サブタレイニアン・ほむほむ・ブルース

作品集: 1 投稿日時: 2012/04/01 19:17:59 更新日時: 2012/04/01 21:51:54 評価: 1/2 POINT: 7823638 Rate: 521577.53

 

分類
暁美ほむら
キュゥべえ
オリキャラ
どこかで聞いた系
EXRETRO
 首のないカナの死体と、まだ生きているすずと、その少女だけがそこにいた。
 あとは廃墟と化した街と、一匹のインキュベーターのみである。
 すずはまだ生きているのに、死体のように倒れている。彼女の頭を、傍らに座ったその少女が撫でた。その少女の後ろに、インキュベーターは生きているかのように四つ足で立っていた。
「こんなのは絶対に間違っている」
 その少女は呟いた。
「どう間違っているというんだい」
 インキュベーターは話しかけた。
「もう……すずを解放してあげてほしい」
「解放? それはつまり、カナのようにしてあげてほしい……ということかい?」
 ギリリと、音が聞こえるほどに、その少女は歯を食いしばる。
「ふざけないでよ……カナは、死にたいだなんてまだ……死にたいだなんて思ってなかったわ」
 すずはかすかに目を開いた。その少女の顔を見つめた。
「……なおちゃん……」
 その少女の名前を、すずは弱々しく呼んだ。そしてまた、目を閉じる。
 その少女は、答えない。答えることが出来ない。その代わりにインキュベーターに告げた。
「……そうね、殺してあげて欲しい。すずがこんな風になってしまったのは、私のせいなんでしょう? 無責任に『頑張って』だなんて言い続けたからなんでしょう?」
 インキュベーターは機械的に「それが君の願いかい?」と言った。
「ふざけないで」
 低く、しかし感情が詰まった声だった。
「その程度の事に……その程度の願いを奇跡として欲するだなんて……そんな馬鹿な人間がいるわけないでしょう」
「そうでもないよ。人の願いはそれぞれだ。必死で掛けた願いだったかもしれないのに、馬鹿と言ってしまうのは失礼じゃないかい?」
「黙れ」
 インキュベーターは黙った。大人しくその少女の言葉に従った。逆らう意味も必要も無かったから、インキュベーターは「ご機嫌取り」のつもりでそうしたのである。
 ……
 静寂だけがその場に満ちる。
 やがてその少女は、沈黙に耐えられなくなった
「ねえ、なんですずを殺してあげられないの。このまま……絶望することを続けなきゃならないの」
「それは前にも説明しただろう? 魔法少女の絶望は、失われるポテンシャルを超えてエネルギーを生み出す。希望が絶望に転化して行く時ほどのエネルギーは、もう得られないだろうけどね。だから彼女と引き換えに君が魔法少女になってくれるなら、そっちのが方がずっと良い。
 いや……違うな。この先に地球上に生まれる全ての魔法少女と引き換えにしても、君が魔法少女になってくれる方が良い」
 インキュベーターはとことこと歩いて、その少女の正面に回り込んだ。そして、誘うようにその少女の顔を見上げた。
 対してその少女は、誘いを無視するように話し続けた。
「絶望を搾り取られるために……すずは戦い続けなきゃいけないの」
「僕らは宇宙の寿命を少しでも延ばしたいだけなんだ。それに、戦う事をやめないのは、彼女自身の意思でもあるよ。自殺は難しいかもしれないけど、あいつらに……魔神にわざと殺されるという選択肢もあるんだから」
「ねえ、カナは何故死ぬ必要があったの」
「僕にとっても彼女が死ぬのは不本意なことだったよ。でも魔神は強いからね。誰も望んでいなくとも、死んでしまう事はある。仕方ない事だったんだよ」
「望んで……なかった?」
「君も、僕も、彼女自身も望んでいなかっただろう。いや、魔神だって望んでいなかったはずだ。そもそもあいつらには『何かを望む』という事自体出来ないのだから」
 その言葉を聞いて、その少女は失笑した。
「それは貴方も同じでしょ。貴方も魔神達も感情が無いから……『望む』という概念自体が無いんでしょ」
「ふむ……そうだね、さっきの言い方は不正確だったかもしれない。訂正しよう。
 君も、彼女自身も望んでいなかっただろう」
「……理不尽だわ」
 その少女の声は震えていた。
「理不尽よ……感情を持たない奴らに、喜びも悲しみもしない、この世の何にも価値を見出さないような奴らに、なんで振り回されなきゃいけないの。なんで私たちの感情が無視されるの。
 希望を持った人間が殺されて、絶望に染まった人間が死ねない……。絶対に、間違っているわ」
 そして……その少女は……ゆっくりと、顔を上げた。
「ねえ、私が魔法少女になったらどんな願いでも叶えられるって、本当?」
「本当だよ。それこそ、宇宙の法則をひっくり返すことだって出来る」
「そう……」
 その少女はすずから手を放した。すずはそれに気づいて、再び少しだけ目を開いた。
「……なおちゃん……?」
「ごめんね、すず」
 その少女は答えた、そして、立ち上がる。廃墟と化した街の中に……カナの死体と、まだ生きているすずと、瓦礫と、インキュベーターだけの街に、その少女は立った。その顔は決意に引き締められていた
「決めた。私、魔法少女になる」



◆◆◆



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◆◆◆



 首の無い巴マミの死体が目の前に落ちてきた。
 暁美ほむらは心臓が止まりそうになった。だが、怯んでいる時間は全く無い。
 今まさに巴マミの首を噛み千切った魔女が、彼女の胴体を追いかけて上から迫ってくる。このままでは、巴マミの体もろとも、暁美ほむらも食べられる――!
 ――
 すんでのところで、暁美ほむらは時間を停止させた。巴マミの頭を噛み千切った魔女――お菓子の魔女の、大口を開けた顔が、目と鼻の先だった。首筋に、だらりと汗が垂れる。
 これで、少しだけ時間が出来た。少しだけ、怯んでいる時間が出来た。
 だからと言って時間を無駄使いするわけには行かない。魔力を無駄に消費するわけには行かない。
 お菓子の魔女の口にいくつか爆弾を放り込んで、自分は退避すれば、それで終わりだろう。お菓子の魔女と戦うのは初めてではない。勝利の算段はついていた。
 しかし、暁美ほむらは躊躇した。
 巴マミは……どうすれば良い? 今回も守れなかった。今回は自分が一緒だったのに、死なせてしまった。
 彼女の死体を……どうすれば良い?
 それを考える時間も、あまりない。
 ――もう彼女は死んでいる。魂の宿らない抜け殻を、今更どうした所で意味は無い。
 暁美ほむらはすぐにそう判断を下した。
 盾から五つほどの手榴弾を一度に取り出し、順番にピンを抜いて、魔女の口の中に放り投げた。後ろを振り返らず、走って逃げだす。
 ――
 時間は動き出す。
 お菓子の魔女は地面ごと抉って巴マミの胴体に齧りついた――次の瞬間。
 魔女の口の中で、手榴弾が一斉に爆発した。
 魔女の肉も、巴マミの肉も、飛散した破片により等しくシェイクされた。

◆◆◆

 暁美ほむらは独りきりで日の沈む見滝原市を歩いていた。
 またしても、マミは死んでしまった。出来れば救いたかったが、叶わなかった。
 さやかも死んでしまうだろうか。杏子も死んでしまうだろうか。
 まどかも、死んでしまうだろうか……?
 ――それだけは、私がさせない。まどかだけは守り切ってみせる。他の誰をも救えなくとも、まどかだけは救ってみせる。
 暁美ほむらは決意を新たにした。それは今までずっと繰り返して来た事だ。失敗する度に、今度こそはと望みをかけて来た。
 まだ、暁美ほむらは絶望していない。
 ふと、暁美ほむらは考えた。何故、魔法少女は絶望すると魔女になるのだろう? 誰かの希望が絶望に変わり、別の誰かを苦しめる、この残酷なシステムはどのように成り立っているのだろう? インキュベーターの説明では、納得しきることが出来ない。
 絶望したまま、絶望しきったままの魔法少女でいることが出来ないのは、何故なのだろう。単に、魔法少女に動機を与えるのに敵が必要で、効率のために魔法少女をリサイクルしているというだけなのだろうか。そういう風に、インキュベーターが設計したという事なのだろうか。
 ――やめよう、こんな事を考えるのは。考えても答えは出ないし、答えを知ってもそれでまどかが助かるわけでは無い。
 無駄な事を考えるには、彼女は疲れすぎていた。
 それでもまだ、暁美ほむらは絶望していない。疲れていても、まだ希望は尽きていない。ソウルジェムが砕かれず、魔力が残っている限り、暁美ほむらは戦い続ける。
 まだ、暁美ほむらは死んでいない。
A☆HAPPY☆NEW☆WORLD!!

こんにちは、うずしおです。
一説によるとエイプリルフールの起原は、どっかの国ではかつて4月1日が新年だったからだそうですね。
うろ覚えですが。

この話は以前twitterで見た「まどかが世界改変を願ったように、それ以前にも世界改変を願った魔法少女がいたかもしれない」というアイディアのパクリです。
あとオーシャンまなぶのパクリです。
その点よろしくお願いします。
鳴瀬河渦潮
作品情報
作品集:
1
投稿日時:
2012/04/01 19:17:59
更新日時:
2012/04/01 21:51:54
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2. 7777777 名前が無い程度の能力 ■2012/04/01 19:54:38
なんじゃこりゃあああああああああああああああああああww
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