雪が降っていた。
重く曇った空から、真っ白な雪がゆらゆらと舞い降りていた。
冷たく澄んだ空気に、湿った木の社。
霊夢「……」
私は縁側に深く沈めた体を起こして、もう一度居住まいを正した。
屋根の上が雪で覆われた神社の出入口は、今もまばらに春を吐き出している。
白いため息をつきながら、神社の境内に設置された賽銭箱の中身を見ると、金額は3円。
まだまだ小額だが、分厚い木の枠に覆われてそれ以上の賽銭は見えない。
霊夢「…遅い」
再び障子にもたれかかるように空を見上げて、一言だけ言葉を吐き出す。
視界が一瞬白いもやに覆われて、そしてすぐに北風に流されていく。
体を突き刺すような冬の風。
そして、絶えることなく降り続ける雪。
心なしか、空を覆う白い粒の密度が濃くなったような気がする。
もう一度ため息混じりに見上げた空。
その視界を、ゆっくりと何かが遮る。
魔女「……」
雪雲を覆うように、魔女が私の顔を覗き込んでいた。
魔女「雪、積もってるぜ」
ぽつり、と呟くように白い息を吐き出す。
霊夢「そりゃ、2時間も待ってるからね…」
雪だって積もる。
魔女「…あれ?」
私の言葉に、魔女が不思議そうに小首を傾げる。
魔女「今、何時だ?」
霊夢「3時」
魔女「げ…びっくり」
台詞とは裏腹に、全然驚いた様子もなかった。
どこか女っぽくない魔女の口調と、真っ黒な服装。
魔女「まだ、2時くらいだと思ってたぜ」
ちなみに、2時でも1時間の遅刻だ。
魔女「ひとつだけ、訊いていいか?」
霊夢「…何?」
魔女「寒いだろ?」
霊夢「寒い」
最初は物珍しかった雪も、今はただ鬱陶しかった。
霊夢「これ、やるよ」
そう言って、スペルカードを1枚差し出す。
魔女「遅れたお詫びだよ。
それと…
再会のお祝い」
霊夢「約1年ぶりの再会が、スペルカード1枚?」
差し出されたスペルカードを受け取りながら、改めて魔女の顔を見上げる。
私が持つには熱すぎるくらいに強まった夢符【二重結界】。
痺れたような感覚の指先に、その魔力が心地よかった。
魔女「1年…そっか、そんなに経つんだな」
霊夢「ええ、そうよ」
新しいスペルカードを手の中ではためかせながら…。
もう忘れていたとばかり思っていた、子供の頃に見た魔法使いの姿を重ね合わせながら…。
魔女「私の名前、まだ覚えてるか?」
霊夢「そう言うあんただって、私の名前覚えてるの?」
魔女「ああ」
雪の中で…。
雪に彩られた神社の中で…。
約1年間の歳月、一息で埋めるように…。
魔女「霊夢」
霊夢「目の前の黒いの」
魔女「違うぜ」
霊夢「玄爺」
魔女「一応私は人間の女だ」
困ったように眉を寄せる。
一言一言が、地面を覆う雪のように、記憶の空白を埋めていく。
魔女の肩越しに降る雪は、さらに密度を増していた。
霊夢「いい加減、我慢するのも限界かもしれない」
魔女「私の名前」
霊夢「そろそろ行きましょうか」
魔女「名前」
1年ぶりの再会で。
1年ぶりのミルキーウェイに囲まれて。
霊夢「行くわよ、魔理沙」
新しい戦いが、冬の風にさらされて、ゆっくりと始まっていく。
魔理沙「あ…
ああ」
重く曇った空から、真っ白な雪がゆらゆらと舞い降りていた。
冷たく澄んだ空気に、湿った木の社。
霊夢「……」
私は縁側に深く沈めた体を起こして、もう一度居住まいを正した。
屋根の上が雪で覆われた神社の出入口は、今もまばらに春を吐き出している。
白いため息をつきながら、神社の境内に設置された賽銭箱の中身を見ると、金額は3円。
まだまだ小額だが、分厚い木の枠に覆われてそれ以上の賽銭は見えない。
霊夢「…遅い」
再び障子にもたれかかるように空を見上げて、一言だけ言葉を吐き出す。
視界が一瞬白いもやに覆われて、そしてすぐに北風に流されていく。
体を突き刺すような冬の風。
そして、絶えることなく降り続ける雪。
心なしか、空を覆う白い粒の密度が濃くなったような気がする。
もう一度ため息混じりに見上げた空。
その視界を、ゆっくりと何かが遮る。
魔女「……」
雪雲を覆うように、魔女が私の顔を覗き込んでいた。
魔女「雪、積もってるぜ」
ぽつり、と呟くように白い息を吐き出す。
霊夢「そりゃ、2時間も待ってるからね…」
雪だって積もる。
魔女「…あれ?」
私の言葉に、魔女が不思議そうに小首を傾げる。
魔女「今、何時だ?」
霊夢「3時」
魔女「げ…びっくり」
台詞とは裏腹に、全然驚いた様子もなかった。
どこか女っぽくない魔女の口調と、真っ黒な服装。
魔女「まだ、2時くらいだと思ってたぜ」
ちなみに、2時でも1時間の遅刻だ。
魔女「ひとつだけ、訊いていいか?」
霊夢「…何?」
魔女「寒いだろ?」
霊夢「寒い」
最初は物珍しかった雪も、今はただ鬱陶しかった。
霊夢「これ、やるよ」
そう言って、スペルカードを1枚差し出す。
魔女「遅れたお詫びだよ。
それと…
再会のお祝い」
霊夢「約1年ぶりの再会が、スペルカード1枚?」
差し出されたスペルカードを受け取りながら、改めて魔女の顔を見上げる。
私が持つには熱すぎるくらいに強まった夢符【二重結界】。
痺れたような感覚の指先に、その魔力が心地よかった。
魔女「1年…そっか、そんなに経つんだな」
霊夢「ええ、そうよ」
新しいスペルカードを手の中ではためかせながら…。
もう忘れていたとばかり思っていた、子供の頃に見た魔法使いの姿を重ね合わせながら…。
魔女「私の名前、まだ覚えてるか?」
霊夢「そう言うあんただって、私の名前覚えてるの?」
魔女「ああ」
雪の中で…。
雪に彩られた神社の中で…。
約1年間の歳月、一息で埋めるように…。
魔女「霊夢」
霊夢「目の前の黒いの」
魔女「違うぜ」
霊夢「玄爺」
魔女「一応私は人間の女だ」
困ったように眉を寄せる。
一言一言が、地面を覆う雪のように、記憶の空白を埋めていく。
魔女の肩越しに降る雪は、さらに密度を増していた。
霊夢「いい加減、我慢するのも限界かもしれない」
魔女「私の名前」
霊夢「そろそろ行きましょうか」
魔女「名前」
1年ぶりの再会で。
1年ぶりのミルキーウェイに囲まれて。
霊夢「行くわよ、魔理沙」
新しい戦いが、冬の風にさらされて、ゆっくりと始まっていく。
魔理沙「あ…
ああ」
是非とも続きを見たいですね~。
これすっごくいいです!
鍵まんまなのに違和感ないのは何故?
ちなみに 霊夢「これ、やるよ」 の部分は霊夢ではなく魔女では?
間違ってたらごめんなさい・・・(><;