Coolier - 新生・東方創想話

人間と指輪の末路

2005/01/23 10:10:14
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※ 注意! ※
――この作品にはグロチックな描写があります。苦手な方は閲覧をお避け下さい――



























私は、もう暫くで意識を失い、完全に死んでしまうだろう。
あの日は天気が良かったのに・・・山の天候を、舐めすぎた。

折角彼女に結婚を申し込もうとおもって自分で作り上げた指輪。
片翼の鳥に宝石がはめ込まれた指輪。
一羽では飛べなくても、2羽が力をあわせれば、飛べる。
二人で歩んでいこうという意味を込めた品だった。
そして、それを山頂で渡そうと計画していたんだ。
・・・・でも、
雲行きが怪しくなり、私と彼女は登山途中だったが、山小屋のあった場所まで戻ろうとしていた。
しかし、急激に変わった天候は雪と風を呼び、吹雪となった。
私と彼女は散々彷徨った。
そして、彼女は最後にこういい残した。
「私の分まで幸せに、ね・・」
と。
最後の最後に、指輪をプレゼントすると、にっこりと笑って彼女は静かに眠った。
私は、
泣いた。
泣きながら、彼女を雪に埋めた。
彼女の使用したステッキを墓標の代わりとして。


あれから2日、吹雪は止んだが、道なき道を彷徨い続け・・・
「ごめんよ・・・、もう、歩けないんだ・・」
私は雪の上に倒れこむと、そう呟いた。
体は冷え切って、指先が曲がっているのか伸びているのかすら判らない。
眠気も襲ってきた。
あたりが急に暗くなる。
「あれ?何かある~」
気の抜けた少女の物と思われる声が聞こえた。
遂に幻聴まで・・・
雪を踏み固める音が俺に近づく。
「わぁ、人間だ~、死んでるのかな?」
頬を突付かれる。
「ぅ・・・、」
「あ、生きてる!」
私が反応した事に驚く少女(声で判断)。
「・すけて・・」
私は必死に生きようともがく。
「ぅ、ん~~~・・・おなかすいたしなぁ
・・でも、霊夢に叱られたくない・・
ん~~・・・」
「・・たす、けて・・・」
少女が考えている。
彼女はもしかしたら死神なのかもしれない。
魂を抜き取れるから、生きているのを喜び、助けてと言われて悩むのだから。
しかし、意外な言葉が返ってきた。
「村に行く途中だから、つれてってあげる。
その間に死んだら知らないよ?」
そう言うと、私を―――成人男性の平均程度は体重のある体をヨイショと言って持ち上げる。
背中におぶってくれたようだ
その時、最後に見たのはその少女の髪に結ばれた赤いリボンだった。
意識が途切れる中、私は浮遊感を感じた。


あぁ、暖かい。
それに、話し声もする。
離れた場所からは湯の沸く音がする。
「ぅ・・・ん、」
薄く目を開ける。
視界には黒い雲ではなく、木製の天井が飛び込んできた。
どうやら私は寝かされていたらしい。
「あ、起きた。」
「体は大丈夫ですか?」
先ほどの声と、知らない声が私に喋りかける。
「・・・ここは?・・・雪の中にいたと思ったのに・・・」
「覚えてないの?
昨日自分で助けを求めてたのに~」
と金髪に赤いリボンの少女がぶーぶーと愚痴を言う。
「む・・・じゃあ、ここまで運んでくれたのかい?」
「そうですよ、ルーミアさんが運んでくれたんです。
ここ、ショクシの村に。」
褐色の肌の少女が彼女の名前を教えてくれる。
(外人さんの村なのかな?
・・・でもあの山の周辺にそんな名前の村なんてあったっけ?)
「そうなんですか・・・ありがとうございます、ルーミアさん」
私は少女にお礼と共に頭を下げる。
「ふふ~、どういたしまして。」
と胸を張るルーミア。
その時、きゅるる~と可愛い音がする。
「あぅ・・ナーナ、ご飯にしようよ。
いいお肉手に入ったんでしょ?」
「そうですね、そろそろ調理も終わってると思うので、持ってきますね。」
ナーナと呼ばれた褐色の肌をした少女が部屋を出る。
私はまだ痛む体を起こす。
「あ・・・、そういえば、ルーミアさんはどうしてあんな山の中を歩いていたんだい?」
少女が戻ってくるまでの間、私は命の恩人に話題を振る。
「私は、村長さんにお祭りに呼ばれたの。
あ、ちなみに、ナーナは村長さんの娘さんなんだよ。」
丁度ナーナがお鍋を持って戻ってくる。
「ルーミアさん、ごめんけどお皿の用意お願いするね。」
両手が塞がっているので持ってこれないの。
「うん、いいよ~」
快く返事をして今度はルーミアが部屋を出て行った。
今度は村長の娘のナーナが部屋に残る。
「ナーナさんは、ルーミアさんのお友達みたいですね。」
今度も自分から話を振ってみる。
「ルーミアさんは、この村にとっては非常に大切な存在なんです。」
そう言って鍋の中のスープをかき混ぜる。
「だからお祭りに呼んだりするんですね、見掛けにはよらないもんだなぁ。
・・・あの、ここって電話どこにあるんですか?」
「・・デンワ?なんですか、それ?」
「え?・・・あ、し、知らないなら、いいです。・・・」
(・・・電話を知らない・・・本当か!?
もしかしてスゴイ田舎なのか?)
そんな事を考えていると戻ってきたルーミアがお皿を並べて、そこにナーナが乳白色のスープを盛り付けてくれる。
肉団子と野菜をミルクで煮込んだ料理のようだ。
「いただきまーす、もぐもぐ」
ルーミアは言うが早いか、肉団子を掬うとそれを口に入れる。
「さ、食べてください。
冷え切って疲れた体にはとても良い筈ですから。」
私も熱々の肉団子を口に入れる。
「ほふ、はふ、もぐもぐ、んぐ、・・・おいしい・・・」
素直に美味いと感想が出た。
不思議な味のする一口サイズの肉団子。
その旨味が溶け出したスープも最高だ。
なんだか体中に力が漲るようだ。
「んまーーいッ。」
ルーミアもその味に感涙している。
「ふふ、おかわりは沢山あるからね。」

談笑しながら食事をしていると、色々わかってきた。
一番の情報は、
笑い話に聞こえるかもしれないが、ここは自分が元いた世界ではないという事だった。
あと、このショクシの村は山の中にあり、麓の村までは2日はかかるという事。

でも、ここが何処であろうと、彼女の最後の願いは叶えられそうだ。
私は生きているのだから
そんな事をぼんやりと思った。


鍋の中身が三分の一に減った頃。
肉団子を口に入れると、ガリッと何か硬いものを噛んでしまった。
歯が痛い。
音が二人にも聞こえたらしく、ナーナは目を見開き、ルーミアも口の動きが止まっていた。
「イタタ・・・なんだろう?」
「もぐもぐ、骨くらい噛み砕けばいいのに、もぐもぐ」
「もしかして、当たりかも」
「当たり?」
口から手の平に出してみる。
・・・・・
ナンデ、
コレガ、
くちカラ、
デテクルンダ?

思考が一瞬止まる。
「あ、あれ?」
もう一度、手の平に出したナニカを良く見てみる。
鳥の形をした指輪だ。
「ゆ、指から抜けてお皿に入ったのかな?」
そう言って、自分の指を、恐る恐る、見る。

指には・・・

指輪が・・・

ある・・・

おかしいな、ナンデ指輪が二つもあるんだ?
私は1つしか持って無い筈。
でも、ここに2つあるのは事実な訳で、
・・・ワカラナイ
どうして、ここにあるんだ!
ここには無い筈なのに!
混乱する頭の中に声が響く。
アルノハ、アタリマエ
ダッテ、―――――
うわあああぁあアアアアァァァァァアァァァァアッ!!!!
頭の中の声を、同じく頭の中で叫び、掻き消す。
無い筈だ無い筈だ無い筈だ
だっておかしいじゃないか。
指輪は、確実に渡したんだ。
はめてあげたんだ。
あの細い指に。

固まる私を余所に、ルーミアとナーナがおしゃべりをしている。
「あ、当たりですね~」
「石かぁ、それより、このお肉どこでとったの?」
「3日位前に雪の中から掘り出したの。
まさに掘り出し物って奴よね。」
まて、3日くらい前に、ドコカラ、ナニヲ、ホリダシテきたって?
「あはははッ、3日かぁ、雪の中だったから新鮮だね~
でも、私はやっぱナマが・・」
――――オマエガ、タベタノハ、●●ナンダカラ。
「うわああぁああぁぁぁあああぁぁあッ!!!」
「「!?」」
絶叫し、指輪を投げ捨てて私は部屋を飛び出した。
「・・・どうしたんだろ?」
彼が出て行った後、暫くしてルーミアがナーナに聞いてみる。
「さ、さぁ?
指輪入れたのに驚いたのかしら?
それとも、やっぱりお肉が口に合わなかったのかしら?」
「多分指輪だよ~。
こんなに美味しい人肉なのに」
そう言いながらルーミアは
鍋から肉団子を掬うと、それを美味しそうに頬張った。
ナーナは指輪を拾うと、ルーミアに渡す。
「じゃあ、ルーミアさんのお土産にどうぞ。」
ルーミアは正直なところ、石ころなんて欲しくも何ともなかったけれど、受け取る事にした。
そこでナーナはふと思った。
何か忘れているような・・・まぁいいか。


~~~~~

ショクシの村
食屍の村
ここは、食屍鬼達の村である。
死んだモノを食べる鬼達。
死体はもちろん、決闘した対戦相手、果ては愛する者まで・・
彼らは、死後も自らの体の中で生き続ける。
そして、彼らを食べた自分は、彼らの力を引き継ぐ。
そんな考え方が彼らの道徳であり、正義であり、常識である。
夜行性で、吸血鬼程ではないが、やはり日光に弱い彼ら種族にとっては、
宵闇を操るルーミアはとても大切な存在だ。

後日に行われる決闘祭では選ばれた二人が、知力、技術、腕力など、もてる能力をフルに活用する。
もちろん、罠を仕掛けたりするなど、村中全てを使ってもかまわない。
他の村人達は勝利者が誰かを賭けたりもする。
ただし、決闘祭前に妨害や邪魔をするものは村人全員で処刑する。
それだけがルールだ。
決闘は神聖なものなのだ。
能力の拮抗する両者が文字通り昼夜を忘れ殺し合う為に、ルーミアの能力は必要なのだ。

さて、食屍鬼の村から逃げ出した彼に話を戻そう。

~~~~~


どこをどう走ったのかさえ、覚えていない。
木々で肌を切り、服を裂かれてしまったが気にしない。
冷え切って、疲れ切った体だったのに、何故か全力疾走ができ、
さらに以前よりも早く走れている。

だが、本人はそんなことを気にする余裕もなく、ただ、逃げる為に走っていた。
自分の恋人だった人を、
死んでしまった彼女を、
掘り起こして肉団子に調理し、
それを美味いと言ってガツガツと食べるバケモノから。

「ごめんよ、ごめん、ごめんな、ごめん・・」
走りながら、彼は泣きながら、壊れたオルゴールの様に謝り続ける。
あんなバケモノ達に、体をグチャグチャに壊され、肉の塊にしてまった事。
あんなバケモノ達に、君の肉を食べさせてしまった事。
そして、知らなかったとはいえ、最愛の人を食べてしまった事。
ガッと急に足を木の根に取られて転倒してしまう。
「ぐぅッ、――ハァ、ハァ、ハァ、」
息を整え、体を起こす。
途端に吐き気を催し、
「ッ!?
ぐぇえええぇッ、おぇえええぇええッ」
ビシャビシャと、胃の中のモノを吐き出す。
吐いては立ち上がり、走り出す。
そして、思い出して、吐き出す。
その日、昼夜を忘れて走りに走った。

次第に、彼の中で罪悪感は強迫観念に摩り替わる。
今度は自分の番だ。
自分が喰われる番だ。
今もすぐ傍にいるような気がする。
目の前に灯りが見え隠れする。
村だ!
村に逃げ込めば・・・
安堵感は気の緩みを呼び、気の緩みはすぐさま恐怖に変わる。
あの二人の少女が私を食べに追いかけてきているかもしれない。
そんな恐怖。
「く、くるな、くるな、くるなッ!」
迫る恐怖に絶叫する。
キガツカナイノカ?
恐怖は言葉となって、頭の中に響いてくる。
オマエモ、
スデニ―――
続く言葉を恐れ、かき消そうと叫び声を上げる
「ウワァアアアアアアアアアアァアァ!」
―――バ ケ モ ノ
 ダトイウノニ・・・
しかし、声は無情にも脳に直接響く。
「ヒッ!?」
理解した瞬間、体が硬直し、息も吸えなくなる。
全速力で走っていた私は足をもつれさせ、盛大に転倒して、
意識を失った。



臭いがする。
良い臭いだ。
嗅覚を刺激されて、空腹が襲ってくる。
あぁ、おなかが空いた・・・
ナニカ、タベタイナァ・・・
目が覚める。
「んッ・・・ぅ・・」
寝かされている・・・?
「あら、気が付いたようですね。」
またもや見知らぬ女性だ。
白衣を着ている。
「・・・ここ、は?」
「ここは村の診療所。
貴方は村の近くの森の中で倒れていたんですよ。
全身を傷だらけにしてね。」
「あ・・ありがとうございます・・」
礼を述べた途端、ぐぐぅ、とお腹が鳴る。
「ふふ、軽く食事を取りましょうか。
怪我はそう大した事無いので。」
そう言うと女医は部屋を出ていった。
ぐぐぅ・・
お腹が食事を請求する。
「くぅ・・・、腹減ったなぁ・・・」
女医が食事を持って戻ってきた。
食器の中身を見て思う。
(アレ?ごはんガナイジャナイカ・・・)
「どうぞ、おかゆですけど。」
そう言って食器を差し出す。
私は女医を見る。
女医がにっこりと微笑んで食器を差し出す。
ナンダ・・・、
ドコニモナイジャナイカ・・・

・・・・アァ、
アルジャナイカ。
メ ノ マ エ ニ 



◆◇◆◇◆◇◆◇


夜空を飛ぶ、紅白の少女。
当てもなく飛んでいるのではなく、目的があって飛んでいた。
「えっと、このあたりって言ってたわね・・・
あ、あったあった。」
珍しい。
今日は依頼を受けた。
縁側でお茶を飲んで一息ついていると、数人の大人たちが神社に訪れたのだ。
まぁ、悪い妖怪は退治しないとね。
それが博麗の巫女の存在意義だし。

・・・・え?そのお米や野菜、魚はどうしたのかって?
まぁ、持ちつ持たれつってやつよ。

「おぉ~い、巫女様が来てくれたぞ。」
到着した私を出迎えたのは村長と思わしき老人。
どんどん民家から人が出てくる。
・・・うっとおしい。
「で、早速だけどターゲットはどこかしら?」
「あ、はい、診療所の周辺に居ます。」
こっちです。と案内されながらその場へ向う。
「周辺?」
「はい、何故か診療所周辺から移動しないのです。
おかげで封鎖も簡単にできました。」
「ふ~ん・・被害はどれくらいなのかしら?」
「今週の頭に診療所の女医さんが襲われて、から今日までに・・・8人程でしょうか。
殆どは自警団の者達です。」
「一週間で8人・・・」
少ない。
霊夢はすぐに思ったのは被害の数の少なさだった。
人食いは満足するまでは食べ散らかしながら人を襲う。
個体差にもよるけど、飢餓状態なら一日で10人以上、満腹時でも一日2人は食べるだろう。
「もしかして、その封鎖地区の中に墓地ってないかしら?」
「あ、あります。この先の建物の裏です。」
霊夢はゆっくりと歩く。
建物に近づくにつれて、
バキリ、ボキリ、
と、砕くような音が聞こえる。
「やっぱり・・・」
確信した。
墓荒らし、死体漁り、腐肉喰い、食屍鬼
そう呼ばれる類の妖怪だ。
ざッ
墓地の前に出る。
いた。
バケモノが何かを租借している。
「はい、そこまで。」
「!」
バケモノがゆっくりとこちらを振り向く。
口に咥えているのは腐った腕。
その体に纏った見慣れない服は所々が破け、
浅黒く変色した皮膚が見え隠れする。
食事を中断された怒りか咥えた腕をバキリと噛み砕き、霊夢を睨みつける。
その顔は何故か、霊夢には泣いているように見えた。
「まったく、どうやって潜り込んだかしらないけど・・・」
ぶつぶつと文句を言い始めた霊夢に、バケモノが奇声をあげて襲い掛かる。
「グギャァアアアッ!!!」
丸太の様に太い腕で殴りかかってくる。
跳躍の速度は早く、その一撃が当たれば霊夢の体は砕けてしまうだろう。
だが、霊夢は空中に逃れる。
「ったく、話は最後まで聞きなさいよ!」
バケモノを睨みつける。
あれ?、様子が変だ。
バケモノが宙に浮いた霊夢を見てガタガタと震えだす。
「バ・・バケモノォオオ、ヒギャァアアアッ」
そう叫ぶと、頭を抱え逃げ出す。
「だ、誰がバケモノよ!
って、逃げる気!?」
墓地を突っ走って、隣接する森の中に逃げようとするバケモノ
空中を飛びながらそれを追い、
「・・・3枚で余裕ね。」
バケモノに向かって3枚のお札を投げつける。
淡い光を放ってバケモノの周囲に御札が舞う。
「封魔陣!」
3枚の御札がバケモノを取り囲んで3枚の札が最小の「面」を形成する。
「グギャッ!?」
バチバチと火花を散らしてバケモノが「面」に縛られる。
「まったく・・・」
動けなくなったバケモノの前に霊夢が舞い降りる。
「グゥウウ、グァアアアアアッ!」
バケモノが縛めを解こうとする。
「あー、無理無理。
貴方程度の力じゃあどんなに頑張っても無駄よ。
それよりも・・・・貴方、妖怪に”成った”のね?」
「グギィィイイッ、ヌァアアアアアアッ!!」
バケモノはまだ頑張っている。
「・・・可哀想に・・・」
「グッ!?」
バケモノが暴れるのを止めて、霊夢を見る。


◆◇◆◇◆◇


女医を殺し、肉を喰らった私は、
その充足感と、自己嫌悪の狭間で狂い、暴れた。
その後自警団らしき集団に襲われ、無我夢中で身を守っているうちに、

手傷を負いながらも、2人を殺してしまう。
欠損した肉体は、食べる事でより強靭になって再生した。
ははは、バケモノじゃないか・・・
人間の体を、水風船の様に切り裂く鋭い爪、骨まで砕く強靭な顎、
驚異的な身体能力を得たことに気が付く。
体が変化していた。
その後4日間で2度も攻め立てられ、6人も殺してしまう。

もう誰も近寄らないでくれ。
お願いだから。
私が死ぬまでほかっておいてくれ。
近寄るなら、殺して喰らうぞ
私は血の涙を流してそう呪った。
そして、誰も近寄らなくなって2日が経った。
その間、腹が減るたびに墓地を掘り返し、腐肉を喰らった。
もう、人を外れてしまっていた。
そこに現れた紅と白の少女。
空を飛ぶ少女。
そうか、この世界のバケモノはみんな空を飛ぶのか・・・
殺されてたまるか!
彼女との約束があるんだ!
空を飛ぶバケモノは、不思議な力で私を縛った。
そして、こう呟いたのだ。
「妖怪に”成った”のね?
・・・可哀想に・・・」
そうか、この紅と白の少女は、変わってしまった私の事を「人間」として扱ってくれるのか・・・
私は、今までとは違う涙を流した。


紅白の少女は、悲しそうに呟く。
「”あちら側”の人間ね・・・
もう、ここまで外れてしまったら、戻る事は無理だわ。」
少女が御札のようなものを私の額に貼り付ける。
「残念だけど、ここで消えてもらうわ。
冥土に行ったら、きちんと成仏しなさいよ。」
そして、手に持っていたお払い棒を振り上げる。
「さよなら、外れてしまった人。」
「グ、ガ・・アりガとゥ、紅白ノ少女。」
バケモノに成ってしまった男が、涙を流し、感謝する。
その言葉に霊夢は、一瞬だけビックリすると、にっこりと笑って
「夢想封印・浄!!」
お払い棒が額にコツッと当たり、
額に貼られた御札が、男の全身を包みながら、まばゆい光を放つ。
光が輝くたびに、男の姿が薄れてゆく。
八色全ての光が消えた後には、男の着ていたボロボロの服と、
片翼の鳥に宝石がはめ込まれた指輪が一つ、残されていた。



依頼を済ませ、何日か経ったある日。
「霊夢、これじゃあ無理だよ。」
香霖堂の主人、森近霖之助が渡された物を霊夢に返却する。
「な、なんでー?
ほら、綺麗でしょ?
それに、外の品だと思うんだけど・・・ダメ?」
返された指輪をもう一度霖之助に見せる。
「確かにそれは外の世界の品物だ。
だけど、片方だけじゃ意味の無い品物なんだよ。
二つ揃ってないと、買取はできないよ。」
そう言って、店の品物の整理を始める。
まぁ、2つ持ってて、その片方を僕にくれるって言うのなら話は別だけどね
なんて意味不明な事を付け加えた。
「霖之助さんってケチね。」
そう言うと、勝手に探してきた饅頭を頬張り、お茶を啜る。
「やれやれ、ケチなら饅頭やお茶なんか出さないぞ・・・
って、僕は出してないか・・・」
霊夢が勝手に煎れて、勝手に食べてるんだけである。
そして、他愛のないおしゃべりが始まる
かと思いきや、
急に窓の外が暗くなる。
「ん?、一雨くるのかな?」
霖之助がヨイショっと重そうな箱を棚に入れ替える。
「多分、お客よ。」
「え?」
「それも珍しい、ね。」
そして、香霖堂のドアを開ける音。
「いらっしゃいませ、お嬢さん」
霖之助が丁寧に接待する。
「あのー、ここって買い取りってしてるの?」
金髪に、赤いリボンの黒い服の女の子が品物を見せる。
それは、霊夢の持っている指輪と対になる、
片翼の鳥に宝石がはめ込まれた指輪だった。



△▼△▼△▼△▼△



ゴンゴン、
扉を叩く音がする。
多分、彼女だ。
「はい、どちらさまですか?」
「私、ルーミアだよー、ナーナ、あけてー」
何か持ってるのかな?
ガチャリと、木製のドアを開けてあげる。
「やほー」
ルーミアの背中には、人間の男がのしかかっていた。
「・・・あら、おみやげ?
3日前に新鮮なのが手に入ったの・・
でも、嬉しいわ、上がって。」
二人で男を支えながら部屋の中に入ってゆく。
「ち、違う違う~
私が見つけて、村に着くまで生きてれば助けるって約束したの。
よいしょ、ふぅ」
男をベッドに寝かせる。
「そこで、死にそうだから、蘇生させるの手伝って。」
ナーナに協力を要請する。
食べるの大好きな彼女にしては珍しいですね・・・
そんな感想をと、そんな彼女の行動、約束なのだから、
ナーナは彼女に協力しようと思った。
「え、えぇ、・・・でも、もう助からないよ?
体は冷え切ってるし、疲労で体力もなくなってるし・・・」
「そんなぁ、まだ生きてるし、約束したんだよ?」
うーむと唸って思案するナーナ。
ルーミアも真似して考える。
そして、
「そうだ、いい考えがあるよ。」
ぽむッと手を打って閃く。
「この人間が、助かりたい、死にたくないって言ってただけですよね?」
「そうだよ。
たすけて・・・って呻いてた。」
「じゃあ、私の仲間にしちゃいましょう。
人間の体なんかより強いし。」
「んー、そうだね、そうしよう。」
頷き合うと、二人は寝かせてある人間の方に向き直り・・・・

△▼△▼△▼△▼△

久々に長文になりました。

ちょっとグロかもしれません。




感想とかあると嬉しいです。
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コメント



0.3410簡易評価
5.60MSC削除
うわ、確かにグロい。
電話という単語からして主人公は人間界の者ですね。
最初から悲しい物語だと思っていたら読んでいくうちに身震いが。
誰だって自分の彼女の肉喰ったら壊れるでしょう。
でも実はその裏で色々とあったようで。
命が救われた、その代償があの妖怪じみた人間の姿(それとも完璧な妖怪になった?)
主人公はオリジナルですが、幻想郷の怖さなどが非常に伝わってきました。
やはりまともな人間では幻想郷で生きられない、てことなんでしょうね
31.70ななし削除
ルーミアもおいしそうに食べてるとこでゾクゾクしてしまいました
しかも,彼女の肉だったとは・・・.
人を喰うってのはこういうことだってことを認識させらました.

幻想郷のダークサイドな面をうまく利用した作品だったと思います.
33.無評価名前が無い程度の能力削除
グロい…というより、話の構成を工夫したんだなという印象が。
別段無意味なグロは感じられませんでした。
指輪は比翼の鳥、ですか? その意味を考えると少し切ないですね。
でも、面白く読めました。
39.無評価EXAM削除
感想ありがとうございます。
実は、グロ系の話なので怒られると思ってました。
後、投稿者パスでポカやったので感想欄で返信します。

MSC様
>主人公はオリジナルですが、幻想郷の怖さなどが非常に伝わってきました。
主人公=読者自身を意識して書きました。
>やはりまともな人間では幻想郷で生きられない
幻想郷自体が人間界側で否定されたモノの集まり(例えばオバケの存在とか)みたいな感じなので、普通の人間には厳しいかもしれませんね。

ななし様
>幻想郷のダークサイドな面
本当は怖い幻想郷(ぇ
>人を喰う
知らないほうが幸せって言葉がぴったりな食材No.1だと思います。
中国史では結構食べられてますけどね。

名前が無い程度の能力様
>比翼の鳥
書いてる最中比翼の鳥って単語が出てこなかったのはヒミツです。
>無意味なグロは感じられませんでした。

最後に、森近 霖之助を近森霖之助と書いてました。
霖之助ファンの方ごめんなさいorz
70.80絶対に殺されない程度の能力削除
人肉は血の味しかしない。筋張っていてまずい。
と聞いたことが有ります。
「よほどスープが旨かったんだろうなぁ。」
と先ず先に考えてしまった私はバケモノですかね?

怖い。だが一度は行きたい幻想郷(博麗大結界にて入郷不可