しゃり。
しゃり。
しゃり……。
小さなスプーン一杯の分量を、一口一口味わい、楽しむ。
口に広がる清涼感が火照った全身を冷やすよう。
控えめな甘みもまた、美味。
「あぁ……夏ですねぇ」
――神社の縁側にて、東風谷早苗は風流なひと時を過ごしていた。
しゃくしゃくしゃく。
しゃくしゃくしゃくしゃく。
しゃくしゃくしゃくしゃくしゃくっ。
氷よ。
お前は何の為にある。
決まっている。私の渇きを満たす為だ!
「って、あ、だめ、くる、なんかきちゃう、あ、うあぁ!」
――同じく神社の縁側にて、博麗霊夢は風流とは言えないひと時を過ごしていた。
むしろ、のた打ち回っている。
奇声を発しながらこめかみを押さえる霊夢に、早苗は微苦笑した。
スプーンを容器に差し込み、少し離れた脇に置く。
暴れて床の染みにするのは勿体ない。
「もぅ……がっつくからですよ」
するりと手を伸ばし、霊夢の手の下に割り込む。
互いに浮かぶ汗が、じとりと混じり合った。
「そんな声を出されると、もっとがっつかせたくなるじゃないですか。流しこむ勢いで」
「い、いやー!? 頭、頭に、きーんって、きーんって!」
「はいはい、わかってますよぅ」
冗談が通じない――と言うよりは、言葉さえ通じているかどうかわからない霊夢。
覚えのある痛みに顔を顰め、早苗は手を上下させ、霊夢のこめかみを揉む。
理屈は知れないが、古今東西、こうなった時はこうである。
伝わる体温と伝える体温が同じになった頃、早苗の手に霊夢のソレが重ねられた。
「あー……ありがと」
「どういたしまして」
「それはそれとして」
じとりと霊夢。
微笑み返す早苗。
視線が交差し、弾ける。
「なんで腹まで摩ってるの?」
「冷やすといけませんし」
「あー、もう大丈夫」
「そうですか」
「そうなのよ」
さすさすさす。
「――神奈子様の仰る通りに!」
「泣くわよ神奈子!?」
「ですが諏訪子様だと直截過ぎます!?」
「何の話よ!?」
「お宝」
「っの、反撃ぃ!」
「あ、ちょっと、お臍は駄目!?」
ふにふにふにふに。
「はーん、此処が弱点みたいねぇ。いい機会だし、日頃のお返しよっ」
「く、くすぐった、れい、むさん、ほんと、そこ……っ」
「許しませぇん。ふふん、うりゅうりゃうりゃ」
「ひぅ!? も、もぅ、わたし……あ!」
「うふふ、柔らかくて気持ちいいわよ」
――すぱっかーん。
「駄目だって言ってるじゃないですか……っ」
「い、痛い。頭が本気でいたひ……!」
「あ、じゃあ、撫でましょうか」
これなんて無限ループ。
しゃり、しゃり、しゃり。しゃく、しゃく、しゃく。
「大体さ、あんたの方が先に仕掛けてきたんじゃないの。そんでもって――」
「霊夢さんの苺でしたよね。是、メロンです」
「あーっ」
ん。
放りこまれた氷と共に霊夢が覚えた微かな蟠りも、溶けて、消えた。
燦々と太陽が自己を主張し、花開いた生命を蝉が輝かせる、そんな典型的とも言える夏の一幕。
東の果ての神社にて、二人の少女は縁側に腰掛け涼を取っていた。
訂正。少女の一人は貪っていた。流石に今は懲りたようだが。
少女たちが持つ器には世界の果てを思わせる涼の具現化が盛られている。
早苗の器には緑色の、霊夢の器には赤色のオーロラがかかっていた。
そう、彼女たちは神社に居ながら、南極の息吹を感じているのだ。
――要はかき氷を食っている。
「氷とシロップが絶妙に混じり合い、舌の上で奏でるハーモニー」
「んー、冷たくて甘くて美味しい!」
「ですねぇ」
珍しく素直に感想を述べる霊夢に、微苦笑一つを浮かべ早苗も頷く。
「まさか、かき氷が家で食べられるなんて思わなかったわ」
口の端についた水滴をぺろりと舌で舐めとりながら、霊夢が心底嬉しそうに言う。
言の通り、かき氷を食すための一式は全て早苗が持ってきたもの。
食器はあるかと思いつつ持参した彼女の用意周到さは、図らずも二人を救った。
当初、霊夢が引っ張り出してきたのは中華料理用スプーンだったのだから。散蓮華。
「クーラーボックスが物置にあったんですよ」
「クーラー……えっと、その箱?」
「です。氷を保存できます」
「それはいいんだけどさ」
「はい?」
「なんで、蛇?」
「可愛いじゃないですか」
「変温動物はどうかと思う」
「神奈子様が冷血だと仰いますか?」
「いやいやいや。いやいやいやいや」
言の通り、箱の側面にはぐでりと横に伸びた爬虫類のプリントが貼り付けられていた。
驚くべき事にデフォルメされたものではない。
無論、持ち主の自作である。
他愛のない、ただのおしゃべりが続く。
「そも、氷はどうしたの?」
「此処にもあるじゃないですか」
「かき氷を作る余裕なんてないわよ」
「ほろほろ」
「喧しい。で?」
「チルノさんに」
「『おらおら、飛んでみろよぅ』」
「『やっぱり持ってるじゃないかよぅ』」
「……その手があったか!」
「って、何時の不良さんですか」
「違うの?」
「違います。ちゃんと対価を」
「かき氷?」
「かき氷」
はしゃいで食べていたそうな。
しゃりしゃりしゃり。しゃくしゃくしゃく。
「おかわり」
「はいな」
しゃっ。
しゃっ。
しゃっ。
削る音にさえ、涼が感じ取れる。
「あと、それね」
「かき氷機ですか?」
「そぉそ」
「此処にはない、と」
「ウチって言うか一般家庭にはない」
「でも、食べた事ありましたよね?」
「縁日でね。目玉の一つ」
「あー、そう言えば見かけたような」
「早苗、出し物に夢中だったものね」
「『巨大ロボvs魔蟲少女リグルン』」
「や、前後逆じゃない?」
「ロボいいですよね、ロボ」
「あんた、好きね……」
「にとりさんに作ってもらおうかなぁ」
「あー、うん、早苗、手が止まってる」
しゃっしゃっしゃっ。
磨られた氷がきらきらと冷たい輝きを放つ。
その上にかけられるのは青色の液体。
ブルーハワイ。
「ハワイって何?」
「外の地名です」
「変なの」
正確には、ブルーも含めてカクテルの名前である。
「と、言うかさ」
「なんです?」
「かき氷機にも爬虫類って」
「両生類ですよ?」
「なんだっていいわよ」
「あ?」
「早苗、怖い」
「やん」
「あんた、いい性格になったわよね……」
クーラーボックスと同じく、こちらも言の通り、両生類――蛙の意匠が施されている。
しかしながら、デフォルメされたものであった。
持ち主の自作でもない。
つまりは、既製品。
「普通さぁ、冷たい所に住んでる哺乳類とかじゃない?」
「可愛いですよね。ハンドル回すとげこげこって」
「外の人間って……」
霊夢の中で一つの認識が生まれた。生まれてしまった。
「あぁ!? 耳を澄ませばほんとに鳴ってるっ!」
「そんな今更。ずっと鳴ってましたよ?」
「野生の蛙だと思ってたわよ!」
しゃっ、げこ。
しゃっしゃっ、げこげこ。
しゃっしゃっしゃっ! げこげこげこ!
「しかも妙にリアル!」
「三種類入っています」
「どれも一緒でしょう!?」
ほんとは五種類の方がよかったんですけどねー、と早苗は遠き日を懐かしんだ。
うろんげな視線を向ける霊夢。
だったが、早苗の傍にある具材を見て目を輝かせる。
かき氷の定番ではあるがシロップではないソレ。宇治金時の素。小豆。
霊夢は、自身と同じく空になっている早苗の器をそろりと掴んだ。
「ね、ね、早苗」
「はい、どうぞ」
「ん」
「どうしました?」
「次、私にやらせてよ」
にこりと微笑み、早苗は了承する。
霊夢の動きは早かった。
器に小豆をぶち込み、すぐさまかき氷機の下に潜り込ませる。
早苗の制止の声も聞かず、一心不乱にくるくるとハンドルを回した。
しゃっしゃっしゃっ、げこげこげこ。
「もう、霊夢さん、小豆は最後に載せるものですよ」
「いーのいーの。食べれば一緒」
「食べるのは私ですが……」
「よっし、できたわっ!」
「聞いてないですね」
こんもりと盛られた氷の中に散らばる小豆。できたらしい。
頬を掻き苦笑する早苗の袖を引き、霊夢は言った。
弾けるような笑顔で、言った。
悪戯小僧の表情とも言う。
「題して、『産卵』!」
見えない事もない。
――すぱっかーっん!!
「ほ、本気で叩いたわねっ!?」
「何方の所為ですか……!」
「あ、まだ怒ってる」
一部の隙もなく、霊夢が悪かった。
ぷい、とそっぽを向く早苗。
珍しく怒らせてしまったと霊夢は後悔する。
どうにかして機嫌を直して欲しいが――さて。
手を打つ。
そして――。
右手にはスプーンを。左手には器を。
自身の蟠りが消えたように、彼女の蟠りも消えればいいが――思いつつ。
「早苗、早苗」
「つーん」
「あー」
――んっ。
無論の事。
霊夢の祈りは届いた。
つまりは早苗の蟠りも、彼女の舌で転がる氷と共に、溶けて、消えた。
しゃりしゃりしゃり。
しゃく、しゃく、しゃく。
しゃっしゃっしゃっ、げこげこげこ。
何でもない、何物にも代えられない少女二人の夏の一幕を、蛇と蛙だけが、眺めていた――。
<了>
しゃり。
しゃり……。
小さなスプーン一杯の分量を、一口一口味わい、楽しむ。
口に広がる清涼感が火照った全身を冷やすよう。
控えめな甘みもまた、美味。
「あぁ……夏ですねぇ」
――神社の縁側にて、東風谷早苗は風流なひと時を過ごしていた。
しゃくしゃくしゃく。
しゃくしゃくしゃくしゃく。
しゃくしゃくしゃくしゃくしゃくっ。
氷よ。
お前は何の為にある。
決まっている。私の渇きを満たす為だ!
「って、あ、だめ、くる、なんかきちゃう、あ、うあぁ!」
――同じく神社の縁側にて、博麗霊夢は風流とは言えないひと時を過ごしていた。
むしろ、のた打ち回っている。
奇声を発しながらこめかみを押さえる霊夢に、早苗は微苦笑した。
スプーンを容器に差し込み、少し離れた脇に置く。
暴れて床の染みにするのは勿体ない。
「もぅ……がっつくからですよ」
するりと手を伸ばし、霊夢の手の下に割り込む。
互いに浮かぶ汗が、じとりと混じり合った。
「そんな声を出されると、もっとがっつかせたくなるじゃないですか。流しこむ勢いで」
「い、いやー!? 頭、頭に、きーんって、きーんって!」
「はいはい、わかってますよぅ」
冗談が通じない――と言うよりは、言葉さえ通じているかどうかわからない霊夢。
覚えのある痛みに顔を顰め、早苗は手を上下させ、霊夢のこめかみを揉む。
理屈は知れないが、古今東西、こうなった時はこうである。
伝わる体温と伝える体温が同じになった頃、早苗の手に霊夢のソレが重ねられた。
「あー……ありがと」
「どういたしまして」
「それはそれとして」
じとりと霊夢。
微笑み返す早苗。
視線が交差し、弾ける。
「なんで腹まで摩ってるの?」
「冷やすといけませんし」
「あー、もう大丈夫」
「そうですか」
「そうなのよ」
さすさすさす。
「――神奈子様の仰る通りに!」
「泣くわよ神奈子!?」
「ですが諏訪子様だと直截過ぎます!?」
「何の話よ!?」
「お宝」
「っの、反撃ぃ!」
「あ、ちょっと、お臍は駄目!?」
ふにふにふにふに。
「はーん、此処が弱点みたいねぇ。いい機会だし、日頃のお返しよっ」
「く、くすぐった、れい、むさん、ほんと、そこ……っ」
「許しませぇん。ふふん、うりゅうりゃうりゃ」
「ひぅ!? も、もぅ、わたし……あ!」
「うふふ、柔らかくて気持ちいいわよ」
――すぱっかーん。
「駄目だって言ってるじゃないですか……っ」
「い、痛い。頭が本気でいたひ……!」
「あ、じゃあ、撫でましょうか」
これなんて無限ループ。
しゃり、しゃり、しゃり。しゃく、しゃく、しゃく。
「大体さ、あんたの方が先に仕掛けてきたんじゃないの。そんでもって――」
「霊夢さんの苺でしたよね。是、メロンです」
「あーっ」
ん。
放りこまれた氷と共に霊夢が覚えた微かな蟠りも、溶けて、消えた。
燦々と太陽が自己を主張し、花開いた生命を蝉が輝かせる、そんな典型的とも言える夏の一幕。
東の果ての神社にて、二人の少女は縁側に腰掛け涼を取っていた。
訂正。少女の一人は貪っていた。流石に今は懲りたようだが。
少女たちが持つ器には世界の果てを思わせる涼の具現化が盛られている。
早苗の器には緑色の、霊夢の器には赤色のオーロラがかかっていた。
そう、彼女たちは神社に居ながら、南極の息吹を感じているのだ。
――要はかき氷を食っている。
「氷とシロップが絶妙に混じり合い、舌の上で奏でるハーモニー」
「んー、冷たくて甘くて美味しい!」
「ですねぇ」
珍しく素直に感想を述べる霊夢に、微苦笑一つを浮かべ早苗も頷く。
「まさか、かき氷が家で食べられるなんて思わなかったわ」
口の端についた水滴をぺろりと舌で舐めとりながら、霊夢が心底嬉しそうに言う。
言の通り、かき氷を食すための一式は全て早苗が持ってきたもの。
食器はあるかと思いつつ持参した彼女の用意周到さは、図らずも二人を救った。
当初、霊夢が引っ張り出してきたのは中華料理用スプーンだったのだから。散蓮華。
「クーラーボックスが物置にあったんですよ」
「クーラー……えっと、その箱?」
「です。氷を保存できます」
「それはいいんだけどさ」
「はい?」
「なんで、蛇?」
「可愛いじゃないですか」
「変温動物はどうかと思う」
「神奈子様が冷血だと仰いますか?」
「いやいやいや。いやいやいやいや」
言の通り、箱の側面にはぐでりと横に伸びた爬虫類のプリントが貼り付けられていた。
驚くべき事にデフォルメされたものではない。
無論、持ち主の自作である。
他愛のない、ただのおしゃべりが続く。
「そも、氷はどうしたの?」
「此処にもあるじゃないですか」
「かき氷を作る余裕なんてないわよ」
「ほろほろ」
「喧しい。で?」
「チルノさんに」
「『おらおら、飛んでみろよぅ』」
「『やっぱり持ってるじゃないかよぅ』」
「……その手があったか!」
「って、何時の不良さんですか」
「違うの?」
「違います。ちゃんと対価を」
「かき氷?」
「かき氷」
はしゃいで食べていたそうな。
しゃりしゃりしゃり。しゃくしゃくしゃく。
「おかわり」
「はいな」
しゃっ。
しゃっ。
しゃっ。
削る音にさえ、涼が感じ取れる。
「あと、それね」
「かき氷機ですか?」
「そぉそ」
「此処にはない、と」
「ウチって言うか一般家庭にはない」
「でも、食べた事ありましたよね?」
「縁日でね。目玉の一つ」
「あー、そう言えば見かけたような」
「早苗、出し物に夢中だったものね」
「『巨大ロボvs魔蟲少女リグルン』」
「や、前後逆じゃない?」
「ロボいいですよね、ロボ」
「あんた、好きね……」
「にとりさんに作ってもらおうかなぁ」
「あー、うん、早苗、手が止まってる」
しゃっしゃっしゃっ。
磨られた氷がきらきらと冷たい輝きを放つ。
その上にかけられるのは青色の液体。
ブルーハワイ。
「ハワイって何?」
「外の地名です」
「変なの」
正確には、ブルーも含めてカクテルの名前である。
「と、言うかさ」
「なんです?」
「かき氷機にも爬虫類って」
「両生類ですよ?」
「なんだっていいわよ」
「あ?」
「早苗、怖い」
「やん」
「あんた、いい性格になったわよね……」
クーラーボックスと同じく、こちらも言の通り、両生類――蛙の意匠が施されている。
しかしながら、デフォルメされたものであった。
持ち主の自作でもない。
つまりは、既製品。
「普通さぁ、冷たい所に住んでる哺乳類とかじゃない?」
「可愛いですよね。ハンドル回すとげこげこって」
「外の人間って……」
霊夢の中で一つの認識が生まれた。生まれてしまった。
「あぁ!? 耳を澄ませばほんとに鳴ってるっ!」
「そんな今更。ずっと鳴ってましたよ?」
「野生の蛙だと思ってたわよ!」
しゃっ、げこ。
しゃっしゃっ、げこげこ。
しゃっしゃっしゃっ! げこげこげこ!
「しかも妙にリアル!」
「三種類入っています」
「どれも一緒でしょう!?」
ほんとは五種類の方がよかったんですけどねー、と早苗は遠き日を懐かしんだ。
うろんげな視線を向ける霊夢。
だったが、早苗の傍にある具材を見て目を輝かせる。
かき氷の定番ではあるがシロップではないソレ。宇治金時の素。小豆。
霊夢は、自身と同じく空になっている早苗の器をそろりと掴んだ。
「ね、ね、早苗」
「はい、どうぞ」
「ん」
「どうしました?」
「次、私にやらせてよ」
にこりと微笑み、早苗は了承する。
霊夢の動きは早かった。
器に小豆をぶち込み、すぐさまかき氷機の下に潜り込ませる。
早苗の制止の声も聞かず、一心不乱にくるくるとハンドルを回した。
しゃっしゃっしゃっ、げこげこげこ。
「もう、霊夢さん、小豆は最後に載せるものですよ」
「いーのいーの。食べれば一緒」
「食べるのは私ですが……」
「よっし、できたわっ!」
「聞いてないですね」
こんもりと盛られた氷の中に散らばる小豆。できたらしい。
頬を掻き苦笑する早苗の袖を引き、霊夢は言った。
弾けるような笑顔で、言った。
悪戯小僧の表情とも言う。
「題して、『産卵』!」
見えない事もない。
――すぱっかーっん!!
「ほ、本気で叩いたわねっ!?」
「何方の所為ですか……!」
「あ、まだ怒ってる」
一部の隙もなく、霊夢が悪かった。
ぷい、とそっぽを向く早苗。
珍しく怒らせてしまったと霊夢は後悔する。
どうにかして機嫌を直して欲しいが――さて。
手を打つ。
そして――。
右手にはスプーンを。左手には器を。
自身の蟠りが消えたように、彼女の蟠りも消えればいいが――思いつつ。
「早苗、早苗」
「つーん」
「あー」
――んっ。
無論の事。
霊夢の祈りは届いた。
つまりは早苗の蟠りも、彼女の舌で転がる氷と共に、溶けて、消えた。
しゃりしゃりしゃり。
しゃく、しゃく、しゃく。
しゃっしゃっしゃっ、げこげこげこ。
何でもない、何物にも代えられない少女二人の夏の一幕を、蛇と蛙だけが、眺めていた――。
<了>
それはそうと、この二人のカキ氷にシロップは要らないと思います。
だって、素で甘々じゃんこの二人、むしろ糖尿必至。
素敵なお話ありがとうございました。次も期待してます
そういえば今年はかき氷食べなかったなぁ…
この二人甘々だなぁ、ホントにべたべただ!w
天然バカップル共め!
お空ちゃんバスターをぶっ放して「ひゃっはー!」したり。
お空ちゃんアッパーで「ジェットトゥジェットアパカー」とかしてましたので知らなかったのです。
かき氷のグレープとコーラ食べたい。
この話をシロップに氷かじってきます
あれ、俺はいつ霊夢になったんだ? …正直驚きましたw
泣くぞ、子供が見たらwww