- 分類
- フランドール
- 咲夜
うそ。
うそです。
うそだったのです。
本当はわたし。
わたしは吸血鬼では。
なかったのです。
では。
ではでは。
わたしは一体。
全体。
なんなんでしょう。
なんなんでしょうね。
謎です。
謎でした。
謎だったんです。
わかりかねます。
不思議なことです。
わたしはわたしが。
わからないのです。
一体。
全体。
どうしたことでしょうか。
しかし、吸血鬼では。
ない。
わたしは吸血鬼ではない。
それは事実。
それは真実。
なぜならば。
わたしは産まれてこのかた。
血を吸ったことがないからだ。
吸ったことないんだよ。
血。
吸うための牙はあるよ。
あるんだけどね。
牙を使ったことない。
ほら。
わたしはさ。
引きこもりだからさ。
ね。
人と向き合うのが苦手なんだよ。
目も合わせられない。
目が合うと死ぬ。
合ったことないから知らないけども。
多分、死ぬ。
一度。
昔。
目を逸らしながら。
吸血行為に走ろうとした時期もあった。
結果は悲惨なものだった。
『ちょっ、フランドールお嬢さま。そこは鎖骨です』
『えっ、あっ。ごめんさい……見えなくて』
『はあ、いやまあ、いいんですけどもね』
『……鎖骨から、吸ってもいい?』
『駄目です。首から吸って下さい』
『首も鎖骨も、似たようなものじゃあない?』
『鎖骨に血は流れていません』
『なるほど』
『さあ、もう一度』
『えいっ』
『フランドールお嬢さま、そこは鎖骨です』
『あ、あれえ』
『もう一度』
『とうっ』
『フランドールお嬢さま、そこは鎖骨です』
『むむむ』
『鎖骨お嬢さま』
『えっ』
『間違えました、フランドールお嬢さま』
『……わたしは鎖骨じゃないよ』
『しかし、フランドールお嬢さまは鎖骨にばかり関心を持たれる』
『……何でだろうね』
『何か鎖骨に恨みでもあるのでは』
『鎖骨に、うらみ。あったかな』
『あるのでしょう。ある筈です』
『……あった』
『えっ、あるんですか?』
- 作品情報
- 作品集:
- 1
- 投稿日時:
- 2012/04/01 01:38:03
- 更新日時:
- 2012/04/01 01:38:03
- 評価:
- 4/13
- POINT:
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