4.仏の御石の鉢 -重力の井戸-
そそり立つ石筍。
身の丈を遥かに超す巨大な牙。
きらきらと輝く表面とは裏腹に、その金剛石の中心部には――
――渦巻く深淵の黒が満ちていた。
「今からは、これまでのように簡単には行かないよ?
言うなれば……成長した貴女に贈る、応用問題ね。
もっと もっと、私を楽しませるために―――
頑張ってちょうだいな? 妹紅さん」
せわしなく手を動かし、御石の鉢をいじくりながら妹紅を愚弄する輝夜。
手元から無機的な音が聴こえる度に、金剛石筍は妖しく明滅する。
・
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「よし、久しぶりなんで上手く出来るか不安だったのだけど……調整完了!
これって制御が難しくって、面倒くさいのよねぇ。でも、まぁ――
愛しい妹紅ちゃんの為だから、先生、頑張っちゃうわぁ。
……まずは、小手始め。三倍から――ほら」
輝夜の言葉と同時に、石筍の先端部から不可視の光の波動が全方位に溢れ、大気に満ちる。
――
―――
「………? か、体が……重い!?」
大気に満ちる、妙な気配を妹紅が感づいたとき……既に彼女は輝夜の術中に陥っていた。
全身に掛かる重力が一気に倍以上に増大する。
よろけて膝を衝きそうになるのを、なんとか持ちこたえる妹紅。
「あらら、まだ序の口だというのに、だらしないわねぇ
この程度で潰れて貰っては、私が馬鹿みたいじゃない。
――頑張るのよ! 妹紅!! 次は……十倍!!!」
―――――――
―――――
―――
――
「くぅううっっつ!! ―――かはっ」
石筍からのプレッシャーが跳ね上がる。
重みを増した自らの体重に、堪らず膝を衝く。
……どういう仕組みかは解らないが、
――あの、
石筍は…
重力を、操るもの、らし…い。
砕けぬ石――ダイアモンドの檻に封じ込められた、超高密度の物体。
外の世界ではソレを――
マイクロ・ブラックホール
と呼ぶことを、彼女たちは知らない。
*
―――まずい、このままではいいように嬲り殺しにされる。
全身を襲う高重力に耐えながら、妹紅は状況を分析する。
―――潰れて、リザレクションしたところで、この重力下では……同じことの繰り返し。
ならば……ここは、一か八か……!
渾身の力を振り絞り、鳳凰は再び宙を舞う。
ごうごうと燃え盛る火炎は、纏わりつく戒めを焼き尽くすかのように輝きを増す。
肺腑の空気を、最後の一息まで絞りつくし――大きく吸い込む。
そして…
スペルと共に――忌まわしい金剛石筍へと叩きつける――
――――極意 「フェニックス再誕」
炎の吐息――ヒノカグツチに導かれ、鳳凰の翼より生じた分身たち――
カァハァァアアアアアアアアアアアアアアアア―――――
けたたましい鳴き声を放ち、不死鳥どもは…神をも焼き殺す神剣のように、一列に密集して殺害対象へと突撃する。
「…………!?」
そのあまりの勢いに驚愕し、制御の手を休める輝夜。
魅入られたかのように……不死鳥の群れを眺め、ぽつりと呟く。
「……なんと、美しい。それでこそ――――」
がががががががががががががががががががががががががが―――――――
間断無く激突し、いのちのほのおを散らし逝く不死鳥たち。
揺るがぬ巨塔は、大きくその身を震わせる。
「砕けぬなら……砕いて見せよう! ――ほのおのつるぎで!!
輝夜! あんたの捻くれた性根ごと、………ぶっ壊してやる」
止めと言わんばかりに、激しさを増す不死鳥の舞。
轟音と爆炎がダイアモンドの牙を揺るがせる、だが―――
「……く、くく……あはっ…あはははははははははははははは!
甘い 甘い、甘過ぎるよ! 可愛い 可愛い、私の妹紅!!
―――くふふふふ…………良く見て御覧なさいな」
爆炎が晴れて、金剛石旬が露になる。
そこには―――
以前と変わりなくそびえたつ巨塔の姿が在った。
―――な、なんだと……あれだけの猛攻を受け、無傷…?
呆然とする妹紅に向け、輝夜の嘲笑が届く。
「残念だったわねぇ、言い忘れてたけどコレはね?
一定以上の範囲に近づいたものを弾幕だろうがなんだろうが、無効化しちゃうのよ。
理屈はわからないけど、反則くさい物体よね。だから―――」
薄笑いを浮かべながら、輝夜は更なる命令を石筍に下す。
「―――おとなしく潰れちゃいなさい? ほぅら、二十倍」
――――――――――
―――――――
―――――
―――
「………がっ! くぅぅ……!!」
全身に圧し掛かる荷重に耐えかね、妹紅は無様に墜落した。
みしみしと骨が軋み、誇り高き翼はだらしなく地べたに広がる。
飛翔を封じられた鳳凰は、ずぶずぶと大地に沈みゆく……
「ふふっ、いい様ね。その悔しそうな、目。ぞくぞくするわ……
――ああ、そうだ。いいことを思いついたよ、妹紅」
「…………ぐ」
「私の足にくちづけして、「ごめんなさい、ゆるしてくださいかぐやさまぁ」って土下座したら解除してあげる。
この難題はお情けで……貴女の勝ちでいいよ。
――さぁどうする? 一分待ってあげる。 よく考えることね」
――くぅ……馬鹿にしやがって……でも…
大地に体の半ばまでを埋もれさせ、妹紅は策を練る。
確かに…このままでは埒が開かない。
仮にリザレクションした所で、復元途中のまま押し潰されて、何度でも殺され続けるであろう。
ならば、ここは一時の恥を忍んで……あいつに慈悲を乞うべきか。
だが……
・
・
・
・
「さ、そろそろ時間ね。 どう? 素直に言うことを聞く気になったかしら?」
うきうきと輝夜は訊ねる。
「……………い」
か細く呟く妹紅。
「えー? なによ、聞こえないわ。
……しょうがないわねぇ、―――ほら、少し弱めてあげたからはっきりと言って御覧」
身に掛かる重圧が減少するのを感じ、うつ伏せたまま妹紅は体を震わせる。
だが、囁く声はあまりに小さく、輝夜にまでは届かない。
――しびれを切らして無防備に妹紅のところへ近ずく輝夜。
「あーなに? 聞こえないんだけど? もっと………
大地の中で、確かな感触を得る妹紅。
口が三日月に歪む。
次の瞬間―――
「―――――ふざけんな!! 馬鹿輝夜!!! 誰があんたなんかに土下座するもんか!!!!
余裕ぶって、のこのこと……頭悪すぎるんだよ! これでも喰らいな!!!!
――――蓬莱「富嶽赤脈 -フジヤマヴォルケイノ-」
怒鳴り声に近いスペル宣言。それを受けて、大地の中で地脈がうねる。
「きゃっ
立って居られないほどの大地震。完全に油断していた輝夜は御石の鉢を取り落とす。
雪に覆われた大地にびしびしと赤黒い亀裂が開く。
落下する鉢は、脈動する大口に飲み込まれてその機能を停止させる。
異変はそれだけに留まらず、深い亀裂からは赤熱する溶岩が…今にも溢れ出しそうにちろちろと赤い舌を伸ばす。
そして―――
どごぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん
自らの上で我が物顔に振舞うゴミ共を、天まで吹き散らすように
大地は 激怒した
*
永琳の勧めに従い、戦場から離れた場所で戦いの推移を見守る慧音。
隣で涼しい顔をした彼女が、何でもないことのように囁く。
「……来るわよ」
「え…なっ! 噴火!? あれは――――妹紅の!」
まるで懐かしき外の世界にある――日本一高い火山――富士山の噴火のような、容赦ない一撃。
あれも二人で研究し、完成させた特別なスペル。
使用するのに地脈との繋がりと溜め時間が掛かるのが難点な、使いずらい符術。
しかし、威力だけは……見ての通りの極悪さだ。
「………馬鹿な娘。おとなしく膝を屈すれば楽に逝けたのに。
けど――――――ここまでは計算どおり、か。
さて、果たして私の思惑どおりに……踊ってくれるかしら、彼女は」
噴火を眺めながら無感情に呟く永琳。妹紅が心配でそれどころでない慧音は、その不穏な言葉を聞いていなかった。
「……永琳。追うわよ、彼女たちを!」
「歴史の半獣よ、止めておくことね。………今、空にあがるのは死と同意。
観戦するのなら地上からにしたほうがいい。蓬莱の薬を服用していないお前は――
言葉を切り、目を閉じて永琳は言う。
「―――死んだらそれまでなのだから」
5.悪竜招来 龍の頸の玉
岩盤ごと空高くかち上げられる輝夜。
大量の土砂と共に、上空に立ち込める雲海にまで突入する。
雪雲からは白い清浄な雪に混じり、バラバラと黒い土塊が降り注ぐ。
――それは、白と黒の乱舞。絡み合う二人の運命の象徴。
遂に難題は四問目の忌まわしき領域に差し掛かろうとしていた。
噴火の勢いに乗り、天空の彼方まで飛び続ける岩盤より逃れ、雲海に身を隠す黒の姫。
大地が爆発させた灼熱の怒りを、更なる力に変え――月まで届かん勢いで追いすがる白の姫。
両者は上空に立ち込める雪雲の中に突入する。
気配を殺し、雲海の何処かに姿を隠す黒き影。
身を隠す事無く、堂々と燃え盛る鳳凰は―――こそこそと隠れる姑息な蛇に、大音声で呼ばわる。
「臆したか!! 匹夫輝夜!!! 隠れてないで出て来い!!!!」
呼びかけにも応じず、輝夜は沈黙を保つ。
妹紅は両腕を組み、傲然と周囲を睥睨するも、雲に閉ざされし視界には・・・輝夜の姿を察知できない。
――どういうつもりだ? まさか本当に臆した訳でもあるまいに。
冷たく湿る霧が立ち込める大気の中、冷静さを取り戻した妹紅は思考する。
これまでの難題を打ち破ったとはいえ、彼我の戦力差は……互角とは言い難い。
先程も、あいつの間抜けな油断が無ければ…既に勝負は着いていたかもしれない。
…こちらもまだ手の内を完全に晒してないとは言え、相手側も同じこと。
どんな凶悪な罠を仕掛けてるか、分かったもんじゃない。
迂闊に動くのは無為無策の極み、か。
――だが、奴に時間を与えるのは……悪い予感がする。ここは―――
「出て来ないのなら、こちらから往くぞ!!!!」
隠れ潜む蛇を燻り出さん、と翼を振りかぶり、奥義の構えをとる妹紅。そのとき――――
「…慌てなくても、招聘の準備は整ったわ。」
「……!?」
雲海の中に響く、不吉な囁き。
妹紅の前方に立ち込める、雲のスクリーンに映し出される――――長大な黒い影。
いまだ実像を結ばぬその影からは、圧倒的な重圧がひしひしと放射されていた。
「…四問目、龍の頸の玉。 生き延びられるかしら? この恐怖をもたらす―――黒き竜の頸から。」
神宝 「 ブリリアント ドラゴンアッシュ 」
「――――来たれ、いにしえの…旱魃を司る、不死の悪竜よ!
……灰燼の中から、幾度でも甦りし其の名はヴリトラ!!
ありとあらゆる竜属を統べる、宝珠の導きに従い具現せよ!!!」
ごぁああああああああああああああああああああああああああああああぁぁ――――――
大気を揺るがす、声ならぬ咆哮。
黒い影は雲中の水気を凝縮させ実像と為し、その凶悪なる姿を現す。
―――黒い。 黒いとしか表現できぬ、蛇身の竜皇。
その身には漆黒の霧が渦巻き、細部を覗うことは困難。
禍々しいその身から放射される旱気を受け、夜空を覆っていた雪雲は瞬時に蒸発し、一片残らず消え失せる。
露になる輝夜の姿。 その手には形容しがたい輝きを放つ―――“龍の頸の玉“と呼ばれる宝珠が。
「……なっ。これは…。」
「うふふふ、吃驚した? いつものキレイな弾幕、竜の爪牙とは違って…少しばかり無粋で、凶暴だけど……これも、まぁ一種の弾幕よね。
おおきな おおきな誘導弾?……くふふふふ。
少し黒くて固くて大きすぎる、私の愛馬…いや、愛竜か。
丈夫な貴女なら、何とか受け止めて…くれるかしら? あははははははははは!」
かよわき人の子なら、その目を見ただけで…魂をも砕かれる、熾烈な眼光。
あらゆる攻撃を弾くという、黒き霧に覆われた不死身の体躯。
唯一その身を傷つけることの出来る可能性、天敵たる雷神インドラの神宝は―――この幻想郷には存在しない。
すべての制約から、解き放たれた悪竜は…獲物たる一羽の小鳥を見定め――――その身をくねらせ躍りかかる。
―--―-―――――――――――-―――-――-―--――――-―-―!!!!
鳳凰の脇を、猛然と過ぎる悪竜。 あと少し反応が遅れていたら…
妹紅の頬を冷や汗が伝う。
遥か後方で、身を翻し―――再度吶喊せん、と悪竜は紅き眼球を爛々と燃やし、鳳凰を睥睨する。
―――速い! 図体に似合わずなんて速度。長引かせるのは危険ね……。
相手の力量を感じ取り、瞬時に判断。潔く戦闘方針を定める妹紅。
―――この距離ならば……間に合うか!? いや、間に合わせる!!!
目を閉じ、気を昂ぶらせ、不可思議な構えを取る妹紅。
その身に流れる、熱き血潮。 古代の血脈に満ちる―――穢れ無き神気を練りこみ、凝集し、鳳凰の羽ばたきに乗せ―――解き放つ。
自らを奮い立たせる暗示を飲み込み、極限まで威力を高める。
――――我がほのおに、滅せぬもの無し。
喝 と眼を見開き、その名を宣言。
「「「 鳳 翼 天 翔 !!!! 」」」
背後に大きく振りかぶった翼を、轟と打ち鳴らし――――手羽先より撃ち出されるは、巨大な紅蓮。
渦巻く紅炎は巨大な火の鳥となり、火の粉を…桜花のように撒き散らしながら、慧星の如く天を翔け――――
迫り来る巨竜へと――――その身を省みぬ、死の特攻を仕掛ける。
襲い来るは 古代の悪竜、不死身の化神。 彼の名はヴリトラ
立ち向かうは 不死身の象徴、炎の化身。 此の名はフェニックス
黒と赤の神話の激突。 軍配が上がるのはいずれか?
飛散する爆炎。 渦巻く黒霧。
絡み合う――――赤と黒の輪舞。
勝敗は――――
「……!? そんな…!
爆炎より飛び出でたるは、古代の悪竜。
巨鳥の特攻に、傷ひとつ負わず――――ヴリトラは勢いを減じること無く、いまだ構えを取り続ける妹紅を襲う。
―--―――――--―――!!!!
黒い頸の裡に潜む、白刃の群れ。
真っ赤な咥内に林立するソレは―――――
ぞぶり ―――――ぐしゅぅあああああぁぁああああああああああああああああああああああああぁぁ
一息に、鳳凰を噛み砕く。
黒き茎の先に咲く、一輪の紅い薔薇。
咀嚼し、飲み込む頸の端から―――――ぼたぼたと、手や足を構成していた花弁が零れ落ちる。
*
~地上にて
地上にて戦いの趨勢を見守る二人。
先程の地脈の噴火を避け、いま彼女たちは、上空で行われている戦場の真下にいる。
降り注ぐ…紅い花びら。 きらきらと月明かりに照らされる、紅い霧雨は―――狂おしいほどに美しく煌く。
永琳はぞくりとくるような微笑みを浮かべ、その……この世ならざる美を観賞する。
――
―――
――――ドサッ。
なにかが雪にめり込む音がした。
慧音が、白と赤の入り混じった大地を見下ろすと……どこか見覚えのある“手のようなモノ”が転がっていた。
「………!! 妹紅…!?」
慧音の心中に、不吉な翳がよぎる。
その不安を押し隠すように、ゆっくりと…手の落ちている場所へと歩み寄る。
――――小さく、暖かな…あの子の手。 …妹紅。 貴女は今…
ソレを手に取ろうと伸ばした手の先で…突如その残骸は朱色の火焔を発し、燃え尽きる。
「………リザレクション! 妹紅……。 ―――どうか、無事でいて…。」
*
~上空
酷薄な笑みを浮かべ、輝夜は悪竜を眺める。
「…ふふ、今のは中々…キレイだったわね。―――さぁ、あいつはどう出てくるかしら?
くふっ、ふ、ふ、ふ……うふふふ…あーっはっははははははははははははははははははは!!」
夜空に木霊する狂笑。 心底愉しげに、黒き姫君は哂い続ける。
―-――――!!??
八の字にとぐろを巻く黒き竜が、突然身を捩り苦しみ始める。
「……?」
輝夜の手中に鎮座する、竜の宝珠。 その表面に朱色の紋章が―――浮かび上がる。
狂ったようにのた打ち回る悪竜。 その喉元に朱色の紋章が―――浮かび上がる。
我を…殺せしものよ 汝の血肉を以って ……我が生命を、贖え…。
炎の紋章。 鳳凰の印。
暴れる悪竜の喉元に喰らいつく―――死の刻印。
死の呪いは、長大な竜のからだを内から犯し、貪り―――臓腑を駆け巡る死炎の血球は、容赦なくその身を苛む。
ボッ ボッ …ボッ。
…ボボボッ ボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボ―――――――
――-―――――――-―――――――――――!!!!!!!!
紅い眼からは…止め処なく血涙が流れ落ちる。
黒い川にぽつぽつと流される、送り灯篭のように赤い斑点が全身を覆っていく。
長い蛇身のかしこに穿たれた赤い孔から――――幾条もの炎柱を吹き上げる竜皇。
断末魔の咆哮が大気を揺るがす。
―――そして 死の宣告が下される。
“ パゼスト、バイ――――――フェニックス。 ”
爆砕する悪竜。 ―――砕け散る宝珠。
夜空に盛大に咲く、赤黒い妖花。 ―――きらきらと零れ落ちるかけら。
血と肉片の羊水から現われ出でたるは、復讐のほのおに身を包んだ―――紅蓮の人影。
両手を肩に掛け、目を閉じた姿勢で、血煙より生まれ出でる不死鳥。
不浄なる赤い濃霧は、両肩から伸びる炎の翼に焼かれ、その存在を抹消される。
すうっと両眼を開き、妹紅は―――輝夜に向け、言葉を放つ。
「……火鼠の皮衣、仏の御石の鉢、燕の子安貝―――龍の頸の玉。 いずれも貴様等の捏造せし、偽りの神宝。
残るは………ひとつ。父様の残した“蓬莱の玉の枝”のみ。返して貰うぞ、父様の形見……!!」
「…ふふ、うふふふふ……そう、そうね。 ここまで頑張ったんだから、ふふっ、ご褒美を、上げないとね?―――いいわよ? ならば 始めましょうか?
……最期の難問、貴女はどこまで耐え切れるのかしら。…愉しみね。 くふふっ…あははははははははははははははははははははは!!!!」
四つまでも、難問を破られたというのに――――輝夜の余裕は失われない。
最後の難問、妹紅にとっての…因縁の神宝。
不退転の決意をその身に滾らせ、幻争は最終局面を迎える。
父の形見に宿りし、過去の幻灯は…彼女になにを、もたらすのか。
生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く
死に死に死に死んで死の終わりに冥し
場面の美しさの表現がちょっと少ないです。見せ場はどこー? な感じがするんですね。輝夜の攻撃は基本的に難題を出し、それを傍観するというスタンスなのは分かるんです。でも妹紅の視点からするなら、余裕たっぷりの姫様をもっと強く意識しちゃうんじゃないかと思うのです。淡々とした美表現と、熱く深く抉るような表現は読む人に与えるモノも違ってきます。
なんか難しく言ってみましたが、要するに表現がアッサリしすぎかなぁ、と。クドイのも考えものですが、せっかく三部に分かれているのだから、個々の場面をあと少しだけ大切にしてほしいと思いました。
長くなりました。しん様の作品は大好きなので、これからも頑張っちゃってください。