ある年の幻想郷。
そのある月、幻想郷は毎日毎日雨を降らせていた。
毎年そうかどうかなど覚えている妖怪や人が居るかはわからないが、
とりあえず幻想郷は梅雨のようだった。
そんな中、ため息をつきながら買い物袋片手に飛ぶメイドがいたとかいなかったとか。
そしてこれは梅雨が明けた日の話。
博麗神社の巫女、霊夢はやっと布団が干せると喜びながら外に出た。
布団を抱えて神社の裏手へ回る。
いざ干すか、といったところで遠くから飛んでくる二人連れを見つけた。
…。
なにやらいやな予感がしたので見なかったことにして布団を干す。
しかしその二人連れはやはり博麗神社にやってきた。
レミリア「霊夢、久しぶりね。」
確かに久しぶりにこの紅い姉妹を見たのだが、これは喜ぶところなのかよくわからなかった。
フランドール「まったく、遊びに来てくれてもいいじゃない。私たちは雨じゃお外に出れないんだし。」
むくれる妹。
と、ここまでは布団を干すのを優先していたので何も返さなかった(そっちを見てもいない)が、
名指しで話しかけられて無視するわけにもいかないので挨拶を返す。
霊夢「久しぶり。…って、何その格好。」
紅い姉妹はなにやら妙な格好をしていた。
少なくとも霊夢にはそう見えた。
姉のレミリアはいつもの白い日傘、しかしそれ以外がまったく違う。
さらさらの銀髪は左右にやや低い位置で留めた、わかりやすく言えばツインテール。
いつものようにキャップをかぶってもいない。かわりについている紅いリボンが目を引いた。
そして何よりの違和感が、紅いドレス。
彼女そのものでさえ神社などには不釣合いだというのに、そのドレスの豪奢なこと。
どこかの舞踏会にでも行くのか、といった風でさえある。
対する妹も、また尋常ならざる、だ。
まず、今日は快晴である。
長雨が終わってやっと晴れた日だ。
そして悪魔は雨の日に外に出れない。(と本人も言っている)
これらを踏まえて考えて、明らかにおかしい。
彼女は、雨具を身につけていた。
まず白い傘。これは重要なはずだ。
なぜならこの姉妹が日光に当たるというのは、自殺行為に近い、いやそのものだ。
しかし白い傘はただの雨傘だった。
一匹だけ可愛らしい蛙がプリントされている、ただの雨傘だ。
日よけとして使えるのかあやしいものだ。
霊夢が一瞬、この姉妹はやはり日に当たっても大丈夫なのかも、と思うのも仕方ない。
そして紅いレインコート。
こちらにも蛙が一匹居た。
…好きなんだろうか?
しかも暑くなりだしたというのにフランドールは律儀にフードをかぶっている。
それにぶかぶかの紅い長靴。
…全て新品に見えるのは気のせいだろうか。
あまりの突飛な格好に霊夢が二の句が継げないでいると、姉妹が不満げな顔をした。
レ「はぁ、やっぱり霊夢は霊夢、よね。」
フ「ほんと。」
霊「え?…何、何なの?」
レ&フ「何でも無い。」
そろってそっぽを向いてしまう。
ようやく姉妹がなにやら怒っているらしいことに気づいた霊夢は、
霊「あー…。お茶淹れてくるわ。」
といって家の中に逃げていった。
レ「魔理沙。どういうこと。」
霊夢が見えなくなってから、不機嫌な声でレミリアが茂みに向かって言った。
茂みから、奇妙な魔法使いが現れた。
魔理沙「いや、まさかこれほど鈍感だとは思ってなかった。」
呆れた声で言い繕う。
レ「…まあ、服を変えたくらいで霊夢がどうにかなるとは思ってなかったけど。」
言いつつも残念そうな顔になる。
がっかりした風な二人を見つつ、
フ「私はこれ着れただけでも嬉しいけどね。」
フランドールが呟いた。
それは梅雨最中の話。
面倒なことが嫌いな巫女は家に引きこもっていたが、奇妙な魔法使いはそうでもなかった。
連日紅魔館に行っては図書室で本を読み漁っていたのだ。
しかし図書室の住人から苦情が寄せられた。
魔法使いは雨に濡れたまま図書室に入ってくるためだ。
なのでお嬢様は魔法使いに、それなりの代価を支払え、と要求して入室を制限しようとした。
そして得られた代価が、意中の相手をメロメロ(死語)にさせる、「作戦」というやつだった。
その説明は図書室で行われ、良い案だ!と喜ぶお嬢様を苦笑しながら図書室の住人が見ていた。
ちなみに。
梅雨の間中、お嬢様は魔法使いの口車に乗せられ、物品としての代価は得られなかった。
フランドールの雨具は、「作戦」に必要なものを買いに行かせた瀟洒なメイドに、
フランドールがどうしても、と使いもしないのにねだって買ってもらっただけである。
したがって「作戦」とはなんら関係ない。
舞台を戻して。
魔「そうがっかりするな。まだ作戦はあるだろう?」
根拠の無い自信を持って魔理沙がレミリアの肩を叩いた。
レ「そうね…。
そう、まだ『手料理大作戦』も、『つまづいてしなだれかかる大作戦』も、他にもたくさん残ってるわ。」
お嬢様は、お嬢様である。
作戦がなにかおかしいなどとまったく疑いもせず、彼女は元気を取り戻した。
魔「よし!さっそく次の作戦だ!」
と言ったところで、
霊「お茶出来…と、魔理沙。何してんの?」
霊夢が帰ってきて、茂みにいる魔理沙に不審そうな顔を向けた。
魔「…なんでもないぜ。」
若干赤面しながら魔理沙が茂みから出てきた。
霊「あ、そうそう。」
魔理沙が茂みから出てきたあと、思い出したように、やや赤面しながら霊夢が切り出した。
霊「二人とも、その服、…その、よく似合ってるわ。」
突然のことにレミリアはぽかんとしてしまったが、
フ「やった~!お姉様、褒められたよ?可愛いって!」
フランドールがあることないこと言って騒ぎ出して、正気に戻った。
戻ってすぐ、真っ赤になって俯いた。
この後の会話で魔理沙が一枚かんでいることを知った霊夢は、魔理沙の頭をぐーで殴った。
そのある月、幻想郷は毎日毎日雨を降らせていた。
毎年そうかどうかなど覚えている妖怪や人が居るかはわからないが、
とりあえず幻想郷は梅雨のようだった。
そんな中、ため息をつきながら買い物袋片手に飛ぶメイドがいたとかいなかったとか。
そしてこれは梅雨が明けた日の話。
博麗神社の巫女、霊夢はやっと布団が干せると喜びながら外に出た。
布団を抱えて神社の裏手へ回る。
いざ干すか、といったところで遠くから飛んでくる二人連れを見つけた。
…。
なにやらいやな予感がしたので見なかったことにして布団を干す。
しかしその二人連れはやはり博麗神社にやってきた。
レミリア「霊夢、久しぶりね。」
確かに久しぶりにこの紅い姉妹を見たのだが、これは喜ぶところなのかよくわからなかった。
フランドール「まったく、遊びに来てくれてもいいじゃない。私たちは雨じゃお外に出れないんだし。」
むくれる妹。
と、ここまでは布団を干すのを優先していたので何も返さなかった(そっちを見てもいない)が、
名指しで話しかけられて無視するわけにもいかないので挨拶を返す。
霊夢「久しぶり。…って、何その格好。」
紅い姉妹はなにやら妙な格好をしていた。
少なくとも霊夢にはそう見えた。
姉のレミリアはいつもの白い日傘、しかしそれ以外がまったく違う。
さらさらの銀髪は左右にやや低い位置で留めた、わかりやすく言えばツインテール。
いつものようにキャップをかぶってもいない。かわりについている紅いリボンが目を引いた。
そして何よりの違和感が、紅いドレス。
彼女そのものでさえ神社などには不釣合いだというのに、そのドレスの豪奢なこと。
どこかの舞踏会にでも行くのか、といった風でさえある。
対する妹も、また尋常ならざる、だ。
まず、今日は快晴である。
長雨が終わってやっと晴れた日だ。
そして悪魔は雨の日に外に出れない。(と本人も言っている)
これらを踏まえて考えて、明らかにおかしい。
彼女は、雨具を身につけていた。
まず白い傘。これは重要なはずだ。
なぜならこの姉妹が日光に当たるというのは、自殺行為に近い、いやそのものだ。
しかし白い傘はただの雨傘だった。
一匹だけ可愛らしい蛙がプリントされている、ただの雨傘だ。
日よけとして使えるのかあやしいものだ。
霊夢が一瞬、この姉妹はやはり日に当たっても大丈夫なのかも、と思うのも仕方ない。
そして紅いレインコート。
こちらにも蛙が一匹居た。
…好きなんだろうか?
しかも暑くなりだしたというのにフランドールは律儀にフードをかぶっている。
それにぶかぶかの紅い長靴。
…全て新品に見えるのは気のせいだろうか。
あまりの突飛な格好に霊夢が二の句が継げないでいると、姉妹が不満げな顔をした。
レ「はぁ、やっぱり霊夢は霊夢、よね。」
フ「ほんと。」
霊「え?…何、何なの?」
レ&フ「何でも無い。」
そろってそっぽを向いてしまう。
ようやく姉妹がなにやら怒っているらしいことに気づいた霊夢は、
霊「あー…。お茶淹れてくるわ。」
といって家の中に逃げていった。
レ「魔理沙。どういうこと。」
霊夢が見えなくなってから、不機嫌な声でレミリアが茂みに向かって言った。
茂みから、奇妙な魔法使いが現れた。
魔理沙「いや、まさかこれほど鈍感だとは思ってなかった。」
呆れた声で言い繕う。
レ「…まあ、服を変えたくらいで霊夢がどうにかなるとは思ってなかったけど。」
言いつつも残念そうな顔になる。
がっかりした風な二人を見つつ、
フ「私はこれ着れただけでも嬉しいけどね。」
フランドールが呟いた。
それは梅雨最中の話。
面倒なことが嫌いな巫女は家に引きこもっていたが、奇妙な魔法使いはそうでもなかった。
連日紅魔館に行っては図書室で本を読み漁っていたのだ。
しかし図書室の住人から苦情が寄せられた。
魔法使いは雨に濡れたまま図書室に入ってくるためだ。
なのでお嬢様は魔法使いに、それなりの代価を支払え、と要求して入室を制限しようとした。
そして得られた代価が、意中の相手をメロメロ(死語)にさせる、「作戦」というやつだった。
その説明は図書室で行われ、良い案だ!と喜ぶお嬢様を苦笑しながら図書室の住人が見ていた。
ちなみに。
梅雨の間中、お嬢様は魔法使いの口車に乗せられ、物品としての代価は得られなかった。
フランドールの雨具は、「作戦」に必要なものを買いに行かせた瀟洒なメイドに、
フランドールがどうしても、と使いもしないのにねだって買ってもらっただけである。
したがって「作戦」とはなんら関係ない。
舞台を戻して。
魔「そうがっかりするな。まだ作戦はあるだろう?」
根拠の無い自信を持って魔理沙がレミリアの肩を叩いた。
レ「そうね…。
そう、まだ『手料理大作戦』も、『つまづいてしなだれかかる大作戦』も、他にもたくさん残ってるわ。」
お嬢様は、お嬢様である。
作戦がなにかおかしいなどとまったく疑いもせず、彼女は元気を取り戻した。
魔「よし!さっそく次の作戦だ!」
と言ったところで、
霊「お茶出来…と、魔理沙。何してんの?」
霊夢が帰ってきて、茂みにいる魔理沙に不審そうな顔を向けた。
魔「…なんでもないぜ。」
若干赤面しながら魔理沙が茂みから出てきた。
霊「あ、そうそう。」
魔理沙が茂みから出てきたあと、思い出したように、やや赤面しながら霊夢が切り出した。
霊「二人とも、その服、…その、よく似合ってるわ。」
突然のことにレミリアはぽかんとしてしまったが、
フ「やった~!お姉様、褒められたよ?可愛いって!」
フランドールがあることないこと言って騒ぎ出して、正気に戻った。
戻ってすぐ、真っ赤になって俯いた。
この後の会話で魔理沙が一枚かんでいることを知った霊夢は、魔理沙の頭をぐーで殴った。