ヨウカイスレイヤー 第T部エピソード『エイプリル・フール・イズ・ベスト』

作品集: 最新 投稿日時: 2012/04/01 23:25:02 更新日時: 2012/04/01 23:25:02 評価: 2/9 POINT: 22529211 Rate: 450584.72

 

分類
ヨウム・コンパク
アトウ・ヒエダ
ヒジリ・ビャク=レン
【尊重】【注意】ドーモ、みなさん。ニワカアメです。これは限りなくパロディであり、ニンジャスレイヤーという史上もっともエキサイティングなサイバーパンク小説を史上もっとも少女なゲームと合わせた結果に産まれたなんかあれです。たいへん多量のニンジャ・アトモスフィアと、ニワカアメの汚い文章があわさり、急性ヨウカイリアリティショック症状を引き起こす可能性を秘めているかもしれないし、そうでないかもしれないので、いちおう注意重点してください。本作品はボンド氏&モーゼス氏原作のニンジャスレイヤーパロディです。ついったーで翻訳連載しております。https://twitter.com/#!/NJSLYR  そして当然東方パロディです。お世話になっております【警告重点】【限定】




 幻想郷全土を電子ネットワークが覆い尽くし、河童のサイバネティクス技術が普遍化した未来。
 現世植民など稚気じみた夢。人々は灰色のメガロシティに棲み、夜な夜なサイバースペースに逃避する。
 里役場よりも力を持つ河童メガコーポ群が、人里を背後から操作する。
 ここはネオゲンソウキョウ。結界鎖国体制を敷く、日本の僻地だ。

(これまでのあらすじ)
 マヨヒガ・シックスゲイツの幹部であるキュウビ・ハクメンのアンブッシュに倒れたヨウカイスレイヤー。命からがら逃げ込んだ先は犯罪蔓延る人里のスラム街であった。手負いのヨウカイスレイヤーを助けたのは、人里の富豪の娘、アトウ。
 彼女のグモンリーディング・ジツと呼ばれる超常ハック技術により、ヨウカイスレイヤーは暗黒メガコーポを牛耳るマヨヒガの真実を知る。だが彼女の生存はマヨヒガによって付きとめられ、今まさにヨウカイスレイヤーを抹殺すべく、シックスゲイツのてだれ達が彼女を狙っていた。ヨウカイスレイヤーはアトウを守れるのか。この危機を切り抜けられるのか。
 戦え!! ゴウランガ、ヨウカイスレイヤー!!


 ヨウカイスレイヤー第T部『ネオゲンソウキョウ・イン・フレイム』エピソード

 エイプリル・フール・イズ・ベスト #1


 重金属を含んだ雨がネオゲンソウキョウの穢れた土地を更に悪化させる。ZUN帽を被り、重金属雨を退ける外套を着込んだ少女と、その浮浪者めいた格好の少女に手を引かれる乙女が、薄暗い路地を駆け抜ける。『実際安い』『殆ど違法行為』『ヒソウテンソクよりスゴイ』などと退廃的なメッセージのネオンサインが輝くこの通りには、常識をモノとも思わないモリヤ・カルトや、幼女と見れば飛び付くようなガケシタシンシなどの無法者達が跋扈している。
 ネオゲンソウキョウでまともな考えを持っている人間ならば、まずここを通過しようとは思うまい。

「どこへ」
「解りません。ただ、今は逃げなくては」

 浮浪者めいた格好の少女は、苦虫をかみつぶしたような顔で言う。少女……ヨウカイスレイヤーこと、ヨウム・コンパクは、今まさに迫りくる危機を、そのヨウカイ第六感によって感じ取っていたのだ。傷ついた身体はまだ癒えてはいない。ここでシックスゲイツの襲撃にあえば、間違いなくネギトロか、ツキジに並ぶマグロめいた死体となるだろう。
 行くあてはない。しかし逃げねばならなかった。
 ヨウカイスレイヤーはヨウカイを狩る者だ。しかし狩られる側となると、不慣れであった。マヨヒガ・シックスゲイツのハクメンに出会うまで、ヨウカイスレイヤーの前に敵はいなかったといっても過言ではないのだ。ヨウムの肩から下げられた二振りの刀『ゼイキン』と『ロウドウホウ』は、そんな状況でもヨウカイの血を求めて疼いている。

 ヨウムの命を救ったアトウ・ヒエダの身にもまた、その災厄が降り注がんとしている。関わったのは己の所為だとして、ヨウカイスレイヤーは自責の念に駆られていた。彼女は富豪の娘。彼女から漂う奥ゆかしいアトモスフィアは、古き良き幻想郷の面影が見え隠れする。

「先代に、お会いした事がある」
「先代。お父様ですか、お母様ですか」
「いいや……今から、百数十年前の話です」
「あっ。アキュウの頃の、私ですね」

 そう。アキュウ・ヒエダ。思い起こせば、あまりにも懐かしい日々。ゲンソウキョウがまだ幻想郷であり、理不尽な巫女が妖怪を狩りだし、魔法使いが空を飛び、現人神が高笑いし、厨二めいたヒサツ・ワザを叫びながらダンマク・ジツを張っていた、あの懐かしい日々を、アトウの面影から想起する。

「では、本当に、古事記に書かれた通りの世界になってしまっている、ということですね」
「そうです。先代が懸念していた事実を書きとめた古事記の通り、マッポーの世となったのです」

 ヒエダ家の先代、アキュウ・ヒエダによって残された預言書である古事記には、将来幻想郷がマッポーの世となり、慈悲の無い鉛色の未来が広がるとされていた。彼女の懸念はまさに的中し、ネオゲンソウキョウを絶望の海に突き落としている。それも全て……ダイヨウカイ、ユカリ・ヤクモの行いによるものだ。

「貴女は、ヨウカイなのですか?」
「……半分そうで、半分違うの」

 自分は、半分ヨウカイで、半分人間である筈だった。当然半分人間であるならば、寿命もあっただろうが、今のヨウムにそういった衰えは一切なかった。むしろその力はより老練に、老獪に、極まって行く実感があったのだ。
 ヨウムの脳裏に、あの日の出来事がフラッシュバックする。

「ただ、今は殆ど、ヨウカイなのかもしれません」

 あの日。メイ・カイにあるサイギョ・チェリーブロッサムの下で行われた宴会での出来事だ。


 ※


 ネオゲンソウキョウが、まだ幻想郷であった頃。いつものように春になればヨウカイから人間まで、様々な者達がメイ・カイに集まって、花見をしていた。当然ながら、妖怪桜であるサイギョ・チェリーブロッサムは咲いてはいない。このサクラの木の根元には、ヨウムの主人であるユユコ・サイギョの遺体が埋められているのだ。
 この事実を知る者は少ない。それを知っているのは恐らく、自分と、自分の祖父と、ヤクモなど限られた人物だけである。これは本人すら知らない衝撃的事実なのだ。
 読者諸君は不思議に想うかもしれないが、ヨウムの主人であるユユコは人ではなく亡霊である。そして亡霊は自分の遺体という現実を突きつけられると、気化する液体めいて成仏してしまうのである。
 つまりこのサイギョ・チェリーブロッサムが咲き誇る時こそ、主人であるユユコ最期の時なのだ。

 あの日、宴会の乱痴気騒ぎを抜け出したヨウムは、一人サイギョ・チェリーブロッサムを眺めていた。思い起こせばこの宴会が開かれるほどの友好関係が広がるまでの過程で、ヨウムは様々な人間とヨウカイに接して来た。その中でもやはり、一番の印象とインパクトを秘めている思い出といえば、このサクラを咲かせようとしたユユコの暴挙であり、何も知らずそれを手伝った自分が起こしたインシデントであろう。

「ヨウム=サン」
「ユカリ=サン、どうしましたか」

 そんなヨウムに声をかけたのは、ダイヨウカイであり、ユユコの親友であるユカリ・ヤクモであった。知識としては知るが、ヨウムはユカリについての詳しい事情を殆ど知らない。そんな彼女が一体自分に何のようだろうか。こうして二人で語り合う程の仲ではない筈だ。

「ユユコがね、もう良いって」
「はて。どのような意味でしょうか。ユカリ=サン」
「そのままの意味よ。もう良いって」

 そこから先の記憶はない。ユカリ・ヤクモによって何かしらのアンブッシュを受けたのだろう。気が付いた頃には、幻想郷は既に幻想郷ではなく、主人であるユユコは居なくなっていた。ヨウムとて日々研鑽を積む一人の剣士であり、人間を超越したヨウカイでもある。そのような人物ですら、ベイビーサブミッションの如く扱うユカリの力は、想像を絶するものだ。しかし、それは良い。まだ良い。問題は、目を覚ましたのが百数十年も経った先で在った事だ。

 封印されてしまったのだろう。ユカリの言葉を読み解くに、ユユコは恐らく、己の消滅を願っていたのではないか。そして、それに確実にアンタイするであろうヨウムを、まず抑止した。考えられるのはそれだけであり、真実は一向に見えてこない。真相を知るためにヨウムはユカリの下へと赴こうとしたが、彼女は退廃した世界の王として君臨し、一介のヨウカイ程度ではまるで近づきようの無い位置に居たのだ。

 そして何故か襲い来る彼女の部下達を退けながら、ヨウムは一人戦い続ける事となったのだ。もし、本当にユカリがユユコの意図を汲んで、ユユコの存在を消したというなれば、納得せねばならない。だが、そんな平和的解決策も取れず、まして話し合いにも応じそうに無い状態では、目的を目指して敵を切り刻むほか無かった。


 ※


 二人が逃げ込んだのは、里の端に位置する廃テンプルであった。当時の名を命蓮寺と言い、ヨウカイボンズ達が日々を営んでいた場所だが、今は見る影も無い。
 テヌグイ・タオルケットで重金属の雨粒を拭きとると、アトウは携帯IRC端末を取り出し、サイバネ手術で取りつけられたであろう首のジャックに直接回線を繋ぎ、どこかへアクセスを始めた。本来ならば止めるべきだが、アトウの場合はグモンリーディング・ジツという超常のハック技能を習得したヤバイ級ハッカーである為、逆探知などの心配はまずない。ヨウムの居場所がばれたのは、単純にお腹がすいて屋台でスシを買っていたらマヨヒガのヨウカイに見つかったからだ。
 ウカツ!

「ヨウム=サン、これをみてください」

 アトウがIRC端末を差し出す。画面にはネオゲンソウキョウの地図があり、ところどころに『重点』の文字が見受けられた。

「これは」
「マヨヒガはヨウカイにチップを仕込み、各種行動を観察している様子です。なのでサーバーに少しアクセスして、そのデータを此方の端末に転送するようにしました」
「それは、大丈夫なのですか」
「はい。マヨヒガ所属のヨウカイのアカウントをハックして偽装しています。更に代替えのアクセス先を用意して、そこを更に暗号化して、此方に転送しているので、まず気がつかれないと思います。長い間は使えませんが、バレても此方の居場所は知れません」
「すごいですね、アトウ=サン」

 表示された重点の文字が動いている。この廃テンプルに向かってくるヨウカイの姿は見受けられない。この間、少しでも体力を回復し、状況を打破せねばならない。それに、この警報システムがあれば、ヨウカイの場所を特定し、此方からアンブッシュを仕掛け、一人ずつネギトロに出来る。

「傷口が開いています。いま、手当を」
「いや……待ってください。息を殺して。何かいます」

 ヨウムは、気配を殺して、アトウを庇うようにして部屋の隅に移動する。何者かの、唯ならぬアトモスフィアが此方へと近づいているのだ。重点の文字に変化はない。では、マヨヒガのヨウカイではない、別のヨウカイだ。マヨヒガではないからといって、危険ではないとは言えない。平安時代の剣豪にして詩人、ミヤモト・マサシも言っている通り『注意一秒、怪我一生』だ。

「おおぅぅ……おおぅぅ……なにか……なにか、誰かいるのですか……」
「……」
「……あ、貴女はっ」
「ああだれか……その声は……」

 そこに現れたのは、老婆である。しわがれた声に、おぼつかない足取り。今にも消え入りそうな生命力の老婆だが、ヨウムにはその人物を知っていた。

「ビャク=レン女史。まだ生きていらっしゃったのですか」
「おおう……おおぅ……コンパクの呼び声が……ヒトとヨウカイの、その融和の声が……」
「ここです、ビャク=レン。私です」
「ああ、ああ、懐かしい。全てが懐かしい。あの頃からまだ百数十年しか、経っていないのに。私が経験した千年をも凌ぐ世界の変容に……全てが老いて行くのです……どれ……カァッ!!」

 おお、見よ、なんたる奇怪な光景か!! ビャク=レンが一喝すると、その肉体は盛り上がり、髪は伸び、肌は艶めき、その顔は……ゴウランガ、ヨウムの知る若いビャク=レンの姿となって行くではないか! これは一体いかなるジツか?
 その胸は過剰な程豊満だ。

「ああ、ビャク=レン女史。まだ衰えてなどいないのですね」
「ふう。はい。遥かに良いです。あまり若い姿のままでいると、マヨヒガヤの眼についてしまいます。だから私は老婆の姿……つまり本来の姿に戻り、なりを潜めているのです」

 そう、ヒジリ・ビャク=レンは本来老婆なのである。彼女はマカーイから得たジツによって、その見た目を変える事が出来るのだ。命蓮寺は廃テンプルとなって久しいと聞いていたヨウムだったが、これには驚かされる。まさか、ユカリ・ヤクモと共に最強ではないかと実しやかに囁かれていた人物が、生きていたとは。

「ヨウム=サン。この方は」
「先代の残した資料には載っていないかもしれない。彼女はヒジリ・ビャク=レン。命蓮寺の住職です。バトルボンズとして、そして魔法ジツを操る、生粋の武闘派尼僧。命蓮寺や紅魔館は、ユカリ・ヤクモの反感を買い、即刻潰されたと聞いていた」
「ヨウム=サン。貴女はユユコ=サン亡き後、一体どこにいたのですか」
「まだ、決まった訳ではありません。私は当時、あの宴会に参加していた。そしてその時、ユカリによって封印されたのです。ユユコ=サンがどうなっているのか、まだ解らない」
「成程。では、今どのような世界になってしまっているのか、まだ曖昧でしょう」
「仰るとおりです、女史」

 ヒジリは、どこからともなく茶器を取り出し、二人にチャとオカキを振る舞う。その所作は正しくタツジンであり、チャドー暗殺術取得者すらも腰を抜かすようなものであったが、富豪の娘であるアトウは高いレベルのザゼン状態で正気を保つという信じがたい精神の持ち主であり、そしてヨウムはチャドーの粋をマスターしたユユコの従者で在った為、リアリティショックを引き起こす事はなかった。
 だが、ヒジリの語る現在の状況は、あまりにも過酷であり、流石のヨウカイスレイヤー、ヨウムの心をもってしても、受け入れるに厳しかった。
 暗黒メガコーポ、ヤゴコロサン製薬、ニトリインダストリの専横。それを取り仕切る地上げファンドであるマヨヒガヤ。マヨヒガヤの暴挙を不服とした連合による戦争で、ヨウムの知人は皆散り散りとなってしまっていた。紅魔館は今やマッポーめいた退廃施設となり、命蓮寺は廃テンプル。ヨウカイ山はニトリインダストリと、マヨヒガヤの息のかかったテングマッポ、そしてモリヤ・カルトがひしめいている。
 そして一番の問題。博麗神社はいま……マヨヒガヤ、総本社である。

「私が……私が強ければ」
「貴女のせいではありません。気をしっかり持ちなさい、ヨウム=サン」
「博麗は、どうしたのですか」
「どう、というと」
「代々受け継がれて来た巫女です。一番印象に残っていたのは、レイム=サンですが。今は」
「……今も『レイム・ハクレイ』が、博麗神社……ハクレイ・シュラインの、巫女です」
「それは、おかしい。あれから百数十年、経っている筈。そんな、まさか」
「その通りです」

 ネオゲンソウキョウ、その前身たる幻想郷で当時最も力を持ち、ヨウカイと見れば退治し、インシデントとなれば適当に解決を促していた最強の巫女、レイム・ハクレイ。当時は十代の少女であった。百数十年も経てば、当然人間の身であるならば滅びて然るべきであるが、それが生きていると、ヒジリは言う。
 おおブッダ。これはいかなることなのか。

「この写真を」
「これは」
「テングマッポになる事を否定し、未だにスポイラーし続けているテング……アヤ・シャメマルによる写真です」

 ヒジリが差し出した写真には、一人の女性が写っている。改造パンク巫女装束に身を包み、豊満な胸を殆どさらけ出した姿はオイランめいていた。なまめかしく写る太股にはサイバーミンチョ体で『ゆかれいむ』の文字がタトゥーされている。その隣には、そのオイランめいた女の肩を抱く、ユカリの姿がある。
 ヨウカイスレイヤー、ヨウムはその変わり果てた姿に涙した。

「おお……なんてこと……ブッダ……ブッダファック……神も仏も居ないのですか……」
「仏はいます。しかし、その慈悲はここまで届かない。届かないのならば、戦うしかないのです、ヨウム=サン」
「戦う、貴女が?」
「私は待っていました。いつかこの状況を打破する機会を。この現実に怒り打ち震える鉄槌を。マヨヒガヤの息のかかっていない、純粋な怒りの心をもってして、仏罰を下すヨウカイを。ヨウム=サン。どうか御助力ください。貴女の主人の真相を知る為にも、このマッポー世界に新たな光を齎す為にも。謹んで、お願い申し上げます」

 ヒジリは、板の間に三つ指をついて、奥ゆかしく土下座する。穴のあいた天井、打ち壊されたブッダ像、ぼろぼろの僧衣、啜り泣くようなヒジリの声。決意するには、あまりにも十分な要素が揃っていた。
 戦わねばならない。ただ敵を退けるではなく。明確な目的と、達成のために、押し寄せるヨウカイをスレイしなければならない。心の奥底で何者かが叫ぶ。何者かの言葉によって、ヨウムは何度か目的もなくヨウカイをスレイした事がある。しかしそうではない。これはヨウム自身の決意から来る闘争の意義。

「マヨヒガヤに追われてきました。この娘はアトウ。ヒエダ十代です」
「おなつかしい。先代にはお世話になりました」
「アトウ・ヒエダです。私はマヨヒガヤに敵対するようなハックを何度もかけています。恐らく私自信もその内狙われる事になるでしょう。そうなれば、御迷惑をおかけする事に」
「奥ゆかしい。何も心配はいりません。私はさびれた尼僧ですが、乙女を守る事ぐらいは出来ます。ヨウム=サン、どうでしょうか」
「お願いします。私はまず、この追手をなんとかします。アトウ=サン。IRC通信で、敵の居場所をナビゲート出来ますか」
「可能です。インプラントは?」
「ありません。敵から奪取した端末がありますから、そちらに連絡ください」
「使い捨てならば、問題ありませんね。大丈夫です。あの、ヨウム=サン」
「はい」
「オタッシャで」
「……」


 ※


 ヨウム……ヨウカイスレイヤーは、強く頷く。それはどのような原理か。ヨウカイチカラによってのものか、彼女の顔を『妖』『殺』の刺繍が刻まれたマフラーが覆い、彼女の全身が赤黒い装束が包まれて行く。
 ヨウカイ脚力で一気に飛び立ち、表へと出た。IRCナビゲーションには数人のヨウカイの姿が見える。スレイする。間違いなく。慈悲は……既に無い。

「ドーモ、マヨヒガヤ=サン。ヨウカイスレイヤーです」
「き、貴様、いままで何処に隠れていた! くそ、応援を……」
「ヨウカイ……殺すべし!!! イヤァァァァーーーーッッ!!!」

 二振りの刀『ゼイキン』と『ロウドウホウ』が雨粒を切り裂き走る。クロスされた太刀筋は、無慈悲にマヨヒガヤのヨウカイをネギトロに変えた。血液をヨウカイ腕力で払うと、すぐさま鞘へと納め、次の敵へと向かう。IRCナビゲーションに動きはない。まだ通報されていないのだろう。好都合だ。

「ドーモ、マヨヒガヤ=サン。ヨウカイスレイヤーです」
「き、貴様、いままで何処に隠れていた! くそ、応援を……」
「ヨウカイ……殺すべし!!! イヤァァァァーーーーッッ!!!」

 二振りの刀『ゼイキン』と『ロウドウホウ』が雨粒を切り裂き走る。クロスされた太刀筋は、無慈悲にマヨヒガヤのヨウカイをネギトロに変えた。血液をヨウカイ腕力で払うと、すぐさま鞘へと納め、次の敵へと向かう。IRCナビゲーションに動きはない。まだ通報されていないのだろう。好都合だ。

「ドーモ、マヨヒガヤ=サン。ヨウカイスレイヤーです」
「き、貴様、いままで何処に隠れていた! くそ、応援を……」
「ヨウカイ……殺すべし!!! イヤァァァァーーーーッッ!!!」

 二振りの刀『ゼイキン』と『ロウドウホウ』が雨粒を切り裂き走る。クロスされた太刀筋は、無慈悲にマヨヒガヤのヨウカイをネギトロに変えた。血液をヨウカイ腕力で払うと、すぐさま鞘へと納め、次の敵へと向かう。IRCナビゲーションに動きはない。まだ通報されていないのだろう。好都合だ。

 だが、しかし。ヨウカイスレイヤーは次の敵から発せられるサツバツ・アトモスフィアを感じ取り、不用意な攻撃を控えた。アンブッシュも恐らくは成功しない。
 重金属を含む雨降りしきる、人里の路地裏に、唯ならぬヨウカイの姿あり。その後ろ姿は、歴戦のヨウカイを思わせる『不如帰』の文字。ヨウカイスレイヤーは刀を抜き、敵の背後に降り立つ。

「ドーモ、マヨヒガヤ=サン。ヨウカイスレイヤーです」
「ああ、来たか。待ってたぜ、ヨウム=サン」

 その姿に、見覚えがある。白黒の装束、金髪の髪。その手には、箒型重機関銃が握られている。

「ドーモ、ヨウカイスレイヤー=サン。マスターローグです。いや、マリサ・キリサメと言った方が解るかな、ヨウム・コンパク=サン」
「なんてことだ」

 彼女は、マリサ・キリサメ。今から百数十年前、共にインシデントを解決した仲。そう、友人で在った筈の、何かである。彼女は『人間』であった。

「こっちも仕事なんでね、やるぜ、ヨウカイスレイヤーッ」

 箒型重機関銃がマズル・フラッシュと共に大量のダンマクが張られる。これは、奥ゆかしい幻想郷の伝統芸能『ダンマクゴッコ』ではないか!?

「どういうつもりですか、マリサ=サン!」
「お前が相手だってんで、持って来たんだ。ただの殺し合いじゃあ、つまらねーだろ?」
「くっ……こんな所が、貴女らしいのが、頭にくるっ!」
「ごちゃごちゃ言ってるな、舌噛むぜっ」

 彼女はマリサ。今は面影こそあるが、その胸は豊満である。ヨウカイスレイヤーは刀を構えた。

「……ヨウカイ。殺すべし」

 やっと確実な決意を持てた矢先に、まさか友人をこの手にかけねばならないのか!!
 どうする、ヨウカイスレイヤー!!


 エイプリル・フール・イズ・ベスト #1 終 #2につづかない
 
ドーモみなさん。お世話になっております。
ニワカアメ
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2012/04/01 23:25:02
更新日時:
2012/04/01 23:25:02
評価:
2/9
POINT:
22529211
Rate:
450584.72
簡易匿名評価
POINT
0. 6973657点 匿名評価 投稿数: 7
5. 7777777 名前が無い程度の能力 ■2012/04/01 23:44:15
このマッポーめいたアトモスフィアが実際たまらない!
8. 7777777 S.Kawamura ■2012/04/02 19:43:28
おもしろいなぁ。すごいおもしろいです。
名前 メール
評価 パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集 コメントの削除
番号 パスワード