Coolier - 新生・東方創想話

死蝶の誘い

2003/09/26 07:26:42
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この話はいつの事だったか。
ずっと昔か、つい先日か、それとも遠い未来だろうか。
繰り返す死の誘い。
終わらない死の輪の中の。


死に誘う、誰かの話。





桜花結界のすぐ側。
冥界から僅かに離れたそこに、一人の少女──死者だ──と名も知らぬ、生きている妖怪がいた。
その妖怪は少女の前で呆然と立ちすくみ、身動き一つ取れずにいる。
少女はその様を見てくすりと笑った。
生と死の境界を越えてなお、生者をも魅了する笑み。

「いつまで、そちら側にいるのかしら?」

表情をそのままに、少女が不意に口を開いた。

「あなたの体は、ほら。」

少女が妖怪に手を伸ばす。
白魚のような指、「死」を疑うばかりの瑞々しい肌。
およそこの世にある「美」であってして、彼女には適わぬか。
触れられたならば、その感触だけで何よりの快感となり得るか──

しかし彼女の手は、

「私に、触れることすら出来ない。」

妖怪のその頬をすり抜けた。

「……生きる事とはこんなにも。」

顔を寄せる。
かかるはずの無い吐息を感じ、少女から目も放せない。
頬を撫でるように動く手に、あるはずの無いぬくもりを感じる。
この美しさ、もはやこの世の何が敵おう。

ああ、なぜ、彼女に触れることが出来ないのか。

「────醜い────。」

しなだれかかる少女の細い身体。


──この少女に触れることが出来るのならば──


「迷うことはないわ。
 さあ、いらっしゃい。」


名も知らぬ妖怪は自ら望んで、高い高いその雲の上からまっ逆さまに、

堕ちていった。



堕ち逝く妖怪には聞こえなかったか。



「残念、あなたは地獄往き。」

微かな笑い声の後、その場に残っていたのは霞だけ。
それはすぐに、吹かれて消えた。





大地に一つ、紅い大輪が咲いた。






西行寺幽々子。

それは生者を死に誘う、姫の亡骸の名。

幽々子様が生きているものに触れられない。
幽霊は触れられないイメージを引きずってますね。
幻想郷には逝けそうもありません。
あと、短すぎますが付け加えるものが浮かばないので、このままで。
たま
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コメント



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1.40すけなり削除
少し身震いしました(汗  なんか怖ぇぇ(('-' )))
2.40珠笠削除
正に幽々子の日常を垣間見た気がします。
この雰囲気でスキマ妖怪との掛け合いを読ませて頂きたいかも。
38.100na7氏削除
幽々子という亡霊の怖さが表れていました。
48.100Sora@削除
亡霊として生きている幽々子様の怖さににとても寒気がしました。
51.80名前が無い程度の能力削除
どこかもの哀しい・・・