レミリアのフェチ的フランちゃん!
作品集: 1 投稿日時: 2012/04/01 18:06:11 更新日時: 2012/04/02 00:15:24 評価: 5/7 POINT: 41571681 Rate: 1039292.65
分類
フランチャン!
オネエサマ!
「フェチシズムとはなかなかどうして難しいものじゃない?」
「そんな話をするために地下まで降りてきたの?」
「まあ聞きなさい」
そう言ってお姉様は威厳たっぷりに私のベッドに腰掛けた。女の子の部屋を訪ねた時にいきなりベッドに座るなと習わなかったのだろうかこの姉は。
「お姉様」
「何かしら、フラン」
「いきなりベッドに座らないで欲しいんだけど」
「え? ああ、そう。そうだったわね」
意外とあっさりとお姉様は頷いた。
そして今度はおもむろに靴を脱いだ。
ベッドの側に靴をきちんと手で持って揃えて、それをぼんやりと眺めることしかできない私をついと見上げてばちこーんとウインクを飛ばしてにっこり笑う。いや、別に靴を丁寧に揃えたことに感心とかしてないし評価が上がったりもしてない。
そしてとうとうお姉様は私のベッドに潜り込んだ。
「……お姉様。何をしてるのかしら?」
「あらフラン。貴女がベッドにいきなり座るなと言ったのでしょう? ベッドとは寝るものだからね。ごめんなさい。私ったらつい急いじゃったわ」
壊した。
ベッドごとその上に横たわる姉をきゅっとしてどかーんした。
純白でふかふかだったシーツが木の破片と混ざり合って無機質な凶器になり、さらにその上から姉の血がコーティングされて赤く染まり、元の面影のない無惨な姿になってしまったのを残念に思いながら、その残骸の脇に何事もなかったかのように再生した姉の姿を見てもっと残念な気持ちになった。
「あらあら、お転婆ね。今日寝るところがなくなっちゃったじゃない。そんなに私と寝たいならば別に自分のベッドを壊さなくても寝てあげるのに」
「そんな回りくどいことするために壊したんじゃないんだけど」
「あら、じゃあもう元には戻らない覚悟ってやつかしら。私家を燃やすのはちょっとやりすぎじゃないかしらって思ってたんだけど、いざフランに言われてみればそれもアリのような気がしてきたわ」
「あーパチュリー新しい石作らないかなー。石の材料になればさすがに黙ると思うんだけどなー」
「私は死なないわ」
「吸血鬼ってやっかいね」
「あなたを守るもの」
「お前を吸血鬼っていうカテゴリーで纏めたのを後悔してるわ」
やっかいなのはレミリアその者だ。
っていうかそれはただのストーカーだ。
「……まあめんどくさいから話を聞こうと思うけど。何の用? フェチがなんだって?」
「よくぞ聞いてくれたわ」
「聞かないと消えないからよ……」
ふふ、と決め顔で微笑んだかと思うと、目を閉じ右手をその平らな胸に添えた。人の部屋まで来て自分のワールドに入らないで欲しい。頼むから。
「例えばミニスカートとか、タイツとか、はたまたブルマとかチャイナ服とか。挙げればもちろんキリはないのだけど、いわゆるそういうものね。それを全てフェチとして片づけるのはいささか難しいと思うのよ」
「はあ」
「というか認識に差があると言うべきかしらね。例えば、裸に靴下とは確かにいいわ。くるわ。たぎる何かが確かにあるわ。でもね、普段靴下穿いてる人を見て興奮は覚えないわ。それはもちろん裸じゃないから。でもそれってどうなの? 裸だから興奮してるんじゃないの? というか、裸のみ、何もつけていないという状態があまり好ましくない、あまりにもあけっぴろすぎる。だからこそ恥じらいというパーツを足すかのように靴下を穿かせたんじゃないの? でもそれってフェチなのかしら?」
「知らないわよ!」
フェチなのかしら? って何でこっちがそれを把握してるかのような言い方なんだ。もはや一言目からついていけてないのに。
もう一回きゅっとした。
さっきいた場所のすぐ隣に全く同じポーズで登場した。
ああ、吸血鬼の再生能力ってこんなむかつくんだなぁ……。
今まで霊夢とか魔理沙とかと遊んだ時に惜しげもなく使ったのをちょっと反省している。これからは余裕ぶらないでもっと必死に避けることに専念することにしよう。
「でもね、この前ね。外に出て行った時にとある妖怪がタイツを穿いてるのを発見したのよ。それがなんというかこう……よかったのね。私は本来完全生足派だったのよ。だってそうじゃない? 普通生足じゃない。スカートから伸びる足。その先に広がるパラダイス。パラダイスよ? パの字よ? その夢を追い求める希望を与えてくれるのが生足じゃない。タイツなんか穿いてたらそんな夢はハナから存在しない。偶像なのよ。夢なんてないはずだった。それなのに」
カッと目を見開いて強い眼力でこちらを見つめる吸血鬼。なにこいつ。これくらいのやる気をもって紅魔館を運営しろよ。先日一部の妖精メイドをクビにしたことを忘れたのだろうか。彼女とは少しだけだけど親交があった。紅魔館の財政難に振り回される形で辞めさせられることになった妖精メイドに会いに行った。彼女は森で洋菓子屋さんをやるのだという。いつか外を自由に出歩けるようになったら買いに来てくださいねと言った彼女の姿を思い出す。そして忘れない。彼女が振り返る時、宙に散ったわずかな滴のことを。
そんな私の感傷をぶち壊すかのように吸血鬼は滔々と力強く語る。正直すごいうるさい。
「でも違った! それは違ったのよフラン! あのむっちむちのむっちむちなタイツが、あそこまでいいものだとは思わなかった。違うのよ、フラン。夢ばっかり追い求めていたら。もっと周りを見て、今しかできないことをしないといけないの。そう、自分の手の届く範囲のことを全力でやってみるってことは重要じゃない。そしてそれがタイツなのよ。決してその先に届くことはないけれど、私たちが見ることのできる範囲の足を全力で飾ってるの。あれこそフェチだと思ったわ」
私も傘を手に入れれば外に出ることはできるだろう。雨が降っても太陽の光がが燦々と降り注いでも。そうしたら彼女の店に行こう。彼女の夢が叶ったところを一目見に行きたい。そしてもしも叶うのならば、私もそこで働きたい。いいじゃないか、洋菓子店。友人と共にそんな店をずっと続けていけるとか女の子の夢じゃないか。妖精と吸血鬼の種族を超えた何かがそこにはあるのだ。
というか、ここから出て行きたいのだ。
「でもね。私は気づいてしまったの。私や貴女がタイツを穿いても、さほどの魅力はないことに。そう、これは装着する人によってかなりの差のある装備なの。でもそれってフェチなのかしら。こうこうこういう人が穿いていたらフェチってそれはフェチじゃないわよね。タイツフェチと名乗るにはいささかばかりに語弊が生じていると言わざるを得ないわ。やはりこれもフェチとは認められない。細い足だと逆にその魅力を閉じこめてしまうだけになってしまうのよ。その細い足を愛でることができないなんて、ただの邪魔者でしかなかったわ」
こいつテンションの落差がうざい。
目の前の生物がうっとりした目で私の足を見るその視線を感じて本気で吐き気を催した。やばい。こいつやばい。何で私は今日靴下もタイツも穿いていないのだ。くそっ、これも外出の予定がないからだ。ついでに暑いからだ。これだから夏は嫌いなんだ。
「直接的な欲望のための装飾品、もしくはそれをさまたげないためにフェチを否定する。これはやはりフェチとしては当然成り立たないわ。やはり私にはフェチがわからないのかしら。そう悩んだこともあったわ……。でもね。でも私は気づいたの。そう、もっと身近に、私のフェチは存在していたのよ!」
ぞわっと嫌な予感が背筋を駆けめぐった。
今日三度目の破裂。
しかし難なく復活するそれはやはり変わらぬ面影、立ち位置でその場に――
「ひっ――!」
違う。
変わらないなどとんでもない。その目はまさに己の欲に塗れに塗れ、とろんとした目という言い方では生ぬるい。もはや何かが滴り落ちてきそうな有様だった。
そしてさらに、近い。近いのだ。
さっきまでこれは部屋の隅のベッドの残骸の近くで復活していたのに、何故か私の目の前にいる。目の前、至近距離で、歯並びの良さまでわかってしまう至近距離でそれは囁いた。
「そう、それはフランフェチなのよ。フランならばどんな格好をしていようがどんなことをしていようがどんなフランであっても、私はそれにフェチを感じることができるの。直接的な下品な欲だけでなく、そうそれは人形を可愛がるような、幼子を愛でるような、友人のイメチェンに驚くような、そんな新鮮で純粋な感動を感じることができるの。フェチを。あふれんばかりのフェチシズムを。完成された黄金のフェチシズムを、私は貴女から感じることができるのよ。さあフラン。貴女をもっと感じさせてちょうだい。ああフラン。さあ、来なさいフラン。服なんて捨ててかかってき――ふばあ!」
振り抜いた。
至近距離、予備動作なしの、本能に任せた、本能が私の生命を守るために発揮した防衛反応のアッパーカットが、あれの顎にジャストミートして骨を砕き、体ごと真上に吹き飛ばした。
バゴン! と大きな音を立てて、それは首まで天井に埋まった。ぷらんと宙づりになった足が揺れる。ああ、こうすればよかった。最初からこうすればよかったのだ。壊してしまえば再生するけれども、こうすれば動きを止めることはできたのだ。
こんな簡単なことに今気づくだなんて。
そう、壊すばかりでは何も生まれないということに――
「雹吾……」
「うわあああああしゃべったあああああ!!!!!」
地下牢の壁を壊した。
いつもの悪戯での脱出とは違い、本気のプリズンブレイクを達成するために。
自分でもいい感じだと思うモノローグの後にこんなことをしてしまうとはと思うけれど仕方ない。身の危険を感じてしまったのだから仕方ない。ついでに、紫が以前私に同情したか何かで持ってきてくれた外のマンガとかいうのを読んだ時の激情が復活してしまったのだから仕方ない。くそ、雹吾……!
屋敷の中を全速力で飛び回る。七色の飾り石のついた羽を思いっきり広げて全力で。時に曲がりきれず壁に激突しそうになるのにも構わない。時に壁を正面からぶち壊して進む。
すると。
「どうしましたか妹様!?」
目の前に突然咲夜が出現する。って目の前ええええ!!
全速力で飛んでいた軌道を全力で逸らし、何とか咲夜を回避することに成功する。その代わりにさっきあれがなったようにめ゛ごぉという音を立てて私の首も天井に埋まってしまったのだけど。
うわあ暗い。暗いし痛い。でもそれが逆にちょっと安心する。別にイケナイ性癖に目覚めたわけではない。これならば絶対あれは出てこない。出てこれっこない。それならば自分の頭が天井に埋まる羽目になっても安心できるというものだ。
「大丈夫ですか妹様!?」
「いったああああああああああああああい!!!!!!!!」
ずぼっと擬音が出るような勢いで咲夜に引っこ抜かれた。こう、胴を抱え込むようにして力ずくで。でもそれってとっても痛い。せめて埋まってる周りをちょっと削るとかして欲しかった。皮がべろんってなったもの。乙女の大切な顔の皮が。まあすぐ再生するんだけど。
「あ、ごめんなさい妹様……つい」
「う、ううん別にいいの。雹吾はもっと痛かったんだから。って、それどころじゃなくて! あれが! あれが!」
「あれとは何ですか妹様!」
「レミリアが! 名前も呼びたくないほどなんだけど、地下で襲ってきたの!」
「何ですって!?」
瞬時に咲夜が消えた。時間を止めて地下に確認に行ったのだろう。確認と行っても地下室には首から下のあれが宙からぶら下がってるだけなんだけど……。
どうでもいいことかもしれないけれど、咲夜が消える前に一瞬見えた赤色が気になる。あれは……。
「戻りました、妹様」
なんて考えている間にもう戻ってきてしまった。さすが時間を止めれるだけあって仕事が早い。さすが紅魔館の瀟洒なメイドだ。
「お嬢様が近い内にああなることは目に見えていました。止められなかったのは私の責任です。申し訳ありません」
「い、いやいいの。別にいいから」
「お嬢様は地下にちゃんと閉じこめておきましたから、妹様がお嬢様に襲われることはないので安心してください」
「そっかぁ……ありがとうね咲夜」
「いえいえ、別に全然ぶっ構いません」
「…………」
顔に感じる生暖かさを頼りに指をそっと添える。
見ると指先には真っ赤な血が。
ふっと目の前の咲夜の顔を見上げる。
鼻から出血して台無しになった白い綺麗な顔を。
っていうか、変態そのものの欲に爛れた顔を。
「これは失礼。――さあ、妹様も地下室に入って姉妹心行くまで乱れてくださグハァ!」
くそっ! 能力で一部ガードされた!
これもほぼ予備動作なしで殴った渾身のストレートだったのに。これだから瀟洒なメイドは嫌いなんだ!
廊下の先の先まで吹っ飛んで、そこで倒れたメイドを踏みつけ「ゃん!」という無駄に喜ばしげな声を頭から必死で追い出し倉庫に走った。
そこに無造作に置いてあった日傘を手に取った。
ばさあ、と羽をまた大きく広げる。
目指すは外。外の世界。館の外へ。
手近な窓を突き破って、ひっつかんだ傘を急いで開いて、私は館の外に飛び出した。
逃げなければ。
早く逃げなければ。
私も、この変態の仲間にされてしまう!!!
「へえ、そんなことがあったんですか」
「そんなことって言わないでよ。今でも夢に出るんだから」
「大丈夫ですよ。私がいますから」
「……ありがとう」
「あ、お客さんですよ。いらっしゃいませー!」
「いらっしゃいませー! フィナンシェが焼きたてですよー!」
-fin-
エイプリルフール企画に参加するの初めてなので壊し方の加減がわかんなくて困ります。
あとフェチに対して強い思い入れのある方すみません。当方思いつきで書きましたごめんなさい。
きゅっとしてどかーん
【追記】
うわあああああああ雹吾さん名前間違えたあああああああ!!!!
雹悟→雹吾
雹吾さんマジかっけえっす
全裸靴下先輩
http://youichialacarte.blog26.fc2.com/
作品情報
作品集:
1
投稿日時:
2012/04/01 18:06:11
更新日時:
2012/04/02 00:15:24
評価:
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■2012/04/01 21:52:42
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■2012/04/04 02:32:33
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