〜引き続き茶店にて〜 早苗「――とは言ったものの、私たちだけじゃ話が迷走してしまいそうですね」 布都「ふむ、確かにな。親睦会という名目とはいえ、会談ではあるから進行役がほしいところだ」 星  「となると、どなたかを呼ぶしかないですかねぇ」 早苗「でも、長時間の会談となるとそれが出来る方は絞られちゃいますね」 布都「咲夜や妖夢や鈴仙は忙しそうだしのう。屠自古……も纏めるのには向いておらんし。いつぞやの因幡てゐもそういうことはやってくれそうに無いしな」 星  「ナズーリンもそういうのはあまり得意ではないですねぇ。お燐さんぐらいでしょうか」 早苗「やっぱりお燐さんを呼びますか――」 ??「あれー、山の上の早苗じゃない。何やってんの?」 早苗「えっ?」(←振り向く ??「それに、寺のご本尊さんに、え〜と……誰だっけ?」 早苗「はたてさん!」 はたて「やほ。こんなところで会うなんて奇遇ねー」 星  「貴方は……以前取材に来た鴉天狗の方、でしたか」 はたて「そうそう、姫海棠はたてよー。きちんと挨拶するのははじめてかな。えーと、寅丸星さんよね」 星  「ええ、そうです」 布都「二人とも、知り合いか?」 星  「ええ……と言っても、私は軽く取材されただけですが」 早苗「妖怪の山にお住まいの鴉天狗の方ですよ。『花果子念報』という新聞を作っているそうで」 布都「では、こやつも妖怪か! ……まあ、此処は抑えておこう。して、鴉天狗が何用か」 はたて「ああ、それは……って、ええと?」(←布都を指差しながら早苗のほうを向く 早苗「こちらの方は物部布都さんといいます。最近復活なされた古代人の方ですよ」 はたて「あー! そういえば御阿礼の子が書いてたわねー! お初にお目にかかるわ。姫海棠はたてよ」 布都「うむ、物部布都だ」 星  「早苗さんは、はたてさんとは親しいのですか?」 早苗「ええ、まあ、同じ山に住んでますので、何度もお会いしてますよ。一緒に出かけたりもしますし。はたてさんはどうしてこちらに?」 はたて「うーん、文の新聞を出し抜くにはどうすればいいかなって思ってさ。ちょっと考えてたんだけど、巧い考えが纏まらなくて、休憩がてら甘いものをね」 早苗「そうでしたかー」 はたて「早苗たちはどうしてここに? こんな割と大物が揃ってるみたいだけど」 早苗「それがですね……(少女説明中)……というわけでして」 はたて「へー……あ、そうだ」 布都「?」 はたて「だったら私が取り持ってもいいよ。私は確かに妖怪の山の所属だけど、三人のところからは中立だもの。話を進めるにはもってこいだと思うけど」 布都「出来るのか?」 はたて「任せなさいよ、私はこれでも新聞記者の端くれよ。どういうことかを纏めるのは得意だわ」 星  「それは頼もしい限りですが……」 はたて「もちろん、条件はあるわ。貴方達の会談内容を纏めて記事にしたい」 星  「記事……ですか?」 はたて「面白そうじゃない。幻想郷の名だたる組織の幹部達が会談なんて、丁度いいネタだわ」 早苗「どうしましょう?」 星  「う〜ん」 布都「……」 はたて「ね、お願い。記事を出す前にはちゃんと見せるからさー」 布都「よし、よかろう。妖怪に太子様の徳を示すよい機会だ」 星  「ちゃんと見せてくださいよ? 勝手に出したりしないでくださいよ?」 はたて「勿論! それは約束するわ」 星  「分かりました、それでは諾、とします」 はたて「決まりね!」 早苗「場所は此処でいいんですか?」 はたて「別にいいでしょー。名目は懇親会なんでしょ? だったらこういうところのほうがいいわ。それに私、まだ甘いもの食べてないのにー。     ほらほら、ちゃっちゃと始めるわよー。――あ、すいませーん、こっちにパフェもう一個ー!」 早苗「あ、じゃあ私も紅茶お代わりお願いしまーす!」 布都「やれやれ、元気であるな。おーい、すまぬが、我にも緑茶をくれー!」 星  「布都さんもね(笑)じゃあ、私も緑茶お願いしまーす!」 〜と、いうわけで〜 はたて「(はむはむ)それで、まずどんなこと話すの?」 星  「そうですね……聖たちの会談では自己紹介から始まったみたいですが……なにがいいかしら」 早苗「魔理沙さんの話では、『新勢力は幻想郷に何をもたらすのか』という題で、神奈子様たちに自由討論していただいたみたいですね」 はたて「いきなり自由とか、あの人間らしいわねー。じゃあ、こっちも倣って適当に話を広げてみようか。そうね、大体は『自分の勢力をどう思ってるか』とかね。     加えて、どんな立場かをちょっと。あと一応名前も付け加えてくれると嬉しいな」 布都「ふむ、では我から行こう。我は物部布都。太子様が率いる集団――まあ、そちらの二人の『守矢神社』、『命蓮寺』に倣って仮に『仙界組』としておこうか――にて、     道士をしておる。太子様の廟を守っていた近衛大将とでも思ってくれればよい。     暫く前までは、太子様は幻想郷に為政者がおらぬことを不思議がっていたが……今はそうでもないな。     会談とやらで何かお気づきになられたのであろう。それに関して、我は特に思うことは無いな。太子様の御心に従うまでよ」 はたて「ふーん、忠実ねー。じゃあ、あなたも妖怪に関して、考えを改めたの?」 布都「そこは変わらぬ。太子様は先日、命蓮寺の僧と語り合って少し変化があったようだが、元々人間は妖怪を恐れているものだ。本来ならば、お前に対してこのように話すことも無いであろう。ただ、場所が場所であるし、我とお前が此処でやりあって穏便に済むとも思えぬ」 はたて「あーら、怖いのかしら?」 布都「我は恐れぬ。しかし、簡単に勝てるとも思えぬ。故に被害は里に拡大する。だからやらぬ」 はたて「ふーん……意外に突っかかってこないのね。妖怪相手には見境なくケンカ売るもんだと思ってたから。ふっふー、ちょっと見直したわ」 布都「我をなんだと思っておるのだ!」 星  「ま、まあまあ……」 早苗「阿求ちゃんがそう書いちゃってましたからねぇ……。気になるなら訂正に行ったらどうですか?」 はたて「あっはっはー(笑) それも踏まえて、ちゃんと記事にしてあげるわ。『物部布都、なかなか話の分かる奴!』って(笑)」 布都「ぬぅ、その阿求とやらとは、一度膝を突きあわせて話し合う必要がありそうだな」 早苗(丸め込まれなきゃいいけど) はたて「ま、それは置いといて、続き続き」 布都「調子のいいやつめ。……ゴホン。我はその考えは変えていないし、これからも変える事は無いであろう。     現にここにいる寅丸とも、集会では顔をつきあわせているが、馴れ合うという気は無い」 星  「さっきも言いましたけど、私は布都さんと仲良くしたいのですけどねー」 布都「仏教徒の妖怪などと馴れ合う気は無いわ。さっさと諦めるがよい。いずれは決着をつけるのだ」 星  「とほほ」 早苗(はたてさんはたてさん) はたて(なーに?) 早苗(あんなこと言ってますけどね、布都さんから突っかかりはしますけど、集まりでは二人ともよく話してるんですよ。主に討論になっちゃってますけど) はたて(へー、それはいいネタねー。好敵手ってヤツ? ふふっ、これはいただきだわー) 早苗(ええ、この辺はドンドン書いちゃってください(笑)) はたて(おっけー。こういうのっていい話になるのよねー。後で討論の戦歴教えてくれる?) 早苗(ええ、協力しますよ) 布都「何を話しておる?」 早苗「ああ、こっちの話です(笑)それで? 布都さんとしてはこのまま妖怪は退治するもの、とお考えですか?」 布都「無論だ。博麗の巫女である霊夢の行動も同じ原理だと聞いておるぞ。人間を守る立場である霊夢が同じ考えであるのだ。我も後れをとってはいられん」 星  「あれ? 私が聞いたのとはちょっと違いますね」 はたて「え、なにが?」 星  「霊夢さんとしては、妖怪は退治するものという行動で確かに動いてるみたいですけれど、聖からの話によると内心では人間も妖怪も平等だと考えているのでは、と」 はたて「へー、あの巫女がねー。結構デリケートな話題になりそうかしら」 布都「しかし、それだけでは確証が無いではないか」 星  「まあ、そうですね。しかし、神子殿が確認したところ、どうもその兆候はありそうだった、と聖が言っていたものですから」 布都「ふむ……太子様がな。そういえば、霊夢の幻想郷の平和を守る気持ちは強そうだと言っておったな。今度話してみてもいいかもしれん」 星  「その勢いで、妖怪とも誼を結んだりする流れになりません?」 布都「ならん」 星  「とほほ」     早苗「では、次は私が続きますね。東風谷早苗、守矢神社の風祝です。まあ、言ってみれば巫女ですね。     ですが、風祝は祀られる側の立場にも成ったので、それに連なる私も神の一柱とも言えましょうか」 はたて「ふーん、それで早苗も神様って言われてたんだ。普段なにやってんの?」 早苗「日々の御勤めと、家事ですかね。あとは人里でも布教しています」 はたて「あー、家事は大変そうねー。他の二柱の神様、そういうのに縁遠そうだし」 早苗「いえ、神奈子様はかなり料理お得意ですよ? 『素材を活かし、最上の調理をすることが農耕神としての嗜みよ』と言って、色々作るんです」 はたて「へー、意外ね。今度ご馳走になりたいわ」 早苗「いつでもいらしてください。神奈子様も振舞うのが好きみたいですし、妖怪の山の関係者の方がくるとなれば喜ぶでしょうから」 星  「あ、私もいいですか?」 布都「我も我も!」 はたて「うーん、白狼天狗たちが通してくれるかなー。加えて大天狗様も、通行料搾り取るくらいしないと通しそうに無いのよね」 星布『えー』 はたて「もー、白狼天狗たちも大天狗様もこういうことは頭固くてさー。実際ひっぱたいちゃったけど、ほんと固くてー。もっと余裕を持たなきゃいけないわよねー」 早苗「なんだかさりげなく凄い発言を聞いた気がしますが、それは置いといて。まあ、その辺はいつもの集会との兼ね合いもありますし、それで何とか」 はたて「しょうがないわね。椛辺り話が通じればいいんだけど。河童のにとり辺りに任せれば何とかなるかしら。――あ、そうだ。河童と言えばさ。     山の上の神様って河童使って何かやろうとしてたじゃん? アレ、どうなったの?」 早苗「ダムを作るという話なら失敗しました。河童の皆さんは技術力はあるのですが、集団作業には向かないらしくて……。     神奈子さまは何か新しく方針を考えることにしたみたいですよ」 はたて「あー、河童達って結構自分勝手だからねー」 布都「ちょっと待ってほしい。早苗、『だむ』とは何だ?」 早苗「えーっとですね、人工的に水を溜めておく大規模な施設です」 布都「ふむ、治水の一環か? それなら確かに大規模になりそうだな」 早苗「私も専門家じゃないので、詳しく説明できませんけど、そんなところだと思ってください」 星  「人工的に水を溜める、ですか……。そんなことしても大丈夫なんですか?」 早苗「外の世界では多いですよ。あ、でも、環境破壊がどうのこうのって話題にはなってた気がしますね」 はたて「人間も色々めんどくさいのねー。で、早苗は、そんな神様のことをどう思ってんの?」 早苗「もちろん信頼していますよ」 はたて「あら、言い切るわねー。早苗がそこまで全幅の信頼を置く神様が何者なのかも知りたいわー。普段何やってんの?」 早苗「そうですね、信仰を集めるために技術研究などなされていることが多いでしょうか。     神奈子様は色々と新しいことを試すのが好きなお方で、核融合発電なども試してらっしゃいました。     私もそういう話が大好きなもので、神奈子様が色々教えてくれたりもしますよ」 はたて「その一貫が、地底の地獄烏だっけ?」 早苗「そうですそうです。お空ちゃんにヤタガラス様を降ろして核融合を取り入れようとしたんです」 はたて「あー、霊烏路空ってやつねー。できればあいつにはもう会いたくないわー……。暑くて熱くて、こっちが焼き鳥になるかと思ったわよ……」 早苗「別に、常時熱を発してるわけじゃないですから、通常時の時に会ったらどうですか?(笑) 神奈子様たちとよく集まってるみたいですし」 はたて「そっか、それならまた会ってもいいわね。次はそっちに聞きに行くのもいいかなー」 布都「うーむ、なんだかよく分からん単語が飛び交っていて理解できぬな……」 はたて「まー、外の技術でも出来ないとかいう話だからね、核融合ってやつは。その辺も含めて、地獄烏に取材取材っと。詳しく話聞いてないから、どんな奴か気になるわー」 星  「聖に聞いた話から推察しますと、その霊烏路さんはなにやら茫洋とした御仁らしいですね。     何も考えていないように見えるときもあれば、とても深く物事を察しているように見えることもある、     感情豊かに振舞いながら、何事をも受け入れる大きさを見せることもある、と……一度お会いしてみたいです」 はたて「へー、面白そうじゃない。取材するのは難しいタイプと言えるけど、これはやりがいあるわー」 早苗「うわー、凄い高評価。私、凄い失礼なこと言っちゃったけど、大丈夫かな……」 布都「ははは、早苗が勢いにつられて余計なことを言うのはいつものことであろう。そういう人間だと理解されておれば、それほどまでに器の大きな輩なら腹も立てるまい」 早苗「ちょっと、布都さん、それどういう意味ですか!」 布都「ふふん、事実であろう? 指摘されたくなければ反省するがよい(笑)」 早苗「うぐぐ」 星  「まあまあ……(苦笑)ああ、そういえば」 はたて「あら、まだ何かあるの?」 星  「ムラサから聞いたんですが、その霊烏路さんが間欠泉騒ぎを起こして、私たちの船が封印から解き放たれたという流れみたいですよ」 はたて「あー、そういう流れ? へぇ、意外なところで繋がってたのねー。じゃ、それも踏まえて次は貴方の自己紹介ね。     その後で纏めて、お互いどう思ってるかとか聞いちゃうから」 星  「では最後に私ですね。寅丸星、命蓮寺の僧をしておりますが、本尊代理も務めさせていただいております」 はたて「よく考えてみたら、貴方、別に妖獣だって隠してないのよねぇ。はー、こないだは気負いこんで損しちゃったわ」 星  「まあ、ここでは隠す必要も無いもので……(笑)もう片方の天狗の方から聞いていなかったのですか?」 はたて「文に聞くわけ無いじゃーん。商売敵にみすみす聞きに行くようなことしたら、またバカにされるわ」 星  「いえいえ、敵に学ぶことも重要ですよ。屏風のように腰が低く折れ曲がっているが故にしっかりと立っている、という言葉もあります。そもそも敵に学ぶというのは――」 はたて「あー、わかったわかった。今は取材させてよ、取材」 星  「おや、残念です」 布都「寅丸、お主意外と説教臭いのだな」 星  「そうですか?」 早苗「そういえば小傘さんに聞いたことがありますね。ぬえさんと一緒にいたずらしてたら、星さんにつかまって延々とお小言聞かされたって」 星  「あ、あーれーはー……ま、まあ、無かったとは言いませんが……(笑)」 布都「ほほう。にこやかな顔をしてはいるが、その実、坊主らしく説教をしているのだな」 星  「むっ、そういうのが僧のあり方ではありませんよ、布都さん」 布都「では、きちんと坊主らしく振舞わねばな。まさか、他の小僧に対して説教をするだけではあるまい(笑)」 星  「……。ふ、ふふふふふ……」(←くぐもった笑い はたて「ん?」 早苗「あ、あのー、星さん?」 星  「……いいでしょう、布都さん! 命蓮寺の僧として、仏法についてきっちりとお説教して差し上げます!」(←席を立つ 早苗「ちょっ!?」 布都「おう、そう来なくてはな! よし、我が物部の神事と道教についてみっちりと教えてやるわ!」(←同上 はたて「ちょ、ちょっとー、今取材中よー!?」 布都「構わぬ! この結果を書けばよい。さすれば我らの正しさが知れ渡り、お前も記事が書けて一挙両得というものだ」 星  「望むところです! 私とて遅れを取るつもりはありません!」 早苗「ダメですー! こんなところで暴れたら、また霊夢さんに怒られますよー! 私たちの勢力代表の御三方が怒られたの知ってるでしょー!」(←二人の裾を掴む 星  「う……」 布都「うっ……」 (二人とも腰掛ける) 星  「すみません、取り乱しました」 布都「我も少しばかり挑発しすぎた。すまぬ」 早苗「わかってもらえて何よりです……」(←ほっと一息 はたて「あー、びっくりした……。ご本尊さん。貴方、結構、激情家なのね」 星  「えーと、それは面目ない……」 はたて「まあ、店内騒がしかったから、今の騒ぎ気付かれてないみたいだけどさー。あまり騒ぎになってこっちの記事がおじゃんになっても困るのよ。お願いね?」 星  「申し訳ありません……」 早苗「布都さんもですよ」 布都「むむ、あいすまぬ」 はたて「じゃあ、気を取り直して。じゃあ、普段はなにやってるのか聞かせてもらえる?」 星  「ああ、はい。といっても、あまり特筆するようなことはやってないんです。責任者は聖ですから、私はその補佐。     まあ、一例として、聖が寺を空ける時は代わりに私が責任者をするとか、聖と一緒になって読経をするとかですね」 はたて「本当に特に何も無いのね。その聖って人はどんな人?」 星  「一言で言えば、慈愛に満ちた人物ですね。ただ、少々頑固なところがありますので、中々融通が利かない面も持っていますよ。     どちらかといえば妖怪に支持される立場ですが……人間の方にも信者はおられるようですね」 はたて「ふーん。貴方はご本尊さんなんだから、積極的に信仰を集めるとかしないの?」 星  「と、言いましても、元々僧というのは修行が主ですからね。もちろん周りの方々の要望には色々とお応えしていますが、積極的に何かをするということは無いですね」 はたて「なるほどね。結構受身なのね」 早苗「あれ、そういう意味では布都さんの言う道教と似てません?」 布都「蕃神と一緒にされるのは愉快ではないが、まあ、否定し切れない部分もあるな」 星  「元々仏教は、生の苦しみから解放されること、つまり解脱することを目的としています。その意味では布都さん達が行っている修行に近いものがありますね」 布都「うむ、我や太子様は修行することによって不老不死を目指している。それを置き換えてみれば、仏教の解脱と近いものがあるとも言えよう」 早苗「へぇ〜っ」 はたて「あんたらそういう話もちゃんとできるのね。ケンカなんてしないで、そのまま問答すればいいんじゃん?」 布都「問答はしておる。決着がつかぬだけだ」 早苗「集まりでたまに問答する時は、咲夜さんとか妖夢さんとか鈴仙さんとか私とかお燐さんとか全然ついていけてませんからね。完全に二人の世界ですよ」 はたて「あら。二人の世界とか、言葉だけ聞くとロマンティックね〜」 星  「まあ、実際はついついやりあっちゃうだけなんですけどね」 布都「屠自古やこやつの使いに止められることもしばしばでな。……というか、早苗。お主がついていけてないのは問題があるだろう」 早苗「さ、流石に私は仏教や道教には詳しくないですから……」 布都「元々道教は我らの国の信仰と近いものがあるからな。ただ、後世、中臣家によっていろいろと変えられてしまったもの神道が大和の神事として残っていたようだが……。    とはいえ、祭祀は各地方によって色々と異なっていたがな。早苗、お主のところも中央とは違う神事があったはずだぞ」 早苗「ええ、ありましたね。ただ、それは私は完全に受け継いだわけではないので……」 布都「まあ、今はそういうものがあったとだけ思ってくれていればよい。我が物部の神事は、中央の大王に受け継がれていた。     天照國照彦天火明櫛玉饒速日尊が神日本磐余彦尊に受け入れてもらった証であったという話だが、お主の時代まで続いていたかは……分からぬか」 早苗「流石にそれはちょっと……」 星  「信仰の形というものは色々変わってしまいますからね。仏教も元々はこの国で信仰されているものとは全然違いますから」 はたて「仏教も結構古いのよね?」 星  「ええ、斯帰斯麻天皇の代に渡ってきたのがこの国では初といわれていますね。この時に、蘇我氏と物部氏の争いが起きたと言われています」 早苗(誰だっけ……(汗)) 布都「その時は戦争までには発展しなかったのだがな。まあ、信仰による争いの種は尽きぬということだ。純粋な意味でも、俗にまみれた事情という意味でもな。     こういった事情を踏まえても、早苗が余り寺組に対して強気でない辺りは気になるが」 早苗「確かに私も信仰を集めてはいますけど、他宗教を認めないっていうスタンスじゃないですからねー。八坂様、洩矢様を信仰していただければいいのであって」 星  「複数の信仰、ということですか?」 早苗「え? うーん、そうなのかな? 別にあっちの誰かを信じてるから、こっちの誰かを信じちゃいけないってことは無いわけですし……あ、じゃあ、やっぱり複数の信仰って形なんですかね」 布都「ふむ、なかなか面白い見解だな。国神も蕃神も等しく大八洲の神ということか。確かに、この『ちょこぱふぇ』とやらを食うためにさっきの『いちごぱふぇ』とやらが食えなくなるのは避けたいしなぁ」 星  「よく食べますね……」 布都「寅丸に言われたくないわ」 早苗「えーと、まー、よく分からないですけど、日本っていろいろなもの受け入れてきた国じゃないですか。そういうのも関係あるのかなーとか」 はたて「なんだっけ、遠い国には『我以外を神と崇めるべからず』とか言ったのがいたんだっけ? そういうのとは正反対って事よね」 星  「そもそも八坂様と洩矢様という二柱の神がいらっしゃるわけですからね。早苗さんからそういう発言が出てきたのも分かる気がします」 はたて「早苗ってそういうところドライよねー。まあ、そこがいいとこなんだけどー。そういうのが現代っ子ってとこなのかな」 早苗「ちょ、ちょっとはたてさん///」 布都「この国の神と人間は、垣根が低いからな。早苗も神ということだが、基本的には人間だ。逆に言えば、双方の視点が見られるという、面白い立場の人間とも言えるな。     いやあ、これは大いに見直したぞ、早苗。弟子のままにしておかなかったのが惜しいくらいだ」 星  「なるほど、祀られる風の人間は伊達ではないということかしら。それで、毘沙門天の宝塔で照らしても間違っていなかったということだったのですね。お見事ですよ、早苗さん」 早苗「もう、お二人まで!」 布都「ははは、頭では分かっていても、やはり、改めて言われると感心したくなるものでな」 星  「ええ、何かこちらも嬉しくなってしまいまして」 はたて「あっはっはー、年長者に褒められてるんだからさー、喜んでいいのよ、早苗ー(笑)」 早苗「えーっ、そういうものなんですかー!?」 3人『あはははは(笑)』 (会計後・店の前) はたて「――じゃあ3人とも、お疲れさまー」 布都「うむ、遠慮なく記事にするがよいぞ」 早苗「でも星さん、いいんですか? お金払ってもらっちゃって……」 星  「いいんですよ、殆ど食べてたの私ですから」 はたて「悪いわねー、今度山の幸お礼に持ってくわー」 星  「それは楽しみにしていますよ」 布都「さて、我はそろそろ帰らねばな。――寅丸、次こそは決着をつけてくれようぞ」 星  「えーっ、さっきのやり取りで和解したんじゃなかったんですか!?」 布都「そんなわけなかろうが。それはそれ、これはこれ、だ。和解など無いものと知れ」 星  「そんな殺生な」 布都「情けない声を出すでないわ。――早苗」 早苗「あ、はい」 布都「今日は『ぱふぇ』とやらも美味かったし、面白かった。次の集まりも楽しみにしておる。ではな」(←撤収 はたて「彼女、言いたい放題言って帰ってったわねー」 早苗「いつもあんな感じですよ」 はたて「ふーん。でも、何か少し早苗に似てるわね、彼女」 早苗「えー、そうですか?」 はたて「うん、親戚なんじゃないの、ってくらいに(笑)」 星  「あはは。……さて、それでは私もこれで。皆待っているでしょうし」 はたて「じゃーねー」 早苗「ではまた、お会いしましょう」 星  「ええ、それでは」(←撤収 はたて「早苗はどうするの? もう帰る?」 早苗「私は最後にちょっと寄ると頃があるので、少し残ります」 はたて「そ。じゃあ、私帰って草稿書き上げるね。記事を楽しみに待ってなさい」(←撤収 早苗「頑張ってくださいね〜。……さて、私も最後のお使いしないと」 ??「――……で、やっと終わり?」 早苗「えっ? ――れ、霊夢さん!?」 霊夢「なんとなく買出しに来てみれば、茶屋であんたら3人が集まって何事か話してるから、何か企んでるのかと思ってずっと見てたわよ。途中で天狗まで加えちゃって」 早苗「あ、あの、これは……(汗)」 霊夢「で、途中であの寅の妖怪と尸解仙がケンカし始めたから、ぶっ飛ばしてやろうかと思ったけど――」 早苗「え、ええと、その……」 霊夢「――早苗が必死で止めてたから、今回は見逃してやったわ」 早苗「ほへ?」 霊夢「別に今日は依頼で来たわけじゃないし、何事もなかったからね。だったら一々とっちめるまでもないわ。それにあの寅の妖怪とっちめたら何か悪いこと起こりそうだし。     ……でも、これ以降何か起こしたら、あんたでも容赦しないわよ。だからちゃんと止めることね」 早苗「は、はい!」 霊夢「素直で宜しい。それじゃ、私は帰るわ。まあ、あんたもたまにはウチに来なさいよ。分社もあるんだし。じゃ」 早苗「霊夢さん」 霊夢「なに?」 早苗「やっぱり霊夢さんは、妖怪の方は皆退治退治するべきだって思っているんですか?」 霊夢「何かと思えば。ノリノリで妖怪退治してたやつの言う台詞とは思えないわね」 早苗「え、えー、と、そのー(汗)」 霊夢「(ふぅ)……神奈子や白蓮や神子に何を吹き込まれたのか知らないけど、私は別に退治以外の方法を考えるつもりは無いからね。     あんたは影響されやすいんだから、ちゃんと自分で考えなさいよ。信仰の事とか考え方はしっかりしてるんだからさ。じゃ」(←撤収 早苗「霊夢さん……」 (暫く後、5ボス会in守矢神社にて) 咲夜「――ふーん、そんなことがあったのね」 お燐「こりゃ惜しかったなー。面白い話が結構聞けたかもしれないのに。もー、誘っておくれよー」 星  「あはは、すみません(笑) そろそろはたてさんが記事にして発信するころなので、詳しく載ってると思いますよ」 鈴仙「草稿はもう上がってるの?」 早苗「ええ。私も確認しています。きちんと纏まってましたよ」 布都「我も見た。まあ、なかなかの記事であったといっておこう」 妖夢「でも、星さんも激昂したりするのね。いつも温厚だから、意外だったな」 星  「いやはや、お恥ずかしい……」 咲夜「あら、そういうほうが結構親しまれるものよ? お嬢様も感情表現豊かだから、慕う者は結構いるわよ」 妖夢「そうですよ。私も親しみが湧いてきましたし」 鈴仙「あら、今までは疎遠だったのかしら?」 妖夢「え、あああ、いや、そういうわけでは……」 鈴仙「冗談よ(笑)」 妖夢「もう!」 お燐「あははは、兎のお姉さんが弄り役とは珍しいねぇ(笑)」 鈴仙「ちょっと、私が弄られ役みたいに……」 早苗「あはは(笑)」 ??「ごめんくださーい」 布都「うん? 客か?」 早苗「あ、はーい」 はたて「お待たせー、記事できたわよー」 布都「おお、ようやくか!」 咲夜「あら、いい見出しね。どれどれ――」 ――はたての記事はそれなりに好評で、守矢神社、命蓮寺、仙界への信仰が少し増えたとか。    次は5ボス皆を記事にしてもらおうか、と考える皆でありました。 〜END〜