知らないけど俺がくろまくよー」
「魔理沙ー、ちょっと俺の屋台に寄っていかない?」
「俺の人形解放を手伝ってくれるのね魔理沙!」
「俺は蛍だってば!」
「何か困った事でもあったの魔理沙? 困ったときは斬ればわかるって俺の師匠が言ってたわよ」
「あら魔理沙、冥界になんの用かしら? 俺はいまからご飯だから邪魔をしないで欲しいわ」
「俺が嘘を付いてる? 鬼の俺が嘘を付くわけがない!」
「貴方厄いわねぇ、俺が厄を払ってあげようかしら?」
「「「何か俺達に用ですか魔理沙さん?」」」
「どうしたんだ魔理沙そんなに慌てて? また俺の店から何か商品を貰っていくきか?」
「おー盟友丁度よかった。ちょっと俺の試作品の実験に付き合ってよ」
「地底に遊びに来たのかい? 俺と一緒に遊びましょうよ」
「妬ましいわね貴方、何か俺に楽しい事を提供しなさい!」
「なんだか暴れまわってるようだな魔理沙。暴れる奴には暴れて迎えるのが礼儀。ちょっと俺に付き合え魔理沙!」
「さとりは俺なんて言わないよな、って思ってますね魔理沙さん。俺の第三の目には全てお見通しですよ!」
「お姉さんの死体は俺がいただくよ!」
「俺と一緒にフュージョンしましょ?」
「姉よりも優れた豊穣の神の俺に何か用魔理沙?」
「妹よりも優れた紅葉の神の俺に何か用魔理沙?」
「10分遅刻よ蓮子、いつまで俺を待たせるのかしら?」
「何か俺によう魔理沙? 紫さまの場所なら俺は知らないよ?」
「これで魔理沙もおしまいじゃあ!」
「また俺の橙をイジめたな魔理沙!」
「メリーの時計が狂ってるのよ。俺はちゃんと時刻ピッタリに来たよ」
「また来たの? 俺にまたこんぺいとうでも食べさせに来てくれたの?」
「俺はここにいるよ~」
「豊姫様、侵入者がまた来たんですが俺が対処しますか?」
「あら? 俺の所の桃でも食べに来たのかしら?」
「ナズーリンを知らないか魔理沙? 俺の宝塔がまた無くなってしまったから探して貰いたいのよね」
「あー魔理沙久しぶり♪ 久しぶりに俺と恋焦がれるような弾幕をやろうよ♪」
「ぬえがどこに言ったか知らない魔理沙? 俺に仕事を押し付けてどっか言っちゃったのよねあいつ」
「どうしたんだい魔理沙? 俺は今ダウジング中なんだから邪魔をしないでくれよ」
「なんと、俺の頭がおかしいと申すか」
「どうしたんですか魔理沙さん? 空気が読める俺になんでも相談してください」
「天界に来るなんて珍しいわね、そんなに俺に会いたかったのかしら?」
「あんたが彼岸に来るなんて珍しいな。悪いけど俺はこう見えても忙しいんだよね」
「貴方は少し落ち着きが足りない。ちょっと俺の説教に付き合いなさい」
「俺の姐さんに何か用ですか魔理沙?」
「魔理沙さん、とうとう妖怪退治をやめる気になったんですね。俺は本当に嬉しいですよ」
「俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺庵俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺俺」
駄目だおかしい奴しか居なかった……。見事に「俺」しかいなかった……。幻想郷が「俺」の言葉で満ち溢れてしまった……。
とりあえず全員ドラゴンメテオで吹き飛ばしたからまだ冷静を保てるが、これ以上「俺」って言葉を聞いたら私の頭がおかしくなりそうだ……
もしかしておかしかったのは私の方なのか? いやそんなはずは無い、私はおかしくない。おかしいのはこの幻想郷だ!
そうだ「私」はおかしくない、「私」正常だ。「俺」が間違ってるんだ。「俺」が異常なんだ。落ち着け、これは孔明の罠だ。
例え「私」が私一人になっても私は「俺」と戦い続けるぜ。負けるもんか、絶対に負けるもんか。「俺」なんかに絶対に負けるもんか!
騙されるもんか騙されるもんか! あいつらが全員おかしいんだ、私だけが正しいんだ。騙されちゃ駄目私! 騙されちゃ駄目だ「私」!
これはもう過去最大の異変だ。幻想郷最大のピンチだ。「俺」が幻想郷を滅ぼす異変だ! このまま放っておけば「俺」で幻想郷が崩壊する……。
というよりもう私が崩壊する。異変だって? そうだ異変だ、これは絶対に異変だ! なんでそれを考えなかったんだ私は! これは異変なんだ!
よかった、私はおかしくなかったんだ。やっぱりおかしかったはこの幻想郷だったんだ! 「私」が正しかったんだ!
「そうだな。これはもう異変だよな。犯人は……。奴しかいないよなぁやっぱり」
こういう時に犯人として表れるのは幻想郷中の変人を集めても奴しかいない。
「紫―! さっさと出てこい!」
あいつはきっと慌てる私を見てスキマの中でクスクスと笑っているに決まってる。早く出て来い紫、さっさとこの異変を終わらせてやる。
もう私は駄目だ、これ以上「俺」に会ったら倒れてしまいそうだ。だから頼む紫、もうこの異変を終わらせてくれ。
「紫ー! 頼むから早く出て来きてくれー!」
声の限界に挑戦するくらい叫ぶ。下手すると幻想郷から月の都にまで届くんじゃないかこの声は?
「何よ魔理沙? 人が気持ちよく眠ってるときに大きい声で呼ばないでよ」
そーらスキマから出てきた。やっぱり紫が犯人だな! 欠伸までして眠そうな演技をしたってこっちには全てお見通しなんだぜ。
あーよかった。これで「俺」とはもうおさらばだ。
「紫、お前のやった事は全てわかってるんだ。今すぐ謝るならブレイジングスターでお前の顔面に突撃するくらいで許してやるぜ」
このヘンテコな異変をさっさとなんとかしないと私の中の「俺」がゲシュタルト崩壊する。
「あれま、バレちゃったかしらやっぱり」
ははっ、ほらやっぱり紫だ。こういう変な異変はこいつの所為にすればだいたい合ってるんだ。バレないわけがないじゃないか。
やっぱりコレは異変だったんだ。私は「私」は正常だったんだ。よかった、周りが「俺」が異常なだけだったんだ。私は正常だったんだ!
はははっ、勝ったんだ! 私は「俺」に勝ったんだ! 「俺」が負けたんだ! 私の勝ちだ紫!
「うふふふ、さあ早くこの異変をなんとかしないさい。うふふふふふふふ、私が正常だったんだってみんなに伝えなさい。うふ、うふふふふふ」
「しかし魔理沙も過激ねぇ。お饅頭を盗み食いしたくらいでそんな怒らないでよ」
「は? お饅頭? なにそれ?」
「違うの? 俺が魔理沙の家の饅頭を食べた事を怒ってるのかと思ったんだけど」
俺が魔理沙の家の饅頭を食べた? なにそれ? 俺が魔理沙の家の饅頭? なにそれ? 俺が魔理沙の家? なにそれ? 俺が魔理沙? なにそれ? 俺? 俺? 「俺」……?
なにそれ?
「俺俺俺俺俺ってそんなに「俺」が好きかお前らはー!!!!」
「ちょちょちょっと魔理沙何よ? いきなり意味不明なんだけど? 俺の服掴まないでよ魔理沙」
また「俺」か! もういやだ、もう沢山だ。私にも我慢の限界ってものがあるんだ。もうこんな異常な世界は嫌だ!
何が「俺」だ! 少女のお前らが「俺」なんて使うな! 早く私を「私」の世界に帰してくれ! 「俺」の世界から開放してくれ!
「饅頭なんかどうでもいいんだよ紫! この異変はお前の仕業なんだろ? 頼むからもう元に戻してくれ!」
「異変って何よ魔理沙? それになんで涙目になってるのよ貴方? 何か困った事があるなら俺が相談に乗ってあげるから」
紫が犯人じゃない? 異変じゃない? ははっ、そんなわけないじゃないか? じゃあ「私」が異常だったって事か?
はははっ、そんなわけないじゃないか! 黙されないぜ私は、異常なのは「俺」だ。私は異常じゃない正常なんだ。
だってそうだろ? お前達が正常なら、この幻想郷で異常なのは私だけって事じゃないか? そんなわけないだろ?
これは異変なんだ! 「私」が消える異変なんだ! 「私」は私は正しいんだ! うふふ、騙されないからねみんな?
うふふふ、私は負けないからね? うふふふ、私は正常なんだからね? うふふふ、大丈夫だからね? 正常だからね!
「みんなで私の事を虐めてるんだろ? もう私の負でいいから、早くなんとかしてくれ紫……」
「俺が貴方の事を虐めるわけないじゃないのよ。本当にどうしたの魔理沙? 顔面グショグショよ?」
これは異変じゃない? 私一人だけが「私」? 幻想郷は「俺」? 「私」だけが異常? 私だけが異常?
騙されない騙されない騙されない! 私が異常なんじゃない! お前達が異常なんだ! これは異変なんだ!
そうだよな紫? これは異変なんだよな? 「俺」の異変なんだよな? みんながおかしくなる異変なんだよな?
みんなが「俺」でも、「私」だけは正常なんだよな? この世界で一人になっても私だけは正常なんだよな?
私がおかしくなる異変じゃないよな紫? 私は正常なんだよな紫? 「私」は正常なんだよな……?
お前達が異常なんだ! この幻想郷の中で異常なのは「俺」だ! 私は正常だ「私」は正常だ私は正常だ正常だ正常だ!
「私は正常なんだ! 紫そうだよな? 「私」は正常だよな? そうだと言ってくれよ紫!」
「ちょっと魔理沙本当になんで怯えた顔で泣いてるの? 悩みがあるなら俺がなんとかしてあげるから」
「黙れ黙れ黙れ黙れ! 俺がこの幻想郷の中で異常なんだ!」
あれ? 俺が異常なんだっけ? 私は正常なんじゃなかったっけ? 「俺」が私で間違ってたんだっけ? 私が「私」で間違ってたんだっけ?
私って異常なんだっけ? 俺が正常なんだっけ? 私は異常なんだっけ? 異常ってなんだっけ? 「俺」が正常なんだっけ?
この幻想郷の中で異常なのは「俺」だっけ? それとも俺だっけ? 私は異常なんだっけ? 「私」って異常だったんだっけ?
紫は正常なんだっけ? 霊夢は異常なんだっけ? あいつらは正常なんだっけ? 私が異常なんだっけ? 俺が異常なんだっけ? 誰が異常なんだっけ?
これってみんながおかしくなる異変なんだっけ? 私がおかしくなる異変なんだっけ? 「私」がおかしくなる異変なんだっけ? 私が異変なんだっけ?
あれ? あれ? あれ? 私は「俺」だっけ? あれ? あれ? 「俺」って私だっけ? 私って俺だっけ? あれ? 俺が「俺」だっけ?
あれ?あれ?あれ?あれ? 私ってなんだっけ? あいつらは俺だっけ? 私が「俺」だっけ? 私が俺だっけ? あれ? 俺が異常なんだっけ?
あれ?あれ?あれ?あれ? オレ……?
そりゃ天皇も寝込むわw
ぬえ…恐ろしい子!
なんだよ、俺って、何が面白いんだよ。
ん、俺がおかしいのか?これは面白いのか?
そうかそうか、これは面白いんだな。
は?!
ここはどこ?私はだれ?なんですでに評価で100点選んでるの?!
ぬえ怖いわぁw
ともあれ1人を壊しただけで終わる話にしたいのなら東方である必要性を疑います
騒ぎがあったら解決しないと幻想郷のバランスが崩れていくだけなのでは?とかお堅い理屈以前に
出自や背景が暗かったり重かったりしても結局暢気に終始しないと東方らしく感じないかな、と
ギャグとしてはこのオチがいつか笑い話になるとは思えないし
ホラーならホラーでギャグ的表現部分が不要で、むしろそこはジワジワと蝕まれていくような怖さが欲しかった
もしくは1人や2人、事情察しながらも悪乗りするとか……ね。
作者様、お見事にござりまする。
>>夕凪さん
すいません、せっかくなので一応ひとつ入れてみましたw
>>14さん
自分としてはぬえに弄られキャラ的なオチ担当して貰うが多いので
ぬえの能力凄いよ! ぬえちゃん凄いよ! 的な話を書きたかったんです。
でもホラーは自分苦手なのでほのぼのギャグ、ホラー風味に頑張ってみました。
題材的にくだらなさ重視で行ったんですが重くなってしまったらすいません。
あと一人なのは「魔理沙だけは俺って言わない!」って言う自分の趣味です。
>>16さん
正解ですw
恐ろしい……
「あれ、誰か足りなくね?」と思ったものの、気付けずじまい。
ひとまず、ショックのあまりに黒歴史が漏れ出してる魔梨……魔理沙が可愛かったのは事実。
>>一応あいつは頭に良いからな。そんなくだらない冗談しないだろう―――。
頭が良いからな。ではないでしょうか。
内容は良かったです、自我崩壊に追い込まれる様が怖い。
ぬえが魔理沙に何の恨みがあってここまでしたのかわからないのでこの点で。
>>そうよ失礼ね魔理沙、天才の俺の頭がおかしくなってるわけないじゃい。貴方がおかしいのよ
→「頭がおかしくなってるわけないじゃない」
>>嬉しいですよ魔理沙さん。やっと俺達、守矢神社を信仰する気になったんですね!
→「やっと俺達の」じゃないですか?
オチが素晴らしいww
修正しました。
誤字指摘本当にありがとうございます
>>40さん
恨みというか「私」と「俺」を混乱させるぬえの可愛いおちゃめなイタズラ的話を書きたかっただけですw
魔理沙にはそんなに恨みはないです。(強いて言うならやられた時の恨みくらい
>>41さん
誤字指摘本当にありがとうございます。
修正しました
一応下はワザとです。
正直理解も納得もできません。
ところで「これで魔理沙もおしまいじゃあ!」俺関係ねえwww
しかし、これが今後の魔理沙を的確に表している。
これが新手のオレオレ詐欺だったのか!!
一人称がぶれるとなんとなく軸がぶれてるように感じちゃうよね~
ぬえ怖いよ!
オレ魔理沙以外は初めてだ。
最終鬼畜全部俺とか洒落にならんな
点数付け忘れマスタorz
ホラー方向にいくとは思わなかったのでちょっとオチにはびっくり
ただぬえの能力がどう作用したのかどうもわからない
「一人称」に正体不明にしたとして魔理沙のみに効いて「俺」になるのは何故だろう
私の理解力の不足かもしれませんがそのへん説明が欲しかったです
精神弱いと聞きますものね妖怪勢は、実際タフそうな奴らばっかりですけど
>>76さん
説明不足、は確かに否めないですね。
自分としては魔理沙には私が俺になる認識操作
魔理沙以外には俺が私になる認識操作をぬえが仕掛けた設定にしたかったんです。
しかし、自分としてはこの話壊れギャグなほのぼのとして書いたつもりだったんですが
思ったよりホラーになっちゃったらしいです。
>>79さん
ぬえの凄みを出すためにラストを不気味にしたのはあります。
やっぱり凄いぬえをテーマで書いたので、最後はゾクリとなって欲しいというのはありましたw
>>82さん
誤字報告本当にありがとうございます。
修正しました。
そんな話
シンプル、イズ、ベスト。練られた話よりもストレートに衝撃を与える作品の方が評価されることなんて多々ある。
それが作家にとっては微妙に複雑な気分を招いたとしても、それが現実というものである。なんちゃって。
We are the unknown
そんな話でしたw
>>ずわいがにさん
いえいえ、みんなに見てもらえてこれほど嬉しいことは無いですよw
ストレートに衝撃を与えられたようでよかったです。
最終的にぬえだけが魔理沙の拠り所になって魔理沙とぬえがキャッキャウフフまで妄想した。