- 分類
- フランドール
桜。
それは春の風物詩。
でも私は見たことがない。
地下だからね。
ここ地下だからね。
地下には太陽も無ければ土も無い。
ゆえに植物は育たない。
そして桜も植物であるから、つまり桜もこの地下では育たないのだ。
でもちょっと待たれよお姉さま。
『え? 私?』
桜を植物というカテゴリーから外してやれば、この命題は真から偽へと転じるのではなかろうか。
この世に生きとし生けるものは皆動物もしくは植物に分類される。
それ以外は命の無い物体でしかないのだ。
流石に桜から命を奪うのは可哀想なので、桜はこの世に生きとし生けるものの中にとどめる。
そして桜がこの世に生きとし生けるものでありかつ植物ではないという前提に立つと、桜が動物であるという結論が導き出される。
論理的帰結である。
合ってるよね? お姉さま。
『え? あ、ああうん、フランは可愛いわね。いいこいいこ』
なぜか頭をなでなでされてしまった。
腑に落ちない気もするが気持ち良かったからよしとする。
閑話休題。
とにかく桜は動物であるという結論に至った。
では次に、動物とは何であるか?
読んで字の如く、動く物である。
つまり桜は動く物だったのだ。
ここまで来ればもうゴールは近い。
ここは地下だけど、動く物ならいくらでもあるからね。
そこでコンコンとノックの音。
はあいと可愛く返事をすると、ドアが開き、一人のメイドが顔を覗かせた。
見慣れない顔だ。
新人だろうか。
『御紅茶をお持ちしました』
そう言って、メイドは軽やかな動きで私の方へと近づいてくる。
ああ、動いてる。
今まさに紛れもなく、このメイドは動いている。
まさしく動く物である。
ということは、つまり。
『ねえ、あなたがさくらだったんだね』
『いいえ、私はさくやですわ』
それが私と咲夜の出会い。
- 作品情報
- 作品集:
- 最新
- 投稿日時:
- 2012/04/01 22:06:01
- 更新日時:
- 2012/04/01 22:06:01
- 評価:
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さくやがさくらっていいですね。
いいですね。