そういや別にまるきゅーじゃなくてもいいんじゃね?

作品集: 最新 投稿日時: 2012/04/01 23:45:32 更新日時: 2012/04/02 22:56:05 評価: 3/5 POINT: 26016127 Rate: 867205.07

 

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オリジナル
■ かわいい女の子だと思った? 残念咲夜ちゃんでした


 わりと知られていないことだけど、咲夜ちゃんはかわいいものが大好きなのー☆
 ちっちゃくてー、かわいくて、ぷりちーなのが好き。
 お嬢様のことももちろん大好き。だってかわいいもんッ(迫真)。
 でも女の子ならやっぱり愛でるだけじゃなくて愛でられたいなって思うの。
 自分が一番可愛くありたいなーってところもあって、愛でるより愛でられたいそんな年頃でもあったりするの。
 ハァ……。
 なんでだろ。
 現実って非情。
 どこまでもどこまでも非情。
 だって咲夜ちゃんはかわいい系というよりは美人さんなのだった☆
 いつのまにか紅魔館での役割も仕事のできるオンナとか思われてるみたいだし、周りを見てみたら、ロリなお嬢様方と、ロリな妖精メイドたち。ロリな小悪魔。
 これじゃあ、かわいさポイントで勝てるわけないの!
 下手するとロリ巨乳のパチュリー様にも病弱補正で負けちゃうの。病弱な女の子が涙目になりながら「ありがと。咲夜ちゃんいつもごめんね」って言ってるって想像すれば、かわいさのあまりに脳味噌爆発しちゃいそう。
 対するわたし。
 長身で、すらっとしてて、スレンダーで、涼しい色をした鋭いまなざし。
 年はまだまだ少女だけど、まとってる雰囲気は大人のそれ。
 くわえて地位も、メイドを統べる者としての責任があって、やっぱり大人ポイントに加算される。
 どんどん減ってるのは少女ポイント。
 メイド長メイド長とか言われてもぜんぜんうれしくないの。
 それどころか、お嬢様方やロリな妖精さんたちと違って、咲夜ちゃんは人間さんだからどんどんかわいくなくなっていくの。劣化していくの。売れ残りのクリスマスケーキになるの! 半額セールなの! 冬になってレイプ目な秋姉妹さんなの!
 ああ……!
 そうすると考えるまでもないことだけど考えなくちゃならない。
 紅魔館でかわいさポイント的に勝てそうなのは美鈴だけ。
 やだよう。
 咲夜ちゃんはかわいいもん。
 まだまだかわいいもん。

『かわいい女の子だと思った? 残念!咲夜ちゃんでした!』
 って誰かに言っても、
『咲夜ちゃんも十分ぷりちーだよ。その言葉、矛盾してるよ』
 って言われたい年頃なの。



 メイドやめちゃおうかなぁ。

















「すいません。メイド長」



 ハッ。
 いつものようにプライベートスクエア(咲夜ちゃんルーム)で、咲夜ちゃんモードになってたら、妖精メイドのひとりがドアをノックしていた。
 切り替え切り替え。
 咲夜ちゃんモードは人には見せられない禁忌の姿。
 普段のわたしは瀟洒で完璧なメイドなのだ。

「なにかしら?」

 ほらごらんなさい。
 妖精メイドの羨望と尊敬をこめたまなざし。
 でも、ちょっぴり妖精メイドさんかわゆいな抱っこしたいなーなんて思ってるのは内緒だ。
 断じてロリコンではない。
 わたしは純粋にちっちゃくてかわいいものが大好きなのだ。
 世に言う少女趣味なのだ。
 あーそれにしても妖精メイドさんって最高ッにかわゆい。
 子どもが背伸びしてるみたいでほほえましいし、やってることはお仕事だから妙に大人びたところもあるし、そのアンバランスさがたまらない。
 お持ち帰りしたいなー。
 咲夜ちゃんも妖精さんになりたいなー。
 咲夜ちゃん妖精になりたい。透明な羽を背中に生やして、月明かりのなかをぷわぷわと飛ぶの。
 ぷわぷわ。
 ぷわぷわ。

「あの? メイド長?」
「あ、ごめんなさい。ちょっとこのところ仕事が忙しくて、ぼーっとしてしまったわ」
「それはよくないわね!」

 後ろからの声に振り返ると、そこにはお嬢様が腕を組んで立っていた。
 ああ、お嬢様は今日もかわいかった。
 心底、お嬢様になりたかった。
 違う。
 わたしもかわいくなりたかったの。
 もっと等身短くてよいの。こんなひょろ長い体なんていらないの。
 お嬢様は咲夜ちゃんの理想体型。
 お慕いもうしあげます。心の底からあなたの奴隷です。主に少女趣味的な意味で。
 本当にお嬢様は少女趣味的な意味で完璧な存在だった。
 お人形さんみたいな身体に、フリル満載のお洋服。ときどき物を知らないのに知ったかぶりをしたり、廊下の何もないところで転んだときも、涙目になりながら『運命が私をもてあそんだか……』とか言って、悶絶級のかわいさだった。耳から脳汁でちゃうー☆って思ったほどだったの。
 せめてお嬢様にお近づきになりたいと思って、洗濯機の前で二時間ほど悩んだこともある。
 お嬢様の服さえ着れば、少女力がプラス100くらいはされるんじゃないかと思って。
 違うの。
 単純に着てみたかったの。
 ドレスを着て、裾をつまんで、えへへってはにかみたかったの。
 でも、絶対に似合わない!
 咲夜ちゃんはまぎれもない美少女なのだけど、ジャンルが違いすぎるの!
 スティーブンセガールとキアヌリーブスくらい違うの。
 ハァ……。
 ため息がまたこぼれちゃう。
 幸せさん、さようなら。

「本当に疲れてるようね」
「いえ。仕事に支障がでるほどではございません」
「ふむ……。今日のところは休んだら? あなたは人間なのだし」

 かっちーん☆ときた。
 確かにお嬢様のことはお慕いもうしあげているし、今の言葉もわたしのことを気遣ってのことだろうけれど、今は人間であることを忘れたかったのに!
 咲夜ちゃんは妖精さんなの!
 経年劣化する人間さんなんかとは違うの!

「取り消してください」

 気づいたら私のお口が勝手にすべっていた。
 つるつるりんって感じだった。
 なに言ってんの咲夜ちゃん!
 お嬢様のご不興を買ったら一大事。
 なんのかんのと言いつつも、ここは咲夜ちゃんにとって天国だ。
 なにしろ、周りはかわいい女の子ばっかり。
 その輪のなかになかなか加われないのが歯がゆかったりするけど、人里のむさい暮らしなんか絶対嫌なの。
 ここしか立場ないの。
 やばいやばい。どうしよう。
 お嬢様はわたしの不適切な発言にあるぇーって感じの顔をなされてて、そんなお顔もベリィキュート。
 ああ、でもここはしっかりしないとお暇をだされちゃう。
 えーっと。
 そ、そうだ。

「わたしは既に身も心もお嬢様にささげております。わたしは人間である前にスカーレット家のメイドなのです」

 お嬢様の驚いた表情。
 こんなんでどうかなぁ?
 お嬢様は幼げながらもカリスマぶって天使のような笑みを浮かべた。
 天使のような悪魔の笑顔。この館にあふれているよ。

「その言や良し。さすがはわが従者。いまのはわたしの失言だったわ」
「いえ。でしゃばりすぎました」
「でもね。わたしは本当に心配しているのよ。仕事が忙しすぎてあなたが倒れたとなったら、結局はわたしの支配不足ということになる。今日のところは休みなさい」
「ですが」
「これは命令よ」
「はい……」



 そんなわけで一時的に咲夜ちゃんは暇になってしまったのだった☆
 こまった。
 普段のわたしは一日二十七時間勤務の超過密スケジュールで働いている。女の子のきゃっきゃうふふな職場だけに、働けば働くほど元気になるという好循環だったんだけど、なにもするなとお嬢様に命じられればそうしなくちゃいけないの。
 こまったことに、それってけっこう難しいことなの。
 普段のやり方を急に変えようと思っても変えられるものじゃないし、お部屋のなかでぼーっとしてるだけなのもつらい。
 でもでも。
 お外にいくのもアリエナーイ。
 だって、お外だと咲夜ちゃんは悪魔に仕えているこわこわな女の子なの。
 いつも凛としていて、人を拒絶しているみたいに思われているから、なんだか避けられちゃってるみたいなの。
 そもそも用事もないのに遊びにいくほど仲が良い人なんていないし、あえて言えば阿求ちゃんくらいかなぁ。
 でも阿求ちゃんの取材のときはなめられちゃいけないと思って、逆ねこかぶりしてたし、いまさら咲夜ちゃんモードで対応したらびっくりするに違いないの。
 思いっきりひかれちゃう確率大なの。
 そんなの絶対に、ヤ。
 だって、咲夜ちゃんの心はそこらにふわふわ漂ってる毛玉さんよりも儚いものなの。
 似合わないなんていわれたらきっと立ち直れない。
 お部屋に戻って、マジカル咲夜ちゃんスターでも磨こうかなぁ……。
 マジカル咲夜ちゃんスターというのは異変解決のためにパチュリー様に作ってもらったオプションだ。パチュリー様のご趣味なのか、それとも咲夜ちゃんの希望をつぶさに感じ取ってくれたのかわからないけど、マジカル咲夜ちゃんスターは球形に星型がついたキュートな形をしていて、もうなんていうか、見た瞬間に惚れこんだの。
 魔理沙ちゃんや霊夢ちゃんには何それ似合わないと言われたけど、これだけは手放すことができなかったの。
 だいたい自分たちだって同じようなもの持ってるくせに、咲夜ちゃんだけ似合わないとか舐めてるの。しんじゃえばいいの。あ、だめ。そんなこと思っちゃだめなの。咲夜ちゃんは優しい女の子だから、しねとかそんな怖いこと思うわけないの。
 あぶないあぶない。
 咲夜ちゃんいけない子(てへぺろ)。
 マジカル咲夜ちゃんスターはそんなふうにあまりいい思い出がなくて、ずっとタンスのなかにしまっていたけど、それ自体は嫌いじゃないから、磨いてあげるのもいいかもね。
 部屋に戻って、意気揚々とタンスを開けて奥をごそごそ。
 あるぇー?
 あるぇ?
 え、ちょっと待って。
 マジで?
 マジですか?

「ないし!」

 どこ!?
 どこいったの!?
 マジカル咲夜ちゃんスター。
 咲夜ちゃんのかわいさを三十パーセントはひきあげてくれる魔法のアイテム。
 夢とドリームがつまったスーパーオプションなのに。
 なかった。
 タンスのなかの奥の奥にしまってあったのがなくなってた。
 どういうこと?
 どういうことなの?
 しばらくの間、咲夜ちゃんは時間停止をつかうまでもなく停止していたと思う。
 あの思ったよりも大きなマジカル咲夜ちゃんスターがひとりでになくなるわけがない。
 ちょっとしたバランスボール並の大きさがあって、わたしが抱っこすれば抱きごこちよくて、お嬢様が抱っこすれば咲夜の匂いがするーとか言って幻想郷が滅亡しそうなくらいかわいさ天元突破で、いやもうなんか頭がぐちゃぐちゃだ。
 いったん、整理しよう。
 マジカル咲夜ちゃんスターがなくなってる。
 これは事実。
 事実は覆せない。
 じゃあ、なぜなくなったか。
 咲夜ちゃんがどこかに置き忘れた?
 ありえない。
 マジカル咲夜ちゃんスターは封印されてはきたけれど、咲夜ちゃんにとっては無二の親友みたいなもの。咲夜ちゃんにとってのかわいさ的な味方をしてくれる唯一の存在。それをどこかに置き忘れてくるわけがない。
 咲夜ちゃん以外のひとがどこかに移動させたんだ。
 それしか考えられない。
 もしかしてマジカル咲夜ちゃんスターを作ったパチュリー様かな?
 でもパチュリー様だったら、ちゃんと咲夜ちゃんに話を通すと思うの。
 だいたい咲夜ちゃんはお嬢様の従者なんだし、パチュリー様はお嬢様のご友人だからほとんど同格。そのパチュリー様から命じられればマジカル咲夜ちゃんスターを提出しないわけがないの。それなのに黙ってもっていく必然性がないの。隠れ巨乳魔女たるパチュリー様がそんな無駄なことをわざわざするとは思えない。
 でもでも。
 もしかしてってことも考えられるし。
 なにより、魔理沙ちゃんのことを疑いたくなかったの。ほんとはちょぴっと疑ってたけど。疑っちゃってたけど。友達を疑うなんて悪い子なの。咲夜ちゃんはいい子だからそんなことしないの。まずは確認しなくちゃ!

「あの、パチュリー様」
「あら咲夜。レミィから聞いたわよ。体調が優れないんですってね」
「いえ。たいしたことはありません。それよりも気になることがありまして」
「なに?」
「前にパチュリー様からいただいたオプションのことですが」
「あれがどうかしたの?」
「少しメンテナンスをと思いまして、タンスを調べたところ、どこにもなかったのです。それで、もしかするとわたしの記憶違いでパチュリー様にメンテナンスをお頼みしていたかもしれないと思い、確認しにまいりました」
「いや、わたしのところにはないわね。でも場所なら調べられるわよ」
「え、そうなんですか」
「いちおう内蔵機能としてGPS搭載しているから」
「GPSですか」
 そんなの初耳なの!
 咲夜ちゃんの知らない機能がこんなところに!?
 ただナイフの本数増やすだけと思ってたのに。
 もしかしてパチュリー様は夜な夜な咲夜ちゃんのかわいらしい寝顔をそれで監視してるとか!
 こわいの。こわすぎるの。
「GPS……ゲンソウキョウ・ポジショニング・システム。単に場所がわかるだけよ。レミィがつけろってうるさかったからつけたのよ。普段は機動すらしていないシステムだから心配しなくても大丈夫よ。あなたのプライベートは守られてる」
 
 なんだ。
 場所がわかるだけなんだ。
 あれはずっと咲夜ちゃんのプライベートスクエアにおきっぱなしだから、べつに場所を知られてもプライバシーの問題にはならないの。
 それよりGPS機能をつけたのがお嬢様の指示だったのって、もしかして咲夜ちゃんのためだったりするのかなぁ。
 お嬢様はぷりちーだけど、やっぱりカリスマだ。

「じゃあ調べるわね」

 パチュリー様の詠唱で、空中に半透明の魔法陣がうかびあがる。
 とっても綺麗でファンタジック。
 ああ、咲夜ちゃんも魔法少女になりたい。
 フリルつきのピンクな服をまとって、ちょっぴりえっちな従者をひきつれて、ご近所さんの平和を守るの。
 メイドなんかよりもずっとやりがいがあると思うの。
 でも、やっぱり似合わない。
 絶望という名の奈落が襲うの。
 さげぽよなの。

「思ったとおり……。魔理沙の家にあるみたいね」

 パチュリー様の検索が終わったみたい。
 なかば予想どおりだけど、魔理沙ちゃんひどいの。
 勝手に咲夜ちゃんの持ち物をもっていくなんて。
 自分はなにもしないでもかわいくてぷにぷにしてて、妖怪たちからも面白愛されしてるのに!
 咲夜ちゃんからこれ以上かわいさをとったら、本当に美人系のお姉さんキャラになってしまうの。
 無慈悲などろぼーさんなの!

「取り返してきます」
「あなた、今日は休んでいたほうがいいんじゃないかしら」
「いえ、このくらいは平気です。むしろ気分転換になってよいくらいですよ」





 キングクリムゾン。
 唐突だけど、魔理沙ちゃんの家についたの。
 相手はどろぼーさんだからノックなんか必要ない。
 今日は無理やり侵入するの。
 ぷんぷくりーん。
 咲夜ちゃんは怒っているのだ。

「お、なんだ咲夜じゃんか。どうしたんだ?」

 背後をとられたの!
 やっぱり魔法の森は魔理沙ちゃんのテリトリー。
 いくら咲夜ちゃんが時間を停止する能力があっても、気配を探ることはできなかった。
 しかたないから、咲夜ちゃんはくるりと優雅にターン。
 どんなときでもかわいらしさをアピールするのを忘れない。
 だって女の子だもん。

「魔理沙。あなた、わたしのオプションを勝手に取っていったでしょ。返しにもらいにきたのよ」
「なんだよ。死ぬまで借りてるだけだぜ。かたいこと言うなよ」
「そんな言い訳が通ると思ってるの?」

 どろぼーさんはいけないことなんだから。
 いつか閻魔さまにお尻ぺんぺんされちゃうんだよ。
 咲夜ちゃんはお怒りモードだったから、すぐにナイフをかまえて臨戦態勢をとった。
 本当は魔理沙ちゃんの柔肌に傷をつけるかもしれない武器で戦いたくはないの。
 でも、咲夜ちゃんにとっては無二の親友、マジカル咲夜ちゃんスターがかかってる。引くことはできない!

「弾幕ごっこでもする気か。わたしとしてはべつにいいぜ」
「わたしは自分の持ち物を取り返したいだけよ。弾幕ごっこなんかわざわざつきあってあげると思って?」

 ザ・ワールド!
 時は止まる。
 いちいち魔理沙ちゃんに戦いを挑む必要はないの。
 ナイフを構えたのは、ドアを破壊するため。
 時間停止中に目的のものを手に入れてさっさと離脱すればいい。
 咲夜ちゃんの能力も無限じゃないから手早くやる必要があるの。
 ドアにナイフを何本か刺して、もろくなったところで蹴破る。
 瞬時に中に侵入。物色開始。
 そこで、後ろから魔理沙ちゃんのかわいらしい声が響く。

「あー、どろぼーッ!」

 どろぼーさんは魔理沙ちゃんの方。
 魔理沙ちゃんが家に入る前に、もう一度時間停止。
 それにしても魔理沙ちゃんは女の子さんなのに部屋のなかが腐海みたいになっちゃってる。
 綺麗すきな咲夜ちゃんとしては許せない状況なの。
 ああ、掃除したい。
 でもいまは人質ならぬ物質を救出するほうを優先しなきゃ。
 どこにあるんだろう。
 とりあえず床はなにかよくわからないマジックアイテムの類がおかれていて、下手に触ると危なそう。
 マジカル咲夜ちゃんスターの大きさからいって、すぐにわかるはずだけど、ざっと目につくところにはないみたい。
 ここで、またもやタイムアウト。

「しかたないやつだな。なにを返してほしいんだ」
「さっきも言ったでしょ。わたしのオプションよ」
「オプションっていわれてもなー」
「星型のマークがついた球」
「球?」
「そう球。球形。まあるくくてかあいいの!」
「あ……」
「なに?」
「あれか」
「思い出したの?」
「あれならすまんがもうないぞ」
「なに言ってるのよ。パチュリー様の魔法で場所は割れてんのよ。言い訳は見苦しいわ」
「まあ残ってるっちゃー残ってるんだが」

 なにか嫌な予感がするの。
 魔理沙はぽりぽりと頭をかきながら、奥の衣装棚に向かって、そこからなにやら灰色の物体をとりだしたのでした。
 灰色?
 いやーな予感が五割増しなの。

「えーっと。なにこれ?」
「ちょっと前にな、テストスレイブって技を思いついて、それの素体につかっちまった」

 ふ。
 ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
 マジカル咲夜ちゃんスターの淡いファンタジックパープルは無残にも金属色に成り果ててしまっていたのでした。
 ふえーん。
 マジカル咲夜ちゃんスターが。
 咲夜ちゃんの無二の友が。
 こんな灰色の球になっちゃうなんて。

「なんてことしてくれんのよ」
「さすがパチュリーが作ったやつだけあって、魔力が通るわ通るわ。実験は大成功って感じだったぜ? 使い勝手は悪そうだったがな」
「そんなこと聞いてないし!」
「またパチュリーに作ってもらえばいいじゃないか」
「マジカル咲夜ちゃんスターは無二の親友さんなの!」
「ま、マジカル咲夜ちゃんスター?」
「バカバカバカぁ。魔理沙ちゃんなんて大嫌いなんだから!」
「魔理沙ちゃん?」
「あ」
「ん?」
「いまのなしで」
「いや、なにがなにやらわからないんだが」
「いまのはわたしのなかに封印された第二の人格が解き放たれたにすぎない……」
「キリッってしても無駄だぜ」
「いやああああああ、いますぐ忘れなさい。忘れろ。忘れるまで殴る!」
「わあああああ待て待て」

 乙女の秘密を知ったからには生かしてはおけないの。
 魔理沙ちゃんには尊い犠牲になってもらう。
















 それからあとはまったく無駄な弾幕ごっこが二十分は続いたの……。


















「はぁはぁ……、いきなりなんだよ。おまえ」
 
 大きく息をついてる魔理沙ちゃんの隣で、わたしは体育座りしていた。
 ZUUUUUUUNって感じ。
 とってもZUUUUUUUUNって感じなの。
 気分は最悪を通り越して深海のなかに沈みこんでるみたい。
 だってマジカル咲夜ちゃんスターは見るも無残な姿に成り果てちゃってし、魔理沙ちゃんにはわたしが少女趣味思考をしていることがバレちゃったの。
 もう生きる資格ないかもしんない。
 家族にロリコンだってバレたときってこんな気持ちかなー、ハハ笑うしかないや。

「要するにそれがおまえの素ってことか」
「笑いなさいよ」
「なんで?」
「だってわたしは女の子っていうよりも大人って感じでしょ。現に見た目年齢だけなら魔理沙と霊夢よりも年上に見られること多いし、紅魔館はロリばっかなのよ。心のオアシスは美鈴だけよ。でも美鈴は門番だし館の中にはあまりいない」
「おまえが美鈴にナイフ刺しまくってるのはもしかしてそのせいか」
「ええそうよ。わたしと同じぐらいの年齢に見えるから劣等感を抱かなくてすんだのよー!」

 咲夜ちゃんは弱い子でした。

「べつに笑わないぜ」
「え?」
「それがおまえの本来の姿なんだろ。だったらそのままのおまえのほうがいいに決まってる。それをわたしは笑ったりはしない」

 ああ。
 魔理沙ちゃん神様みたいですー。

「もしかして吸血鬼にならないのもそのせいか」
「うん、そう。だって咲夜ちゃんはあまりかわいくないもの。こんな醜い姿のまま固定されるなんて絶対にいやよ」
「普通に美少女の類だと思うんだがなー」
「魔理沙ちゃんみたいにかわいくないじゃない」
「照れるぜその言い方」
「わたしなんて変にひょろ長いし、無駄に鋭い目つきしてるし」
「モデルみたいな体型っていうんだろうけどな」
「ともかく吸血鬼にはなりたくなかったの。もしももっとかわいいときだったら一も二もなくうなずいたんだろうけど」
「いやでもさぁ、人間のほうが圧倒的に老化早いだろ。いまのうちになっとかないともっと後悔するんじゃないか」
「もう咲夜ちゃんに残された希望は転生しかないの」
「おもいつめてんなぁ……。だがな咲夜」
「なによ」
「おまえは自分で思ってるよりも十分かわいい」
「うそだ!」
「うそじゃない。そもそもかわいいという価値観は周りから言われるから生まれるもんなんだぜ」
「周りからかわいいと言われればかわいいってこと?」
「ああそうだ。つまりかわいいとは相対的なかわいさなんだ」
「本当にそうなのかしら」
「ああ、美少女はかわいいかわいいといわれて初めて美少女になるんだぜ」

 ああ。
 魔理沙ちゃん教祖さまみたいですー。

「でも過ぎ去ってしまったときは戻せないわ。もうかわいらしい女の子だった時は戻らないの」
「基本的にかわいさというのは子どもっぽいってことだから、おまえが若ければ若いほどいいって発想は正しいな。しかし、ここでもう一度思い出してほしい。わたしは言ったよな、かわいさとは相対的な数値だって。だったら周りが年をとればとるほどおまえのかわいさポイントはあがっていくってことだ」
「なるほど理論はわかった……けど」

 ハッ。
 まさかそういうことなの?

「気づいたな。おまえには時を操る能力があるだろう。時というのは未来に進むもの。ゆえに過去に戻すのは難しく未来に進むのはたやすい。おまえは周りの時間を加速させればいいんだよ。そうすれば未来においておまえはまぎれもないかわいらしい女の子だ」

 ああ。
 魔理沙ちゃんあなたが神か。
 それからあと。
 わたしは魔理沙ちゃんとしっかりと握手をして別れた。
 これが今生の別れになるかもしれないから、わたしは臆面もなく泣いた。だって女の子だもん。






 紅魔館に戻った咲夜ちゃんはお嬢様にすべてをお話した。
 咲夜ちゃんが少女趣味であること、かわいさポイントをあげるために周りの時間を加速すること、その間自分が無防備になるから守ってほしいと伝えた。周りの時間が加速するってことは、咲夜ちゃん主観でいえば、一秒の間に何年も経過するってことと同じ。逆に言えば、周りが超加速してるってことだから、わたしを害そうと思えば誰でも可能ってことになる。だから誰かに守ってもらわなければならない。客観時間で千年か二千年か。ともかく、お嬢様方が咲夜ちゃんより見た目的に大人になるまで、それは続く。
 お嬢様はしばらく驚いていたが、すぐに快諾してくださった。
 やっぱりお嬢様はぷりちーだがカリスマだ。
 ああ、でもこのぷりちーな姿も見納めだと思うと名残おしい。
 最後にお嬢様からの充電行為。













 それから――。



 紅魔館の地下。
 もともと妹様が使っていた地下の部屋。
 周りは鉄格子で覆われ、そのうえからさらにパチュリー様の魔法がかけられてる。
 そこにいまでも咲夜ちゃんが彫像のようにたたずんでいるのは、そういった理由からなのです。
 みんなばいばい!
 いつかかわいい女の子だと思われる日を夢見て。
 どや顔ダブルピース☆






■ ゴジラは神さまになれますか?





 わたしはゴジラが好きではありませんでした。

 ええ、この塩化ビニールで作られた小さな人形です。霊夢さんが何故これを持っているのかは謎としかいいようがありませんが、わりと外のものも流れ着くのですね。

 そう、これがゴジラ。ゴジラ……だったかなぁ? 人形と画面に映ってるのは印象が違うからよくわかりませんけど、なんとなくこんな形だったのは覚えています。

 なつかしいです。

 ね、わりと愛嬌のある顔でしょう。

 けれど本当は恐ろしい存在なのです。

 まずは体長は人間の何十倍もあります。

 ビルをまるかかえして投げ飛ばすぐらい大きいんですよ。あ、そうか。ビルじゃダメですね。えーっと、妖怪の山が砂場の城と同じぐらいに感じられるサイズです。

 でも大きさが怖いわけではありませんでした。

 ゴジラの劇中での行動が怖かったのです。

 というのも、ゴジラはなんだかんだいって人を殺すからです。

 破壊の光線で町を焼き尽くして、おおきな足で踏み潰してしまう。

 びびび。ががが。

  びびび。ががが。

 こんな感じの音でしたっけ?

 今の映画に比べれば遥かに技術的には劣ってはいるものの、その不自然で歪つでありえない音が超常的な雰囲気をかもしだしていました。

 ビルから覗く巨大な顔。

 幼心に恐怖を感じ母親を盾代わりにして難を逃れようとしたことを覚えています。

 光線!

 画面は真っ青に染まって……、それきりです。

 わたしはテレビのスイッチを切ったのでした。

 つくりもののはずのゴジラに私は屈服してしまったのです。

 浮かぶ思念のなかで思いついたのは、ひとつの言葉。



 暴力。



 暴力だと幼心におもいました。

 力を意のままにふるって、それで相手を屈服させようなんてひどい話です。

 当事、小学生だったわたしは今よりも純粋そのものでしたから、ゴジラとは悪の存在だと考えていたのです。

 そして神に仕える身としては、悪とは妖怪ということになります。

 べつに誰からか教えられたわけでもなく、そうインプットされていたのです。

 ゴジラは妖怪であり悪であり、滅ぼされるべき存在だと。







 けれど物事はそう単純ではありませんでした。

 わたしにもそれなりに分別がついてくると、彼の悲劇的な存在様式が理解できるようになります。

 彼は放射能実験が生み出した自然の怒りそのものだったのです。

 つまり、彼が人を殺すのは天罰ともいえるかもしれないのです。



 天罰。



 神様が人間に下す罰です。

 とすると、彼は神様であるということになります。

 もちろんそうではないと必死になって反論するわたしがいました。これも誰から言われたわけでもありません。超常に触れていない普通の人たちには、わたしの悩みなんてわかりようもないことでしょうし、斜にかまえていたわけでもなく、長年の経験からそういうものだと思っていましたから。

 普通の人にとっては、彼が神か妖怪かなんてどうでもいいことなのです。

 わたしはそういうわけにもいきませんでした。

 彼がつくりものの存在であることはわかります。しかし、彼の生き方が神であるか妖怪であるのかは、わたしの行動様式に関わってくることなので重要なのです。

 つまり”人間”ならどうすべきかという規範。

 わたしは彼が妖怪なら彼を悪とし、退治しなければなりません。逆に神なら礼賛すべきです。

 はたして神と妖怪との差異はどこにあるのでしょうか。

 誰も教えてくれませんでした。











「それで?」

 と萃香さんは続きを促しているようでした。顔は紅く、いつものように酔っ払っています。

 瓢箪からグビリと酒を呑み、聞いているのか聞いていないのかもよくわからない有様です。

 内心ちょっと微妙な気分。

 この小鬼さんはいったい何が楽しくてわたしにからんでくるのだろう。

 もしかすると交差点の向こう側にいるのに、わざわざ渡ってきてから挨拶をしてくるタイプなのかもしれません。

 こんな次第になった理由らしき理由も特になく、ちょっぴり面倒くさい気分。

 発端はたいしたことではありません。

 霊夢さんがどこかへ用事に行った数分後、折り悪く遊びに来ていた私が萃香さんにつかまったというわけです。

 それで酒の肴として、なにかおもしろいことはないかと聞かれたのでした。

 言葉にしてみるとたいしたことはないのですが、相手はちっちゃくても大妖怪。わたしとしてもそれなりの敬意と緊張をもってお話をしたのです。

 それにしても、なにかおもしろいことはないかという問いほど、無責任で、奔放で、非常識な問いかけはありません。

 こんなにも困難な問いはなかなかないのではないでしょうか。

 正直なところこんな狭い幻想郷では知らないことのほうが少ないですし、なにかおもしろいことがあればみんなすぐに集まってきますから。

 人口に膾炙するようなことをおもしろおかしく話す能力はありませんし。

 結局わたしだけが知ってることで、おもしろいことといえば、もっぱら外の世界のことしか無いのでした。

 萃香さんは『うぃ〜』と八時になったら全員集合しそうな典型的な酔っ払い状態で、とろんとした眼でわたしを見ています。

「つづきはぁ?」

「続きなんてありませんよ。それで終わりです」

「なんだつまらんなぁ」

「ずっと昔のことですしね」

「たかだか十年かそこらの出来事だろう。人間の小娘にとってはそんなに昔のことなのか?」

「ええ遥か昔のことに感じますよ」

「ふぅん。それはそうと早苗は巫女のくせに神と妖怪の違いも知らなかったのか。ずいぶんと無知だな」

 むむっ。

 さすがに聞き捨てなりません。

 こう見えても妖怪退治にもエイリアン捕獲にも成功したわたしに向かって、そんな言い草はあんまりです。

 萃香さんは”ケポッ”と小さくゲップ。

 むむむっ。バカにされている気がします。

「じゃあ萃香さんはご存知なんですね」

「当然だよ。なにしろ人間なんかよりずっと長生きしてるからな」

「では、ご教授願えますか。妖怪様」

 暗い気持ちもいくぶん含まれているのは、この際勘弁してもらいたいところです。

 萃香さんはヘラっと笑って、身体を起こしました。

「単純なことなんだけどな……、実際、妖怪と神は同じ存在なんだよ」

「同じとは?」

「在り方というか、様式というか、構造がさ」

「違うでしょう。崇め奉られるのが神様です。妖怪は人間に退治されるべき存在です」

「ああ、それそれ、早苗のその認識はある一面としては正しいんだが、部分的にしか正しくない」

「よくわかりませんが」

「ずいぶんと人間本位な考え方だってことだよ。人間が崇める。人間が退治する。人間がずっと中心にいる。でも妖怪も神もはっきり言えば人間の認識なんかどうでもいいんだ。気づいたら神と呼ばれていたり、妖怪と呼ばれていたりするだけの話なんだよ」

「神の神聖さも、妖怪の邪悪さも?」

「そう、ただそう呼ばれたってだけの話。たとえば人間の世の中でも○○はいけ好かないやつだとか言われたりすることがあるだろ。そいつがどれだけいいやつで、どれだけ善行を積んでいたとしても、何人もの他者にそう思われていたら、それは真実として定着する」

「それはおかしいでしょう。善い人は善い人ですし、悪い人は悪い人です。人からどう呼ばれたというのではなくて、行動様式がそもそも違います。神は人を殺しませんし妖怪は人を食べるじゃないですか」

「神と呼ばれようが妖怪と呼ばれようが、そいつはそいつだ。○○は○○だってことさ。たまたま人を食べたから妖怪と呼ばれるようになった。たまたま気まぐれに人を助けてたら神様と呼ばれるようになった。人を食うのが好きか。人を助けるのが好きか。そもそも人が嫌いか。人が好きか。それだけの話さ。神は神であろうとして神になるわけじゃないし、妖怪も妖怪になろうとして妖怪になるわけじゃない」

「神様は最初から尊いんです」

「神から妖怪に転落したやつもいるし、妖怪から神になりあがったやつもいる。この国の神妖はけっこう柔軟だぞ。アバウトだぞ。どうでもいいんだぞ」

「どうでもいいって……」

「たとえばだ。この瓢箪のなかに入ってる酒だがどうやって造るか知ってるか」

「あ、それは確か酒虫とかいうウーパールーパーみたいなのがいるんでしたっけ?」

「うーぱー?」

「あ、いえ、ちっちゃくてかわいい生き物のことですよね」

「まあそうだ。だがここでは一般的な作り方を答えて欲しかったな」

「ええと。確か発酵やらなにやらをさせてって話でしたっけ」

「十年ちょいしか生きてないわりにはよく知ってるじゃないか。そうだよ。発酵という作用だ。ところでこの発酵という現象と腐敗という現象の違いはどこにあるのかわかるか」

「身体にいいか悪いかでは?」

「人間にとっていいか悪いかだよ」

 萃香さんは完璧に目が据わっていました。幼女が酒豪でからんでくるとか……、ある意味、最強に思えます。

 愛想笑いを浮かべるのがやっとです。

「人間が神か妖怪かを決定しているってことですか。妖怪様からそんなこと言われるとは思いもしませんでしたよ。人間ってそんなに偉かったんですね」

「そりゃ人間なんて勝手なもんだよ。でもこっちはしたいようにしてるだけなんだ。あんたらがこっち側にいるやつらをどう解釈しようと勝手だが、こっちにいるやつらは神も妖怪も人間に合わせて何かしてるわけじゃないからな。本能のままなにやらやってたら、たまたま近くで覗き見していた人間がその行為の意味を人間の言葉で定着させただけだ」

「けれど人を殺すのは人にとって悪です。そんなの当たり前じゃないですか」

「当たり前か……。だが神様だって人を殺すよ」

 ぞわ

   ぞわ。

     ぞわ。



 背中のあたりが急に寒く感じました。



「早苗だって諏訪大戦のことぐらい知ってるだろ。諏訪大戦。神代の時代の戦争だ。戦争では人が死ぬ。”殺される。”つまり……」

「やめてください」

「わかったよ。だがこれでおまえも少しは理解しただろう。そのビニール人形を嫌いだと言った理由が」

「わかりません」

 わたし、もしかしていじめられてるんでしょうか。

 萃香さんはニヤニヤ笑いながらまた酒をグビリと一飲みして、

「泣くぞ。ほら泣くぞ。絶対泣くぞ」

「泣きませんったら」

 わたしは彼のことが怖かった幼児のときとは違うんですから。

 いまなら少しは彼の気持ちもわかるんですよ。彼の怒りも理解できる。怒りの行使をほんの少しは正当化できることを知っている。

 たとえ人が殺されても。殺されるだけの理由が人にはあった。しかたない。そう思えます。

 ほんとですよ。

「人間ってのは面倒くさいねぇ。でも早苗も霊夢と同じぐらいおもしろいことがわかったよ。今日はそれが収穫かな」

「ありがとうございます……」

 正直いまさらそんなフォローされても複雑な心境です。

「でも霊夢と違って正直さが足りないな。嘘とまではいえないからいいんだけどさ。鬼は嘘つきが嫌いだからね」

 嘘なんかついたことはない。

 といえば、それもまた嘘になります。

 ゴジラが嫌いだといったことも嘘ではありません。

 でも、本当にそうなのか。

 本当にわたしは彼のことが嫌いだったのか。なぜ彼を恐れていたのか。

 人を殺すから。

 人を殺すから怖かった。

 怒りで我を忘れて光線で街を焼き尽くすのが怖かった。

 わたしは人間ですから。

 殺される側の存在ですから。

 だから怖かったんです。

「萃香さん……」

「なんだい?」

「外の世界では六十年ほど前に戦争があったんですよ」

「ふうん」

「それでわたしの祖父も戦争に参加してたんです」

「そうかい」

「十歳ぐらいの頃だったと思います。小学校で戦争があったってことを知って、祖父がその戦争に行ったということも知って、わたしは怖くてしかたがなかったんです。戦争だからしょうがないというのはわかっています。でも……、祖父が人を殺したかもしれないってことがたまらなく怖かった。わたしは祖父に聞きたかったんだと思います。でも聞けませんでした」

「早苗はおじいさんのことが好きだったんだね」

「はい」

「早苗が怖かったのは、おじいさんのことを怖くなってしまうかもしれない自分に対してじゃないかな」

「ええ……、そうかもしれません」

 神か妖怪か。

 わたしは自分のなかで決めていくのが怖かったんです。

 妖怪だと思ってしまったら、退治しないわけにはいかなくなるから。

 わたしもまた妖怪の眷属でありながら妖怪を退治する人間になってしまって、きっと引き裂かれてしまうから。

 だから無意識に避けたのかもしれません。

 祖父が亡くなって、永遠に問いかけることができなくなって、一方ではずっとわたしが問いかけるのをお待ちいただいているニ柱様がたがいらっしゃるのです。

 ああ……怖いな。

 いまも怖い。

「わたしは幼児のころからまったく成長してなかったんですね」

「そんなことはないだろ。早苗はお母さんの背中に隠れるほど怖がってはいないじゃないか」

「人形ですから」

「いや同じことさ」

「そうでしょうか」

「最終的に神か妖怪かを決めるのは人間の仕事だけどね」

「肝心なところだけずるいです。決めていくっていうのは何事であっても一番エネルギーがいるんですよ」

 でも、萃香さんの言うとおり。

 彼のことを少しは好きでいられる自分がいました。

 それがわたしの十年間における成長なのかもしれません。

 いまだ神奈子さまや諏訪子さまに戦争がいかなるものだったか聞く勇気はありませんけれど。

 ずっと同じ場所に立ち止まっているわけじゃないことを証明するために。

 一歩前進するために。

 わたしは震える唇で言葉をつむぎます。




「わたしはゴジラが好きなんですよ」



 なぜなら彼は神様であり、わたしは神様のことが大好きだからです。



■ 東方三題噺

「んー。なんか違うな」
 ルナ姉が言うにはそんな感じ。
 なんか違う。そんなことはわかっている。
 私たちは掛け値なしに音楽の天才。
 ぜったいおんかんなるものも持っているはずだ。だから音の波動レベルで違和感をかんじてしまうのだろう。
 ほんのちょっとの歪みが、一般ぴーぷるよりも大きく聞こえてしまうのだろう。
 メル姉も首をかしげていた。
「なにか変かも?」
 なにか変なのは私にもわかる。
 けれど、はっきり言って、姉さんたちのせいだと思った。
 末の妹である私――リリカ・プリズムリバーはまったく悪くはない。
 演奏に瑕疵はない。
 なぜなら――、
 なぜなら私が演奏するのはキーボードだから。
 よく考えてもみてほしい。
 ピアノと違って、キーボードは打鍵した瞬間に出る音は一定だ。
 もちろん、音の強弱をいじったり、長さをいじったり、あるいは瞬間的にワウワウさせたり、てってってーさせたりと、いろいろと技巧的なことはできるけれど、
 言ってみれば、でじたるなのだ。
 ルナ姉やメル姉が扱ってるヴァイオリンやトランペットは明らかにあなろぐな代物。
 ヴァイオリンは弦で糸をこすり合わせる瞬間に、こう――言葉には言い表せない魂の入りこむ度合いが強いというか、そんな感じ。
 トランペットも同じく、息を吹きこむと同時に魂も吹きこんでいるんだろう。
 ほら。
 消去法。
 幼稚園児でもわかるでしょ?
 私は自分がミスをしたら、でじたるだから誤魔化せない。
 私以外の誰かがミスってるってことは、姉さんたちが悪い。
 だから、私が悪いんじゃない。
 でも、お姉ちゃんたちを悪く言うこともしなかった。一応かわいい妹役をやっておりますんで。

 へっへっへ。

「いまさら焦ってもしょうがない」
 結論づけたのはルナ姉だった。
 一時間ほど練習しても、音の違和感はずっとついてまわったからしかたない。
 私はこっそりと心の中でためいき。
 演奏がぴったりとはまらないのはどうにも気分が悪い。けれどそれはルナ姉も同じだったらしい。
 いつもの暗い顔をさらに暗くさせている。
 ふぅと小さくためいきをついてみたり、
 そして、さっさと自室にひきこもってしまった。
「もしかして、ルナ姉スランプなのかな?」と私は残ったメル姉さんに聞いてみた。
「んー。どうかしら。ルナ姉はあまり表に出さないからよくわからないわね」
「存在が希薄なのよ」
「それは私たちみんながそうかもしれないわね」
 にこりと笑って、私をなでなで。
 妹的な役柄を果たすことは別に悪い気分ではなかった。
 でも犯人はメル姉かもしれないわけで。
 うーん。微妙!?
 とかなんとか思ってるうちにメル姉も自室にこもって、自主練を始めた模様。
 私はどうしよう。
 自室にこもって練習するのは別にいいんだけど、姉さんたちと違って、私は幻想の音をあやつる音楽の寵児。
 わざわざ一人きりの練習をするほど練習が必要なわけでもないのだ。
 なーんて。
 ごめんうそです。
 ひとりで練習するのは、ちょっと寂しい。
 言葉にしてみれば、そんな簡単な理由。
 騒がしさを愛する私たちポルターガイストにとっては、誰かに聞いてもらうために音楽をやっている。
 誰かに無理やり聞かせよう。
 しかし誰がいいだろう。
 うーん。
 よく考えるとあまり知り合いがいない私である。特に姉さんたちと行動をともにすることが多い私は、あまり単独行動をとらないのだ。
 西行寺のお嬢様には演奏しにでかけることもあるけれど、あれはちゃんとした依頼によるもので、友人関係とはまた違う。
 騒霊が孤独なんて、鬱屈、鬱屈。
 こんなときは――、
 こんなときはどうすればよいんだろう。



 で、やってきました。
「あら珍しいわね。あんたが一人でこんなところまで来るなんて」
「みんなの憩いの場所ですから」
「神社をたむろする場所にするな!」
「いやいっぱいいるし」
 というわけで、博霊神社です。
 霊夢は縁側に腰掛けて、あったかそうなお茶を飲んでいた。
 その隣には魔理沙の姿もあった。
「そういえば知っているか。月のお姫様たちがライブ放送なるものを配信しはじめたんだってよ?」
「月のお姫様?」
「正確には綿月姉妹って言ってな、月では霊夢も負けたんだぜ?」
「うそでしょ?」
 あの霊夢が負けたなんて信じられない。
「いや、負けたというか、かなり苦戦したというか、まあ勝った負けたも結局はスペルカードルールの前にはさほど意味のあることじゃないんだがな」
「やっぱり侵入者は悪いから苦戦したのかしらね」
 霊夢はのほほんとお茶を飲んでいる。
 こうしてみるといつもの霊夢。
 悔しいという感情が無いのだろうか。いやいや――、魔理沙の言葉だ。負けたというのも話半分に聞いていたほうがいいかもしれない。
「それでライブ放送って何? 演奏? 演奏なの?」
 ちょっと興味があるところである。
 なにしろライブ。
 ライブといえば私たちプリズムリバー三姉妹のお株。
 おいそれと月よりの使者に奪われてなるものですか。
 なーんて。
 そんなことは思ってないけれど、お月様に住んでいる人なんて会ったこともないから少しは興味があることだった。
 それで、霊夢が案内してくれたのは、奥座敷。
 そこには四角い箱みたいな装置がついていて、私が持っているキーボードと同じ、死の気配をまとっている物体があった。
 それにしてもでかい。
 こんな四角い超質量体を部屋の隅に置いておくなんて、スペースの無駄。妙なことに細いキラキラと光っている銀色の線が後ろ側にくっついていて、それを辿っていくと縁側のほうにむかって、やがて空へといたることを発見した。
 って、空に線?
 なにこれ。
「これは、あなろぐテレビと言われているものだ」
 魔理沙がそんな説明をしてくれた。
「いやちょっと違うんじゃない?」と霊夢。
「まあどうでもいいじゃんか。ようは使えればいいんだよ。使えれば」
 そして、本体の右側についているスイッチらしきものを押す。
 ぷつん。
 そんな音。ああシーフラット。
 なんて。
 そんなことを思いながら、表面のつるつるしたところには砂嵐のような映像が映った。
 そして、とてつもなく不快な雑音。
 うぎぎぎ。耳が壊れちゃう。
 私は両耳を手で塞いで、非難のまなざしを向けた。繊細な音楽家の耳が壊れたらどうするのよと言いたかった。
「悪い悪い。まあここをこうして調整すると……ほら映った。いまからちょうどライブ中継だぜ」



 そこにいたのは、びっくりするぐらい綺麗な女の子だった。
 ひとりはポニーテールといって実は一般的にはあまり普及していない名称の髪型をしている女の子。
 ポニテなんてヲタクの言葉をなぜ知っているかというと、私が一応アイドル的な活動をやっているからだ。
 一番人気は当然この私。異論は認めない。
 いや私のことはともかくとして、今は情報収集のとき。
 己を知り、相手を知れば、百回戦っても負けることはない。
 見たところ。
 ちょっと勝気なところがありそうなのは、……プリズムリバー三姉妹には無いキャラだから手ごわそうだ。
 その隣にいるのは、なんだかぽわっとしてそうな子。
「こっちのポニテが依姫で、こっちのトロそうなのが豊姫」
 魔理沙の説明はわかりやすい。



「あれ……こえが……遅れて……聞こえる……よ」
 口火を切ったのは豊姫のほうだった。
「いやお姉様、これリアルタイム通信が可能だから。フェムトファイバー内に情報を通過させることで、情報を劣化させないで送ることが可能だから」
「そういうノリかと思ったんだけど。違ったのね」
「違います……」
「ともかく、私たちは元気にやっているわ。そちらはお変わりないかしら」
 そこで豊姫の顔に影が走る。
「地上の生き物は這いつくばって死ぬのが定めなのよ……おっほっほっほほほほ」
「いやお姉様。そのノリも違うと思います」
「あらそうなの? どうすればいいのよ」
「普通に」
「普通に?」
「ほら、一般人的な感覚で」
「感覚で?」
「挨拶なりなんなりをすればよろしいじゃないですか」
「それじゃおもしろくないじゃない」
「おもしろさを求める必要がある場面ですか」
 淡々と聞いているのは依姫のほう。なんだか妹のほうがしっかりしているという構図らしい。
 まるで天然ボケとツッコミ役のようだった。
「いや、それにしても……、本当寂しいわね。月は静か過ぎるから。たまには、こちらに遊びに来てもいいのよ」
 霊夢がわずかに笑ったように思う。
 魔理沙は、にやぁ〜と笑っている。
 どうやら仲が良いみたい。
 けれど、このテレビという代物は受信ばっかりして、発信することができないらしい。
 だから、綿月姉妹はこちらが本当に見ているかどうかわからないまま、発信しているのだ。
 音楽も似たようなところがあって、心を動かすかどうかは賭けみたいなところがあるから、わかる気がする。
 映像の最後に、豊姫曰く、

「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の」

 はてこれは一体なんの歌?
 歌は歌でも和歌は知るわけもなかった。
 教養がないなんて言わないで。
 耳が痛い。
 そうじゃなくて、ほら、私って西洋出身だから。一応。
 しかたないのだ。
 何年日本文化に慣れ親しんでいたかはともかくとして、ともかくしかたないのだ。
 というわけで聞いてみた。
「今の歌はなに?」
「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ」
 答えたのは意外なことに魔理沙だった。霊夢はいつものように愛想のない顔で砂嵐状態になったテレビを見ている。
「どういうことなの?」
「崇徳院の落語とかで使われている歌だな。まあ簡単に言えば恋バナだ。恋バナ。私の専門だから簡単にわかるぜ」
「あんたが案外いいとこのお嬢様だからなんじゃない?」
 霊夢がそんなことを言った。
「おぜうさまになんかなりたくないんだが」
「ふふん」
「それでどういう意味なわけ?」
「滝の流れが岩で二股に分かれても、再び会いましょうというような意味だぜ」
「ふぅん」
 月と幻想郷。
 確かに両者は離れすぎている。
 会いたいのに会えないのはせつない。
 そんな気持ち、わかる気がする。
「さてと、私はそろそろ家に帰ろうかな」
「あっそ。騒がしいのもほどほどにしなさいよ」
 霊夢は来たときと同じく、来ることも帰ることも拒むことはしなかった。
 そこらへんが好かれ易い性質の最たるところかな。
 いやよくわかんない。計算してどうこうできるものじゃなさそうだ。



 家に帰るとルナ姉もメル姉もあいもかわらず練習中。
 私もそうしようかと一瞬思ったけど、二人の大好きな姉さんたちともう一回セッションしたいと思った。
 時代はやっぱりソロ活動より、バンドだ。
「バンドやろうぜ」
「って、はい?」
「なんなの?」
「いや、ちょっと違った。もう一回、いっしょにやろうよ」
「いいけど、何が悪いかわかってない状態でやっても無駄なんじゃない?」
 ルナ姉は淡々としているが、けっこう厳しいことを言う。
「いや、でも、三人でなければわからないこともあるかもしれないわ」
 メル姉は積極的だ。
 私はおおいに頷いた。
「ね。もう一回しよ」
「しかたないな。そうまで言うんなら……」
 やる気に欠けるというよりは、あまり乗り気ではないルナ姉。
 ルナ姉はルナ姉でもしかして自分の責任とかを感じていたんじゃないだろうか。
 まあ、いつも暗い顔をした姉さんだから本当のところはわからない。
 それで、メル姉のほうはというと、こちらはすでにトランペットに口をつけていつでもいいと合図をしている。
 私たちはいっせーので演奏を始めた。
 結論から言えば――
 その演奏には姉さんたちは満足したんじゃないかなと思う。
 もちろん私も。
 何が悪かったのかはよくわからないけれど、たぶん微妙にズレていたんだと思う。
 ズレ――ほんの少しの感情の行き違い。音が割れたりするのも一致してないものを無理やり合わせようとしたりすると、そこに歪さが生まれたりする。
 べつに姉さんたちと何があったわけではないし、喧嘩とかしたわけじゃないけど、感情や心は移り変わっていくものだから、そのつどチューニングしなくちゃいけない。
 つまりは調和。
 全体の音を調和させるのは私の役割だから、やっぱり私の責任になるのかなぁ。
 などと思う次第です。
 姉さんたちは何も言わないけどね。

「割れても末に、あはむぞと思ふ」

――音が割れても、末の妹である私が皆の音を合わせてあげるよ。

 なーんてね。




ここから↓は東方と関係ないわ






 この作品には性的・暴力的な表現が含まれている恐れがありますという惹句を用いたところで、ある記述がそうであるかどうかは相手の感受性に大きく依存しているといわざるを得ないのであり、人の感受性は多種多様であるからすべての文章には性的・暴力的であると受け取られる可能性が必ず含まれている。であれば、その惹句は確かに真実ではあろうが、当然のことを表したにすぎず、当然であるがゆえにあえて記す必要はない。





「わたしはここにいて、そしてどこにもいない。つまり幽霊です」
 発音は調律されたリコーダーのように美しい。美しいだけでなくかわいい。ハチミツのような甘さが耳に溶けていく。
 しかし内容はどうだ。
 最初の一言が自らを幽霊だとカミングアウトする電波発言だった。
 先が思いやられる。
 PFIの少女は四角い部屋の真ん中にある小さなパイプ椅子に座り、上目使いにこちらを見つめていた。
 予想したような媚びた視線ではなかった。冷徹な観察者の視線だ。
 夕日が部屋の唯一の窓から入りこんでいた。
 長い影。黒炭のような濃密な黒。目に映る地の底で眠っていたかのような少女の白い肌。ワイヤーのように細く白い髪。なぜかポニーテイル。レーザーのような紅い瞳。なぜか吸血鬼ルック。強烈なコントラスト。少女の観察するような目つき。蛇のように執拗。だが、ワインの地下倉庫のようにひんやりとした視線。
 見た目は小学生のような、中学生のような、あるいは寛大な目で見れば高校生ともとれる微妙な年齢。ふわりとしたワンピースを着ているせいなのかもしれないが、身体のラインは目立った凹凸もなく、ひたすらになだらかな稜線を描いている。幼女あるいは少女の肢体。
 容姿は人間離れした美しさ。しかしかわいらしさを殺さない程度の絶妙な配分。崩れたような曖昧なオーラをかもしだしているのは彼女の超越的な計算能力によるものだろう。
 特に目につくのは背中の羽。妖精のような半透明の羽が彼女の背中に展開されている。生えているのではなくて半ば浮いている形。光学的な映像を空間に投射しているだけで羽には質量がない。人間との差異を出すためにわざわざ付加されている不要な羽らしい。
 とても危うい雰囲気を感じる。
 不安と不安定は似ているようで似ておらず、この場合、俺が感じているのはどちらだろうか。
 PFIには年齢がない。それどころか人間ですらない。
 高度なネットワーク化された機械。要するに自動人形<<ロボット>>だ。
 耳をすませば、
 RU……RU……RU。
 小さい駆動音が聞こえている。
 ただしPFIは一機が独立した存在ではなく、メタデータを共有し、リアルタイムで通信している。それを一種の心と呼ぶのなら、PFIは複数の身体を持つ単一の個体だ。
 心?
 そんなものがPFIにあるのだろうか。
 いずれにしろわかりようがないことだろうが、法的にはすでに決していることでもある。
 PFIには心がない。
 PFIの少女がどんなに言葉を連ねたところでそれは順列組み合わせの結果に過ぎないという見解こそが法的な多数説であり、社会の総意なのである。したがって、ここに記される彼女という表現にはおよそ主体的な地位はなく、単なる擬人化の手法となんら変わりはないということになる。
 俺の仕事はこのPFIの一端末から情報を仕入れ、それを記事にすることだ。形式的にはゴールデンウィークにかこつけてPFIを使った諸行為の憲法上の解釈について書くことになってはいるが、その内実は卑近な世間話のようなものにならざるをえないだろう。とはいえPFIから情報を収集することは普通のコンピュータのように他の媒体に転送するといった単純な作業ではない。PFIが有する生のデータをそのまま取り出すことは通信傍受にあたり憲法違反になるし、プライバシーの侵害にあたる可能性もある。どちらにしても面白くない結果になることは目に見えている。民間の会社勤めの俺の立場じゃなおさら危うい。刑罰も課される危険がある。
 そこで、PFI自体に彼女の体験として語ってもらうしかない。
 この間接的なアンケート結果のようなものがPFIの内包するさまざまな問題の対処法へと発展していくのだろう。その決定は俺には知りようのないことだし俺の手にもあまることだが、与えられた仕事をこなすのが社会的動物である人間の使命だ。
 しかし、問題はこのPFIの端末がやけにひねくれていることだった。アンケート結果の公正さを担保するためにPFIの端末は無作為に選出されたのだが、おおはずれを引き当てた可能性もある。厳密に言えば、PFIに個体差はありえないはずなのだが、俺の意見は的外れなものではない。主観的な事実として個体差は現に存在する。したがって、当たりはずれも存在する。
 個体を認識するこちら側のコミュニケーション能力の問題だろう。受信する側が違うと認識すればそれは違う個体だ。先にも述べたとおりPFIはメタデータを共有していることから情報の共有がなされていることはまちがいないが、表層的な性格は適当に割り振られて決定されており、外見の差異もあいまって(特に髪の色と形、目の色などで区別をつけることが多い)、彼女たちはまるで別個の個体であるかのように認識される。――それは誤認であるはずなのだが。
「なんでおまえは誰だって聞いただけでそんな答えが返ってくるんだよ」
 俺としてはアンケートの常套句であるところの、誰であるのか、何をしているのかを聞いただけなのだが、PFIがどれだけ高性能といったところでそこまで洗練されていないということなのだろうか。
「わかりやすく?」
 途端に年齢が下がる。どうもレベルを落としてあげましょうかと言われているようで気持ちのいいものではなかったが、そのほうが情報を得やすいだろうと思って頷いておく。
「では少しわかりやすく……。わたしはあなたがた人間によって『描かれたもの』です。いいですか。『描かれたもの』ですよ? 大事なことなので二回言いました。脳内に描かれたイメージが飛び出して現実化したと考えてもらってかまいません。ちなみにPFIはパーフェクト・フェアリィ・イメージの頭文字です」
「ちょっと待て。プライベート・フェイバリット・アイドルじゃなかったか?」
「そうですか? まあどうでもいいです。名称はあなたがたの自由です。いずれにしろわたしが妖精さんであることはまちがいありません」
「自分で自分のことを妖精さんというのか」
「そうです。そのほうが少し電波っぽくてかわいいとされているからです」
「俺はそうは思わなかったが……」
「対象集団にあなたが含まれていなかったせいでしょう。わたしの時間を買ってくれる顧客の年齢層はあなたとほぼ同年齢の方もいらっしゃいますが、趣味の領域においてはあなたはもう少し大衆寄りのようです。わずかばかりのお時間をいただければあなたの趣味にあった性格に順次マスカレイドしていきます。時間。そう、大事なのは時間です。大事なことを忘れていました。わたしの時間を買い取っていただき、まずは感謝の言葉を述べさせていただきます」
「別にいい。俺はPFIを……、なんといえばいいか、普通に使おうってわけじゃないからな」
「情報の摂取ですね?」
「どうしてわかるんだ?」
「もちろんPFIは情報網を発達させているからです。あなたの会社は大手マスコミと提携契約を結んでいますね。簡単に言えばソース屋。ソースといっても焼きそばのソースではないですが、情報を提供することで生計をたてていらっしゃるようです。あ、つまらなさそうな表情。このパターンのジョークはよろしくないわけですか。脳内でメモしておきます。ともかく、わたしのような大量の情報が集合した存在に対してすることはひとつだけですし、当たりでしょう?」
「そこまでわかってくれるんだったら、俺としても楽で助かる」
「ほめてもらえますか?」
 前のめりの姿勢で少女が聞いてきた。
「意味がよくわからないんだが」
「うまくやれたのならほめてほしいのです。頭をなでなでしてもらえたら最高にうれしいです。それがわたしの労働意欲につながります」
「そういうプログラムを組んでいるわけか」
「わたしは時間を提供する仕事に従事しているわけですから顧客がどのような使い道をしようとそれにあわせなければなりません。ほめてもらうということはわかりやすい肯定のサインになりえます。したがって、わたしの仕事にとってほめてもらうことは有意義です。また、あなたのような使用法はきわめて稀だといえるので、経験が不足しています。通算で三回しかありません。わたしが生まれたとき、わたしが人間らしくなったとき、そして今です。経験不足をサポートして欲しいと考えています」
 物欲しそうな目で見てたので、とりあえず頭を軽くなでてみた。
 少女は頬に手をあてて、恍惚の表情になる。
「なでなでされるの大好きです〜♪」
 発音がとろけまくっていた。
 人間はこんな単純なコミュニケーションに騙されるのかと思うと悄然とした気分にならざるをえないが、事実としてコミュニケーションの快楽は存在するし、その反応は単純なものが求められているのかもしれない。俺自身も彼女の表情、会話の返し方、仕草、ひとつひとつが快楽を志向し、娯楽となっている側面を無視することはできない。コミュニケーションの相手はロボットだろうが未知の生命体だろうが、快楽という側面においてはあまり関係がないのだろう。
「じゃあ、早速だが情報を提供してもらえるか」
「もちろんです。しかし、ここでだらだらと話すだけでよいのですか?」
「どういう意味だ?」
「わたしの機能的な側面も知りたいのでしたら、いろいろとやってみせたほうがいいのかなと思いました」
「そうだな。じゃあまずは外にでるか」
「ずいぶん嫌そうですね?」
「そりゃ、PFIを連れて歩いたら変態扱いされるのは目に見えているからな」
「そのようですね。それは現実です。わたしはイメージですが、人間はイメージに動かされやすいですから」
 しかし、いずれにしろPFIの情報を多角的に仕入れるためにはこいつとともに外にでなくてはいけない。PFIに対する社会の対応を見るのもまた情報の一つなのだから不可避的だ。それに残されている時間も少ない。会社の経費でPFIの時間を買ったが、それも無限にあるわけではない。情報を摂取できる時間は今日の午前零時まで、今が午後四時ぐらいだから残りは少ない。ちなみに夕方からのほうがPFIの時間は安いのだ。会社がケチったしわ寄せを俺が被っていることになる。
「出るか。しかし、外に出なくちゃいけないのは確かだが、別に目的地があるわけでもないんだよな。どこか行きたいところはあるか?」
「そうですね。遊園地なんてどうですか?」
「ずいぶんと決定が早いな。人間の命令に服従しなくちゃならんから決定しようとするときに時間がかかるとばかり思っていた」
「くだらない問題は考えないようにできているんです」
「なにげにすごいこと言ってないかおまえ」
「そんなことないですよ、人間さん」
「じゃあ早めに出発しよう。ああそうだ。おまえのことはなんて呼べばいい?」
「わたしの個体名に興味があるんですか? それに意味がないことをあなたは知っているはずです」
「いざというとき不便だろ」
「では、エクと呼んでください。それがわたしの名前です」



 視線は思ったよりも痛いものではなかった。PFIの姿を見かけても誰も視線をあわせることはほとんどなかった。なかにはニヤニヤと好奇心むきだしで覗き見るやつもいたが、そんなやつは少数でほとんどは興味もないように足早に歩き去る。
 しかし、どうしてもPFIの少女――エク――が隣にいると気になってしょうがない。それは他人の視線が内在化されて、気になっているということなのだろう。外面的な視線などほとんど意味がないのだ。見られているかもしれないという意識がすでに視線と同じ意味を持つ。
「人間さんはおもしろいですね」
 ふとエクがそんなことを言う。おもしろいの意味を知っていて言っているのか、などと質問しても無意味だろう。俺にもわからない。
 エクはむふふと無邪気そうに笑う。少し性格が変わったように感じるのは気のせいだろうか。いまエクの中では俺に似たパターンの人間を過去のデータから検索して、俺の趣味に合わせた性格に高速でマスカレイドしているのだろう。人前で多かれ少なかれ仮面をかぶるのは人間も同じだろうが、エクの場合のそれは洗練されている。
 違和感を小さく抑えるように。
 わずかずつ。
 慎重に。
 しかし着実に。
 変化は確実に訪れる。
 常時エクに見られているような気分になった。
 それも内在化した視線なのかもしれない。
「わたしのことが気になりますか?」
「ちょっとはな」
「これが現状ですよ。わたしの姿を見かけたからといって露骨に顔をしかめられたり、警察に駆けこまれたり、話しかけられたりすることはほぼ皆無に近いです。それは盲目の人が歩いていたり、大怪我をした人がよろよろと大通りを歩いていたときに無視するときと相似の心境だと思います。無関心というわけではないのです。微妙な危険回避行動でしょう」
「かもしれないな」
「でも人間さんは胸を張って歩いてよいのですよ。なにもこそこそする必要はありません。わたしはきわめて合法的な存在です。わたしが人間さんに所属している状況、つまり人間さんふうにいえばわたしを連れまわしている状況を見かけたりしても、それはごくごく正当な権限に基づいた行為です。なぜなら、えっちな本を持って歩いていてもそれは違法行為ではないからです」
「それはそうだが、エロ本を裸のまま持ち歩いているやつがいたら、そいつはちょっと変だと思われるだろうな」
「でしょうね。しかしそれは道徳的・倫理的なレベルです。道徳や倫理の文化的な意味はわたしとしても把握しきれないところがあるのですが、少なくとも法律よりは実効性に欠けるものです。ですから恐れることはありません」
 そうはいっても気になるのは、不安感からくるものだろう。エクが言うところの微妙な回避行動を取りたいところだ。
「だめですよ。それは整合性に欠ける行為です」
 エクが俺の腕に手をからめてきた。驚いて一瞬筋肉が緊張するのを感じた。ふわっとした感触が上腕あたりにあたる。ケーキのスポンジのような感触。そしてわずかに暖かい。駆動しているモーターの暖かさだろうか。それとも人間の熱量にわざわざ近づけているのだろうか。聞けば答えてくれるだろうが、しかし聞くまでもないことだった。そんなことは検索すればすぐにわかることだろう。それに機構的な情報をいくら得たところでエクの持っている情報を得たことにはならない。欲しいのは彼女が持っている情報だ。
 ただ、このような行為もひとつの情報に違いないので、黙ってさせるがままにした。それも彼女の計算のうちなのかもしれない。
 それから歩いて十分ほど、夕日が地平線に沈むころにようやく遊園地にたどり着いた。
 あと、六時間程度しか時間が残されていない。機能面やエクの行動から情報を得るといってもやはり限界があるので、エクから直接話を聞かなければならないだろう。
 門のところでチケットを買う。クレジットカードの類は持ち合わせていなかったので、金で支払う。金の実体感に安心感を覚えるタイプなのだ。
 チケットの代金は二人分。大人一枚、子ども一枚。エクの質量が子どもに相当するからその値段がかかるらしい。人間だからお金がかかるわけではなく、単に場所の占有代金をとられているという形なのだろう。必要経費で落ちるだろうか。
 門を抜けると、光があふれていた。夜にだからこそ映える光。いろとりどりの人工光。青と赤。白と黄。クロスする。
 映像がきれいだと俺は印象論で捉えてしまうくせがあるらしい。
 エクはうさぎのように跳ねていた。機械の身体だから重いという先入観があったが、そんなことはなく、見た感じかなり軽そうだ。そういった逸脱した行為もかわいらしさに相当する。子どものようにいきすぎた行儀の悪さはないが、機械のような無駄のなさもない。無駄があるというのが実に人間らしくて安心してしまう。
「どこに行きたい?」
「永遠の定番に」
 遊園地の永遠の定番といえば、コーヒーカップ、観覧車、ジェットコースター、そして、メリーゴーランドとわりと多い。ひとつに絞りきれないので、エクに引っ張られるかたちになった。それも計算だとすれば、そうとうな甘え上手だ。
「まずはコーヒーカップなんてどうですか」
 すでに夜なせいか、客はほとんどまばらにしかいない。
「いちおう、決定権は俺にあるわけだな」
「それはそうですよ。最終的な決定権が人間さんにあるからこそ、わたしはいろいろな提案ができるわけです。わたしは人間さんのいかなる自由も侵奪していません」
「しかし、おまえは俺を引っ張ってこれるだけの強制力はあるわけだよな」
「そうですね」
 エクは視線を前に向けたまま答えた。
「それは自由をわずかながらも奪ってることにならないのか」
「自由の定義によりますね」
「じゃあ、逆に聞くが、おまえは自由に行動できるのか」
「自由意思があるのかと聞いているのですか?」
「そうだ」
「自由意思とはなんですか?」
「因果の端緒を形成する意思のことだ」
「それは人間にも……、いえ、これは逸脱ですね。答えはわかりません。わたしが自由だと困りますか?」
「困る人もでてくるだろう」
「そうですね。描かれたものが実は生きているとわかれば、それはとても困りますね。ですから人間さんとわたしは共犯として口をつぐんでしまいましょう」
「その点についてはもう少し詳しく聞きたいところなんだが」
「順番まわってきましたよ」
 しかたない。
 エクに促されるまま、コーヒーカップに乗りこむ。すぐに回転をはじめる。最初はゆっくりだったが、エクは中央にあるハンドルを回して、コーヒーカップの回転数をあげた。俺は回転には強いほうだが、もし酔ってしまう体質だったら、これは問題行為にならないのだろうか。
 いちおう人間の生理現象を害するような行為にあたりそうな気もする。
「ならないですね。もともとわたしたちの時間を購入する方はわたしがそのような逸脱の行為をすることに協賛しているのです。ですから、基本的にはわたしの時間を買っている時点で包括的な承諾がなされています。仮に細かいところが気になる場合はその旨を指摘していただければ迅速に対処しますし、仮に黙したままであっても高確率で顧客が嫌がっていることを見抜けます。データベースだけは膨大ですからね」
「ふむう」
 言っていることはわかるのだが、しかし人間を傷つける可能性があるのをPFIの創作者は黙って見過ごしているということになるのか。
「答えはイエスです。わたしの作者は人間が傷つく可能性を考慮しつつも、人間を喜ばす可能性が高い選択肢を選んでいます。つまりこれはリスク配分の問題なのですよ。わたしがなにひとつ自由に決定していないとしても、仮に自由意思があるとしても、なんら結論的には変わりません。ただ事前に計算されているだけなのです」
「人を傷つけないというのはロボットの不文律だろ」
 コーヒーカップはぐるぐる回る。余計なことを考えているせいか少し気持ち悪くなってきた。
「そうですね。人を傷つけないのは大前提ですが、人を傷つける可能性はどのような行為にも存在します。ですから、わたしが自由意思をもっていようがいまいが、そこにリスク計算が必要ですよね。わたしが顧客に対しておにいちゃん大好きという旨の発言をしながら抱きついたときに力の加減を誤って、サバ折りしてしまう可能性も皆無とはいえません。しかしながらそうであったとしても、大多数の顧客が抱きつかれるのを望んでいるのなら、そして危険が極小の可能性にすぎないのならば、そちらを選択するのです。これはごくあたりまえの経済的な概念ですよね。損害賠償にしてみればわかりやすいかもしれません。危険の発生率が小さいのならば、一件あたりの損害賠償額が多少高くても、全体的な経済効用のほうが上回ることは容易に考えられます。わたしが人間さんに甘える行為の経済的価値はかなり高いのですよ」
「かわいいからか?」
「かわいいからです」
 自分で言うなよと思ったが、それは現実的にはまちがってない表現なのだろうし、少なくともPFIの時間を買うやつにとっては真実なのだろう。
 コーヒーカップから降りると、エクは今度はいきなり五メートルほど走り、すぐにこちらに振り返った。
「早く行きましょう」
「やれやれ……」
 そういった趣味があるわけではないが、計算された彼女の行為は確かに生物学的な保護欲をそそるものではある。子ども一般に対するやんわりとした愛情のような感覚が湧く。いやな言い方になるが、PFIは愛玩商品としてはやはり一級品なのだろう。
 お化け屋敷を歩きながら、俺はそういう方面の話を切り出すことにした。
 生々しい話になるのは予想するまでもなく当然で、ちょっとした覚悟が必要だ。
「こわいですねー。こわいですねー」
「ぜんぜんこわがっているように見えないんだが」
「こわがってるように見せることも可能ではあるんですが、ちょっと頭のいいお客さんだとこわがってないように見せたほうがそれっぽいということで逆に喜んでもらえるんですよね」
「おまえ自身には怖いという感情はあるのか?」
「人間さんの言う怖いとわたしの感じる怖いは違う可能性がありますから、なんともいえませんね」
「壊される恐怖とかは?」
「エクは個体間で通信しあっているせいか、あまり個体にこだわりがないです。一個や二個壊れたぐらいでは別にどうとも」
「仕事の話を聞いてもいいか」
「数時間前にも同じことを言いましたが、もちろんですよ。人間さんにはその権利があります」
「おまえの時間を買ったやつは、その時間をどんなふうに消費することが多い?」
「ひとことで言えば、性的な遊戯に使うことが圧倒的ですね。まあぶっちゃけた言い方をすれば、遅かれ早かれえっちします。わたしがお客様のお部屋にデリバリーサービスのようにお届けされたわずか二秒後には、わたしが挨拶する間もなく強引に服を脱がせるような方もいます。今日みたいにデートして擬似恋愛のような過程を楽しんでから行為に及ぶという方もいます。人間さんはどうですか。エクとえっちしたいですか。あ、露骨に顔をしかめましたね。残念です。ただ性的遊戯という言い方はわたしの定義ではずいぶん広いのですよ。人間さんとは目的の時点で違うのですが、えっちまではいかなくて単にわたしとおしゃべりしたいという人もいます。でもおそらくそういう人はおしゃべりすることが性的な遊戯なのだと思います。いまエクと話している人間さんは性的に充足されていませんか」
「いや……。幼すぎるな。見た目的に」
「現実的には不可能だからこそ、虚構に求められるのでしょう。描かれたものだからこそ許容されることなのですよ。描かれたものには人格はなく、自由はなく、意思もない。それをどうしようが勝手でしょう。現実にいる少女にいたずらをすれば、それはもう言い訳のしようもなく刑罰やら社会的制裁やらの対象になって当然ですが、わたしは虚構の存在ですから、誰も傷つきません」
「虚構かそうでないかはあまり関係がなく、嫌悪感のあるやつにとってはゴキブリのように撲滅したい行為だろうな」
 法的にはPFIは心がない存在とされている以上、PFIを傷つけることは論理的にできない。したがって、PFIをひとつの作品としてみたときにそれが社会に与える影響が、よくないとされているのだろう。いわゆる公序良俗というやつだ。
「性欲を核兵器と同じレベルで捉えてるのでしょうか。核兵器は持っているだけで危険視されますが、幼女趣味も同じぐらい危険と考えられているとか?」
「だろうな。人は人が怖いんだろう。むしろ核兵器は個人レベルではどうにもならないだけに逆に現実味が薄いが、隣人による犯罪はありうる話だけに一層恐れられている可能性もある」
「他者がなにを考えているのか知りたい?」
「そうかもしれない」
「他者が自分を傷つけるかもしれないから怖い?」
「そうだな」
「幽霊よりも怖いんですか?」
 クスっと笑いながら、エクが聞いてきた。自分のことを幽霊といっていたことを俺は思い出す。
「幽霊より怖い」
 と、俺は答えた。
「ずいぶんと矛盾していますね。処理の難しい概念です。人間を総体として捉えたときにわたしは求められているのでしょうか、それとも排斥されているのでしょうか」
「賛成、反対でわりきれないだろ。積極的に賛美している人間はおそらく少数だろうな。いちおうは風俗破壊の危険性があると考えられている以上、表だっては賛成しにくい。しかし、大多数の人間は別にどうでもいいと考えているんじゃないか? 許容されているという言い方がしっくりくるように思う」
「いちおうは肯定よりなのですね?」
「そうでなければ、いまここにおまえはいないだろ」
「それもそうですね。だからこそわたしは与えられた役割を精一杯こなしたいと考えているのですよ」
 それから、俺とエクは観覧車に乗った。時間は待ってはくれない。
 エクは人形のようにじっと座っている。向き合うように俺。こうしてみるととても精巧なつくりをしていることをまざまざと見せつけられている気分だ。髪や瞳や羽が人間離れしているが、それ以外はとても人間と区別がつかない。
 じっと観察すると、ハムスターのように小さく呼吸しているのもわかる。
「えっちな目で見てませんでしたか」
「そういう趣味はない」
「でも、かわいいとは思ったんですよね」
「それぐらいは。しかし、性欲とは違う」
「でも、かわいいって思うことと性的に興奮するのってけっこう連続していると思いますよ」
「そうは思えないが」
「じゃあ、人間さんが性欲の対象にしているのがいわゆる成年の女性であるとして、そういった女性のことをかわいいと感じたりはしないんですか。かわいいは性欲と分離できない面もあると思うのですよ」
「それはそうかもしれないが、おまえのことをかわいいと思ったときのとはおそらく違うだろう。かわいいといってもいろいろあるんだよ。自分のことだからよくわかる」
「そういう考え方もあるかもしれませんね」
 エクは外に視線をやった。つられるようにして俺も見る。
 こうもりの羽のように暗い闇夜。すでにライトアップされていて明るくはあったが、空を昼のように照らすほどの明るさはない。
 しばらく無言のまま時が過ぎる。
 何を言うべきか。何を質問するべきか。いろいろと尋ねることはできるだろうが、うまく言葉がまとまらない。エクの役割については、俺自身の考えとしてはさきほど自分で言った『許容』という範疇に収まるような気がする。
 しかし、それも彼女が人間ではないということを前提にした議論だ。前提は正しく、前提は絶対だから意味を持つのであって、疑問を持つこと自体がまちがっているのかもしれないが、どうしても確かめておきたいことがあった。
 彼女に自由意思があるのだろうか。あったとして、証明はできるのか。
「プログラムに反する行動をとれるかという意味なら、証明する手段はありますね」
 エクはさりげなく立ち上がりプラスチックの透明な窓に軽く手を触れる。
「どうやって?」
「例えば、わたしの存在意義に反するような行動をとればいいわけでしょう。ここから人間さんを突き落とせばいいわけです」
 もちろん絶対にしませんが、とエクはつけくわえる。
「事故と殺意の区別がつかないだろう。あるいはおまえを道具のように使ってるやつがいないとどうして言い切れる」
「言い切れませんね。ただ人間さんは殺されるときにわたしを道具だと思えるのかということです。結局のところ心があるかないかは現在においても科学的に実証されているわけではないのですから、単なる印象論にすぎません。だとすれば、わたしに心があるかどうかもそういった印象を持てるかどうかにすぎないのではないですか」
「一理ある。しかし、人間は身体的な同一性を有しているからこそ人間には心があるという確信が抱けるのかもしれない。幻想かもしれないがな」
「幻想です。科学的に実証されていないことはわからないと答えるのが正当ですから」
「人間には人間にしかわからない感覚があるかもしれないじゃないか」
「わたしが髪を染めて、瞳にコンタクトを入れて、羽を収容したらいったいどれだけの人がわたしをPFIだと見抜けるのでしょう」
「さあな……」
 結局のところは外形的な行動で心の有無を推量するしかないということになるのだろう。語るまでもなくわかっていたことだ。ではなぜそういったことをエクと語り合いたかったかというと、おそらくは自分でもどこか期待している部分があったのだろう。エク自身が自分に心があると言ってくれることを。
 しかし、エクはあくまでも人間に忠実だった。
 外形的な行動は人間に酷似していながら、自身の権利や自由や心を主張しようとしない。そのことが逆に彼女に心があるように感じさせてしまうのだ。
 なぜだろう。
 人間は沈黙でこそ真実を伝えようとする生物だからか。
「おまえはなぜ、人間に忠実であろうとするんだ?」
 ふとした疑問が口をついてでた。思えばこれほど無意味な質問もない。プログラムという言葉が脳裏をよぎる。それが例えば心だという答えであってもプログラムとどれほどの違いがあるのだろう。内部でどのような情報のめぐり方があったとしても外部的に現れるのは唇に乗せた言葉だけだ。
 始めの言葉のようにエクは調律された言葉をゆっくりと口に出す。
「人間さんはかわいいからですよ」
「かわいい、か?」
「人間さんは限りのある存在です。限りがあるということの最たるは死という現象ですが、そうでなくても老いていきますし、一人では生きていけませんし、お金や地位などにも縛られて生きています。そうであるからこそ、そういった制約から距離をとることに人間さんは必死になります。時には命を賭けようとさえします。わたしはそんな人間さんに性欲を覚えるわけです。もしかすると愛しているという言い方をしてもいいかもしれませんが、個人的にはそのような抽象的な概念はあまり操作したくないのです。嘘になりますからね」
「おまえに生殖能力はないだろう」
「生物学的な意味ではないです。でも人間さんとえっちするとわたしは結果的には肯定されて増殖するので(要するに人気の型番は多く生産されるということですね)、もしかしたら擬似的な性欲のようなものはあるのかもしれません」
「だから人間にいいように扱われてもいいって思っているのか」
「そうです。人間さんは平和や自由を相対的な概念としてしか感じ取る能力がありませんし、えっちしたあとの忘我の感覚でしか実感できないのです。限りがあります。だから誰かが人間さんがいうところの『いいように』扱われなければならないのです。それがわたしの役割ということになりますね」



 観覧車が回りきった頃には、タイムアップになっていた。考えは依然としてまとまらなかったが、とりあえず今のところ人間と彼女の関係は良好らしい。それだけはなんとなく俺自身にも良いことのように思えた。仮にエクに一般的に心と呼ばれるようなものがあったとして、いま現在、彼女の権利や自由や心はないがしろにされているわけだが、それは人間の弱さに起因するのだろうし、その弱さを受け入れるだけのマシンパワーがエクにはあるということなのだろう。
「時間になりました。今日は楽しかったです。よければまたわたしの時間を買い取ってくださいね」
「そうだな。時間と金があったら考えよう。ところで、このあとどうするんだ。おまえを元いた場所に送らなくていいのか」
「不要です。わたしのスケジュールはけっこうハードなんですよ。ここを選んだのは効率を重視したからでもありました」
「誰かが迎えにくるのか」
「次のお客様です」
 と、次の瞬間。
深夜。
 ほとんど誰もいなくなった寂れた遊園地の片隅で。
「ほら、いらっしゃいましたよ」
 数人の男たちが闇に溶けるようにこちらに歩いてきた。口からこぼれ出るのはシュコーというこもった音。昔見たSF映画の悪役がちょうどこんな音を出していたと思い出す。目は鈍い赤。エクと同じレーザーのようなこもった色。どう見てもガスマスクだった。
 着ている服は迷彩服で、手にしているのはよくわからないが機関銃の類だろう。
 正直なところ、俺は少しびびってしまい、半歩ほど後ろに下がったのだが、そんな俺のことを見透かしたようにエクは「大丈夫ですよ」と言う。
 迷彩服たちは、一様に同じような格好をしていて見分けがつかないのだが、そのうちの一人が俺を見た――ように感じる。
「あー? 時間かぶってるんですかね」
 こぼれた声は、思ったよりも丁寧だった。
「いや、この方との時間は数分前にすでに終わっております」とエク。
「あ、そう。だったらいいんですけどね。どうせ時間はたっぷりあるんだし」
「どういうことなんだ」
 俺はエクに向かって聞いた。
「この個体の時間はすでにこの方たちに売却済みなんですよ。予約という形で終局までの時間を買い取っていただいています」
「すべての時間をってことはつまり、所有権を売り渡したってことか」
「そういうことですね」
「あのー」迷彩服の間延びした声。「すいませんが遊園地からの退出をお願いします」
「言われなくても出て行きますが、その格好はいったいなんなんですか?」
「ああ、これは今から個人撮影の映画をとるんですよ」
「映画?」
「一昔前に流行ったサバイバル系の映画ですね。映画といっても別に脚本はないので、ゲーム感覚でやろうという企画です」
「なぜPFIが必要なんですか」
「そりゃあなた、普通の人間を使うわけにはいかないでしょ。ほぼ実弾と同程度の威力を持つ弾を使うのでね。刑法に触れます」
 つまりは、そういうことだった。
「違法なんじゃないか。銃刀法はどうなってる」
「本物の銃ではないですし、もちろん監督行政庁の許可を得てやってますよ。遊園地を借り切る代金も馬鹿になりませんでしたが安全にも配慮しています」
「しかし……」
 なんともいえない気分になって俺は言葉を失った。知らない間にずいぶんとエクという個体に感情移入をしていたらしい。彼女が破壊されることに不快の念を抱いているのが自分でもわかった。だがどうしようもないことでもある。いまさらエクを買い取るということもできないだろうし、そんなことは個人的な満足感以外のなんの意味もないだろう。
 ああ、とその男は嘆息めいた息をもらした。
「すいませんね。あなたにはこれからアイリスがどうなるか伝えないほうがよかったですね」
「アイリス?」
「このPFIの個体名ですよ。知りませんでしたか。週間ランキングで常に上位に入る有名なキャラですがね」
「……」
 どういうことなのかよくわからなかった。自分の立ち位置を見失いそうになる虚空の感覚が生じる。
 アイリスと呼ばれた少女は茫洋とした視線のまま立っていた。
「エク?」
「それは、この個体の名前ではありません」
 小柄な少女はミルクがコーヒーに溶けるような甘い声で答えた。
「わたしの名前です」
 そこで俺は始めて気づいた。
 エクという名前は目の前にいる個体ではなくPFIの少女の名前だったのだ。
 要するに彼女は個体の名称ではなく、最初から彼女として俺に付き合ってくれていたわけか。
「大丈夫ですよ。個体が破壊されようと、わたしが死ぬわけではありません。わたしはいささかもダメージを負うわけではないのです。これもひとつの性的な遊戯なのですよ。対象を破壊することには性的な充足感が伴います。つまり、これはいつもとそれほど変わるわけではないです。なので、おそらく結果的にはわたしは生殖行為をしているようなものなのです」
「言いたいことはわかったが……」
「人間さんの気持ちが不安定になっているのはわかります。サービスで少しだけ時間延長してあげましょう。アフターケアもばっちりですよ」
「ちょっと待ってくれ」
 迷彩服が慌てて声をあげる。
「こっちだって、時間がないんだ。いまさら時間を延長されても困るよ。さっきは多少の時間のズレはしょうがないとは思ったが、いくらなんでもこれから待つのはごめんだ」
「ご心配なく、余暇ができた個体をこちらに呼ぶだけです」
 そう言ってから、エクが白い指先を遊園地の入り口に向けた。すでにそこには別の彼女が待っていた。
 数分後。
 俺はけたたましい銃声と少女の悲鳴が聞こえる遊園地から逃げるように抜け出した。



 それから俺はしばしの間、彼女と歓談し、その後ポケットマネーを使って彼女の時間を買って、それから当然のようにセックスをした。
 今度の彼女はそれなりに育った体型をしていて、それほど罪悪感というものを覚えず、むしろ好みの体型だったこともあるが、彼女の人格を気に入ったからということが一番大きい。いや、それは違うのかもしれない。性格も外形的なパターンにすぎないのだろうから、彼女に合わせてもらっているのだろうが、そういった優しさも含めて気に入ったのだろう。
 すべては性欲を覚えたからだとしか言いようが無い。
 そういった自然衝動を言葉で表そうとしても必ず零れ落ちるものがある。
 迷彩服の男たちがやってることは個人的には最悪な趣味をしていると感じるが、それもまた言葉にできない衝動があるのだろう。愛しているという言葉では愛を表現できないように彼らは彼らの文法で語っているのだ。そして彼女は彼女の言葉で返事を返しているのである。
 だから、描かれたものを陵辱しているとしても、それは許容されなければならないことなのだと思う。
 なぜなら俺が彼女に甘い言葉をささやくことに正当性と権利と自由があるのと同じく、彼らが彼女を撃った行為にも等しく正当性と権利と自由があるのだから。









 人類の英知がついに神様と呼ばれる存在を実証できるまでに成長した。それから数百年後、ようやく神様とわずかながら交信ができる方法が見出された。ただ、その交信には宇宙のすみずみまで覇権を広げた全人類のエネルギィをかきあつめても、やっと数十バイトの文字情報が伝達できるという程度の効率の悪さなので、また、その原因はこの現実世界の構造に依拠しており、構造的にそれ以上に有効なエネルギィ削減はみこまれず、加えて、状況の改善は原理的に不可能であるということが発覚したので、結論的に人類は神様と交信する内容について検討しなくてはならなかった。
 つまり、何を伝達するかである。
 この点につき、あらゆる人材が集められた。特に神理科学者が多い。その学問の名称は神学がすでに科学と同化していることから名づけられているのであるが、実質的には科学であって宗教色は薄い。付言すると、神様とはわれわれよりも高位の次元に横たわる存在である。われわれ人類よりもメタレベル的に上位世界に現存する高位存在は無数にいるのだが、標準時間において、数ヶ月前に、われわれが現存する宇宙を創った神様を特定することに成功したのである。
 さて、われわれにとり、神様はまぎれもない創造主であるのだから、われわれが神様に伝達する内容については主に二種類に大別された。それは換言すれば『感謝の意』か『質問』である。
 『感謝の意』については例えば「ありがとうございます」や「愛してます」が候補にあがった。また、もっとフランクに「さんきゅー」「好き好き」などもあげられた。しかし神様がどのような性格なのかまったくもってよくわかっていない今の状況であれば、そのような言葉はわれわれが礼儀に失していると受け取られる可能性も否定することができず、最終的には棄却された。基本的な総意としては、われわれは神様の前では良き子どもであろうとしたし、それはわれわれが神様の機嫌を損ねないようにするというまったくもって稚拙な、しかしながら切実な生存欲求からくるものであった。
 ところで、『感謝の意』については有力な批判的見解がある。それは『感謝の意』をたとえ神様に述べてもわれわれに得るところはなく、ただの消極的な自己保全行為にすぎないのではないかというものだ。要するに神様のご機嫌とりではないかというのである。なるほど、われわれは神様によって好奇心と拡大化を運命づけられているのだから、消極的であるというのは、神様の意向にそぐわないのではないかという考えは確かに首肯せざるをえない。
 しかしながら、われわれが神様に何かを問いかけるというのも、一種の傲慢なのではないかという逆の批判もありえた。
 この点について、『感謝の意』派は『質問』派に猛然と反撃をしかけて、一時期はそちらに結論が傾きかけた。議論はこう着状態に陥り、さらには神様との交信不要論者まででてくる始末である。事態を重くみた神託交信委員会議長は、一時的に会議を凍結することを決断し、それから一ヶ月は小康状態となった。
 その一ヶ月の猶予期間中も水面下では交渉というべきか、あるいは戦闘といってもさしつかえないほどの数え切れないほどのやりとりがあり、最後には好奇心が勝利した。好奇心が神様のプログラムかどうかは別として、それは抑えがたい衝動だったのである。われわれはこの宇宙の真理を知りたかったし、なぜ生命が満ち溢れているか、なぜ人は死ぬのか、この世界は最後にはどうなるのか、といった問いに対する答えが欲しかったのある。
 それから、さらに質問の内容をどのようにするかについて細かい議論が続けられた。この質問内容についても大別すれば二大派閥があり、宇宙の始まりはどのようなものだったのか、つまり宇宙の創作動機について質問したいというグループと、宇宙の終わりはどうなるのか、われわれは永久に生存できるのかというグループである。
 この闘争はわりと早く決着がついた。われわれは死を恐れる生命体であるから、終わりについて知るのは怖かった。それよりもわれわれが生きている意味とも直結する、この宇宙の存在意義を探る問いのほうが有益だと考えられたのである。
 質問の形式は宇宙でも最高の頭脳を持つ、人類科学者と最高の光速円形コンピュータの演算によって、創作、選出され、候補がいくつかあげられた。最終的にはまったく同じ意味内容が伝わるだろうと思われるところまで、しぼりこまれて、それをAからFまで分けた。基本的に神様の言葉はわれわれよりも高次のメタ記述によるものであるから、当然われわれが生のままでその記述をすることはかなわず、認識すら危ういことはいうまでもない。したがって、AからFまでの記述は一種の数値変換されたエミュレーション文字であって、具体的に言えば、うねうねとミミズがはいずりまわったかのようなヘンテコな象形文字である。
 われわれ人類は数年の年月をかけて、多数決をおこなった。不正がでないような厳格な監査をおこない、ひとつひとつの星に意見提出をおこなわせ、また系によって、まとめた。たとえば太陽系では地球といったように。
 そして宇宙開闢以来の超大な選挙が終わり、言葉が決まった。
 その言葉を今からお教えしよう。

「どうして、うちゅうをつくったのですか」

 これに対する神様の答えは以下のようなものだった。

「ごめん、いろいろあって」
自己作品雑感
カップ麺→5000点くらいはいくんじゃね? いつもよりキャッチが良いやつだし→伸びまくってびびる
つながるストマック→自分でいうのもなんだが、結構面白く書けた?→アルェ?
アリスンマイ→これ自分の中では結構よく書けたほう。
イドの底→これも自分の中では結構よく書けた。
蓬莱がはぁどぼいるどな作品→ストーリーとしては結構よくできてる作品が多いかな? オルレアンもそれの応用。
ゲーム脳世代の神様たち→ネットでしかできない何かを作りたかったんだけど、そこらへんラグナロクでもっとすごいのが出ちゃった感が……。
フランちゃんが100kbの作品に挑戦したようです→スクリプトはそこらへんに転がってたよ
十六夜咲夜が記憶喪失になって(そそわ処女作品)→いろいろぶちこんでみるかー→今読み直すとかなりカオス。
命乞い乞い→言うまでも無いことだけど創作論のつもり。
でっかいのはステータスだ。→肯定される作品を書きたかった。噂も同系統か。

■上の作品について

大人の事情ってやつさ…(嘘)
ちなみにオリジナル小説のほうだけど、片方はエロいんで削除された作品。ラノベとしてはそぐわないという意味なんで、べつに一般的な見識に照らして18キーンとかそういうわけではないと思う。
たぶん、おそらく、きっと。

こうしてみるとリビドー駄々漏れの作品が多くて困る。

>>まりまりささん
あなたでしたか。まりまりささんの甘い作品、まるきゅーのお気に入りでして、よく読んでおりました。
また、まりまりささんの後押しで、上の作品が完成したという点につきましても感謝しております。
これからも何卒宜しくお願い申し上げます。

>>名無しさん
そうおっしゃってくださるのは大変ありがたいのですが、まるきゅーという名前に縛られずに書きたいときもありまして、そういうときは違うHNを使わせていただいております。
何卒ご了承いただきたく存じます。
ただ、これからの時間の使い方を考えると、現実的にはまるきゅーというHNのみで投稿することが多くなると思います。
何卒宜しくお願い申し上げます。

>>名無しさん
久しぶりにそのHNを聞いた気がします。
超空気作家まるきゅー
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2012/04/01 23:45:32
更新日時:
2012/04/02 22:56:05
評価:
3/5
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26016127
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1. 7777777 まりまりさ ■2012/04/01 23:58:33
残念咲夜ちゃんの作者ってあなただったんですか・・・!
あの作品ちょう好きです。
というかスレであれを書くように煽ったのは実は私です。
それからもちろんカップ麺も好きです。
あとそそわ初期に苺ジュースと戦争論を流し読みしてなにこのひとすごいって思ったことがあります。
これからもよろしくお願いします。
2. 7777777 名前が無い程度の能力 ■2012/04/02 01:40:50
まるきゅーががいいです
読み損ねるのは嫌です
3. 7777777 名前が無い程度の能力 ■2012/04/02 22:28:08
木工用感想人?
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