Coolier - 新生・東方創想話

埃っぽい図書室でのこと

2003/07/11 13:48:24
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紅魔館、図書室。
パジャマのような服を着た魔女が一人。
魔女の名は、パチュリー・ノーレッジ。
彼女はただ本を読んでいた。
歩くと埃の舞うような通路すらある図書室で、
彼女はひたすらに。

 「パチュリー。」
ページをめくる音と、時々に咳の音しか聞こえない図書室に、よく通る低めの声が響いた。
 パ「そこに置いといて。」
名前を呼ばれた反応として、およそ不適切な返事を返す。
顔は本に向けられたまま、微動だにしなかった。
 「残念だけど、今日は何も持ってないわ。」
呆れた様な先ほどの声が響く。
 パ「…じゃあ何の用かしら?メイド長の咲夜さんともあろうお方が、まさかサボり?」
若干怒ったような、いや、鬱陶しそうな声で魔女が返す。
 「まさか。今日は皆で食事を取りましょう。
  …お嬢様のご命令、よ。」
咲夜と呼ばれたメイド服姿の少女が、大袈裟に肩をすくめながら魔女に歩み寄る。
 咲「ほら来なさい。準備が整ってるから、って訳じゃないけどね。
  …どうせすぐ来るつもりはないんでしょうけど?」
魔女は逡巡。
 パ「…そのうちに…これを読んだら…いえ、この一連の書物を読んだら……」
やはり顔を上げない魔女は、すぐ横まで来たメイド長がどんな表情をしているか、
まるで気にしていなかった。

不機嫌、なのだろうが、長と呼ばれるにふさわしい威厳のある
彼女のその表情は、もはや威圧の域だった。
小さな体の魔女の意見など無視して、蹴り飛ばしてでも連れて行く、といった風だろうか。
 咲「相変わらず本から離れられないようね。
  …だからってたまにはお嬢様のご友人らしく振舞って見せなさい。」
お嬢様のご友人、とは皮肉だろうか。
なにせ、「お嬢様のご友人」に対してこの態度だ。
 パ「…互いのエゴすら認めるのが、真の友人よ。」
百年生きた魔女が、知った風に言う。
幼い見た目とその言葉は、ひどく似合っていなかった。
だがその言葉に、真横にあった威圧に似た空気が消えた。
咲「言ったわね。なら、お嬢様のエゴも認めることね。」
言葉と同時に、若干楽しそうな顔をした咲夜の顔がパチュリーの前に現れた。
つまり、本が奪われた。

 パ「…返して、とは言うだけ無駄かしら?」
当然、と答えてから、
 咲「あなた食事中でも本読むしね。
  この本は食事が終わるまで没収。」
 パ「何の権限?」
 咲「私の力の顕現よ。」
 パ「横暴。」
 咲「残念、わがままを言ったのはお嬢様。
  文句はあちらに直接よろしくね。」
 パ「…わかったわ、降参よ。」
身振りのひとつなく、パチュリーが答えた。

 パ「それじゃ食堂に行けばいいのね?」
言いながら近くにあった本を手に取る。
 咲「…馬鹿にされているのかしら?」
その問いかけに、本を読む彼女は答えなかった。
即、没収。
 パ「何するの?」
 咲「私が間違っているとでも?」
言って、咲夜は本を、やたら薄っぺらい本をパチュリーに押し付けた。
 咲「本を持っていないと落ち着かないなら、これを持ってなさい。
  食事中は読みたくないでしょうから。」
パチュリーが本に目をやると、どうやらタイトルに綺麗な花の名前が使われているようだった。
開いてみた。
 パ「……。」
閉じた。
 
 咲「じゃ、私は行くわよ。」
分かりやすく顔色の変化したパチュリーに背を向けて言う。
 パ「こんなの、食事中でなくたって読まないわよ。」
 咲「あ~あ、まだこれから準備があるのよね。」
 パ「っていうか、何でこんな本持ってるのよ?」
 咲「今度ここも掃除しなくちゃね。まあ急がなくてもいいけど。」
 パ「しかも『咲夜×レミリア』ってどういう意味よ。」
 咲「そうそう、早く行きなさいよね。
  珍しくお嬢様が首を長くして待ってるわ。」
それだけ言って、メイド長は食事の支度に戻っていった。
 パ「…ふぅ。…まあ、行こうかしら。」

ドアの前まで来て振り返り、沢山の本を見る。
 パ「……。」
なぜだか今は読書を再開する気にはならなかった。
 パ「まあ、たまには、『お嬢様のご友人』らしく振舞ってみようかしら。」

静かにドアが閉まって、図書室から音が消えた。
パチュリーってどんな風に「お嬢様のお友達」なんでしょうね?
自分の書くものは一切他の知識が絡んでこない、読んでうれしいものなのか分からない気がします。
関係ないですが、ルーミア熱が上がってきました。
誰か助けて。(笑
たま
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コメント



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1.50ななし削除
読んでうれしいというか、雰囲気に浸りつつクスリと笑えるいいものだと思います。