「今夜も、楽しい宴の準備~」
「今夜は十五夜、お月様~♪」
狐と猫の式神は月見団子を作ったりススキを集めたり大忙し。でもとても楽しそう。
今夜は、二人が待ちに待ったマヨイガでのお月見だった。
「藍さま、ススキはこれくらいあればいい?」
「おぉ上等上等。とりあえずそこに置いといて」
「は~い」
「宴の準備か・・・精が出る事だな」
自分たち以外に喋れる生き物は誰もいないはずのマヨイガで声がした。
どこかの誰かが道に迷ったか・・・もっとも、道に迷ってこそのマヨイガなのだが。
「あなた、道に迷ったんだね?あいにくだけど今夜だけはすぐに帰ってもらぅぇぇぇ!?」
橙が素っ頓狂な声を上げた。
「おいおい、そんな声出さなくてもいいだろ。知らない仲じゃないんだし」
「今夜は何も取りゃしないわよ」
「むしろ持ってきた側だぜ」
「ら・・藍さまぁぁぁっ!あの時の人間が来たーー!!」
飛翔韋駄天で逃げる橙。仁王立ちの藍の後ろに隠れ、様子を伺っている。
藍と訪問客二人はにこやかな顔をしている。少なくとも顔だけは。
「ようこそマヨイガへ・・・・って、あなた達は方向音痴がかなり酷いみたいね」
「そうでもないわよ。むしろ狙って来た方だし」
「嘘だぁ!ここには道に迷わないと来れないんだよ!」
「ああ知ってるよ。だから『わざと道に迷った』んだぜ」
4人の会話が交錯し、周りの景色がおかしな具合に歪んで見える。
それは彼女達の霊気か魔力か妖気か、または全てなのか。
とにかく、一触即発という言葉がよく似合う空気だった。
「で、こんな所に何の用?できれば今すぐにでも帰ってもらいたい」
「お月見に来たのよ。うちの神社よりは秋っぽい所だし」
「手ぶらじゃないぜ。土蜘蛛酒に鬼殺しにツチノコ酒、他にもまだある」
一体どこに隠し持っていたのか、次々と一升瓶が出てくる。
「・・・・・お酒ばかりというのが気になるけど、まあいいわ」
「藍さま!?」
「どうやら悪意はなさそうだしね。お月見だけが目的だっていうなら別にいいと思うけど?」
「むぅー・・・・・・」
「ほら、お団子みたいにふくれない。そんな顔してるとお月様がそっぽ向いちゃうよ」
そして誰の許しも得ず家の縁側に座り込む訪問者達。式神達も別に否定はしない。
そして宴(お月見)が始まった。
月見団子を肴に、飲めや飛べや撃てやのプチ宴会。
気がつけば、まだお子様(?)の橙は真っ先に酔いつぶれて藍の尻尾を枕に眠っている。
訪問客の一人、巫女も意識と無意識の境を漂っている。起きているのは藍と魔女の二人。
「・・・・・きれいな月ね」
「だな」
「満月は人を狂わせるという・・・あなた達もそろそろ狂ってくる頃では?」
「満月に狂うのは狂った人間だけだぜ」
「顔が紅いわ」
「飲みすぎたからな」
「目がトロンとしてる」
「上に同じだぜ」
「さっきから巫女を見る目つきが妖しい」
「・・・・・・・!!」
「ん?私は見たままの事を言っただけよ」
「れっ霊夢!そろそろお暇するぜ」
「むにゃ・・・・・」
首をカクカクさせ、たまに目をこする巫女の手を引き夜空へ旅立つ。
必要以上に手を強く握っているように見えるのは藍の気のせいではないはずだ。
挨拶も後片付けもせず、訪問客は去っていった。
「さて、どうするか・・・・・」
目の前には宴の跡。すぐ後ろには寝息を立てている橙。
藍は迷わず橙を選んだ。
「たまには月を見ながら眠るのもいいかもしれないね」
そのまま後ろに倒れこむ。だが、かなり酒の入っている藍は自分の尻尾を枕に橙が眠っている事を
一歩も歩くことなく度忘れしていたのだ。
ムギュ
「ふぎャァ!!?」
「あっ、橙ゴメン!!」
「うぅっ・・・・・藍さま痛いよ~」
「ごめ~ん・・・・・・・・・」
藍の叫びと橙の悲鳴がよく響く。
秋の夜長はまだ続きそうだ。
「今夜は十五夜、お月様~♪」
狐と猫の式神は月見団子を作ったりススキを集めたり大忙し。でもとても楽しそう。
今夜は、二人が待ちに待ったマヨイガでのお月見だった。
「藍さま、ススキはこれくらいあればいい?」
「おぉ上等上等。とりあえずそこに置いといて」
「は~い」
「宴の準備か・・・精が出る事だな」
自分たち以外に喋れる生き物は誰もいないはずのマヨイガで声がした。
どこかの誰かが道に迷ったか・・・もっとも、道に迷ってこそのマヨイガなのだが。
「あなた、道に迷ったんだね?あいにくだけど今夜だけはすぐに帰ってもらぅぇぇぇ!?」
橙が素っ頓狂な声を上げた。
「おいおい、そんな声出さなくてもいいだろ。知らない仲じゃないんだし」
「今夜は何も取りゃしないわよ」
「むしろ持ってきた側だぜ」
「ら・・藍さまぁぁぁっ!あの時の人間が来たーー!!」
飛翔韋駄天で逃げる橙。仁王立ちの藍の後ろに隠れ、様子を伺っている。
藍と訪問客二人はにこやかな顔をしている。少なくとも顔だけは。
「ようこそマヨイガへ・・・・って、あなた達は方向音痴がかなり酷いみたいね」
「そうでもないわよ。むしろ狙って来た方だし」
「嘘だぁ!ここには道に迷わないと来れないんだよ!」
「ああ知ってるよ。だから『わざと道に迷った』んだぜ」
4人の会話が交錯し、周りの景色がおかしな具合に歪んで見える。
それは彼女達の霊気か魔力か妖気か、または全てなのか。
とにかく、一触即発という言葉がよく似合う空気だった。
「で、こんな所に何の用?できれば今すぐにでも帰ってもらいたい」
「お月見に来たのよ。うちの神社よりは秋っぽい所だし」
「手ぶらじゃないぜ。土蜘蛛酒に鬼殺しにツチノコ酒、他にもまだある」
一体どこに隠し持っていたのか、次々と一升瓶が出てくる。
「・・・・・お酒ばかりというのが気になるけど、まあいいわ」
「藍さま!?」
「どうやら悪意はなさそうだしね。お月見だけが目的だっていうなら別にいいと思うけど?」
「むぅー・・・・・・」
「ほら、お団子みたいにふくれない。そんな顔してるとお月様がそっぽ向いちゃうよ」
そして誰の許しも得ず家の縁側に座り込む訪問者達。式神達も別に否定はしない。
そして宴(お月見)が始まった。
月見団子を肴に、飲めや飛べや撃てやのプチ宴会。
気がつけば、まだお子様(?)の橙は真っ先に酔いつぶれて藍の尻尾を枕に眠っている。
訪問客の一人、巫女も意識と無意識の境を漂っている。起きているのは藍と魔女の二人。
「・・・・・きれいな月ね」
「だな」
「満月は人を狂わせるという・・・あなた達もそろそろ狂ってくる頃では?」
「満月に狂うのは狂った人間だけだぜ」
「顔が紅いわ」
「飲みすぎたからな」
「目がトロンとしてる」
「上に同じだぜ」
「さっきから巫女を見る目つきが妖しい」
「・・・・・・・!!」
「ん?私は見たままの事を言っただけよ」
「れっ霊夢!そろそろお暇するぜ」
「むにゃ・・・・・」
首をカクカクさせ、たまに目をこする巫女の手を引き夜空へ旅立つ。
必要以上に手を強く握っているように見えるのは藍の気のせいではないはずだ。
挨拶も後片付けもせず、訪問客は去っていった。
「さて、どうするか・・・・・」
目の前には宴の跡。すぐ後ろには寝息を立てている橙。
藍は迷わず橙を選んだ。
「たまには月を見ながら眠るのもいいかもしれないね」
そのまま後ろに倒れこむ。だが、かなり酒の入っている藍は自分の尻尾を枕に橙が眠っている事を
一歩も歩くことなく度忘れしていたのだ。
ムギュ
「ふぎャァ!!?」
「あっ、橙ゴメン!!」
「うぅっ・・・・・藍さま痛いよ~」
「ごめ~ん・・・・・・・・・」
藍の叫びと橙の悲鳴がよく響く。
秋の夜長はまだ続きそうだ。