夏の日差しが辺り一杯に射し込み、パステルブルーに輝く空が、つい先日まで
辺りを覆っていた霧がようやく晴れたという事を誇らしげに示している。
肌を焦がすような太陽の光を体一杯に浴びながら、私こと博麗神社の巫女、博麗霊夢は、神社の
庭の掃除にあくせくとしていた。
「あ~あ、なんでこんなに暑いのかしら。霧が晴れたのは嬉しいけど、こうも暑い日が続くと
バテちゃうわよね」
そう言いながら庭掃除を終え、神社の中へ戻った私の目の前に、ふと、奇妙な物体が目に入った。
「…で、なんだっけ、これ」
私の目の前にあったのは、真っ黒なボディに丸い輪がついた物体…電話という名前の物体だ。
聞いた話では、電電なんたらとかいう人たちが扱っていた、電話でも古い型なのだそうだ。
先日、奇妙な魔法使い、霧雨魔理沙が神社に持って来て、そのまま置いていったのだ。
どうやら、人間界からくすねてきたものらしい。
相も変わらずよくやるわね……。
「使い方は教えてもらったから知ってるけど、こんなもので魔理沙と連絡がとれるわけ?」
私は、電話という奇妙な物体をマジマジと見つめた。
何の気なしに、電話の受話器を取ってみる。
受話器の中からは、ツーツーという音が、私の耳を伝わってはっきりと聞こえてきた。
「そういえば、最近魔理沙が来ないわね。何してるのかしら? たまには、こっちから連絡して
みるのもいいかもしれないわね」
そう、誰にいう事なく呟き、私は魔理沙の教わった通りにダイアルを回す。
ジリリリリリ…。
ジリリリリリ…。
ガチャッ。
「あ、魔理沙? 私、霊夢だけど……」
「あっぐ、何でこんな忙しい時に電話してきたんだっ!?」
「…は?」
受話器の先から聞こえてきたのは、紛れも無く友人の霧雨魔理沙の声だった。
が、少々様子がおかしい。電話越しでも、魔理沙が息を荒げているのがよく判る。
しかも、なんだか騒がしい。
「どっ、どうしたの? 何だかそっち、騒がしいみたいだけど……」
「いまちょっといそがし、うわっ!?」
「博愛のオルレアン人形!」
刹那、飛び散る戦火(予想)、激しい魔力のぶつかり合い(予想)、後は……。
どがぁ~~~~ん!
…爆音。
「なななっ、なに!? 何やったって言うの!」
「いや、それが。あまりに暑いんで、南極の氷でも召喚しようとしたら……」
「うん」
「間違って、魔王を召喚してしまったんだ!」
「なんで~~~~~ッ!? って、どっかで聞いた記憶のある声なんですけど! 魔界人辺りで!」
「気にするな! というわけで、魔王を封印するために、今現在血も凍るような戦いを…」
「余所見をするな!! ダークブラッ……春の京人形!」
刹那、受話器の先から爆音が伝わってくる。
「うおっ! 何のこれしき! スターダストレヴァリエ!」
「クッ! 流石は伝説の勇者…もとい、奇妙な魔術師霧雨魔理沙! 今日は久しぶりに楽しめそうね…!」
「こちとら、伊達に何年も魔術師をやってないんでッ、ねッ!」
「これで終わりね……。首吊り蓬莱人形ッ!」
「なんの、まだまだぁ~~~~~ッ!」
「ぇっ、ぇぇ~と……大丈夫? 魔理沙……」
「ぉぅ、全然大丈夫だ!」
「そっ、そう……頑張ってね……」
そう言うと、私は電話の受話器をゆっくりと下ろした。
下ろす最中も、電話から爆音やら絶叫やらが聞こえてきたが、気にしない。
ガチャッ。
「……」
まっ、まぁ、あの魔理沙の事だから、負けたりはしないでしょう。
…そうね、気にしない気にしない。気にするだけ損だわ。
さっさと、部屋の掃除を済ませてお茶でも飲もうっと。
そう思いながら、私は神社の奥のほうへ、箒を持って駆け出していった。
幻想郷は、今日も平和でありましたとさ……多分。
~後日談(というか、それから三十分後)~
リリリリリリーン、リリリリリーン。
「はいはいはいはい。何よも~、まだ部屋の掃除終わってないのに~」
ガチャッ。
「はい、博麗神社!」
「あ、霊夢か? すまん、私の家の修理手伝って……」
「知らん!!」
ガチャ!!
「さ~て、続き続きっと~」
これでも、彼女たちは楽しく仲良く毎日を過ごしているのである……多分。
辺りを覆っていた霧がようやく晴れたという事を誇らしげに示している。
肌を焦がすような太陽の光を体一杯に浴びながら、私こと博麗神社の巫女、博麗霊夢は、神社の
庭の掃除にあくせくとしていた。
「あ~あ、なんでこんなに暑いのかしら。霧が晴れたのは嬉しいけど、こうも暑い日が続くと
バテちゃうわよね」
そう言いながら庭掃除を終え、神社の中へ戻った私の目の前に、ふと、奇妙な物体が目に入った。
「…で、なんだっけ、これ」
私の目の前にあったのは、真っ黒なボディに丸い輪がついた物体…電話という名前の物体だ。
聞いた話では、電電なんたらとかいう人たちが扱っていた、電話でも古い型なのだそうだ。
先日、奇妙な魔法使い、霧雨魔理沙が神社に持って来て、そのまま置いていったのだ。
どうやら、人間界からくすねてきたものらしい。
相も変わらずよくやるわね……。
「使い方は教えてもらったから知ってるけど、こんなもので魔理沙と連絡がとれるわけ?」
私は、電話という奇妙な物体をマジマジと見つめた。
何の気なしに、電話の受話器を取ってみる。
受話器の中からは、ツーツーという音が、私の耳を伝わってはっきりと聞こえてきた。
「そういえば、最近魔理沙が来ないわね。何してるのかしら? たまには、こっちから連絡して
みるのもいいかもしれないわね」
そう、誰にいう事なく呟き、私は魔理沙の教わった通りにダイアルを回す。
ジリリリリリ…。
ジリリリリリ…。
ガチャッ。
「あ、魔理沙? 私、霊夢だけど……」
「あっぐ、何でこんな忙しい時に電話してきたんだっ!?」
「…は?」
受話器の先から聞こえてきたのは、紛れも無く友人の霧雨魔理沙の声だった。
が、少々様子がおかしい。電話越しでも、魔理沙が息を荒げているのがよく判る。
しかも、なんだか騒がしい。
「どっ、どうしたの? 何だかそっち、騒がしいみたいだけど……」
「いまちょっといそがし、うわっ!?」
「博愛のオルレアン人形!」
刹那、飛び散る戦火(予想)、激しい魔力のぶつかり合い(予想)、後は……。
どがぁ~~~~ん!
…爆音。
「なななっ、なに!? 何やったって言うの!」
「いや、それが。あまりに暑いんで、南極の氷でも召喚しようとしたら……」
「うん」
「間違って、魔王を召喚してしまったんだ!」
「なんで~~~~~ッ!? って、どっかで聞いた記憶のある声なんですけど! 魔界人辺りで!」
「気にするな! というわけで、魔王を封印するために、今現在血も凍るような戦いを…」
「余所見をするな!! ダークブラッ……春の京人形!」
刹那、受話器の先から爆音が伝わってくる。
「うおっ! 何のこれしき! スターダストレヴァリエ!」
「クッ! 流石は伝説の勇者…もとい、奇妙な魔術師霧雨魔理沙! 今日は久しぶりに楽しめそうね…!」
「こちとら、伊達に何年も魔術師をやってないんでッ、ねッ!」
「これで終わりね……。首吊り蓬莱人形ッ!」
「なんの、まだまだぁ~~~~~ッ!」
「ぇっ、ぇぇ~と……大丈夫? 魔理沙……」
「ぉぅ、全然大丈夫だ!」
「そっ、そう……頑張ってね……」
そう言うと、私は電話の受話器をゆっくりと下ろした。
下ろす最中も、電話から爆音やら絶叫やらが聞こえてきたが、気にしない。
ガチャッ。
「……」
まっ、まぁ、あの魔理沙の事だから、負けたりはしないでしょう。
…そうね、気にしない気にしない。気にするだけ損だわ。
さっさと、部屋の掃除を済ませてお茶でも飲もうっと。
そう思いながら、私は神社の奥のほうへ、箒を持って駆け出していった。
幻想郷は、今日も平和でありましたとさ……多分。
~後日談(というか、それから三十分後)~
リリリリリリーン、リリリリリーン。
「はいはいはいはい。何よも~、まだ部屋の掃除終わってないのに~」
ガチャッ。
「はい、博麗神社!」
「あ、霊夢か? すまん、私の家の修理手伝って……」
「知らん!!」
ガチャ!!
「さ~て、続き続きっと~」
これでも、彼女たちは楽しく仲良く毎日を過ごしているのである……多分。