昭和50年の九龍城砦録 ―The report of Kowloon Walled City in 1975― (予告篇)

作品集: 最新 投稿日時: 2012/04/01 22:27:02 更新日時: 2013/02/07 20:26:10 評価: 0/3 POINT: 2728657 Rate: 136434.10

 

分類
アリス
上海
これは酷い捏造設定
昭和50年の九龍城砦録(The report of Kowloon Walled City in 1975)
〜魔法使いアリスマーガトロイドの手記〜



あらすじ
 人とは何か?妖怪とは何か?アリスは自身に問いかける。
 自立人形制作に行き詰まりを感じたアリスは初心に立ち返り己の根源と向き合う。現代において人と妖怪が本来の形で存在する土地を求めアリスは九龍城砦へ脚を踏み入れる。そこは東洋の魔都。人類社会の緩衝地帯。そして、外の世界で唯一現在も尚妖怪が生まれ続ける地。
 人間の欲望と妖怪のエゴが激しく衝突するこの地でアリスは一人の少年と出会い、マフィアの抗争に巻き込まれる。壮絶な逃走劇の果て彼女がこの地で見た真実とは。











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1975年2月27日 潜入調査最終報告書 報告者:アリス・マーガトロイド

 この場所に存在する人間はみな、欲深く、愚かで、そして■■■■■■■■■存在だ。この場では一つの例外も無く命は極めて軽く扱われている。妖怪でさえも例外ではなく、この場においては対等な形で生死の歴史を刻み続けている。
 私の出会った■■■■■■■■■は、やはり自らの欲によって命を落とした。その魂は■■■■■■■■■永久に輪廻の環に戻る事は無い。
 以前の報告で妖怪が精神に重きを置いた存在である事が知られている。この地で妖怪は■■■■■■■■■によって生まれ人によって滅される。人もまた■■■■■■■■■。
 この地で私が見たのは■■■■■■■■■だ。言葉に出す事すら嫌悪感を覚えるほどに醜悪な争いが絶えず起こり、■■■■■■■■■。妖怪は■■■■■■■■■、
この地より戻ってから舌がおかしくなってしまった■■■■■、■■■■本当に珈琲がまずい。何故あんな所に行こうと思ってしまったのか■■■■■後悔している。

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1975年 -香港近郊-



 曇天。どす黒く濁った空は排煙により汚れきった雲に覆われ、昼間だと言うのに日が落ちたかの如く一帯は薄く影に覆われていた。僅か数百メートル先が霞むほどに濃密な大気は、塵や化学物質、排気瓦斯により汚染され尽くしている。有毒物質を含むこの大気にその地の生命はいかなる例外も無く蝕まれ、道脇には枯れた雑草と、痩せこけた犬、体を壊した浮浪者が溢れかえっていた。
 荒れ果てた大地には遍く人の手が加えられ、地面には樹木の一本すら無く、薄汚れたトタンの屋根に埋め尽くされていた。生命体らしき物は全て人工物に置換されているこの地だが、目前の異様としか形容の仕様が無い”それ”は人工物であって、人工物では無かった。

 それは生きている都だった。無生物にありながら有機的。秩序の中の無秩序。相反する概念を内包したそれは、見ている間にも変化し続ける。一つ新たな屋根が取り付けられる、また一つアンテナが立てられ配線が延ばされる。一瞬でさえも同じ姿に留まらない。故にそれは、どうしようもなく生命体だった。東洋の魔都、常に変化する混沌を具現化する都市、”九龍城砦”それがこの都の名である。
 九龍城砦。かつて近海の海賊から住民を守っていたこの城塞は、阿片戦争を切っ掛けにイギリス領とも清国領とも言えぬ緩衝地帯となった。故にこの地にはあらゆる法が届かない。現在では文化大革命により生じた難民や不法入国者で溢れる無法者による社会が形成されている。

 九龍城砦周辺に存在する無秩序に建てられたバラック群。大陸特有の乾燥しきった風が吹きすさび立木を折らんとする、冬も明けきらない時期。東洋人の多いこの地域を一人のボロの外套を纏った少女が歩いていた。
 目深に被った布から僅かに覗く金髪に碧眼。彼女が外部から来た人間である事を差すそれに、周囲の人間の好機と欲望の入り混じった眼差しが向けられていた。

「此処が九龍城砦。人と妖怪がありのままに存在する場所……」

 周囲の視線を意に介さず、人形の如き相貌の少女は誰に聞かせる訳でもなくただ呟く。
そのガラスの如く透き通った瞳に映るのは、煤と、糞尿と、泥にまみれた混凝土。瞳に入ってきた物に少女は僅かな胸の高鳴りを感じる。この魔都の先に自らの求める可能性がある。魔法使いとしての本能が少女に呼び掛けていた。高ぶりを抑えるように一度深く息を吸いゆっくりと吐く。瑞々しい果実の如き唇から吸い込まれた化学物質と汚物に塗れた砂は、少女の汚れ一つない肺を意図も容易く汚染していった。

だが少女は躊躇わない。吐き気がする程の汚臭も、一度息をする度侵される肺も、周囲から向けられる醜悪な視線も、少女の歩みを止める理由とはなり得ない。どれ程己の身が穢れるようと、得られる物に比べればそれは些細な問題に過ぎないからだ。
安寧とした日常と別れを告げ魔窟へと進む彼女を突き動かすのは、どこまでも貪欲な知識に対する渇望。魔法使いが持つ最も根源に近い衝動。


 溢れんばかりの知識欲と、ほんの僅かに混じった不安を胸に湛え少女はまた足を踏み出す。


 昭和50年2月20日、
 新米魔法使いアリス・マーガトロイドは九龍城砦へと潜入した。










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2012年初夏、公開未定!
名前はまだ明かせない程度の能力
作品情報
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投稿日時:
2012/04/01 22:27:02
更新日時:
2013/02/07 20:26:10
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