雲すら同じ高さを漂う天の世界、その上で今二人の少女が戦っている。 「さあ、来なさい巫女ォォォ!! 実は私を倒すのに何か特殊なアイテムは必要ないわよぉぉ!!」  叫びながら、手に持った剣を振り回す、桃付き帽子をかぶった青い髪の天人、天子。  薙ぎ払いで針弾を生成と同時に飛ばして、少し離れた所で攻撃を避け続ける紅白の巫女、霊夢へと攻撃を加える。 「おらぁ!!」  また叫び、今度は極太のレーザーを剣先から発射して。 「くっ!!」  間一髪でそれを避ける霊夢、すぐ横を通り抜けていく光線を一度見る。 「勝ったッ! 死ねぃ!!」  その隙を、射撃を影に近づいて来ていた天子につかれた。完全に回避不能のところへ、無慈悲な振り下ろしが。 「ッ!?」  その霊夢の姿を、するっと通り抜けた。  天子の目は捉える、己の横を通り抜ける軌道の、無数の霊夢の残像を。その軌道の先を。 「あんたのおかげで、この私も哀しみを背負うことができたわ……!!」  それは、天子の無防備な背後へとするりと回り込む軌道。天人の力をもってしても完全不可視の動きで、霊夢はそこに立っていた。 「――ッ!!」  慌てて振り向こうとする天子。しかし、無情なるスペル宣言が響き渡り。 「はぁぁ……!!」  霊夢の周りに、合計七つの陰陽玉が出現した。 「余裕のつもりか!」  しかし、すぐさま来ない攻撃。絶体絶命のピンチを逃れた天子が、振りむききって剣を振りかぶる。 「これは……壊れた家具の分!」 「ぐぅ!?」  そこへ、霊夢の拳が何よりも早く天子の体に突き刺さっていた。 「これは、ダメになった食料の分!」 「うぐっ!?」  二発目。三発目。 「これは、洗濯するはめになった衣類の分!」 「ぐぁ!?」  四発目。  続けざまに、五発目、六発目が入り。 「そしてこれは、あんたによって神社を失ったこの私の……私の怒りだぁぁ!!」  振りかぶって渾身の七発目が入り。  スペルの発動条件を満たした、七つの陰陽玉が眩いばかりの光を放ち始める。 「はぁぁ!!」  そして、気合いの叫びと共に、霊夢の上衣が溢れ出た霊力で弾き飛ぶと、サラシ一枚の上半身が露わになった!! (BGM:東方妖恋弾) 「はぁぁ――っったったったったぁあぁぁぁぁぁぁ!!!」 「〜〜〜〜〜ッッ!?」  霊夢の拳が無数に飛び、突き刺さり、更に周囲の陰陽玉からも針、符、捉えきれない、数え切れない無数の攻撃が飛び、全て天子へとぶち込まれていく。  これが、これが!! 「おーぁああったぁぁ――!!」  止めとばかりに放った蹴りが深く突き刺さると、発動したスペル名の宣言が響き渡った。 『 夢 想 天 生 』  最後の蹴りで、後方へとぶっ飛ばされながら、天子が断末魔の叫びを上げる。 「馬鹿な!? この私が! 比那名居天子が! こんな巫女なんぞに――ッッ!!」  ずざぁっと、背中から着地すると。 「ばわっ!!」  盛大に口から血を吐きだし、がくっと意識を落として、気絶した。 「あんたには、その醜い死に様がふさわしい……」  霊夢は倒れた天子へくるりと背を向けると、そう満足したように言い放つ。  FATAL K.O.であった。  その戦いを、隙間から覗き見ていた紫が、難しい顔でぽつりと呟く。 「夢想天生ってあんな技だったかしら……」