初めに、これはプロポーズスレ>>530-531の話に僕が勝手に続きを書いたものです。 人様の作品に勝手にアナザーを書くのはどうかとも思いましたが。 ぶっちゃけ、鈴仙のこのシチュエーションじゃないと僕の力量じゃアイデアを生かしきれませんでした。 よいきっかけを下さった530様に感謝しつつ。 >>530-531から続く。 あれ以来、僕が鈴仙の裸を見てしまってから、 なんと! 前以上に鈴仙に声をかけてもらえるようになった!! 朝、廊下ですれ違う。 「おはよう、ヘンタイ」 乾いた笑顔がまぶしいぜィェァ! あれ? 永琳さんのお手伝いで鈴仙と一緒に薬草を探しに行った時も 一歩後ろを付いてくる鈴仙が突然つぶやいた。 「スケベ」 思わず振り返るとジト目で言われた。 「なに、盗み聞き? サイテー」 チキショウゥゥゥ 僕は涙を拭きながら駆け出した。 確かに悪いのは僕さ、でも、だからって、こんな扱いされるなんて…… 僕が他の人といるときは鈴仙も普通だった。 ウサギたちと一緒に長い廊下の掃除をしていたときは 「お掃除ご苦労様です。がんばってくださいね」 と最高の笑顔で言われた。 ウサギたちはそれぞれの持ち場へ掃除をしに行く。 僕は鈴仙の笑顔のギャップに見とれその場でポカーンとしていた。 鈴仙に睨まれてあわてて動き出すが、足元のバケツを引っ掛けてこぼしてしまった。 うあぁぁしまった、廊下が水浸しだ。 手持ちの雑巾だけじゃ拭ききれない、新しい雑巾はどこ…? 僕がおろおろしていると僕の視界が急に暗くなる。 後ろから顔を覆うように頭に雑巾を載せられた。 「バーカ」 そう言ってすぐに背を向け歩いていく鈴仙。 「まって! 鈴仙、わざわざ僕のために雑巾を持ってきてくれたの?」 「そんなわけないです。自意識過剰はキモチワルイ」 く……それ今迄で一番グサっときた。 でも、なんだろうこの気持ち……僕は内なる自らの新しい感情の芽生えを感じていた。 「ありがとう、鈴仙」 素直に礼を言ってみた。 「n……えと……な、なにまじめにお礼なんて言っちゃってるんですか? ヘンタイの癖に  いまさら遅い。信じられない、アリエナイ、変人、サディスト、マッド、ひきこもり、存在感  薄、嘘つき、変な髪形、えーっと、あと、とにかく……エッチ!」 顔を真っ赤にして、耳をピンと立てて怒る鈴仙。 そしてそのまま行ってしまった。 「僕はMなのかもしれない」 そう思った、だって今の鈴仙がたまらなく可愛い…… 鈴仙に冷たくされて、嬉しくなって礼を言って、 鈴仙がよけい顔を赤くして取り乱すという僕的素敵ワールドが何度も繰り返された。 まぁ、鈴仙にとっては楽しいものではないだろうが 心なしか前よりもっと頻繁に鈴仙に声をかけられるようになった気がした。 そんなある日、永琳さんから話があると呼び出された。 永遠亭の奥の部屋に入ると永琳さんが座して僕を待っていた。 僕も永琳さんの目の前に座る。 永琳さんは微笑むと僕にお茶を出してくれた。 「お茶をどうぞ、ヘンタイさん」 !! 「これはこれでアリだ」 僕が親指を立てると永琳さんはあきれた表情で言った。 「あらあら、本当にヘンタイなのかしら。まぁいいわ。今日の話はそれとも関係があるのよ」 言いながらしぐさで僕に茶を促す。 素直に飲む。 うぇ、つーんて、辛くてしょっぱい、涙出る。 永琳さんはニコニコしている。 やっぱりこういうのは嫌かも……でももしこれが鈴仙なら…… 僕に塩わさび入り緑茶をだしてニコニコしている鈴仙を思い浮かべる。 うん、悪くない。 ということは僕はただのヘンタイではなく、鈴仙だから…なのか? 「最近、鈴仙と仲がいいみたいね」 「いえ、いじめられています。自業自得では在るのですが。」 「でも、その前はほとんど口聞いてもらえなかったんでしょう?」 「それは、確かにそうですが…」 永琳さんは少しまじめな顔をしていった。 「何が自業自得なのかは聞かないで置いてあげるけれど、ね。それよりも、あの娘の過去は聞いている?」 「月から逃げてきた、という話は噂で」 「そう。彼女は月につらい想い出がある。そして、あなたをみるとそれを思い出す。あなたが来たばかりの頃はそう言っていたわ」 「それは俺が…」 「外から来た人間だから、でしょうね」 「俺は知らない間に彼女に嫌な事を思い出させていたのか…」 「でもね」 そう言ってから一呼吸おくと、永琳さんは自分のお茶を飲んだ。 あ、顔をしかめた。 自分でも味が気になってたのか、チャレンジャーだなぁ。 「鈴仙が過去を思い出すのは何もあなたのせいだけではないわ。とくに、この間の花の異変から時々  難しい顔をしてふさぎこむ事もあったのよ。けれど最近は吹っ切れたみたい。それはきっと、あなたに関係がある」 永琳さんはそう言って俺の瞳を真っ直ぐに見つめてきた。 吸い込まれそうになる、俺の心を見透かされているようで。 そして永琳さんは微笑んだ。 「だから、あなたにお礼を言おうと思って。鈴仙を元気付けてくれてありがとう」 「でも、僕、嫌われるならまだしも……信じられません」 「ふむ」 永琳さんはあごに手を当て考えるしぐさをする。 「盗み聞きをしているてゐ、あなたはどう思うかしら?」 バタンと音がしてふすまが倒れ、アハハと愛想笑いをするてゐが現れた。 「そ、そうですね……確かに鈴仙は最近あなたの話ばかりしています」 え……俺の脈が速くなっていく。 「あ、そういえば昨日も……」 てゐは急に瞳を潤ませ、しなしなと壁にもたれかかった。 耳をパタッと倒し髪を指に絡ませながら真っ赤な顔で言った。 「私、あの人のことを思うと……ウサウサが止まらないのっ!!1!1  ……って鈴仙がいってましたよ?」 「ウサウサ!?」 ドキンと一つ僕の心臓が跳ねた。 我ながら分かりやすいと思った。 いつのまにか、僕は本気で鈴仙に惚れてしまっていたらしい。 「僕、鈴仙に会って来ます」 「そうね。いってらっしゃい、後悔のないように」 立ち上がり、永琳さんに礼をしてから部屋を出た。 「ところでてゐ、ウサウサって何?」 「嘘です、たきつけたら面白そうだったのでつい」 「……。私もウサウサがとm」 「やめてください(笑顔)」 永遠亭の外、竹林で鈴仙は竹の間から細切れに見える青い空を見ていた。 風が吹く、何かに耐えるように自らの両肩を抱く鈴仙。 冷たい風じゃない、ならばきっと耐えているのは感情の波だろう。 声をかけようとすると、彼女が何か独り言をつぶやいた ……。 それは僕の名前だった。なぜ? やっぱりてゐの言ったとおりなのだろうか。 声をかけるのがためらわれる。 もしこのまま彼女を放って置いたなら あがなえない内なる激情の渦に耐え切れなくなった彼女は ついうっかり僕が見ていることも知らずにウサウサするのだろうか見たい見たい見たい。 じゃなくて。 「鈴仙」 暴走したのは僕自身の心。それを抑えて声をかけた。 「な、なんのよう?」 一人で物思いにふけっていたところを見られたためなのか、鈴仙の反応はぎこちない。 いつものようにいろいろ言われる前に俺はすばやくその場に膝を付いて頭を下げた。 「この間はごめん! わざとじゃないんだ、って言っても鈴仙に嫌な思いをさせたのは事実だし、どんな罰でも受けます。  だから本当にごめんなさい!」 は? 馬鹿じゃないの? そんなんで許されるわけないじゃない。 罰を受ける? なら、今すぐ私の前で逆立ちしながらえーりんえーりんしてもらおうじゃないの! スッパで! 「お代官さまそいつぁ無茶だ」 「??」 あれ、予想した返事が来ない。 「御免忘れて」 もう一度頭を下げる。 「べつに……」 鈴仙はうつむいて、小声で答えた。 「べつにこないだの事はもういいの。あんなの、てゐとか師匠にはよくやられるし……、ただ、ちょっとドキドキしたって言うか…」 「え?」 予想外の答えに俺が顔を上げると、鈴仙と目が合った。 かぁぁぁぁっと鈴仙の顔が赤くなる。 「ああああやっぱりダメ。許さないヘンタイ、スケベ! あなたなんて大っ嫌いなんだから!!」 ぷいっと横を向く鈴仙。 その兎さ耳は中に「の」の字を書いていた。 だから僕は言った!! 「でも、僕は鈴仙が大好きだ!」 「!!」 鈴仙の耳がピンと伸びる。 「ほ…本気、なの? へンタイの癖に…」 「こんなの冗談じゃいえないよ、鈴仙、君が可愛すぎるから、どうしても君のことを考えないでいられない」 俺は一歩近づいた。 鈴仙は動かない。 「ア、アブナイ人?」 「うん、そうかもしれない。僕はもう君の瞳に魅入られてる」 もう一歩近づく。 鈴仙はその場で横を向いたまま緊張してカチカチになっている。 あぁ、今すぐ鈴仙を抱きしめたい、けれど僕はまだ許してもらっていない。 今そんな事をしたら鈴仙は逃げてしまうだろう。 僕は再び頭を下げ手を差し出した。 「もし許してくれるなら、僕を受け入れてくれるなら、どうかこの手をとってください」 そのまま、少しの時が流れた。 不意に、鈴仙の緊張が緩んだ。 はぁ、と何かを決心するため息を付く。 そしてまだ頭を下げている僕のほうを向いていった。 「やっぱりあなたは馬鹿です。あなたをみて過去の重罪を思い出してた私まで馬鹿みたい。でも」 そう言って彼女は僕の手をとってくれた。 「あのとき、あなたも必死で生きているんだなって思いました。些細な事で、私にとっては重大問題だけど、  一生懸命になったあなたがなんだか可愛くて…それで、えっと…その…ほら、よく言うじゃない。  好きになった子ほど苛めたくなる…って」 好きと、確かに鈴仙は言ってくれた。 「僕も、鈴仙にならもっと苛められたいかも」 俺は鈴仙の手を引っ張ってその小さな体を両腕で抱きしめた。 鈴仙は抵抗しなかった。 「ばか…」 鈴仙はただ、俺の腕の中で小さくつぶやいた。 白くて細い指がぎゅっと俺を掴んで話さない。 「大好きだ、鈴仙」 「私も、あなたの事好きになりました」 end どうしても直視できなくて一部ネタに走った。 鈴仙にバカって言われたかった。