Coolier - 新生・東方創想話

結界と境界の交点(前)

2005/01/06 10:46:51
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秋も半ばを過ぎ、肌寒さを感じるようになった頃。
そのある日、自称「普通の魔法使い」霧雨 魔理沙は暇を持て余していた。

「あ~寒い。その上実験も一段落しちゃったから暇だぜ。こんな時は外へ行くに限る。」

そう一人ごちながら引っ張り出して来た愛用の箒に乗り、空へ舞い上がる。
ちなみに魔理沙にとっては『外へ出る』と『遊びに行く』とは同義語である。

「やっぱりこんな時はあいつの所に限るな。お茶も出るだろ。」

ここで言う『あいつ』とは、魔理沙の住む森から少々行った所に在る神社に住む巫女、
博麗 霊夢である。
霊夢以外では、近場に知り合いの魔法使いも住んでいる物の、
今一ウマが合わない為に魔理沙は滅多な事が無ければ訪れない。

早速進路を神社へ取り、魔力を箒に集中させて加速を開始する。
辺りを飛んでいた妖精や毛玉が妖弾、気弾を放って邪魔をする。
しかし、魔理沙はそんな物には構わずに一気に飛び抜けて行く。
そもそもこんな魑魅魍魎に遅れを取っているようでは、あの森に住むのは自殺行為だ。


…十数分後、神社が見える距離まで到達した。
神社のすぐ近くだと言うのに、下級の妖怪等が我が物顔に飛び回っている。
博麗神社は、割と神社としての機能を果たしていないようだ。

「まあ、あいつからして巫女としての機能を果たしてないからなぁ。」

そう言いながら箒の速度を少し緩める。
以前、止まり切れずに神社に直撃した事があるからだ。
あの時の激突した痛みより、鬼のような形相だった霊夢の方が印象に残っている。

霊夢は普段はのほほんとした性格で、
それほど威圧感を与える存在でも無いが、実力はこの幻想郷でも随一。
修行もして無い癖に何であんなに強いんだ、と良く思う。
魔理沙の中では怒らせると怖い奴上位にランキングされている。滅多に怒らないが。

最後の妖弾を避け、神社が目の前に見える位置まで到達する。
流石にここまで来ると、霊夢の力を恐れてか妖怪の影は無い。
一部以外は。

「ふぅ、良い運動になったぜ。運動と言うのかは分からんが。…ん?」

どうやら、今はその『一部』が居たようだ。
冬を取り戻しに行った時の騒動で見知った妖怪狐が神社から去り、
『隙間』に入って行くのが見えた。

魔理沙は取り合えず神社に入る事にした。

「よう、れい…」
「あ、魔理沙じゃない。丁度良い所に来てくれたわね。こっち来て。」

「挨拶ぐらい言わせろ。…そういえばさっき狐を見かけたんだが、何かあったか?」

魔理沙の性格として、こういう事には首を突っ込まずには居られない。

「あぁ、例の満月騒ぎの時に紫が言ってた報酬を持って来たのよ。これ。」

「符みたいなのが入ってるようだな。…と言うか、今更あの時の報酬か?」

「全くだわ。しかも、本人じゃなくて狐が持ってくるとは…。魔理沙、開けてみる?」

「私は遠慮しておくぜ。何が起こるかわからん。」

ちなみに紫とは、八雲 紫と言う名の隙間妖怪である。
掴み所の無さではトップクラスであり、先ほどの妖怪狐「八雲 藍」の主。
少し前の満月が無くなったと言う騒ぎの時に霊夢と組み、
同じような理由で出て来た魔理沙をコテンパンにのして行った。
苦い記憶だ。

「…んで、私が来て丁度良いってのは何だ?」

「あんたが話を先に逸らしたんでしょうが。まぁ、掃除みたいなもんね。」

「掃除?いつもと同じで綺麗さっぱり、何にも無いじゃないか。神社の外も、中も。」

「余計なお世話よ。場所は、まぁ…倉みたいな所?」

「何で疑問系なんだよ。それに、私に片付けの才能があると思うか?」

「今まで空けた事が殆ど無いから。ついでに言うと、魔理沙には期待してないけど。」

何か変なテンポの会話だが、これが二人の基本。
両方とも通常とはズレている。片方は意図してズラしているが。

「まぁ、暇だから付き合ってもいいか。報酬にお茶とお茶菓子を頼む。」

「はい決定。んじゃ、こっち来て。」

そう言って霊夢はさっさと行ってしまう。
追いついた時には、既に目的の場所に着いていたようだ。

「…ん?この扉、位置的に神社の中に存在する筈が無い扉なんだよな。外から見ると。」

「この扉の先は空間自体が別の場所にあるから。危険だから封印を解かないと通れないようになってるわ。」

「道理でこの扉、どうしても開かない訳だ。あんまり開かないから恋符を使おうと思った事もあるぜ。
その時は丁度良いタイミングで霊夢が帰って来たから止めておいたけどな。」

「あんたは人の家を勝手に荒らしたり、破壊活動をしようとするな。…さて、これで良い筈。」

「ずいぶんと簡単そうだな。」

「魔理沙には一生掛かっても解けないと思うけど。結構重い扉ね…そりゃ!」


ガラガラガラバキィッ!!



「変な音がしたぞ、大丈夫か?…っておわ!これは私の家以上の惨状だぜ。しかも広い。」

「まぁ、全部片付けようって話じゃないから安心して。
本気で片付けようと思ったら今年中あっても足りないかもしれないけど。」

「んで、具体的に私は何をすれば良いんだ?」

「まぁ、こんな形の…箱を探して欲しいのよ。多分この近辺にあるから。」

「一体何の箱なんだ?」

「まぁ、秘伝書みたいなもんよ。神社に伝わってる符の全てが収めてあるはずだから。」

「ぜひ、私にも見せ」
「駄目。盗られるから。」

「ぐぅ…。」

「代わりに、私の要らない物なら適当に持って行って良いから。んじゃ、私はその辺探してくるわ。」

それだけ言うと、霊夢はさっさと行ってしまった。
しかし、これだけの物がある中で必要無い物は持って行っても良いと言うのは収穫だ。
取り合えず下に向かう階段があったので、そっちに行ってみる事にした。

「まるでどっかのダンジョンみたいだぜ…って、どわぁ~?!」

魔理沙が乗った物が崩れて、魔理沙ごと下に落ちた。
これでは落とし穴だ。
しかも、この後慌てて登ろうとして踏む物がことごとく崩れ、
どんどん下へ落とされていく。











ガラガラガラガラ・・・ドスン!

「痛てて・・・箒は持ってきてるから、上へは戻れるだろうが・・・かなり落ちたみたいだな。
しかし、どういう構造してるんだここは。」

取り合えずこれ以上下は無いようなので、辺りを見回してみる。
すると、視界にわざわざ分けて置いてある、本のような物が目に入った。
魔理沙としてはこれを見逃す手は無い。
早速読んでみる事にした。

「どれどれ・・・うわ、古そうな文字だな。このままじゃ読めないぜ。」

しかし、日々の修行は無駄で無いのである。

「こんな時の為に、自動翻訳の魔法を覚えてて良かったな。
意訳まで完璧に訳してくれるはずだぜ。」

魔理沙は必要で無いと思われる魔法でも細かく習得している。
本来この魔法も、普段は頭の中に入っている辞書を使うので、
魔導書等を読む時には必要としていない。
魔理沙が普通読まないタイプの本ぐらいにしか使う事が無いのだ。

「良し、読むか。読む時は集中して、一気に。これが私のスタイルだぜ。」

そして、魔理沙はその本のような物を読み始めた。

――――――――――――

日記と言う物を書いてみる事にした。
とは言え、私はそんなに続くタイプでは無いのは分かっているので、
気が向いた時に書いておく事にした。
…書き始めた途端に妖怪退治の依頼が来た。
出だしからこんなのでは、後が不安だ。

――――――――――――
――――――――――――

最近、力の弱い妖怪も人を襲うようになっているようだ。
その事もあってか、依頼が多い。
しかし、依頼が多くなるのと同じぐらい一度の謝礼も安くなって行くので、
結局神社の運営は今までと同じ程度だ。
この現象は何なのだろう。
そのせいで最近、神社の本来の仕事はなおざりになってしまっている。

――――――――――――
――――――――――――

最近、なにやら祟り神が現れた。
どうやら相当の恨みがこもっていたらしく、
かなりてこずったが何とか封印した。
・・・封印した場所が大失敗だった。
よりによって神社に。
参拝者が更に減りそうな予感がする。

――――――――――――
――――――――――――

この頃は久しぶりに暇だ。
…本当に暇だ。
ずっと神社に居たが、参拝客は無い。
参拝してる暇が無い世情でもあるようだが、
神社としてこれで良いのだろうか。

――――――――――――


・・・どうやら、この神社の関係者。
いや、恐らくは博麗の巫女の日記のようだ。
そして、多分『祟り神』は魅魔様だろう。
暫く読んでみたが、文中に博麗大結界が出てこないので、
これは相当昔・・・もしかしたら博麗の初代の物かも知れない。
魔理沙にもそれが解かった。

この後も妖怪退治の話と、暇すぎる神社管理の話ばかりが書いてあった。
ついでに悪化する神社の経済も。
いい加減魔理沙も飽き始めた頃に、それはあった。

人間と妖怪の、奇妙な共同生活の始まり。

――――――――――――

この頃は本当に寒くなってきた。それに、厄介事が増えてしまった。
冬を越せるのか少し心配だ。

少し前、やはり非常に寒い日の深夜に妖怪退治に出かけ、
仕事が終わった帰り際に、突然凄まじい妖力を感じた。
放って置けば危険な可能性が高いので、その方向へ向かう事にした。

…正直、あれだけの妖力を放出できる妖怪に、その状態で勝てるかは怪しかったのだが。
実際、現場であろう場所に着いた時、その妖怪であろう影が見えなかったのに安堵した。
どうやら集落があったようだが、一帯は完全に焼け野原になってしまっていた。
全員絶望かと思ったが、道服のような物を着た子供が倒れて居たので、保護する事にしたのだ。
相当に衰弱して、意識も無かったが多分助かるだろうと思い、神社まで連れ帰った。

しかし…未だに目を覚まさないその子供は、どうやら妖怪のようだ。
見つけた時は何も感じなかったが、最近微弱な妖力を感じた。
本当に、どうなっているのだろう。

――――――――――――
初めまして。
以前からここは良く見ていたのですが、
なにやらふつふつと
「書きたい」
と言う思いが発生し、この初投稿となりました。

しかし、作ってみると本当に大変な事がわかります。
マヌケなミスであとがきは書き直しになってます。
本文バックアップしておいて良かったよ…。

一応、後編に書きたい事は集約されるはずです。
大筋はあるけど、周りが出来てない状態ですが。
公式設定からは大幅に外れないように努力します。

最後の妖怪は、題名で判っちゃいますが、あの方です。


投稿してすぐに誤字発見、修正。
ついでに追加。
NBD
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コメント



0.1460簡易評価
3.40名前が無い程度の能力削除
後半楽しみにしてます。
旧作設定をどうか消化されるかを。
9.60necro削除
旧作が出てくるとは思いもしませんでした。
後半かなり期待してますよ。
10.無評価NBD削除
わざわざレスありがとうございます。

>旧作~
うぁ~、旧作は殆ど意識していません…。
何しろ旧作は知識としてあるだけで、実際にプレイしたのはWIN版のみ。
それも完全に終わらせたのは永夜だけと言うヘタレなので。
旧作設定はアクセント程度に入れるだけになっちゃいますです。