- 分類
- 姫様
- もこたん
「はっ、ここはっ!」
「宇宙よ、もこたん」
「何で」
「どうやら宴会の最中にあれがこうなって地球がなくなったらしいわね……」
「何で」
「それはそうと、せっかくだからやってみたいことがあるのよ」
「何が」
「すいめんがー、ゆーらーぐっ、風ーのー輪ーがひろーがるーっ♪」
「待て待て待て待て」
「どうしたのよ」
「著作権的なアレで危険だろ……」
「大丈夫よ。もう地球ないもん。JASRACもないでしょう」
「まあなあ。で、どうする」
「キラッ☆」
「ぶち殺すぞお前」
「そうは言っても、どうしようもないでしょう。何故か会話できることだし、しばらくはのんびりしましょうよ。ふたりっきりでね」
「ちっ……って、そうか! 慧音! 慧音はどうした!」
「死んだでしょ。地球ないもん」
「そんな……」
「でも、彼女がフリーザ様とかと同じ種族だったら助かってるかも……」
「馬鹿。ああ、慧音、慧音ぇ……」
「馬鹿ね。何を泣いているの」
「うるさい、黙ってろ。あああ……ぐすぐす」
「まったく、いつまでたっても頭の中身はかわりゃしない。あっちを見なさい」
「ぐす……あっ、あれ?」
「地球よ。その昔、命蓮寺のネズミが言っていたわ。めっちゃ青かった、と」
「馬鹿。それ違うだろ。地球、あるじゃないか」
「あるわよ。簡単になくなりゃしないでしょ。信じないでよ」
「ぶち殺すぞお前。……でも、よかった。すると、どういうことなの?」
「飲み比べをしてたの、覚えてる?」
「うん」
「あれで、私たち死んじゃったみたいね。幽体離脱してるのよ。何度か経験があるわ」
「何だ、紛らわしい。じゃ、生き返れば戻るな。しかたない待つか」
「ね、もこたん」
「何だよ」
「名前で呼んで」
「何で」
「いいから」
「輝夜」
「もう一度」
「輝夜」
「うふふ」
「何だよ」
「もう一曲、歌いたい歌があるの」
「好きにしなよ。もう止めないよ」
「一緒に歌って」
「はあ? 何で」
「いいから。きっと知ってる歌だと思う。先に歌うから、途中から声を合わせてね。いくわよ、さんはい」
……Fly me to the moon Let me sing among those stars ……
「うーん」
「いい声だったじゃない」
「脳天気な奴だな。まだ生き返らないかな」
「知ってる? 私たち今、月に向かってる」
「えっ」
「ちょっと、やってみました。里帰りね。何千年ぶりだろう……」
「おいおい、大丈夫なのか。お前罪人なんだろ」
「魂だけだから、たぶん大丈夫よ。それに、やってみたかった」
「何が」
「もこたんと一緒に月に来たかった。私の故郷を見せたかった」
「……脳天気な奴だな」
「うふふ」
「……」
「もう一曲いいかしら」
「ああ、もう、今日はいいよ。お前の好きなようにするよ」
「じゃ、よろしくね」
……雨降りお月さん 雲の蔭
お嫁にゆくときゃ 誰とゆく
一人でからかさ さしてゆく
からかさないときゃ 誰とゆく
シャラシャラ シャンシャン 鈴つけた
お馬にゆられて ぬれてゆく ……
「はは」
「ふふふっ」
「懐かしい歌だな」
「好きかしら」
「そうだな。外国の歌より、なじみがあるしな」
「そうね。これは、お嫁入りの歌よ」
「そうだな。きれいな歌だ」
「うふふ」
「何だよ」
「もうすぐ月に着く。私の実家よ」
「だから、何だよ」
「両親に会ってください」
「いるの?」
「さあ」
「脳天気な奴だな。馬鹿」
「うふふ」
「馬ー鹿」
- 作品情報
- 作品集:
- 1
- 投稿日時:
- 2012/04/01 19:36:25
- 更新日時:
- 2012/04/01 19:41:45
- 評価:
- 1/5
- POINT:
- 11847832
- Rate:
- 394928.57