Coolier - 新生・東方創想話

東方怪談話 ~夏と言ったらこれ~

2003/08/01 08:48:16
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「あっ……あなた、誰!?」

 美しいブロンドの髪をした女性が、目の前にいる紳士服を着た男性に問い掛ける。
 その男性は、意味深な笑みを浮かべると、こう言った。

「ふふふ、私ですか? わたしは……」

 そう言った刹那、男性の顔が、見る見るうちに溶けていく……。
 その下から、白い骨が顔を出す。

「死神デスヨ……」
「いっ……!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「うわっ、いきなり騒ぐなチルノ! 今良い所じゃないか!!」
「うわぁぁぁぁぁん、だってぇ~~~~~」

 ここは、東の国の奥深く、幻想郷と呼ばれる、妖怪と人間が共存する、摩訶不思議な世界。
 その幻想郷の一帯にある博麗神社に、今日、人間と妖怪が何人か、集まってきていた。
 目的は、夏の風物詩――そう、怪談である。
 階段ではない。

「もう帰る買える蛙ぅぅぅぅ~~~! 私は恐い話が苦手なんだ~~~~っ!」
「仮にも妖怪だろ? 妖怪が恐い話恐がっちゃいけないぜ」
「私は氷精!!」
「似たようなもんだろ」

 魔理沙とチルノの目の前に映っているのは、『死神達の収穫祭~Vol 1.012』という名の
ホラー映画である。
 部屋には、何所からくすねて来たのか、プロジェクターが部屋の真中に置かれていた。
 その他の装備も完璧である。
 魔理沙曰く

「このアイテムGetしてくるの、かなり苦労したんだからな。感謝してくれよ」

 だ、そうだ。
 泣きわめくチルノに、霊夢がそっと話し掛ける。

「後でアイスバーあげるわよ。それで手を打ちましょう」
「…たっ、食べ物で、私が釣られるとでも思うわけ?」
「スイカもあるわよ」
「……」
「……」
「こっ、今回だけだからね!」

 そう言うと、チルノはそっぽを向いて拗ねてしまった。
 その様に、霊夢と魔理沙が顔を見合わせて笑った。

「ほんと、子供なんだから」
「人の事言えないだろ、霊夢。お前だって、最初ここで怪談話やるって言われた時、随分と
 拗ねていたじゃないか」
「あのねぇ、いきなり人の許可を取らずに勝手に決めちゃって、しかも宣伝までしちゃうんだ
 から。怒るのは当たり前でしょ!」
「いや、やっぱり怪談話と言えば霊夢さん宅かなと」

 先程から、一緒になってホラー映画を見ていた紅・美鈴が、横からそう答えた。
 突然話し掛けられ、霊夢が冷や汗を流す。

「いっ、いきなり話し掛けないでよ。って、あんたいつからいたっけ?」
「さっきからいたぜ。地味で気がつかなかったんじゃないか?」
「お二人とも、酷いですよ~」
「いや、事実だしな……。真実は変えられないって言うしな」
「なかなかはっきりと言うわね……。いや、事実だけど」
「ぅぅぅぅぅ……」
「そういえばあなた。レミリア達はまだ来ていないっぽいけど、どうしたの?」
「もうすぐ来るはずですよ。咲夜さんが、レミリアお嬢様のご用意がまだ終わらないので
 先へ行けと……。あっ、来ましたよ」

 そう言われ、神社の庭の方に視線を向けると、丁度レミリアと咲夜、フランドールが、庭に
降り立つところだった。
 レミリアが手を振って挨拶をする。

「お待たせ霊夢~。結構集まってるのね」
「お陰さまで。五月蝿いったらありゃしないわ」

 霊夢が、レミリアに対し微笑みかける。

「…ぽ」
「ぽ、じゃないわよ」
「やっほ~、魔理沙、元気してた? フランドール様が来てあげたわっ!」
「おやつは500円までだぜ」
「バナナは含むの?」
「ちょっと待て、今調べてみるぜ」
「何の話をしているんだあんたら」

 そうこうしていると、神社にも沢山の妖怪が集まってきた為、そろそろ怪談話をはじめる事
にした。
 全員が広い畳の部屋に集まり、輪を描くようにして座る。
 しかし、何故だが部屋の中が異常に暗い。
 外を見ると、既に夜も深まっている。
 しかし部屋の中にはちゃんと照明もあるし、外から月明りなどが入ってくるはずだ。
 それなのに、どうも黒で塗りたくったような暗さがある。

「…まぁ、原因は判ってるんだけど」
「判ってるなら言うなよ。予想外だが、こっちのほうが雰囲気は出るんじゃないか?」
「出すぎ! 相手の顔すら判らないじゃ……。こっこら、誰だ! どこさわってんのよ!?」
「ぉぃ、私じゃな……ぉぉぅ!? こら、くすぐったいだろ! 誰だ!」

 暗闇の中で何やら騒ぐ人間二人。
 そして、部屋の隅でぼそぼそと会話をする、人間一人と妖怪一人。

「ふふふ、なかなかよくやったわよ。レミリアお嬢様も妹様も喜んでるわ」
「いえいえ、それほどでも」
「ルーミア、お主も悪よのぅ……」
「生まれ持ってる能力ですけど。いえいえ、咲夜さんほどでは……」
「「わはははは!」」
「マスタースパーク撃つぞ、こらぁっ!!」
「こらぁっ! 神社が壊れるわ!!」

 …暫くして、ようやく怪談が始まる事になった。
 妖怪と人の輪の中心に蝋燭を置き、火を灯す。
 宵闇の妖怪のせいで真っ暗闇になった部屋の中に、幾つかの灯りが灯った。

「さて、まずは私から行かせてもらうぜ」

 最初に名乗りをあげたのは奇妙な魔術師・霧雨魔理沙。
 彼女は畳の上であぐらをかき、神妙な顔で語り始めた……。

「この話は、ある事件がきっかけで変わってしまった実在する女の子の話だぜ……。
 ある所に、それはそれはかわいい女の子がいたんだ。明るくて活発な子で、皆から親しまれ
 ていた。よく、お花畑に出ては駆け回り、『うふふふふ』とよく笑う子だった。
 しかし、その子はある日から変わってしまった……。そう、あの事件があった日から……」

 ごくり。
 部屋全体に、神妙な空気が流れる。
 魔理沙は、一呼吸を置いて再び話しだした。

「ある日その女の子は、友達と一緒に遊んでいたんだ。そのうち女の子は、友達とはぐれて
 しまい、とある不思議な遺跡のような建物に迷い込んでしまう。
 暗く冷たい、人の息吹がまるで感じられない不気味な遺跡を、たった一人で進んでいく。
 凄く恐かったんだけど、彼女は恐怖心より好奇心のほうが強く、どんどんと進んでいった。
 それは迂闊な行動だった。そして出会ってしまうんだ、あいつに……。
 遺跡の奥で、女の子は真っ白い服を着た女性に会う。その女性は、薄気味悪い笑みを浮かべ
 ると、脅えて動けない少女にそっと近づいた……! そして、その手を握ったんだ。
 遺跡の中に、少女の絶叫が木霊した。
 …それから彼女は、少しずつ変貌していく……。
 やがて、彼女は体が黒く染まっていき、言葉遣いも、それにともない黒く染まっていった。
 以前はよく笑う子だったのに、言葉は男の子のようになってしまい――」

「咲夜、恐いわ……」
「大丈夫ですよお嬢様。私が傍にいますから」
「ちょっといい? 魔理沙」

 話を続ける魔理沙に、霊夢が話し掛ける。

「どうした。まだ話は途中だぜ」
「ちょっと気になったんだけどさぁ……。それって実在するって言ったわね。……誰の話?」
「……」

 部屋の中に、沈黙が流れる。
 この雰囲気に耐え切れず、チルノが声を荒げて言う。

「なによぉなによぉ、なんなのよぉ。恐いじゃない、みんないきなり黙ったりしないでよぉ」
「その女の子は……実は……」

 ――ごくり。

「……私だぜ」
「はぁ~~~~~~~~ッ!?」


 誰かがわざわざ設置した、難解かつ意味不明かつお節介満載の説明コーナー!

 明るい女の子  →魔理沙は紅魔郷以前では、『うふ、うふ、うふふふふ』と笑う
          女の子だった!!
 遺跡のような建物→東方夢時空のラストステージだぞ!
 白い服を着た女性→夢時空に出てくる、白いセーラー服を着た(白っていうか、白と青)
          キャラ、北白河 ちゆりの事で。話し方が今の魔理沙に似ている。
 黒く染まっていき→昔は紫色の服だったが、紅魔郷から黒い服に変わったんだ!
 男の子のように →今の魔理沙だ! ちゆりのような、「~だぜ」口調に変わったんだ!


「んなのありかぁ~~~~~~っ!?」
「ネタが無かったんだよ! わざわざ一晩かけて、恐いようにしたんだぞ!」
「どこが明るく活発で、皆から親しまれていたんだ~~~!」
「霊夢っ、ちょっ、チョークスリーパーはッ! ぎぶっ! ぎぶぎぶぎぶっ!」

 やがて、暗闇に染まっている部屋に、少女の絶叫が木霊した。


「――さて、次は私ね」

 そう言うと、先程まで本を読んでいたパチュリー・ノーレッジが皆の方へ向き直った。
 視界の中に、床にぐったりと寝そべっている少女が写し出されるが、彼女は無理矢理視界
の中から除外した。
 恐らく、ただの屍だ。

「除外するな。それに私は屍じゃないぜ」
「…は?」
「いや、なんでもない」

「じゃあ、早速行くわよ。ようするに、凄く恐い話を話せばいいのよね?」

 パチュリーが、不気味な笑い顔をする。
 霊夢が、少し冷や汗をかきながら答える。

「お手柔らかにね」
「恐い話は得意中の得意だから。じゃあ行くわよ。しっかりと聞くことね……」

 そう言うと、知識と日陰の少女、パチュリーは話を始めた。

「ぇぇっと、私は――。鉄の処女っていう拷問器具の話でもしましょうかね。恐いわよ~。
 これは人の形をした鋼鉄製の拷問器具で、機械仕掛けで顔が笑うっていうこだわりが――」
「ちょっとまて~~~!? それは怪談でも何でもないでしょ~!?」
「――胸にある宝石を押すと腕が上がり、押さえ込むようになる、と。中が空洞になっていて、
 哀れな犠牲者はこの中で――」
「ぷしゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」
「ああっ、チルノが倒れちゃったわ! って、こら~っ! その話はやめなさいよっ!」
「ぇっ!? ちょちょっ、ちょっとぉ!? 私、何か間違ったような事を……ぐはっ!!」

「ああ、哀れなパチュリーは、霊夢の腕に押さえ込まれ、鉄の処女の刑に処せられて
 しまったぜ」
「いたいいたいいたいいたい!! ぷっしゅぅぅぅぅぅ~」

 パチュリー、霊夢の攻撃にあい、ダウン。
 その少し離れた場所で。

「ああ、パチュリーいいなぁ。私も、こう、霊夢にガバッとされたいなぁ」

 と、レミリアが一人呟いてたのは秘密である。

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。も~、もちょっとマシな話ができる人はいないわけ?」
「はいはいは~い、私がいくわ!」

 レミリアが、元気よく手を上げる。

「ちょっと待った。どんな話よ」
「ぇぇっと、500年生きた少女のはな――」
「却下よ!」
「うわっ、間髪置かずに速答しやがった! ああっ、レミリアがいじけてるぜ」
「ぐす……霊夢にぎゅ~っとされたかたのにぃ……」
「ああ、お嬢様そんなに落ち込まずに! こら紅白! あなた、さっさとお嬢様を、こう、
 ぎゅ~っと」
「断る!」
「…ふふふ、なかなかいい度胸じゃない。私に反発するってわけ? 一回勝ったからって、
 調子に乗るのはよくないわね」
「正確には二回よ。最終面でもでてきたでしょ?」
「つべこべ言うんじゃないわよ!」
「ああっ、何だか怪談話と別方向に行ってしまったぜ! でもなかなか面白いからここで
 見学でもしているか」
「わわっ……。宵闇妖怪はここらで帰りま~す、みなさんさよならっ!!」
「ぷしゅぅぅぅぅぅぅぅ……」
「なっ、なんか穏やかじゃない雰囲気になってきたんですけど~~~!?」
「何が間違ってたって言うのよ……がく」
「霊夢にぎゅ~っとされたかったわ……」
「なになに? 弾幕ゴッコ? 私も参加する~~~っ!」

 …こうして、真夏の夜に行われた怪談は、いつものことと言うかお約束というか、
ふとした事から弾幕ゴッコへと変貌してしまったのだった。
 幻想郷は、殺伐としているようで今日も平和なのだった……。


 ~後日談~
「そういえば霊夢。お前は一体どんな話をしようとしていたんだ?」

 壊れた神社の後片付けをしながら、魔理沙は霊夢にそう問い掛けた。
 霊夢が、箒を持ったまま答える。

「ぇ~っと……。こんな訳の判らないSSを見て、沢山の人に『つまらない』とか
『訳が判らない』とか言われる話よ」


 ぎぃゃあああああああ~~~~~ッ!!(作者の絶叫)
おかしい部分を指摘されたり、アドバイスされるのは
別に恐くはありません。
…最初はこんなに長くなる予定は無かったのですが。
ふぬの中の人
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コメント



0.1030簡易評価
1.30nanashi削除
(((( ;゚Д゚)))ガタガタブルブル
2.50ななしし削除
とても面白かった。楽屋オチはいいけどメッセージで冷め(略
3.50七氏削除
うふふふふ、とか笑ってる時点で既に普通の少女じゃないって
4.30(´ー`)削除
面白かったです
25.無評価ななし削除
チルノの一人称はあたいかあたしでは?



帰る帰る蛙、で不覚にも笑ってしまいましたw
30.無評価na7氏削除
妖怪(と一部の人間)が集まって怪談話ってあんたら脅かす側でしょw何やってんだw
そして、魔理沙の話で吹いた。それは怖い話じゃないw
何はともあれとても面白かったでした。
31.50na7氏削除
点数入れ忘れました。