ジンジャスレイヤー
作品集: 1 投稿日時: 2012/04/01 00:22:52 更新日時: 2012/04/01 03:20:05 評価: 16/24 POINT: 135175616 Rate: 1081405.13
ジンジャスレイヤー第一部「東方紅魔郷」より「シスター・オブ・スカーレット」
空にはイカスミめいた黒雲が広がり、致命的なレベルで重金属汚染された酸性雨が降り注ぐここはネオゲンソキョー。
かつて少女が見た日本の原風景はもはや存在せず、
酸性雨で立ち枯れした原生林の代わりに、環境汚染に適応したバイオ植物が野放図に繁茂して樹海めいた山林を形成していた。
酸性雨が降りしきる早朝の人里を若い人間の男が歩く。
くたびれた耐環境コートとボロボロのハンチング帽という出で立ちの、その男の名はゴンベイ。
彼は定職を持たずに日雇いの肉体労働で糊口を凌ぐ下層労働者、いわゆるマケグミである。
彼とてこんな雨の日に外出などしたくはないのだが、
昨日まで発生していた謎の紅霧のせいで数日間仕事が無く、彼の所持金は尽きかけていた。
たとえ酸性雨に打たれながらでも働かないことには明日食べるスシにも事欠く有様であった。
昨夜の深酒で酔いが抜けきらない頭を振ってニューロンからアルコールを追い出しながら、彼は人里の労働斡旋所へと向かう。
彼は若さの他には学も技術もコネクションも持ち合わせていないので真っ当な職には就けない。
不当に労働力を買い叩かれると知りながらも、斡旋所でヤクザヨーカイが手配する仕事を受けるしかないのだ。
ヨーカイが人間を食べていたのも今は昔。
現在は人妖問わず、経済的強者が弱者を食い物にしてその生き血を啜る時代なのである。
「高給だ」「ベリーイージー」「きもけーね」などと欺瞞に満ちたメッセージがオスモウフォントで書かれた斡旋所の扉を開けると、
そこには彼と同じようなマケグミがイモウォッシュめいて大勢集まっており、ハキダメの雰囲気を醸し出していた。
ゴンベイは人にぶつかる度に右手でチョップを出しながら、マケグミの波を押し分けて前へと向かう。
このチョップは謝罪の意を無言の内に表して無用な衝突を避けようとする日本人の奥ゆかしい知恵なのである。
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ゴンベイが前列で持参したイカジャーキーを齧りながらしばらく待っていると、
分厚い書類を抱えた天狗ヤクザが到着し、労働斡旋が始まった。
「ドーモ、シャメイマル・アヤです。本日はまずカッパッパ建設の案件から! 仕事はダム工事で日当は一万円です!」
日当一万円はかなり割の良い仕事である。しかし……。
「それでは入札開始!」
「9900!」
「9800!」
天狗ヤクザの号令の下、次々とマケグミ達が希望の価格を叫ぶ!
そう、この労働斡旋はオークション式。最も安い日当を入札した者に仕事が与えられるのである。
サツバツタイムと呼ばれるこのマッポー的労働交渉は、
日雇い労働だけではなく通常の労働契約においてもネオゲンソキョーでは最もメジャーな形式である。
「7500!」
「7400!」
会場は異様な熱気に包まれ、値は止まらず下がり続ける! ゴンベイも負けじと叫び続ける。
労働者にとって報酬が削られるのは身を切られるかのように辛い。
自ら日当を削るこの行為は、労働力の切り売りであると同時にプライドの切り売りでもある。
だが、そうしないことにはまず仕事が貰えないのだ。
誰よりも安く、しかしできるだけ高く! ギリギリの駆け引きが続く。
「6400!」
「ウォー! 5000!」
キヨミズ! 一人のマケグミが暴挙に出た! 会場にどよめきが広がる!
「5000! 5000いませんか!」
いくらなんでも1日ダム工事の重労働で5000円はキツイ過ぎる。
マケグミ達は互いに顔を見合わせるが、動き出す者はいない。
「いませんね! 5000で決定です! オメデトーゴザイマス!」
「ヤッター!」
落札したマケグミが天狗ヤクザから労働契約の書類を受け取る。
だが、初めて斡旋所を利用するそのアワレなマケグミはまだ知らないのだ。
その書類にはコメツブよりも小さい文字で、日当の半分は天狗ヤクザに仲介料として渡す旨が書いてあることを!
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「本日はこれで終了です。お疲れさまでした」
「アバーッ!?」
その日の労働斡旋が終わり、ゴンベイは悲嘆の声を上げる。
数日働けなかった分、できるだけ高給の仕事を手に入れようと欲をかいたゴンベイは結局何も落札できなかったのだ。なんたるウカツ!
ネオゲンソキョーは慢性的な求人不足。
どれだけ酷い労働条件だろうと、受けるマケグミはいくらでもいるのである。
「ブッダファック!」
ゴンベイは衆生を今日も救わなかったブッダに悪態を吐くと、斡旋所を出て行った。
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予定外の暇ができたゴンベイは人里をそぞろ歩く。すでに昼前になっており、酸性雨も止んでいた。
空腹を覚えたゴンベイは、大手外食チェーン、ミスティア・チンチン社の無人スシバー「ヤキトリ」に向かう。
ヒトッ、ヒトッ、ヒトをッ! 人間を〜さらえぇ♪
ゴンベイがヤキトリの扉を開けた途端、社長自ら歌うテーマソングがBPM350のファストチューンに乗ってスピーカーから流れてきた。
ヤキトリの店内は機械で全自動化されており、従業員はいない。
極限のコストカットで実現した実際安いスシはマケグミのライフラインであった。
ゴンベイはマケグミで一杯の狭い店内から適当な席を選んで座ると、
席に備え付けられたスリットに硬貨を入れ、「ヤツメウナギ」ボタンを押す。
すると、「チンチン」という電子音声と共に席前のベルトコンベアーが動き、合成ヤツメウナギ・スシが流れてきた。
ゴンベイは皿を取って合成ヤツメウナギ・スシを無表情に咀嚼すると、再び硬貨を入れて今度は「ドジョウ」ボタン。
流れてきた合成ドジョウ・スシを食べ終えると、次は合成ウナギ・スシを食べようと財布を覗いて、動きが止まった。
まだ全然食べ足りないが、これ以上硬貨を投入すると晩酌の合成サケが買えなくなる。
アルコール中毒のゴンベイにとってサケは人生の最大の喜びであり、アルコールが切れるのは空腹にも勝る苦痛なのだ。
ゴンベイのニューロン内で、スシを食べて明日の労働に耐える体力をつけるべきだという理性と、
ただひたすらにサケを求め続ける欲望がセキバハラめいた激戦を繰り広げていた。
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「あのー、すみません。マケグミの方ですよね?」
ゴンベイが硬貨を見つめて固まっていると、いつの間にか隣に座っていた女が話しかけてきた。
チャイニーズめいた服に、「龍」とミンチョ体で書かれた帽子をした若い女である。彼女のバストは豊満であった。
「そうだが」
実際ブレイな問いかけだが事実である。ゴンベイはムッとしながらも否定せずに返した。
「シツレイしました。私、コウマ・コンツェルンのホン・メイリンと申します」
コウマ・コンツェルン! 数々の会社を傘下に収める、ネオゲンソキョー屈指のメガコーポである!
「こちらこそシツレイをいたしましたメイリン=サン。私はゴンベイです。コウマ・コンツェルンの方が私にどんな御用件でしょうか?」
相手の素性を知り露骨に態度を変えたゴンベイがメイリンに尋ねる。
「はい、ただいまアルバイトを募集しておりまして、もしよろしければやってみませんか? 簡単な仕事で日当は二万円出ます」
二万円! 良過ぎる条件にゴンベイは胡散臭さを覚えたが、ゴンベイの財政状況で選択の余地は無かった。
詳細を聞くこともなく返答する。
「ハイヨロコンデー!」
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「具体的にどういう仕事をするのですか? メイリン=サン」
メイリンの運転するベンツの助手席からゴンベイが言った。
ベンツはコウマ・コンツェルンの会長であるレミリア・スカーレットの住居、コウマ・パレスに向かって走る。
「数日間、フランドール=サンのお遊びの相手をして欲しいのです。その間の衣食住はこちらで用意します」
「フランドール=サンとは?」
「我が社の会長、レミリア=サンの妹様で、とても可愛らしい女の子です」
ゴンベイは頬を緩める。
二万円も貰えるからどれだけ危険なことをやらされるのかと思いきや、まさか子供のお守とは。
これぞまさにベイビー・サブミッションである。
浮かれていたゴンベイは気にも留めなかった。
前方に見えてきたコウマ・パレスの周囲にだけ、止んでいたはずの酸性雨が不自然に降っていたことなど。
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「イヤーッ!」
BOOM! BOOM! ここはコウマ・パレスの地下室。
普段は静謐なこの空間に、今日は猛烈な爆音が響く。
この爆音の主こそ悪魔の妹、フランドール・スカーレットだ!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
BLAM! フランドールが放った自機狙い弾がメイド妖精に直撃! ネギトロめいて即死!
有り余る血中カラテに物を言わせたフランドールの弾幕は、通常弾でも即死級の圧倒的火力があるのだ!
「イヤーッ!」
その隙に一匹のメイド妖精が背後から奇襲をかける! 飛び蹴り・アンブッシュ(訳注:不意打ち)だ!
「イヤーッ!」
フランドールは超人的反射神経でアンブッシュに反応すると、神速の後ろ回し蹴りでカウンターを決める!
恐るべきカラテの切れ味だ!
「グワーッ!」
後ろ回し蹴りのフルスイングを受けたメイド妖精の首はピッチャーライナーめいて飛翔!
タンスに衝突してトマトめいて潰れる! コワイ!
吸血鬼は筋力も尋常ではない。樹齢千年のバイオバンブーを片手で引き抜くほどの力があるのだ!
そこから繰り出されるカラテはまさに大量破壊兵器!
単体では敵わじと見たメイド妖精たちはフランドールを包囲!
「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」
四方八方から弾幕を浴びせるが、フランドールは避ける気配すら見せない!
チェシャ猫のような笑みを浮かべて両手を掲げると、巨大な炎の剣が出現! レーヴァティンだ!
「イヤーッ!」
CABOOM!
フランドールがレーヴァティンを力任せに振り回すと、周囲の貧弱な弾幕は消し飛ばされる!
「グワーッ! グワーッ! グワーッ! グワーッ! グワーッ!」
メイド妖精達は炎の剣に焼き尽くされ、オコゲめいて炭化!
「アイエエエ!」
最後の生き残りのメイド妖精は完全に戦意を喪失して悲鳴を上げながら逃げる。
が、地下室の出口のフスマは外から鍵が掛かっていて開かなかった。
「アバババババーッ! ゴボボーッ!」
メイド妖精は絶望のあまり失禁嘔吐!
「ねぇ、それで終わり? 全然つまんないよ」
おお、ブッダ! フランドールはネズミをいたぶるキャットめいて、ゆっくりとメイド妖精に迫る!
「アイエエエエエエ!」
恐怖のあまりメイド妖精は発狂寸前だ!
フランドールは右手をメイド妖精に向けると、拳を握り締める!
「アイエエエエエ! サヨナラ!」
メイド妖精は突如爆発四散!
おお、賢い読者諸氏は何が起こったのか、お分かりだろうか!?
これぞフランドール・スカーレットのユニーク・ジツ、キュットシテドカーン・ジツなのだ!
相手の弱点である「目」を手の内に移動させて握り潰す、このジツを受けて爆発四散しない者はいない!
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「これはひどい……」
コウマ・パレス内の大図書館。
ヤバイ級ウィッチ、パチュリー・ノーレッジは、
水晶球でフランドールのイクサを眺めて、思わずうめき声を上げた。
イクサと言うにはあまりにも一方的な虐殺。
パチュリーの横にいる、コウマ・パレスのマスターメイド、イザヨイ・サクヤも絶句だ。サクヤのバストは豊満ではなかった。
フランドールのような、規格外のカラテを持つ怪物を野に解き放つことなどできない。二人の思いは一つだった。
だがフランドールは、姉のレミリアが外の人間相手にゴジュッポ=ヒャッポの弾幕カラテごっこを繰り広げたと聞いてからは、
お姉様だけずるい! 私も外の人間と遊ぶの! の一点張りだ。
メイド妖精に相手をさせてガス抜きをしているが、いつフランドールの不満が爆発するか分からない。
地下室はパチュリーの厳重なジツ結界で補強されているが、
フランドールが本気で破壊にかかればショウジ紙同然である。
雨をコウマ・パレス周囲に降らせて足止めもしているが、一時凌ぎにしかならないだろう。
「ミコはまだ来ないのですか」
「捜索中よ」
ミコは異変となれば必ず出現して状況を解決に導くが、普段どこで何をしているのかは全く分からない。
神出鬼没なミコを空想上の存在と考える者すらいる。
否! ミコはこの世にあるのだ!
「せめてお嬢様がいて下されば……」
「またどこかをほっつき歩いているんでしょ。人の苦労も知らないで」
「そろそろメイド妖精のストックも切れそうです。死んだ者の復活にはまだ時間がかかりますし」
「いっそあなたが相手をすれば? 人間なんでしょ」
「嫌です」
BOOM! BOOM!
またも爆音が炸裂し、コウマ・パレス全体がグラグラと揺れる。
フランドールが癇癪を起こしているのだ。
「あぁもう! そんなに外の人間と遊びたいのなら、そこら辺の人間でも捕まえてきて相手させたらいいのよ!」
「そう思って、もう手配しました」
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メイリンに連れられて初めて見たコウマ・パレスはゴンベイの予想を遥かに超えていた。
手入れの行き届いたカレサンスイの日本庭園を持つ広大な敷地の中に、
キャッスルと見紛うばかりの巨大な紅の屋敷がそびえており、
客室一つを取っても、マケグミが住むウサギゴヤの数倍は広さがあった。
コウマ・パレスに着いた後、ゴンベイはメイリンに屋敷内の簡単な案内を受けた。
屋敷内は窓がほとんど無く、照明のボンボリがぼんやりと紅の壁を照らしており、
ゼンの哲学を感じさせられる非常に乙なワビサビ空間を演出していた。
ゴンベイはボロを纏う自分が場違いに思えて恥入った。
これだけ大きな屋敷なのに使用人の姿がほとんど見えず、
また、時々変な音と振動が伝わってくるのは何故なのかとゴンベイは不思議に思ったが、
使用人総出で屋敷内の改装工事を行っているのだというメイリンの説明に納得した。
何よりゴンベイが驚いたのはその後の夕食だった。
主菜のオーガニック・アプリコット・スシは蕩ける様に甘く旨い。
これに比べれば普段の食事は砂を噛むようなものだとゴンベイは思った。
なにより、食中酒のオーガニック・ブドウ・サケである!
口中に広がる芳醇な香りと、深く多彩でありながらバランスの取れた複雑な味は、
ゴンベイの想定するサケの範疇を遥かに超える別次元の存在だった。
ゴンベイは一口毎に驚愕と感動を覚えながら夕食を終えた。
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夕食後のゴンベイは、あてがわれた客室でユカタに着替えてフートンに転がっていた。
その手には二万円。
実際に仕事が始まるのは明日からだというのに、
夕食後にメイリンが今日の日当だと言ってポンと渡してくれたのだ。
「スシ食ってサケ飲んでゴロ寝して二万円とはな。カチグミはすげーや」
ほろ酔いのゴンベイは笑いが止まらなかった。
「この二万円、どう使うか。スシかサケかオイランか……」
大半のマケグミに貯金という選択は無い。刹那の快楽が無ければ日々の過酷な労働に耐えられないのだ。
「スシ……サケ……」
しかし、ふと思う。
スシもサケも、今しがた最高級の物を味わってきたばかりではないか。
今更金を出して、味気無いスシや泥水のようなサケを求めるというのか。
ゴンベイはマケグミなりにスシを食いサケが飲める人生にそれなりの満足をしてきた。
どんなに下らない人生でも自己満足ができれば意味はあるのである。
しかし二万円である。
最高級のスシを食べて最高級のサケを飲んで、ゴロ寝して得られる二万円に対して、
不味いスシを食べて不味いサケを飲んで、体も誇りも削って得られる数千円である。
ゴンベイは一瞬自分の人生が無意味なのではないかと感じたが、
つまらない考えはニューロンから追い出して、酔いに任せて眠りに落ちることにした。
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朝食を終えたゴンベイはマスターメイドのサクヤに連れられて地下室に向かっていた。サクヤのバストは豊満ではなかった。
フランドールは少々情緒不安定なところがあって、ずっと地下室で過ごしている娘だから、
言動には気を付けるようにとサクヤから釘を刺されたが、ゴンベイは楽観していた。
普段からヤクザヨーカイやヤクザじみた雇い主と渡り合っているのだ。小娘ごときは楽な相手だと。
むしろ、フランドールに気に入られることで、特別ボーナスやコウマ・コンツェルンとのコネクションが得られるかもしれないと、
ゴンベイは期待を抱いていた。
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「カラダニキヲツケテネ!」
ゴンベイを地下室の中に入れると、サクヤはこう言ってフスマを締めた。
その時かすかに響いたガチャリという音には、ゴンベイは気が付かなかった。
フランドールが普段過ごす地下室は、内部がフスマやショウジ戸で区切られた百畳近いタタミ敷きの空間であり、
台所や浴室、便所といったスペースも存在する。地下室というよりは一つの家と言った方が近いかもしれない。
ゴンベイが室内を見ると、
フランドールが部屋の中央にあるコタツでちょこんと正座して待っていた。
背中には翼がある。ヨーカイだろうかとゴンベイは思った。
だが、襲われる恐怖は感じない。
人間を取って食うヨーカイはもういない。経済力で人間を食い物にするのが現代のヨーカイ。
これがネオゲンソキョーの常識である。
「あ! 人間だ! 本当に来た!」
フランドールはゴンベイを見つけると、とてとてと駆け寄る。
「ドーモ、ゴンベイです」
「ドーモ、フランドールです。ゴンベイ=サン。まぁまぁ、とにかく座ってよ」
フランドールはアイサツもそこそこに、ゴンベイの手を引いてコタツまで導くと、ザブトンを出して着席を勧める。
「ちょっとオチャを用意してくるから待ってて!」
そう言うと、フランドールは部屋の奥のフスマを開けて小走りで消えていった。
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手持無沙汰のゴンベイはコタツに座って周囲を見渡す。
室内にはコタツ、タンス、本棚、花瓶といった調度品。「家族が大事」とショドーされた掛け軸。
壁に掛かった、テング・オメーンやキツネ・オメーン。
転がった、コケシやダルマやフクスケといった雑多なオモチャ。
何の変哲も無い平凡な風景である。
人里の民家には、いくらもこれと似たような部屋があるに違いない。
だが、このような空間に少女が一人だけでずっと過ごしているという事実に、
ゴンベイは何とも言えない違和感を覚えた。
自分が彼女の立場だったらどう思うだろうか、そのようなことを漫然と考えていた。
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「お待たせ! 少し手間取っちゃった!」
しばらく待っているとフスマが開き、オボンを持ったフランドールが入ってきた。
「イエ、オカマイナク」
ゴンベイは奥ゆかしくアイサツで返し、フランドールはオボンからコタツにチャとオカキを並べた。
「ケッコウなオテマエで」
チャを飲むとゴンベイはこう言った。
フランドールのワザマエは稚拙で、淹れる茶は渋く、決して美味くはない。
だが、ゴンベイの言葉は単なるタテマエや媚びではない。未熟なチャからモテナシの心を感じ取ったのだ。
「オソマツサマでした……」
わずかに頬を染めてフランドールはつぶやいた。
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「ねぇ! あなた本当に人間なんでしょ!」
チャを飲み終えるとフランドールはそう切り出してきた。ゴンベイは頷く。
「すごい! 私、初めて人間を見た!」
ペタペタとゴンベイの体を触りながら、好奇心に満ちた瞳でフランドールはゴンベイを見つめていた。
「人間も姿形はあまり変わらないのね。普段は何を食べているの?」
「主にスシを食べています」
「へぇ! ヨーカイも人間も食べ物は変わらないのね」
ゴンベイは心の中でほくそ笑む。
好感触だ。このまま適当に受け答えをすればフランドールの贔屓を得ることは容易いだろう。
特別ボーナスやコウマ・コンツェルンとのコネクションが現実のものになってきた。
ゴンベイはそう感じた。
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「それでね、この前の異変の時にお姉様が!」
会話は弾む。
会話というよりは、フランドールの一方的な喋りにゴンベイが相槌を打っているだけという方が正しいのだが。
「お姉様のスカーレットシュートを外の人間がブリッジで回避したらしくて!」
フランドールはお姉様という単語をよく口にする。
よほどレミリア=サンのことが好きなのだろうとゴンベイは思った。
「だから、私もあなたと弾幕カラテごっこがしたいの!」
「え?」
ゴンベイは急な話に戸惑った。
弾幕カラテごっこ。一部の人間の少女や、妖怪の少女の間ではメジャーな決闘方法と聞く。
だが、人間の男でマケグミであるゴンベイが弾幕など出せるわけはない。
「しないの? 弾幕カラテごっこ。外の人間なのに?」
「スミマセン、弾幕カラテごっこはできません」
「え? ナンデ?」
「ヨーカイと弾幕カラテごっこできるような強い人間はほとんどいないんです。
私も弾幕は出せません。別の遊びならお供いたします」
理性的な説得である。だが……。
「ナンデ……」
「ドーモ、スミマセン……」
「……スッゾコラー!」
BAANG!
フランドールは突如として、口汚いヨーカイスラングを絶叫すると、怒気を全開にしてコタツを叩きつける!
勢いで跳ね上がったユノミと皿が天井に激突して粉砕!
「アイエエエエエ! ヨーカイ!? ヨーカイナンデ!?」
ゴンベイも絶叫!
強大なヨーカイから全力で放たれる怒気!
ヨーカイに殺されるというプリミティブな恐怖がニューロンを激しく揺り動かす!
「外の人間と弾幕カラテごっこできると……お姉様のマネをできると……思ってたのに!」
「アイエエエ!」
人間に直接危害を加えるヨーカイなどもういないと思っていたのに!
ゴンベイはパニックのあまり失禁寸前だ!
ナムアミダブツ! フランドールは純粋無垢であるが故に、
社会経験から生まれる妥協や忍耐といったものにも乏しいのだ!
「そうだ! 弾幕が撃てなくても耐久弾幕カラテならできるよね! イヤーッ!」
そう言うとフランドールは弾幕を連射!
「アイエエエエエ!」
逃げ惑うゴンベイ!
BOMB! BOMB!
巻き上がる爆風! 吹き飛ばされるコケシやフクスケ!
「ほらほら、あと二十秒! ちゃんと避けないと!」
ゴンベイは必死で逃げる!
だが彼には弾幕カラテごっこの経験など無く、チョン避けや切り返しのテクニックは無い。
あっという間にタンスがある部屋の端まで追いつめられる!
「チェックメイト! イヤーッ!」
BLAM!
とどめの弾幕が放たれる! ゴンベイは絶体絶命だ!
おお、ブッダよ! まだ寝ているのですか!?
その時である!
「Wasshoi!」
タンスが壊れんばかりに勢い良く開いて、裂帛の気合と共に中から紅白の影が弾丸のように飛び出してきた!
「イヤーッ!」
紅白の影は空中で回転しながら、猛烈な勢いでオフダスリケンを連発!
発射されたオフダスリケンはゴンベイを狙う弾幕と相殺!
影は空中八回転から華麗に着地を決めると、腕を組み直立不動の姿勢を取る。
紅白の装束、露出された腋! 「妖」「殺」と禍々しく刻まれたメンポ! その正体はなんだ!?
それはハクレイのミコ! ジンジャに住まいし殺戮者、ジンジャスレイヤーだ!
ジンジャスレイヤーは、ゆっくりとオジギをし、
放たれる鋭い殺気に似合わない優雅なアイサツを決める。
「ドーモ、フランドール=サン。ジンジャスレイヤーです。ヨーカイ、殺すべし」
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「ドーモ、フランドール=サン。ジンジャスレイヤーです。ヨーカイ、殺すべし」
「アイエエエエエ! ミコ!? ミコナンデ!?」
ゴンベイのニューロンは、ヨーカイに続きミコの出現で完全にショックの許容量を超えてオーバーヒート。
ゴンベイは頭を抱えて部屋の隅でガタガタと震えだした。
「ドーモ、ジンジャスレイヤー=サン。フランドールです。もしかして、あなたがお姉様を倒した人間なの?」
フランドールはジンジャスレイヤーの殺気を平然と受け止め、
スカートの裾を摘まみ上げてゆったりとオジギ。ジンジャスレイヤーに負けじと優美なアイサツを返す。
「お姉様? レプリカとかいうサンシタ悪魔か。姉も妹も、異変の原因のヨーカイは全て殺す」
「レミリア! レミリアお姉様よ! イヤーッ!」
右手をジンジャスレイヤーに向けるフランドール!
アブナイ! キュットシテドカーン・ジツだ!
これを食らえば、ジンジャスレイヤーといえども爆発四散は必至!
「イヤーッ!」
だが、ジンジャスレイヤーは流麗なブリッジでジツを回避! タツジン!
「そのブリッジ! やっぱりあなたが!」
「ならばどうする? アダを討つのか? ヨーカイ風情が」
「私との弾幕カラテごっこに付き合ってもらうわ!」
先刻の不機嫌もどこへやら。
目当の相手を見つけて喜色満面のフランドールは、スペル宣言をすると四つの魔法陣を召喚!
ゴウランガ! これぞフランドールのスペル、禁忌「クランベリートラップ」なのだ!
「イヤーッ!」
BABABABABA!
四つの魔法陣から一斉に射出!
これはバラマキ弾と自機狙い弾が複雑に絡み合い、
バラマキ弾に集中して避けていれば自機狙い弾の餌食となり、
自機狙い弾を焦って避ければバラマキ弾に衝突するというキケンなスペルだ!
どうする!? ジンジャスレイヤー!?
「イヤーッ!」
ジンジャスレイヤーは自機狙い弾を華麗なステップで誘導し、バラマキ弾を避ける十分なスペースを確保!
熾烈な弾幕を涼しい顔で危なげなく避けていく! スゴイ!
ジンジャスレイヤーのミコ超感覚は、たとえ初めて見る弾幕でも、どう避ければ良いのか直感的に理解できるのだ!
「イヤーッ!」
避けるばかりではない! 反撃のオフダスリケンを連続投擲!
「ヌゥゥゥ――!」
オフダスリケンをギリギリで避け続けるフランドール!
圧倒的な弾幕を展開しているにも関わらず、フランドールの防戦一方だ!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
ジンジャスレイヤーが投擲したヒサツ・ワザ、ザブトンスリケンがフランドールに直撃!
フランドールは吹き飛ばされてフスマを突き破り、壁に背中を強打して崩れ落ちる!
堪らずスペルブレイクだ!
「どうした。オヌシのカラテは無力な妖精や人間を嬲るにしか使えぬか」
侮蔑的に吐き捨てるジンジャスレイヤーに対し、フランドールは項垂れたまま何も答えない。
「戦意を無くしたなのら、そこでじっとしておれ。カイシャクしてやる」
カイシャク、首を撥ねようというのだ!
無反応のフランドールに向かって歩くジンジャスレイヤー!
しかしそこでフランドールにチェシャ猫のような笑み! 手には炎の剣!
「感心したわ、あなたって本当に強いのね。ここからは本気で殺すわよ」
フランドールの第二スペル、禁忌「レーヴァティン」の宣言だ!
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「イヤーッ!」
CABOOM!
フランドールが横薙ぎに振るったレーヴァティンが、
オフダスリケンを蹴散らしつつジンジャスレイヤーに迫る!
「イヤーッ!」
ジンジャスレイヤーは流麗なブリッジで下をくぐって回避! ワザマエ!
「イヤーッ!」
CABOOM!
フランドールはブリッジ硬直中のジンジャスレイヤーを、
レーヴァティンの斬り下ろしで狙う!
「イヤーッ!」
ジンジャスレイヤーはブリッジからのハンドスプリングで瞬時に起き上がり、
さらに五連続バク転でレーヴァティンから飛び退く! タツジン!
「イヤーッ!」
CABOOM!
フランドールはダッシュで追いかけつつ、追撃のレーヴァティン・ツキを放つ!
「イヤーッ!」
ジンジャスレイヤーは大の字に両手足を開いて十メートル跳躍!
ツキから逃れる! スゴイ!
「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」
「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」
CABOOM! CABOOM! CABOOM! CABOOM! CABOOM!
ランダムにパターンを変えながら、レーヴァティンの滅多斬りを繰り出すフランドール!
その尽くを正確に避けるジンジャスレイヤー! スゴスギル!
だが、ジンジャスレイヤーは徐々に部屋の端に追い詰められていく。
このままではジリー・プアー(徐々に不利)だ。
「イヤーッ!」
フランドールが部屋の隅で進退窮まったジンジャスレイヤー目掛けてレーヴァティンを繰り出す……!?
いや、ジンジャスレイヤーの姿が見えない! ジンジャスレイヤーはどこだ!
「イヤーッ!」
ゴウランガ! フランドールの背後頭上の虚空からジンジャスレイヤー出現!
ジンジャスレイヤーは強烈な飛び蹴り・アンブッシュを仕掛ける!
「グワーッ!」
フランドールは頭上からの蹴りで叩きつけられ、床に埋まる!
これぞ暗黒カラテ技、アクウケツだ!
ジンジャスレイヤーは空間を捻じ曲げてのワープ・アンブッシュすら可能なのだ!
「イヤーッ!」
さらにジンジャスレイヤーは、フランドールを床から引きずり出してのカラテ奥義、ショウテンキャク!
「グワーッ!」
フランドールは強烈なサマーソルトキックで上方に吹き飛ばされ、今度は天井に埋まる!
あまりの衝撃にスペルブレイク!
「イヤーッ!」
天井のフランドールにトドメを刺さんと跳躍するジンジャスレイヤー!
しかし、フランドールのスペル宣言!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
BLAM!
ジンジャスレイヤーの背中に弾幕が命中! 堪らず墜落!
ブッダ! この背後からのアンブッシュの正体とは何なのか!
振り返るジンジャスレイヤーの目線には三人のフランドール!
「ドーモ、ジンジャスレイヤー=サン。フランドールです」
挑発的なアイサツを全く同時に決めるフランドールたち!
これこそがフランドールの第三スペル、禁忌「フォーオブアカインド」!
三体の分身を生み出し、四体同時攻撃を決める恐るべきスペルなのだ!
「何人掛かりだろうが同じことだ。……全員殺す」
よろよろと立ちあがるジンジャスレイヤー。
「大丈夫? まだ先は長いのよ?」
全身傷だらけながら、天井で牙を出して愉悦を浮かべるフランドール。
イクサは始まったばかりだ!
------------
ゴンベイが正気に返って周りを見渡すと、周囲には何も無かった。
地下室は壁にも天井にもチーズめいて大穴がいくつも開き、ただサツバツとした空間だけが広がっている。
少し前には平凡な風景がそこにあったような気もするが、今は思い出せない。
ゴンベイを狂気に至らしめたミコとヨーカイはもういない。
恐らくは、あの大穴から地下室を飛び出してイクサの場を地上に移したのだろう。
ゴンベイはそう思った。
股間が湿って気持ち悪い。ゴンベイは失禁をしていた。
「アイエエエ……」
恐怖が蘇る。
ヨーカイとミコがこんなに恐ろしいものであったとは。
両者の流れ弾を受けずに命があったのは奇跡だ。
ブッダの加護としか言いようがない。
ヨーカイと近付きになろうとは、全く狂気の沙汰でしか無かったのだ。
ゴンベイは己の軽率さを呪う。
思えば、こんな仕事など受けるべきではなかったのだ。
命の危険も無しに二万円も手に入るはずがない。
ヤクザにピンハネされてでも、一応は安全な仕事を受けるべきだ。
そして地道に貯金して、一刻も早くマケグミを抜け出すべきなのだ。
ゴンベイはそう結論付けて地下室から抜け出すと、コウマ・パレスの出口へと急ぎ、一目散に逃げだす。
不自然に降っていた重金属酸性雨はもう上がっていた。
------------
「イヤーッ!」
「ヤラレタ―!」
コウマ・パレス屋敷内。
激闘の末に、ジンジャスレイヤーはフランドールの最終スペル、QED「495年の波紋」を撃破。
力尽きたフランドールが満足気な表情で床に倒れる。
「これがミコのカラテだ。ヨーカイの紛い物のカラテとは違う」
「そんなんで勝ったと思っちゃうんだ。まだまだ戦えるんだから!」
「オヌシにもう余力などなかろう」
「ハイ、もう煙も出ません」
「ハイクを詠め。カイシャクしてやる」
ジンジャスレイヤーはミコボーを構えてしめやかに歩み寄る。
「そして誰も、いなくなった、インガオホー」
「イヤーッ!」
ジンジャスレイヤーはフランドールがハイクを詠み終えるのを待つと、ミコボーを突き刺す。
「サヨナラ!」
フランドールは爆発四散!
------------
「……爆発しちゃったけど、大丈夫なんですか?」
「あのバカ姉妹が爆発四散したくらいで滅びるわけがないでしょう。
レミィも爆死した一時間後には完全復活したわ」
ジンジャスレイヤーとフランドールのイクサの結末を水晶球で眺めながら、
コアクマとパチュリーがとりとめもない話を続けていた。
メイリンは既に門番に戻り、サクヤは復活したメイド妖精を指揮して屋敷内の清掃に乗り出している。
「これにて一件落着というわけですか」
「そうね、雨を止めたらミコも壁を突き破って帰っていったし。……殺されなくて良かった」
パチュリーはやれやれと頭を振る。
不自然な雨が降るという異変を起こしてフランドールの足止めをしつつ、
異変に釣られて寄ってきたミコにフランドールの相手をしてもらうという作戦だったが、
それには、異変を起こしているパチュリーが先にミコに襲われるという危険性があった。
図書館内に結界を張って身を隠してはいたが、相手は神出鬼没のミコ。安心はできない。
パチュリーはもしミコに出会ったら、即座に雨を止めてドゲザで命乞いをするつもりだった。
「……お嬢様の時以上にお屋敷壊れちゃいましたね。半壊ですよ、これ」
「マケグミを使って修繕させればいいでしょ。レミィの財力からすれば十円トーフみたいなものよ」
水晶球の中のフランドールは、爆発四散した体がモヤめいて一箇所に集まり、見る見る内に元の体を再構成していく。
体はほぼ無傷の状態にまで回復したが、まだ体力が戻っていないのか、フランドールは倒れたまま起き上がらない。
「うわ、本当に元に戻っちゃいましたよ……。あ、これはお嬢様でしょうか」
フランドールに駆け寄る翼の生えた少女。
彼女こそがコウマ・パレスの主、レミリア・スカーレットである。
「雨が止んでようやく帰ってこれたのね……肝心な時にいないんだから」
「オデムカエするべきでしょうか」
「しばらくバカ姉妹同士で仲良くさせておきなさい」
「ハイ。それにしても、パチュリー=サン」
「何?」
「なんで一部のヨーカイはあの凶悪なミコと戦いたがるのでしょうか。私なら絶対にゴメンです」
「レズのマゾヒストだから」
「え?」
「冗談よ」
------------
ゴンベイはいつも通り斡旋所の扉の前にいた。
地道に働いて貯金してマケグミから解放される。
そう決心して扉に手をかけるが、そこでゴンベイのニューロンに二万円がよぎる。
それに対して、これからの仕事は惨めな思い、辛い思いをして数千円だ。
ゴンベイの手が止まる。
いや、我慢して働いて貯金しなくては。
ゴンベイは手に力を入れる。
そこでふと気付く。
貯金してどうやってマケグミから脱出するのかと。
マケグミから抜け出すための、学、技術、コネクションを手に入れる方法をゴンベイは知らない。
そもそも、それらを手に入れれば本当にカチグミになれるのか。
マケグミから抜け出す手段は実在するのか。
……今日は働かなくても良いだろう。ゴンベイは答えを保留して斡旋所を離れる。
「あのー、そこのお方」
ゴンベイが呼び止められて振り向くと、そこにはウサギ耳の女がいた。
「私、ヤゴコロサン製薬の者ですが、あなたに良いアルバイトを紹介したいと……」
「シスター・オブ・スカーレット」 終
■罪■
全米を震撼させ、日本でもTwitter連載で人気を博して2011年6月の時点で約57万人の推定読者数を持つ、
サイバーパンクニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」と東方Projectの悪魔合体です。
両原作のパワーで割とやりたい放題できたなと思います。
誤字脱字を指摘していただければ、筆者がケジメします。
■袋■
根古間りさ
作品情報
作品集:
1
投稿日時:
2012/04/01 00:22:52
更新日時:
2012/04/01 03:20:05
評価:
16/24
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135175616
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■2012/04/01 00:35:16
ワザマエ!
6.
7777777
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名前が無い程度の能力
■2012/04/01 02:10:04
アイエエエエエ!
8.
7777777
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名前が無い程度の能力
■2012/04/01 02:48:01
b
9.
7777777
点
名前が無い程度の能力
■2012/04/01 03:02:30
このワザとらしいパルプSF!
11.
7777777
点
名前が無い程度の能力
■2012/04/01 07:27:10
いいね!
13.
7777777
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名前が無い程度の能力
■2012/04/01 09:15:46
この悪魔合体を批判しようとする不届き者はケジメされました。ごあんしんください。
14.
7777777
点
名前が無い程度の能力
■2012/04/01 11:16:39
タツジン!
15.
7777777
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名前が無い程度の能力
■2012/04/01 12:07:17
パンクスピリットを感じました!
16.
7777777
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名前が無い程度の能力
■2012/04/01 12:38:39
タンスとは/実際デオチな/インガオホー
17.
7777777
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名前が無い程度の能力
■2012/04/01 16:34:54
スゴイ
タノシイ
実際面白い
18.
7777777
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名前が無い程度の能力
■2012/04/01 18:02:55
電車の中で/実際吹いた/インガオホー
サヨナラ!(爆発四散しながら)
19.
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名前が無い程度の能力
■2012/04/01 18:09:03
ニューロンを焼き尽くさんばかりの物語に実際ボウダ・ティアーです。
タツジン!
20.
7777777
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名前が無い程度の能力
■2012/04/01 18:34:58
ケッコウなオテマエで!
21.
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S.Kawamura
■2012/04/01 21:34:09
初めは「なんだこりゃ?」と思いながらも、次第にのめりこんで気づいたら読み終わってしまった…。おもしろかったです。
23.
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■2012/04/03 11:08:21
めっちゃ面白かった、いろいろ突っ込みたいところあるけど原作あるのかこれー!
24.
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■2012/04/05 19:42:08
ジョーキューヨーカイどもを虜にして軽くあしらうケンオウめいたミコの実態に、失禁
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タノシイ
実際面白い
サヨナラ!(爆発四散しながら)
タツジン!