※これは前作『世界を繋ぐ糸』の閑話です。
前作を読んでいないとわからない部分が多いため、先に読んでおく事を強く推奨します。
――紅い月が墜ちた――
騒がしいと思えば、我が友人は私の日常を脅かす程に、お遊戯に夢中だったらしい。
一つ、深呼吸してページを捲る。
『此方は彼方 我が身は虚 刹那をして三界に至る ――転移―― 』
湖のほとりに着くと、友人の死体と他人の半死体が転がっていた。
近付いて見れば、何の事は無い。
友人は銀のナイフで胸部を貫かれて死んでいる――ただそれだけだった。
拍子抜けしつつ、ページを捲る。
「えーと、刺殺体を効果的に甦生する方法は――」
――どうやら刺殺体は反魂の領域らしい。
とりあえずは半死体扱いで甦生を試みようか。
背中から心臓の位置を胸まで貫通したナイフを、しっかりと掴む。
抜く――――固くて抜けない。
仕方ない。
ナイフを両手で掴み、軸足でしっかりと地面を踏む。
もう片足で、対象を固定するために――友人の伏せた後頭部をしっかりと踏んだ。
思い切り力を入れて、抜く。
固い――しかも何かゴリゴリいっている。
思わず手が滑って、ほんの少し、ナイフを捻ってしまった。
「――痛い痛い痛いっ!」
友人の死体は元気に私の足を跳ね飛ばし、海老のように反り返って滑稽な踊りを踊っている。
「――なんだ、半死体だったんじゃない。自分で甦生しなさいよ」
「完死体だったわ。痛みで起きちゃっただけよ。――ああ、とりあえず抜いてもらえない? 手伝うわ」
とりあえず、悪戦苦闘しつつもナイフを抜くことができた。
ナイフを観察するが、友人の血以外はどうということのない、ただのナイフだった。
銀の刃に乗った、紅い――極上のワインのように――紅い、友人の、吸血鬼の、血――
「――『パチュリー・ノーレッジ』――」
「っ!――ああ。ありがとうレミィ」
パシンと、頬を張られたように意識が覚醒した。
危ない。
本をしっかり抱えなおし、シールドする。
見れば彼女は懐中時計を拾っていた。
「どういたしまして。貴女でも魅入られたりするのね。パチェ」
「貴女が特別なのよ」
「あら、それは深読みしていいのかしら?」
友人は笑みと共に、小さく牙を見せる。
――はしたないわよ、お嬢様?
「ご随意に。でもまだ私は日の下を歩きたいわ」
「滅多に日の下どころか、図書館の外にも出ないんじゃなかったかしら」
「今出てるじゃない。友人の後始末のために」
「そうね、感謝してるわ。パチェ」
「どういたしまして。レミィ――でも、なんだってこんな所で死体の真似していたの?」
「殺されちゃったからよ」
しばらく私は、吸血鬼の精神を正常にする方法を検索した。
「――失礼ね」
「――冗談でしょう? どんな化け物が貴女をただのナイフで殺せるというの?」
「そこのお嬢さんよ」
言われて、私はやっとその半死体を見た。
仰向けに倒れて、ほとんど動かない。
友人にも劣らない白銀の髪に、血染めの奉公服。
年の頃十から十四歳くらいの――人間の少女。
ぱっと見――死にかけているように見える。
「半死体ね」
あと十分くらいもすれば死体になりそうだが。
「――食事にしては、今日は随分行儀が悪いわね」
「面白い子よ。知らずにここへ辿り着き、いきなり私に挑んできたんだから」
言葉が出なかった。
無謀と言うより、哀れだ。
人の身では天文学的な確率の不運を、最悪の形で迎えるとは。
「しかも自身のドッペルを所持して、時空を操り、私を殺してのけたなんてね――ああ、とても楽しかったわ」
やはり言葉が出なかった。
それもまた、人の身では天文学的な――いや、不可能だ。
そもそも、いかに時空を支配したとしても――
「そう、届かないわね。でも彼女はそれをやってのけた」
「貴女がナイフなんて――いくら背中からでも避けられると思うけど。認識範囲内の事象でしょ?」
「ええ、普通ならね。でも、見事にやられたわ。いくら私でも、全く認識してない物の縁は見えないわ――貴女も読書中には本しか見えないでしょう?」
普通の事のように言うが、彼女の認識範囲と精度は魔女の私から見ても、果てが見えないほど広く精緻だ。
それを破ってみせたという、この少女。
――底が知れない。
「それに彼女には、私の居ない世界を創造できたかもしれないわ」
「それは無理。人の身では吸血鬼の誕生と滅びを知り得ない以上、彼女に貴女を排除した時空は創れない」
でも。
少し、興味が湧いた。
「どうするの? このままだと死んでしまうわよ」
少女はもう、自分で咽る力も無いのか、血で息を詰まらせかけている。
内臓を痛めていれば、まともな方法では治らない。
「そうね」
一つ頷いて、友人は少女を抱き起こした。
そう、吸血鬼の洗礼を受ければ、蘇る。
レミリアは軽く口を開く。
少女の顎を上げた。
そしてその牙を白い喉に――――立てなかった。
――――少女に接吻した――――
探るように深く、少女の口内の血を飲み込んで。
零さずに、執拗に、普段の食事より遥かに長く丁寧に。
唇を啄ばみ、歯を弄り、舌を玩んで。
吸血鬼が少女の血を啜る。
少女が息を吹き返すのを確認して、ようやく彼女は口を離した。
そして、少女の手に懐中時計を握らせ、長針を僅かに戻して針を止めた。
「良い味だわ――これで後は――パチェ」
「貸し一つね。今度私の実験に付き合ってもらうわよ」
『叡智の結実 真理の鍵 第五の原質なりし石よ 我が意に応えその力を示せ』
『我が前に開け 楽園の門 来れ セフィロトの樹よ 我が友にその祝福を賜らん』
とっておきの魔法。
これで治らないのは死人くらいのものだ。
「――私を治すときには素手で引き抜いただけだったわね?」
「――あら、私を治すときにはキスしてくれるの?」
「ええ、お望みなら喜んで」
「光栄だけど、この術はやめておいた方がいいわ。並みの吸血鬼なら五匹纏めて消し飛ばせるわよ」
少女の顔に生気が戻り、呼吸が安定した。
術を解き、数度深呼吸をする。
「ありがとう、パチェ。無理させたわね」
「どういたしまして。でも――契約はしないのね?」
「ええ。この子はこのまま――人の身のまま紅魔館に招待するわ」
言って、友人は少女を抱き上げる。
先程まで死体だったくせに、今はもう私よりずっと力強い。
気付けば空には紅い月。
この友人を滅ぼせる者など、まずこの世にはいないだろう。
――でも。
「レミィ」
何かしら、と友人は機嫌良く振り返った。
「どうして貴女は、私やその少女を迎えてくれるの?」
「あら、嫉妬? ――――そうね。傍に居て欲しいから、では駄目かしら」
「言いかたを変えるわ――どうして自分を滅ぼし得る者を、支配せずに手元に置いておくの?」
静寂。
友人は即答しない。
私も答えを急かさない。
月を見上げ、静かに――寒気がするような――笑みを浮かべて、彼女は問いを返した。
「そうね、パチェ。貴女にはわかるかもしれない――この世で最も楽しいことは何かしら」
「――知識を得ることよ」
「そう、知らないことを知ること――未知に触れることほど楽しいことは無いわね」
満足げに、彼女は頷いた――絶対者の威を供に。
「――じゃあ問うわ『知識の少女』――私が知らない事って何だと思う?」
「貴女――に――?」
「そう、運命を繰る私には、生まれた時から全てが見えていた。全てを知り得たわ」
彼女の紅い瞳だけが私に向けられる。
「それがどれほどつまらないか、貴女はわかるかしら――?」
もう一度、彼女は紅い月を見上げた。
「――でもね、パチェ。私にも知り得ない事が一つあるのよ」
一つ、私は息を吸い込んだ。
いつもの喘息とは違う――紅い月が落ちて来そうな圧迫感と息苦しさ。
私の友人が、ゆっくりと私に向き直る。
「あまりにも当たり前に存在して、何よりも身近にあって――遥かに遠過ぎてわからない事」
にこりと、彼女が――友人が――いや、紅い悪魔が微笑んだ。
「――私は、それが知りたい――」
全ての運命を見通すという瞳が、私を――私の至る行方を見つめる。
私は数十年ぶりのその感覚を思い出した。
魂を破砕するような――恐怖。
――――そう、私は、私の滅びを知りたい――――
紅い悪魔が笑う。
少女を見て、笑う。
「この子は私の血を浴びて、セフィロトの樹に触れた――人の身のままどれだけの時空を創れるかしら」
私を見て、笑う。
「知識の集積が如何なる解を出すのかは、複雑怪奇で流動雑多――貴女は私にどんな解をくれるのかしら」
月を見上げて、笑う。
「――それはとてもとてもとても楽しみで、震えがくるほど刺激的だわ」
世界を嘲笑い、己を嘲笑って、悪魔が笑う。
――捕われた。
私も、少女もこの紅き運命に捕われた。
――そして紅い悪魔――私の友人――レミィも捕われていた――
「帰りましょう、パチェ」
無邪気な笑顔。
「ええ、レミィ」
私は笑顔を返し隣を歩く。
私は、私の友人の退屈を癒せるだろうか。
少女はレミィの腕の中で静かに眠る。
少女は、彼女の孤独を癒せるだろうか。
絡み合った三本の糸。
願わくば。
ああ、願わくば。
――紅い糸の行方に幸あらんことを――
「お茶が入りましたよ」
「ご苦労様。――ほら、貴女も休みなさいな」
「ええ。ご一緒するわ――咲夜さんも、ね」
前作を読んでいないとわからない部分が多いため、先に読んでおく事を強く推奨します。
――紅い月が墜ちた――
騒がしいと思えば、我が友人は私の日常を脅かす程に、お遊戯に夢中だったらしい。
一つ、深呼吸してページを捲る。
『此方は彼方 我が身は虚 刹那をして三界に至る ――転移―― 』
湖のほとりに着くと、友人の死体と他人の半死体が転がっていた。
近付いて見れば、何の事は無い。
友人は銀のナイフで胸部を貫かれて死んでいる――ただそれだけだった。
拍子抜けしつつ、ページを捲る。
「えーと、刺殺体を効果的に甦生する方法は――」
――どうやら刺殺体は反魂の領域らしい。
とりあえずは半死体扱いで甦生を試みようか。
背中から心臓の位置を胸まで貫通したナイフを、しっかりと掴む。
抜く――――固くて抜けない。
仕方ない。
ナイフを両手で掴み、軸足でしっかりと地面を踏む。
もう片足で、対象を固定するために――友人の伏せた後頭部をしっかりと踏んだ。
思い切り力を入れて、抜く。
固い――しかも何かゴリゴリいっている。
思わず手が滑って、ほんの少し、ナイフを捻ってしまった。
「――痛い痛い痛いっ!」
友人の死体は元気に私の足を跳ね飛ばし、海老のように反り返って滑稽な踊りを踊っている。
「――なんだ、半死体だったんじゃない。自分で甦生しなさいよ」
「完死体だったわ。痛みで起きちゃっただけよ。――ああ、とりあえず抜いてもらえない? 手伝うわ」
とりあえず、悪戦苦闘しつつもナイフを抜くことができた。
ナイフを観察するが、友人の血以外はどうということのない、ただのナイフだった。
銀の刃に乗った、紅い――極上のワインのように――紅い、友人の、吸血鬼の、血――
「――『パチュリー・ノーレッジ』――」
「っ!――ああ。ありがとうレミィ」
パシンと、頬を張られたように意識が覚醒した。
危ない。
本をしっかり抱えなおし、シールドする。
見れば彼女は懐中時計を拾っていた。
「どういたしまして。貴女でも魅入られたりするのね。パチェ」
「貴女が特別なのよ」
「あら、それは深読みしていいのかしら?」
友人は笑みと共に、小さく牙を見せる。
――はしたないわよ、お嬢様?
「ご随意に。でもまだ私は日の下を歩きたいわ」
「滅多に日の下どころか、図書館の外にも出ないんじゃなかったかしら」
「今出てるじゃない。友人の後始末のために」
「そうね、感謝してるわ。パチェ」
「どういたしまして。レミィ――でも、なんだってこんな所で死体の真似していたの?」
「殺されちゃったからよ」
しばらく私は、吸血鬼の精神を正常にする方法を検索した。
「――失礼ね」
「――冗談でしょう? どんな化け物が貴女をただのナイフで殺せるというの?」
「そこのお嬢さんよ」
言われて、私はやっとその半死体を見た。
仰向けに倒れて、ほとんど動かない。
友人にも劣らない白銀の髪に、血染めの奉公服。
年の頃十から十四歳くらいの――人間の少女。
ぱっと見――死にかけているように見える。
「半死体ね」
あと十分くらいもすれば死体になりそうだが。
「――食事にしては、今日は随分行儀が悪いわね」
「面白い子よ。知らずにここへ辿り着き、いきなり私に挑んできたんだから」
言葉が出なかった。
無謀と言うより、哀れだ。
人の身では天文学的な確率の不運を、最悪の形で迎えるとは。
「しかも自身のドッペルを所持して、時空を操り、私を殺してのけたなんてね――ああ、とても楽しかったわ」
やはり言葉が出なかった。
それもまた、人の身では天文学的な――いや、不可能だ。
そもそも、いかに時空を支配したとしても――
「そう、届かないわね。でも彼女はそれをやってのけた」
「貴女がナイフなんて――いくら背中からでも避けられると思うけど。認識範囲内の事象でしょ?」
「ええ、普通ならね。でも、見事にやられたわ。いくら私でも、全く認識してない物の縁は見えないわ――貴女も読書中には本しか見えないでしょう?」
普通の事のように言うが、彼女の認識範囲と精度は魔女の私から見ても、果てが見えないほど広く精緻だ。
それを破ってみせたという、この少女。
――底が知れない。
「それに彼女には、私の居ない世界を創造できたかもしれないわ」
「それは無理。人の身では吸血鬼の誕生と滅びを知り得ない以上、彼女に貴女を排除した時空は創れない」
でも。
少し、興味が湧いた。
「どうするの? このままだと死んでしまうわよ」
少女はもう、自分で咽る力も無いのか、血で息を詰まらせかけている。
内臓を痛めていれば、まともな方法では治らない。
「そうね」
一つ頷いて、友人は少女を抱き起こした。
そう、吸血鬼の洗礼を受ければ、蘇る。
レミリアは軽く口を開く。
少女の顎を上げた。
そしてその牙を白い喉に――――立てなかった。
――――少女に接吻した――――
探るように深く、少女の口内の血を飲み込んで。
零さずに、執拗に、普段の食事より遥かに長く丁寧に。
唇を啄ばみ、歯を弄り、舌を玩んで。
吸血鬼が少女の血を啜る。
少女が息を吹き返すのを確認して、ようやく彼女は口を離した。
そして、少女の手に懐中時計を握らせ、長針を僅かに戻して針を止めた。
「良い味だわ――これで後は――パチェ」
「貸し一つね。今度私の実験に付き合ってもらうわよ」
『叡智の結実 真理の鍵 第五の原質なりし石よ 我が意に応えその力を示せ』
『我が前に開け 楽園の門 来れ セフィロトの樹よ 我が友にその祝福を賜らん』
とっておきの魔法。
これで治らないのは死人くらいのものだ。
「――私を治すときには素手で引き抜いただけだったわね?」
「――あら、私を治すときにはキスしてくれるの?」
「ええ、お望みなら喜んで」
「光栄だけど、この術はやめておいた方がいいわ。並みの吸血鬼なら五匹纏めて消し飛ばせるわよ」
少女の顔に生気が戻り、呼吸が安定した。
術を解き、数度深呼吸をする。
「ありがとう、パチェ。無理させたわね」
「どういたしまして。でも――契約はしないのね?」
「ええ。この子はこのまま――人の身のまま紅魔館に招待するわ」
言って、友人は少女を抱き上げる。
先程まで死体だったくせに、今はもう私よりずっと力強い。
気付けば空には紅い月。
この友人を滅ぼせる者など、まずこの世にはいないだろう。
――でも。
「レミィ」
何かしら、と友人は機嫌良く振り返った。
「どうして貴女は、私やその少女を迎えてくれるの?」
「あら、嫉妬? ――――そうね。傍に居て欲しいから、では駄目かしら」
「言いかたを変えるわ――どうして自分を滅ぼし得る者を、支配せずに手元に置いておくの?」
静寂。
友人は即答しない。
私も答えを急かさない。
月を見上げ、静かに――寒気がするような――笑みを浮かべて、彼女は問いを返した。
「そうね、パチェ。貴女にはわかるかもしれない――この世で最も楽しいことは何かしら」
「――知識を得ることよ」
「そう、知らないことを知ること――未知に触れることほど楽しいことは無いわね」
満足げに、彼女は頷いた――絶対者の威を供に。
「――じゃあ問うわ『知識の少女』――私が知らない事って何だと思う?」
「貴女――に――?」
「そう、運命を繰る私には、生まれた時から全てが見えていた。全てを知り得たわ」
彼女の紅い瞳だけが私に向けられる。
「それがどれほどつまらないか、貴女はわかるかしら――?」
もう一度、彼女は紅い月を見上げた。
「――でもね、パチェ。私にも知り得ない事が一つあるのよ」
一つ、私は息を吸い込んだ。
いつもの喘息とは違う――紅い月が落ちて来そうな圧迫感と息苦しさ。
私の友人が、ゆっくりと私に向き直る。
「あまりにも当たり前に存在して、何よりも身近にあって――遥かに遠過ぎてわからない事」
にこりと、彼女が――友人が――いや、紅い悪魔が微笑んだ。
「――私は、それが知りたい――」
全ての運命を見通すという瞳が、私を――私の至る行方を見つめる。
私は数十年ぶりのその感覚を思い出した。
魂を破砕するような――恐怖。
――――そう、私は、私の滅びを知りたい――――
紅い悪魔が笑う。
少女を見て、笑う。
「この子は私の血を浴びて、セフィロトの樹に触れた――人の身のままどれだけの時空を創れるかしら」
私を見て、笑う。
「知識の集積が如何なる解を出すのかは、複雑怪奇で流動雑多――貴女は私にどんな解をくれるのかしら」
月を見上げて、笑う。
「――それはとてもとてもとても楽しみで、震えがくるほど刺激的だわ」
世界を嘲笑い、己を嘲笑って、悪魔が笑う。
――捕われた。
私も、少女もこの紅き運命に捕われた。
――そして紅い悪魔――私の友人――レミィも捕われていた――
「帰りましょう、パチェ」
無邪気な笑顔。
「ええ、レミィ」
私は笑顔を返し隣を歩く。
私は、私の友人の退屈を癒せるだろうか。
少女はレミィの腕の中で静かに眠る。
少女は、彼女の孤独を癒せるだろうか。
絡み合った三本の糸。
願わくば。
ああ、願わくば。
――紅い糸の行方に幸あらんことを――
「お茶が入りましたよ」
「ご苦労様。――ほら、貴女も休みなさいな」
「ええ。ご一緒するわ――咲夜さんも、ね」
絶対者であるがゆえに持つ孤独と期待。
かなり高い純度で練り上げられていると思います!
↓同じく。紅魔郷がやりたくなります